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事業者名:株式会社クレハ/株式会社クレハ環境 対象地域:福島県いわき市 実施期間:平成28年10月~平成29年2月 平成28年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金 構想普及支援事業(事業化可能性調査) 大容量の需要制御とバイオマス・廃棄物・火力発電設備の統合供給制御を組み合わせた、 高速・高精度の需給 管理事業化可能性調査~いわき創生総合戦略に基づく新たなエネルギー域内循環モデル構築 1.事業の背景・目的 1)いわき創生総合戦略に基づく新たなエネルギー域内循環モデル構築 平成28年度からのいわき市の総合計画では、「エネルギー分野で成長してきた本市の強みを 活かし、地域資源を活用した多様なエネルギー拠点を展開」及び「地域ならではの特徴を活か した新たなエネルギー域内循環モデルを構築していく」ことが示され、クリーンエネルギーのま ち”いわき”をつくることを掲げている。再生可能エネルギーの活用を地域の産業や雇用の振興 に結びつける方策が必要とされている。 2)公共施設等における財政負担の軽減 市には1,334施設の建築物のほか、道路等をはじめとする多くの公共施設等を有しており、今 後の更新費用の財政負担の軽減が課題となっている3)株式会社クレハにおけるCO 2 排出量削減取組の強化の必要性 これまでクレハは、CSR活動の中核に位置づけられるRC(レスポンシブル・ケア)の一環として 、「クレハECO2アクション20」において「2005年度を基準とし、2020年度のBAUCO 2 排出量 10%以上削減」を目標に掲げていたが、パリ協定を踏まえた更なる取組みを追求すべき段 階に至っている。 2.補助事業の概要 3.調査の結果 検討項目 実施方法 検討結果 ①EMSの構成 K-EMSにより、電解槽及び発 電設備群の運転計画を最適 化し、地域新電力への外部送 電を実施する。 K-EMSにより、電解槽及び石炭火力発 電の30分ごとの運転計画を1日前に実 施することとした。30分未満の運用につ いては電解槽と石炭火力を組合せて実 施することとした。 ②EMSの効果 シミュレーションモデルにより CO 2 排出量削減効果、エネル ギーの地産地消、経済性の効 果について算定する。 (最大ポテンシャル) ・CO 2 排出量:事業所内で年35%削減 ・地産地消:地域の60%程度の電力供給 ・経済性:地域の電気料金5%削減 ③再生可能エネル ギーに関する調査 (任意) 【対象なし【対象なし④事業実施体制・事業 スキーム・スケジュー 発電事業、地域新電力事業そ れぞれについて、事業実施主 体を明確にし、2つの事業のス キーム及びスケジュールを検 討する。 事業実施に当たっては、発電事業をク レハ及びクレハ環境が行う。地域新電 力はクレハが主体として設立するが、地 方公共団体が何らかの形で参画するこ とが望ましい。 ⑤事業採算性評価 発電事業、地域新電力事業の 2事業について単年度収支計 算として結果を評価する。 ベストシナリオでクレハの純支出が6 円程度増加。優良販売先の確保により、 更に純支出減少の可能性あり。 ⑥他地域への展開 電解槽と発電設備を持つ事業 所への事業展開が有力である として、同種の設備を持つ事 業者を調査する。 日本ソーダ工業会によると現在日本国 内に電解槽及び発電設備を持つ2028工場存在しており、これらの企業が持 つ事業所への展開の可能性は高い。 ⑦今後の展望・課題・ 対策 ①~⑥の検討結果を踏まえ、 本構想の事業化に向けての課 題・対策を抽出する。 現状ではさらなる収益の改善が必要で あるという課題が判明した。木質バイオ マス発電の規模の縮小や、夜間の出力 抑制運転、大規模供給先の確保により 事業性を改善できることを確認した。燃 料の安定的な供給や、将来の電力市場 の動向などを注視していく必要がある成果報告書要約版 事業化の可否の結論:可(ただし更なる詳細検討結果による) 事業化予定時期:2022年度に地域新電力営業開始計画 既存の自家消費用石炭火力発電所に地域資源を活用したバイオマス発電と未活用廃棄物発 電を導入し、工場使用電力とクレハグループ企業への電力供給を行うとともに、地域において FIT買取期間が終了した再生可能エネルギー電源を受け入れ、地域の小中学校などの公共 施設に安価な低炭素電力を供給する地域新電力事業を行う。 地域におけるエネルギーの節約や効率的利用を進め、新たなエネルギー域内循環モデルを 構築し、安価な低炭素電力を地域公共施設へ供給し、財政負担軽減に貢献し、CO 2 排出量削 減取組の強化につなげ社会的貢献に寄与する。 電解生産ラインの使用電力調整機能と火力発電の出力調整機能を統合して、大容量・高速・ 高精度のエネルギーマネジメントを行い、将来の調整力市場等の活用も見据えた電力需給の 最適化により経済性を確保し、再生可能エネルギーを電気及び熱に変換して、クレハグルー プを核として地産地消型で面的に利用する。これにより、FIT制度を利用しない新たな新電力 事業モデルを構築する。 その実現手段として、ITを活用したK-EMS(クレハ・エネルギー総合管理システム)(仮称)を 導入する。

年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進業費補助 …4.地産地消型エネルギーシステムの概要 アイテム 設備概要(出力、容量、用途、台数等)

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Page 1: 年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進業費補助 …4.地産地消型エネルギーシステムの概要 アイテム 設備概要(出力、容量、用途、台数等)

事業者名:株式会社クレハ/株式会社クレハ環境 対象地域:福島県いわき市 実施期間:平成28年10月~平成29年2月

平成28年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金 構想普及支援事業(Ⅰ事業化可能性調査)

大容量の需要制御とバイオマス・廃棄物・火力発電設備の統合供給制御を組み合わせた、 高速・高精度の需給管理事業化可能性調査~いわき創生総合戦略に基づく新たなエネルギー域内循環モデル構築

1.事業の背景・目的

1)いわき創生総合戦略に基づく新たなエネルギー域内循環モデル構築 平成28年度からのいわき市の総合計画では、「エネルギー分野で成長してきた本市の強みを

活かし、地域資源を活用した多様なエネルギー拠点を展開」及び「地域ならではの特徴を活かした新たなエネルギー域内循環モデルを構築していく」ことが示され、クリーンエネルギーのまち”いわき”をつくることを掲げている。再生可能エネルギーの活用を地域の産業や雇用の振興に結びつける方策が必要とされている。

2)公共施設等における財政負担の軽減 市には1,334施設の建築物のほか、道路等をはじめとする多くの公共施設等を有しており、今

後の更新費用の財政負担の軽減が課題となっている。

3)株式会社クレハにおけるCO2排出量削減取組の強化の必要性 これまでクレハは、CSR活動の中核に位置づけられるRC(レスポンシブル・ケア)の一環として、「クレハECO2アクション20」において「2005年度を基準とし、2020年度のBAUのCO2排出量の10%以上削減」を目標に掲げていたが、パリ協定を踏まえた更なる取組みを追求すべき段階に至っている。

2.補助事業の概要

3.調査の結果

検討項目 実施方法 検討結果

①EMSの構成

K-EMSにより、電解槽及び発電設備群の運転計画を最適化し、地域新電力への外部送電を実施する。

K-EMSにより、電解槽及び石炭火力発電の30分ごとの運転計画を1日前に実施することとした。30分未満の運用につ

いては電解槽と石炭火力を組合せて実施することとした。

②EMSの効果

シミュレーションモデルによりCO2排出量削減効果、エネルギーの地産地消、経済性の効果について算定する。

(最大ポテンシャル) ・CO2排出量:事業所内で年35%削減 ・地産地消:地域の60%程度の電力供給 ・経済性:地域の電気料金5%削減

③再生可能エネルギーに関する調査 (任意)

【対象なし】 【対象なし】

④事業実施体制・事業スキーム・スケジュール

発電事業、地域新電力事業それぞれについて、事業実施主体を明確にし、2つの事業のスキーム及びスケジュールを検討する。

事業実施に当たっては、発電事業をクレハ及びクレハ環境が行う。地域新電力はクレハが主体として設立するが、地方公共団体が何らかの形で参画することが望ましい。

⑤事業採算性評価 発電事業、地域新電力事業の2事業について単年度収支計算として結果を評価する。

ベストシナリオでクレハの純支出が6 億

円程度増加。優良販売先の確保により、更に純支出減少の可能性あり。

⑥他地域への展開

電解槽と発電設備を持つ事業所への事業展開が有力であるとして、同種の設備を持つ事業者を調査する。

日本ソーダ工業会によると現在日本国内に電解槽及び発電設備を持つ20社28工場存在しており、これらの企業が持つ事業所への展開の可能性は高い。

⑦今後の展望・課題・対策

①~⑥の検討結果を踏まえ、本構想の事業化に向けての課題・対策を抽出する。

現状ではさらなる収益の改善が必要であるという課題が判明した。木質バイオマス発電の規模の縮小や、夜間の出力抑制運転、大規模供給先の確保により事業性を改善できることを確認した。燃料の安定的な供給や、将来の電力市場の動向などを注視していく必要がある。

成果報告書要約版

事業化の可否の結論:可(ただし更なる詳細検討結果による) 事業化予定時期:2022年度に地域新電力営業開始計画

• 既存の自家消費用石炭火力発電所に地域資源を活用したバイオマス発電と未活用廃棄物発電を導入し、工場使用電力とクレハグループ企業への電力供給を行うとともに、地域においてFIT買取期間が終了した再生可能エネルギー電源を受け入れ、地域の小中学校などの公共施設に安価な低炭素電力を供給する地域新電力事業を行う。

• 地域におけるエネルギーの節約や効率的利用を進め、新たなエネルギー域内循環モデルを構築し、安価な低炭素電力を地域公共施設へ供給し、財政負担軽減に貢献し、CO2排出量削減取組の強化につなげ社会的貢献に寄与する。

• 電解生産ラインの使用電力調整機能と火力発電の出力調整機能を統合して、大容量・高速・高精度のエネルギーマネジメントを行い、将来の調整力市場等の活用も見据えた電力需給の最適化により経済性を確保し、再生可能エネルギーを電気及び熱に変換して、クレハグループを核として地産地消型で面的に利用する。これにより、FIT制度を利用しない新たな新電力事業モデルを構築する。

• その実現手段として、ITを活用したK-EMS(クレハ・エネルギー総合管理システム)(仮称)を導入する。

Page 2: 年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進業費補助 …4.地産地消型エネルギーシステムの概要 アイテム 設備概要(出力、容量、用途、台数等)

4.地産地消型エネルギーシステムの概要

アイテム 設備概要(出力、容量、用途、台数等) 導入予定時期

(既設or新設)

対象需要 クレハいわき事業所、いわき市内公共施設(契約24MW規模) 既設

EMSシステム

K-EMSシステムとして、電力卸売市場価格に応じた発電事業者の設備

(電解槽及び石炭火力発電)の最適運転計画を実施(クレハいわき事業所内に設置)

新設(2020年度予定)

電源・ 熱源

バイオマス

容量検討中(定格15MW規模でシミュレーションは実施)(クレハいわき事業所内に設置)

新設(時期調整中) (2023年発電開始を想定)

廃棄物発電

定格6MW規模(クレハいわき事業所内に設置)

新設

(2022年度発

電開始を想定)

石炭火力発電

定格45MW(出力上限42MW、出力下限27.5MW)(クレハいわき事業所内に設置)

既設

電解槽 定格35MW(クレハいわき事業所内に設置) 既設

【エネルギーマネジメントシステムの構成】

エネルギーマネジメントにより目指す方向性

目的 方向性

地域の環境性向上 低炭素の電気を活用して地域の二酸化炭素排出量削減を目指す

エネルギーの地産地消 地元産エネルギーの活用促進により電気の地産地消を目指す

地域の経済性向上 効率的なエネルギー利用による地域の電気料金削減を目指す

発電事業と地域新電力事業を統合したエネルギーマネジメント

クレハいわき事業所内ではK-EMSによる最適運転が行われる。K-EMSは計測さ

れた情報を元に事業所内の電力需要や各発電設備の発電量を予測すると共に、

地域新電力からの情報を考慮した上で、石炭火力発電や電解槽の最適な運転計

画を策定する。

地域新電力はK-EMSから送信されるクレハいわき事業所内の運転計画に対応し

クレハいわき事業所から外部送電される電力、地域の再生可能エネルギー電源、

電力卸売市場からの調達を組合せて地域への電力供給を実施する。