22
加速器の基本概念 IV : 高周波加速の基礎 髙田耕治 KEK [email protected] http://research.kek.jp/people/takata/home.html 総研大加速器科学専攻 2011 年度「加速器概論I」講義 2011 4 14

加速器の基本概念 IV : 高周波加速の基礎 - KEK...加速器基本概念IV 高周波加速の基礎 高電界と放電 キルパトリック(Kilpatrick) の経験則 W

  • Upload
    others

  • View
    8

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

加速器の基本概念IV : 高周波加速の基礎

髙田耕治KEK

[email protected]://research.kek.jp/people/takata/home.html

総研大加速器科学専攻2011年度「加速器概論I」講義

2011年 4月 14日

加速器基本概念 IV

目次

I 粒子加速器のあけぼの

I 高エネルギービームの力学 (1)

I 高エネルギービームの力学 (2)

I 高周波加速の基礎

I これからの高エネルギー加速器

I 参考文献

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎

I 色々な加速空洞

I 高電界と放電

I 超伝導と高周波

I クライストロン

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (1) : DTL (drift tube linac)

I J-PARCに使われているDTLの内部  (動作周波数 324MHz)

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (2) : DTL つづき

I DTL構造の原理図

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (3) : 陽子加速用周波数変調空洞I 粒子速度が絶えず変わる陽子シンクロトロンでは共振周波数を変調 (FM) する必要

I 磁性体コアの µを変える→ f ∼ 1MHz → 2MHz

beam

ceramic pipe

acceleration gap (30 mm)

620 mm

φ245 mm

magnetic core

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (4) : FM空洞の電磁場

I 電磁場シミュレーション:曲線は電場、白丸は磁場

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (5) : FM空洞の実例

I JPARCで使われている空洞(3ユニット連結)

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (6) : RFQ

I JPARCのイオン源から出た低エネルギー陽子ビームを加速する RFQ

I 4極電場で集束とともに加速も行う

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (7) : RFQの vane構造

I 円筒から突きでた 4枚の vaneで集束用の 4極電場をつくる

B

A A'

B'A'

A

B B'

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎色々な加速空洞

色々な加速空洞 (8) : RFQ vane先端の波形

I vane先端は波形に加工されているので、集束電場に加え加速電場も生成される

-

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

高電界と放電

I キルパトリック (Kilpatrick) の経験則

I ファウラー・ノルドハイム (Fowler-Nordheim) による電界放出(暗電流)の理論

I 放電による空洞表面の損傷

I 弱い放電現象 : マルチパクティング (multipacting)

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

キルパトリック (Kilpatrick) の経験則W. D. Kilpatrick, Rev. Sci. Instr. 28 (1957) 824

I 直流から UHF程度までの周波数の電場の放電限界についての非常に良い指針である

I 電極表面処理が進んだ現在では限界は 1.5倍程大きい

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

ファウラー・ノルドハイム (Fowler-Nordheim) の電界放出理論 (1)

R. H. Fowler and L. Nordheim, Proc. Roy. Soc. A 119 (1928) 173

I 放電の第一原因は浮游電子が加速され、原子・分子を電離I 殆どの電子の発生源は金属中の伝導電子のトンネル効果による表面への滲み出し

I 直流電圧のもとでの電界放出電流密度 jF [A/m2] :

jF =1.54× 10−6 × 104.52ϕ

−0.5E2

ϕexp

(−6.53× 109ϕ1.5

E

)I 仕事関数 ϕ [eV]I 完全に平滑な金属表面の電場 E [V/m]I 実際の金属表面では多数の突起があり電流を支配する実効電場は β 倍大きいとする: E = βEmacro

I β を電場増倍係数 (field enhancement factor) というI conditioning (馴らし)で突起がつぶされる→ β は小さくなってゆく

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

ファウラー・ノルドハイム (Fowler-Nordheim) の電界放出理論 (2)

・高周波への拡張J. W. Wang and G. A. Loew, SLAC-PUB-7684 (1997)

I 高周波の場合は各位相での電圧に上の式を適用し 1周期にわたって平均すると jF は次のように修正される:

jF =5.7× 10−12 × 104.52ϕ

−0.5E2.5

ϕ1.75exp

(−6.53× 109ϕ1.5

E

)

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

高電界テスト後の Xバンドリニアック加速管表面I 無酸素銅で作られた加速空洞   (f = 11.4GHz、λ = 2.63 cm)で、電気力線が集中する部分にできた、放電による沢山のくぼみ (crater)

I 直径の大きさは数十ミクロン程度R. E. Kirby, SLAC-PEL, 2000

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎高電界と放電

マルチパクティング:弱い放電現象I 電極間での電子の走行時間が高周波電圧の半周期の整数倍になるとき

I 電極損傷には至らないが、空洞誤動作や雑音の原因

A. J. Hatch and H. B. Williams, Phys. Rev. 112 (1958) 581

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎超伝導と高周波

超伝導表面と高周波I 殆どの超伝導空洞にはニオブが使われる

I 臨界温度 Tc = 9.2K

I 臨界磁場 Hc = 2× 103Oe

I 超伝導表面での電磁場はマクスウェル方程式 + ロンドン方程式で記述

I ロンドンの磁場侵入深さ λL

• ニオブでは約 50 nm

I コヒーレント長 ξ0

• ニオブでは 40 nm

I 磁束の時間変化にともなう起電力により常伝導電子も加速されるが、その電流はオーム損失を発生する

I 空洞 Q値は大きいものの有限である

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎超伝導と高周波

超電導媒質中の電磁場の方程式I マクスウェル方程式 :

∇× E+∂B

∂t= 0, ∇×H− ∂D

∂t= J

I ロンドン方程式 :

Js = −jnse

2

ωme

E, ∇× Js = −nse2

me

µ0H

I 二つを満たす電磁場式 :

∇2 (J,E,H) =(λ−2L + jωσµ0 − ω2ε0µ0

)(J,E,H)

I ロンドンの侵入深さ: λL =√me/nse2µ0

I 常伝導電子によるオーム抵抗 Jn = σEがあるので空洞のQ値は常伝導空洞より数桁大きいが有限である。

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎クライストロン

クライストロン (1)

● fRF & 350MHzでの殆ど唯一の大電力高周波源I 空洞を通過する密度変調電子ビームが電磁波を放出し、自身は減速しながら電磁波を発生する”減速器”;電場の位相が 180度違うだけで、加速器と同じ原理

I パービアンス µp : ビーム電流量を決める重要なパラメータ

I 空間電荷制限電流についての Child-Langumuir 則• µp ∝ I/V 3/2

• cf. M. Reiser: Theory and Design of Charged Particle

Beams, John Wiley & Sons, 1994.

I 効率とパービアンスの関係I cf. R. B. Palmer and R. Miller: SLAC-PUB-4706, September

1988.

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎クライストロン

クライストロン (2)

断面の模式図

加速器基本概念 IV

高周波加速の基礎クライストロン

KEKB用クライストロン周波数 508MHz、連続波出力 1MW