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特集 災害に強いまちを目指して はじめに~東日本大震災後の学校現場~ 平成23年3月11日(金)午後2時46分頃。本校も突 然大きな揺れに襲われました。 幸い本校に大きな被害はありませんでしたが、 東日本大震災で実に多くの子どもたちや人々の命 が奪われたことを知り、大きな悲しみを感じました。 その後、今年度に入り、札幌市内でも、各学校 における危機管理体制の見直しや、防災教育の工 夫が急ピッチで進められてきております。 今回は〈学校 DIG〉を効果的に 活用した本校の 防災の取り組み をご紹介いたし ます。 1.防災に関わる教職員の研修 〈学校DIG研修会〉 本校では、昨年度から、防災に関する教職員の 研修の1つとして、「DIG(ディグ)」に積極的に取り 組んでおります。 DIGとは、 D …Disaster (災 害) I …Imagination (想 像) G …Game (ゲーム) の略です。 「災害図上訓練」とも言われ、机上に地域の地図 や建物の平面図を広げ、災害時に起こり得ること や必要なことなどを想像して、気の付いたことを 全員で図に書き込みながら、その具体的な対策を 考えていくものです。 平成7年1月の阪神・淡路大震災の後、平成9年3 月に三重県津市で誕生したと言われております。 本校では、このDIG研修に取り組むようになり、 教職員の防災に対する意識が大きく変わりました。 〈昨年度のDIG研修〉 平成22年11月30日実施 ~本校で震度7の地震が発生した想定~ 校舎内外の状況や児童の様子など、災害時に想 定される危険について詳しく話し合い、教職員が 取るべき行動を具体的に考えました。 北消防署の皆様にご助言をいただきました。 〈今年度のDIG研修〉 平成23年5月6日実施 ~本校が地域住民の避難場所となる想定~ 地域住民を受け入れる際の対応、日頃から備 えておくべきこと、地域や関係機関との連携の あり方などについて話し合いました。 平成23年11月21日実施 5月の研修内容をさらに深めるため、講師と してインタラクション研究所の安田睦子氏をお 招きし、専門的な立場からご指導いただきました。 連合町内会の 防災プロジェク トの皆様にもご 参加いただき、 避難場所の開設 へ向けて必要な 学校DIGによる防災意識の向上 札幌市立あいの里西小学校 教頭  なかがわら 川原 雅 まさ ひろ 19 F E A T U R E A R T I C L E S

学校DIGによる防災意識の向上 - Sapporo...DIG〉を効果的に 活用した本校の 防災の取り組み をご紹介いたし ます。1.防災に関わる教職員の研修

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Page 1: 学校DIGによる防災意識の向上 - Sapporo...DIG〉を効果的に 活用した本校の 防災の取り組み をご紹介いたし ます。1.防災に関わる教職員の研修

特集 災害に強いまちを目指して

はじめに~東日本大震災後の学校現場~ 平成23年3月11日(金)午後2時46分頃。本校も突然大きな揺れに襲われました。 幸い本校に大きな被害はありませんでしたが、東日本大震災で実に多くの子どもたちや人々の命が奪われたことを知り、大きな悲しみを感じました。 その後、今年度に入り、札幌市内でも、各学校における危機管理体制の見直しや、防災教育の工夫が急ピッチで進められてきております。

 今回は〈学校DIG〉を効果的に活用した本校の防災の取り組みをご紹介いたします。

1.防災に関わる教職員の研修〈学校DIG研修会〉 本校では、昨年度から、防災に関する教職員の研修の1つとして、「DIG(ディグ)」に積極的に取り組んでおります。 DIGとは、

  D …Disaster (災 害)   I …Imagination (想 像)   G …Game (ゲーム) の略です。

 「災害図上訓練」とも言われ、机上に地域の地図や建物の平面図を広げ、災害時に起こり得ることや必要なことなどを想像して、気の付いたことを全員で図に書き込みながら、その具体的な対策を考えていくものです。 平成7年1月の阪神・淡路大震災の後、平成9年3

月に三重県津市で誕生したと言われております。 本校では、このDIG研修に取り組むようになり、教職員の防災に対する意識が大きく変わりました。〈昨年度のDIG研修〉❶ 平成22年11月30日実施~本校で震度7の地震が発生した想定~ 校舎内外の状況や児童の様子など、災害時に想定される危険について詳しく話し合い、教職員が取るべき行動を具体的に考えました。 北消防署の皆様にご助言をいただきました。

〈今年度のDIG研修〉❶平成23年5月6日実施 ~本校が地域住民の避難場所となる想定~   地域住民を受け入れる際の対応、日頃から備えておくべきこと、地域や関係機関との連携のあり方などについて話し合いました。❷平成23年11月21日実施   5月の研修内容をさらに深めるため、講師としてインタラクション研究所の安田睦子氏をお招きし、専門的な立場からご指導いただきました。   連合町内会の防災プロジェクトの皆様にもご参加いただき、避難場所の開設へ向けて必要な

学校DIGによる防災意識の向上札幌市立あいの里西小学校 教頭 中

なかがわら

川原 雅まさ

広ひろ

19 F E A T U R E A R T I C L E S

Page 2: 学校DIGによる防災意識の向上 - Sapporo...DIG〉を効果的に 活用した本校の 防災の取り組み をご紹介いたし ます。1.防災に関わる教職員の研修

F E A T U R E A R T I C L E S

事柄について一緒に考えていただくことができ、大変有意義な研修となりました。

  北区役所の皆様にご支援をいただきました。

2.防災に関わる児童の学習(1)3・4年生によるDIG学習

 本校では、今年度、3・4年 生 児童が合同で、本格的な「防災学習」に取り組みました。 過去の災害や、

東日本大震災について詳しく学習した上で、今後、災害が起きた時、自分たちにもできることを進んで考え、家族や地域にも働きかけようと一生懸命取り組みました。 DIG学習にも挑戦しました。安田先生を講師に、体育館で保護者や地域の皆様と一緒に、大規模な地震が発生した時の身の守り方や、日頃の備えなどについて、真剣な表情で考えました。

(2)あいあいステージでの創作劇の発表 さらに3年生は、防災学習で学んだ内容をもとに、教師と児童が力を合わせて創作劇の台本を完成させ、本校の学習発表会である10月の〈あいあいステージ〉の場で披露しました。 題名は「いのちを守る・まちを守る~札幌マグニチュード7.5」。自分たちの命を守るための知恵に

ついて、ステージ上で力強く表現する姿はどの子も本当に輝いて見えました。 感動的なストー

リーに胸を打たれたのは勿論、劇中に盛り込まれた、防災に関する数々のノウハウやアドバイスに感心させられることしきり。 3年生全員のセンスとパワーが見事に結集したすばらしいステージでした。

おわりに~大人と子どもが共に考える大切さ~ 昨年3月の東日本大震災後、学校現場では、防災体制や危機管理体制の見直しや、防災教育の充実が大きな課題となっております。 重要な危機管理マニュアルについても、最悪の事態を想定して、常によりよいものへの見直しが必要であり、まさに危機管理にゴールはありません。 本校では、今回ご紹介いたしましたように、大人と子どもが共に、防災について考えることを大切にしております。 まだまだ不十分な点も多いですが、このDIGの取り組みは、防災意識を高める上で大変効果があると思います。 また、今年度の取り組みを通して、本校が防災に関して一番強く感じていることは、「地域や行政との連携が何よりも大切である」ということです。 学校、地域、行政、それぞれの防災計画や備えの情報を共有化し、お互いに共通理解した上で、統合された動きや流れを作り上げておくことがとても重要です。 今後も、DIGなどの取り組みをさらに工夫して、大人と子どもが共に防災について考えていけるような環境を、学校として積極的に整えていきたいと考えております。

<お問い合わせ先>札幌市立あいの里西小学校TEL:778-2130 FAX:778-3249

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