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21 石油・天然ガスレビュー JOGMECホームページ掲載の石油・ 天然ガス資源情報「アジア:大水深海 域での探鉱・開発の現況と方向性 (2006/6/21)」「石油・天然ガス産業: 深海探鉱・開発活発化の背景、現状と 今後の展望(2006/5/14)」等で既報の とおり、現在アジアでは、大水深海域 における探鉱・開発とEOR(Enhanced Oil Recovery:増進採油法)による生 産量維持という2つの局面で活動機会 が活発化しつつあると認識されてい る。 そこで本稿では、油・ガス田の老朽 化が激しく生産量が急激に低下しつつ あるインドネシアと、浅海域からの生 産量が頭打ちになる一方、今後大きな 需要の伸びが予期されているマレーシ アの両国について、現在実施されつつ ある大水深海域での探鉱・開発の現況 や探鉱・開発ポテンシャル、そして今 後の展望等について紹介する。 JOGMEC ジャカルタ事務所長 [email protected] 正田 伸次 特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業 動き出したインドネシア、マレーシアの 大水深石油・ガス開発 アナリシス 1. はじめに (1)インドネシア インドネシアでの大水深海域探鉱・ 開発はカリマンタン(ボルネオ)東方 沖が中心であるが、これまで東南アジ ア地域(特に海域)をビジネス・コア 地域としていたユノカルを吸収合併し たシェブロンがメインプレーヤーであ る(表1)。 同社は、インドネシア最大の原油生 産事業者(56万バレル/日、シェア 53%)であるが、今後、マカッサル (Makassar)鉱区ゲヘム(Gehem)等 での開発・生産活動拡大に注力するた め、現在、所有する複数の権益を整理 中である。 その他プレーヤーとしてはアナダル コ、トタール、エニ等が挙げられる。 アナダルコは、シェブロンからマカッ サルの探鉱鉱区をスワップ入手してお り、同社は今が東南アジア大水深海域 での探鉱・開発を進める時機と判断し た。また、トタールやエニも、シェブ ロンが今後ファームアウトするとみら れる旧ユノカル権益を手中にしたいと 考えている模様である。 また、エクソンモービルは、今のと ころマレー半島東方沖浅海域での探 鉱・開発とアチェでの開発に注力しよ うとしているが、将来的にはメキシコ 湾やアンゴラ沖で蓄積した大水深開発 技術をもって、カリマンタン東方沖で の探鉱・開発を必ず活発化させてくる であろう。 (2)マレーシア インドネシアと比べてマレーシア は、プレーヤーが比較的少ない。具体 的には大水深海域で探鉱・開発を行っ ているのはマーフィー、シェル、ニュー フィールド、ヘス(以上オペレーター)、 コノコ、トタールの外国企業6社と、 ペトロナス(オペレーター)である(表2)。 現時点ではマーフィーがキケー (Kikeh)開発で先行しているが、シェ ルとペトロナスも、それぞれグムスッ ト(Gumusut)やクババンガン (Kebabangan)での探鉱・開発を着実 に進めており、この3社がメインプ レーヤーといってよい。 2. 大水深海域探鉱・開発プレーヤー

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21 石油・天然ガスレビュー

 JOGMECホームページ掲載の石油・天然ガス資源情報「アジア:大水深海域での探鉱・開発の現況と方向性

(2006/6/21)」「石油・天然ガス産業:深海探鉱・開発活発化の背景、現状と今後の展望(2006/5/14)」等で既報のとおり、現在アジアでは、大水深海域

における探鉱・開発とEOR(Enhanced Oil Recovery:増進採油法)による生産量維持という2つの局面で活動機会が活発化しつつあると認識されている。 そこで本稿では、油・ガス田の老朽化が激しく生産量が急激に低下しつつ

あるインドネシアと、浅海域からの生産量が頭打ちになる一方、今後大きな需要の伸びが予期されているマレーシアの両国について、現在実施されつつある大水深海域での探鉱・開発の現況や探鉱・開発ポテンシャル、そして今後の展望等について紹介する。

TACT SYSTEM

K Y M C

JOGMECジャカルタ事務所長[email protected] 正田 伸次

特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業

動き出したインドネシア、マレーシアの大水深石油・ガス開発

アナリシス

1. はじめに

(1)インドネシア

 インドネシアでの大水深海域探鉱・開発はカリマンタン(ボルネオ)東方沖が中心であるが、これまで東南アジア地域(特に海域)をビジネス・コア地域としていたユノカルを吸収合併したシェブロンがメインプレーヤーである(表1)。 同社は、インドネシア最大の原油生産事業者(56万バレル/日、シェア53%)であるが、今後、マカッサル

(Makassar)鉱区ゲヘム(Gehem)等での開発・生産活動拡大に注力するため、現在、所有する複数の権益を整理中である。 その他プレーヤーとしてはアナダルコ、トタール、エニ等が挙げられる。

アナダルコは、シェブロンからマカッサルの探鉱鉱区をスワップ入手しており、同社は今が東南アジア大水深海域での探鉱・開発を進める時機と判断した。また、トタールやエニも、シェブロンが今後ファームアウトするとみられる旧ユノカル権益を手中にしたいと考えている模様である。 また、エクソンモービルは、今のところマレー半島東方沖浅海域での探鉱・開発とアチェでの開発に注力しようとしているが、将来的にはメキシコ湾やアンゴラ沖で蓄積した大水深開発技術をもって、カリマンタン東方沖での探鉱・開発を必ず活発化させてくるであろう。

(2)マレーシア

 インドネシアと比べてマレーシアは、プレーヤーが比較的少ない。具体的には大水深海域で探鉱・開発を行っているのはマーフィー、シェル、ニューフィールド、ヘス(以上オペレーター)、コノコ、トタールの外国企業6社と、ペトロナス(オペレーター)である(表2)。 現時点ではマーフィーがキケー

(Kikeh)開発で先行しているが、シェルとペトロナスも、それぞれグムスット ( G u m u s u t ) や ク バ バ ン ガ ン

(Kebabangan)での探鉱・開発を着実に進めており、この3社がメインプレーヤーといってよい。

2. 大水深海域探鉱・開発プレーヤー

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222006.9 Vol.40 No.5

TACT SYSTEM

K Y M C

アナリシス

表1 インドネシアカリマンタン東方沖鉱区別オペレーター/シェアホルダー

Key Indonesian East Kalimantan Offshore Blocks

Block (Operator) Water Depth(m)

Area(sq. km)

OperatorShare (%) Other Holders Discoveries (year)

Ambalat (Eni) <200 NA 55 Chevron (33.75%)*Bukat (Eni) <200 6,250 41.25 Chevron (33.75%)* AsterBulungan (Eni) <200 NA 100 NADonggala (Santos) 1,800-2,400 3,821 65.45 Chevron (19.55%), Pertamina (15%) Hui AmanE. Ambalat (Chevron) <200 NAEast Kalimantan (Chevron) <200 6,825 92.5 Inpex (7.5%) Merah Besar (1997)Ganal (Chevron) 250-2,000 5,050 80 Eni (20%) Gehem (2003) Gula (2001)

Gendalo/Gandang (2001)Makassar Strait (Chevron) 250-1,000+ 5,880 50 Exxon (50%) West Seno (1998)

Mahakam (Total) <200 16,330 50 Inpex (50%)Sebuku (Pearl) <200 8,773 50 Fuel-X (50%) Muara Bakau (Eni) 75-1,365 NA 50 Chevron (50%)*Pasangkayu (Marathon) 100-2,000 4,708 70 Talisman (30%)Papalang (Zudavi) 1,650-2,450 4,200 31 Chevron (24%)*, Eni (25%), Santos (20%)Popodi (Zodan) 1,650-2,450 5,420 31 Chevron (24%)*, Eni (25%), Santos (20%)Rapak (Chevron) 250-2,000 2,937 80 Eni (20%) Ranggas (2001)Sadewa (Chevron) <200Saliki (Total) <200 404 50 Inpex (50%)Sunumana (Exxon) <200 5,340West Pasir (Chevron) <200 25.635 50 Inpex (50%)

Source: Company and government reports; Energy Intelligence Research estimates. Producing field(s) in bold.* Chevron's interests are pending being swapped with Anadarko for its shallow-water Northwest Madura Block off Java.

出所:Energy Intelligent Research(以下 E.I.R.)

Key Malaysian Deepwater Blocks

Block (Operator) Water Depth(m)

Area(sq. km)

OperatorShare (%)

PetronasShare (%) Other Shares Discoveries PSC Signed

(month/year)North Sabah

Block K (Murphy)* 900-2,800 4,111 80 20 Kikeh, Kakap Jan-06Block G (Shell) 700-1,800 5,300** 35 30 Conoco (35%) Pisandan-1, Nov-00

Ubah-2, Malikai-1Block J (Shell) 200-1,000 3,500** 40 20 Conoco (40%) Gumusut Nov-00Block J (Petronas) 200-1,000 3,500** 60 Conoco (40%) KebabanganBlock H (Murphy) 200-1,000+ 8,858 80 20 Mar-01Block P (Murphy) 900-2,800 4,246 60 40 Jan-06Disputed w/ Brunei

Block L (Murphy) 800-2,600 6,070 60 40 Jan-03Block M (Murphy) 800-2,600 6,070 70 30 Jan-03Sarawak

Block E (Shell) 200-1,000+ 4,500** 40 60Block 2C (Newfield) 200-2,000 4,400 60 40 May-04Block F (Hess) 200-1,200 9,720 42.5 15 Total (42.5%) Jul-00E. & SE. Sabah

Block SB305 (Petronas) 0-250 100Block ND6 (Shell) 200-4,000 8,700 50 50 Feb-05Block ND7 (Shell) 200-4,000 17,000 50 50 Feb-05

* Extension of Block K seven-year lease with Block P added. ** Estimated.出所:E.I.R.

表2 マレーシア大水深海域鉱区

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23 石油・天然ガスレビュー

TACT SYSTEM

K Y M C

特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業 動き出したインドネシア、マレーシアの大水深石油・ガス開発

(1)インドネシア

 インドネシアの原油生産量は、2006年7月時点で103万バレル/日(石油ガス上流監督機関BPミガス公表値)であるが、このほとんどは陸上と浅海域からの生産である。 しかし、インドネシアには確認済みの約60の堆

たい

積せき

盆地のうち3分の1以上が未探鉱であると言われており、未確認埋蔵量についても多大なポテンシャルが残されているとみられる(図1)。 2000年に実施された米国地質調査所

(U.S.G.S.)の評価によると、インドネシアの未発見埋蔵量のうち、原油に関しては70%(72億バレル)が海洋部にあり、またそのうちの60%(46億バレル)がカリマンタン東方沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられている(表3)。 また、ガスに関しては未発見埋蔵量の60%(63兆立方フィート)が海洋にあり、またそのうちの40%(26兆立方フィート)がカリマンタン東方沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられている(表4)。 インドネシアにおける大水深海域で現在生産中のものは、唯一ウェストセノ(West Seno:生産レート4万5,000バレル/日、2006年推定)であるが、既発見未開発フィールドとしては、北スマトラのジャンブアイェウタラ

(Jambu Aye Utara:ガス)、東カリマンタンのランガス(Ranggas)、シシ

(Sisi)、ヌビ(Nubi)、パリ(Pari)、バンカ(Bangka)、アトン(Aton)(以上原油)、ゲヘム、グラ(Gula)、マハ

(Maha)、ガンダン(Gandang)、ガダ(Gada)、サデワ(Sadewa)、パパダヤ ン ( P a p a d a y a n )、 ハ リ ム ン

( H a l i m u n )( 以 上 ガ ス ) が あ る (表5、6)。 ウェストセノは、近接するメラブサール(Merah Besar)とあわせて開

発 さ れ 、 生 産 物 は マ カ ッ サ ル(Makassar)ブロックに設置されるFPU(Floating Production Unit:浮遊式生産システム)から陸上のサンタンターミナルに接続されて、国内製油所に輸送されている。また第2フェーズ で は F P U の 南 側 に 2 基 の T L P

(Tension-Leg Platform)が設置され、2009年から生産開始される計画となっている。 その他、カリマンタン東方沖の大水深海域での開発では、ゲヘム、グラ、ゲンダロ(Gendalo)/ガンダンといった超大水深海域から、ガスとコンデンセートの生産が行われるようになっていく見込みである。 なお、開発システムはクテイ堆積盆地やマカッサル海域においてはTLPやSparといったプラットフォームと、FPSO(Floating Process, Storage, & Offloading System)のコンビネーションが適しているとされている。

(2)マレーシア

 マレーシアの生産量は現在72万バレル/日で、そのうち約半分はマレー半島東方沖浅海域から、残りがサラワク沖およびサバ沖の浅海域からの生産である。 マレーシアでの石油・ガス開発地域

は大きく分けて3つあり、マレー半島東方沖の南シナ海浅海域と、ガス指向でビンツルLNG施設に輸送が可能なサラワク沖、そして、より石油指向であるサバ沖である。 マレー半島東方沖は1980年代から開発が進められている海域で、国内やシンガポールに向けて供給が行われている。一方、サラワク沖は現在最も大規模なLNG施設をもつといわれるビンツルを有するマレーシアLNGトレードの中枢で、10万バレル/日の原油生産を行っている地域でもある。 そしてサバ沖は、マレーシアでの大水深海域での探鉱・開発の火付け役ともなったサバ沖K鉱区キケー油田

(1999年発見。現在開発準備中)や、今後開発に移行される計画となっているカカップ(Kakap)やピサンダン

(Pisandan)、ウバ(Ubah)、マリカイ(Malikai)(以上マーフィー)、グムスット(シェル)、クババンガン(ペトロナス)などがある(表7)。 マレーシアにおける未発見埋蔵量については、原油に関しては50%(43億バレル)が海洋部にあって、またそのうち20%(8億バレル)がサバ沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積している。浅海域のデルタ鉱床(13億バレル)も含めれば、サバ沖の未発見埋蔵

3. 探鉱・開発ポテンシャル

図1 インドネシアの探鉱状況

出所:Pertamina

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量は21億バレルとなり、全マレーシアの原油未発見埋蔵量の50%を占めると見られている(表8)。 一方、ガスについては未発見埋蔵量の50%(50兆立方フィート)は海洋にあるが、サバ沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられるガスは、そのうちの7%(4兆立方フィート)にすぎず、サバ沖大水深海域は石油指向といってよい(表9)。 このうち大水深海域の探鉱・開発で今、最も脚光を浴びているのがサバ沖である(表10)。 キケーは水深4,400フィート(約1,340メートル)のところに位置し、油層の有効層厚は500フィート(約153メートル)、期待される埋蔵量は4〜6億バレルとされている。 開発システムは2004年に公表されており、SparとFPSOの組み合わせで、キケーに隣接するフィールドと併せて開発される計画となっている。生産開始は2007年後半とされており12万バレル/日からスタートし5年間かけて15万バレル/日となる計画である。 マーフィーは、2006年1月キケーの北東110キロメートルに位置するP鉱区の操業権も取得し、本大水深海域一帯を今後探鉱・開発していく計画であるが、P鉱区のロフプロスペクトでの試掘井はドライであった模様である。 シェルは2006年1月、本海域で4番目の成功を見ており、今後マーフィー以上に本海域での主導的役割を演じていく可能性をもっている(G鉱区:マリカイ[2004年]、ウバ[2005年]、ピサンダン[2006年]、J鉱区:グムスット[2004年])。またサバ東方沖ならびにサバ南東沖においても水深200〜4,000メートルの海域で探鉱を進めようとしている。 サラワク・エリアでの大水深海域では、ニューフィールドがオペレーターとなってペトロナスと探鉱作業を行っている2C鉱区がある。水深は200〜

242006.9 Vol.40 No.5

TACT SYSTEM

K Y M C

アナリシス

Indonesian Oil Resources By Geologic Province

Province BasinUndiscovered Oil* (mil. bbl) Water

Depth (m)Mean P95 P5Offshore Turbidities Kutei 4,560 1,171 9,144 250-2,800Deltaics Kutei 1,593 501 3,022 0-250Sunda-Asri Northwest Java 481 175 880 3-400Ardjuna Northwest Java 170 66 320 0-400East Natuna Greater Sarawak 192 41 455 150-250Bampo-Cenozoic North Sumatra 100 39 192 0-600Mergui North Sumatra 71 4 171 0-2,000South Lacustrine Malay 19 5 38 40-100 Total 7,186 2,002 14,222Onshore

Brown Shales Central Sumatra 983 409 1,654Lahat/Talang Akar South Sumatra 708 284 1,308Deltaics Kutei 682 215 1,295Fold and Thrust Belt Kutei 432 52 1,046Ardjuna Northwest Java 114 44 213Bampo-Cenozoic North Sumatra 100 39 192Mergui North Sumatra 8 0 19 Total 3,027 1,043 5,727Total Indonesia 10,213 3,045 19,949

表3 インドネシアの地質区分別原油資源量

* Including natural gas liquids. Source:US Geological Survey,World Assessment 2000.出所:E.I.R.

Indonesian Gas Resources By Geologic Basin

Province BasinUndiscovered Gas (Bcf) Water

Depth (m)Mean P95 P5Offshore

Turbidities Kutei 25,687 5,829 53,979 250-2,800

Deltaics Kutei 25,030 8,390 46,246 0-250

Bampo-Cenozoic North Sumatra 4,149 1,745 7,266 0-600

Ardjuna Northwest Java 2,710 1,140 4,716 0-400

Mergui North Sumatra 2,432 84 5,217 0-2,000

East Natuna Greater Sarawak 1,963 494 4,141 150-250

Sunda-Asri Northwest Java 874 233 1,835 3-400

South Lacustrine Malay 209 60 415 40-100

Total 63,054 17,975 123,815Onshore

Lahat/Talang Akar South Sumatra 18,250 6,951 31,999

Deltaics Kutei 10,727 3,596 19,820

Bampo-Cenozoic North Sumatra 4,149 1,745 7,266

Brown Shales Central Sumatra 4,078 1,746 7,270

Fold and Thrust Belt Kutei 3,313 454 7,851

Ardjuna Northwest Java 2,632 1,111 4,566

Mergui North Sumatra 270 10 580

Total 43,419 15,613 79,352Total Indonesia 106,473 33,588 203,167In gas fields 89,342 29,002 167,877

In oil fields 17,131 4,586 35,290

インドネシアの地質区分別ガス資源量表4

出所:E.I.R.

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25 石油・天然ガスレビュー

TACT SYSTEM

K Y M C

特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業 動き出したインドネシア、マレーシアの大水深石油・ガス開発

Eastern Indonesian Offshore Oil and Gas Fields* by Geographic Area

Shallow / DeepwaterOil / Gas Fields East Kalimantan Madura Island East Java, Papua West Papua, Timor Sea

Shallow Water

Oil Fields Attaka, Sepinggan N. Camar, S. Camar, Poleng JS53AStupa, Jumelal Oyong, Jeurk, KE-2, KE-6,Kama KE-30, KE-39, Bukit Tua

SidayuGas Fields Tunu, Peciko, Stupa BD, Maleo, Payang, Anggur Pagerungun, W. Kangean Vorwata, Wiriagar Deep

Sirasun, Batur, Terang Roabiba, Wos, UbadariMDA Ofaweri, Abadi

Deepwater

Oil Fields W. Seno, RanggasSisi, Nubi, PariBangka, Aton

Gas Fields Gehem, Gula, MahaGandang, GadaSadewa, PapadayanHalimun

表6 インドネシアの油ガス田(東部海域)

出所:E.I.R. * Fields in italics are prospects. Source: Pertamina and oil company sources.

Potential Deepwater Oil Production ProfilesField Operator Block 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

Indonesia 16 25 36 45 60 75 105 120 West Seno Chevron Makassar Str. 16 25 36 45 60 60 75 90 Ranggas Chevron Rapak 15 30 35 Gehem Chevron Ganal 10Malaysia 0 0 0 0 15 85 130 155 Kikeh Murphy Block K 15 85 120 120 Kebabangan Petronas Block G 10 20 Kakap Murphy Block K 10 Gumusut Shell Block G 5

単位:1,000BPD

表7 大水深海域原油生産予測

Source: Company data and Energy Intelligence Research projections.出所:E.I.R.

Western Indonesian Offshore Oil and Gas Fields* by Geographic Area

Shallow / DeepwaterOil / Gas Fields North Sumatra Natuna Sea Southeast Sumatra Northwest and

Central JavaShallow Water

Oil Fields R, H-K-L-M, Langsa Belida, Belanak, Kakap, Widuri, Cinta, Rama, Bima Ardjuna, Arimbi,Anoa, Terubuk, Udang, Intan, Indri, Aida, Sundari NW CornerIkan Pari, Forei Selatan, Nora, Kitty, AA, AV,

Krishna, AVS, NWJ APNBanuwati, Asti

Gas Fields J1, J2, A, S, NSO Tembang, N. Belut, W. Belut, KepodangS. Belut, D-Alpha

Deepwater

Gas Fields Jambu Aye Utara

表5 インドネシアの油ガス田(西部海域)

出所:E.I.R. * Fields in italics are prospects. Source: Pertamina and oil company sources.

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262006.9 Vol.40 No.5

TACT SYSTEM

K Y M C

アナリシス

2,000メートル。これまでにペトロナスが取得している三次元(3D)地震探鉱データをもとに、今後掘削深度6,000メートルの坑

こう

井せい

を、最低2坑掘削する計画である。 また、ヘスがオペレーターとなり、トタールとペトロナスで探鉱作業を行っているF鉱区は、水深200〜1,200メートル。既存の2D地震探鉱データの5,000キロメートル分について再解釈した後、3D地震探鉱を実施している。既にいくつかの有望なプロスペクトが抽出されおり、今後探鉱作業が進められていく見込みである。 開発システムであるが、サバ沖やサラワク沖の開発を行ううえで最適な生産システムと考えられているのはFPSOで、またサバ南東沖ではSparやTLPが最も適していると考えられている(図2)。

 なお、ペトロナスはマレーシアを東南アジア海域での大水深開発のハブとすべく、ペトロナスの子会社Malaysia International Shipping Corporation

(MISC)傘下にあるMalaysia Marine and Heavy Engineering(MMHE)を前面に押し出して、大水深用施設の建設や増強修理等をさせていく計画である。特に、タンカーからFPSOへの改造 に つ い て 注 力 し て い く 計 画 で 、MISCは現在4件のFPSO建造プロジェクトを進めており、今後2〜3年のうちに10〜15件のFPSOプロジェクトを抱えるものと予想されている。 このように、石油・ガスの探鉱・開発自体についてはもちろんのこと、それを取り巻くプラットフォーム建造や関連サービスに対しても官民あげて力を入れており、本地域における大水深海域の探鉱・開発・生産の全ての局面でハブ的な環境を確立しようとする戦略が明確に見えており、注目に値する。

Malaysian Oil Resources By Geologic Province

Province BasinUndiscovered Oil* (mil. bbl) Water

Depth (m)Mean P95 P5

Offshore

Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 1,255 382 2,450 0-150

South Malay Lacustrine Malay Basin 1,158 321 2,356 40-100

Brunei-Sabah Turbidites Baram Delta/Brunei-Sabah 813 237 1,572 75-2,900

Balingian Greater Sarawak 615 150 1,296 0-200

Central Luconia Greater Sarawak 256 84 500 50-200

South Malay Coaly Malay Basin 163 49 309 40-100

Bampo-Cenozoic North Sumatra 13 5 25 3-400

Total 4,273 1,228 8,508

Onshore

Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 66 20 129

Balingian Greater Sarawak 30 7 65

Total 66 20 129

Total Malaysia 4,339 1,248 8,637

表8 マレーシア地質区分別原油資源量

* Including natural gas liquids. Source: US Geological Survey, World Assessment 2000.出所:E.I.R.

Malaysian Gas Resources By Province

Province BasinUndiscovered Gas (Bcf) Water

Depth (m)Mean P95 P5

Offshore

South Malay Lacustrine Malay Basin 17,986 5,253 35,137 40-100

Central Luconia Greater Sarawak 15,067 5,273 27,624 50-200

Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 6,830 1,978 13,744 0-150

Brunei-Sabah Turbidites Baram Delta/Brunei-Sabah 3,625 938 7,392 75-2,900

South Malay Coaly Malay Basin 3,542 983 6,989 40-100

Balingian Greater Sarawak 2,138 568 4,460 0-200

Bampo-Cenozoic North Sumatra 547 230 958 3-400

Total 49,735 15,223 96,304

Onshore

Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 359 104 723

Balingian Greater Sarawak 79 20 170

Total 438 124 893

Total Malaysia 50,173 15,347 97,197

In gas fields 40,147 12,623 76,362

In oil fields 10,027 2,723 20,834

表9 マレーシア地質区分別ガス埋蔵量

Source: US Geological Survey, World Assessment 2000.出所:E.I.R.

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特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業 動き出したインドネシア、マレーシアの大水深石油・ガス開発

Malaysian Oil and Gas Fields* by Geographic Area

Shallow / DeepwaterOil / Gas Fields Peninsular Malaysia Sarawak Sabah Malaysia-Thailand

Joint Development AreaShallow Water

Oil Fields Tapis, Seligi, Bekok, Pulai, Dulang, W. Patricia, Temana, Bayan, Barton, St. Joseph, Erb West, Bunga Seroja, Cai Nuoc,Guntong Bintang, Irong Barat, Siwa, W. Lutong, Bokor, Betty, South Furious, Tembungo Bunga OrkidAngsi, Malong, Sotong, Tukau, Baronia, Fairley-Baram, SE Collins, Kimbalu, SW EmeraldLarut, Tinggi, Jerneh Lawang, Block A (21), Block C (2,13), Samarang Lokan, Sumandak, Piatu, Abu, Bertam Rhu Block D (18,21), Block E (1), Tigi Pagan

Block F (11), Bentara, BalalPatricia, Apih, North Acis

Gas Fields Besar, Belumut, Duyong Block A (3), Block B (11), Kinarut, Titik Terang, Nosong, Cakerwala (MTJDA portion)Resak, Angsi, Cakerwala, Block C (24), Block E (4,6,18) Glayzer Jengka, Muda, SenjaBergrading Deep Noring, Block F (6,9,11,12,14,23,27,28),Inas, Bujang Block K (4,5), Block F (2,38),

Block B (12), Kumang, Tenggiri Marine

Deepwater

Oil Fields Kikeh, Kakap, Gumusut,Malikai, Senangin, Ubah,Kebabangan, Pisandan,Kamunsu

Gas Fields Serai, Jintan, Helang, KebabanganBlock M (1,3,4,5) Block G (7)Saderi, Bijan, M3 South, Cili Padi

* Fields in italics are prospects. Source: Petronas and other oil company sources.出所:E.I.R.

表10 マレーシア海域/水深別油ガス田

27 石油・天然ガスレビュー

出所:the U.S. Minerals Management Services(米国内務省鉱物管理局)

図2 大水深生産システム概念図

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282006.9 Vol.40 No.5

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アナリシス

 インドネシアとマレーシアでの大水深海域開発には、現時点で次のようなプラスとマイナスの要因がある。

プラス要因:

・ 原油価格の高騰が続いており、油価・ガス価が高値で安定していること。

・ 探鉱・開発にかかわる政府側のインセンティブが強い状況にあり、政府は炭化水素資源の探鉱・開発に対し強い奨励を行っていること。

・ 他のエリアと比較して、競合するプレーヤーが比較的少ないこと。

・ 既存インフラが利用できる地域があること(カリマンタン東のボンタン地域やサラワクのビンツル地域)。

・ 消費地あるいは潜在的マーケットに比較的近いこと。

・ 地質的ポテンシャルが高いと見込まれている割には探鉱自体が進んでおらず、相対的に成功確率の高いエリアが多数残されていること。

・ スリムホール掘削等、掘削コストの低減、リグコストの低減が研究されつつあること。

・ 開発・生産関連施設の製作所、造船所がすぐ近くにあること(プロジェクトコントロールがしやすく、またデリバリー期間も短くてすむ)。

マイナス要因:

・ 昨今の資機材コスト上昇のため、プロジェクト・コストがインフレーション傾向にあること(大規模プロジェクトでは特に影響を受けやすい)。

・ プロジェクトを進めるにあたり、地方政府の力が台頭してきており、中央政府のみならず地方との関係も考慮しなくてはならなくなってきたこと。

・ 探鉱・開発が進んでいないということは、当局側の経験も少なく、スムー

ズな手続き等が難しくなる可能性があること。

・ 環境保全のためのレギュレーションが厳しくなりつつあること。

・ 国境問題が未解決な地域での探鉱・開発となる場合があること(インドネシア−マレーシア間のマカッサル海峡北部マレーシアサバとの境界問題。またマレーシア−ブルネイ間、マレーシア−中国間の南シナ海境界問題。また将来的にユニタイゼーションを行う場合のマーフィー−シェル等、オペレーター間の問題もある。

・ 比較的未探鉱の地域であるため、参考となる地質データが少なく、地質モデルの精度が高くないため探鉱リスクが高いこと。また開発・生産コストが高いこと。

・ インフラ整備状況が特定地域を除けばメキシコ湾等と比べてやはり低いこと。

・ 一時的に強い季節風が吹いたり、強い潮流のある海域があることから、浮遊式生産システムや海底生産システムに少なからず影響があること

(特にサバ沖、クテイ堆積盆)。・ ガスを扱える浮遊式生産システムが

必要となってくる場合もあること。・ ガス供給が国内へ転換されつつある

など、ガス情勢が見えないこと(特にインドネシア)。

・ テロリズム、地震等のリスクも相対的に高いこと(特にインドネシア)。

 このように、インドネシアとマレーシアでの大水深海域での探鉱・開発は、自国ならびに周辺国への原油供給を引き上げることのできる大きなポテンシャルがある一方で、政治的リスク、地質的リスク、地政学的なリスク等、様々なリスクを抱えていることもまた事実である。

 しかし、昨今の石油ガス政策にかかわる要人の動きや発言を見る限り、この両国における石油天然ガス政策は、ここ2〜3年で大きく進展していく可能性がある。 インドネシアでは、既存鉱区からの生産だけで新規油田からの産出増がなければ、通年90万9,240バレル/日にとどまるとの予測もある(BPミガス)。一方、開発計画が承認されている新規12鉱区だけでは2万4,250バレル/日の増産ができるにとどまるため、さらなる大規模油田の新規探鉱・開発を促進していきたいという背景もある。 そうしたなか、プルノモ・エネルギー鉱物資源相はこの7月、同省のトップ人事を刷新して、石油・天然ガス政策に梃

てこ

入れしていく布陣に整えた。たとえば、新石油ガス総局長には大臣の腹心であった事務次官ルルク・スミアルソ氏を就任させ、また大臣直属の経済・投資担当専門官には石油ガス局探鉱生産課長のノフィアン・タイブ氏を就任させた。 大水深海域での開発にかかわる具体的政策については、今のところ明らかにされてはいないものの、今後、早急に生産量を増加させていくというインセンティブは強く感じられる体制が整えられた。 また、マレーシアでも、ペトロナスのモハマド・ハッサン・マリカン社長兼最高経営責任者(CEO)が、マレー半島部をはじめとして南シナ海やサバ、サラワク沖で新たに油田やガス田を開発し、将来的に生産量を維持していきたいという考えを示した。同社アブドゥル・カリム副社長も、深海での油田・天然ガス田開発に力を入れる方針から、少なくとも2010年までは深海油井の掘削に力を入れ、2006年は東マレーシアで深海油・ガス井10カ所、2007年には10カ所、2008年には11カ所

4. 今後の展望

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29 石油・天然ガスレビュー

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特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業 動き出したインドネシア、マレーシアの大水深石油・ガス開発

の深海油井掘削を予定していることなどを表明している。 このようななか、ペトロナスは生産分与協定に基づいて米マーフィー・オイルと共同開発で、2007年第4四半期にもサバ州沖K鉱区にあるキケー油田で日量12万バレルで生産を開始し、また同州沖J鉱区内のグムスット油田でもシェルとコノコ・フィリップスの2社と共同開発で、2011年までに日量15

万バレルの水準で生産を始めるという計画を着実に進めつつある。

 大水深海域での探鉱・開発には長い年月が必要である。しかしながら、本海域では、1990年代後半からの継続的な探鉱が、2000年前後からの油・ガス田の相次ぐ発見につながり、今後2〜3年のうちにマレーシアではサバ沖、またインドネシアではクテイ堆積盆地

を中心として、大水深海域での探鉱・開発が大きく進展していくことは間違いないであろう。

 今後、現在メインプレーヤーとして動いている各社の動向を中心として、本地域における大水深海域での探鉱・開発について、目が離せない状況となってきた。

執筆者紹介

正田 伸次(しょうだ しんじ)早稲田大学大学院理工学研究科修了。石油公団入団後、米国およびロシアでの駐在を含め、技術部、技術センター等勤務を経て、現在ジャカルタ事務所所長。