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Bluetooth RF測定を今すぐ実現 Application Note 1333

Bluetooth RF 測定を今すぐ実現 - Keysightliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5968-7746J.pdf4 1. Bluetoothの基本概念 Bluetoothの最も基本的な形態は、無線通信のためのグローバルな仕様として定義

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Bluetooth RF測定を今すぐ実現Application Note 1333

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はじめに Bluetoothとは、無線パーソナル・エリア・ネットワークのためのオープン仕様です。近距離の情報機器間で、無線接続による音声やデータの交換を行います。ケーブルをつなぐ手間が省け、必要なときにいつでも機器間のネットワークを実現できます。

Bluetooth(青い歯)という名前が10世紀のデンマークの王(ハラール青歯王)から取られていると聞けば、バイキングによる征服と略奪を連想されるかもしれません。しかし、ハラール大王はその治世にデンマークとノルウェイとの統一を成し遂げています。Bluetoothもまた、さまざまなテクノロジを統合しているのです。

Bluetoothを使えば、機器間のシームレスな相互接続が可能です。コンピュータと携帯情報端末(PDA)との間で、ファイルの共有やデータベースの同期などの作業をリモートで行えます。ノートパソコンから近くにある携帯電話に接続して、電子メールをやりとりすることもできます。また、携帯電話のハンズフリー操作を容易にする無線ヘッドセットが実現でき、普及が見込まれます。Bluetoothテクノロジを利用したアプリケーションの研究開発は、すでに世界中で行われています。無線接続により利便性が高まる情報機器分野の成長を考えれば、Bluetoothの可能性は無限であるといえます。

本アプリケーション・ノートでは、現時点でのBluetooth RFデザインのテストと検証のための送信機/受信機測定について説明します。Bluetoothテクノロジはまだ開発の初期段階にあり、成熟したテクノロジの場合とはテスト方法も異なります。ボタン1つの使いやすい測定機能が用意されているわけではなく、手動操作やカスタム・ソフトウェア制御が必要になることもあります。AgilentのBluetooth測定ソリューションの一覧は、付録Aにあります。本アプリケーション・ノートでは、RF測定に関する基本的な知識を前提としています。基本的なRF測定について知るには、本アプリケーション・ノート末尾の「付録B:推奨文献」を参照してください。

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目次 はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21. Bluetoothの基本概念 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4

1.1 Bluetoothn無線ユニット ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥51.2 Bluetoothのリンク制御ユニットとリンク管理 ‥‥‥‥‥7

2. 送信機測定 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥92.1 パワーテスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11

2.1.1 出力パワー ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥112.1.2 パワー密度 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥132.1.3 パワー制御 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13

2.2 送信出力スペクトル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥142.3 変調テスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15

2.3.1 変調特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥152.3.2 変調品質 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥162.3.3 初期搬送波周波数の許容値 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥162.3.4 搬送波周波数ドリフト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18

2.4 タイミン・グテスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥192.4.1 バースト・プロファイル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥192.4.2 スペクトログラム測定 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20

3. トランシーバ測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥213.1 スプリアス放射テスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21

4. 受信機測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥224.1 ビット・エラー・レート(BER)テスト ‥‥‥‥‥‥‥‥22

4.1.1 感度──シングル・スロット・パケット ‥‥‥‥224.1.2 感度──マルチスロット・パケット ‥‥‥‥‥‥224.1.3 搬送波/干渉(C/I)性能‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥234.1.4 ブロッキング性能 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥234.1.5 相互変調性能 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥234.1.6 最大入力レベル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥234.1.7 BERテスト・セットアップ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥244.1.8 受信機BERテストのための信号生成 ‥‥‥‥‥‥25

4.2 補助的な受信機テスト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥265. 電源測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥276. 付録A:AgilentのBluetooth用ソリューション ‥‥‥‥‥‥287. 付録B:推奨文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥298. 用語集‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥309. 記号と頭文字‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3110.参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3211.関連文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32

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1.Bluetoothの基本概念 Bluetoothの最も基本的な形態は、無線通信のためのグローバルな仕様として定義

されています。ケーブルの代わりとなるものを意図しているので、低コスト、わかりやすい操作、信頼性が高いことが求められます。これらの要件を満たすには多くの障害がありますが、Bluetoothはさまざまな方法を駆使してそれに対処しています。無線ユニットには周波数ホッピング・スペクトラム拡散(FHSS)が用いられており、低消費電力、低コストはもちろん、工業、科学、医療(ISM)用の無線帯域を使用するため、無秩序で干渉の多いRF環境でも誤りなく動作する信頼性が重視された設計になっています。

Bluetoothシステムの構成要素は、無線ユニット、ベースバンド・リンク制御ユニット、リンク管理ソフトウェアの3つです。このほかに、相互運用性を司る上位レベルのソフトウェア・ユーティリティが存在します。図1はこのタイプの周波数ホッピング・システムのブロック図であり、ベースバンド・コントローラ・セクションとRF送信機/受信機セクションが示されています。

入出力�

FM変調器�

ローパス・フィルタ�

DAC

バースト�変調器�

送信機�

スイッチ・�ドライバ�

RF�フィルタ�

DSP� ベースバンド・プロセッサ�

(バースト・モード・コントロール)�

フラッシュ�ROM

16ビット・�マイクロ�プロセッサ�

RAM

入出力�

クロック�

コントロール/プロセッサ�

ホストへ�

ベースバンド� RF��

FM復調器��

しきい値�検出器/�クロック・�リカバリ�

IFフィルタ�

受信機��

周波数ホッピング・コントロール�

図1. Bluetoothシステムのブロック図

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1.1Bluetooth無線ユニット Bluetooth無線ユニットは、図1のブロック図で送信機および受信機として示されて

いるセクションです。送信機は、ベースバンド情報を、周波数変調された搬送波にアップコンバートする役割を果たします。周波数ホッピングとバースト化はこのレベルで行われます。受信機はその逆に、RF信号のダウンコンバートと復調を行います。表1にBluetoothの主なRF特性を示します。

搬送波周波数

変 調

ホッピング

送信パワー

動作範囲

最大データ・スループット

2400~2483.5 MHz(ISM無線帯域)例外:2445~2475 MHz(スペイン)2446.5~2483.5 MHz(フランス)2471~2497 MHz(日本)

0.5 BTガウシアン・フィルタ2FSK 1Mシンボル/s変調指数:0.28~0.35(公称値0.32)

1600 ホップ/s(通常動作)1

1 MHzチャネル間隔5種類の異なるホッピング・シーケンスがシステムに存在:1)ページ・ホッピング・シーケンス2)ページ応答シーケンス3)問合せシーケンス4)問合せ応答シーケンス5)チャネル・ホッピング・シーケンス

最初の4つは制限付きホッピング・シーケンスで、接続設定時に使用。通常のチャネル・ホッピング・シーケンスは、マスタ・クロック値とデバイス・アドレスに基づく疑似ランダム・シーケンス。

パワー・クラス1:1 mW(0 dBm)~100 mW(+20 dBm)

パワー・クラス2:0.25 mW(-6 dBm)~2.5 mW(+4 dBm)

パワー・クラス3:1 mW(0 dBm)

10 cm~10 m(パワー・クラス1では100 mまで)

非同期チャネルは、最大721 kbps(戻り方向57.6 kb/sを許容)の非対称リンクまたは、432.6 kbpsの対称リンクをサポートします。

f=2402+k MHz, k=0,...,78

f=2449+k MHz, k=0,...,22f=2454+k MHz, k=0,...,22f=2473+k MHz, k=0,...,22

ディジタルFM方式許容ピーク周波数偏移175 kHz

チャネル・ホッピング・シーケンスは、各周波数が定期的に、ほぼ同じ確率で現れるように設計されている。周期は23時間18分。

クラス1パワー制御:+4~+20 dBm(必須)-30~0 dBm(オプション)

クラス2パワー制御:-30~0 dBm(オプション)

クラス3パワー制御:-30~0 dBm(オプション)

データ・スループットが1Mシンボル/sのレートよりも低いのは、プロトコル固有のオーバヘッドのため。

1. ホップ速度はパケット長に応じて変化します。2. スペイン、フランス、日本では23チャネル。

表1. Bluetoothの主なRF特性(1999年10月現在)

Bluetoothチャネルは、それぞれ1MHzの帯域を持ちます。周波数ホッピングは79チャネルにわたって行われます2。図2は、各地域ごとの周波数ホッピング・チャネルを示しています。

特 性 仕 様 注

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Bluetoothシステムの変調は、2値周波数シフト・キーイング(2FSK)です。このディジタル変調フォーマットでは、変調された搬送波が“1”と“0”を表す2つの周波数の間でシフトします。このため、2FSKでのシンボル1個あたりのデータ・ビット数は1です。図3は2FSK変調の例であり、2つの離散周波数を表しています。GSMなど他の周波数変調方式と異なり、この種の変調方式では振幅と位相は大きな意味を持ちません。

2FSK�振幅対時間�

図2. Bluetoothの周波数チャネル

図3. 2FSK変調

日本

スペイン

ヨーロッパ(スペインとフランスを除く)

フランス

米国

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1.2Bluetoothのリンク制御ユニットとリンク管理

Bluetoothリンク制御ユニットはリンク・コントローラとも呼ばれ、デバイスのステートを決定するとともに、ネットワーク接続の確立、パワー効率、エラー訂正、暗号化の役割があります。

リンク管理ソフトウェアはリンク制御ユニットと協調動作します。デバイスはリンク・マネージャを経由して相互接続されます。表2は、リンク制御/管理機能の概要です。表のあとに詳しい説明があります。

表2. リンク制御/管理機能の概要

Bluetooth無線機は、マスタ・ユニットとスレーブ・ユニットのどちらかとして動作します。リンク・マネージャが、マスタ・ユニットとスレーブ・ユニットとの間の接続を確立し、スレーブのパワー・セーブ・モードを決定します。マスタは最大7台のスレーブと同時にアクティブに通信でき、そのほかに200台以上のスレーブを登録して、通信を行わないパワーセーブ・モードで待機させることができます。

機 能

ネットワーク接続

リンク・タイプ

パケット・タイプ

エラー訂正

認 証

暗号化

テスト・モード

説 明

マスタ側のリンク・コントローラが接続手順を開始し、スレーブ側のパワー・セーブ・モードを設定。

リンク・タイプは以下の2つ:●同期コネクション型(SCO)、主に音声用●非同期コネクションレス型(ACL)、主にパケット・データ用

NULL、POLL、FHS ……システム・パケットDM1、DM3、DM5………中速度、エラー保護デ

ータ・パケットDH1、DH3、DH5 ………高速度、非保護デー

タ・パケットHV1、HV2、HV3 ………ディジタル化オーディ

オ、3レベル・エラー保護

DV ………データ/音声混合AUX1 ……その他の用途

3つのエラー訂正方式:● 1/3レート・フォワード・エラー訂正(FEC)コード● 2/3レート・フォワード・エラー訂正(FEC)コード●自動再送要求(ARQ)方式(データ用)

チャレンジ-レスポンス・アルゴリズム。認証は、不使用、単方向、双方向が可能。

秘密鍵長が0、40、または64ビットのストリーム暗号。

デバイスをテスト・ループバック・モードにし、周波数設定、パワー制御、パケット・タイプなどを制御することが可能。

Bluetoothでは、非同期データ・チャネル、最大3個の同期音声チャネルの同時使用、非同期データと同期音声を同時に伝送するチャネルをサポート。時分割デュプレックスによる全2重動作。

1、3、5のサフィックスは、データ・バーストが占有するタイム・スロットの数。

公称バースト長:DH1………366μsDH3………1622μsDH5………2870μs

エラー訂正はリンク・マネージャが提供。

認証はリンク・マネージャが提供。

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この制御エリアはピコネットと定義されています。あるピコネットのマスタは、別のピコネットのマスタに対するスレーブにもなれます。同様に、異なるピコネットに属する複数のマスタから1台のスレーブを制御することもできます。このようなピコネットのネットワークをスキャッタネットと呼びます。図4は、2つのピコネットから構成されるスキャッタネットを示します。どちらのピコネットにも属しないユニットは、スタンバイ・モードになっています。

M – マスタ・ユニット�S –スレーブ・ユニット�ps –パワーセーブ・モード�

のスレーブ・ユニット��sb –スタンバイ・�モードのユニット�

S

S

MS

M

ps

sb

S

S

S

sb

ps

ヘッダ� ペイロード�

LSB MSB

72ビット� 54ビット� 0~2745ビット�

プリアンブル��

トレーラ�

LSB MSB

4ビット� 64ビット� 4ビット�

同期ワード�

アクセス・コード�

図4. ネットワーク・トポロジ

Bluetoothの帯域はタイムスロットに分割されていて、各スロットが1つのRFホップ周波数に対応します。この時分割デュプレックス(TDD)方式では、マスタは偶数番号のタイムスロットで、スレーブは奇数番号のタイムスロットで送信します。ピコネット内部の音声やデータのビットは、パケットで伝送されます。マスタまたはスレーブが送信するパケット長は、1タイムスロット、3タイムスロット、5タイムスロットのいずれかです。図5に示すようにパケットは、アクセス・コード、ヘッダ、ペイロードから構成されます。アクセス・コードは、プリアンブル、同期ワード、オプションのトレーラから構成されます。ヘッダにはピコネット・アドレスとパケット情報が含まれます。ペイロードにはユーザの音声/データ情報が格納されます。パケット構造の詳細については、Bluetooth System Specification[2]を参照してください。

図5. Bluetoothのパケット・フォーマット

リンク・マネージャは、Bluetoothのテスト・モードをサポートする必要があります。テスト・モードには、Bluetoothデバイスのテストに必要な機能が装備されている必要があります。例えば、デバイスをテスト・ループバック・モードにしたり、送受信周波数、パワー制御、その他の重要なパラメータを定義したりする機能です。

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2.送信機測定 この章では、Bluetooth送信機テストのフレームワークとテスト方法を提示します。

現時点でBluetoothコンポーネント/システムに対して実行可能な測定について説明します。例を挙げ、役に立つ情報も記載します。Bluetooth RF Test Specification[1]にはBluetooth RFレイヤの検証のためのテスト要件が記載されており、最終的な拠り所となります。1

図6に示すのは、送信機測定セットアップの例です。送信機テストの場合、被試験Bluetoothデバイスをループ用バック・モードにします。信号発生器からのポール・パケットを受信することにより、被試験デバイスは、スレーブ・デバイスとしてのバースト・タイミングを生成する必要があります。すなわち、ディジタル信号発生器からの信号がデバイスの受信機に伝送され、デバイスの送信機からループバックされて解析されます。Bluetoothデバイスのテスト・モードは、RFリンクで送信するプロトコルまたはデバイスの直接ディジタル制御によって実現します。どちらの方法でも、何らかのBluetoothのテスト・モードの制御が必要です。なお、Bluetoothシステムが使用する周波数帯域にケーブル損失や不整合があると、テスト・システム内の信号レベルに重大な影響が生じます。使用するコンポーネントの性能が十分かどうか確認してください。

RF出力�ループ�バック用�

RF入力�

スペクトラム・�アナライザ�

被試験Bluetooth�デバイス�

(ループバック・モード)�

Bluetooth�テスト・モード制御�

ベクトル・�シグナル・�アナライザ�

パワー・メータ��

PCコントローラ�(オプション)�

LMPテスト・コマンド�(ホスト・リンクまたはRF)�

GPIB

RS-232

ディジタル�信号発生器�

1. 本ノート作成の時点では、BluetoothのRFテスト要件はまだ定義中です。最新のテスト要件については、Bluetooth RF Test Specification[1]の最新版を参照してください。

図6. 送信機測定用セットアップ

Bluetoothデバイスと測定機器との間をケーブルで直接接続できない場合、アンテナなどの適当な結合デバイスが必要となります。この場合、アンテナ間の経路損失を計算で考慮する必要があります。これは通常の周波数掃引テストで評価ができます。

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Bluetooth信号はTDDバーストのシーケンスなので、適切にトリガする必要があります。信号を捕捉できるように、エンベロープの立上がりエッジでトリガします。

Bluetoothシステムは周波数ホッピングを使用するため、信号解析が複雑になります。Bluetoothデバイスの機能をテストするにはホッピングが必要ですが、パラメトリック・テストの場合は必須ではありません。変数の数を減らし、個々の性能特性を明確にするため、いくつかのテストではホッピングがオフにされます。また、送受信チャネルをバンド端に設定し、被試験デバイスのVCOで周波数を切り替える方法もあります。どちらの方法もテスト要件を満たすように調整されており、[1]に記述されています。

テスト・ケースに応じて、3種類の異なるペイロード・データが必要です。PRBS9、10101010、11110000の3つです。これらのパターンはそれぞれ異なるストレス機構を持っており、測定に合わせて選択されます。PRBS9は周期29-1の疑似ランダム・ビット・シーケンスで、ライブ・トラヒックをシミュレートすることを目的としており、実際の信号に近いスペクトル分布を持つ変調信号を生成します。10101010のパターンは、変調フィルタ用の追加テストに用いられます。このパターンは送信機出力のスペクトル形状を変化させます。11110000のパターンは、ガウシアン・フィルタのチェックに用いられます。4個の1と4個の0が続いた後、出力は完全なセトリング状態に達するはずです。

出力パワー●平均パワー●ピーク・パワー

パワー密度

パワー制御

送信出力スペクトル

変調特性

初期搬送波周波数許容値

搬送波周波数ドリフト

バースト・プロファイル1

テスト・パラメータ

周波数ホッピング

オン

オン

オフ

オフ

オフ

オンおよびオフ

オンおよびオフ

オフ

テスト・モード

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

パケット・タイプ

サポートされる最大長

サポートされる最大長

DH1

DH1

サポートされる最大長

DH1

サポートされる最大長

指定なし

ペイロード・データ

PRBS 9

PRBS 9

PRBS 9

PRBS 9

11110000、10101010

PRBS 9

10101010

指定なし

測定帯域幅

3 MHz RBW3 MHz VBW

100 kHz RBW100 kHz VBW

3 MHz RBW3 MHz VBW

100 kHz RBW300 kHz VBW

指定なし

指定なし

指定なし

指定なし

1. 仕様にはないが、トラブルシューティングに役立つテスト。

表3は、送信機テストに必要なパラメータの一覧です。

表3. 送信機テスト・パラメータ

送信機テスト

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2.1パワー・テスト

RF送信機パワー測定としては、バーストの平均パワー、ピーク・パワー、パワー密度、パワー制御があります。パワー・レベルは、ディジタル通信システムの最も重要なパラメータの1つです。これらのテストによって、パワー・レベルがリンクを維持するのに十分大きく、かつISM帯域内で干渉を起こしたり、電池寿命に影響したりするほど大きくないかどうかを確認できます。

2.1.1 出力パワー出力パワー測定は時間領域で行われます。図7に示すのは、信号バーストのパワー/タイミング特性を時間領域で表したものです。

オーバシュート�

ピーク・パワーPPK��

3 dB振幅ポイント�

10%振幅ポイント�

90%振幅ポイント�

立上がり時間�

バースト幅�

立下がり時間�

バースト間隔すなわち周期T

平均パワーPAV�(バースト時)�

平均パワー測定は、バースト継続時間の少なくても20%から80%にわたって行われます。バースト継続時間(バースト幅)とは、平均電力を基準とした立上がり3dBポイントと立下がり3 dBポイントの間の時間です。平均パワー測定にはシグナル・アナライザが用いられます。シグナル・アナライザを使うと、信号を時間領域で直接解析できます。平均パワー測定のほかに、シグナル・アナライザでは過渡信号などの意味のあるデータも表示できます。掃引型スペクトラム・アナライザを使って、スパンを0に設定することにより、信号のエンベロープを時間領域で表示します。外部トリガを使ってバースト・モード信号を捕捉することもできます。表示される周期の数は、掃引時間で決まります。ピーク検出モードを使い、トレースを最大値ホールドに設定して、ピーク・サーチ機能を使えばピーク・パワーが測定できます。バーストの平均パワーも、トレース・データを解析することにより求められます。すべての周波数チャネルに対して同じテストを実行します。

図7 時間領域のパワー/タイミング解析

送信機測定のこのセクション全体を通して、ベクトル・シグナル・アナライザと掃引型スペクトラム・アナライザの2種類の信号アナライザを使用します。ベクトル・シグナル・アナライザがスペクトラム・アナライザと異なる点は、入力信号の振幅と位相の両方を捕捉することです。このため、時間、周波数、変調の各領域での広範囲の測定に使用できます。Bluetoothテストの多くでは、どちらのタイプの測定器でも測定を実行できます。場合によっては、一方がもう一方よりも高速だったり使いやすかったりします。どちらが適切かは、ユーザのニーズと製品デザインの条件に依存します。各テストでどのタイプの機器が使用できるかについては、付録Aの表を参照してください。

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平均パワーとピーク・パワーは、ベクトル・シグナル・アナライザでも測定できます。ベクトル・シグナル・アナライザにはトリガ遅延機能があり、トリガ・ポイントより前のバーストを表示できます。ベクトル・シグナル・アナライザには平均パワー測定機能もあり、平均パワーが自動的に求められます。図8に示すのは、ベクトル・シグナル・アナライザの平均パワー測定画面です。掃引時間とトリガ遅延を調整することにより、立上がりエッジと立下がりエッジを避けながら、バーストの平均パワーを測定できます。

図8. 89441Aの平均パワー/ピーク・パワー測定画面(CF=2.402GHz、1dB/div、掃引時間=380μs、IFチャネル1でトリガ、遅延=1 μs)

結果はEIRP(等価等方性放射パワー)で表示されます。EIRPはシステムの放射パワーの尺度なので、送信機、ケーブル損失、アンテナ利得の影響がこの測定には反映されます。ポート間の直接接続によってテストを行う場合は、すべての測定結果にアンテナ利得を加算することにより、システム全体としてのパワー出力仕様を超えないことを確認する必要があります。

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2.1.2 パワー密度

パワー密度測定では、100kHz帯域幅でのピーク・パワー密度を求めます。最初にシグナル・アナライザで周波数領域の測定を行います、Bluetooth周波数帯域の中央に中心周波数をおき、帯域全体を表示するのに十分なスパンを使用します。分解能帯域幅は100kHzに設定します。最大値ホールド/ピーク検出モードにして、1分間のシングル掃引を実行します。トレースのピーク値が見つかると、その周波数がアナライザの新しい中心周波数になります。図9a1は測定のこの部分を示し、ピーク・パワー・ポイントが示されています。

測定の次の段階では、アナライザを時間領域に変更して、1分間のシングル掃引を実行します。図9bを参照してください。パワー密度はトレースの平均として計算されます。この計算は、トレース・データを解析して結果を平均することにより、スペクトラム・アナライザで実行できます。ベクトル信号アナライザには、トレースの平均パワーを求めるユーティリティが用意されています。

(a) (b)

1. ここでは、高速周波数ホッピングが使用できない場合に用いられる、仕様化された手順を変形したものを示します。1分間のシングル掃引の代わりに、スペクトラム・アナライザの最大値ホールドを使い、高速掃引によって低速ホッピング周波数の信号を捕捉します(ホップ・レート >> 掃引時間)。

図9. 8594Eのパワー密度測定画面(CF=2.441 MHz(a)& 2.477 MHz(b)、スパン=240 MHz(a)& 0 Hz(b)、RBW=100 kHz、VBW=100 kHz、ピーク検出、トリガ・フリーラン、トレース最大値ホールド、掃引時間=72ms、連続掃引)

2.1.3 パワー制御パワー制御テストは、レベル制御回路に対してテストや校正を実行するためのものです。パワー制御テストは、パワー制御をサポートするデバイスに対してのみ必要です。パワー制御の方法は平均パワー測定の場合と同様ですが、3つの離散周波数チャネルが対象となります。パワー制御テストでは、パワー・レベルとパワー制御ステップ・サイズを検証し、仕様範囲内であることを確認します。

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2.2送信出力スペクトル 送信出力スペクトル測定は、パワー・レベルを周波数領域で解析することにより、

チャネル外放射が十分小さいことを確認します。これにより、システム全体の干渉を減らして、規格への適合を保証します。この測定では、デバイスの出力パワー・スペクトルを定義済みのマスクと比較します。図4にマスクの特性を示します。

周波数オフセット 送信パワー

M±[550-1450 kHz] -20 dBc|M-N|=2 -20 dBm|M-N|≧3 -40 dBm

表4. 出力スペクトル・マスクの要件

注記:Mは送信チャネルのチャネル番号を表す整数、Nは測定対象の隣接チャネルのチャネル番号を表す整数です。

図10は、掃引モードの5 dBm搬送波によるBluetooth信号の出力スペクトル表示です。この図のスパンは、スペクトル・マスク全体を示すために10 MHzに設定されています。通常のテストは1.5 MHzのスパンで実行するので、目的の領域全体を観察するには何回かの測定が必要です。図10には、スペクトラム・アナライザのリミット・ライン機能を使ってマスクを解釈した結果も表示されています。この機能は8690 Eシリーズ・スペクトラム・アナライザなどに装備されており、カスタマイズによって合否判定を自動的に行うマスクを作成することもできます。図10の画面は信号発生器を使って作成されたもので、実際のBluetoothデバイスではこれほどきれいな結果は得られないかもしれません。出力スペクトルを観察すると、データ伝送の個々の内容に起因するスペクトル表示の非対称性が見られる場合があります。

図10. 8594Eの出力スペクトル測定画面(CF=2.45 GHz、スパン=10 MHz、RBW=100 kHz、VBW=300 kHz、掃引時間=12 s、ディテクタ・サンプル・モード、トレース最大値ホールド、リミット・ライン・マスク)

出力スペクトルでは、変調とパワー・スイッチングの両方の影響を観察できます。これらが重なっている領域もありますが、500 kHz以上のオフセットでの異常はスイッチングによる過渡信号に原因がある場合がほとんどです。これを確認するには、結果をバースト・プロファイルと比較します。GSMやDECTなど他の時分割システムにはゲート測定と非ゲート測定の両方があるのに対し、Bluetoothの出力スペクトル測定は非ゲートのみです。スペクトル測定では、バーストの周期全体とバースト間の領域を捕捉して、変調と過渡信号の両方の影響を含める必要があります。

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2.3変調テスト Bluetoothの変調測定項目には、変調特性、初期搬送波周波数の許容値、搬送波周

波数のドリフトがあります。変調測定の結果は、変調回路の性能だけでなく、局部発振器の安定度も反映します。変調器や電圧制御発振器(VCO)も、電源のディジタル・ノイズや送信パワー・バーストの影響を受けます。電源による周波数引き込みを避けるため、無線機のデザインで慎重な配慮が求められます。変調特性の検証には、各ビットの周波数が求められるように、Bluetooth信号を復調する能力が必要です。

2.3.1 変調特性変調特性テストは、周波数偏移の測定です。変調特性の測定では、2種類の8ビット繰り返しシーケンス(00001111と01010101)がペイロードに用いられます。2つのシーケンスの組み合わせにより、変調器性能と変調前のフィルタリングの両方がチェックされます。

ベクトル・シグナル・アナライザを使って信号を復調する場合、位相とシンボルの情報が保存されます。8ビット・シーケンスにおける各ビットの周波数が測定され、平均化されます。次に、8ビットのそれぞれに対して、平均値からの最大偏移が記録されます。最後に、最大偏移の平均が計算されます。最大偏移と、最大偏移の平均が結果として用いられます。この手順が、00001111のペイロード・シーケンスに対して、10パケット以上の期間にわたって実行されます。次に、01010101のペイロード・シーケンスに対して同じ手順が実行されます。このテストはデータ・ポイント数が非常に多いため、ソフトウェア制御で実行するのが適しています。00001111の8ビット・シーケンスを使ったときの、復調結果のバーストの例を図11に示します。マーカは1ビットの周波数偏移を表わします。

1. このアナライザ設定で測定されるノイズが結果に影響します。

Four 0000 bits from the

repeating 00001111 sequence1

図11. 89441Aの変調特性測定画面(CF=2.45 GHz、復調モード、2FSK、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、FSK測定時間、実数部(I)、結果長=350シンボル)

00001111繰り返しシーケンス内の4つの0000ビット1

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2.3.2 変調品質ベクトル・シグナル・アナライザには、変調品質測定に関する豊富な機能があり、種々の信号に関する問題を検出し、定量化し、原因を突き止めるのに役立ちます。例えば、送信機の干渉による相互変調、電源ノイズによる変調、アンテナ不整合によるパワー安定度などがあります。FSK誤差、振幅誤差、アイ・ダイアグラムなどの変調品質測定は、Bluetooth RF Test Specifications[1]には直接記載されていませんが、トラブルシューティングには非常に役立ちます。図12に示すのは、周波数ドリフトが存在する場合のBluetooth信号の復調測定を4画面表示したものです。周波数ドリフトは左下の画面を見ればすぐにわかります。

図12. 89441Aの復調品質テスト画面

2.3.3 初期搬送波周波数の許容値初期搬送波周波数許容値テストは、送信機の搬送波周波数の確度を検証するものです。プリアンブルとPRBSのペイロードとからなる標準的なDH1パケットが用いられます。パケットの最初の4ビット(プリアンブル・ビット)を解析することで、中心周波数からの周波数偏移の大きさを求めます。この測定では、各シンボルの周波数偏移を測定するために、信号を復調する必要があります。復調後、各プリアンブル・ビットの周波数オフセットが測定され、平均されます。この測定を実行する際には、広帯域のBluetooth信号を正しく復調できるように、シグナル・アナライザの周波数スパンを十分広くしてください。例えば、図13の測定を実行するには、5 MHzのスパンが用いられています。また、アナライザの搬送波中心周波数自動補正機能はオフにしておく必要があります。図13は測定結果の例で、最

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89441Aベクトル・シグナル・アナライザの復調モードには、初期搬送波周波数許容値を測定するもっと便利な方法が用意されています。結果長を最小シンボル数(10)に設定すると、シンボル・エラー画面に搬送波オフセットが直接表示されるのです。この最小シンボル数は4より大きいため、ノイズによる結果のバラツキが少なくなります。重要なのは、0101パターンが継続することです。図12の画面のサマリ表に示された搬送波オフセットの結果は、この方法により得られた初期搬送波オフセットです。

図13. 89441Aの初期搬送波周波数許容値測定画面(周波数オフセット70 kHz)(CF=2.45 GHz、スパン=5 MHz、復調モード、FM、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、FMメイン時間、実数部(I)、結果長=10シンボル)

初の10ビットを示しています。このうち最初の4ビットが“1010”のプリアンブルです。周波数ホッピングはオフになっています。テスト仕様では、この測定をホッピング・オンとホッピング・オフの両方で実行するように定めています。どちらの場合も、ベクトル・シグナル・アナライザは1周波数チャネルに設定します。ただし、ホッピングがオンの場合、送信機が周波数から周波数へすばやくジャンプするために、スルーの効果がより大きくなります。搬送波周波数がセトリングしたときに、初期搬送波周波数オフセットにスルーが見られます。ホッピングによるストレスの増加によって、増幅器の応答に関する問題を確認できます。

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2.3.4 搬送波周波数ドリフト搬送波周波数ドリフトも、ベクトル・シグナル・アナライザを使って信号を復調することにより測定されます。ペイロード・データは、1010の4ビット・シーケンスの繰り返しから構成されています。測定の際には、プリアンブルの4ビットの絶対周波数が測定され、積分されます。これによって初期搬送波周波数が得られます。次に、ペイロード内の連続する4ビット部分のそれぞれについて絶対周波数が測定され、積分されます。周波数ドリフトは、プリアンブルの4ビットの平均周波数と、ペイロード・フィールドの4ビットの平均周波数との差です。最大ドリフト・レートもチェックされます。これはペイロード・フィールドの隣接する2つの4ビット・グループの差と定義されます。この測定は、最小、中間、最大動作周波数で、最初にホッピング・オフ、次にホッピング・オンで実行されます。さらに、異なるパケット長でも行われます。この作業にはベクトル・シグナル・アナライザが適しています。ソフトウェア制御を使えばこの繰り返し作業が簡単になります。図14は、00001111の繰り返しシーケンスで、25 kHzの周波数ドリフトのあるBluetooth変調信号の搬送波周波数ドリフト測定を行った例です。

25 kHz

図14. 89441Aの搬送波周波数ドリフト測定画面(CF=2.45 GHz、スパン=5 MHz、復調モード、2FSK、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、FSK測定時間、実数部(I)、結果長=360シンボル)

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2.4タイミング・テスト Bluetooth信号に対してタイミング・テストを行うこともできます。バースト・プ

ロファイルの解析、PLLのセトリング時間、その他のタイミング特性のテストがあります。これらのテストは仕様には含まれていませんが、開発中のデザインが製品仕様の基準を満たすことを確認するために役立ちます。

2.4.1 バースト・プロファイルバーストの立上がり/立下がり時間は、シグナル・アナライザを使って時間領域で測定できます。Bluetoothでは立上がり時間と立下がり時間の定義は決まっていません。業界での一般的な立上がり時間の定義は、10%(-20dB)の振幅ポイントから90%(-0.9dB)の振幅ポイントまで上昇するのにかかる時間です。立下がり時間は、同じ振幅ポイントを逆方向に下降する時間と定義されます。Bluetoothと似た標準のDECTでは、これとは異なる立上がり/立下がり時間の定義を採用しており、立上がり時間は-30 dBから-3 dBの振幅ポイントまで、立下がり時間は-6 dBから-30 dBの振幅ポイントまでと定められています。プリトリガ機能を使えば、立上がり時間の捕捉と測定が容易になります。バースト・プロファイルに関する定義済みのマスク・テストは存在しません。デバイスによっては、ここに示すよりもはるかに高速な過渡応答を持つものもあります。スイッチングが速すぎると、バーストのエッジが鋭いためにスペクトル拡散が広がり、出力仕様を満たさなくなることがあります。図15に示すのは、バーストの立上がり時間とバーストの立下がり時間の測定例です。その他のバースト・プロファイル特性としては、バーストのオン/オフ比やオーバシュートがあります(図7参照)。

(a) (b)

図15. 89441Aのバースト(a)立上がりおよび(b)立下がり時間測定画面(CF=2.45 GHz、スパン=3 MHz、ベクトル・モード、IFチャネル1でトリガ、メイン時間チャネル1、対数振幅(dB)、メイン長=20 μs)

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2.4.2 スペクトログラム測定図16はスペクトログラム画面で、無線送信機の電源オン時のPLLのセトリングに問題があることを示しています。このような状態の解析にはスペクトログラムが役立ちます。スペクトログラムは、X軸に周波数を、Y軸に時間を表示します。振幅はカラーまたはグレイスケールで表され、明るいカラーまたはグレイが大きい振幅に対応します。

DataBits

図16. 89441AのPLLセトリング時間のスペクトログラム表示

ベクトル・シグナル・アナライザのタイム・キャプチャ機能を使えば、もっと複雑なスペクトログラムを作成できます。これにより、リアルタイム・データを低速で再生できます。この方法で、シンボルのタイミングとレートを解析できます。図17に示すのは、Bluetoothバーストの最初の120 μsのスペクトログラムです。この例でのペイロード・データは11110000であり、4個の1と4個の0が交互に現われるこのパターンが、中心周波数から両側に157.5 kHz離れたところに表示されています。

データ・ビット

図17. 89441Aのシンボル・タイミング/レートのスペクトログラム表示

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3.トランシーバ測定

3.1スプリアス放射テスト 帯域外スプリアス放射テストは、Bluetooth無線機の動作が規格に適合することを

確認するためのものです。仕様に定められているスプリアス放射テストは、伝導性放出と放射性放出の2種類です。伝導性放出とは、被試験デバイスのアンテナまたは出力コネクタから生じるスプリアス放射の尺度です。放射性放出とは、被試験デバイスのキャビネットから漏れ出すスプリアス放射の尺度です。

米国とヨーロッパでは、異なる標準が定められています。米国はFCC(FederalCommunications Commission) part 15.247標準に従います。ヨーロッパは、ETSI(European Technical Standards Institute) ETS 300 328標準に従います。

スプリアス放射テストを実行するには、スペクトラム・アナライザを使って周波数レンジを掃引し、スプリアスを探します。スプリアス放射の仕様は、BluetoothRF Test Specification[1]に定められています。必要なスペクトラム・アナライザの周波数レンジは、ETSI標準で最大12.75 GHz、FCC標準で最大25.0 GHzです。

CISPR(Special Committee on Radio Interference) publication 16に準拠する必要があるテストでは、準尖頭値検出機能を持つEMCスペクトラム・アナライザが必要です。このテストについては、本アプリケーション・ノートでは扱いません。EMC製品の詳細については、計測お客様窓口までお問い合わせください。

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4.受信機測定

4.1ビット・エラー・レート(BER)テスト Bluetooth仕様で規定されている受信機測定には、以下のものがあります。

● 感度――シングル・スロット・パケット● 感度――マルチスロット・パケット● 搬送波/干渉(C/I)性能● ブロッキング性能● 相互変調性能● 最大入力レベル

受信機性能は、ビット・エラー・レート(BER)で評価します。これらのテストでは、さまざまな条件でBER解析を行います。表5に示すのは、受信機テストに必要なテスト・パラメータの一覧です。

感度…シングル・スロット・パケット

感度…マルチスロット・パケット

C/I性能

ブロッキング性能

相互変調性能

最大入力レベル

テスト・パラメータ

周波数ホッピング

オフオン(オプション)

オフオン(オプション)

オフ

オフ

オフ

オフ

テスト・モード

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

ループバック

パケット・タイプ

DH1

DH5(DH3)

サポートされる最長パケット

DH1

DH1

DH1

ペイロード・データ

PRBS9

PRBS9

PRBS9

PRBS9

PRBS 9

PRBS9

表6. 受信機テスト・パラメータ

4.1.1 感度――シングル・スロット・パケット感度をテストするには、さまざまな欠陥のある信号を受信機に送り、受信機のBERを測定します。受信機への入力が-70 dBmになるように送信パワーを選択します。最低、中間、最高の動作周波数でテストを行います。信号の欠陥はテスト手順で定義されており、搬送波周波数オフセットの変動、搬送波周波数ドリフト、変調指数、シンボル・タイミング・ドリフトがあります。ESG-Dシリーズ信号発生器は、これらの信号欠陥を生成するのに理想的なツールです。この信号発生器ファミリで生成できる信号欠陥の例を図14に示します。

4.1.2 感度――マルチスロット・パケットマルチスロット・パケットの感度テストはシングル・スロット・パケットのテストに似ていますが、DH1パケットでなくDH5パケットが用いられる点が異なります。DH5パケットがサポートされていない場合、DH3パケットが用いられます。

測定BER

0.1%

0.1%

0.1%

0.1%

0.1%

0.1%

受信機テスト

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4.1.3 搬送波/干渉(C/I)性能搬送波/干渉(C/I)性能を測定するには、目的の信号とパラレルに、同一チャネルまたは隣接チャネルのBluetooth変調信号を送信し、受信機のBERを測定します。搬送波信号レベルと干渉信号レベルとの比は仕様化されています。最低、中間、最高動作周波数でテストが実行されます。このときの干渉信号の周波数は帯域内の全動作周波数です。

4.1.4 ブロッキング性能

ブロッキング性能テストでは、2460MHzの送受信周波数が指定されています。テスタは、基準感度レベルより3 dB高いBluetooth変調信号を連続的に送信します1。同時にテスタは、連続波干渉信号を送信し、受信機のBERを測定します。規格適合試験では、30 MHzから12.75 GHzの範囲で、1 MHz刻みで干渉信号を変化させます。それぞれの周波数レンジに対応する振幅は、仕様に定められています。

4.1.5 相互変調性能相互変調性能テストでは、複数の近接信号がノンリニア・デバイスを通って干渉することから生じる不要な周波数成分を、測定します。テスタは、基準感度より6dB高いBluetooth変調信号を連続的に送信します。同時にテスタは、3次、4次、5次の相互変調成分が生じる信号を送信します。この状態でBERが測定され、相互変調歪みが存在する状態での受信機の性能が求められます。

C/Iテスト、ブロッキング性能テスト、相互変調性能テストの際には、信号発生器が複数必要になることがあります。

4.1.6 最大入力レベル最大入力レベル・テストでは、入力信号のパワー・レベルが仕様の最大値の-20dBmであるときのBER性能を測定します。最低、中間、最高の動作周波数でテストが実行されます。

1. 基準感度レベルとは、BERが0.1%になる受信機入力レベルと定義されます。基準感度は-70 dBm(=1 dB)またはそれよりよくなければなりません。

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4.1.7 BERテスト・セットアップBERテストを実行するには、信号発生器でBluetooth変調信号を生成し、被試験ユニットに送信します。信号はデバイスで復調されます。復調されたデータはBERテスタに戻されて解析されます。図18と図19は、ベースバンドBERテストの2種類のセットアップを示します。図18は、ベースバンド・プロセッサのクロック、データ、ゲートの各出力をBERテスタにつないだ例です。ゲート信号がない場合もあります。これらの信号が得られれば、この方法は簡単です。信号が得られない場合、図19のセットアップを使用できます。このセットアップでは、デバイスのFM復調器の出力を、ディジタイズしクロック・リカバリを行って、信号発生器のBERテスタ入力に接続します。もう1つの方法として、しきい値検出器のディジタイズ出力をクロック信号とともにBERテスタに直接ループバックすることもできます。これら2つの例は、デバイスの回路構成に直接アクセスできる研究開発用途に最適です。

FM復調器� しきい値�検出器�

ベースバンド・�プロセッサ�

制御�Bluetooth�受信機セクション�

クロック�データ�ゲート�

Bluetooth任意波形�ファイル付きの�ディジタル信号源�

+�ベースバンド�BERテスタ�

クロック�入力�

データ�入力�

ゲート�入力�

FM復調器� しきい�値検出器�

ベースバンド・�プロセッサ�

制御�

クロック�データ�ゲート�

Bluetooth�受信機セクション�

Bluetooth任意波形�ファイル付きの�ディジタル信号源�

+�ベースバンド�BERテスタ�

レベル検出器�TTLレベル�

クロック入力� データ入力��

クロック・�リカバリ�

図18. ベースバンド・プロセッサの出力を利用したBERテストのセットアップ

図19. Bluetooth受信機のFM復調器の出力を利用したBERテストのセットアップ

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3番目の方法では、Bluetooth信号の復調機能を持つBERテスタを使います。この場合、テスト・モード・コマンドを使って、受信信号をループバックするようにBluetoothデバイスに指示します。コマンドはRFリンクで送信することも、被試験デバイスの直接ディジタル制御により実行することもできます。被試験デバイスの送信機の出力をBERテスタに戻して解析します。PRBS9ペイロードを使うことにより、BERテスタは任意の9ビットから正しいビット・シーケンスを決定し、BERを計算することができます。図20にこの構成の例を示します。

Bluetooth�テスト・�モード制御�

PC RS-232

LMPテスト・コマンド�(RFまたはホスト・リンク)�

受信�

Bluetooth�無線�

信号発生器�

送信� BERテスタ�

(PRBS9シーケンスを�デコード)�

図20. Bluetoothデバイスのテスト・ループバック・モードと、復調機能付きBERテスタを利用したBERテストのセットアップ

4.1.8 受信機BERテストのための信号生成周波数ホッピングのないアプリケーションの場合、信号発生器でBluetooth信号を生成する方法はいくつかあります。ESG-Dシリーズ信号発生器は、オプションUND(内部デュアル任意波形発生器)を追加することにより、Bluetooth信号を内部で生成できます。この機能を用いると、Bluetooth信号を定義したり、ユーザ定義の信号欠陥を生成できます。

図21. ESG-Dシリーズ・オプションUNDのBluetooth信号構成用メニュー

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オプションUNS(リアルタイムI/Qベースバンド・ジェネレータ+TDMA標準)でも、パルスド2FSK信号を手動で生成し、ガウシアン・フィルタリングとペイロードのカスタマイズを使うことで、Bluetooth信号をシミュレートできます。表6に、この方法の例をステップごとに示します。

4.2補助的な受信機テスト

周波数

振幅

フィルタフィルタ形状フィルタBbT

シンボル・レート

データ周波数偏移周波数偏移データ・ビット

パルスパルス幅パルス周期パルス・オン/オフ

1. Bluetoothデバイスはバーストの送信と受信を交互のタイムスロットで行うので、パルス周期は2タイムスロット(2×0.625 ms)と定義されます。

表6. ESGシリーズ信号発生器(オプションUN8付き)でのBluetooth信号の生成例

さらに、Bluetoothのノーマル・信号と欠陥信号をシミュレートするために、ESG-Dシリーズ信号発生器用にカスタマイズされた任意波形ファイルが用意されています。これらのファイルを使用するには、デュアル任意波形発生器(オプションUND)が必要です。欠陥のあるBluetooth信号を使ってデバイスの受信/復調機能にストレスをかけることで、Bluetooth受信機の高度な解析が可能になります。これらのファイルはウェブサイトから入手できます。http://www.tmo.hp.com/tmo/datasheets/English/HPE4433B.htmlにアクセスし、HPE4433B Technical Supportを選択してください。

Bluetooth RF Test Specification[1]では、周波数ホッピングは受信機テストに必須とはされていませんが、より詳細なテストのためのオプションとして記載されています。E6432A VXIマイクロ波シンセサイザとESG-Dシリーズ信号発生器を組み合わせて信号を変調することにより、高速な周波数ホッピングが実現できます。この測定では、信号源、受信機、被試験デバイスを制御して、同時に周波数ホッピングを実行させます。被試験デバイスはテスト・ループバック・モードにします。

適当なBluetoothチャネル(2.45 GHzなど)に設定

テストに応じて適切な条件に設定

ガウシアン0.5

1 Msps

157.5 kHz(“0”の場合)157.5 kHz(“1”の場合)4個の“1”と4個の“0”

366 μs1.25 ms1

オン

機能 設定

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5.電源測定 Bluetooth RF Test Specification[1]では、一部のBluetoothデバイスでは極端条件と

なる電源電圧でのテストを定めています1。電源テストと、電源ライン上のスプリアス信号をBluetoothデバイスが除去する能力は、多くのアプリケーションとの統合テストで重要な役割を果たします。電源に関係する問題は、DH5バースト時のパワー対時間の測定と周波数誤差測定の注意深いモニタリングにより解決できます。

Agilentでは、この種のテストに適したDC電源を各種用意しています。汎用電源のほかに、移動通信製品のニーズに応えるために特別に設計された電源もあります。これらのDC電源には低電流測定機能もあり、スタンバイ中やスリープ・モードでの消費電流を評価するのに役立ちます。

1. 被試験機器が他のシステムや機器の一部として設計され、そちらから電力を供給される場合には、これらのテストは不要です。

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6.付録A:AgilentのBluetooth用ソリューション

送信機テスト

出力パワー � � � � �

パワー密度 � � � � �

パワー制御 � � � � �

出力スペクトル � � � � �

変調特性 � ❍ ❍ �

初期搬送波周波数許容値 � ❍ ❍ �

搬送波周波数ドリフト � ❍ ❍ �

補助変調測定 � �

バースト立上がり/ � � � � �

立下がり時間

スペクトログラム測定 � �

データ復調 �

トランシーバ・テスト

スプリアス放射 ❍ � �

受信機テスト

感度――シングル・ �

スロット・パケット

感度――マルチスロット �

・パケット

C/I性能 �

帯域外ブロッキング性能 �

相互変調性能 �

最大入力レベル �

周波数ホッピングを �5

使った受信機テスト

Agilent測定器

89400シリーズ・ベクトル・シグナル・アナライザ1

E4406VSAシリーズ送信機テスタ

8590 Eシリーズ・スペクトラム・アナライザ2

ESA-Eシリーズ・スペクトラム・アナライザ3

ESG-Dシリーズ信号発生器4

1. オプションAYA(ベクトル変調解析)およびAY9(拡張タイム・キャプチャ)が必要。スペクトログラムにはオプションAYB(ウォーターフォールおよびスペクトログラム)が必要。

2. オプション101(高速時間領域掃引)および102(AM/FM復調)が必要。3. オプションAYX(高速時間領域掃引)およびBAA(FM復調)が必要。4. 任意波形ファイルにはオプションUND(デュアル任意波形発生器)が、2FSKディジタル変調にはUN8(I/Qベースバンド・ジェネレータ)が、受信機テストに

はUN7(ベースバンドBERアナライザ)が必要。5. ホッピングにはE6432A VXIマイクロ波シンセサイザが必要。

ベクトル・シグナル・アナライザ スペクトラム・アナライザ 信号源

Bluetooth測定項目

� テスト要件を完全に満たす。

❍ テスト要件を完全には満たさない。特性のみ。

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7.付録B:推奨文献 1. 『8つのヒント アナログRF信号発生器によるより優れた測定』、カタログ番

号5967-5661J

2. 『スペクトラム・アナライザ測定を成功させる8つのヒント』、Application Note1286-1、カタログ番号5965-7009J

3. 『パーフェクトなディジタル復調測定のための10ステップ』、Product Note89400-14A、カタログ番号5966-0444J

4. 『Cookbook for EMC Precompliance Measurements』、Application Note 1290-1、カタログ番号5964-2151E

5. 『ESG-Dシリーズ信号発生器を用いたビット・エラー・レート測定』、カタログ番号5966-4098J

6. 『Spectrum Analysis』、Application Note 150、カタログ番号5952-0292

7. 『Testing and Troubleshooting Digital RF Communications Receiver Designs』、Application Note 1314、カタログ番号5968-3579E

8. 『Testing and Troubleshooting Digital RF Communications Transmitter Designs』、Application Note 1313、カタログ番号5968-3578E

9. 『Using Vector Modulation Analysis in the Integration, Troubleshooting and Designof Digital RF Communications Systems』、Product Note 89400-8、カタログ番号5091-8687E

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8.用語集 ● アイ・ダイアグラム――ディジタル変調システムの同相成分または直交成分の

大きさと時間の関係を示す図。形が目に似ているところからこう呼びます。● ホールド・モード――パワーセーブ・モードの1つで、デバイスを非アクティブにして、定期的にステータス・チェックを実行するために内部タイマだけが動作している状態。

● 情報機器――ユーザに対して音声やデータを提供することを目的とする、情報関連機器のカテゴリ。携帯電話、PDA、ディジタル・カメラなど。

● マスタ・ユニット――ピコネット内のデバイスで、そのピコネット内の他のすべてのデバイスの同期に用いられるクロックとホッピング・シーケンスを供給するもの。

● パケット――ピコネット内で伝送される情報の1つのまとまり。パケットは1つの周波数ホップで伝送され、通常は1つのタイム・スロットを占有しますが、最大5スロットまで占有できます。

● パーク・モード――パワー・セーブ・モードの1つで、デバイスを非アクティブにします。デバイスはピコネットに同期しますが、トラヒックには参加しません。パーク・モードは最高のパワー効率を実現します。

● ペイロード――パケットで伝送されるユーザの音声またはデータ情報。● ピコネット――ピコネットはBluetoothの最小単位のネットワーク構造です。ピコネットは、1台のマスタと、最大7台のアクティブに通信しているスレーブ、または200台以上の非アクティブで通信していないスレーブから構成されます。ピコネットはホッピング・シーケンスで定義されます。

● パワー・セーブ・モード――パワー・セーブ・モードには、スニフ・モード、ホールド・モード、パーク・モードの3種類があります。スレーブ・ユニットはそれぞれのモードで異なるスリープ状態になります。パワー・セーブ・モードにあるスレーブ・ユニットとの間では、データの伝送は行われません。

● プリトリガ――定義されたトリガ・ポイントより前の波形を観察する機能。● スキャッタネット――スキャッタネットは、同期していない複数の独立したピコネットから構成されます。デバイスはピコネットを共有できます。

● スレーブ・ユニット――ピコネット内のデバイスのうちマスタ以外のものすべて。スレーブ・ユニットは、アクティブにマスタと通信するアクティブ・モードか、非アクティブなスリープ・モードのどちらかです。

● スニフ・モード――パワー・セーブ・モードの1つで、デバイスがピコネット内をリスンするレートを下げることによりパワーを節約するモード。スニフ・モードは最も非効率的なパワー・セーブ・モードです。

● スタンバイ・モード――ピコネットに接続されていないBluetoothデバイスの状態。このモードでは、デバイスは1.28秒ごとにメッセージをリスンします。

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9.記号と頭文字 ● 2FSK――2-Level Frequency Shift Keying(2レベル周波数シフト・キーイング)。

2値FSKとも呼びます。● ACL――Asynchronous Connectionless Link(非同期コネクションレス・リンク)。● ARQ――Automatic Repeat reQuest(自動再送要求)データ・エラー訂正方式。● BT(BbT)――Bandwidth-Time product(帯域幅時間積)。● BER――Bit Error Rate(ビット・エラー・レート)。● CF――Center Frequency(中心周波数)。● CISPR――International Special Committee on Radio Interference● CW――Continuous Wave(連続波)。● dBc――搬送波周波数を基準としたデシベル値。● dBi――自由空間の等方性放射を基準としたデシベル値。● dBm――1mWを基準としたデシベル値(10log(パワー/1 mW))。● DECT――Digital Enhanced Cordless Telecommunication● EIRP――Equivalent Isotropically Radiated Power(等価等方性放射パワー)、またはEffective Isotropic Radiated Power(実効等方性放射パワー)。

● EMC――ElectoMagnetic Compatibility● ETSI――European Technical Standards Institute● EUT――Equipment Under Test(被試験機器)。● EVM――Error Vector Magnitude(エラー・ベクトル振幅)。● FCC――Federal Communications Commission● FEC――Forward Error Correction(フォワード・エラー訂正)。● FHSS――Frequency Hopping Spread Spectrum(周波数ホッピング・スペクトラム拡散)。

● GFSK――Gaussian-filtered Frequency Shift Keying(ガウシアン・フィルタ周波数シフト・キーイング)。

● GSM――Global System for Mobile communications● Hz――ヘルツ(サイクル/s)。● IF――Intermediate Frequency(中間周波数)。● ISM――Industrial, Scientific, and Medical radio band● LM――Link Manager(リンク・マネージャ)ソフトウェア。● LMP――Link Manager Protocol(リンク・マネージャ・プロトコル)。● LO――Local Oscillator(局部発振器)。● PDA――Personal Digital Assistant(携帯情報端末)。● PLL――Phase Lock Loop(フェーズ・ロック・ループ)。● PRBS 9(PN9)――PseudoRandom Bit Sequence(疑似ランダム・ビット・シーケンス)またはPseudorandom Noise(疑似ランダム・ノイズ)で周期が29-1ビットのもの。

● PSD――Power Spectral Density(パワー・スペクトル密度)。● RBW――Resolution Bandwidth(分解能帯域幅)。● RF――Radio Frequency(無線周波数)。● SCO――Synchronous Connection-Oriented link(同期コネクション型リンク)。● SIG――Bluetooth Special Interest Group● TDD――Time Division Duplex(時分割デュプレックス)。● VBW――Video Bandwidth(ビデオ帯域幅)。● VSA――Vector Signal Analyzer(ベクトル・シグナル・アナライザ)。

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10.参考文献

[1]『Bluetooth RF Test Specification』、revision 0.31, 18.06.99およびrevision 0.53r,27.08.99

[2]『Specification of the Bluetooth System』、Version 1.0, May 10, 1999

11.関連文書

1. Bluetoothオフィシャル・ウェブサイト、www.bluetooth.com、8/992. 『BLUETOOTH ‘99 Conference Presentations』、Queen Elizabeth II ConferenceCentre, London, June 9-10, 1999

5968-7746J010003301-L/H