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50 月刊推進技術 Vol. 27 No. 3 2013 まえがき 1 推進工事で最小土被りといえば一般 的に 1.5Dと皆さんご存知だと思います。 この 1.5D 以下で推進工事を安全に行な うには薬液注入による地盤改良を必要 としました。 大阪市東淀川区で施工しました φ 2,000mm 推 進 延 長 559m、 土 被り 2.48m のほぼ 1.0D による施工内容およ び小土被りによって発生したトラブルな どを紹介します。 概要 2 工  法:アパッチ工法 Type Ⅱ (分解回収型) 呼び径:2000 土  質:砂質土 N  値:平均 9 最大礫径:100mm 礫  率:10% 地下水位:GL − 1.93m 平均土被り:2.62m 最小土被り:2.48m(発進部) 曲線数:5 箇所 発進側からR = 110、300、 110、110、110m 検討課題 3 この現場は発進から到達までほぼ平 坦な土被り2.6m程度で推進工事を行 ないます。φ2,000mmで土被り2.6m ですから約 1.0Dと小土被りが続きます。 着工前の事前検討では小土被りによる 地盤沈下検討、推進力検討、曲線防護 検討、支圧壁反力検討等を行いました。 計画推進力は 4,700kN、元押装置の みでも十分可能な推進力でしたが、中 押装置を1段使用し、管材、支圧壁へ の負担を軽減させる施工方法を行ない ました。曲線防護に関しては側土圧の 反力から必要無い結果となりました。 支 圧 壁 は 土 被 り が 小 さ い た め、 1,000kN程度の反力不足が生じ、背面 に地盤改良を施し対応しました。 この時の計算結果では背面改良長が 1.9m 以上必要といった結果です。 ・中押装置を 1 段使用 ・推進力低減装置を使用 ・注入管(多孔管)11 本使用 地盤沈下対策としては送泥量の徹底 管理、排泥量の徹底管理、一次注入お よび二次注入の管理等を行いながら施 工を行なうことにしました。 掘進機の投入計画では地盤変位や発 特 集 小土被りと近接施工 小土被りによる 推進力上昇と反力不足 田 昌 まさはる ヤスダエンジニアリング㈱ 設計課長 小土被り近接施工 到達 発進 図−1 平面図

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50 月刊推進技術 Vol. 27 No. 3 2013

特 集 小土被りと近接施工

まえがき1 推進工事で最小土被りといえば一般的に1.5Dと皆さんご存知だと思います。この1.5D以下で推進工事を安全に行なうには薬液注入による地盤改良を必要としました。  大 阪 市 東 淀 川 区 で 施 工しました φ 2,000mm 推進延長 559m、土被り2.48mのほぼ1.0Dによる施工内容および小土被りによって発生したトラブルなどを紹介します。

概要2工  法:アパッチ工法TypeⅡ     (分解回収型)呼 び 径:2000

土  質:砂質土N  値:平均9最大礫径:100mm礫  率:10%地下水位:GL−1.93m平均土被り:2.62m最小土被り:2.48m(発進部)曲 線 数:5箇所     発進側からR=110、300、     110、110、110m

検討課題3 この現場は発進から到達までほぼ平坦な土被り2.6m 程度で推進工事を行ないます。φ2,000mmで土被り2.6mですから約1.0Dと小土被りが続きます。 着工前の事前検討では小土被りによる地盤沈下検討、推進力検討、曲線防護検討、支圧壁反力検討等を行いました。

 計画推進力は4,700kN、元押装置のみでも十分可能な推進力でしたが、中押装置を1段使用し、管材、支圧壁への負担を軽減させる施工方法を行ないました。曲線防護に関しては側土圧の反力から必要無い結果となりました。  支 圧 壁 は 土 被りが 小 さい た め、1,000kN程度の反力不足が生じ、背面に地盤改良を施し対応しました。 この時の計算結果では背面改良長が1.9m以上必要といった結果です。・中押装置を1段使用・推進力低減装置を使用・注入管(多孔管)11本使用 地盤沈下対策としては送泥量の徹底管理、排泥量の徹底管理、一次注入および二次注入の管理等を行いながら施工を行なうことにしました。 掘進機の投入計画では地盤変位や発

特 集 小土被りと近接施工

小土被りによる推進力上昇と反力不足

富と み た

田 昌ま さ は る

晴ヤスダエンジニアリング㈱設計課長

小土被り近接施工解

到達

発進

図−1 平面図

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進立坑の変位などを考慮し、クレーンの配置位置を決めるために、掘進機を吊り上げ旋回した際に発生するアウトリガージャッキ反力を検討しました。

施工4 小土被りに対する対策として送泥量の徹底管理、排泥量の徹底管理、一次注入および二次注入の管理等を行いながら施工を行いましたが、予想以上に軟弱地盤層であったため、一次注入および二次注入を確実かつ計画数量以上に注入をして推進を行うことにしました。 また、管路上部にあるガス管への影響が懸念されていたため、推進工での切羽土圧の徹底管理を行い管路上部のガス管と道路面および周辺家屋等への影響を考慮し日々の観測を計画時より計測頻度を増やして行いました。小さな変化においても推進工を一時停止し協議検討を行った上で施工を行いました。4.1 泥水の逸泥 推進管路の地山が施工前の想定に比べ非常に軟弱および逸水性の高い地盤であったことと、性質の異なる地層変化が非常に多かったため、作泥材(安定液)の配合等の調整が困難でした。長距離推進を行うにあたり、作泥材の適切な配合は不可欠であり、作泥材と地山のバランスが崩れると推進力の上昇および地盤沈下が起こり長距離推進を行えなくなることは必然です。そのため、作泥材の調合を重視し丁寧かつ慎重な土圧管理、地表面沈下管理にて施工を行いました。 また、推進中に滑材、泥水が路面より噴出することが一度発生し、その際、推進工を一時停止し協議検討を行いました。路面への噴出による顕著な地盤沈下は見られませんでしたが、この件以来、ジャッキスピードを遅くし土圧の変化を緩やかにすることで対応しました。

図−2 発進部縦断図

図−3 発進立坑支圧壁平面図・断面図