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ゼロレーティングの現況について 2016/8/1(月) 石田慶樹

ゼロレーティングの現況について

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Page 1: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングの現況について

2016/8/1(月)

石田慶樹

Page 2: ゼロレーティングの現況について

自己紹介

氏名:石田慶樹(いしだよしき)

所属:

日本ネットワークイネイブラー株式会社

経歴:

1988年 東京大学助手

1994年 九州大学講師

1998年 インターネット事業会社へ転職

2007年 日本インターネットエクスチェンジ株式会社

2016年(6月)より現職

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Page 3: ゼロレーティングの現況について

本日の講演内容は、

JANOG38(2016/07/07)「ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーション」

の内容を一部引用しております。

本日の内容のSNSの書き込みはご遠慮ください。

Page 4: ゼロレーティングの現況について

本日の内容

• イントロダクション

• ネットワーク中立性とは

• ゼロレーティング

• 論点

Page 5: ゼロレーティングの現況について

本日の内容

• イントロダクション

• ネットワーク中立性とは

• ゼロレーティング

• 論点

Page 6: ゼロレーティングの現況について

The Current Structure of the Internet

ISP ISP ISP

ISP

Global Tier-1National Backbone

Local Access ProviderMobile

IXIX

ISP

ISP

ISPISP

ISP

Customer(Consumer/Organization)

Hyper Giants

6

Contents

Eyeball

Traffic

Edge Cache

Page 7: ゼロレーティングの現況について

昨今の日本のトラフィック状況

• 固定ブロードバンドサービスにおいてユーザ数はそれほど増えてないがトラフィックは増大傾向は勢いを増している– ユーザ・デバイスの変化(PCからスマフォ・タブレットへ)によるダウンロード方向の増加

– 動画コンテンツの増加(ライブ・ダウンロード共に)

– アクセス回線の高速化(ギガサービス)

– モバイル回線の従量制への回帰

• 加えてイベントトラフィックによりバーストの発生– イベントトラフィック発生後は元に戻りきらない

Page 8: ゼロレーティングの現況について

7月22日(金)のトラフィック

Page 9: ゼロレーティングの現況について

これの影響です

Page 10: ゼロレーティングの現況について

Pokemon Go の通信を取り巻く動き

http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1607/15/news084.html

米T-Mobileは7月14日(現地時間)、毎週提供しているユーザー感謝サービス「T-Mobile Tuesday」の次の回で、「PokemonGO」関連の特典を提供すると発表した。

特典は以下の通り。データ通信料無料以外は1日限りのサービスだ。• 向こう1年間(2017年8月まで)、

Pokemon GOアプリのデータ通信料は無料

• ポケストップあるいはジムが目的地の場合、米Lyftの料金は無料(15ドル分まで)

• Pokemon GOでのハンティング中であればWendy'sのフロスティが無料

• T-Mobileショップでのバッテリーパックなどを50%オフ

Page 11: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティング

• 特定のアプリやサービスについては課金するトラフィックに算入しない(モバイル事業者が主導)

転じて

特定のプレイヤが支援して新興国や開発途上国においてインターネット・アクセス(フル・アクセスではなく特定のアプリやサービスへのアクセスのみ)を無料で提供する場面でも言われるようになった

Page 12: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングを取り巻くもの

通信の秘密

ネットワーク中立性

通信コスト技術

||DPI

制度マーケット

/ビジネス

Page 13: ゼロレーティングの現況について

法制度

• 通信の公平性(ネットワーク中立性)– 電気通信事業法第6条 電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取扱いをしてはならない。

• 通信の秘密– 日本国憲法第二十一条2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない

– 電気通信事業法第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。

Page 14: ゼロレーティングの現況について

本日の内容

• イントロダクション

• ネットワーク中立性

• ゼロレーティング

• 論点

Page 15: ゼロレーティングの現況について

ネットワーク中立性

• ネットワーク中立性(network neutrality)とは、ユーザー、コンテンツ、サイト、プラットフォーム、アプリケーション、接続している装置、通信モードによって差別あるいは区別することなく、インターネットサービスプロバイダ(インターネット接続業者)や各国政府が、インターネット上の全てのデータを平等に扱うべきだとする考え方である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ネットワーク中立性より

Page 16: ゼロレーティングの現況について

ネットワーク中立性

情報の

自由な流通vs

適切な制御

Page 17: ゼロレーティングの現況について

ネットワーク中立性

自由な流通• 基本的人権

– 情報への自由なアクセス

• 現状肯定

– 役割分担

適切な制御• 政策

– 国家安全保障テロ、治安維持…

– 犯罪抑止児童ポルノ、フィシング、DDOS…

• テクノロジー

– 公平性

– OTT

• コスト輻輳が発生したらどうするか?

Page 18: ゼロレーティングの現況について

これまでの経緯

米国2003年

Network Neutrality という言葉の提唱

2005年8月FCCが「オープンインターネットの原則」を発表

① ユーザが法の範囲内でコンテンツへ接続する権利

② アプリケーションを使用する権利

③ デバイスを接続する権利

④ プロバイダを選択する権利

2008年1月FCCがComCastに是正命令

2010年4月裁判でFCCが敗訴

2010年12月FCCが「オープンインターネット命令」を発表

① 開示義務

② 接続義務

③ 公平義務

2014年1月「オープンインターネット命令」をISPに課す権限がないという判決

2014年1月~Netflixによる「ファストレーン」の動き

2014年11月オバマ大統領による声明

2015年3月FCCによる新たな「オープンインターネット命令」

2016年6月

連邦控訴裁判所がFCCのルールを支持

日本2006年~2007年

「ネットワークの中立性に関する懇談会」① 消費者がネットワーク(IP網)を柔軟に利用

して、コンテンツ・アプリケーション・レイヤーに自由にアクセス可能であること

② 消費者が技術基準に合致した端末をネットワーク(IP網)に自由に接続し、端末間の通信を柔軟に行うことが可能であること

③ 消費者が通信レイヤーおよびプラットフォームレイヤーを適正な対価で公平に利用可能であること

2008年5月「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」

• 以降「ネットワーク中立性」の議論は沈静化• 「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」

の改定が行われている

Page 19: ゼロレーティングの現況について

FCCによる新「オープンインターネット命令」

1. 通信のブロックの禁止(No Blocking):ブロードバンドを提供する事業者は合法なコンテンツ、アプリケーション、サービス、害のないデバイスをブロックしてはならない。

2. 通信速度の制限の禁止(No Throttling):コンテンツ、アプリケーション、サービス、デバイスの種類によって法的に問題のないインターネットのトラフィックの制限をしてはならない。

3. 有料トラフィックの優先接続の禁止(No Paid Prioritization):特定の通信トラフィックを他のトラフィックに対して、どのような理由があっても優先させてはならない。(言い換えるとファストレーン(Fast lane)禁止ということであり、このルールはISP事業者の利益となるコンテンツやサービスを優先させることも禁止している)

「米国におけるインターネットの中立性に関する取り組みの現状」/八山幸司/ニューヨークだより2015年4月

https://www.ipa.go.jp/files/000045549.pdf より

• ISPのコモンキャリアへの再分類但し、除外されている義務もある

Page 20: ゼロレーティングの現況について

中立性に関わる事情

• 社会・政治的事情– 情報検閲– 違法コンテンツのブロック

• 運用上の事情– アクセス網の容量の問題から特定のコンテンツやサービスのパケットを制限

• ビジネス上の事情– 自社のコンテンツやサービス利用促進

a. 通信事業者に料金を払い優先してもらうb. 特定コンテンツ/サービスを利用した場合、データ課金の対象外とする

ゼロレーティング

* ゼロレーティングがネット中立性に反するのかも賛否両論

Page 21: ゼロレーティングの現況について

「ネットワーク中立性」

• 「公平」とは?– 一部のユーザが大量に帯域を利用する– 一部のコンテンツが大量に帯域を利用する

• 誰による、何に関する、何のための公平性– 情報の自由な流通を支えるインフラ– インフラを支えるためのコスト– ?ユニバーサル・サービス?

• (事業者側で)誰が強者で誰が弱者か

• 新たな論点としての「ゼロレーティング」

Page 22: ゼロレーティングの現況について

本日の内容

• イントロダクション

• ネットワーク中立性とは

• ゼロレーティング

• 論点

Page 23: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティング(再掲)

• 特定のアプリやサービスについては課金するトラフィックに算入しない(モバイル事業者が主導)

転じて

特定のプレイヤが支援して新興国や開発途上国においてインターネット・アクセス(フル・アクセスではなく特定のアプリやサービスへのアクセスのみ)を無料で提供する場面でも言われるようになった

Page 24: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングを取り巻く賛否両論

賛成

反対

先進国 新興国/開発途上国自由な競争:経済的利点からの選択の自由

消費者保護:ゼロレーティング対象以外のアクセスへの高額の課金・容量制限

インターネットを知るきっかけ:経済的理由からアクセスしないと知る機会もないその他コンテンツ・サービスの利用に広がる効果を期待

自社のコンテンツ促進:コンテンツ事業者

自社接続サービス促進:無料コンテンツ・サービスでユーザ勧誘

Walled Garden:限られたコンテンツをインターネットと誤解する危険性

公平な選択の阻害:参照するコンテンツの偏り

Page 25: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングとネットワーク中立性

特定のアプリ/サービスについては課金トラフィックに算入しない

特定のアプリにのみ特化したデジタルネットワークインフラの構築

特定のプレイヤのみがユーザに限定的サービス提供

インターネットへの自由なアクセスが制限される可能性

特定のプレイヤのみが有利!!ネットワーク中立性をViolateしてないか?

先進国

新興国/開発途上国

Page 26: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングに関するMozillaの見解

• Mozillaはネットワーク中立性を支持

• Zero-ratingそのものには懸念• Zero-ratingによってつながっていない人をつなげることにわならない

• Zero-ratingによりネットワーク中立性に悪影響を及ぼす可能性

• だからと言って法律による規制にも反対

• 技術と革新によってよりよい方法を生み出すことができるのでないか

• インターネット上での革新と競争を促進する公平な競争の場は維持されなければならない

https://www.mozilla.jp/blog/entry/10480/

原典https://blog.mozilla.org/netpolicy/2015/05/05/mozilla-view-on-zero-rating/

Page 27: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングに関するMozillaの見解

この記事では、zero-rating に伴うプラス面とマイナス面のいくつかの課題について概説を試みました。こうした課題や、利用しやすい料金とアクセスのしやすさに関する課題についてさらに多くの情報を伝えることは、適切な解決策を生み出す取り組みの一環となります。また、さまざまな関係者が一堂に会し、利用しやすい料金の問題を解決する 別の方法をめぐって、そうした方法を実現する上での課題を話し合うことも有意義なことでしょう。研究機関やシンクタンクからも、研究を促進するホワイト ペーパーという形で解決策が得られるかもしれません。Mozilla は今後数か月間に、これらの方法をさらに検討していきます。

https://www.mozilla.jp/blog/entry/10480/

原典https://blog.mozilla.org/netpolicy/2015/05/05/mozilla-view-on-zero-rating/

Page 28: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングの実現方法

• 時間・場所・相手– テレホーダイ– フリーダイヤル方式(0120)

• 端末内のソフトウェアでの制御– T-mobileの方式(?)

• 自網内サービスへの接続の課金を除外– 自社コンテンツへのアクセスを除外(J:COM MOBILE)

• アプリ種別による課金除外– IP電話– Shallow Packet Inspection

• DPIによる方法– 網内にDPI装置の導入

Page 29: ゼロレーティングの現況について

DPIとは

• DPI

– Deep Packet Inspection

– IP Packetの中身を深く(Deep)に検査(Inspection)する技術

– IPヘッダの Source IP Address/Destination IP Address のみならず Protocol番号, Port番号, さらにはペイロードまでを検査

–本来は「セキュリティ技術」だが利用法が拡大

Page 30: ゼロレーティングの現況について

DPIとは

物理層

データリンク層

ネットワーク層(IP)

トランスポート層(TCP/UCP)

アプリケーション層

端末 サーバルータスイッチ DPIノード

パケット転送に不要な上位層の情報を収集

JANOG38(2016/07/07)ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーション幡谷一哲氏資料よりhttp://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/application/files/5214/6784/9766/Janog38_ZR_hataya.pdf

Page 31: ゼロレーティングの現況について

DPIへの懸念

• DPIは「通信の秘密」を侵していないか

• DPIの利用はどのような場合に認められるのか?

Page 32: ゼロレーティングの現況について

「通信の秘密」

• 「通信の秘密」には「ペイロード」のみならず「ヘッダ」および日時や回数や当事者情報等(構成情報)も含む。

• 通信の秘密を侵しても良い場合–通信当事者の「個別」かつ「明確」な同意

–違法性が阻却される一定の事由が認められる場合• 正当防衛

• 緊急避難

• 正当行為

Page 33: ゼロレーティングの現況について

「通信の秘密」(続)

• 通信当事者の「個別」かつ「明確」な同意– 同意に当たっての判断材料を提供するための運用について透明性が確保されることが必要ア 配慮原則を踏まえて、運用基準等を策定し、試験・実験であっても、これを適用してサービスをすること。

イ 利用者から同意を取得する際に、その判断材料として、「取得の事実、対象情報を取得する事業者の氏名又は名称、取得される情報の項目、取得方法、第三者提供の事実、提供を受ける者の範囲、提供される情報の項目、利用目的、保存期間、利用者関与の手段について」については、利用者が容易に認識かつ理解できる形で利用者に通知し、又は容易に知りうる状態に置くこと。

ウ 利用者に対して、容易に利用可能なオプトアウトの機会を提供すること。

Page 34: ゼロレーティングの現況について

「通信の秘密」(続)

• 正当行為–法令に基づく行為

–正当業務行為ア.通信事業者が課金・料金請求目的で顧客の通信履歴を利用する行為、

イ.ISP がルータで通信のヘッダ情報を用いて経路を制御する行為等の通信事業を維持・継続する上で必要な行為に加え、

ウ.ネットワークの安定的運用に必要な措置であって、目的の正当性や行為の必要性、手段の相当性から相当と認められる行為(大量通信に対する帯域制御等)

Page 35: ゼロレーティングの現況について

「通信の秘密」

• これまで「通信の秘密」は厳密に運用されてきた(特に固定系において)

• MNO等の電気通信事業者は通信の秘密を侵すことに対して非常に神経質である

Page 36: ゼロレーティングの現況について

本日の内容

• イントロダクション

• ネットワーク中立性とは

• ゼロレーティング

• 論点

Page 37: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティング

• MVNOにおいてなし崩し的に進行中

1. 自社サーバ/自社サービスへのアクセス

• OCN/J:COM

2. 外部の特定サービスへの通信料を免除

• FREETEL

3. LINEモバイル

4. ポケモンGO!

Page 38: ゼロレーティングの現況について

LINEモバイルが起こした「寝た子」

イノベーション

• 競争優位性の固定化?

• インフラと見做すなら、合意と義務負担は?

• なんでもOKなら通信事業者(MNO)にもDPIが認められてしかるべき?

通信の秘密

• 「違法性阻却自由」はどこまでOK?

• 電気通信事業法第4条(通信の秘密)の法執行は妥当?

• 憲法第21条第2項後段(通信の秘密)と価値は共有できている?

ネット中立性

• 垂直統合でいいのか?

• 消費者の利益(短期/長期)は守られているのか?

JANOG38(2016/07/07)ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーションクロサカタツヤ氏資料よりhttp://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/application/files/4914/6845/5574/janog38-zr-kurosaka.pdf

Page 39: ゼロレーティングの現況について

「ポケモンGO」がやってきた!

Page 40: ゼロレーティングの現況について

ポケモンGOの通信

https://blog.apar.jp/web/5236/

ポケモンGOでは、「複数の相手先」に対して「https」の通信を行っている

「ゼロレーティング」のためにはDPIが必要!?

Page 41: ゼロレーティングの現況について

ポケモンGOとゼロレーティング

便乗より本質的な競争をゼロレーティングのサービスは、通信の秘密やネットワークの中立性を侵害する可能性があるとして、物議をかもしています。ユーザーの同意を取るなどして、 違法にならないよう配慮はしているようですが、厳密に見ればグレーで、データ通信の中身が判別されることをよしとしないユーザーもいるでしょう。

また、特定のサービスだけを優遇するとなれば、有利なアプリやサイトがますます有利になり、そうないところは不利になる一方なのも気になるところ。ポケモ ンGOのブームにあやかりたい気持ちは分かりますが、通信の快適さや、端末のラインナップ、プロモーションの仕方など、もっと本質的な部分での競争が起こることを期待しています。

http://japanese.engadget.com/2016/07/26/go-sim/

Page 42: ゼロレーティングの現況について

ゼロレーティングを取り巻くもの(再掲)

通信の秘密

ネットワーク中立性

通信コスト技術

||DPI

制度マーケット

/ビジネス

Page 43: ゼロレーティングの現況について

前提条件

• 通信インフラは民間企業により事業運営が行われている

• 自由競争による生じた独占/寡占状況や公平性の欠如は修正されるべき

• 社会インフラであり公平性や安定性が期待される

Page 44: ゼロレーティングの現況について

肯定的立場

• ネット中立性が確保されることは強く求める

• 法規制は最低限にすべき(過度の規制は競争環境を損なわせる)

• 多くの部分は事業者の良心と競争環境に頼む

• エンドユーザは「中立性が担保されていない可能性」を十分に留意しなければならない

• 判断の自由/選択の自由は常にエンドユーザにある

Page 45: ゼロレーティングの現況について

否定的立場

• DPIを利用したゼロレーティングは抗い難い魅力を持っている。

• しかしながら以下の観点から進めるべきではない

– 通信の秘密• 個別同意とした場合でも運用形態が不完全・不十分である

• オペレータに通信が丸見えの状態となっている

– ネットワーク中立性(通信の公平性)• 有利なものがさらに有利になる

• オペレータの恣意性が入る以上は公平ではない

Page 46: ゼロレーティングの現況について

中立的立場

• ルール策定の前に見直すべきこと– 現行法制度の精神は誰の価値や利益につながっているのか?

消費者は何を求めている?消費者に何が提供されるべき?

– 現状の法執行の見直し:いまの制度、生きてる?

業界団体主導の共同規制に強く依存した法執行のままでいいのか?

産業構造に直接影響するルールである以上、行政の役割は大きいのでは?

• ルール策定の前提として定めておくべき検討事項– 検討1:現実の直視

21世紀の日本ってどんな社会になる?

その時に生活者の利益って何?

– 検討2:現実としての国際協調

サービスプロバイダーもプラットフォーム事業者もグローバルJANOG38(2016/07/07)ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーションクロサカタツヤ氏資料よりhttp://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/application/files/4914/6845/5574/janog38-zr-kurosaka.pdf

Page 47: ゼロレーティングの現況について

まとめ

• MVNOにおいてなし崩し的にDPIを使ったゼロレーティングが開始されている

• 通信の秘密やネットワーク中立性の観点からの議論は十分なされてきたのか?

• そもそもDPIを利用したゼロレーティングは、コンテンツ事業者アイボール事業者エンドユーザ

にとって神の福音か、悪魔の囁きか?