43
法法法法法 2016 法 1 法 24 法

20160124 第1回法と経済学勉強会

  • Upload
    fed

  • View
    630

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 20160124 第1回法と経済学勉強会

法と経済学 2016年 1月 24日

Page 2: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:自己紹介

(グループで)それぞれ自己紹介をお願いします お名前 お仕事 日常の生活・仕事における法律とのかかわり 参加の動機 等

2

Page 3: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:前回シリーズは・・・

組織の経済学 組織(企業等)における制度や商習慣・雇用慣行等に関する経済的な合理性の分析

日本的経営システム(終身雇用、年功序列、企業内労働組合等)についてもシステム全体では一定の合理性あり 3

Page 4: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:今回シリーズは・・・

法と経済学 法規制に関する経済的な合理性の分析

4

Page 5: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:「法」と「経済学」?

経済学=神の見えざる手でしょ? 市場に任せれば、価格をシグナルとする需給バランスによって、各自の利潤最大化=社会全体として最適な資源配分が実現

だったら、政府の存在や法・規制は不要では?(レッセ・フェール)

5

Page 6: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:完全競争の市場

市場メカニズムが機能している=完全競争 財・サービスが同質(差別化されていない) 需要者と供給者の数が十分多い(参入と退出が自由)

市場参加者が同じ情報を共有(非対称性が無い) 取引費用が低い 外部性が存在しない

6

Page 7: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:政府/法律の役割→市場の失敗

市場だけでは社会全体の最適状態を実現できない場合 独占・寡占:価格が市場均衡よりも高く設定→消費者余剰が減少(社会的厚生が最大化されない) 政府の役割:独占禁止法等による規制

公共財:非競合的・非排他的な財・サービス(例えば NHK)→対価を払わないフリーライダーを排除できない(民間に任せていると過少供給) 政府の役割:公共サービスの提供

7

Page 8: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:政府/法律の役割→市場の失敗

市場だけでは社会全体の最適状態を実現できない場合 外部性:当事者以外への影響(例:負の外部性による過剰供給→公害) 政府の役割:法・規制(環境保全のための費用の強制)

情報の非対称性:当事者が保有する情報量に差が存在する(例:処方薬) 政府の役割:法・規制、情報提供

8

Page 9: 20160124 第1回法と経済学勉強会

オリエンテーション:そもそも経済活動って?

取引 余った獲物を交換(物々交換)→お互いが満足(効用が増加)

ただし輸送や保存が大変・・・ 誰もが欲しがり、保存や輸

送が容易なもの→布や穀物等

貨幣の出現:貝→金属 紙幣の出現:兌換紙幣(金・

銀本位制)→不換紙幣(管理通貨制度)

9

Page 10: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権

所有権が存在しなければ・・・ 略奪(交渉・取引が成立しない)

生産者の立場では・・・ いつ奪われるか分からない

生産物から得られる効用が減少→過少供給

防衛努力=資源の浪費10

Page 11: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権

所有権は人間だけのもの? 動物も「縄張り(テリトリー)」を持つ 特定地域から得られる

便益を独占的に享受→他者も争いを避けるため、容易に侵入しない

ただし、力関係が変われば縄張りも変わる(法律は存在しない)

11

Page 12: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の定義

12

使用収益権 目的物を自ら使用し、他人による使用を排除する

例外:公共の利益に反する場合、囲繞地通行権

使用収益権を譲渡する権利 (通常は対価を得て)使用収益権を他人に与える

権利

Page 13: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の存在意義

13

所有権が存在しなければ・・・ 労働者の観点:下記の比較の結果、最適量よりも

小さい労働量しか投下されない ベネフィット:労働の結果として生み出された生産物の全てではなく、奪われずに手元に残ると予想される分の効用

コスト:労働に従事することよる不効用

※企業(耐久財を使用して生産物を生み出す)等の場合も同様

Page 14: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の存在意義

14

所有権の譲渡 取引によって社会全体としての価値が増大

自分が得意なもの(比較優位)に集中=分業が可能に→社会全体の生産性が向上

Page 15: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の存在意義

15

所有権の譲渡ができなければ・・・ 小作人:土地の使用収益権は(小作料を支払う前提で)有しているが、譲渡する権利がない 最適な水準よりも過剰に使用される(土地が痩せる)可能性が高い

公営住宅の割当:住民同士で交換できない 交換できれば、相互により効用の高い生活が送れる可能性あり

Page 16: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の存在意義

16

所有権が不明確なら・・・ 所有物を奪われる→紛争に発

展 紛争自体が非効率な行為 防衛目的のために投入される資源=浪費

Page 17: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権の存在意義

17

所有権が不明確なら・・・ リスクを分散できない(保険の利用が不可能)

損害保険:リスク回避的な個人からリスク中立的な企業へ保険料の支払いを対価とするリスク移転

Page 18: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権(事例)

18

CA 州のゴールドラッシュ時代の土地の権利 メキシコから取得したばかりで法を執行する権力機構が存在せず 人々は自主的に区画を割り当てる協定を結び、

逸脱者に対する制裁を課す そうしなければ金の採掘に投資できない

Page 19: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権(事例)

19

ラブラドル半島の土地 毛皮目的でビーバーの乱獲を防ぐため、インディ

アンの部族が土地の所有権を創設 海洋資源

トロール船の出現等により、漁業が大規模化→漁業資源を保全するため、各国は沿岸から 200 海里までを排他的経済水域として設定ただし、回遊魚については乱獲の可能性

Page 20: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権(事例)

20

電磁波 / 電話回線 排他的な使用権→譲渡不能なライセンスであったが・・・ リセールが可能に

地球圏外の天体 月の天然資源開発→国際協定あり

月の土地を個人に譲渡している会社が存在→法的根拠は?

Page 21: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 2 章:所有権(事例)

21

南極 国家の領有権の主張が凍結

何者かが占有・領有しても保護されるべき法的根拠が存在しない

Page 22: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 3 章:所有権の分割

22

所有者と利用者が異なる場合が存在 借地権、採掘権、タイムシェア、信託・・・

なぜ分割した方が良いのか? 所有者よりも使用者の方が多くの情報を持つ場合等、資源の有効活用

(未成年等)適切な判断が不可能な当事者間の取引による社会的な損失を防ぐ(例:子供の資産を管理する信託)

Page 23: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 3 章:所有権の分割

23

所有権を分割する場合の課題 細分化することで価値が低下

一体活用に適した土地→ゾーニング規制:分割可能な最小単位の規定

分割の境界線が明確でない 紛争の可能性→防止する為の登記制度

その他 使用者が所有者の想定と異なる方法で使用=大切に扱わない 等

Page 24: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:財の取得・移転

24

財の発見者=所有者とする意義 発見者は下記の比較をしながら資源を投下して探索

ベネフィット:発見されるモノの価値 × 発見確率 コスト:探索費用

発見者=所有者とすれば無駄な資源の浪費や過少投資を避けることが可能

Page 25: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:財の取得・移転

25

ただし、探索者が複数の場合・・・ ある人の探索行為は他の人の発見確率を下げる(外部性の存在) 他の人の発見確率が下がっても、自分の行動には影響を与えない

従って、社会全体としては探索に投下される資源が過剰となる場合あり(例:早い者勝ち→ゴールドラッシュ)

Page 26: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:財の取得・移転

26

探索行為に対して過剰投資を抑えるために・・・ 探索区域を区分で分ける→他の人の発見確率に影響を与えない

発見者に部分的な所有権しか与えない(もしくは特別な課税を行う)→ただし、過少投資の可能性

国が所有権を保有(発見者には一定の対価を支払う)→ただし、国は十分な情報を有していないので非効率となる可能性

Page 27: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

27

遺失物の回収 遺失物を探すかどうかは下記を比較して判断される

ベネフィット:回収物の期待価値(回収物の価値×回収確率)

コスト:回収に要する費用

Page 28: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

28

遺失を防ぐための努力 遺失を防ぐための努力を行うかどうかは下記を比較して判断される ベネフィット:遺失による期待損失(遺失物の価

値 ×回収確率)+回収費用 コスト:遺失を防ぐ為の費用

Page 29: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

29

遺失物の所有権 原所有者が自分で遺失物を探す事ができる場合

遺失物の所有者=原所有者他人が遺失物を探すことはない(遺失物を探すための過剰投資は抑制)

遺失物の所有者=発見者他人が遺失物を探す(ただし、過剰投資) 原所有者は物の価値の全てを失う→遺失防止の

為に過剰投資となる可能性あり

Page 30: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

30

遺失物の所有権 原所有者が自分で遺失物を探す事ができない場合

遺失物の所有者=原所有者他人が遺失物を探すことはない=回収されない(財が無駄に)

原所有者も回収できない→全損を防止するため(遺失を防ぐため)の過剰投資

Page 31: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

31

遺失物の所有権 原所有者が自分で遺失物を探す事ができない場合

遺失物の所有者=発見者他人が遺失物を探す=回収される(財が無駄にならない)が、探索費用が過剰となる可能性あり(例:自販機の小銭探し)

原所有者も回収できない→全損を防止するため(遺失を防ぐため)の過剰投資

Page 32: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

32

遺失物の所有権 原所有者が自分で遺失物を探す事ができない場合

遺失物の所有者=原所有者とするが、発見者に報酬を支払う他人が遺失物を探す=回収される 原所有者は支払う報酬に見合う範囲で、遺失防止の費用を投下

一定期間内に原所有者が見つからない場合は発見者に所有権が移る必要あり(そうでなければ財が無駄に)

Page 33: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の遺失・回収

33

埋蔵物 原所有者が存在しない

発見者と土地の所有者が応分の割合で所有権を取得

遺棄物 原所有者が存在しない

発見者が所有権を持つ

Page 34: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の売買

34

売主の所有権の正当性が問題に 対策:登記(以下のような合理性)

① 買主の調査費用を節約

② 窃盗のリスクを低下

③ 担保設定によるファイナンスが可能

④ 保険加入によるリスク分散

⑤ 安全規制(自動車、銃等)

Page 35: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の売買

35

登記の経済合理性 物の価値が高い程、経済合理性は高い 有形資産よりも、無形資産の方が経済合理性は高い

Page 36: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の売買

36

取得の経緯 善意取得ルール

買主が善意に取得した場合は売主に所有権が無かったとしても、買主に所有権が移転→買主に盗品かどうかを確認するインセンティブはないので、窃盗を抑制できない

原所有者ルール 原所有者が不当に奪われたことを証明できれば買

主は原所有者に返還義務あり→窃盗を抑制できる

Page 37: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の売買

37

売買に関する国の規制 負の外部性が大きい→銃、麻薬 情報の非対称性が大きい→処方薬 パターナリズム(社会的に望ましくない消費を抑制)→アルコール、タバコ、成人雑誌

Page 38: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:物の贈与

38

贈与 贈与者にとって、感謝される事に関する効用と財の交換

通常、贈与は過少となる 贈与者は受贈者が得る価値を認識していない(情報の非対称性)

政府による促進が必要減税情報提供:「 10 ドルでアフリカの子供に蚊帳が買える!」

Page 39: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:遺産相続

39

Dead hand コントロール 死後、自分の思い通りに財産をコントロールできるか 自分の思い通りにコントロールできなければ、無理にでも消費してしまう(効用が下がる)

従って、資産を残すことについての過度な規制は社会厚生上もマイナス

ただし、将来の不確実性を完全に予測して生前に計画することは不可能→国が介入した方が良い場合あり(ただし、贈与者が生きている間は介入すべきでない)

Page 40: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:遺産相続

40

Dead hand コントロール 国の規制・対応

遺贈や信託が公共の利益に反するもの→ NG ただし、シプレー原則(信託目的の実現が違法、不可能、不適切な場合にも当該信託の設定を失効させず、遺言者の示した一般的な公益に寄与したいとする意図に従って他の類似する目的のために存続せしめる)あり

将来の長きに渡って受贈者に権利が与えられないもの(子孫の中で最初に議員になるものに与える等)は認めない

Page 41: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:遺産相続

41

遺言 行為能力が存在する間に贈与者の意思を示す(効用を高める)

国の対応・規制 負の外部性→経済格差の拡大を防ぐために課税(相続税)

遺留分の設定→第三者へ相続(配偶者や子供にとっては外部性)されることにより、生活が困窮することを防ぐ

Page 42: 20160124 第1回法と経済学勉強会

第 4 章:取得時効

42

取得時効 占有者が一定期間、占有を継続した場合は時効による取得が認められる 所有権者が明確ではなく、売主が正当な権利を

持っているかどうか不明な場合、長期間占有している=実質的な所有者と認める(そうでなければ過去に遡って所有権者を確認する必要有り=コスト増)

ただし、占有者が無許可で使用しないように監視する費用(無駄なコスト)が発生

Page 43: 20160124 第1回法と経済学勉強会

ディスカッション

43

難しかったところなどをグループ内でディスカッションしてください。その他のテーマとして、例えば− 法律の適用→前例主義?経済合理性?− 共有地の悲劇(ギャレット・ハーディン):共有の牧草地に酪農家が好き勝手に牛を放すと、草が食べつくされてしまう可能性がある− フィンテックが法と経済学に与える影響(例えば、ブロックチェーンを利用した登記制度)