36
第 7 第第第第第第第第第 第 16 第第第第第第第第第第 第 17 第第第第第第第第第第第第 2017/2/5 FED 第第第 1

20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

  • Upload
    fed

  • View
    42

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

第 7 回法と経済学勉強会第 16 章その他の種類の契約第 17 章訴訟についての基礎理論

2017/2/5 FED 事務局

1

Page 2: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

Ice Break

経済学でいう合理性とは何か?

2

Page 3: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

目次• 第Ⅰ編 所有権法• 第Ⅱ編 事故法• 第Ⅲ編 契約法• 第Ⅳ編 訴訟及び手続法• 第Ⅴ編 公的機関による法のエンフォースメント及び刑法• 第Ⅵ編 法の一般構造• 第Ⅶ編 厚生経済学・道徳・法

3

Page 4: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

目次• 第Ⅲ編 契約法

– 第 13 章 契約外観– 第 14 章 契約の締結– 第 15 章 製造物供給契約– 第 16 章 その他の種類の契約

1. 物の所有権を移転する契約2. 贈与契約• 第Ⅳ編 訴訟及び手続法

– 第 17 章 訴訟についての基礎理論1. 訴訟の提起2. 私的に望ましい訴訟の水準と社会的に望ましい訴訟の水準との間の根本的な乖離3. 和解と事実審理4. 和解についての指摘に決まる水準と社会的に望ましい水準との乖離5. 事実審理と訴訟の費用

4

Page 5: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

1. 物の所有を移転する契約• 物の所有を移転する契約:新たに物を製造して供給するのではなく、すでに存在するものを譲渡する契約

– 不動産、絵画、その他の芸術品、中古品あるいは在庫品の所有権を移転する契約• 契約外の第三者が申し込みをしてくる状況a) 第三者はもっぱら売主に対して申し込みをする場合b) 第三者はもっぱら買主に対して申し込みをする場合c) 第三者は買主に対しても売主に対しても申し込みをすることができる場合

5買主

第三者 売主

(b)

(c)

(a)

Page 6: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

完備特定契約 (1.2)

• 完備特定契約:契約外の第三者がしてくる申し込みの内容に応じて、売主は契約の目的物を買主に(第三者ではなく)引き渡すべきか否かを逐一定めているような契約。• 契約外の第三者が契約上の売主に対してのみ、申し込みをしてくる場合:完備契約の内容→買主の評価額>第三者の申込額の時のみ、売主に対して履行を要求するものになる。

6

Page 7: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

完備特定契約 例 1 (1.2)

• 契約の対価: 80→55 に変更• 買主の評価額 :100 (買主にとっての契約の価値 :20 )• 売主は第三者による申込が x5 0もしくは 90 の時のみ、履行すれば良いとする。

7

第三者の申込価格 確率 期待値50 50% 60%×(100-55)=27(> 買主の価値 20)90 10%

150 40%60%×55+40%×150=93>( 売主の価値

80)

Page 8: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

完備特定契約 例 1 続き (1.2)

• 契約の対価: 80→55 に変更• 買主の評価額 :100 (買主にとっての契約の価値 :20 )• 売主は第三者による申込が50の時のみ、履行すれば良いとする。

– 買主の期待価値: 50%×(100-60)=20– 売主の期待価値: 50%×60+10%×90+40%×150=99

• 契約を修正。第三者の申込価格が 50 の時と 90 の時には売主は履行しなくてはならないものとする。→ 買主は契約の対価をより高くしても良いと考え 55→65 に変更する。– 買主の期待価値: 60%×(100-66)=20.4– 売主の期待価値: 60%×66+40%×150=99.6

• 常に契約を履行するよりも売主、買主双方にとってメリットがある。8

Page 9: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

例のまとめ• 「第三者の申込価格 < 買主の評価額」の時のみ、履行が行われるものとすることにより、契約当事者が分け合うことの出来る契約の価値の合計は最大になる。• 第三者の申込価格が買主の評価額を下回るにも関わらず、第三者に売却された場合、買主が第三者から買い戻しをできたとしても結論は変わらない。  →第三者に資金が流出しているため契約価値の合計が減少してしまう• 第三者の申込価格 < 買主の評価額の時は常に売主は買主に対して履行しなくてはならないという契約を結ぶことが当事者双方にとって利益となる

9

Page 10: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

完備特定契約 例 2

• 第三者による申込みは契約上買主のみに対して行われる。• 契約の対価は 60• 目的物が買主に対して譲渡されるのは第三者の申込価格が 50 と 90 のみ

– 買主にとっての価値: 60%×(100-60)=24– 売主にとっての価値: 60%×60+40 % ×10=40 (10 は目的物の売主にとっての価値。第三者には売却することはできないと仮定されている )

• 第三者の申込価格が 150 の時、買主は転売する。• 契約を修正して対価を 70 とする。

– 修正後の買主にとっての価値: 60%×(100-70)+40%×(150-70)=50

10

Page 11: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

コメント (1.3)

• 相互の利益となることと社会にとって望ましいこととの関係– 完備特定契約は、「目的物に対する買主の評価額>第三者の申込価格」の時はいつでも履行が行われるようにすることが、契約上の買主と売主の双方にとって望ましい。– 買主が第三者から目的物を買い取る必要が生じることを両当事者が望まない理由は、それによって第三者に資金が流出してしまうから。

• リスク回避– 当事者がリスク回避的な場合でも、履行が行われることが相互の利益となるかという問題には影響を及ぼさない。– 第三者のする申込について不確実性があるという状況で問題になるリスクは、より高い価格で第三者に売却できる可能性があるという意味で「有益なリスク」となる。

11

Page 12: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

契約違反に対する救済• 申込が契約上の売主に対してのみなされる場合

– 履行利益の賠償基準(損害賠償の額を履行の価値と等しくする算定基準P349 )が、契約違反に対する相互の利益となる救済手段

• 申込が契約上の買主に対してのみなされる場合– 強制履行を認めることにより、相互の利益となる完備特定契約と同じ結果を実現できる。買主に第三者への転売の機会を与える。

• 申込が契約上の買主に対しても契約上の売主に対してもなされる場合– 「履行利益の基準」、「それよりも高額な損害賠償の算定基準」、及び「強制履行」により、相互の利益となる完備特定契約と同じ結果を実現できる。– もしも裁判所が履行の価値を過小評価する可能性があるなら、強制履行は履行利益の基準よりも両当事者にとって望ましい。

12

Page 13: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

その他の論点• 強制履行の望ましさ (1.6)

– 履行利益の賠償基準を採用すると裁判所が履行の価値を過小評価する可能性がある。– 買主と売主がともに第三者から申込を受ける可能性がある場合は履行利益の賠償よりも強制履行を望む

• 契約法の現状 (1.7)– 英米法は契約違反に対する通常の救済は履行利益の賠償– フランス法は所有権移転する契約にお知恵、強制履行は標準的な救済手段に対し、物を製造する場合の救済手段は損害賠償である。– ドイツ、日本では、すべての契約において強制履行が認められている。

• 製造物供給契約との違い (1.8)– 製造物供給契約の場合には、強制履行の決定は望ましくない。一方、物の所有権を移転する契約では、強制履行は履行の決定に対して有益な効果を持つ。

13

Page 14: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

贈与契約 • 意義と検討 (2.1)

– 贈与契約:贈与者と受贈者に対してある物を譲渡することを約す一方、相手方はそれに対して直接の見返りになるようなことは何も役さないという契約。• 論点

– そもそもなぜ贈与が起きるのか• 利他主義  ( 贈与者が受贈者の厚生が増進することから効用を得る。 )(2.2)

– 贈与者が物をすぐに相手に贈らずに後日に先延ばしをすることがあるのはなぜか– 後日に物を贈ろうとする人が、契約によってその義務を負担しようと考えるのはなぜか

14

Page 15: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

利他主義的な贈与者が贈与を先延ばしする理由 (2.3)  • 贈与者の資産が流動性を欠く ( 贈与するお金を今すぐに作れない )

• 受贈者が実際に資金を使う必要が生じるまでに間があり、そしてその間は贈与者の方が受贈者よりも資金を効率的に増やせる。• 不確実性

– 贈与者の将来の経済性の変動– 受贈者の資金需要や経済状態の変動や人間性の変化

15

Page 16: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

利他主義的な贈与者が贈与契約を望む -あるいは望まない - 理由 (2.4)• 受贈者の信頼を引き出すこと (インセンティブ )

→ 常に契約は必要はない。必要になるのは贈与者の財産状態あるいは利他主義的な感情について受贈者がよく知らない場合のみ

16

Page 17: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

インプリケーション及びその他の動機• 契約法におけるインプリケーション (2.5)

– 贈与者は受贈者の信頼を引き出すために贈与契約を結びたいと考える可能性がある。  →法は贈与契約の効力を認めるべき。– 贈与におけるシグナリングと不確実性  →法は贈与者が契約上の義務を負担することなく贈与の意図を公言することも認めることが望ましい。

• 利他主義以外の贈与を行う動機 (2.6)– パターナリズム・・・パターナリスティックな贈与者は、利他主義的な贈与者と比べると、贈与者が望む行動を受贈者にしてもらうために贈与契約を結ぶ必要がある場合が多くなる。– 他人から感謝されたいという願望や名声を高めたいという願望

17

Page 18: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

ディスカッション• クラウドファンディングのような寄付の仕組みはどのようなインセンティブ設計が望ましいのか?

18

Page 19: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

第 17 章 訴訟についての基礎理論

訴訟するかどうか訴訟する 事実審理

和解被告から何らかの支払い和解不成立→ 訴訟

19

Page 20: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

訴訟の提起• 訴訟の提起のて定義 (1.1)

– 裁判手続きと事実審理を進めるために、費用のかかる最初のステップを踏むこと

• 訴訟を提起する私的インセンティブ (1.2)– 原告が訴訟を提起するの訴訟の費用が訴訟から得られる便益の期待値(期待便益)を下回る時– 訴訟の費用が低いほど、事実審理を経た判決で勝訴する可能性が高いほど、そして勝訴した時に得られる金額が大きいほど、訴訟が提起される可能性が高い

• 訴訟の件数とその費用 (1.3)

20

Page 21: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

私的に望ましい訴訟の水準と社会的に望ましい訴訟の水準• 訴訟を提起する私的なインセンティブは社会的に最適なインセンティブとは根本的に乖離しており、そしてその乖離はどちらの方向に向かうこともありうる• 訴訟の社会的費用と私的費用は乖離している。

– 訴訟が過剰に提起されることがありうる• 訴訟の社会的便益と私的便益も乖離するため、訴訟の件数は社会にとって不十分になりうる。

– 私的便益は被告からの所得の移転に過ぎず、訴訟の社会的便益よりも大きいこともあれば、小さいこともある。

21

Page 22: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

単純なモデルによる乖離の分析 例 1

– 事故により被害者が受ける損害: 10,000ドル– 被害者が訴訟の提起のために要する費用: 3,000ドル– 加害者が防御するための費用: 2,000ドル– 事故が起きる確率: 10 %– 訴訟費用の期待値: 10 % ×(3,000+2,000)=500ドル

→ 訴訟が事故のリスクを低減するインセンティブを生まないので訴訟が社会にとって望ましくない→被害者は 10,000ドルという私的便益を得るために訴訟を提起してしまう。

22

Page 23: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

単純なモデルによる乖離の分析 例 2

– 事故により被害者が受ける損害: 1,000ドル– 加害者は 10ドルかけることにより事故の確率を 10 %から 1 %に減少させられ得る。– 被害者が訴訟の提起のために要する費用: 3,000ドル– 加害者が防御するための費用: 2,000ドル– 事故が起きる確率: 10 %– 総社会費用: 10 % ×(1,000)=1 00ドル

→ 訴訟が提起されるなら総社会費用は 10+1%×(1,000+3,000+2,000)=70ドルになる。そのため、社会にとっては被害者が訴訟を提起する方が望ましい。

23

Page 24: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

乖離についてのさらなる検討: その重要性と含蓄 (2.3)

a) 過失責任の下における私的な訴訟のインセンティブと社会的に最適な訴訟の水準の乖離• 訴訟しても被害者は敗訴するため、過失責任システムが完全に機能していれば、過失によって生じた損害は決して訴訟にならない。

b) 社会的に最適な訴訟の水準と私的な訴訟のインセンティブとの乖離の一般性• 契約上の紛争においては、訴訟の私的インセンティブと社会的に望ましいインセンティブは大まかに一致する。• 契約当事者は契約上の紛争により生じる損失と訴訟の費用の合計を最小化するような契約上を約定する。

c) 乖離の実際的な重要性• 訴訟の私的費用、社会的に費用、訴訟の私的便益と社会的便益の乖離は相当的に大きい。

d) 訴訟の費用により注意水準が過少になること• 加害者のインセンティブを最適にするためには加害者は被害者に直接加えた損害だけではなく、被害者と国が負担する訴訟の費用についても責任を負うべき

24

Page 25: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

インセンティブを矯正する法政策• 国が社会にとって望ましいかどうかを判断するためには、膨大な情報を要する。• 訴訟の費用によって注意水準が過少になるという問題

– 訴訟が提起された場合には、有責な被告が支払うべき金額  →「被害者に対して直接加えた金額」     + 「被害者と国が負担した訴訟の費用」

25

Page 26: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

関連する問題についてのコメントa) 訴訟の提起数を改善するために誤って提唱されている法政策

• 国にかかる訴訟の費用を原告に支払わせること• 訴訟の費用の敗訴者負担(訴訟を促進させる)

b) インセンティブを矯正する法政策の実施状況• 自動車事故又は製造物の事故についての本格的な研究の結果、訴訟の提起は過剰であることが示唆されれば、この種の事件については原告に対して訴訟の費用を負担させるか、あるいは訴訟そのものを禁じることが考えられる。

26

Page 27: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

和解と事実審理単純なモデル• 明らかに事実審理の結果について原告と被告が同じ信念を抱いている時、相互の利益となる和解の機会は常に存在する。

– 被告と原告の期待値はともに 5,000ドル。事実審理にかける費用が 1,000ドルとした場合、 4,000 ー 6,000 のレンジが和解となる。

• 判決で被告が支払いを命じられる金額に関して原告が抱く期待値と被告が抱く期待値の差が、両当事者が事実審理にかける費用の合計額を上回らない限り、相互の利益となる和解の機会は存在する。27

Page 28: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

例• 原告の期待値: 70%×100,000=70,000ドル• 原告が事実審理にかける費用: 20,000ドル• 被告の期待値: 50%×100,000=50,000ドル• 原告が事実審理にかける費用: 25,000ドル• 期待値の差額: 70,000-50,000=20,000• 両当事者が事実審理にかける費用の合計 :20,000ドル +25,000=45,000ドル

28

Page 29: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

モデルの解釈 (3.2)a) 相互の利益となる和解の機会が存在することは、和解が必ず行われることを含意するのか?

• 行われることもあれば、行われないこともある。3.3や 3. 4 で検証。

b) 当事者の信念• 原告が勝訴する確率について、原告自身が信じる値が被告の信じる値よりも大きいほど、和解が行われる可能性が低くなる。• 原告の勝訴確率についての原告自身の信念が、被告のそれを下回っている時は相互の利益となる和解の機会が常に存在する。• 判決額に関する信念が違えば、和解の機会の存否にも影響を与える。

c) 判決額• 他の条件を一定とすると判決額(判決により被告が支払いを命じられる額)が増加するほど、訴訟は事実審理に進む可能性が高くなる(判決により得られる金額が大きくなるほど、勝訴確率についての当事者の予想の違いの影響が増幅されるため)。

d) 事実審理のための費用• 各当事者の事実審理に要する費用が大きいほど、訴訟が和解で終わる可能性が高くなる。

e) リスク回避• リスク回避的である過程を加えた場合、和解の可能性を高める方向に動く(事実審理に進むことはリスキーな行動のため)

29

Page 30: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

交渉過程と情報構造を明示したモデル

Type 存在割合 勝訴確率 期待値A 10% 100% 100,000B 60% 50% 50,000C 30% 20% 20,000

30

• 原告が勝訴した場合: 100,000ドル• 原告の事実審理にかかる費用: 10,000ドル• 被告の事実審理にかかる費用: 10,000ドル• 被告は下記3パターンのどれかわからない

原告が 60,000ドルを要求した場合の原告の期待利益70 % ×60,000+ 30 % ×(20,000-10,000)=45,000

原告が 110,000ドルを要求した場合の原告の期待利益10 % ×110,000+ 60 % ×(50,000-10,000)+30%×(20,000-10,000)=38,000

→ 訴訟が事実審理に進むことがあるのは、情報の非対称性が存在しているため

Page 31: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

情報構造を明示したモデルについてのコメントと解釈 (3.4)a. 交渉プロセスについての仮定のヴァリエーション

– モデルの過程を変えたとしても事実審理に進む可能性はあり、その原因は情報の非対称性にある。– 私的情報を有する当事者が申し込みをするケース、両当事者が申し込みを交互に繰り返す場合、原告と被告の双方が私的情報を有している場合

b. 私的情報の性質– 当事者が事実審理に要する費用、当事者のリスク負担能力、資金需要

c. 単純なモデルとの関係– 単純なモデルと交渉プロセスと情報非対象を明示したモデルは概ね整合的– 和解の確率や和解額は仮定によって決まる。– 両当事者は和解に至るために情報を共有する強い動機を持っていることが多く、共有を義務付けられることもあるが、情報の非対称性が存在することを前提にしている。

31

Page 32: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

和解についての私的に決まる水準と社会的に望ましい水準との乖離 (4.1)• 訴訟の当事者は事実審理のために社会が必要とする費用の全てを考慮しない (裁判官や補助職員の給料、陪審員の機会費用等 ) ために、和解の誘引が過少になるかもしれない。→ 当事者は社会にとって望ましい水準以上に、訴訟を事実審理に持ち込むことがありうる。• 情報の非対称性が存在すると当事者が相手方の状況を誤って予想する結果、和解が決裂する可能性がある。• 和解が抑止効果に影響をする。

– 和解が抑止効果に与える影響は和解の私的インセンティブと社会的に望ましいインセンティブとの乖離をもたらし得るが、いろいろな理由から、どちらの方向に乖離が生じるかについては一般的なことは言えない。

32

Page 33: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

和解についての私的に決まる水準と社会的に望ましい水準との乖離 続き (4.2)

• モデルの枠外にある考慮要素– 和解は当事者の秘密(プライバシー)を守る手段になる 事実審理を通じて法の解釈が確立したり、新しい判例が生まれることがありうる。裁判所が法的帰結を正当化するために社会規範を公に持ち出すといった形で、社会規範が事実審理によって認証されることがあるかもしれない。 事実審理の場において人々が不満を公にし、自分の意見を述べる機会が与えられることにより、社会の平和が保たれ、社会的団結が促進される。 

33

Page 34: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

「和解か事実審理か」に関する法政策(4.3,4.4)

• 和解を促進させることの正当化する主張– 訴訟を迅速に処理することが私的な費用と公的な費用の双方を節約する。

• 社会的に事実審理をした方が良い可能性– 和解によって被告の属性や侵害の事実、被告がとった行動の重要部分が公にならないことにより、抑止効果が損なわれる可能性があってまで和解を促進させるべきか

• 事実審理が存在する理由– 事実審理を実際に行わせるためではなく、むしろ加害者を和解に応じさせるために必要な脅しの手段を被害者に与えるため

34

Page 35: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

訴訟にかける費用についての私的インセンティブと社会的に望ましいインセンティブ(5.1-5.3)

• 当事者が訴訟に費用をかけると、勝訴確率が上昇したり、判決の金額や内容に対して、有利な影響を与えることができる。• 両当事者がかける費用が互いに効果を打ち消しあって、社会的に価値がほとんどなくなる。

– 両当事者が同等の重みはあるが見解は正反対の法律意見書を提出したり、同等の説得力を持つが評価は正反対の鑑定人を雇うなど。

• 有責な被告が訴訟に費用をかけることで、本来は責任を負うべき損害について責任を免れる(抑止効果の滅殺)。→私的な価値はあっても、社会的にはマイナス。• 当事者は費用が訴訟の結果に与える影響のみを考えて、訴訟に費用をかけるかどうかを判断する。  →社会的に望ましい費用水準と比較して、当事者がかける費用が過剰になったり、過少になったりする。

35

Page 36: 20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章

訴訟の費用についての法政策• 費用の支出は補助金によって促進することもできるし、逆に手数料の負荷や課税によって抑止することもできる(ピグー税)• 訴訟にかける費用は実体法のルールを改正することによっても制御ができる。

– 損害賠償を詳細な立証によって決めるのではなく、一定の数表に基づいて決める。• 裁判手続きの改正によっても変更が可能。

36