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Japan Academic Society of Nursing Education
NII-Electronic Library Service
Japan Aoademio Sooiety of Nursing Eduoation
【原 著】
看護 の 対 象理 解 に 関す る 自己 評価 尺 度 開発 に お け る 初期 的研 究
一 質的 帰納的研 究成果 に 基 づ く質問項 目の 作成 と選 定 一
川 島 理 恵 (福 島県立 医 科大学)
定廣和香子 舟島な を み (千葉 大学 )
杉森 み ど里 (群馬 県 立 医 療短期大学)
Initial Study in Development of the Self−evaluation Scale of Nurse’
s Understanding of the Patient
− Making and Selecting of ltems of the Scale on the Qualitative and lnductive Study一
Ne Kawashima RN ,MNS * ] Wakako Shadahiro RNpNSc
* 2 Naomi Funashima RN .DNSc
* 3
Midori Shugimori RN ,BLL* 4
* 1School
of Nursing, FUkushima Medical University
* ‘
Gunma Prefectural College of Health Sciences
* 2 * 3School ofNursing ,Chiba Universit}’
Abstract
The purpose of this study was to develop a selfLevaluation scale to measure the level of nursels understanding of the patient.
Theoretical f士amework f‘〕r the study 、yas based on‘‘concepts explaining patient behavior
”developed by qualitative and
inductive study , This study compdses three phases. In phase 1,decisions、、・ere made for about f。 rmating of the scale . In phase 2,
content validity of dle scale was disccussed and the scale was deveioped. In phase 3. the scale “’as mailed to subjects .
In phase l, several Gontents were examined , which were stnlcture and expression of sentence , arrangement of items,composition of subscales . numbers of items,も
『pe of scale , and levels and expression of selection . In phase 2, establishing content
validity , the scale was discussed by expert nurses about appropriateness , comprehensibility , and usabihty . Based on the discussion.the scale was refined {md named
“SelfLEvaluation Scale of Nursels Understanding of the Patient(Pri !y Edition)
”,
“P・im ・ry Editi・ n
”w … s・lf−・val 聞 ti・n ・cale c… i・t・d 。f 45 it・m ・ 9r・up ・d i・t・ 5 ・ub ・ca1 ・・ whi ・h ・・ r ・・p ・・d,d t。
“con 。epts for explaining patient behavior” ,and rated along 5−point Like貫 s。ale . In phase 3,
“Prirnary Edition
”was mailed
to 970 random1 }・se 】ected hospital nurses an over Japan.510 vahd responses were analyzed , The result of Cronbachls Alpha
reliability coefficient showed the internal。 onsistency of“Primary Edition”satisfactory . The result ef factor analysis showed
construct 、’alidit
}・of
‘‘Pr血 1a弓r Edition” unsatisfactory .
1・ di・cussi ・ n,28 it・m … e ・e fi・・11}:
・el・・t・d ・ n th・ b・・i・ ・f Ih・ ・e ・ult・
・f fa・t・・ amly ・i・, F嘸 ・e, f・ ・ imp,。 v ,m t
selfLevaluation scale of nurse「
s understanding of the patient, it is necessary to examine reliability and validity of 出e scale
consisted of 28 items.
Key Words : self −evaluation
nurse「s understanding of the patient
scale developrnent
自 己 評価
看護 の 対象 理解
尺 度開発
[要 旨]
本研 究 の 目的 は 、看護 の 対象 理 解に 関す る自己 評価尺 度 の 開発 に 向け て 質問項 目を作成 し、そ の 中か ら適切な
質問項 目 を 選定す る こ と で ある。質 問項 目作成 の 枠組 み に は 、質 的帰納 的研究 の 成 果 で あ る患者行動 を説 明す る
26 看護教育学 研 究 Vol.9 No 」 2000
N 工工一Eleotronio Library
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5 概念 を用 い た 。
本研 究は、質 問項 目の 作成 と尺 度化 (第 1段 階) 、作成 した質 問項 目の 内容的妥 当性 の 検討 とそれ に基 づ く修
正 (第 2 段 階) 、作成 し た 質問項 目 で 構成 し た 尺 度 を用 い る調査 の 実施 (第 3 段 階) の 3 段 階を経て 行 っ た。
第 1段 階に お い て は 、質 問項 目に関 し、成 文化す る形式 、用 い る 語句 と構 文 の 表現、配置 と下 位尺 度 の 構成 、
項 目数、尺 度 の タイ プ 、選択 肢 の 数・表 現 を 検 討 し た 。第 2 段 階 に お い て は 、専門家 会議開催 に よ る 質 問項 目 の
適切性 、網羅性 、実 践 にお け る活用 可能性 の 検討 と、そ の 結果 に 基 づ く修 正 を行 い 、 「看護 の 対象理解 に関す る
自己 評価尺度 (予備 調 査 版) 」 を作成 し た。こ の 予 備 調査版 は 、患者行 動 を説 明する 5 概念に 対応す る 5 下位 尺
度 45 項 目か ら成 る リ ッ カー
ト型 尺 度 で ある。第 3 段 階にお い て は、予備調 査版を 用 い 、無作為に抽出 し た 全国
の 病 院に勤務す る看 護婦 ・士 970 名 を対象 に、郵送法 に よ る調 査 を 実 施 し た。 こ の 調 査 か ら得 た 有 効 回 答 510 を
デ ータ と し、ク ロ ン バ ッ ク α 信頼性係 数 の 算出及 び 因子分析を 実施 し た結果 は 、予備調 査版 が 、 内的整 合性 に よ
る 信 頼性 を確 保 し て い る こ と、構成概念 妥 当 性 を 確 保 して い な い こ とを明 らか に し た 。そ こ で 、考察に お い て は 、
各 質問項 目を因子分 析 の 結果 に 基 づ い て 検討 し、信頼性 と妥 当性 を確保 した 尺度 開発 につ な が る適切 な質 問項 目
と して 、28 質問項 目を選 定 し た 。
看護の 対象 理 解に 関す る 自己評 価 尺度の 開発 に 向け て 、こ の 28 質問項 目 で 構成す る 尺度 の 信頼性 ・妥 当性 を
検証する こ とは 今後 の 課題 で あ る。
1.緒言
看護は、看護婦 ・士 と患者あるい は ク ライ エ ン トが 目
標 達成をめ ざす入間 的 な 相 互 行 為 の 過 程 で あ る1)。患者
あ るい は ク ラ イエ ン トは 看護 の 対象 で あ り、看護婦・士
の 適切な対象 理 解 は、相 互 行為 に お け る 目標 達成 を促進
す る1]。し か し、看護実践に 関する 研究
コ/‘/’)
は 、看護
婦 ・士 が対 象 理 解 に 困 難を感 じて お り、必ずし も適切 に
対象を理解 して い ない 現状が存在する こ とを示唆 して い
る。
そ の よ うな現状を改善す るた め には、看護婦・士 個々
が対象理解に 関する 自己 評価‘)
を行 うこ とが必 要不可欠
で ある。看護婦・士 が、対 象 理解に 関す る 自己 評価 を行
う こ と は、対 象 理 解 に 関わ る 自分 自身の 行動や態度を 評
価 し、それに基 づ い て 自分 自身の 状況 を確認 し、行動 を
改善、調整する こ とに つ なが る。
看護婦 ・士 の行 う自己 評価が対象理解 の 現状改善に役
立 っ も の とな る た め に は 、第一
に、そ の 自己評価が、現
実適合性の 高い 対象理解 の 枠組み に基づ い て い る必 要が
あ る.そ の た め に は 、論理 演繹的 に構築された枠組み で
はなく、現実適合性の 高い 枠組 み を生み出す質的帰納的
研究’]に よ っ て 導 き 出 され た 枠組 み を用 い る こ と が 有効
で あ る 。 また、第二 に、自己評価 が客観的な実態把握に
基 づ い て い る必 要があるS)。そ の た め に は、看護婦 ・士
が対象理解の 現状 を客観的に把握で きる、信頼性 ・妥 当
性 を確保 した 自EL評価 尺 度 を 用 い る こ とが有効 で あ る。
これ らは、質的帰納的研究が導き出 した現実適合性 の 高
い 看護 の 対 象理 解に 関 す る枠組 み に 基 づ く、信頼性 ・妥
当性 を確保 した 自己評価 尺 度 の 存在が、対象理解 の 現状
改善を め ざす看護婦 ・士 の 支援 と な る こ とを 示 唆す る.
しか し、質的帰納的研 究 の 成 果 が導 き出 し た現 実適合
性 の 高 い 枠組 み を基盤 に開発された、看護婦 ・士 を対象
とす る自己 評価尺 度と し て 、看護の 質に 関 する 自己評価
尺度 ま存在する が 、看護 の 対象理 解に 関す る 自己評価
尺 度 は 存在 し な い 。
一般 に、尺度開発 は 、測定対象の 明確化、質問項 目の
作成 、予 備調査 の 実施 、項 目の 選定、本調査 の 実施 、信
頼性 ・妥 当性 の 検討 の 段 階を経 て 進む1¢ ]t
。ま た 、こ れ
らの うち質問項 目の 作成は、尺 度 の 信頼性 ・妥 当性 を 決
定す る 主要 因 とな る、最 も重要な段 階 で あ る]1}.
本研 究 に お い て は 、現実適合性が高 く、信頼性 ・妥 当
性 を確保 した 看護の 対象理解に 関する 自己評価尺 度の 開
発 を最終的に め ざ し、そ の 初期的段階に位置す る研究 と
し て 、質問項 目の 作成 と選 定 を試 み た。
E .研 究目的 ・目標
1 .研究 目的
現実適合性 が 高 く、信頼性・妥 当性 を 確保 した 看護 の
対象理解に関す る自己評価尺度の 開発 を め ざ し、そ の初
期的段階 に位置する 研 究と して、質問項 目を作成 し、適
切な質問項目 を 選 定す る。
2.研究目標
1 )質的帰納 的研究 の 成果に基 づ き、看護 の 対象理解に
関す る自己評価 の た め の 質問項 目の 作成 と尺度の 構成 を
行 う。
2 ) 1 )で 構成 し た 尺 度 の 信頼性・妥当性 を検証 し、そ
の 結果 に 基 づ き、信頼性 ・妥 当性 の 高 い 看護の 対象理 解
に 関する 自己 評価 尺 度 の 開発 に つ なが る適切な質問項 目
を 選 定す る。
看護教 育学研究 VoLg No 」 2000 27
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皿 .本研究 の 理 論的背景
1.本研究を支える前提
本研 究 は、方法論的研 究]3)
で あ り、そ の 理 論的枠組 み
を明確 にす る必要があ る.本項にお い て は、そ の 前提 と
し て 、本 研 究 に お け る 基 本概念 で あ る 「看護 」 、 「人
間」 、 「看護婦 ・士 」 、 「自己 評価」 に つ い て規定する。
1)看護 (nursing )
「看護 とは 、看護婦 ・士 とクライ エ ン トの 人間的な相
互 行為 の プ ロ セ ス で あ り 、 そ の プ ロ セ ス によっ て 、 各人
は、他者 とそ の 置 か れ て い る状況を知 覚 し、コ ミュ ニ ケ
ーシ ョ ン を通 じて 目標 を設定 し、手段 を探求 し、目標達
成の 為の 手 段 に 合意する こ とで あ る」14〕
。看護の 目標 は 、
「健康 へ の 到達、保持、回 復の た め に 個 人 な らび に集団
を援助す る こ とで あ り、こ れ が 不可能な場合 には、個 々
人 を人間 として の 尊厳 を保 ちっ っ 、死 に臨む こ とが で き
る よ うに援助す る こ とで あ る」” 1。
2 )人間’‘/
(human being)
・人問は、社会的存在で ある。
・人問 は 、感覚を持っ 存在で あ る。
・人闘は、理性を持 つ 存在 で ある。・人 間 は、対 応す る 存在 で あ る。・人 間は 、知覚する存在 で あ る。・人間 は 、自律的存在 で あ る。・人問 は、E 的を 持 っ た 存在で あ る 。
・人 間 は、行為志 向 的な存在 で あ る。
・人間は、時間志向的な存在 で ある。
3 )看護 婦 ・士 (nurse 、皿 ale nurse )
看護婦 ・士 とは、看護基礎教育課 程 を修 了 し、自国 に
お い て 看護 を実践す る 資格 が あ り、そ の 権限を与え られ
た 者で あ る11/。我 が 国 に お い て は、保健婦助産婦看護婦
法 の 規 定 に よ り、免 許 を 受 け た 者 を指す。
4 )自己評価 (self −evaluation )
自己 評価 とは、学習者が 学習活動 へ の 主 体的参加、自
己理解 の 深化、自己教育力 の 強化 をめ ざ し’81
、自分 の 学
業、行 動 、性 格 、態度な ど に っ い て 、何 らか の 指 標 を も
とに情報 (知 見 )を得 る こ とに よ り、自分の今後の 学習
や行動 を 改善、調 整す る一
連 の 行動 で あ る’9/
。 自己 評 価
が有効 で あ る ためには 、明確 なパ ース ペ クテ ィ ブを文脈
的背景に持 つ こ と、客観的な実態把握に基づ く こ と、適
切な目標 との 関係 で 評価す る こ とが 重要 で あ る1°)
。
2 .文 献検討
1)看護婦 ・士 の 対象理 解の 状況を明 らか にする視点
看護の 対象理解に 関す る自己 評価 尺 度は、看護婦・士
が そ れ を 用 い て 自己 の 対 象理 解の 状況 を 明 らか にする こ
とを め ざす 。 そ こ で 、看護婦 ・士 の 対象 理解の 状況 を質
28
的帰納的 に 明 らか に した 研究を概観 し、看護婦 ・士 の 対
象理 解の 状況 を明らか にす る視点を検討 した。
看護婦 ・士 の 対象理 解の 状況に焦点をあ て た 質的帰納
的研究は 2 件存在 した。
第 1の 研究21)
は、看護婦 ・士 の 臨床 に おけ る意志決定
過程 の 中に看護 の 対象理解 を位 置づ け、そ の 解明を試 み
て い た。データは、心臓病病棟に勤務す る看護婦 ・士を
対象 に 、面接と、患者との 相互行為場面 の 参加観察を通
して 収集 し て い た。 研究結果 は、対象理解 が 臨床 におけ
る意志決定過程 の 中心的要素 で あ り、看護婦 ・士が対象
理解にお い て 用 い る 4 つ の 方略を明 らか に した 。
こ の 研究は、心 臓病病棟 に勤務す る 看護婦 ・士 を 対 象
に 、面接 と、患者との 相互 行為場面 の 参加観察によっ て
収集 した デー
タを分析す る こ とに よ り、看護婦 ・士 が対
象理解 に用 い る方略を明 らか に して い る 。 こ の こ と は 、
相互 行為の 文 脈 に お い て 患者が 示す行動 に 着 目 し、そ の
行動 に 対す る看護婦 ・士 の 対応を通 して 、看護婦・士 の
対象理解 の 状 況が明らかにな る こ とを示 す。
ま た、第 2 の 研究z3
は、対象理解 を人間的な看護実践
に不可欠 で 価値 ある 要素 と して 位置づ け、対象理解 とい
う概念 を 分析 した。データは 、人 工 呼吸器離脱過程 に あ
る成人患者を看護の 対象 とす る熟練看護婦 ・士 に対す る
面接を通 して 収集した 。 研 究結果 は 、熟練看護婦・士 が
患者の 行動 に基 づ き、3 つ の 側面を重視 して 患者 を理 解
して い る こ と を 明 らか に した。
こ の 研究 は 、質の 高い 看護を提供する熟練看護婦・士
が 対象 理 解 に お い て 重視 し て い る側面を明 らか に し た意
義あ る研 究で あ る。しか し、人 工 呼吸器離脱過程 とい う
特定状況 に あ る 患者 との 相互 行 為に 焦 点 を 当 て た デ ータ
に 基づ くた め、研究結果 の 適用範 囲に限界を持つ 。こ れ
は、看護婦・士 と特定状況にお ける 患者 との 相互 行為場
面 で は な く、多様な患者に 共 通する相 互 行為場面 に焦点
を当て る こ とに よ り、看護婦 ・士 の 対 象 理解の 状況 が 、
対象 の 特徴にかかわ らず広範 に 明らか に な る 可能性 を 示
唆す る。
以 上 の 2 件 の 研 究 は 、い ず れ も研 究 方 法 論 に
Grounded Theory Approach を 用 い て い た。 Gr。 unded
Theor)・Approachは、社会学に お ける研究方法論 で あ り、
発 見 した 概念 を看護学的に 活 用する上 で 限界 が あ る2’♪
。
こ の こ とは、看護婦 ・士 が適切に 対象を理 解する た め に
は看護学独 自の 視点 に 立 脚 した成果 を 産出する研究方法
論 を用 い る必要性 を示唆す る。
以上 の 文献検討 に基づ き明確にな っ た、看護婦 ・士 の
対象理解 の 状況を明 らか に す る視点 は 、次 の 3点 で あ る。
看護婦 ・士 の 対象理 解 の 状況は、看護婦 ・士 一患者
看護教育学研究 Vol.9 No .1 2000
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相 互 行為 の 文 脈 に お い て 患者が示す行動 に 着 目 し、
そ の 行 動 に 対 す る看護婦 ・士 の 対応 を通 して 明 らか
に す る必 要が ある。
看護婦 ・士 の 対象理 解の 状況 は 、看護婦 ・士 と特定
状況にお け る患者との相互 行 為場面 で は な く、多様
な 患者 に共 通 する相 互 行 為 場 面 に 焦点を当 て て 明 ら
か にする 必 要があ る 。
行動 の 意味 は 、看護学的視点 に 立脚して 解釈する 必
要がある。
2 )看護 婦 ・士 と の 相 互 行為場 面 に お け る 看護の 対 象 の
行動に関する文献検討
こ こ で は 、看護婦 ・士 との 相 互 行為場面に おける看護
の 対象 の 行動 の 解明を試み た 研究を概観 し、本研究が採
用する看護 の 対象 理 解 の 枠組 み を検討す る 。
看護婦・士 との 相互行為場面 に おけ る看護の 対象 の 行
動 に 焦点 を 当て 、そ の 説明概念 を看護学的視点か ら質的
帰納的に創 出 した 研究は、3 件存在 した 。
第 1 の 研究n ]
は 、ま ず、デー
タ と して 入 院患者 と看護
婦の相互 行為場面 を収集 し、そ の 分析 を通 して 、入院患
者 の 行動を説明す る 8 つ の 概念を創出 し た。また、そ の
後、そ の 8概念の 洗練 と飽和化 をめざ し て、理論的サ ン
プ リン グ1’)
を行 い 、最終的 に、入 院患者 の 行動 を説 明す
る 9 つ の 概念を創 出 した。
第 2 の 研究2G〕
は 、デー
タと して 地域 で 生活す る ク ラ イ
エ ン トに 対す る保健婦 の 家庭訪問場面 を収集 し、そ の 分
析 を通 し て 、家庭訪問場面 に お け る ク ラ イエ ン トの 行動
を説明する 7 っ の 概念を創出 し た。
第 3 の 研究1t’
は 、デー
タと して 看護婦 が 入院患者に清
潔援助を提供す る場面を収集 し、そ の 分析を 通 し て、看
護実践場面 に お け る入 院患者 の 行動を説明す る 10 の 概
念を創出 した 。 また、そ の 後、そ の 10 概念 の 洗練 と飽
和化 をめざ して 、理論的サ ン プ リ ン グ28]
を行い 、最終的
に、入院患者の 行 動を説 明する 5 つ の 概念 を創 出 した 。
上 述の 3 件の 研 究は、い ずれ も後に、看護概念創出法z9}
と して 完成する、看護教育学独 自の 視点 に 立 っ 質 的帰納
的研究方法論を用 い て い た。ま た、看護婦・士 と の相互
行為場面における患者、あるい は ク ライ エ ン トの 行動を、
看護問題 とい う看 護学独自の 視点 に基 づ き分析 し て い た、
こ れ らは、上述の 3 件の 研究の 結果各々 が、看護 の 対象
の 行動 に っ い て 、看護婦 ・士 一患者相互行為 の 文脈 を反
映 し、看護学独自の視点 に 立脚 した高い 現実適合性 をも
つ とい う、本研 究 に お ける 看護 婦 ・士 の 対象理解 の 状況
を明 らか に す る視点 、 と合致す るこ とを示す。
一
方、各研 究が こ の よ うな患者、あるい は ク ラ イ エ ン
トの 行動を説明す る概念を導 き出 した 場面 は、そ れ ぞ れ
異な っ て い た。第 1 の 研究は全身衰弱状態にある コ ミ ュ
ニ ケー
シ ョ ン 障害を持つ 患者、思春期 の 心 理 的問題 を持
っ 患者等に 対す る多様な看護場面 に 、第2 の 研究は 地域
に 生活するクライ エ ン トへ の 家庭訪 問場面に、第 3 の 研
究は 清潔援助場面 に焦点を当て て い た。この うち、第 3
の 研究 は 、多様 な患者 と看護婦・士 との 相 互 行為 に 共通
す る場面 の一
つ で あ る清潔援助場面 に焦点を当て て お り、
本 研 究 に お ける 対象理 解の 視点 に 合致す る。
以上 に 基 づ き、本研 究 に おい て は 、看護の 対象理解に
関 す る 自己 評価 尺 度 の 開 発 に 向けた質問項 目作成 の 枠組
み として 、第 3 の 研 究の 結果 で ある 5 つ の 患者行動 の 説
明概念 を採用す る。 こ の 5 つ の 患者行動 の 説 明概念 と は、
【1.問題発生 と依存】、 【n ,問題 へ の 対 処 と 調整1 、
【皿 ,ケ ア と自己 対処 に よ る 問題 の 自覚 ・好転 ・解決】、
【IV.ケ ア と自己 対処 に よる充 足感獲得 と心理的解放】 、
【V 、問題 解決状況 に よ る ケ ア 提 供者 との 関係性 の 発 展
と変化】で あ る 。
3 )患者行動 の 説 明概念 に 基 づ く自己 評価 尺 度 を開 発 し
た 先行研究 の 検討
質的帰納的研究が創出 し た患者行動 の 説明概念を枠組
み として、自己評価尺度を開発 した 研 究は 1件3e 〕
存在 し
た。 こ の 研 究が開発 した 自己評価尺度は、看護婦 ・士 が
提供す る 看護 の 質を測定するた め の もの で あ る 。 開発 さ
れ た 尺度は、内的整合性 を 確保 して お りS且}、構成概念妥
当性 に つ い て一
部課 題 を 残 して い る が 、概ね 確保 して い
る こ とを示 した32}。 こ れは、質的帰納 的研究の 成果 で あ
る患 者 行 動 の 説 明概念 を 用 い る こ と に よ り、信頼性 と妥
当性 の 高い 自己評価尺度の 開発 が可 能 で あ る こ と を示 す。
そ こ で 本研究 に お い て は 、 質的帰納的研究の 成果で あ る
患者行動 の 説明概念に基づ き、看護婦・士 の 対象理 解 の
程度 を 測 定 す る 自 己 評価 尺 度 の 開 発 を め ざす。
なお、本研究 に お い て は 、看護婦 ・士 の 対象 理解 とは、
看護婦 ・士 の 行動 に影響 し、そ の 適切 さが 効果的な看護
実践 を可能 とす るSSt
もの とす る。ま た 、こ れ に基 づ き
「看護婦・士 の 対象理 解 の 程 度」 を 、 「看護婦
・士 が 対
象理 解に 基 づ き、理解 した内容を看護実践 に 活 用する度
合」 と規定する 。 そ の 理 由は 以 トの 通 り で あ る。
教育評価 の 理論におい て 、理解の 程 度 の 評価 とは 認知
領域 の 評価に該当 しコ‘]、評価 の 実施にお い て は 、 目標 と
す べ き行動 を、第 三者が 外部か ら観察で きる動作 で 示す
必要がある”/
.ま た 、自己を客観的に評価す る自己 評価
にお い て は、評価指標が具体的か つ 客観的で ある こ とが
重要 で ある3‘)。こ れ らは、看護婦
・士 が 対象理 解に関す
る 自己 評価を行 うた め に は 、具 体的な行動 に 基 づ い て 自
己 を 振 り返 る 必 要があ る こ とを示す 。 加 えて 、 「本 研 究
看護教 育学研 究 VoL9 N ・ .12000 29
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を支え る 前提 」 に おい て 示 した よ うに 、人間 は 知 覚 し、
対応する存在 で あ り11]、看護 婦 ・士 の 対象理 解の 程度 は
そ の 行動 に影響す る。したが っ て 、看護婦 ・士 の 対象 理
解の 程度が高い 場合に は 、理 解した 内容 を看護実践 に活
用 する度合が増加 し、対象理 解の 程度が 低い 場合に は、
看護実践 に活用する 度合が減少する。
3 理 論的枠組 み
本研究が 開発 をめ ざす看護 の 対象 理解に 関す る 自己 評
価尺度は、以下の 理論的枠組みに基 づ く。
1 )理 論的枠組 み (図 1)
(1)看護婦 ・士が、看護実践に お い て 対象を適切 に 理 解
す る こ と は 重要 で あ り、対 象 理解に 関 す る 自己 評 価 は、
看護婦 ・士 の 対象理解 の 適切性 に影響す る 。
(2)看護 の 対象理 解 と は、看護婦 ・士 が 、相 互 行為 に お
い て 患者が 示す行動 の 意味を、看護学的視点 か ら解釈す
る こ とで あ る。
(3)看護問題 とい う看護学的視点 に基 づ く患者行動 の 説
明概念は、対象理解の 枠組み と なる。
(4)看護婦 ・士 の 対象 理解の 程度 と は 、看護婦・士 が 対
象理 解 に 基 づ き、理 解 した 内容を看護実践に 活用す る度
合 を意味す る 。
(5)患者行動 の 説明概念 は 、看護の 対象理 解の 程 度 を測
定す る質問項 目作成 の 基盤 となる。そ の 質問項 目を用 い
て 尺 度を構成 し、尺 度 の 信頼性 ・妥当性 を検証する こ と
は、信頼性 ・妥当性 の 高 い 看護の 対象理解に 関する 自己
評価尺度を構成す るた め の 適切な質問項 目の 選定を導 く。
(6)(5)で 選 定 した質問項 目に よ っ て 構成す る尺度の 信頼
性 ・妥 当性 の 検証 は 、看護の 対象理 解に 関する 自己 評価
尺 度 の 完成 を導 く.
(7)看護の 対象 理解に 関する 自己 評価尺 度の 開発 は、看
護の 対象理 解に 関する看護婦 ・士 の 自己 評価に 役 立 ち、
適切な対象理解 を促進す る、
本研 究 は 、こ の 理 論 的枠組み に 基 づ き、(5)で 述 べ た
看護の 対象理解に 関す る自己評価尺度開発に向けた質問
項目の 作成 と、信頼性・妥 当性 を確保 した 自己評価尺度
を構成す る ための 適切な質問項 目の 選 定 をめ ざす。
2 )用 語 の 操作的定義
(1)患者行動 の 説 明概念ls}
患者行動 の 説明概念 は 、看護実践場面 に おけ る入 院患
者の 行動 に 関す る記述 で あ り、次 の 5 っ の 要素 よ り構成
され る。
【1、問題発 生 と依存】 : 何 らか の 疾患を持っ 患者が 、
入 院し、患者 とな る こ とに よ り生 じ る様 々 な問題 を示す
患者 の 行 動 で あ る.=
【H .問題への 対処 と調整】 : 患者 に 生 じ て い る 様 々 な
30
唇護 の 対象理 解に関する自己評 価
の た め の 質問項 目の 作成 と尺度の構 成
MMI 妥当性の 険討
適切な質問 項目の 選定
鏖適切な 質問項 目に よる尺 度の 構成
4i 灘 :斑殲繍 i 看護 の対 象 理解 に関す る自 己評価尺度
厨 看護婦・士 の 適切 な対 象理 解
図 1 看護 の 対 象理 解に 関する 自 己評 価 尺 度 の 開発の た め の
理論的枠組み と本研究 の位置 づ け
問題 に 対 して 、患者 自身 が そ の 問題 に 対処 し、調 整 しな
が ら主体的に問題に関わ っ て い る こ と を 示 す患者 の 行動
で あ る。
【m .ケ ア と自己 対 処 に よ る 問題 の 自覚 ・好転 ・解決】
: 患者が 看護 を受けた り、自己 対 処 を 行 うこ とに よ り、
患者自身 が 問題 を自覚 した り、患者 の 問題 が好転 ・解決
す る こ とを示す患者 の 行動 で あ る。
【IV.ケ ア と自己 対処 に よ る 充 足感獲得と 心 理 的解放 :
: 患者が 看護を受 けた り、自己 対処 を 行 う こ とに よ り、
問題 が解決 し、患者が 心 理 的に充足 した り、解放 され る
とい っ た こ とを示す患者 の 行動 で あ る。
【V 、問題解決状況 によ る ケ ア 提供者 と の 関係性 の 発展
と変化 】 : 患者の 問題 が解決され る 状況 に よ り、患者 と
看護 の 提供者との 関係が 発展、変化す るこ とを示す患者
の 行動 で あ る。
(2)看護婦 ・士 の 対象 理 解の 程度
看護婦・土 が 患者行動 の 説明概念 に 対 応する患者行動
を理解 し、理解 した内容を看護実践 に 活 用する度合を測
定する こ とに よ り明 らか にな る。そ れ は、本研 究 が患者
行動の説明概念に基づ き開発を め ざす看護 の 対象理 解に
関す る 自己 評価 尺 度 に 対 す る 回答 で ある。
】V.研究方法
1.質問項 目の 作成 とそ の 尺度化
1 )質 問項 目の 作成
(1)患者行動説明概念に 基 づ く質問項 目の 作成
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自己 評価の 指標 とな る具体的な質問項 目の 作成 にあた
り、患者行動 の 説明概念 は 抽象度が高い た め、その 下位
概念に着 目 し た。患者行動 の 説明概念 の 下位概 念 に は 、
16 カ テ ゴ リ、93 サ ブ カ テ ゴ リ、353 コー
ドが存在す る。
ひ とつ ひ と っ の カ テ ゴ リ、サ ブ カ テ ゴ リ、コー
ドは、患
者行動 の 異な る性質を示す。尺 度 の 内容的妥 当性3’:
を確
保する ため に は、測定 し よ うと し て い る内 容領域 を網羅
するように質問項 目を作成する必要 が あ る。本研究が開
発 をめ ざす尺度 の 基盤 は 5 つ の 患者行動 の 説明概念で あ
り、そ の 下位概念の 内容 を網羅 した質問項 目の 作成 は 、
5 つ の 概念を網羅する こ とに つ なが る 。 そ こ で 、当初質
問項 目 を作成す る 際 は 、下位概念 を網羅す る よ う行 い 、
質問項 目数 は 用い た下位概念を構成す る要素 と 同数以 上
と な るこ と を め ざ した。下位概念を構成する 要素 の 数 は、
上 述 の とお り、カ テ ゴ リ は 16 で あ る が、サ ブ カ テ ゴ リ 、
コー
ドは、各々 93、353 で あ り、自己評価尺度の 項 目数
として は膨大で ある。
以上 よ り、本研 究 に お け る質問項 目は 、カ テ ゴ リを基
盤 に作成す る こ とが 適当 で あ る と 判断 し、16 カ テ ゴ リ
全 て を網羅す る よ うに作成した。
(2)質問項 目 を成文化す る 形式
患者行動 の 説明概念 は、患者行動 の 原因 と 結果 に着 目
し て 創 出 さ れ た も の で あ り、 コ ー ドの 命 名 に お い て
「… に 関連 した … 」 とい う原因 と結果を示す表
現を用 い て い た。そ こ で 、質問項 目の 作成 に お い て は 、
「患者は 原因 に あ た る行動 を示 した場合、結果 に あた る
行動を示 す 」 とい う形式 で 成文化す る こ と を原則 と した。
(3)質問項 目に用い る語句 と構文 の 表現
質問項 目は 、知 識 や 経験 に か か わ らず、全 て の 回 答者
が質問内容 を同一
に 解釈 で きるよ うに作成す る必要 が あ
る。そ の た め 、質問項 目 の 文章 は、簡潔明瞭で あ る こ と
が重要 で ある4°/
。本研究 に お い て も、こ の 点 に 留意 して
質 問 項 目 を 成 文 化 し た。
2 )質問項 目の 配 置と下位尺 度 の 構成
本研 究が開発 をめ ざす 自己評価尺度は、それ を用 い る
こ とで 看護婦 ・士 が 自己の 対象理 解の 現状を客観的に評
価 し、対象理 解 の 現状 を改善す る こ と を 支援す る。そ の
た め、自己 評価 尺 度は、看護婦 ・士 の負担感や抵抗感 の
少 な い もの で あ る必 要 が あ る.尺 度 に 対す る 回 答者 の 負
担感や抵抗感を軽減す る ために は 、相互に関連す る質問
項 目をま と め て 示す こ とが有効で あ り4S )
、本研究にお い
て は、患者行動の 説 明概念 を構成す る 5 つ の 概念別 に質
問項 目 を配置 した。
さらに、質問項 目群各 々 は、患者行動説明概念に 対応
する下位尺度 と して 構成し、そ れ を 用 い る看護婦 ・士 が、
下 位 尺 度 の 得点を通 し て 患者行動 の 説明概念 が 示す 5 側
面に対応 させ て 対象理解 の 現状 を認識 で きるよ うに した。
ま た、各 質 問 項 目の 冒 頭 に は 、対 応す る 患者行動 の 説 明
概念 に 関す る説明文を加 え、下位尺 度 の 意味を示 した。
3 )質問項 目の 数
一
般に 1 つ の 尺度の 回答時間は、対象者の 疲労等 を考
慮 し、45 分 か ら 50 分 が 限度 で あ る“’/43 /
と され て い る。
本研究に お い て も これ を踏まえ、最終的に 開発する尺度
に 対する回答時間を 30分 か ら 40 分 に 設 定す る こ と とし
た.こ の 場合、1 項 目 の 回 答 に 要す る 時間を 1 分か ら
1.5 分 に換算す る と、尺度 を構成す る 妥 当な質問項 目数
は 25 項 目か ら 30 項 目と なる。
ま た 、本研究は 、看護婦・士 が 総得点 か ら自己 の 対象
理 解の 程度を把握す る と共に、5 下位 尺 度 の 得点 か ら患
者行動 の 説 明概念が示す 5 側面 に 対応 させ て そ の 現状を
認識 で きる尺度開発を め ざす。そ の た め には、下位尺度
毎の 質問項 目数を 同数 とする 必 要が あ る 。
これ らは 、看護 の 対象理解に 関す る 自己評価 尺 度 の 完
成 時 に は 、各下位 尺 度 を 5 項 目 か ら 6 項 目、尺 度全 体 を
25 項 目か ら 30 項 目 よ り構成す る こ とが適 当で あ る こ と
を示 す。そ こ で 、信頼性 ・妥当性 の 検討 を通 し て 適切な
質問項 目の 選定を行 う本研 究に お い て は 、各下位尺度に
関 し少 なくとも 6 項 目以 上 の 質問項 目の 作成 を め ざ した 。
4 )質問項 目の 尺度化
質 問 項 目の 尺 度化 に お い て は 、質 的 差異 で あ る 能力や
特性 の 個人差を量化 して 測定す る“ /
こ とに つ い て 述べ た
尺度開発 に 関する理 論 で あ る テ ス ト理 論 を適用 し た。
(D 尺度の タ イ プの 選 定
尺 度 の タ イ プ に は 、サー
ス トン 法、リ ソ カー
ト法、ガ
ッ トマ ン 法、セ マ ン テ ィ ッ ク ・デ ィ フ ァ レ ン シ ャ ル 法4£
が あ る。看護の 対象理 解に 関する 自己評価尺 度は、看護
婦 ・士が実践 の 中で 、身近 に 活 用 で き、か つ 、対象理 解
に お け る 自己 の 変化 を よ り的確 に 把握 で き る こ とをめ ざ
す。そ の た め、測定方法は簡便 で ある方がよい 。上述 の
4 種類 の 尺度タ イ プ の うち、リ ッ カー ト法 は 選択肢の 量
化法が相対的で あ り46)
、比 較的簡便に 測 定で きる41)。尺
度 タ イ プ に は、リ ッ カー
ト法 を 選 定 した 。
(2)選択肢 の 数 の 決定
リ ッ カー
ト法 に お い て 最 も頻繁 に 用 い られ る選択肢数
は、3 件法か ら 7 件法 で あ る。ま た 、選択肢数が この 範
囲 で あ る場合、結果にはほ とん ど違 い が ない4S }
。
本研究は、看護婦・士 が 実践の 中で 、身近に活用 で き、
か つ 、対 象 理解に お け る 自己 の 変化 を 的 確 に 把 握 で きる
自己評価尺 度 の 開発 を め ざす.そ の た め、選 択肢は 、回
答が比 較的容易で あ り、あ る程度 の 段階に わた っ て 自己
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の 対象理解 の 程度の 差異が評価で き る数 とする必要が あ
る 。 そ こ で 選択肢数 は 、5件法 と した。
(3)選択肢 の 表現
本研究が開発 をめ ざす自己 評価尺度は 、看護 の 対象理
解の 程度 と して、看護婦 ・士 が 理解 した 内容 を看護実践
に お い て 活用する 度合 を測定 し よ う とす る もの で あ る。
そ の た め 、選択肢 は 、質問項 目が示 す内容を看護婦 ・士
が 理 解 し、活用 して い る度合 を示す表現 とす る 必 要 があ
る。そ こ で、まず、選択肢 の 表現 に用い る副詞を検討 し 、
次に、選 択肢の 具体的表現 を検討 した。
選 択肢 の 表現に 用 い る副詞
選 択肢 の 表 現 に 用 い る 副 詞 に は、a.実現 の 程 度 量 (確
信)表現用語、b.現実 の 程度量表現用語、 c.時間的程度量
(頻度)表現 用 語、d.心 理 的時間 (過 去 )表現用語、 e.心 理
的時間 (未来)表現用 語等があ る“9}
。こ の うち b現 実 の 程
度量表現用語 は、現実 に 起 こ っ て い る 程度 を 表現 して お
り、本研究 が 採用す る選択肢 の 表現 として適 切で ある。
選 択肢 の 具体的表現
程度量表現用語 の 意味の とらえ方 は 個 々 様 々 で あ り、
どの よ うな程度量表現用 語 を組み合 わせ て 尺 度を構成す
る か の 検討は、尺度の 信頼性 ・妥当性 を 確保する 上 で 重
要 で ある’¢
。リッ カー
ト法 の 場合、尺 度 の 目盛 りは 等 間
隔で あ り、目盛 りの 意味 を示す選択肢に用 い る用語 は、
回 答者が等間隔 に とらえ る よ うに 決定する必 要 があ る。
程度量表現用語 に 関す る研 究1”
は、現実 の 程度量表現
用 語 が 、a.最高度、 b.中等度、 c.低度、 d,零度、 e.絶対零
度 の 5 種類に分類で き る こ とを明 らか に した r
看護婦 ・士 は、対象理解 の 内容を何 らか の 形 で 看護実
践 に 活 用 す る。ま た 、対象 理 解 の 程度が 高い 程 、理解内
容を看護実践 に 活用 す る度合 も高 く な る.そ こ で、本研
究 に おけ る 選 択肢 の 表現 に は、まず、現実の 程度量表現
用語 の 最高度、中程度、零度を表す副詞を一
っ ず つ 採用
して 、3 段 階 の 理 解 の 程 度 を 示 す選択肢を設 けた .ま た 、
こ の他に、理 解の 程度が低 く看護実践への 活用 には至 ら
ない 段 階を示 す用 語 と して 「何とな く理解 して い た 1 、
f全 く理解 して い なか っ た 」 とい う選択肢を設 けた。こ
れ ら 2 っ の 選択肢を設けた 理 由 は、以 下 の 通 りで あ る 。
評価理論にお い て 、理解は認知領域 の一
つ の 段 階 とし
て、知識 の 次 の 段階に位置す る52/
。しか し、 「知識 」 と
「理解」 とい う用 語 は 明確な区別なく用 い られ て い る こ
とが多く、実際 の 評価におい て は、回答者が 、知識段階
で あ る に もか か わ らず、理 解に 達して い る と と らえ る可
能性があ る 。 そ こ で 、厳密 に は 「理解」 に 至 っ て い ない
段 階 を 示 す 選 択肢 と して 、 厂何 とな く理 解 して い た 」 、
「全 く理解 して い なか っ た」 を設 けた一
32
以 上 の 検討 に基づ き、本研究 に お い て は 、 次の 5 選択
肢 を設定する こ と と し た。
看護婦 ・士 は 患者の 示す行動 につ い て
5.理 解 し、そ の こ とを実践 に か な り活 か して い た
4.理解 し、その こ とを実践 にわ り と活 か して い た
3.理 解 し て い た が 、そ の こ とを実践 に ほ とん ど 活 か
して い なか っ た
2.何 とな く理 解して い た
1.全 く理解 して い な か っ た
2 .専門家会議 に よ る 内容的妥 当性 の 検討
内容的妥 当性 の 検討にお い て は、その 内容分野 の 専門
家 に、 「質問項 目が 、測定 し た い 分野 全体 を 正 しい バ ラ
ン ス で適切に代表する もの と な っ て い るか 」 につ い て 判
断を依頼す る方法を用 い る の が一
般 的で あ るf’〕。
本研 究にお い て も こ の 方法 を用 い 、看護の 専門家に内
容的 妥 当 性 の 検討 を 依頼す る 「専門家会議 」 を開催 した。
患者行動 の 説明概念 は 、入院生活 を 送 る成人患者 の 行動
か ら発 見 され た 。そ こ で、専 門 家 会議 の メ ン バ ーは 、成
人 を 対象とす る外科系、内科系、精神科、産科病棟に勤
務す る、臨床経験豊富な看 護 婦 7 名 と、本研究 と 同様 の
方法 で 尺度開発 を行 っ た研究者 1名 とし た。 検討課題は、
「質問項目の 適切性 」 、 「質問項 目の 網羅 性」 、 「実 践
に おけ る活用 可 能性 」 で あ っ た 。 検討 の 結果に基 づ き、
尺 度の 修正 を以下の よ うに 行 っ た。
1 )専門家会議 の 結果に基づ く尺度 の 修正
(1)具体的指摘が あっ た質問項 目 の 修 正
専門家会議 にお い て 質問項 目の 表現 の 適切性 に 関する
具 体的指摘が あ っ た 19 項 目に つ い て は、指摘内容 に 基
づ い て質問項 目 を検討、修正 した。
(2)選択肢 の 修 正
専門家よ り、選択肢に用 い た副詞 の 中で 、 「か な り」
と 「わ り と」 の 表現 の 違い が明確 で ない とい う指摘 があ
っ た。 本研究は リ ッ カ
ート法 を採用 して い るた め 、各選
択肢は等間隔 で ある必要があ る。先述 の とお り、現実 の
程度量表現用語」4)
は、最高度、中程度、低度、零度、絶
対零度に 5 大別 で きる。こ の うち、上 述 の 選 択肢 5 か ら
3 は 、最高度 「か な り」・中程度 「わ りと1 ・零度 「ほ
とん ど」 の 副詞 を一
つ ずつ 用 い て お り、副詞間の 程度 の
差が等間隔で は なか っ た 。 そ こで 、選択肢 5 か ら 3 が等
間隔 とな る よ うに、中程度 の 「わ り と 」 の 代 わ りに、低
度 の 副詞 の 中 で は 高 い 方 に位置する 「少 し」 を採用す る
こ とと した、また 、選択肢中 の 「実践 」 とい う表現 は 、
実践内容 をよ り明確 に示す こ とを意図 し、 「看護実践」
に 改 め た。
こ の よ うな修正 の 結果、選択肢は、次 の よ うに なっ た、
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5.理 解し、そ の こ と を 看護 実 践 に か な り活 か し て い
た
4.理 解 し、そ の こ とを看護実践 に処 活 か し て い た
3.理 解し て い たが、そ の こ と を看護実践に ほ とん ど
活 か して い な か っ た
2..何 となく理解 して い た
1.全 く理 解 して い な か っ た
以上 の 内容的妥当性 の 検討 とそ の 結果に基づ く修正 を
通 して 、 【1.問題 発生 と依存】、 【ll.問 題 へ の 対 処 と
調整 】、 【HI.ケ ア と自己対 処 に よ る 問題 の 自覚 ・好
転 ・解決】、 【IV.ケ ア と 自己 対 処 に よ る充 足感獲得 と
心 理 的解放】、 【V .問題 解決状況 に よるケ ア 提供者 と
の 関係性 の 発展 と変化 1 の 5 下位尺 度 (以 下、下 位 尺 度
は 【】で 示す)、45 項 目か ら成る 5 段階リ ッ カー
ト型
尺度で あ る 「看護 の 対象理 解 に 関 す る 自己 評価尺度(予
備調 査 版)」 (以下、 「予 備 調査版 」 ) を作成 した 。
3.調査方法
本研究 は、尺度開発にお け る 予備調査 靴 こ位置す る研
究 で あ り、尺 度 開 発 の 第 1段 階 に おけ る調 査 と して 、デ
ータ収 集の 適切性 、信頼性・妥 当 性 を検討 し、最終的に
開発 を め ざす尺 度 に 用 い る質問項 目の 選 定をめ ざす。
1)調査 対象
患者行動 の 説明概念 は 、入 院生活 を送 る成人患者 の 行
動か ら発見 された 。そ こ で 、調査対象は病院に勤務 し、
小児病棟 を 除 く全 て の 病棟 に 所属 し、看護を実践 して い
る看護婦 ・士 と した。
2 )測定用具
測定用具 に は、 「予 備調査版 」 と 「看護婦・士 の 特性
調査 紙 」 を 用 い た。 「看護婦・士の 特性調査紙 」 は、対
象者が母集団を反映 し て い る か どうか を検討す る た め に
作成 し た 自作質問紙 で あ り、一般的属性 と看護婦 ・士 と
し て の 属性 に関する項 目か らなる。
なお 、対象者擁護 を配慮し、質問紙 は 無記名 とした。
3 )デー
タ収集
(Dデータ収集期間
1998 年 2 月 13 日か ら 2月 27 日ま で と した。
(2)データ収集の 手 続 き
全国の 病院名簿か ら無作為抽 出 した 300病院の 看護部
長宛 に 、往復葉書 を用 い て 研 究協力 を依頼 した。そ の う
ち、研究協力 の 承諾 が得られた 74 病院の 看護部長宛に、
合計 970 部の 質問紙 と返 信 用 封筒 、調 査 の 依頼状 を送付
した。それ らの 配布は看護部長に 依頼 し、看護部長 よ り
質問紙一式 を 受 け 取 っ た各看護婦 ・士 に は、研 究協力依
頼状 を通 して、返 送用 の 封筒 を用 い て 回答を個々 に投函
す るよ う依頼した 。 した が っ て 、看護 婦 ・士 の 回 答 の 返
送 は 、個 々 人 の 自発的かつ 任意に よるもの で あ る。
(3)データ分析
統計解析 プ ロ グラ ム SPSS(75.1J for Windows>を使用
した。
「予 備調査版 」 及び 「看護婦・士 の 特性調査紙」 に っ
い て の 記述統計値を算出 した。
尺度 の 信頼性・妥当性 の 検証
a,内的整合性 の 検証
内的整合性 と は、全 て の 項 目が同 じ特性 を測 定 して い
るか ど うか の 検討で あ り、折半法、ク ロ ン バ ソ ク α 信頼
性係数 の 算出 とい っ た 方法 が ある’6)。折半法 は折半 の仕
方 に よ り相関係数 の 値 が 異 なる と い う欠点 を持っS7]
が、
ク ロ ン バ ッ ク α 信頼性係数は 、折半法 の 欠点 を補 う方法
で あ り、内的整 合性 の 検討 に最も広 く用 い られ て い る’S}。
本研 究 に お い て もこ の 方法を用 い た。
b、構成概念妥当性 の 検証
構成概念妥 当性 は、そ の 測 定用具があ る理論 か ら導 き
出 され た構成概念をどの 程度測定 して い る か を 問 うもの
で あるS’]
。本研究 に お け る構成概念妥 当性 の 検証 とは、
「予備調査版」 の 構成概念が 、 それを導 き出 し た 患者行
動 の 説 明概 念 を反映 し て い る か ど うか の 検討で あ る 。
「予備調 査 版 」 は、最 終 的 に、患者行動 の 説 明 概念 に 対
応する 5下位尺 度 に 基 づ い て、看護婦・士 が 、患者行動
の 説明概念 に対応 させ て 自 己 の 対 象 理解の 現状 を 認 識 で
きるもの と なる こ と を め ざ して お り、この 構成概念妥当
性 の 検 証 は 極 め て 重要 で あ る。
構成概念妥 当性 の 検証方法に は 、既知 グルー
プ技法、
多特性 ・多 方 法 の 行 列 等 が あ る が‘°1、構成概念 の 内容 に
い くっ か の 側面が想定 され て い る尺度 の 構成概念妥 当性
の 検 証 に は 、因子分析 を 用 い る こ とが有効で あ る61:
。
「予備調査版 」 は、患者行動 の説明概念の 5側 面 に 基 づ
い て お り、本 研 究 に お い て は、因 子 分析 を用 い た。
V .研 究結果
配布 した 970 の 質問紙 の うち、672 名(回収 率 693 % )
よ り回答 を得、 「予 備 調 査版 」 の 全項 目 に 回 答があ っ た
もの は 510 名 (75.9 % )で あ っ た 。 本研 究 に お い て は 、
こ の 510 名の 回 答 を分析デー
タ と した,
1.対象者 の背景(表 1 )
対象 者 の 性 別 は 、女性 475 名 (93.1% )、男 性 35 名
(6.9% )で あ っ た。年齢は 21 歳 か ら 66 歳 の 範囲 で あ り、
平均 35.4 歳 (SD =9.3)、臨 床 経 験 年数は 、1 年 未満 か ら
42 年 の 範囲 で あ り、平均 IL8年(SD=7.8)で あ っ た 。
対象 者の 職位 は、ス タ ッ フ 354 名(69.4°/。)、主任また
は 副婦長 98 名 (19.2% )、婦長 41 名 (8.0% )、臨床実習指
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表 1 対象者の 背景 n =510性別 男性 35名 (6.9% )
女性 4乃 名 (93.1% )
齢 21歳〜66 歳 平均35 .4歳 (SD =9.3)臨床 経験 年 数 1 年 未満〜42年 平 均 11.8年 (SD =7.8)職 位 婦長 41名 (8.0% )
主任 / 副婦長 98名 (19.2% )
ス タ ッ フ 354名 (69.4% )
臨床 実 習指 導 者 12名 (2,4 % )
そ の 他・不 5名 (1.0 % )
卒 業 した
看 護基 礎教 育 課程
(複数回答)
2 年 課 程 専門 学校 172名 (33,7% )
3 年 課 程 専門 学 校 303名 (59.4% )
2 年課程短期大 学 16名 (3.1% )
3 年踝程短期大 学 23名 (4,5% )
大学 1名 (0.2% )
そ の 他・不明 科 名 (2.296 )
導者 12名 (2.4°1e)で あっ た。
卒業 した 看護基礎教育課程 は、3 年課程専門学校 303
名 (59.4°/・)、2 年課程専門学校 172 名 (33.7% )、3 年課程
短 期 大 学 23 名 (4.5% 〉、2 年 課 程短期大学 16 名 (3.1% )、
大学 1名 (0.2%)で あ っ た (複数回 答)。
2 .「予備調 査 版 」 の 得点状況
1 )各質問項 目の 得点
各 質 問 項 目は 、1 点 か ら 5 点 ま で の 得点 が 可 能 で あ る
が、対象者 の 回 答 は 、こ の 1 点か ら 5 点 の 範囲にあ り、
1質問 項 目あ た りの 平 均 は 4.2 点 (SD =0.3)で あ っ た。
各質問項 目の 得点 に 関 し 、コ ル モ ゴ ロ フ ・ス ミル ノ フ
の 検定 を行 っ た 結果 は、統計量 d が 0.233 か ら 0.439 の
範囲 に あ り、各質問項 目の 得点分布 が 正規分布 で あ る こ
と を 示 した (p=0.000、df』510>。
2 )総得点
総得点 は 、45 点 か ら 225 点ま で の 得点が 可 能 で あ る。
対象者 の 回 答 は 、92 点 か ら 225 点 の 範囲 にあ り、平均
は 187.3 点 (SD ≡22.5)で あ っ た。
総得点に関 し、コ ル モ ゴ ロ フ ・ス ミル ノ フ の 検定を行
っ た結果 は 、統計量 d が 0.470 で あ り、総得点分布が 正
規分布 で あ る こ とを示 した (p=O.009、df」510)。
3 )下 位尺度別得点
【1.問題発 生 と依存】は 、12 項 目か ら成 り、12 点 か
ら 60 点 ま で の 得点が 可 能 で あ る。対象者 は 、16 点か ら
60 点 ま で の 範 囲で 得 点 を獲 得 し 、平 均 は 49.4 点
(SD =6.7)で あ っ た。また、1 項 目あ た りの 平均 は 4.1 点
(SD≡0.3)で あ っ た 。
【ll.問題 へ の 対 処 と調整】は 、10 項 目か ら成 り、10
点から 50 点 ま で の 得点 が 可能 で あ る。対象者は、19 点
か ら 50 点 ま で の 範囲 で 得 点 を獲得 し、平 均 は 40.0 点
(SD =6.3)で あ っ た。ま た 、1 項 目あ た りの 平均は 4.0 点
(SD =0.2)で あ っ た。
【皿 .ケ ア と 自 己 対処 に よ る 問題 の 自覚 ・好転 ・解
決】は 、10項 目か ら成 り、10点 か ら 50点ま で の 得点が
可能 で ある。対象者 は、24 点 か ら 50 点 ま で の 範囲 で 得
34
点 を獲得 し、平均 は 42.1 点 (SD=5.3)で あ っ た。ま た 、
1 項 目あ た りの 平均得点 は 4.2 点 (SD = O.3)で あ っ た。
【IV.ケ ア と自己対処 に よ る充 足感 獲得 と心 理 的解
放】は、6 項 目か ら成 り、6 点 か ら 30 点 ま で の 得点 が
可 能 で あ る 。 対象者 は 、16点 か ら 30 点 ま で の 範囲で 得
点 を獲得 し、平均 は 26.3 点 (SD = 3.0)で あ っ た。ま た 、
1 項 目あた りの 平均 は 44 点(SD=0.3)で あ っ た。
【V .問題解決状況に よ るケア 提供者 との 関係性 の 発
展 と変化】は、7項 目か ら成 り、7 点か ら 35 点まで の
得 点 が 可 能 で あ る。対 象者 は 、14 点 か ら 35 点 ま で の 範
囲で 得点 を獲得 し、平均 は 29.6 点 (SD=4,1)で あ っ た。
また 、 1 項 目 あた りの 平均 は 42 点 (SD = 0.2)で あ っ た。
4 )内的整合性
「予 備調査 版 」 の 内 的整 合性 を 示 す ク ロ ン バ ッ ク α 信
頼性係数の 値は 、0.964 で あ っ た。ま た、各質問項 目を
除 した 場合 の ク ロ ン バ ッ ク α 信頼性 係数 の 値は 、0.962
か ら 0.963 ま で の 範囲 で あっ た。
5 )構 成概念妥 当性 (表 2 )
「予 備調査版 」 の 構成概念妥当性 を検討する た め 、主
因子 法 に よ るバ リマ ッ ク ス 回転 を用い た 因子 分析を行 っ
た 。 そ の 結果 、5 因 子 を抽 出 し各 因 子 の 固有値 は 全 て 1
以 上 、累積 寄与率 は 53.9% で あ っ た。一般 に、変数の 属
す る 因子を決定する際は、因子負荷量 の 絶対値 0.4 ない
し 0.3 を 基準 に行 う6b’。そ こ で 、本研 究 に お い て 各因子
を構成す る質問項 目の 検討 は 、そ の 因子 に 対する 因子負
荷量 の 絶対値が 0.4 以 上 で あ り、か つ 、その 因子 に 対 し
最 も高 い 因子 負荷量を示 して い る こ と を 基準 に 行 っ た。
第 1 因子 は、 【1 .問題発 生 と依存】、 【H .問 題 へ の
対 処 と調整 1 の 2 下位尺度に属す る 14 項 目を包含 して
い た.
第 2 因 子 は 、 [N .ケ ア と自己 対処 に よ る 充 足感獲得
と心 理 的解 放】、 【V 澗 題解決状況 に よ る ケ ア 提 供者
との 関係性 の 発展 と変化】の 2 下位尺度 に属する 10 項
目を包含 して い た。
第 3 因 子 は 、 【H 欄 題 へ の 対 処 と調整】、 【m ,ケ ア
と自己 対処 に よ る問題 の 自覚 ・好転 ・解決1 の 2 下位 尺
度 に 属す る 8項 目 を包含 して い た 。
第 4 因子 は 、 【1.問題発生 と依存】、 【皿 .ケ ア と 自
己対処に よ る問題 の 自覚 ・好転
・解決 1 の 2下位 尺 度 に
属す る 6 項 目を 包 含 して い た。
第 5 因子 は 、 【ll.問題への 対処 と調整 】、 【皿 .ケア
と 自己 対 処 に よ る 問 題 の 自覚 ・好転 ・
解 決】、 【IV.ケ
ア と自己 対処 に よ る充足 感獲得と心 理 的解放】、 【V .
問題解決状況 に よ る ケ ア 提 供 者と の 関係性 の 発展 と変
化 】の 4 下位尺度に属す る 7 項 目を包含 して い た。
看護教育学研究 Vol .9 No 」 2〔}00
N 工工一Eleotronio Library
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表 2 「看護の 対象理解に 関する自己評価尺度 (予備調査版)」 の 因 子 分 析結果 (主 因子 法、バ リマ ッ ク ス 回転 )
質 問 項 目
【1.問題発生 と依 存 】
1 衰 弱 の激 しい 患者 に は、清潔 に関 する問題が生 じやす い
回 全身 ・知覚・呼 吸機 能 な どが低 下 し て くる と、患者 は他 者 と円滑 な コ ミ ュ ニ ケ
ーシ ョ ン を とれな く
な る
3 運動機能が低 下 し て い る患者は、看護婦 ・士の援 助 に協 力 しよ うと して も うま くで きない
4 日常 生活 の 世話を看護婦 ・士 に 頼 り きっ て い る患 者 は、不本 意 な援助で あっ て も受け入 れ て い る場
合が ある
髀薯羸 藩 靉讎 杏襟 雛舞覚呈b塁罐 鴿讎 驪 離 抱 、、。 。 、
7 病棟 の 環境 は普通 とは違 うた め、患者 は つ い 規則に 反 して しま ラ こ とが ある
圄 患者 は病棟 規 則 を守 るため に、継続 して きた健康維持増進の た めの 生 活習 慣 を と りや めた り、変え
た りす る場合 がある 衰弱 の激 しい患者は、プライ バシ
ーを侵害され て も訴 え られ ず、それ を受 け入れ て い るこ とが ある
国 患者 は 、看護婦・士 の 説明不 足 で 状 況 を理解 で きな い 時、援 助 へ の抵抗感を生 じや すい
看護計 画 が適切で あっ て も、看護婦・士 の 手 際が 悪 い と、患 者に は疲労 な どの 悪影 響が生 じる
12患者 が 自分 に 良か れ と 思 っ た行 動が、新 しい 問題 を 引 き起 こ すこ とがある
【皿澗 題へ の 対 処 と調整 】
圉 患者 は苦 痛 を自分 な りに緩 和 し よ うと する
チ ュー
ブ類 を挿入 され て い る患者 は、体位や 動作な ど を工 夫 し不 安感 や不 快感 を軽 減 しよ うとする
患者 は、病棟 の環 境 に慣れよ うと、自分な りに 工 夫 しなが ら生活 して い る
患者 は 、他者 との コ ミュ ニ ケーシ ョ ン が 円滑 に行 え ない 場 合 で も、何 とか 意思 の 疎通 を図 ろ うとす
る17 患者は 、援助に 苦痛を感 じる と、何 らか の 形 で 看護婦 ・
士 に 抵抗感を示 す18 患者は、看護婦 ・士 の 技衛 や方 法 を観察 し評価 して い る
国 患者は、自分一
人で は生活 で きな い 程衰 弱 して い て も、援助が 円 滑 に 進 むよ う看 護婦 ・士 に協 力 し
ょ うとす る
團 患者 は援 助が必要 な時.それが 不十 分 で あっ て も容認 す る
21看護婦 ・士 に 不安を表出する患者は援助 を求 め て い る
22 患者は 看護婦 ・士が 問題 を解 決 して くれ る こ とが わか る と、自己 流の 対処 方 法に こ だわ らな くな る
場 合が ある
【皿 .ケア と自己 対 処に よ る問題 の 自覚 ・好転 ・解決 】
23 患 者 は 、看護婦 ・± が 自分 の 状態 を受 け入 れて い ると思 う と、心理的 に安定 し 自 ら の 問題を 自覚 す
る場合 が ある
24 患者は、看護婦 ・士 か ら生 活の 援 助を受 ける こ とに よ り.改めて 自分の 病状 の 程度 を自覚す る こ と
が あ る
閏 看 護婦・士 が、適切 な 時期に 適切 な 方 法で 清潔 の 援 助 を行 うこ とに よ り、患 者 の皮 膚の状 態 は 良 好
に保 た れ る
顯靉難覊ll韆鑼蕪飜i纂32 患者は 、外見上の 変化 に 対 し自分 な りに 工 夫 す る こ とに よ り、他者 と 交流す る際の 心 理 的 ス ト レス
を和 らげて い る
【1V.ケ ア と 自己 対処 に よ る充足 感 獲得 と心理 的 解放 】
國 清潔 の援助な どを反 復す るこ とに よ り、患者 は次第 に 看護婦 ・士に 心 を開 くよ うにな る
韓朧1鸛 毛
’
灣鵡 瓢 誓金纛1認騒詰鴇雲開 き様 。 な気持 ち を置舌、。 く
れ る きっ か けに な る
圜 看 護婦・士 が援 助 を円滑 に 行 うこ と は、援助を受 ける こ とに対す る患者の 緊 張や 不安を緩和するこ
とに つ なが る
岡患 者は 、自力 で 排泄 や清潔 の 欲 求 を満 たす こ とがで きた 時.満足 感や 充寒感を感 じる
38 患者は衰弱 し て い て も、何 とか周 囲の状 況 を把 握 し よ う と して お り 、そ っ す る こ とで 気持 ち を安 定
させ て い る場合 が ある
【V .同題 解決 扶 況に よ るケ ア 提供者 との 関係性の 発展 と変化 ]
鵬鸚窪羅 躔 鶴 摺 …讐重彎 彎鍮鰹 鱇 、瀦 ・ ・助・・ ムー
ズ
に受け入れ るよ うに なる
団 看護婦 ・士が 患者 の 状 態に応 じた コ ミ ュ ニ ケー
シ ョ ン を試み る こ とに よ り、患 者は 自分 の 意 思 を表
出 で きるよ う に な る
軆 看護婦 ・士 が繰 り返 し 適切な 援助 を 行 うこ とで、患者には その 看護婦 ・士 に対する 信頼 感が生 じる
援助が 円 滑に 終 了 しほっ と一
息つ い た患者は、他者 へ 配 慮で きるよ うにな る
44 援助 を望 ん でも、看護 婦・士 が 十分 対応で きない と、患者は要 望 を表 出す る こ と自体 をあ き らめて
しま う場 合 があ る
4S 看護婦・士が 患者 の問 題に 十 分対 応で きない と、患者 は看 護婦
・士 に関 わろ う としな くなる
因 子負荷量の 2 乗和因 子 の寄与 率 (% )累積寄与率 (% )
因子 1 因子 2 因 子 3 因 子 4 因 子 5
0.353 −0.089 −0.178 巫 0.055 −0.185 −0.IQ9 −0.256
−0.016
−0.184
−0.260. −0、338 0.007
−0.155
−O.100 −O.229 −0.276
−0.265 −0.191 −0、111 −0、129 −0.323 −0.166 −0.223 −0.080 −0.119 −0.262 −0.036 −0.296 −0.141 −0.3D2 −0.014 −0.308
−0.163 −0.199 −0.218 −0.227 −0,135
−0.OB9 −0.213
−0.175 −0.209
−0.248 −0.291
−O.D92 −0.185
−0.278 0.049 −0.336
0.351 −0.1980.268 −0.3010.371 −0.2390.406
−0.243
驪 一〇.182 −0.1960,260 −0.119
0.289 −0.Ol5匝:璽]
−0.1470.294
−0.165
172861研
冊
52
0000幽 一 一 一
一D.353−0.416一〇 44
−0500一〇.212−0.435
一〇.149 −0.126−0.211 −0.059−D.129 −0.止32−0.ll9 −0.019
−0、174 −0.111−0、030 −0.127−0.222 −0.226
−0,263 −0.445
−0.357 −0.336
−o.073E 璽
0.315 −0.237
0.325 −0.229
0.145 −Q、339
0.210 −0.298
0.229 −0.208
0.玉32 −0.2710.219 −0.4000.039
−0.2960、100 −0.0600、184
−O.144
一〇.128
−0、217 −0 96
−0.196 −0.187 −0 00
−0、168 −0 57 −0、068
−0.ll5 −0 56
−0、259−O.131 −0 553 −0、204−0、213 −0 03 −0.125−0,064 −0.420 甌一〇、222 甌
一〇.326
℃ 27 −0.256 −0.227
℃ 19 −0.248
−0.4e4
0.1750.1760、2040
.2620
.1130.224
−0.132
−0.300 −0、玉82 −0.101 −0.468 0.170 −0.163 −0.308 −0.134
−0.236
−0、313 −0.149
−0.277
−0、292 −0.006
−0.329 −0.384 0.003 匝
D.144 0、271
0.279
一〇.183 −O,246
−0.201−0.121
−0.067 −0.240
一〇.lll
−0.092 −0.259
0.273 −0.04T −0.255
0.076 −0.331 −0.OO8G.155 −0.394 −0、364 −0.187
0.292 −O.393 −0.262 −0.138
一〇、213−0.469一〇 27
−0 73
6.42e 5.648 4.681 3.941 3.60514.3 12.5 10.4 8、7 8.Ol4.3 26.8 37.2 45.9 53.9
注 ; 匚::コ内は、因 子 負 荷量 の 絶 対 値が O.4 以 上 で あ り、か つ 各項 目に お け る最 も高 い 因 子 負荷量 を示 す。
* 因子 分 析の 結果に 基 づ き、最終的に 選定 され た項 目に つ い て は、質問項 目の 番号 を反 転 して 示 した。
看 護教 育学研究 Vol.9 No .12000 35
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VI.考察
1 .データの 適切性
本研 究の 結果 は 、 「予備調査版」 が、質問項 目各 々 の
得点分布、総得点分布 ともに 正 規分布 で あ る こ とを示 し
た.これ は 、本研究の デー
タが、 「予備調査版 」 の 信頼
性 ・妥当性 を検討す る た め に、偏 りの ない 適切 なデータ
で あるこ とを表す。
2.内 的整合性
一
般に、測定用 具が内的整合姓 を確保 して い る か ど う
か の 判定 は、ク ロ ン バ ッ ク α 信頼性係数 0.7 を基準 に行
う6コ/“ /‘5
場 合が多 い 。 「予備調査版 」 の ク ロ ン バ ッ ク α
信頼性係数 の 値 は 0.964 で あ り、 「予 備調査 版 」 が 内 的
整合性 を確保 して い る こ とを示す 。
また、 「予 備調査版 」 の 全質問項 目 よ り、各質問項 目
を除 した場 合の ク ロ ン バ ッ ク α 信頼性係数は、0.962 か
ら 0.963 ま で の 範囲で あ っ た, こ れ は、個 々 の 質問 項 目
に は、尺 度全体の 内的整合性 を脅かす 不 適切 な質問項 目
が存在 しな い こ とを示す。
以 上 は、 「予備調 査 版 」 は、内 的整合性 を 確保 して お
り、質 問 項 目は 全 て、尺 度 の 内的整合性 の 確保 とい う観
点 か ら、適切 で ある こ とを表す。
3 .構成概念妥当性
「予 備 調 査版」 は 、5 つ の 患者行動説明概念 に 基づ き、
質問項 目を作成 し た。ま た 、こ の 尺 度は、質問項 目が 各
概念 に 対応す る下位 尺 度を構成する こ と を意図 した。因
子 分析 の 結果 は 、こ の 尺 度 には 5 因子が存在 し、第 1 因
子 か ら第 4 因子 ま で は、各 々 、2 下位尺度の 項 目を複合
した 因子 で あ り、第 5 因子 は 、4 下位尺 度 の 項 目 を複合
した 因 子 で あ る こ とを示 した。
こ れ は 、 同一
下 位尺 度 に
属す る質問項 目同 士 が あ る程度同一
因子 に 収束 して い る
が 、各因子 と下位尺度の 間 には対応 が な か っ た こ と を意
味する.したがっ て、 「予 備 調 査版 」 は、下 位 尺 度が患
者行動を説明す る 5 概念 を反 映 した もの とな っ て お らず、
構成概念妥 当性を確保 して い ない 。
4 .質 問項 目の 選定
先述した よ うに 、 「予備調査版」 は、最終的に は、質
問項 目数 が 全 体で 25 か ら 30 程度、ま た 、下位 尺 度毎 の
質問項 目数が 同数で あ る 尺度 の 完成をめ ざす。
ま た 、研 究 の 結果、 「予備調 査版」 は 個 々 の 質問項 目
及 び 尺 度全体 に お い て 内的整合性を確保 して お り、全 て
の質問項 目が内的整合性 の 確保 とい う観点か ら適切 で あ
っ た。こ れ は 、 「予 備調査版 」 に用い た 45 質問項 目の
中か ら、25 か ら 30 の 質問項 目を選定 し た 場合にも内的
整合性 を確保 で きる こ とを意味す る.
一
方 、45 質問項 目 を 用 い て 因 子 分析 を行 っ た結果 は 、
同一
下位尺度に属する質問項 目同 士 があ る程度 は 同一
因
子 に 収束する こ と を示 した。こ れ は、同一
下位 尺 度 に 属
し、同一
因子 に 収束した もの を 中心 に質問項 目を選 定す
る こ とに よ り、構成概念妥 当性 を確保 した 尺 度 を構 成 で
きるこ とを示唆す る。
そ こ で 本項 に お い て は 、因子 分析 の 結果 に 基づ き、個
々 の 下位尺度が 5、6 項 目か ら成 り、全体 として 25 か ら
30 の 質問 項 目 を含み 、信頼 性 と妥 当性 を 確保 した 尺度
開 発 に つ なが る適切な質問項 目 を 選定する。
1 )問題発生 と依存
【1、問題発 生 と依存】を構成 した項 目は、項 目 1 か
ら 12 の 12項 目で あ り、項 目 1 は 第 4 因子 に 、 他 の 項 目
2 か ら 12 は 全 て 第 1因子 に最 も高い 因子負荷量 を示 し
た 。こ れ は 、 【L 問題発生 と依存 】の 項 目は 、第 1 因
子に収束す る こ とが妥 当で あ り、第 1因 子 に収束 しなか
っ た 項 目 1 に 何 ら か の 問 題 が 存在す る可能性を示唆す る。
項 目 1は 「衰弱 の 激 しい 患者 に は、清潔に 関する 問題
が 生 じやす い 」 で あ り、こ の 質問表 現 の 抽象度は 他 の 項
目に 比 べ て 高い .項 目 1 が 本来収束すべ き因子に収束 し
なか っ た原 因 に は、こ の 抽象度 の 高 さ が 考 え られ る。し
た が っ て、項 目 1 を こ の 下位尺度 の 項 目と して 選定す る
こ と は適切 で は ない 。
また、 【1 .問題発生 と依存】を構成する 項 目を 5、6
項 目 に絞 り込む に は 、残る 11 項 目の 中か ら、よ り適切
な項 目を選定す る必要 が ある。そ こ で 、因子負荷量がそ
の 因子に与える各項 目の 重 み を示すGS/
こ とを考慮 し、こ
の ll 項 目の うち、第 1 因子に対す る因子負荷量が高 い
もの か ら 6 項 目 を採用 する こ と と した。
以 上 よ り、 【1 .問題 発 生 と依存】を構成する 項 目 と
して、項 目 2、5、8、9、10、11 の 6 項 目を選定 した。
2)問題 へ の 対処 と調整
【ll.問題 へ の 対処 と調整】を構成 した 項 目は 、項 目
13 か ら 22 の 10 項 目 で あ り、項 目 13か ら 16、及 び 、項
目 19、20 の 6 項 目は 第 3 因子に、項 目 17、18、21 の 3
項 目は第 1 因子 に、項 目 22 は第 5 因子 に、最 も高い 因
子負荷量を示 した. こ の 結果 は、 【H .問題 へ の 対処 と
調整】の 項 目は、第 3 因子に収束す る こ とが妥当で あ り、
第 3 因 子 に 収束 し なか っ た項 目に何 らか の 問題が存在す
る 可 能性を示 唆する 。
項 目 17、18、21 が最 も高 い 因 子 負荷量 を 示 した 第 1
因子 は 、 【1 .問題発 生 と依存 1 の 項 目の 大部分が収束
し た 因 子 で あ っ た 。項 目 17 「患者 は、援助 に 苦痛 を 感
じ る と、何 らか の 形 で 看護婦・士 に抵抗感を示す 」 は 、
【1 .問題 発 生 と依存】 に 属す る項 目 10 「患者 は 、看護
婦 ・士の 説明 不 足 で状況 を 理解で きない 時、援助への 抵
36 看護教育学 研 究 V 〔〕1.9 No.1 2000
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抗感を 生 じやす い 」 と 同 じ 「抵抗感 」 とい う用 語 を 用 い
て い る。前者は 「看護婦・士 に対する抵抗感」 、後者 は
「援助に対す る抵 抗感」 を 意味 して い る が、同 様 の 意味
に解釈された可 能性が高い。
項 目 18 「患者 は 、 看護婦 ・士 の 技術や 方 法 を観 察 し
評価 して い る 」 は 、患者の 問題状況を示 さず、問題 に 対
処する患者 の 状況 の み を 示 す表 現 と な っ て い る た め、質
問項 目を構成する 内容に問題があ り、因 子 負荷量 に影響
し た可能性 が あ る。
項 目 21 「看護婦 ・士 に不安 を表 出す る患者は援助を
求め て い る」 は 、第 3 因子 に 収束 した個々 の 項 目 が、患
者が自分 自身 で 直接問題 に 対処 し よ う と して い る状況を
示 して い るの に対 し、問題解決を看護婦 ・士 に委 ね 、す
なわち、看護婦 ・士 の 看護活動を受け入れ、間接的に 対
処 し よ う と して い る状況を示 す。こ れ が 原因 とな り、項
目 21 は、 【1、問題 発 生 と依存】の 項 目 と同様に第 1 因
子 に 収束した 可 能性 があ る 。
また、第 5 因子 に高 い 因子負荷 量を 示 し た 項 目 22
「患者 は 看護 婦 ・士 が 問 題 を解決 して くれ る こ とがわ か
る と、自己 流 の 対処方法 に こ だ わ らな くな る場 合が あ
る 」 は、第 3 因子 に 収 束 した 他 の 項 目 が、患者 自身が問
題に対 処 し よ う と し て い る状況を示す の に 対 し、患者が
そ れ ま で 行 っ て い た 対処方法 を中止 する こ とに よ り調 整
して い る状況を示す。こ れが原 因 とな り、項 目 22 は 本
来収束すべ き因 子 に 収 束 しなか っ た可 能性 が あ る。
以 上 よ り、項 目 17、18、21、22 を 【n .問題 へ の 対 処
と調整】を構成する 項 目 とし て 選定す るこ とは適 切 で は
ない と判断 し、第 3 因子 に 収束 した項 目 13、14、15、
16、19、20 の 6 項 目 を選定する こ と と した。
3 )ケア と自己 対処 に よ る 問題 の 自覚 ・好転 ・解決
【HI.ケ ア と 自己 対処 に よ る 問題 の 自覚 ・好転・解
決】を構成した項 目 は 、 項 目 23 か ら 32 の 10 項 目で あ
り、項 目 25 か ら 28 及 び 項 目 30 の 5 項目 は第 4 因 子 に、
項 目 23、24、29 の 3 項 目は第 5 因子 に、項 目 31、32 の
2 項 目は 第 3 因子 に、最も高い 因子 負荷量 を示 した。
項 目 23、24 は と もに 【皿 .ケ ア と自己対処 による問題
の 自覚・好転
・解決】の 下位 概念 で あ る カ テ ゴ リ《 ケ ア
受け入れ に よ る 問題 の 自覚 》 、項 目 25 か ら 30 は カ テ ゴ
リ 《 ケ ア 受 け入 れ に よ る問題 の 好 転と解決 》 、項 目 31、
32 は カテ ゴ リ《 自己対処成功に よ る問題 の好転 》 に 基
づ い て作成 した 質問項 目で あ る。項 目 29 は 第 4 因 子 に
も高 い 因子負荷量 を示 した こ と か ら、こ の よ うな因子 分
析結果 の 原因 は 、質問 項 目の 中に 【HI.ケ ア と自 己 対処
に よ る問題 の 自覚 ・好転 ・解決】を構成す る項 目として
不適切な内容 の もの が存在 した た め で はな く、同℃ カ テ
ゴ リ に 基 づ い て 作成 し た 質問項 目間 の 内容 の 共通性 に あ
る可能性がある。すなわち、一っ一
っ の カ テ ゴ リは患者
行動 の 異な る性質を 示 し て い る た め 、カ テ ゴ リ間 の 性質
の 相違が因子分析の 結果に反映 した 可 能性があ る 。
一方、
看護 の 対 象理 解 に 関す る 自己 評価尺 度 の 開発 に お い て は 、
そ の 活用 に よ り、看護婦 ・士 が、患者行動を説明する 5
っ の 概念各 々 に対応 させ て 自己 の 対象理 解の 問題 を認識
し、対象を適切に理解で き る よ うに な る こ と をめ ざす。
そ の た め、同一
下位 尺 度 に 属す る質問 項 目 は、同 じ因 子
に 収束する必 要があ る 。 そ こ で 、 【皿 .ケ ア と自己 対処
に よ る 問題 の 自覚 ・好転 ・解決】の 項 目が 分離 し た 3 因
子 の 中で 、どの 因子に収束 し た 質問項 目を採用す る こ と
が 最 も適切 で あ る か に つ い て検討 す る。
カ テ ゴ リに 着 目す る と、《 ケア 受 け入れ に よ る 問題 の
好転 と解決 》 は 、 「清潔援助を受 け る こ とで 皮膚 の 状態
が維持 される と同時に 、コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン 能力 に適 し
た 刺 激 を 受 け、思考機能が活性化 され る」6’]
とい っ た患
者 の 行動 を表す。こ れ は 、看護婦 ・士 にとっ て極 めて 日
常的 な 現象を 説明する概念で あ る。また、《 ケ ア受け 入
れ に よ る 問題 の 自覚 》 は 、 「看護婦 ・士 か らの 過去 の 生
活習慣 に 対す る賞賛を受け、謙遜する こ と で 自ら が 持 っ
生活意欲 の 低下 とい っ た 問題 に 気 づ く」6s)
とい っ た患者
の 行 動を表 し、《 自己 対処成功による問題 の 好転 》 は、
「経鼻 カ テーテ ル を調整 し酸素吸入量 を維持す る」
6’泌
い っ た患者の 行動 を 表す。こ れ らは、患者 の 重 要 な側 面
を表 し て は い る が 、看護婦 ・士 が 現象 と し て 実際 に 経験
す る頻度を考え た 場合、《 ケ ア受け 入 れ に よ る問題 の 好
転 と解決 》 に 比 べ 日常性 に 乏 しい 概念で あ る 。 した が っ
て 、 【皿 .ケ ア と自己 対処に よる問題 の 自覚 ・好転 ・解
決 1 を構成す る質問項 目に は、カ テ ゴ リ 《 ケ ア 受け入 れ
に よ る問題 の 好転と解決 》 に 基 づ い て作成 した 項 目 25、
26、27、28、29、30 の 6 項 目 を選定す る こ とと した 。
4 )ケア と自己 対処による充足感獲得 と心理的解放
【IV.ケ ア と自 己 対処 に よ る充 足感 獲得 と 心 理 的解
放 】を構成 した 項 目は、項 目 33 か ら 38 の 6 項 目で あ り、
項 目 33 か ら 37 は第 2 因子 に 、項目 38 は第 5 因子 に最
も高い 因子負荷量 を 示 した。 こ れ は 、 【IV.ケ ア と 自己
対 処 に よ る充足感獲得と心 理 的解放】の 項 目は第 2 因子
に 収束す る こ とが妥 当で あ り、第 2 因子に収束 しなか っ
た項 目 38 に何 らか の 問題が存在す る可能性 を示唆す る。
第 2 因子 に 収束 した 【IV.ケア と自己 対処 に よ る 充足
感 獲得 と心理的解放】の 項 目は全 て 、 「心 を開 くよ うに
なる」 (項 目 33)、 「爽快感をもた らすj (項 目 34)、
「気持 ちを開 き様 々 な 気持ち を 話 し て くれ る きっ か け に
な る 」 (項 目 35)、 「緊張や 不 安を緩 和す る こ と に っ な
看護教育学 石廾究 VoLg No .1 2000 37
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が る 」 (項 目 36)、 「満 足 感 や充実感 を感 じる」 (項 目
37)と、患者 に 起 こる 結果 を断定的 に述 べ て い る。こ れ
に対 し、項 目 38 は、 「気持ちを安定させ て い る 場合が
あ る 」 と して 、患者 が 気 持 ち を筴定 させ て い ない 場合が
存在する 可 能性 を含む 表現 とな っ て い る。また 、項 目
38 が収 束 した 第 5 因 子 を構成 し た 7 項 目の うち、項 目
45 を除 く 6 項 目は全 て 、患者に起 こ る結果 が 断定的で
なく、他 の 可能性 を含 ん だ 表 現 と な っ て い る。こ れ らが
原因 とな り項 目 38 は第 2 因子 で は な く第 5 因子 に 収束
した と考 え られ る。
以上 よ り、 【IV.ケ ア と自 己 対処に よる充足感 獲i得 と
心 理 的解放】を構成する質問項 目 と し て 、第 2 因子 に 収
束 した 項 目 33、34、35、36、37 の 5 項 目を選定する こ
と と した。
5 )問題 解決状況 に よ る ケ ア 提供者 との 関係性 の 発展 と
変化
【V .問題解決状況 に よ る ケ ア 提供者と の 関係 性 の 発
展 と変化 】を構 成 した 項 目 は、項 目 39 か ら 45 の 7 項 目
で あ り、項 目 39 か ら 43 は 第 2 因子に、項 目 44、45 は
第 5 因子 に 、最 も高 い 因 子負荷 量 を 示 した。これ は 、
【V 澗 題解決 状況 に よ る ケ ア 提供者 との 関係性 の 発 展
と変化】の 項 目は 、第 2 因子 に 収束す る こ とが 妥当で あ
り、第 2 因子 に 収束し なか っ た 項 目 44、45 に 何 らか の
問 題が存在す る 可 能性を示唆す る。
項 目 44、45 は、第 2 因子に高い 因子負荷量を示 した
他 の 質問項 目 が、援助に伴 っ て患者一看護婦 ・士 関係 が
促進 し、円 滑 に な る こ とを表現 して い るの に対 し、援助
に 伴 っ て 患者 との 関係 が 停 止 す る 状況 を示 し て い る。 こ
れ が、こ れ ら 2 項 目が 第 2 因子 に 収束 しな か っ た原 因 で
あ る と考 えられ る。
上述 し た検討 に 基 づ き、 【V .問題解決状況 によるケ
ア 提供者 との 関係性 の 発展 と変化】を構成する 項 目 と し
て 、第 2 因子 に 収束した項目 39、40、41、42、43 の 5
項目 を選 定する こ とと した。
以上 の考察 に 基づ き、尺 度開発 における本調査に向け
た 28 質問項 目か ら成 る看護 の 対象理 解に関する自己評
価尺 度を作成 した。
VII.結論
1 .「予備調 査 版 」 は 、内 的 整合 性 に よ る 信頼性 を確保
して お り、個々 の 質問項 目 に は 、尺度全体の 内的整合性
を脅かす不適切 な質問 項 目が存在 しない 。
2,因 子分析 の 結果 は 、 「予 備調査版 」 には 5 因子が存
在する こ と を示 したが、こ の 5 因 子 は、患者行 動 の 説明
概念に基 づ き構成 した 5 下位尺度に対応 しなか っ た 。 こ
38
れ は、 「予備調査版 」 が 構成概念妥 当性 を確保 して い な
い こ と を示 した。
3 本 研 究 の 結果 の 考察 を 通 し、看護の 対象理 解に 関す
る 自己 評価 尺 度 の 開発 に 向け て、28 質問項 目 を選 定 し、
尺度を構成 した。
腰 .お わ りに
本研 究 に お い て は、現実適合 性 が 高 く、信頼性 ・妥 当
性 を確保 した看護の 対象 理解に関する 自己評価尺 度の開
発 を最終的 に め ざ し、そ の 初期的段 階に 位置す る研 究 と
して、質問項 目を作成、選定 した。本研究の 結果 に基づ
き選定 した 28 項 目か ら成 る 尺 度 の 信頼性 ・妥 当性を検
証 し、そ の 結果をもとに各下位尺 度毎の 質問項目数が 同
数 で あ る 尺 度 を完成す る こ とは 今後 の 課 題 で あ る。
多忙な業務 の 中、本研究に御協力 くださっ た全国 の 看
護婦・士 の 皆様 に 深 謝す る。
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看護i教 育学研 究 VoLg No 」 20(D 39
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