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Architectural Institute of Japan NII-Electronic Library Service Arohiteotural nstitute of Japan カテ II 日本 建 築 学 会 計 画 系 論 文 集 522187 19419998 J Archit Planm Enviro Eng A J No 522 197 94 Aug 1999 視深度 平面記 評価 部 を考 近代住宅作品 空間構成 ASTUDY ON ARCHITECTURAL PLAN DESCRIPTION AND EVALUATION WITH SIGHT DEPTH The space composition of the modern houses in consideration of the wall and the window 啓介 早瀬幸彦 ** 近藤 *** * KeisukeKITA GA WA Yukihifeo HA YASE ShoichiKONI O Jian ZHANG y ノ> G and Shigent PVAKA YAMA 1n this study we 80rt wan and window around the modern houses measure Sight Depth andcon der the space composition in tLe modem houses We presume various spaee compositions by the relation of t he component with dening window as a thing thatfhced waU Wall and winaow were used in opposi on 血om the viewpojnt of multipLier e ct and changeably in the modernhouses We con 血m what arc ヒitectsin the modern ages tried to 且nd the new space co position that was drent from past architecture Keywords SightDepth descrvPtietu eVfi Ltation vaaff bdove modern houses 評価 近代 1 は じめ に 研究は において 視点から視線を遮 のまでの視深度 と定 義 その 視 深 度 を数 学 的解析す とにより 平面 を記 評価 まで 視深による平面 の可 性を るために 1 2 視深 概念測定 および平面記述 ため 各 指 標 とそ 手法に 説明 2 13 近代 住 宅 作 品 を通 覧 的 に測 定分 類 を行 また3 4 方形円形 形平面 てい 場合 単純な平面図を対とした心理 実験 考察を紹した 本稿 2 要素 平面 指標 に加 え う要 素 毎 指標 平面 記述をす さらに 代住 品を壁 と開 編成 により 分類 深度 によ 代住 品の 視覚 位置 づけ を 明 らか にす る9 鉄やガラ 歩はそれま 空 間 に 対 す る建 意 識 や 表 現 に多 大 な る 変 革 を及 した近 代 建 築 にお いて 壁や柱や開 部とう要 素 は全体中でど ぴ あわ れて 果を 建築 たの 建築空間構成 はその 要素合わせに 多様な変化 ある と考 え られ る空間を構成す る要素 がどう配 され を向け近 代 住 宅作 品 壁と開 間構 成 を 明 ら に して 現代変化をみ てい 2 流れ れ を段 階的に示近代住平百1 にお 重要 え られ る 住 宅 11 を研 と して 選 2 )空間 分析 して 内部空 様 な場 を 構 成 透過 外部と的変化 を構 透過 るものを して定義す 3 選 出 した 薗図 2 情 報 を含 た平空間 概念 度測 定 用 平 面 図変換す 4 面をした の のそ 中心点にお ー一 視深度 360 度(本 研究 では 180 )計測 し得 られ たタを各指面図 濃淡 に よ り記述 3 する5 )視深度平均と視深度標準偏差 2 指標毎平面記 傾 向 を類 型 化 して分類 する名古屋 業大学社会開発 博 士後期課程 修士(工学) i 久米設計第 2 設計部 工学 ”+ 名古屋 業大学社会 開発 学科 助手 コニ 学) 桝纏 設計 博士 工学 i +”+ 名 古屋 業大学社会 開発学科 教授 GraduateStudent Dept of Archiecture Urban Engilleering and CMI Engineering Nagoya In titute of Technelogy M EngKume Sekkei ArchitecturalDesigllDept2 DrEng Research Assoc Dept of Architecture U ballEngineering and CivilEngineering NagQya Institute Df Technology M Eng Chunichi Sekkei DrEng Prof、, Deptof Architec ure Urball Engineering and CivilEngineering Nageya rnstitute Df Technelogy Dr Eng 187 N 工工 Eleotronio Library

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Architectural Institute of Japan

NII-Electronic Library Service

Arohiteotural エnstitute   of   Japan

【カ テ ゴ リーII】      日本建 築 学会計 画系論 文集  第 522号,187−194.1999年 8 月

J.Archit. Planm、 Enviro”. Eng., A[J, No.522,197−]94、 Aug.,1999

「視深度」に よる建築平面記述 ・評価 の 研究壁 と開 口部 を考慮した近代住宅作 品の 空間構成

ASTUDY  ON  ARCHITECTURAL  PLAN  DESCRIPTION

    AND  EVALUATION   WITH “ SIGHT −DEPTH ”

  The  space  composition  of  the  modern  houses in consideration

              of the wall   and  the.window

北 川 啓 介*

,早 瀬 幸 彦 **,近 藤 正一 * * *

, 張   健 *** *

          姜 涌*

,若 山 滋* * ’ * *

.Keisuke KITA  GA  WA ,  Yukihifeo HA  YASE, Shoichi KONI )O,

  Jian ZHANG ,  y∂  翅 ノ>G  and  Shigent  PVAKA  YAMA

    1n this study , we  80rt  wan  and  window  around  the modern  houses ,  measure  Sight  Depth andcon 飢der the space

composition  in tLe modem  houses . We  presume  various  spaee  compositions  by the relation   of, t,he component  with  de丘ning

window  as  a thing  thatfhced  waU . Wall and  winaow  were  used  in opposi 口on 血om  the viewpojnt  of  multipLier  e 飩 ct  and

changeably  in the modernhouses . We con 血 m  what  arc ヒitects in the modern  ages  tried to 且nd  the new  space  co 皿 position

that. was  d艶 rent  from past  architecture .

Keywords ’ Sight Depth. descrvPtietu. eVfi/Ltation, vaaff,− bコdove, modern  houses

視 深度,記述 ,評 価 ,壁 ,開 口 部 ,近 代 住宅

1,は じめに

 本 研 究 は,平面 空間内 に お い て,ある視 点か ら水 平視線 を遮 る も

の ま で の距離を 「視深度 」 と定義 し,その 視深 度 を数学 的に 解析す

る こ と に よ り,建 築平面 を 記 述,評価する 研究の一環 で あ る。

  これま で,視深度に よ る建築平面評価の 可 能 性を 探 るた め に,第 1

報 文 コ 2〕で は、視深 度の 概 念,測定 プ ロ セ ス ,コ ン ピ ュ

ータシ ス テム,

お よび平面記述 の ための 各 指標 とその 手法 につ い て 説明 し,第 2報文

13 }で は,近代 住宅作 品を通 覧的に測 定,分類 を行 い ,また第 3報文

ユ4 }で は,正 方形,円形,正 方形平面の 中に柱が 立っ て い る場合な ど

の 単純な平面図 を対象 と した 心 理 実験と の 比 較 考察を紹介 した。

 本稿 で は,壁 と開 口 部 とい う建 築 の 2 要素の 距離を 測定 し、従来

の 平面の 指標 に加 え壁 と開 口部 とい う要素毎の 指標 の 平面記 述 をす

る。さ らに,近 代住 宅 作 品 を壁 と開 口 部の 指 標の 編成 の仕方 に よ り

分類 し,視深度 に よ る近 代住宅 作 品 の 壁 と開 口 部 の視覚的位置 づ け

を明 らか にす る。】.9世 紀以降の 鉄や ガ ラス の技術の進歩 はそれ ま

で の 空 間に対す る建 築家 の 意識や 表現 に多 大 なる変革 を及 ぼ した.

近 代建築 にお い て 壁や柱や 開 口部 とい う要素 は,全体の 中で どの よ

うな役 割を担 い 結ぴ あわ され て 美的効果 を 生み だ し,建 築の 表 現 と

なっ た の だろ うか。建築 空間の 構成 は そ の 要素の 取 り合 わせ に よ っ

て多様 な変化が ある と考 え られ る。その い わば空間 を構成す る要素

が ど う配 され て い る かに 目を向け,近代住 宅作 品の 壁 と開 口 部の 空

間構 成 を明 らか に して,現代建築 に 至 る変化 をみて い く。

2.研 究の 流れ

研究の 流れ を段 階的に示す。

(].)近代 住宅の 平百1計画 の 壁と 開 口部の扱い にお い て重要で ある と

考え られ る住宅注 11を研 究の 対象 と して 選 出する (表 ユ、)。

(2 )空間を分析 して い く上で,主 に建 築内部空 間の 多様 な場 を構成

 する 光の 透過 しない もの を 「壁 」,主に 建築の外 部 との 視覚的変化

 を構 成す る 光の 透過す る もの を 「開 口部 」 とし て定義す る。

(3 )選 出 した 平薗 図注 2〕

を 「壁 」 と 「開 口 部」 の情 報 を含 め た平面

 空 間 とい う概念 の 視深 度測 定用平面 図に 変換す る。

(4 ) 建築平面 を格 子 状に 分割 した もの のそ れぞ れ の 中心点に お い

 て,コ ン ピュー一タ を用い て視深度を 360 度 (本研 究 で は 180

 分割)計測 し,得 られ たデー

タを各指標 に 従い ,元の 平面 図上に

 濃淡 に よ り記述注 3 「す る。

(5 )視深度 平均 と視深度標 準偏差 の 2 っ の 指標 毎に,平面記 述の 構

成 の傾 向 を類型化 して分類 ・考察す る。

 “

名古屋]二業大学社会 開発 工 学科

  博 士後期課程 ・修士 (工学)+ i

久 米設計第 2設計部  博 士 (工 学 )”+

名古屋工 業大学社会 開発工 学科 助手・修士 (コニ学)

桝纏中 日設計 博 士 (工 学 )

i+”+名古屋 工 業大学社会 開発工 学科 教授

・工 博

Graduate Student, Dept. of  Archiしecture , Urban  Engilleering and  CMI  Engineering,Nagoya  In$titute of Technelogy, M .Eng、Kume  Sekkei,Architectural Desigll Dept2, Dr. Eng .Research Assoc., Dept, of  Architecture, U 聖

.ball Engineering and  Civil Engineering,NagQya  Institute Df Technology , M .Eng、Chunichi Sekkei, Dr. Eng.Prof、, Dept. of  Architecしure, Urball Engineering  and  Civil Engineering,Nageya  rnstitute Df  Technelogy , Dr. Eng、

                                    − 187一

N 工工一Eleotronio  Library  

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表 1  対 象 と した 近 代 住 宅作 品

悔 住 宅 作品 名 建 築家 竣 工 年

Ol ブロッサ ム 邸 フラン ク・ロ イド・ライト 且892

02 ウィン ズ 卩 ウ邸      」 7 ランク・ロイド

・ライト L893

03 ライトス タジオ と住居 フランク・ロイド

・ライト L895

04 ヘラー

邸 フ ラン ク・ロ イド・ライト

    祠

1897  .

05 フサー

邸 フ ラ ン ク・卩イド

・ライト 1899

D6 プ レ ーリーハウ ス フランク

・ロイド・ライト L900

07 ブラッ ドレ イ邸 フ ラン ク・ロ イド・ライト 1900

08 オ1ル タ自邸 ヴィクトール ・オ ル タ 1900   ・

09 ウィン デ ィー

邸 マ ッキ ン トッ シ コ. ・9・11

10 モ ン クトン 邸 ラッチェン ス Lgo2

1互 ウィリッ ツ邸 フ ラン ク・ロイド・ライト 1902

且2 パ ピ 卩 ン ホー

ル ラ ッ テ ェ ン ス 190313 ヒ ル ハウ ス マ ッ キ ン トッ シ ュ 1903

14 マ ーチ ン 邸 【 フ ラン ク・ロ イド・ライト 1904

、15 チ ェ ニー邸 フランク・卩イド

・ライト 19D4

16 マーチ ン 邸 且 フラン ク・ロイド

・ライト L90417 グラ ス ナ

ー邸 フランク

・ロイド・ライト 1904

’18 ハーディー

邸 フ ラン ク・ロイド

・ライト 1905

19 フ オ リー7 アーム ラッ チ ェン ス 1906

20 ヘース コート ラッチェン ス 1906

2L ロパ ーツ 邸 フラン ク・ロイド・ライト 1908

22 ギ ャ ン ブル 邸 グリー

ン・アン ド

・グリー

ン 190823 ロビ

ー邸 フラ ン ク

・ロイド・ライト 1909

2弓 ス タイナ ー邸 ア ドル フ ・ロ ース 1910

25 エ ドナ ス トン マ ナー ラッチェン ス 191225 ヴィ ラシ ュヲブ ル ・コル ビュジェ 19L627 メゾン ベ ス ノス ル ・コル ビニジェ 192229 ル

ーフ アー

邸 ア ドル フ ・卩 一ス 1922

29 両親 の 小さな家 ル ・コ ル ビュジェ 1923

30 煉 瓦 造 田 園 住 宅、 一匙一ス 畠プアン

’ア ル

’ローエ 192431 プア

ーアー

テ ィ ス トの 家 ル・コル ビュジェ 1924

32 ス トムメール カーデ の 住宅 ヨ ハ ン ネス ・ダィガー 1924

33 エス プリヌーボー展 の 家 ル

・コル ビュジェ 192534 ロベ ル 邸 ル ドル フ

・シ ン ドラ

ー 192635 テ ル ニ シ エ ン 邸 ル ・コ ル ビュジェ 1925

36 ク ツ ク邸 ル ・コル ビ ュジ ェ 192637 バ ウハウ ス 教授 住宅 ワル タ

ー・グ ロピウ ス L926

38 ダー

レ ヴィッツ の 自 邸 ブルー

ノ・タ ウト 1926

39 ロ ヴェル 邸 リチ ャード・ノ イ トラ 1927

40 ヲ ル フ 邸 ミー

ス ・フ ァ ン ・デ ル ・ロ ーエ 1927

弓L メ ゾ ン ス ツ ッ トガ ル ト ル ・コ ル ビ ヌジェ 1927卜42 ガ ル シュの 家 ル

・コル ビュジェ 192743 ヴァ イセ ンホ

ーフ・ジー

ドル ンク ル・コル ビヌジェ 1927

344 トリス タン・ツ ァ ラ邸 アドル フ

・ロース 1927.45 ヴァイセ ン ホ

ーフ・ジー

ドル ン ク 」・亅・p・ア ウト 1927

46 ミューラー邸 ア ド ル フ ・ロ ース 互928

47 バ ル セ ロ ナパ ビ リオ ン ミース ・7 ア ン ・デ ル ・ロ ーエ L92948 サ ヴォ

・ア 邸 ル

・コル ビュジェ L92949 メ ル ニコフ 自邸 コン ス タンチ ン

・メル ニコフ 1929

50 チコ.一ゲ ン ハ ッ ト邸 ミー

ス ・フ ァ ン ・デ ル ・ロ ーエ 193051 ベル リン 建 築展 の 家 ミ

ース ・フ ァ ン ・デ ル ・ローエ 193152 ム ード ン の ス タジ才 住宅 テ オ

・フ ァ ン

・ドウース ・ブル グ L931

533 つ の 中庭を持 つ 家、                一ミース ・フ ァ ン ・7 ル ・ロ ーエ 1934

54 ミドル トン パ ーク ラッ テェン ス 匸93455 バ ッ ク邸 ル ドル フ

・シ ン ドラ

ー 193456 週 末 の 家 ル ・コル ビュジ ェ 193557 ブ イジ ー二邸 レ フ イ ジ ー二&亅

・ポ リー二 193558 落 水荘 フラン ク

・ロイド・ライト 1936

59 ジエイコブス邸 フ ラン ク・ロ イド・ライト 193760 ア ン グ メリン グ の 住宅 マ ル セ ル ・プ ロ イヤ_ 且9376i 夏 の 家 エ リッ ク

・G・ア ス ブ ル ン ト 監93762 マラ バ ル テ 邸 ア ダル ベ ル ト

・リベ ラ h938

63 ウ ィ ンクラー

邸 フラン ク ・ロ イド・ライト 1939

64 スチ ューゲス邸 フ ラン ク・ロ イド・ライト L93965 マ イ レ ア 邸 ア ル バ ー・ア ノレトー L93966 ウオ

ール ハ ウス フ ラン ク

・卩イド・ライト 1941

.6 τ 砂漠 の 家 リチ ャー

ド・ノイトラ 1946

68 プロイヤー

邸 マ ル セ ル ・ブ 卩 イ ヤー

匸94769 卩ビ ンソン邸 マル セ ル

・プ ロイヤ

ー 1947

70 ル イス・パ ラガ ン 自 邸 ル イ ス ・パ ラガ ン 1947

71 モ ス パ ーグ邸 フラン ク・ロ イド

・ライト 1948

72 ガ ラス の 家 フ ィリッ プ・ジ ョ ン ソン 194973 ク ル チェン ト邸 ル

・コル ビュジ ェ 194974 フ ア

ンズワース邸 、 一ミース・フ ァ ン

・ア ル

・ローエ 1951

75 ス ミス邸 フラン ク・ロ イド・ライト 195k   I76 ロ クレ ン ト邸 フラン ク

・ロ イド・ライト 195k

77 ジ ヤ ウル 邸 ル・コル ビュジェ 上954  

’78 ル イカ レ邸 アル パ

ー・ア ル トー 1959

79 母 の 家 ロ パ ート・ベン チ ューリ 1962

3 ,「壁」 と 「開 口部亅 の 定義

 近 代初期 の 流れ に お い て壁 は,積 層構造 を主 として きた もの の ,ガ ラス と鉄 の 技術 の 導入 によ りラーメン 構 造や トラス 構 造を用い た

りす る こ とで,力学上 の 要 求か らはずれ て い くこ とに な る。そ うし

た 中で壁 は空間 を分節 す る もの ,空 間を流動 的に す る もの として,っ ま り建物 を構成 す るもの として で はな く,建物 によっ て つ くり出

され る そ の 間の 空間を構成す る もの と して 変化 を遂 げて きた。

 本研 究で は,近代 住宅作 品の 中で,主 に建築 内部空 間を構 成す る

一 188一

 

61α

.一・tx .一.

      1

壁口  壁

部・

鳬βz  α5

NXv.广 へ..一ノ

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隠 .    、〆 丶.

視深 度 の 測 定           平 面 の 視深 度 グ ラフ

     4r−

   ウ

 .へ.ノ

一壁 の 視 深度 グラフ

 

 

 

丶 

開 開

口 口

部 師

β1 β2、

1厂

1「厂

開 口 部 の 視深 度 グラフ

平面 の 視 深 度 平均

(=Σ d/2 π )

  i

   L」 Lj壁 の 寵 深 度 平均       開 口 部の 視 深 度 平均

(=Σ d α /Σ α )   (

=Σ d β/Σ β)

  ...i平

轡 鷦嬲差

MrN

Lj

1

壁 の 規深 度標 準偏 差                開 口 部 の 覘 深

(・Σ(dゴd』)シΣ α) (・Σ(ds−d

各 指 標 毎 の 平 面 記 述

  」

驪 野    MAX

11

図 1  壁 と開口 部の 指標

光の 透過 しな い もの を 「壁」 と して定義 す る.

 一

般 に,採 光 ・換気 ・通 行 ・透視 な どの 役 目を果たす こ とを 目的

とした建物 の 壁 ・屋根 ・床な どの 切 り取 られ た部分 を開 口部 と呼ぶ。

 住宅設計におい て採 光を とるこ とは昼間 の 自然光 を用 い て,見 るも

の をは っ き り見せ 不惚 謀や疲労感 を起 こ させ ない よ うな快適 な光環境

をつ く り出 して い る。また 逆に,茶室 の 意匠な どで は,開口 部を小 さ

くと るこ と に よ り内部空間を大き く見せ るとい う効果をも与え て い る。

本研 究で は,建 築の 外部 との 関わ りを構 成す る ガ ラス を用 い た も

の な ど,採光 を 目的 と した もの を 「開 口 部 」 と して 定義す る。

4 .測 定の方法

  こ れ までの 視 深度 におい ては 「壁」 と 「開 口部」 を同様 に視 線 を遮

るもの として 「平面」を基準 に視深度グラフ を扱っ て きた。本研究で

は,「壁 」と 「開 口 部」に よ る空間構成を分析 して い く上 で,まず 「平

面」の 視深度グ ラフ を,「壁」 の 視深度 グ ラフ と 「開 囗 部」 の 視深度

グ ラフ へ 分割 し,「平 面」 「壁」 「開 口 部」 の 視深 度 グ ラフ の それ ぞれ

視深 度平均 と視深度標 準偏差の 以上,6 つ を指標 とす る (図 1 )。

 視深度平均は建築 内部空 間の ある位 置か ら建築 平面を構成す る要

素ま で の 距離の 平均を表 し,例 え ば 「壁」 の 視深度 平均 はあ る位 置

に お け る壁ま で の 距離,つ ま り数値 が大きい ほ ど遠 くに壁が 構成 さ

N 工工一Eleotronio  Library  

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れ る こ とを表す。

 視深 度標準偏差は 建築内部空 間の ある位置か ら建 築平面 を構成す

る要素 ま で の 距離の ば らつ きを表 し,例 え ば 「壁」 の 視深 度標 準偏

差は あ る位 置に お け る壁 ま で の 距離 の ば らつ き,つ ま り数値 が 大 き

い ほ ど壁 が 距離的 に ば らつ い て 構成 され るこ とを表す。

 住宅平 面内で の ,各指標 毎の 変化 を考 察す るた めに,データを元

の 平面図上 に濃淡で一覧的に 記述 し 1っ の 建築内で の 6 つ の 平面記

述 を得 た。

5 .測 定 と平 面 記 述

 近 代住宅 作品 の 測定方 法 の 要点 を記 す。

(1.)集 め られ た 平面 図 を ス キ ャ ナ で 読み と り,画 像処 理 ソ フ ト上 で

 「壁 」 と 「開 口 部」 の 情報 を 与 え た視深 度測定用 図面 を作成 す る。

 本研究で は,建築作品 内を 人 間が移動するこ とを前提 とせ ず,建

 築を作 り上 げて い く中で の 空間構成を考察す るた め,トイ レやク

 ローゼ ッ トな どの 扉は すべ て 開放するもの とする。建築の 平 面図

 は 建築家の 考え が ダイ レ ク トに表 れて い るもの と考え られ る上,

 空間 の 連結の 構成は扉を開 けた ときに分か る もの で あ るの で,そ

 の 中で 生活する 人の 潜 在的な空間構成意識 と捉 える こ ともで きる。

(2 )作成 した測 定用平面 図に おい て,縦横 1 メートル の グ リジドに

割 り、そ の 中心毎に 視深度を測定する。

(3 )「開口部」に つ い て は 扉に ガラス の ス リッ トが ある場合などは

 そ の ス リ ッ トの 部分を 「開 口 部」 と して設定 する。それ は 資料中

 の 写真 を参考に した。

(4 )視深度の 測定をする の は 人間の視線の 高さを考慮 して,そ の 階

 の 床か ら 1500 皿 とす る た め,ハ イ サ イ ドライ ト,ロー

サ イ ド

 ラ イ ト等,】.500mm の 高 さに ない 「壁 」 と 「開 口 部 」は 今 回 の

 測定対象 か ら除い た。

 こ の様 な条件 の 下 で,パーソナル コ ン ピ ュータ を 用 い て近 代住宅

79 作晶 の 平面記述 を行 っ た。

6 .視深度平均 と視深 度標準偏差に よ る分類 (表 3 ,4 )

  1 つ 1 つ の 平面記述 を分 析す る と,「壁」 と 「開 口部」 の 平面記

述によ り,居間や食堂な どを機 能分 け して い る もの や,部屋 と部屋

の 連結部 に 特徴 の ある もの ,室 は基 本的な方形 を して い る もの の 開

口 部 の 影 響 に よ り多 くの 縞模様 が 表れ るもの な ど,「平 面」 の 中に

「壁 」 と 「開 口 部」の 情 報 を加 え るこ とで 多種 多様 な平面記述 が ある

こ とが 確 認 され た.

 本研究 では,住 宅平 面内 におけ る 「壁 」 と 「開 口部」 の 扱 い が ど

の よ うに変化 を して い るか を考察す る為に,1つ 1 っ の 平面記述を,

まず,定量的なデー

タに よ り 「平 面」 と 「壁 」,「平面」 と 「開 口部 」

の 平面記述の 相関 を算出す る。その 中で,相関 の 高い もの か ら相関

の 低い もの へ と平面記 述 を縦 覧的に比 較 す る こ とで 強弱の 目安 を設

定 し,実際の 平面 図 の 配 置や空 間 と照 ら し合 わせ なが らひ とつ ひ と

つ の 住宅 毎の特 徴を調 べ る。

 そ こ で,「平面 」 の 指標の 変化が どれ ほ ど 「壁 」 と 「開 口 部」 に

似て い る か を 客観的に判断する為に,平面毎 の視深度平均の 「平面

と 「壁」 の 相関係数 視深 度平均 の 「平面」 と 「開口 部」 の 相関係

数,視深度標準偏差 の 「平面 」 と 「壁 」 の 相関係数,視深 度標準偏

差 の 「平面」 と 「開 口部 」 の 相開係数を算出 し,平面毎の 空 間構成

表 2 各指標間 の 相関係数123456789LO

D.92809690 .93509830972O 、8900955o .9L309830963067507690 .67608470848O .7760914O .5710547D598D.9生30914 .0.844091509 阜zo .829D .昼54O .80709730966D.526D .4250 .5800 .6200768O .5110 .7350 .5L3054L051711121314151617181920

0971D .B6909BL09670957092309420 .909   09 日6Q98D0.396D .523D74108790956081009050 .836  0P94D655o.874D .s8 コ D9590990ogo90905o .8740 .754   096609430.666D5080 .3生 70 .625o .7910 .632O .6360 .346     0.47 且 D.513212232425262728     2930

o、73209750962098509 鴎 0.946o .醗 9097809620976O、693OSOOD .847087707340658o .893065906620473O.768Dgt8o .895090 工 09700951O .8620957093609 田

O、57 些 0.5710 .4730 .4600 、6800 .6160 .3窪 30 .弓 48O .476O 」 8931323334353637383940

O.907O .8730 .9030784oq68096409750976O .9360960 .0、8UO .8580 .62209640 .6380 .7250 .7600 .8970 .8040431O.唾25O .6400 .7940794O 、8730 .6了10 .8810 .895092009 δ9一〇.168O .493D .508DS180 .0410 .0410 .4620 .48907760 .23 匸

414243444546   147484950

093 ・1O .798O .901099009630934   10.4190768096 生 0.774OJ570 .673O .72907490 .71Z0926   0.50309340 .8380 .昼080.η O0 .813o .87509470 .7300 .87 哩 LO 、8D708440 .89808250.4910 .4980 .2270 .3m0 .135D .6L50 .53307840 .594075151525354555657585960

0.7540 .949083409 了 80 .861o .9L50 .92408940 .943D .9050.7960 .868091D06170 .712O .5670 .8D109310774D .5日10.7870 .7350 、85909 了30 .791O 、8660 .827Q .5530924D .8930.6540 .6210 .672O .6140 .510O .347D .558o .4760 .3600 .51061626364656667686970

09540993097209870 、85603   30 .8940 、8570790D953o.8390946094L084L0876Q9660 .845072609360 .551D.86209650 .87509309050715D861092 工 08MD882D.60407510 .655  0、5830 τ56Q .748O .520O .47006   20 .4247172 τ3  1  747576 η 78 τ9

097 ξ 0596093D  IO、5960902o .8840967Q9840980O.871OJ91076   0.81508120632D63 τ 0.了6ユ 0.呂ア1D.888D45 ° 0.843  0634 σ 田 109 工4D92208980 .8εO0、483096 ‘ 0.458  0  」土 0.5330 、143O .2a20 、6180 .538上 か ら作 品 番 号 、視深 度 平 均 の 平面 と壁 の 相関係 数.視 深 度 平 均 の 平面 と開 口

部 の 相 関 係 数 、視 深 度 標 準 偏 差 の 平 面 と壁 の 相 関 係 数 、視 深 度 標 準 偏 差 の 平 面

と開 口 部 の 相 関 係 数 を示 す。

が 「壁 」 に よ り多様な変化 をみせ るもの か ら 「開 口 部」 に よ り多様

な変化 をみ せ る もの へと,視深 度平均 と視深度標準偏差 にお い て,

それ ぞれ 5 段階に分類す る、,

 一覧的に 相 関係数を 求 め た後,「平面」 の平面記 述が 「壁 」 と 「囲

口部 」の 平 面 記 述 に 似 てい る か似 て い な い か を 比 較 した。本 稿 で研

究対 象 と した 近 代住宅 に お い て は 基本 的に 「平 面 」 の 平 面 記 述 は

「壁」 の 平面 記 述に 似る こ と か ら,「開 口 部」 の平 面記述が 「平面」

の平面 記述に いか に影 響 を与 え て きたか に重 点をおい て,明 らか に

「開 口部」 が 「平面」に影 響 を与 えてい る境界 を,相 関の 強弱の 目安

と して 設定 した。視深 度平均 におい て,「平画  と 「壁」 の 相関 は

O .950 を強弱 の 目安 とし,「平面」 と 「開 口部 」 の 相 関は 0 .9

00 を強弱 の 目安 とした。また,視深 度標 準偏 差 につ い て も同様 に

して,「平 面」 と 「壁」 の 相関 は O ♂ 900 を強弱の 目安 と し,「平

面」 と 「開 口部 」 の 相 関は 0 .750 を強弱 の 目安 と した (表 2 )。

 まず,「壁 」が 「平面」 の 平面記述 とが類似 して い るもの の ,「開 口

部」 に よ っ て 多様な変化 を示 す もの (「平面」= 「壁 」 ≠ 「開 口 部」)

をType A とType  a ,「開 口部」の 平面記述が 「平面」 の 平 面記述 と

類 似 して い るもの の ,「壁 」 に よっ て多様 な変化 を示 す もの (「平面」

=「開 口部」 ≠ 「壁 」)を Type  E とType  e として 両極く位 置付ける。

 次に,「平面」 の 平面記述 が 「壁」 と 「開 口部t の 両方に類 似 しな

い もの (「平面 」 ≠ 「壁 」 ≠ 「開 口 部」)を,「開 口 部」 を建築全 体の

中で と異 なる扱い を して い る も の と して Type  A とType  a に 次い で

Type B とType  b と に分類す る。ま た,「平面 」と 「壁」 と 「開 口 部」

の 平面記述がそれ ぞれ類似 す るもの (「平 面」= 「壁 」

= 「開 口 部」)

は,「開 口 部」 を建築全 体の中で 同様 な扱い を してい る もの として

Type E と Type  e とに次 い で Type D とType  d とに分類 する。

 ま た ,Type B と Type  b に属 する もの の うち,「平面」 の 平面記

述 に おい て,「壁 」の指標が大 き くな る につ れ て 「開口 部」の 指標が

一 189一

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         表 3

  平 記 述の 相 関関係

Type A平面 =壁 ≠ 開口 部(平面と壁 の 椙 関が 高く、平面 と開 口

部の 相 関が 低い もの 〕

開 口 部の 距離の 変化が 建築 空間 を

多様にして い るもの

視深 度 平 均に よ る分類tt4

Type B平面 ≠ 壁、平面 ≠ 開 口部(平面と壁 の 相関 が 低く、平面 と開 口

部の 相関も低い もの 〕

建築 平面 の 距離 が壁と開 口 部でそ

れ ぞれ距 離 により多様な変化をみ

せ るもの

Type  C平面=壁 十開 口 部(平面と壁、平面 と開 口 部の 棺関 は 低

い が、壁 と開 口 部の 和 と平 面 の 相関

が高 い もの 1

壁 が近づ くと開 囗 部が遠くな り、壁 が

遠くなる と開 口 部が近 くなるもの

Type D平 面 =壁=開 口部(平 面と堅の 椀関 が高く、平面 と開 ロ

部 の 相関も高 い もの )

壁 の 距離と開 口 部の 距離 の 変化 が

逮築 平 面 の 距離 の変 化と類 似 して

い るもの

Type  E

平面 =開 口 部 ≠ 壁

(平面 と開 口 部の 相 関が高く、平 面 と

壁 σ)相関が低 い もの)

壁の 距離の 変 化が建築 空間 を多様

にして い るもの

021019243089091835

34770136一

酉}

0639560

品番口

04050911    13      1420   22      2325   28      2935   36      3740 44      4554161      6471   75      777803   08      1226    27      3243   52      5567   76

16425668

07 15

、 ノ 記述 の 「

旨’

1

  警一..・/

賢1\ 欝

   、ノ 1

/様 弓躙   弧い .      .、

21 .3147  5057  5973  74

62  L

63

64144371668535842796

49  メ ル ニコフ 自邸

72 ガラ ス の 家

小 さくな る もの ,「壁」の指標 が 小 さ くなる にっ れ て 「開 口部 」の 指

標が 大き くな るとい うよ うに,「壁 」 と 「開 口部 」 の 指標 の 増減 が対

称的に扱われ るこ とで 空間が 分類 され て い る もの (「平面」= 「壁」

十 「開 口部 」)に つ い て,建 築を 「壁」 と 「開 口 部」 に よ りエ リア 分

け して い る もの と して Type C と Type  c に再 分類す る.

7 .「壁」 と 「開口部亅 に よ る近代住宅作贔 の 平面図 の 分布

 作品 の 分布 と平面 図を 比 較考察すると,「壁」を平面計画 の 上 で 等

間隔に 規則的 に 立て る住宅 がType A とType  a を中心 に して 集ま っ

て い る もの の,「壁」を不 規則に立 て る こ とで 住宅平面 の変化を多様

に して い る住 宅が Type  E や Type  e へ と分布 を して い る こ とが伺

え る、また,近代 建築 に お い て影 響を与 えた と され る住宅 作 品は ,「壁 」の 扱い に よ り住宅平 面 を 変化の ある もの に して い る Type E か

ら Type  e へ偏る傾向 が み られ る。

8 .建 築家毎の考察

  エ ドウ ィ ン・ラッ チ ェ ン ス

 ラッ チ ェ ン ス の 空間構 成 (図2 )で は,ほ とん どの 住宅で Type A

と Type  a に属 して い る.これ は 住 宅が 「壁 」 に 囲 まれ た 中で ,如

何 に 「開 口部 」 をあける か を 基本 的な 空 間構成の 手法 と して,機能

的な場 に対 応 させ た差 異付 けを して きた こ とを 表 して い る。

 Na 10  モ ン ク トン 邸 (図 3 )で は,中心 に 居間 を配 し,そ の 周

囲に副 次的な室 を配す る とい う古典的 な手 法を とり,「開口 部」の開

一 190一

表 4  視深 度標準偏差 に よ る分 類ltc

ML 面記述 の 目関 羯係Type   a

平 面=壁 ≠ 開 口部(平面 と壁 の 相関 が高 く、平面 と開 口

部の相 開 が低 い もの )

開 口 部 の ばらつ きの 変化が建築空間 を多様にしてい るもの      1

  作 品   号       04          09   0201   1310         16      14    2219   20          24   2625          29      28   4030          54       44          7559   64      6876   77

Type b平 面 ≠ 壁、平 面 ≠ 開 口部(平面 と壁 の 相関 が低 く、平面と開 口

部 の相関も低 い もの)

建築平 面の ばらつ きが壁 と開 口 部で そ れ ぞ れ多様に 変化をみ せ るも

0327364661

Type  c

平 面≡壁 十 開 口 部(平面 と壁 、平面と開 ロ 部 の 棺関 は 低

い が、壁 と開 口 部の 和と平面 の相 関

が高 いもの〕

壁 が ばら つ くと開口 部が 単調、壁 が

単調にな ると開口 部がば らつ くもの

1131374770

06  07玉8 祕43 4552    5558    6371    78

Type d平面 =壁 =開 口部(平面と壁 の櫓 関が高 く、平 面と開 口

部 の相関 も高い もの)

壁の ばらつ きと開口部の ばらつ きの

変化 が建 蘂平 面の ぱ らつ きの 変化

と類 似して い るもの

0565

Type  e

平面 =開 口 部 ≠ 壁

(平面と開口 部の 相関 が 高く、平 面と

襞の 相関 が低 いもの )

壁 の ばらつ きの 変化 が建 築空 間を

多様 にして い るもの

3472

15

4874

123338532335416073179

08{32頚一ρ0ρ056

39

平 記 述 の 1

50

57  70 ル イ ス .バ ラ ガン 堅671

62

69

65  マ イ レ ア 邸

視深

標準

偏差

け方に関 して も未 だ古

図 2   ラ ッ チ ェ ン ス の 空間 構成の 推移

      平面                壁

典的に規則 正 しく小 さ

な穴を 開 け る とい っ た

構成 を と っ て い る。そ

の ため,必然 的 に 「平

面」の 構成変化 は 「壁 」

の 構 成 変 化 に 近 く な

る。室 と室 をっ な ぐ空

間 は ほ とん ど存 在 せ

        開 口部

           図 3  モ ン ク トン 邸

ず,周 囲に配 され た寔の 「開 口 部 」 だけが こ の 住宅 の 「開 口部」 と

なる。「壁」 の 指標 が 住宅 全体に広が っ て お り,内部空 間は 「壁 」 が

支配 して い る e

 Na 54   ミ ドル トン パ ーク (図 4 )に お い て も同様 に こ の 傾 向は

み られ,寔は 多くな っ て い き,内壁 の 数 も多くな っ てい るにも関わ

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らず,ラ ッ チ ェ ン ス の一

連の 作品 と同様な分類 が され る。「壁 」は構

造上 の 要求に応 え,「開 口 部」 に よ っ て 変化 を与えて い る.

          平面           壁            開口 部

罍              図 4   ミ ドル トン パーク

  ラ ッ チ ェ ン ス の 空 間構 成 で は,ほ とん ど の住宅 で Type A と Type

a に 属 してお り,平面全体 が 壁 に囲 まれ た 中で,如何 に 開 口 部 をあ

けるか を基本的な空間構成の 手法 と して,機 能的な場 に対応 させ た

差異付 けを してきた こ とを表 してい る。

  ミー

ス・フ ァ ン

・’ア ル

・ロ ーエ

                    ミー

ス の 空 間構 成

                   (図 5 ) で は,初期 は

                              Type A とType  a }こ属

                              す るが,その 後,主に

                              Type C を中心 に 幅広 い

                              分類 をみせ る。

                    No,30  煉瓦 造田園

                   住宅 (図 6 )は type

   図 5  ミ ース の 空間構成の 推移  .A ,  type  a に 属す る。「壁」の構成は グ リ.ッ ドか らは ず され るこ と で多様 な変化 をみせ て は

い る もの の、本研究 で は 「開 口 部」 の 平面記述 は 「平面」 と 「壁 」

の 平面記述 に似 通 っ て お り,まだ , 古典的 な設 計を行 っ て い た名残

が残 っ て い る 。

         平面            壁           開 口部

 巴

74あ←つΦ軋熟』茎 519卜

慧 47 53

9←

3040

四 TypeBType  CType  DType  E

深度

平均

平面 壁 開 口部

図 7  バ ル セ ロ ナ パ ビリオ『ン

                図 6  煉瓦 造田園 住 宅

 No,47  バ ル セ ロ ナパ ビ リオ ン (図 7 )にお い て は type  C で type

b に属 し,視深 度平均に おい て は 「平面」 が 「壁」 と 「開 口 部」 に

よ っ て 機能分 け され て は い る もの の ,視 深度 標準偏差 にお い て は,「壁」 が まだ平面全体 の 構 成の 基本 とな っ て い る こ とが分か る。「新

しい 建築の 形態 は非 キ ューブで ある。機能 的な空 聞単位は仕切壁 を

消去 しなが ら中心か ら外側へ向けて 開き,空間に 連続性をもた らす。

壁 は単純な面 と して 空閼 を仕切 る道具 に す ぎず,この壁 に は もはや

構造 的支持機能 はな い 。」 ミー

ス は 1920 年代 に温 め続け て きた

造形原 理 をこ の 様なかた ちで 具現化 し始 め て い た。

 Na 50  チ ューゲ ン ハ ッ ト邸 (図 8 )にお い て は, type  C の type

e に 属 して い る。こ の 作 品 と後述の フ ァ ン ズ ワース 邸 は 唯

一こ の分

類 に配 され る もの で あ り,ミー

ス の 特徴 と も捉 え られ る。バ ル セ ロ

ナ パ ビ リオ ン で 見 られ た よ うな流動性 で はな く,開放 的 な空 間に

な っ て い る。曲壁 はその エ ッ ジ に よ っ て 曲壁 内部 と曲壁外部 を隔て

る平 面記述 上 の エ リア 分 け を見せ る。広 々 と した 主 室の 中に一

枚の

薄い 壁 が挿入 され るこ とで,「開 口部 」の 視深度平 均 と視深度標 準偏

差は どち らも 2 っ の 空 間 に分け るこ とに 成 功 して い る。そ し て,「壁 」 によ っ て 変化 を与 え られた 空間 と 「開 口部 」によっ て 変化 の 与

え られ た 空 間が つ く り出 され て い る の で あ る、

        平面              壁            開 ロ部

             図 8   チ ューゲ ン ハ ッ ト邸

  1920 年代の 規則的 な壁 の 配 置を基本 と して 開 口 部 による変化

を模索 して い た 時代 か ら次第に,壁 と開 ロ 部を如何 に ば らっ か せ る

かを 中心に 考 えて い く傾 向をみ せ る。都市 の 中の 与 え られ た敷地内

で開口部の 立て 方 をそれ まで の壁 の 立て 方 と同様に扱う姿勢は,Na

74   フ ァ ン ズ ワー・

ス 邸 (図 9 )に お い て 単純なガ ラス の 中に最小

限の 壁を 立て て 開放的な空 間を 幾つ もの 場面に 限定 して い くとい う

頂点 に 達 して い る。

          平面             壁             開 口 部

一 .蓋 1償≒ 判.

1.

     [「

.L_『 慰『 螽1

図 9   ファ ンズ ワー

ス 邸

  ル・コ ル ビュ ジ ェ

  コ ル ビ ュジェの 空間構成 (図 10 )で は,視深度平均は多様に分

類 され る が,視深 度標準偏差は type  b を 1:1:1心 に 推移 して い る。

 No.48  サ ヴォ ア 邸 (図11 )で は type E ,  type  e に属 し コ

ル ビ ュ ジ ェ の 作品の 中で も特 に壁の 扱い が考慮 され て い る と考えら

れ る が ,居 住空間が 家庭 内の 機能 の ま とめ 方 に従 っ て,便 利 に 配 分

され て い る。連続 した 窓 が続 く 中,一つ一

っ の 室 を壁 と開 口 部の 扱

一 191 一

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                    い に よ り機能 分けを見

                         せ て い る と こ ろ か ら

                    も,コ ル ビ ュ ジ ェ の 連

                         続 窓割 りとい う考 え の

                    中に は,内壁 の 扱い を

                    多様化する こ とも大切

                    なの だ とい う意気込み

                    が感 じ られ る。さ らに,図 10  コ ル ビ ュ ジ ェ の 空 間 構成の 推移  コ ル ビュ ジェ の 特徴 的

な建 築要素 で あ るス ロー

プ は,そ の 脇 に 添 え られ た 光 窓 の 影 響 に

よ っ て そ の ス ロープ をあが っ て い く途 中,「開 口 部」の指標 は 大き く

な っ た り小 さくな っ た りと幾 分の 変化 を み せ る。

          平面             壁           開口 部

彫1 48

とあ←

O

婁←

 u

晝あ←

434256

353627333173 41

“・o

受卜

η    26Type

 A    Type          Type D   Type E

偏差

・イ「糞

一    L

           図 11   サ ヴォ ア 邸

 Nα 77   ジャ ウル 邸 (図 12 >では type   A ,  type  a に 属 し コ ル

ビ ュ ジ ェ の作品の 中で も後期に あたる が,「壁」の扱い はあ くまで外

界 と内界を隔て る もの で あ り,「開 口 部」に よ っ て 室に変化 を与えて

い る。主室 に お い て は 「開口 部」の 変化が感 じられ る とこ ろが部分

部分に濃 くなっ て お り,「壁 」に よ る変化がない こ とと対 比 を して い

る。こ れ まで の 作 品の 中で は,壁 の 扱い を 模索す る か の よ うに 開 口

部が 基本 となっ て 計画 されて い た の で あ る が,この 作品 に お い ては

壁が全体計画の 基本 とな っ て い る。 風土に根 ざした建築を唱 え る よ

うに なっ て い っ た コ ル ビ ュ ジ ェ の 考 えが現れてい るの か も しれ ない。          平 面              壁             開 囗 部

       一

,广

      一

ト                              1

             図 12  ジヤ ウル 邸

 Na 42   ガル シ ュ の 家 (図 13 )で は type C ,  type  c に属す

る。「壁 」 の 指標 が 大き くなるにつ れ て 「開口 部1 の指標が小 さ くな

り,「壁 」 の 指標 が小 さくな るにつ れ て 「開 口部1 の指標 が 大 き くな

る と い う変化 をみ せ ,「平 面 」 が 「壁」 と 「開 口部」 によ っ て機能

分けされ て い る。この 家は 黄金律 に 従 っ てつ く り出され て お り,特

殊な 目的や 使用 され た技術的 手段 とは明 らか に無関係 で あ る。その

少 し前 時代の 建築家の 関心 がデ ィ テール や テ クス チ ャ,使 用材料 に

集 中 して い た の に対 し,こ こ で は今やディ テー

ル が 問題 に な らず,

注意 が全体 に し っ か り向け られてい るよ うな建物が 出現 した の で あ

る。部分か ら全 体 へ ,こ の コ ル ビ ュ ジ ェ の 作 品の 方向性を与えた ガ

ル シ ュ の 家は 近代建 築の 方 向性 へ とな っ て い っ た。

平 面 壁

図 13   ガ ル シ ュ の 家

開 口部

 他 の 作 品に つ い て,主に type  b を中心に ま とま っ た傾向を見せ

て い る。視深度標準偏差が 「平面」 と 「壁 」 と 「開 口 部」 が それ ぞ

れ違 っ た 濃淡 を み せ る。単に 建築 を構 成す る要 素ま で の 距離に変化

を与 えて い た の で は な く,そ の 中に は 何 らか の 比例 関係 が あ るよ う

に も思 われ,コ ル ビ ュ ジェ のモ デ ュ ロール の 考 えとい うもの が 表 れ

て い るの か も しれ ない 。

 ”建 築の 歴史 は窓の 歴史 であ る

”とい う彼 の 晩年の 言葉は,伝統

的な穴をあ けられ た壁 か ら近代 的な水平連続 窓への 移行を,開口 部

の ばらつ き を中心 に 模索 して い たの で ある。

フ ラン ク・P イ ド・ラ イ ト

含Σ

2り

曇b

ξ  Type A  Type B  Type C  Type D   Type  E  図 14   ラ イ トの 空 間構 成の 推移

15 )は type  E ,

05 15

7118OG2107631758

2303

026404

τ5M01u761659

  ライ トの 空 間 構 成

(図 14 )で は,視深 度

平均 と視深度標 準偏差

が 共 に 幅広 く分布 を し

て い る上,同時期 に全

く違 っ た 「壁」 と 「開

口部」 の 扱 い を してい

る。

 Na 58   落水荘 (図

          type   c に属 して い る。視深度平均 と視深 度標

準 偏差 はす べ て 主室全体に ま とま りの ある変化 をみ せ て い る が,測

定データ を詳細 に観察す る と, 各構成 要素 の 角度に よ り居 間側 と食

堂側がエ リア分け され て い る こ とが わかる。空 間内の ある点か らの

構成比 を元 に機 能分けを しよ うと して い た の で あ る、確 か に,落水

荘は 空 間要 素ま で の 距離 に 関係 な く,パース ペ ク テ ィ ブな写真にお

い て そ の 空 間要素の 構成 の 変化 をみ せ る。          平 面              壁            開 口 部

1

囘   【

  ■. ’

落水荘               図 15

 Na71   モ ス バ ーグ邸 (図 16 )は type A で type  c に 属す る。

注 目すべ きは 「開 口 部」の 視深度平 均が 連結部 を 中心 と して 変化 を与

え,「開口部」 の視深度標 準偏 差が 「壁」 の 視深 度標準偏差 と対 比 的

に使い 分けられ て い るとい う事で あ る。L 字型 の 平面 を採用するこ と

で,こ の 平面の 主室は 3面 に開 口部 を開け るこ とを可能 に した。落水

一 192一

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荘に お けるパ ース ペ ク テ ィ ブな構成を見せ る の で は なく,構成要素ま

で の 距離とい う3次元で の 建築をみ せ てい る もの で ある。構成要素ま

で の 距離に よ っ て エ リア 分 けす る建築 と,構成要素 の 角度 に よ っ て エ

リア 分けする建 築とい う 2通 りの 建築 を見い だ して い た の で あろ う。

          平面                壁                開 口 部

                図 16   モ ス バーグ邸

 No. 75  ス ミス 邸 (図 17 )は type A で type  a に 属 し,ラッ

チェン ス の ほ とん どの 空 間構成 と同 じ分類 に含まれ る。しか し建築

平面を 比 較する と,ラ ッ チ ェ ンス が 中心 に大きな空間を持たせ て そ

の 周 りに補助的な室 が配 され て そ の 室 の 外側 に開 口部が 開け られ て

い た の に対 し,ライ トの こ の 平面 にお い て は全 く違 っ た構成 をみせ

る。それ は L 字型平 面を採用 し,片側 に 開 口部 を設け る手法 で ある。

こ れ に よ っ て,ス ミス 邸 は,建 築全体 の構成 は壁 が動線 を複雑 に す

る か の うように グ リ ッ ドに よ らない 構成をみせ て い る もの の 静的に

捉える とそ れ は 近代建 築の 初頭の 内部空間 を呈 し,近代技術の発展

に よ る鉄骨や コ ン ク リー

ト,ガ ラス の 楽観 的な使用 に対 し,アン チ

テーゼ と して の 空間を見せ て い た の か も しれ ない 。

          平 面                壁               開 口 部

硯深

室は一

列 に配 されて は い るもの の その 中心 となる主室 は特定の 壁に

よ っ て 囲まれ る こ とをせ ず,わずか な曲壁を用い るなど,有機的な

建 築 と機 能的な建 築 の 狭 間の 感 じを受 ける。しか し平 面記 述 を見 る

と他 の 平面記述 に な い 正 に台風 の 目の よ うな,方 向性 もな く,また

濃淡 の 境 もは っ き りしな い 平 面記述 を見せ る。No.78   ル イカ レ邸

        平面                壁                開 口部

                 図 17   ス ミス 邸

 ひ とつ の 開 口 部に つ い て も優雅 な 幾何学模様 の ス テ ン ドグラ ス を

用 い る な ど彼 の 風 土に根 ざ した有機 的建築 に対 す る野心 が ,壁 と開

口 部 に よる 多様 な空間構 成 をみ せ る 事に な っ た の で あ ろ う。

 その 他 の 建築家

 ア ル バ ーアー

ル トは フ ィ ン ラ ン ドの建 築家で あ り,建築家の 中の

詩人1と呼 ばれ て い る。No,65   マ イ レ ア邸 (図 18 )は 近代建 築ラ

ン キ ン グに お い て も一ヒ位に ラ ン ク され る 住宅作品で あ る。副 次的な

祖深

偏差

平面 壁

偏差

                図 19   ル イ カ レ邸

(図 19 ) にお い て も同様 で ある。副次的 な室 が建築 の 周 囲 に配 さ

れ,主室が L 字型に構成 されて はい る もの の ,その 平面記述 は 「開

口部」 と 「壁」 に よ っ て渦 を巻い て い るか の よ うに 姿を見せ る。「開

口部」 の 影響 は 副次 的な室 へ 向か う廊下ま で に進 入 し,次第 に 濃淡

を薄 く して い く。平面 記 述の 濃 淡の突然の 変化 が ない こ とと,そ の

濃淡が 90 度の 壁 を幾っ か 並 べ たは ずなの に緩や か なカーブ を描く

こ とで,この 住宅 の建築 は単 に流動 的 とい うだけでな く,よ り成長

した空 間 とな り,あ らゆ る方向に息づ い てい る。

  ア ドル フ ロース は 20 世紀 の は じめにアール ヌ

ーボーの 装飾的な

傾 向 に 反抗 した最 初の 建 築家で あ り,装飾 は罪 悪 で あ る とい うス

ロー

ガ ン を投 げか けた。M24   ス タイ ナー

邸 (図 20 ) は 「壁」

        平 面                 壁               開 口部

視深

平均

開口 部

                  図 20   ス タ イナー

と 「開 口部 」 の 両方 の 構成 が 「平面」 の 構成 に似 通 っ て い る 。 空間

を 引き算 し て い くか の よ うに 建 築 を捉 え て い た ロ ース は No.46

ミューラ

ー邸 (図 21 )にお い て,開 口部 を大 き くとる こ とで 平面

全体 に 濃淡が 逆 にな るか の よ うな平面記述 を見せ るこ と とな る。ラ

ウム を基本 に考えて い た こ の 時期 の ロー

ス は平 面の み を対象 とす る

こ と で も変化 が 見 られ るが,それはあ くまで 控えめな もの で ある、

平 面 壁

図 21   ミ ュー

ラー

開 口 部

図 18   マ イ レ ア 邸

一 193 一

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9 .ま とめ

 視深度 に よる建築平面記述評価 の 可能性 を探 るた め,近代 建築を

代表する住宅作品 を中心 に,壁 と開口部を分類 して視深度を測定 し,

そ の 平面記 述 を試 み,近代にお け る空間構成に っ い て 考察を行 っ た。

本稿で は 「壁」 に相対する もの と して 「開口 部」 を定義付けする こ

とで,建築の 空間構成は そ の構成要素の 関係に よ っ て も多様な変化

が確認 され た。両者 は,壁 とい う分節性 の 強い 量 塊的 な要素 との 取

り合 わせ に よ っ て 対立 的に 用い られ た り,開 口部 を壁 と同様 に 扱 う

こ とに よ り相乗効果を与 え空間を流動的に した り して,相互 に 発展

して きた。「壁」 と 「開 口部 」 の 変遷 を 5 つ の 時期 に分類 して 整理

す る。

  ユ 925 年 以前

  1925 一ユ 929 年

  ユ 929 − 1935 年

  1935 − 1951 年

  1951 年 以 降

壁 を基本 とす る空間構成

開 口部 が優勢化 した空間構成

開 口部 を基 本 とす る 空間構成

壁 を不 規則 に配 す る 空間 構成

壁 を基本 とす る空 間構 成 の 復活

  1925 年以 前 は モ ン ク トン邸,煉瓦 造 田園 住宅に み られ る よ う

に,開「コ部は まだ外壁に 等間隔に あけられ た穴 と して しか存在 しな

い 。住宅 の平面 全体に同 じよ うな平面記 述が広が っ てい る。壁 はあ

くまで 建築の箱を成 してい た。

  1920 年代後半 に コ ル ビ ュ ジ ェ は 初め て ガル シ ュ の 家で壁 と開

口.部 に よる機能分 けをみ せ る。この 作 品以 降,開 口部 に よる様 々 な

空間構成 が 現れ る こ とか らも,こ の 作 品は そ の 後の 近 代建 築 の 方向

性 となっ た と考 え られ る。

  1929 − 1935 年はサ ヴォ ア 邸,バ ル セ ロ ナパ ビ リオ ン な

ど,外壁 に 開 口 部 を大胆 に設 けて お り,外壁 に囲 まれ た箱 形 の 住 宅

は もはや 存在 しない 。一方,内部 空間の 機能 分けは 内壁 その もの が

まか なっ て お り,壁 は もの としての 意味を強 く有 してい る。

  1935 − 1951 年 はマ イ レ ア邸,フ ァ ン ズ ワース 邸 の よ う

に,内部空間 にお い て壁 を不規 則に 並べ て い る。開 口部 は周 囲 に分

散 して 用 い られ て い る が,1935 年以前 の と大 き く違 うの は,内

壁 の扱い に よ り平面記述 に 縞模様が い くつ も現れ てい るこ とで ある。

こ れま で 住宅 の 機能 を壁 で分 けて い た とこ ろを,こ こ では壁 に よ っ

て 作 り出 され る空間の 特 腔の 違 い によ り空 間で エ リア 分 け して い る

の であ る。物質か ら非物 質へ あた か も量塊的 な壁 が透明 なガ ラス

に 変わ っ て い くか の よ うに空間構成 も流動化 してい っ た の で ある。

  1951 年 以降,ス ミス 邸,ジ ャ ウル 邸 な ど,壁 と開 口部 の 構成

は 近代建築初期の 内部空間を呈す るが ,住 宅の 機能 毎に平面 記述の

変化 をみせ て い る。近代技 術の 発展 に よる鉄 とガラス の 空間構 成が

世 界 中に 広 が る一

方 で,逆 に近 代建 築 を リード して きた コ ル ビ ュ

ジ ェ や ライ トは こ こ で ア ン チテーゼ と して の 空間 をみ せ る。 風 上性

や生 活の ス タ イ ル に根 ざした 壁 と開 口 部 の 使 い 方が 模索 され たの で

ある。

 こ の よ うに , 壁 と開 口 部が重 なっ て い た近 代初期の段 階の 建築 と

は 異な り,空間を架構する柱・壁 欄 口部など の 要素を分離 して,そ

の 関係 を操 作す るこ とが で きるよ うにな っ た こ とに よ っ て,近代建

築は それ ま で の 建 築の 歴史 に はみ られなか っ たよ うな新た な空 間構

成を 創 り上 げ て きた の で あ る。

 今後 は,日本の 伝統 的な 建築 の 空間構成 を対象 と して ,古.代か ら

人 間が どの よ うに生活空 間を創 り上 げて き たの か を,時代 に よ っ て

一 194一

変化す る空 間構成 を捉 えなが ら論考 して い く。さらに 近代建 築 と 日

本建築の 空 間構 成を統合 的に 考察す る こ とによ り,空間構成 の 方法

論の 歴 史的 な文化的評価 を行 っ て い きたい。

1)近代建築評論文1・2・3

の 中でその 作品中に要 した 文字行数とその 全 体との 比 をと っ た

 行数得点と ,評論 内容を空 間 ・意匠 ,社会・歴史的背 景、説明 引 用 、写 真のみ の 弓種

類 に分け,それぞれ一

回登場につ き3,2,LO .5ポイ ン トを与え ,その 作品毎の 得 点

 合計と全体との 比 をと り内容得点と し,建築ラン キ ン グを作成 した。上位に ラ ン キ

 ン グされた作品は コ ル ビュジ =やライ トなどに 偏 るの で 、こ れ らに つ い て は壁 と

 開 口 部 の構 成 が似て い る もの は省 略 し,特 定の 平 面 パ ターン に偏 らな い よ うに配

慮 したb さらに 上位作品でも分析に有効な平面図 を収集で きない もの は省略 し、ラ ン キン グ外 で も他 の書籍 ,雑 誌な どで重要 と位 置付け られ て い る作 品 を加え ,対象作品 を抽出 した 。

2)本稿で はパ ブ リ ッ クな居間・応接間・食堂などを含む階の 平面を測定の対象 とした。3)建 築の 壁 や 柱や 開 口部 な どの 骨格 とな る部 分が黒 10幅 で あ るた め,住宅毎の 各 指

標の 最大値 を.R  80m,最小値を黒 20%として平面記述を行い 区別 してい る。4)平面記述 の 例 は ,上 か ら平面,壁,開 口 部の 平面記 述をそれ ぞ れ 示す。

参考文 献

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・澤村明

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2)ケネス ・フ ラン プ トン 著、中村敏夫訳 二

 『近代建築への 道程』 建築 と都市 a+ u, SsO1−88073)ヴィ ッ トリオ

・M・ラ ム プ ニ ャー

二 著,川 向正 人訳 :

 『近 代建築の 潮流』 鹿 島出版会,1985 年

4>ジーク フ リー

ト・ギーデ ィオ ン 著,太田實訳 ;

 『空間  時間  建築  1・2』 丸善,1969 年

5)ロ バー

ト・ヴr.ン チューリ著 ,伊藤公 文 訳 :

 『建築の 多様性 と対立性』 鹿島出版会、1982 年

6)日本建築羚 編集 :

 『近代建築史図 集 新訂版』 彰国社 ,1976年7)鈴木博之

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 『建築 20世紀 PARTI・2』 新建築祉,1991年8)富 永譲編 著 ;

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9)日本建 築学会 編集 :

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10)浜口 隆一一・

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 『現代建築事典』 鹿島出版会,1972年ll)原口 秀昭著 :

 『20世紀の 住宅 空間構成の 比較分析』 鹿島出版会,1994 年

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 ,pp.125−129,1996 年 5月

15)山田哲也,大野隆造 :空間寸法お よび構成要素の 定量的分析 に よる移動空聞の 分

節化 〜旧 山邑邸に お ける ケース ス タ デ ィ

ー〜,1995 年度大会 陳 海) 学術講 演

 梗鹸   E−1,pp. ll45−114616)上 松祐 二 ,建 築空 間論 の 系譜 とそ の 成果に つ い て の 研究 (1)

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17>上松 祐二 ,:建築空間論 の 系譜 とその 成果に つ い ての 研究   一建築空間論の 系

譜;第一期(1860〜1900)一、日本建築学会計画系論文報 告集 ,第 295号,pp.125−

 132,1980年 9 月

18)上 松祐二 ,:建築空間論の 系譜 とその 成果につ い て の 研究 (3)一建築空間論の 系

譜 ;第 ::期 (1900〜1940)一,日本建築学会計画 系論文報告集,第299号,pp.155一且65,1981 年 1月

19>上松祐二 ,:建築空間論の 系譜 とその 成果 に つ い ての 研究    一建築空 間 論 の系

譜;第三 期 〔1940〜1980)一,日本建築学会計画系論 文報告集 ,第 302 号、pp.153−

 162,1981 年 4 月

〔1998年 9 月 7 日原稿 受理 .1999年 2 月 26 凵採用 決定}

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