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「子どものリーダーシップを育てたい!」 「子どものリーダーシップの『5つの力』」って何? 「どうやったら測定できるの?」 「データ処理は難しくないの?」 「リーダーシップを育てる方法は?」 そんなあなたの力になります‼ 国立妙高青少年自然の家 独立行政法人国立青少年教育振興機構 リーダーシップ測定尺度 少年期(高学年)の 活用術

少年期(高学年)の リーダーシップ測定尺度myoko.niye.go.jp/result/H23/leadership.pdf · 定尺度集Ⅱ』堀洋道監修 吉田富二雄編 サイエンス社より)

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Page 1: 少年期(高学年)の リーダーシップ測定尺度myoko.niye.go.jp/result/H23/leadership.pdf · 定尺度集Ⅱ』堀洋道監修 吉田富二雄編 サイエンス社より)

★「子どものリーダーシップを育てたい!」★「子どものリーダーシップの『5つの力』」って何?★「どうやったら測定できるの?」★「データ処理は難しくないの?」★「リーダーシップを育てる方法は?」       そんなあなたの力になります‼

国立妙高青少年自然の家独立行政法人国立青少年教育振興機構

リーダーシップ測定尺度少年期(高学年)の

活用術

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目 次1 これがリーダーシップ5つの力です。 ……………2

2 なぜ、今、子どものリーダーシップが重要なの? …2

3 リーダーシップ測定尺度とは ………………………3

4 これがリーダーシップアンケート用紙です。 ……4

5 データ処理をしましょう。 …………………………5

1困難に自ら立ち向かおうとする力 5集団内の人間関係を円滑にしようとする力

2計画的に考え行動する力 4役割を意識し、集団の規範を守る力3情報を収集し、創造力を

もって課題を解決しようとする力

リーダーシップの育成

 小学校や青少年教育団体等の活動において、教師や指導者は、子どもがそれぞれの力を十分に発揮して、生き生きと活動してくれることを願っています。とりわけ小学校の高学年では、様々な場面でリーダーシップを発揮し活動することを期待されています。 小学校学習指導要領解説(特別活動編)文部科学省(平成20年8月)第2章特別活動の目標、第2節特別活動の基本的な性格と教育的意義、1人間形成と特別活動(3)ウ高学年では、「高学年の学校生活における発達的な特質を踏まえ、高学年としての役割や責任を果たしたり、最高学年としてリーダーシップを発揮したりする活動を多様に設定するとともに、多様な他者を認めることの大切さを実感できるようにしたり、友達の大切さを経験を通して理解できるようにしたりすることが大切である。」と記されています。 しかし、これまで、小学校高学年におけるリーダーシップ能力を客観的に捉える手法は明らかにされていませんでした。 これを受け、国立妙高青少年自然の家では、青少年の学童期(小学校高学年)に求められるリーダーシップの資質・能力を明らかにし、リーダーシップ能力を測定する尺度を開発し、一般化する研究を行いました。

1 これがリーダーシップ5つの力です。

■2 なぜ、今、子どものリーダーシップが重要なの?

 国立妙高青少年自然の家では、上越教育大学准教授大前敦巳氏の協力の下、青少年のリーダー性を特定する要素(資質・能力)としてリーダーシップ5つの力を絞り込みました。

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上位指標は、「課題達成(Performance)機能」と「集団維持(Maintenance)機能」に分けられます。

中位指標は、「リーダーシップ5つの力」を表しています。

調査項目は、「リーダーシップアンケート用紙の調査項目」を表しています。

下位指標は、「付けたい力をさらに細分化した指標」となります。

 測定尺度を開発する上で、もとになる考え方は、リーダーシップ行動論の「PM理論」です。 「PM理論」とは、三隅(1978)が、リーダーシップの機能は「課題達成(Performance)機能」と「集団維持(Maintenance)機能」に分けられると提唱したものです。課題達成機能とは、集団全体で何らかの目標を定めて、その目標に向かって成員を動機づけ、目標を達成させる機能であり、集団維持機能とは、集団のメンバー同士のコミュニケーションを円滑にさせ、人間関係を良好にし、結束させる機能です。三隅は、P機能とM機能の組合せによって、リーダーシップ・スタイルを「PM型」(課題達成的であり、かつ集団維持的でもある)、「Pm型」(課題達成的ではあるが、集団維持的ではない)、「pM型」(課題達成的ではないが、集団維持的である)、「pm型」(課題達成的ではなく、集団維持機能でもない)に分けました。様々な企業組織における研究で、PM型のリーダーシップ・スタイルがもっとも効果的であることが、一貫して示されました。(『心理測定尺度集Ⅱ』堀洋道監修 吉田富二雄編 サイエンス社より) 学童期におけるリーダーシップ測定尺度の指標を作成するため、平成21年3月に新潟県上越地区の小学校教諭から「子ども達のリーダーシップ行動についてのイメージ」をキーワードで回答してもらい、そのキーワードをKJ法にて分類しました。平成23年度までのアンケートについて項目の重回帰分析・分散分析等の見直しと改善により上位指標(2項目)・中位指標(5項目)・下位指標(10項目)に確定しました。

3 リーダーシップ5つの力を測定するための         リーダーシップ測定尺度とは・・・

少年期(高学年)のリーダーシップ測定尺度 項目上位指標 中位指標 下位指標 調査項目

少年期(高学年)のリーダーシップ測定尺度

課題達成機能

困難に自ら立ち向かおうとする力

1 意欲・自立性(1) 人が嫌がることでも自分から進んで取り組むことができる。(2) すすんでお手伝いや勉強をすることができる。

2 危機意識(3) 危ないことを予測して避けることができる。(4) その場の状況にあわせて考えることができる。

計画的に考え行動する力

3 計画・判断(5) 決めた時間にあわせて行動することができる。(6) 先のことを考えて行動することができる。

4 省察・アクション(7) 内容を考えて話すことができる。(8) 反省したことを次の行動や活動に生かしている。

情報を収集し、創造力をもって課題を解決しようとする力

5 情報収集(9) 物事をいろいろな方向から見ることができる。(10) わからないことは自分で調べることができる。

6 想像力(11) うまくいくようにいろいろな工夫をすることができる。(12) 興味のあることにチャレンジしてみたい。

集団維持機能

役割を意識し、集団の規範を守る力

7 役割意識(13) 自分がするべき役割をはっきりわかっている。(14) 全体の目標にあわせて活動に取り組んでいる。

8 規範意識(15) ルールや約束を必ず守ることができる。(16) 親や先生に言われなくても規則にしたがうことができる。

集団内の人間関係を円滑にしようとする力

9 伝達・コミュニケーション(17) 困っている友だちがいたら励ますことができる。(18) 友だちの立場に立って話を聞くことができる。

10 ユーモア・明るさ(19) 明るく元気にあいさつや返事ができる。(20) 場を和ますことができる。

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どうやったら測定できるの?

使い方のポイント

❶ 実施前に測定する時期、回数を決定します。活動の前後や学期のはじめと終わりに測定し変化を比較することができます。 →(下記※1参照)

❷ 国立妙高青少年自然の家ホームページから用紙を必要枚数ダウンロードしてお使いください。 →(下記※2参照)

❸ アンケートを実施します。実施者は、記入者に「これはテストではありません。ありのままに答えてください。」と伝えてください。

❹ 記入時間は特に決まっていません。落ち着いて記入し、終了後は記名もれがないことを確認し、回収します。実施者が項目を読み上げてもかまいません。

❺ 全員分回収したことを確認し、データの処理に移ります。 →(次ページ参照)

※1: 実施時期や実施期間、実施回数は特に決まっていません。各団体の測定したいときに測定することができます。通常は行事の前後や学期始め・学期末などで実施し、数値を比較します。その結果から、子どもに育まれた力を考察し、活動内容を見直して次に生かします。

※2:      で検索 (http://myoko.niye.go.jp/)

少年期におけるリーダーシップに関するアンケート調査

実施日           月  日   

          小学校  年  組  番  氏名:            

※これはテストではありません。ありのままに答えてください。 とてもよく当てはまる 当てはまる

どちらでもない

当てはまらない

まったく当てはまらない

(1)人ひと

が嫌いや

がることでも自じ

分ぶん

から進すす

んで取と

り組く

むことができる。 5 4 3 2 1

(2)すすんでお手て

伝つだ

いや勉べん

強きょう

をすることができる。 5 4 3 2 1

(3)危あぶ

ないことを予よ

測そく

して避さ

けることができる。 5 4 3 2 1

(4)その場ば

の状じょう

況きょう

にあわせて考かんが

えることができる。 5 4 3 2 1

(5)決き

めた時じ

間かん

にあわせて行こう

動どう

することができる。 5 4 3 2 1

(6)先さき

のことを考かんが

えて行こう

動どう

することができる。 5 4 3 2 1

(7)内ない

容よう

を考かんが

えて話はな

すことができる。 5 4 3 2 1

(8)反はん

省せい

したことを次つぎ

の行こう

動どう

や活かつ

動どう

に生い

かしている。 5 4 3 2 1

(9)物もの

事ごと

をいろいろな方ほう

向こう

から見み

ることができる。 5 4 3 2 1

(10)わからないことは自じ

分ぶん

で調しら

べることができる。 5 4 3 2 1

(11)うまくいくようにいろいろな工く

夫ふう

をすることができる。 5 4 3 2 1

(12)興きょうみ

味のあることにチャレンジしてみたい。 5 4 3 2 1

(13)自じ

分ぶん

がするべき役やく

割わり

をはっきりわかっている。 5 4 3 2 1

(14)全ぜん

体たい

の目もく

標ひょう

にあわせて活かつ

動どう

に取と

り組く

んでいる。 5 4 3 2 1

(15)ルールや約やく

束そく

を必かなら

ず守まも

ることができる。 5 4 3 2 1

(16)親おや

や先せん

生せい

に言い

われなくても規き

則そく

にしたがうことができる。 5 4 3 2 1

(17)困こま

っている友とも

だちがいたら励はげ

ますことができる。 5 4 3 2 1

(18)友とも

だちの立たち

場ば

に立た

って話はなし

を聞き

くことができる。 5 4 3 2 1

(19)明あか

るく元げん

気き

にあいさつや返へん

事じ

ができる。 5 4 3 2 1

(20)場ば

を和なご

ますことができる。 5 4 3 2 1

                   ご協きょう

力りょく

ありがとうございました。

 リーダーシップアンケート用紙は、少年期(高学年)リーダーシップ測定尺度項目の「調査項目」をランダムに入れ替えたものです。記入者は直接記入し、実施者がデータを入力します。

4 これがリーダーシップアンケート用紙です。

          国立妙高  

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・ 統計処理ソフト(「リーダーシップ測定尺度集計シート」/エクセル形式)は、p.4 ※2よりダウンロードして使用してください。・ 形式は、随時更新予定です。形式が変更になっている場合がありますので、ご了承ください。

・左に示す手順で作業を行います。・ 手順1~4については、以下に説明します。

1.数値を入力します。   (リーダーシップ測定尺度集計シート「第1回目集計表」↓)

2.入力内容を確認します。入力が終了したら、氏名、学年、アンケート数値に誤りがないか確認してください。

データの処理は、以下のような流れになります。

5 データ処理をしましょう。

1 数値を入力します。

2 入力内容を確認します。

3 集計・分析結果を出力します。

4 さあ、考察をしましょう。

アンケート用紙の記入者の氏名、学年を入力します。

アンケート用紙に記載された下位指標の数値を(1)~(20)まで転記します。

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1回目の調査

2回目の調査

① 入力が終了したら、「クラス全体」シートを開きます。

② 1回目の調査の場合は、このようにグラフが左側のみ表示されます。

③ グラフの下部に1回目の調査のM(平均)とSD(標準偏差)が表示されます。

① 1回目と同じ集計シートの中の「2回目集計表」に入力します。入力が終了したら、「クラス全体」シートを開きます。

② このようにグラフの左側に1回目、右側に2回目の結果が表示されます。

③ グラフの下部に1回目と2回目の調査のM(平均)とSD(標準偏差)が表示されます。

 クラス(集団)全体の結果は、リーダーシップ5つの力を合計した得点の平均を表したものです。したがって、ある期間の前後で数値を比較することによってそのクラス(集団)の総合的なリーダーシップの変化や傾向を考察することができます。

3.集計・分析結果を出力します。a 「クラス全体」の結果 (リーダーシップ測定尺度集計シート「クラス全体」↓)

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1回目の調査

2回目の調査

① 集計表のシートに数値が入力されていることを確認し、「個人票」シートを開きます。

② このように個人の結果が、人数分表示されます。  1回目の調査の場合は、グラフが左側のみ表示されます。

③ 得点差は、1回目の数字がマイナスでそのまま表示されます。

① 1回目と同じ集計シートの中の「2回目集計表」に入力します。入力が終了したら、「個人票」シートを開きます。

② このようにグラフの左側に1回目、右側に2回目の結果が表示されます。

③ 得点差は、1回目と2回目の数字の差が表示されます。

 個人の結果は、リーダーシップ測定尺度の上位指標である「課題達成機能」と「集団維持機能」の数値を比較することができます。また、同中位指標である「リーダーシップ5つの力」の項目毎の数値を比較することによって子どもにつけたい力を具体的に考察することができます。

b 「個人」の結果 (リーダーシップ測定尺度集計シート「個人票」↓)

○○ ○○

△△ △△

○○ ○○

△△ △△

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考察のポイント リーダーシップ測定尺度は、活動によって子ども達についた力を具体的に考察したり、子ども達にとってよりよい活動を編成するためのプログラムを見直したりするために開発されたツールです。指導者の皆様には、子ども達と活動を共有し様子をよく観察した上で、リーダーシップ測定尺度で得られた数値と合わせて、総合的に考察されることをお勧めします。

 少年期(高学年)のリーダーシップ測定尺度は、利用者のニーズによって下記のような視点で評価することができます。

1.全体の傾向として、ある期間の前後で推移を比較する。2.個人の傾向として、ある期間の前後で推移を比較する。   ①上位指標(課題達成機能・集団維持機能)として考察する。   ②中位指標(リーダーシップ5つの力)として考察する。

4.さあ、考察をしましょう。

独立行政法人国立青少年教育振興機構

国立妙高青少年自然の家〒 949-2235 新潟県妙高市大字関山 6323-2TEL 0255-82-4321 FAX 0255-82-4325 URL http://myoko.niye.go.jp/ E-mail [email protected]

 国立妙高青少年自然の家では、実施した事業で実際にリーダーシップ測定尺度を使って活動に生かしました。

 ●妙高ジュニアアドベンチャー2010  (14泊15日:信濃川367キロ川下り)

 ●妙高ジュニアアドベンチャー2011  (14泊15日:村づくり)

 ●アセアン加盟国中学生招聘交流事業

 皆さんの学校や団体でも是非ご活用ください。ご意見ご感想は、下記までお願いいたします。

活用例

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