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流れシミュレーションに関する 基礎事項 (主に希薄気体・低温プラズマ関連) 2020/8/6 Particle-PLUS / DSMC-Neutrals

流れシミュレーションに関する 基礎事項 主に希薄気体・低温 ...流れシミュレーションに関する 基礎事項 (主に希薄気体・低温プラズマ関連)

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流れシミュレーションに関する

基礎事項

(主に希薄気体・低温プラズマ関連)

2020/8/6

Particle-PLUS / DSMC-Neutrals

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流れシミュレーションの一般的な手順

➢ 多くのシミュレーションでは、計算領域内に 計算格子(mesh) が必要となる。

➢ 密度、流速、温度などの物理量は、計算格子の節点(node)やセル中心(cell-center)などの位置で定義される。それらの値を流れの式から求める事がシミュレーションの目的となる。

➢ 計算格子は計算精度、結果の解像度、計算時間などに強く影響する。

各種3D-CAD WF-Geom DSMC-Neutrals-GUI WF-View

1. 形状作成 2. 計算格子生成 3. 計算条件設定と計算実行

4. 結果可視化

前処理 pre-process 後処理post-process

対応ツール(DSMCでの例)

計算

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シミュレーションソフトウェア表 (気体・プラズマ関連)

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ソフトウェア 手法 計算対象 適用事例 特長

DSMC-Neutrals 粒子モデル

(DSMC法)希薄気体流れ

半導体製造装置

宇宙推進機

希薄気体流れの計算に特化している、複雑な形状でも解が必ず収束する

Particle-PLUS粒子モデル

(PIC-MCC法+ DSMC法)

希薄気体流れ

低温プラズマ

スパッタリング

半導体製造装置

自動車部品コーティング装置

低圧におけるプラズマの計算に特化している、マグネトロンスパッタリングの計算に特に有用

Simerics MP流体モデル

(有限体積法)

気体流れ

液体流れ

混相流

自動車

熱交換器

攪拌槽

送風機

形状データに合わせて計算格子を自動生成する、格子生成から計算・結果可視化までを同一画面上で操作できる

VizGlow 流体モデル

(有限体積法)

気体流れ

低温プラズマ

半導体製造装置

自動車部品コーティング装置

スパークプラグ

マイクロ波プラズマや大気圧プラズマも含めた幅広いプラズマを計算できる

VizSpark 流体モデル

(有限体積法)

気体流れ

熱プラズマ

溶射

遮断機

スパークプラグ

熱プラズマ、アークプラズマの計算に特化している

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用語説明: 粒子モデル と 流体モデル (1)

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粒子モデル (代表粒子近似) 流体モデル (流体近似)

具体的な手法 DSMC、PIC、Test-Particle 等 FEM、FVM 等

基礎方程式 計算粒子の運動方程式 *1 流体方程式 *2

速度分布の仮定 無し (非平衡も考慮可能) Maxwellian (熱平衡)

衝突の仮定 2体衝突 等方的 (Maxwellian)

適用の目安 中間流~分子流 (𝐾𝑛 ≥ 0.3) *3 連続流 (𝐾𝑛 < 0.01)

計算精度に影響する設定

計算粒子数、計算格子幅、計算時間幅

計算格子幅、計算時間幅

計算負荷計算粒子数に依存する

比較的大計算格子数に依存する

比較的小

気体分子やプラズマの流れを解くための、2種類の近似モデルを示す。

*1 粒子数が十分に多い場合はBoltzmann方程式と等価となる。

*2 連続方程式、運動量輸送方程式、エネルギー輸送方程式から成る連立方程式を指す。

*3 中間流領域では計算負荷が大きくなりすぎるため、流体モデルが採用されることもある。

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用語説明: 粒子モデル と 流体モデル (2)

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具体例:

1 Pa, 300 K の Ar ガスが 1 cm の流路を通る場合、

𝐾𝑛 ≒ 0.76なので粒子モデルでの解析が推奨される。

要点

✓ 低温プラズマや希薄流れ、プラズマシース・壁近傍における流れで

は、速度分布が Maxwellian から外れやすい。このような場合の流

れは、粒子モデルにより精度よく解析できる。表面流束・角度分布

などの解析にも粒子モデルが推奨される。

✓ 一方で、圧力が高くなると速度分布は Maxwellian に近づく。この

ような場合は流体モデルでも解析可能となるので、計算負荷の小さ

いそちらが推奨されることもある。

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用語説明: Knudsen数 と 分子流・連続流

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➢ 平均自由行程 と Knudsen数

気体分子1つが他の分子と衝突した後、次に衝突するまで飛行する平均距離の

ことを平均自由行程といい、記号𝜆で表す。圧力が低くなるほど、衝突頻度が

低くなるため𝜆は長くなる。容器の大きさを𝐿とするとき、希薄度の指標として

Knudsen数 𝐾𝑛 = 𝜆/𝐿がよく用いられる。

➢ 分子流

𝐾𝑛 ≫ 1の場合、分子同士の衝突よりも分子と壁との衝突が支配的となる。壁に

衝突するまで分子は自由に飛行できることから、このような流れを自由分子流、

あるいは単に分子流という。

➢ 連続流

Kn≪1の場合、分子同士の衝突により熱平衡状態になるため、個々の分子運動

よりも統計集団としての状態が支配的となる。つまり連続流体として扱うこと

ができ、このような流れを連続流という。分子間衝突による粘性も生じるため、

粘性流とも呼ばれる。参考文献:日本機械学会 編 「原子・分子の流れ 希薄気体力学とその応用」、共立出版 (1996年)

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用語説明: 低温プラズマ と 熱プラズマ

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➢ 低温プラズマ

低圧力で衝突頻度が低い場合には、電子集団のエネルギーは高い状態に維持

されるが、イオンはほぼガス温度(室温)に近い状態に保たれる。このように

熱的に非平衡な状態になっているプラズマを非平衡プラズマ、あるいはガス

温度が低いという意味で低温プラズマと呼ぶ。低温プラズマ中では一般に、

それぞれの粒子の部分集団の速度分布が Maxwell 分布になっているとはい

えない。

➢ 熱プラズマ

圧力が上昇すると衝突頻度が増加するため、電子・イオン・ガスの温度は相

互に近づき、大気圧付近では数千度の温度で一致するようになる。このよう

な状態のプラズマを熱平衡プラズマ、あるいは単に熱プラズマという。定常

的な熱プラズマ中では、全ての粒子の速度分布は1つの温度で決まる

Maxwell 分布に従う。

参考文献:日本学術振興会 プラズマ材料科学第153委員会 編 「大気圧プラズマ –基礎と応用–」、オーム社 (2009年)

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用語説明: 熱平衡状態 と Maxwell速度分布

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➢ 熱平衡状態と状態量

十分な衝突により粒子集団が熱平衡状態にあるとき、個々の粒子の位置や速度

といった微視的変数を調べなくても、圧力・温度・密度・流速といった巨視的

な状態量で集団を記述することができる (平衡熱力学)。これらの状態量を用い

て流れを記述する際は、局所的に熱平衡状態であることが仮定されている (流

体力学)。

➢ Maxwell速度分布

熱平衡状態にある粒子集団の速度分布はMaxwell速度分布をとる (平衡統計力

学)。流れがある場合は、全粒子の速度に流速分を加算して考えればよい。

➢ 運動論方程式

非平衡状態も含めた一般的な粒子集団は、Boltzmann方程式で記述される (運

動論)。しかしこれを直接解くのは現実的ではなく、通常は粒子モデルや流体モ

デルで近似される。

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