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攪拌機ギア損傷事例にみる周波数解析での注意点
2015年10月2日
電源開発株式会社火力発電部
沼尻 光一郎
状態監視振動診断技術者コミュニティ 第7回ミーティング機器
攪拌機減速機
電動機250[kW]、6600[V]6極、1180[rpm]
減速機4軸 3段減速 ヘリカルギア
減速比:40
異常事象
定例油サンプリング時、減速機内部より振動をともなった異音(「ゴトゴト」音)を確認。
事象概要
モータTS1=19.76[Hz]
歯数18 歯数51
歯数16 歯数58
歯数21 歯数82
TS2=6.97[Hz]
TS3=1.92[Hz] TS4=0.49[Hz]
#1
#2
#3 #4
GMF3=40.40[Hz]
GMF2=111.6[Hz]
GMF1=355.7[Hz]
ギア配列
PK
Velo
city
in m
m/S
ec
Frequency in Hz
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
0 300 600 900 1200 1500
Max Amp 1.64
Plot Scale
0
0.21
16:35:4205/9/09
15:09:5505/6/13
09:35:1504/9/16
10:10:4304/4/02
Freq: Ordr: Sp 1:
357.91 17.96 .07760
減速機ケーシング上部水平方向のスペクトルの変化を示す。
カーソルで示すGMF1には大きな変化は見られない。
スペクトルの時系列変化(GMF1)
PK V
elo
city
in m
m/Sec
Frequency in Hz
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
0 300 600 900 1200 1500
Max Amp 1.64
Plot Scale
0
0.21
16:35:4205/9/09
15:09:5505/6/13
09:35:1504/9/16
10:10:4304/4/02
Freq: Ordr: Sp 1:
112.29 5.636 .03711
カーソルで示すGMF2は2005/6から増加している。
サイドバンドについてはTS2=6.97[Hz]、TS3=1.92[Hz]に対して
BW=0.93[Hz]のため確認できず。
スペクトルの時系列変化(GMF2)
PK
Velo
city
in m
m/S
ec
Frequency in Hz
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
0 300 600 900 1200 1500
Max Amp 1.64
Plot Scale
0
0.21
16:35:4205/9/09
15:09:5505/6/13
09:35:1504/9/16
10:10:4304/4/02
Freq: Ordr: Sp 1:
40.61 2.038 .05596
カーソルで示すGMF3は1次は変化がないが、2次付近が大きく増加
している。
2xGMF3の裾が広くなっている。
スペクトルの時系列変化(GMF3)P
K V
elo
city
in m
m/S
ec
Frequency in Hz
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
0 300 600 900 1200 1500
Max Amp 1.64
Plot Scale
0
0.21
16:35:4205/9/09
15:09:5505/6/13
09:35:1504/9/16
10:10:4304/4/02
Freq: Ordr: Sp 1:
274.90 13.80 .146
その他、特定はできないが、275[Hz]のピークとその周囲の周波
数成分が2005/6から増加している。
スペクトルの時系列変化(その他成分)
高解像度スペクトル(BW=0.125[Hz])を示す。
2xGMF3の周囲にTS3(1.92[Hz])間隔のサイドバンドが現れている。
GMF3の周囲にTS3のサイドバンドということから、#3軸のピニオン
ギアの損傷が疑われた。
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
Analyze Spectrum 05/9/14 16:07:59
PK = 1.19 LOAD = 100.0 RPM = 1195. (19.92 Hz)
0 50 100 150 200
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
Frequency in Hz
PK
Velo
city
in m
m/S
ec
Freq: Ordr: Spec:
40.75 2.046 .08001
1xGMF3 2xGMF3
1xGMF2
3xGMF34xGMF3
高解像度スペクトル
時間波形を確認すると、0.52[s]周期(=1.92[Hz])のリングダウンパ
ターンが確認できる。
TS3と一致することから、#3軸の1回転に1回、衝撃が生じているこ
とが分かる。
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
Analyze Waveform 05/9/14 16:07:59
RMS = .0222 LOAD = 100.0 RPM = 1195. (19.92 Hz)
PK(+) = .1084 PK(-) = .0929 CRESTF= 4.88
0 0.5 1.0 1.5 2.0
-0.12
-0.08
-0.04
0
0.04
0.08
0.12
Time in Seconds
Accele
ration in G
-s
TS3
時間波形
#3軸被駆動側ギアの1箇所に欠けが確認された。
折損部115mm×25mm
他の歯は異常なし。噛み合う#2軸ピニオンも異常なし。
分解点検結果
損傷が疑われたピニオン
#3軸ピニオンギアのほぼすべての歯において、歯の根元にスコー
リング。下側約半分にわたって生じていた。
噛み合う#4軸被駆動側ギアはすべての歯の下半に凹凸および
ピッチング等の損傷。
分解点検結果
損傷が疑われたピニオン
分解点検結果
振動解析では、#3軸ピニオンの損傷が疑われた。
#3軸ピニオンにもスコーリングが確認されたが、最大損傷部位は、
#3軸被駆動側ギアであった。
損傷が疑われたピニオン
Analyze Waveform 05/9/15 10:34:12 RMS = .0259 PK(+/-) = .1215/.1081 CRESTF= 4.69
0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
-0.12
-0.06
0
0.06
0.12
0.18
Time in Seconds
Accele
ration in G
-s
TS3
分解点検結果を踏まえた振動データの検証
時間波形における#3軸の1回転に1回のリングダウンパターンは#3
軸被駆動側ギアの欠けによるもの。
1xGMF3や他のハーモニック成分にサイドバンドが現れておらず、
2xGMF3のみにサイドバンドが現れているというのは、サイドバンド
の理論から不自然である。
理論的にはサイドバンドはすべてのハーモニック成分に生じるはず。
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
Analyze Spectrum 05/9/14 16:07:59
PK = 1.19 LOAD = 100.0 RPM = 1195. (19.92 Hz)
0 50 100 150 200
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
Frequency in Hz
PK
Velo
city
in m
m/S
ec
Freq: Ordr: Spec:
40.75 2.046 .08001
1xGMF3 2xGMF3
3xGMF34xGMF3
(検証)GMF3のサイドバンド
DSX - A-吸収塔酸化攪拌機A-ARS -GIH Shaft 01 Inboard Horizontal
Analyze Spectrum 05/9/15 10:34:12 PK = 1.39 LOAD = 100.0 RPM = 1194. (19.89 Hz)
0 20 40 60 80 100
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.70.8
Frequency in Hz
PK V
elo
city
in m
m/S
ec
Analyze Waveform 05/9/15 10:34:12 RMS = .0259 PK(+/-) = .1215/.1081 CRESTF= 4.69
0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
-0.12
-0.06
0
0.06
0.12
0.18
Time in Seconds
Accele
ration in G
-s
TS3
ギアの固有振動数によるピーク1回転周期で励起されるためTS3間隔で現れる。
(検証)“2xGMFとサイドバンド”の正体
スペクトルにおけるTS3のサイドバンドをともなった2xGMF3と見られた
周波数成分は、2xGMF3ではなく、欠けた歯による衝撃により励起さ
れたギア(あるいはギアボックス)の固有振動数であると考えられる。
バンプテストのような単入力はスペクトルで表すと広い範囲の周波数成
分で表されるが、周期性のある加振入力は、スペクトル上にその周期を基本周波数としてハーモニックを伴って現れる。
時間 →力→
時間波形
周波数 →
力→
スペクトル
FFT
FFT
時間 →
力→
時間波形T[sec]
周波数 →
力→
スペクトル
1/T[Hz]
(補足説明)周期的なインパクト
ハンマリングによるインパルスは広範囲の周波数成分を含んでいる。その中で固有振動数成分が共振により増幅される。
周波数 →
固有振動数
周波数 →
固有振動数
(補足説明)単入力のインパクトに対する応答
共振は振動成分を増幅するのみであり、エネルギーを持たない周波数は増幅されない。したがって、周期的なインパクトを与えた場合の応答は図のように離散的になる。
周波数 →
固有振動数
周波数 →
固有振動数
(補足説明)周期的なインパクトに対する応答
周波数解析にあたっては、単体の周波数成分ではなく、ハーモニック単位で解析を行う。(サイドバンドはハーモニックのすべての次数に対して発生する。)
時間波形とスペクトルは一対のものであるから、関連性に注意する。
周期的なインパクトがどのようにスペクトルに表れるかを理解する。
振動発生源~振動センサ間の周波数伝達関数を意識する。
本事例にみる振動解析における注意点