48
60 (6)沈殿土壌の固化 固液分離された沈殿土壌に固化剤を投入して固化させる。 沈殿土壌は多量の水を含んでおり、その取扱いが困難であるため、沈殿土壌を固化させる。 水による土壌攪拌・除去の全体フローにおける沈殿土壌の固化の位置づけ 作業手順等は次のとおり。 作業手順 分離槽に沈殿した土壌を、上澄み水を引き抜いた原水槽に投入し、原水槽に沈殿した 土壌とともに、固化剤を投入、混合して固化する。 留意事項 降雨が予測される場合は、含水率が上昇しないよう、ブルーシートで覆うなどして、 沈殿土壌への雨水の浸入を防止する。 工程上にゆとりのある場合は、自然乾燥等で可能な限り沈澱した土壌の含水量を低下 させる。 固化剤は強度発現が目的ではなく、排出を容易にすることを目的とするため土工作業 が可能となる最小限の添加量とする。 使用機械及び資材 必要な機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切 な機械を選定する。 殿

(6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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Page 1: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(6)沈殿土壌の固化

固液分離された沈殿土壌に固化剤を投入して固化させる。

【 解 説 】

沈殿土壌は多量の水を含んでおり、その取扱いが困難であるため、沈殿土壌を固化させる。

水による土壌攪拌・除去の全体フローにおける沈殿土壌の固化の位置づけ

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① 分離槽に沈殿した土壌を、上澄み水を引き抜いた原水槽に投入し、原水槽に沈殿した

土壌とともに、固化剤を投入、混合して固化する。

イ 留意事項

降雨が予測される場合は、含水率が上昇しないよう、ブルーシートで覆うなどして、

沈殿土壌への雨水の浸入を防止する。

工程上にゆとりのある場合は、自然乾燥等で可能な限り沈澱した土壌の含水量を低下

させる。

固化剤は強度発現が目的ではなく、排出を容易にすることを目的とするため土工作業

が可能となる最小限の添加量とする。

ウ 使用機械及び資材

必要な機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切

な機械を選定する。

濁水処理

濁水排水

土壌攪拌

導水路設置

沈殿土壌の固化

準備作業

固化土壌の搬出

Page 2: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

バックホウ(0.45 m3 級)

固化剤(セメント、生石灰)

―農地除染実証工事における事例―

写真 54 固化剤投入、混合

Page 3: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(7)固化土壌の搬出

固化した土壌は大型土のうに詰めて搬出する。

【 解 説 】

水による土壌攪拌・除去の全体フローにおける固化土壌の搬出・仮置きの位置づけ

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① バックホウ(人力併用)にて詰込用補助具を使い、固化土壌を大型土のうに詰め込む。

② 大型土のうごとに空間線量率を測定し、識別票(タグ)に記録する。

③ 識別票(タグ)及び識別テープに必要事項を記入し、土のうに取り付ける。

④ 場内所定場所に仮置きされた大型土のうをクレーン等でダンプトラックに積み込む。

⑤ 積込を終えたダンプトラックの表面から 1m離れた位置での空間線量率が 100μSv/h

を超えないことを確認する 10)。

⑥ 上記測定後、除染前の農道を作業場所とした場合は、タイヤ洗浄装置等を通過して地

区外に出る。

イ 留意事項

前記ア⑤に関し、仮に、放射性セシウムの濃度が高い(100 万Bq/kg程度)除去土壌

を比較的大きめの運搬車に積載した場合であっても、運搬車から 1m離れた位置での

最大の線量率は 100μSv/hを下回るので、年間の線量が 200mSvを超えないような地

域での除染に伴って発生した除去土壌を運搬するにあたっては、運搬車についての線

10)除染関係ガイドライン(環境省 平成 23 年 12 月) 第1版(環境省)

濁水処理

濁水排水

土壌攪拌

導水路設置

準備作業

固化土壌の搬出

沈殿土壌の固化

Page 4: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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量率を測定する必要はない 11)。

運搬車両には車体外面に汚染土壌等の運搬車両であることを明記した標識を貼り付

けるとともに、その他必要事項を記載した書類を搭載しておくこととする。

搬出計画に当たっては、運搬経路での渋滞等一般通行車両の運行に悪影響を及ぼさな

いよう配慮するとともに、工事区域内での待機時間が長くならないよう考慮する。

ウ 使用機械

必要な機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切

な機械を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

バックホウ(0.45m3)

ダンプトラック(10t)

―農地除染実証工事における事例―

写真 55 固化した土壌の取り出し 写真 56 詰込作業の状況

11)除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118

Page 5: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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3.反転耕

○ 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

を反転させ、放射性セシウムをその場の地中に隔離する手法である。

○ 反転耕の結果、作土層を放射性セシウム濃度が低い土壌に置き換えることができると

ともに、放射性セシウム濃度の高い土壌が、濃度の低い土壌に覆われることによる覆

土と同様の遮へい効果が発揮される。

【 解 説 】

反転耕を実施する際は、その適用条件を確認する。

反転耕は次に示すフローから構成される。

以下、作業項目ごとに解説する。

② 反転耕

① 準備作業

③ 整地

④ 地力の回復

除草及び土壌調査を行う。

土壌の状況に応じて耕深やプラウの種類を選択し

て、プラウ耕を行う。

プラウ耕後に反転した土壌を砕土して均平化する。

必要に応じ、土壌診断と肥培管理による地力の回復

を行う。

Page 6: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(1)準備作業

準備作業では、除草及び土壌調査を行う。

【 解 説 】

農地が雑草で覆われている場合は、除草を行う。また、設計された条件が適当であったかの

確認のために土壌調査を行う。

反転耕の全体フローにおける準備作業の位置づけ

1)除草

除草作業は、Ⅳ.1.除草を参照

2)土壌調査

土壌調査を行い、反転耕の適否の判断の確認を行う。

【 解 説 】

ア 作業手順及び留意事項

① 当該地区の土壌に関する聞き取り結果(Ⅱ.準備工 2.現況確認 参照)を把握し

たうえで、検土杖による土性の把握やプラウ耕の予定耕深までの壺掘りによる土壌

断面の調査を基に、プラウ耕の適否と耕深を確認する。

② 地下水位を計測し、耕深以下に地下水面があるという、反転耕の適用条件に合致す

ることを確認する。

地力の回復

整地

反転耕

準備作業

Page 7: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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イ 使用機材

採土器、土壌サンプル保管容器

(2)反転耕

○ トラクタとプラウのマッチング、プラウの調整を行い、プラウ耕を実施する。

○ 反転耕の実施に先立ち、吸着剤を散布する。

【 解 説 】

耕深の決定に当たってはトラクタの能力、土壌の重さを考慮する。詳細は調査設計編参照。

吸着剤の散布は、農作物の放射性セシウムの吸収抑制対策となるほか、吸着剤が白色である

ことから、反転された表面土壌の位置確認など施工管理の面でも利点がある。

反転耕の全体フローにおける反転耕の位置づけ

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① ライムソワーを用いて吸着剤(ゼオライト、バーミキュライト等を標準とする。)を

散布する。

② 下層土に問題のないほ場で 60~80 馬力の中型トラクタを使用する場合、水田では、

プラウの耕深は 30cm 程度とする。畑では 2 段耕プラウなどを用い、45cm 程度とす

る。

③ 水田・畑ともにプラウ耕(2 段耕を含む。)の使用が可能である。2 段耕プラウは、前

方のり体..

(すき)で下層土を表層に反転するとともに、後方のり体で表層の土を前方

のり体が通過してできた溝中に落とすプラウである(図 16)。なお、2 段耕プラウは

大きなトラクタを要するため、トラクタの大きさの理由で 2 段耕プラウを使用できな

地力の回復

整地

反転耕

準備作業

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い場合はジョインタ付きプラウの使用も可能である。機種によっては、ジョインタは

一般的なプラウに後付けできる場合もある(2 段耕プラウやジョインタ付きプラウは

表土の鋤き込み精度が高く、深く埋設する効果が高い 12)。)。

イ 留意事項

プラウの作業経路は、往復耕法(内返し耕、外返し耕)、回り耕法(外巻き耕、内巻

き耕)、片道耕法、順次耕法(リバーシブルプラウでのみ可能)などがある。ほ場の

形状や大きさに合わせて、これらの耕法を組み合わせて実施する(図 17)。

反転耕の効果は、壷掘りにより吸着剤(白色)の分布する位置で確認する。

プラウの選定は「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き 13)」参照。

耕起していないほ場では、反転耕の前にロータリー耕を行って表層の土壌を混和して

しまうと放射性物質の土中分布範囲が深くなる。そのため、反転耕後の放射性物質の

埋設深が浅くなるので、反転耕の前にはロータリー耕を行わないようにする 10)。

ウ 使用機械

必要な機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切

な機械を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

トラクタ(セミクローラタイプ):けん引用

はつ土板プラウ(2 連プラウ、2 連 2 段耕プラウ):反転用

ライムソワー、吸着剤(ゼオライト):吸着剤散布

写真 57 ゼオライト散布イメージ

12) 「除染用反転耕プラウの開発とその利用」((独)農業・食品産業技術総合研究機構他、平成 24 年 8 月) 13)農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き 第1版.Ⅵ反転耕

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図 16 2 段耕プラウの反転方法

1連目のプラウの先行する刃(下段)で

下層の土 20cm を跳ね上げる。

1連目のプラウ後方の刃(上段)が表層

の土 10cm を削り、穴に落とす。

2連目のプラウ前方の刃(下段)が下層

の土を跳ね上げ、被せる。

2連目のプラウ後方の刃(上段)が表層

の土を削り取り穴に落とす。

1連目のプラウ前方の刃(下段)が下層

の土を跳ね上げ、被せる。

進行方向 1連目

2連目

プラウの位置を移動

繰り返し

前方:下段

後方:下段

後方:上段

前方:上段

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―農地除染実証工事における事例―

写真 58 2 段耕プラウ(2 連)

2 段耕プラウでは、高さと機能の異なる 2 段

のり体により、表層土を下層に落としその上に

下層土を被せる。写真のプラウは 2 段耕プラウ

を 2 つ連ねたもの。

写真 59 プラウ(2 連)

プラウは、1つのり体(すき)からなる標準

的なはつ土板プラウ。写真のプラウは 2 つ連ね

たもの。

写真 60 2 段耕プラウ(2 連)による反転状況

写真 61 反転状況の確認

前方の

り体

後方の

り体

←2 段のり体

(前後で異なる機能)

←2 連→

←2 連→ り体は

一つ

前方のり体が下層土

を表層に反転し、溝

も作る

後方のり体が表層を

削り溝に落とす

前方の

り体

後方の

り体

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※スガノ農機(株)ウェブサイト、ボトムプラウ教本より

(http://www.sugano-net.co.jp/products/plow/plow_text/plow_text.html)

図 17 プラウの耕起方法(作業経路)

(3)整地

プラウ耕を行った後に、反転した土壌を破砕して均平にする整地作業を行う。

【 解 説 】

反転耕の全体フローにおける整地の位置づけ

反転耕

整地

地力の回復

準備作業

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作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① パワーハローまたはロータリーティラーで整地を行う場合、作業経路は、ほ場の中央

部を往復耕で、周辺部を回り耕法で作業する。

イ 留意事項

パワーハローまたはロータリーティラーで整地を行う場合、PTO*1 の所要動力と走行

時や旋回時の前後バランスを考慮してトラクタを選択する。

*1 PTO:アタッチメントにトラクタの動力を転送する機能

ウ 使用機械

必要な機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切

な機械を選定する。

パワーハロー、レーザーレベラー:砕土用、均平用

トラクタ:けん引用

―農地除染実証工事における事例―

写真 62 整地作業 写真 63 整地作業完了後の地表面

Page 13: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(4)地力の回復

必要に応じ、地力の回復に向けた土壌診断と施肥管理を行う。

【 解 説 】

反転耕により新たに表層に現れた土壌は、今までは作土層よりも下層に位置していたもの

であり、十分な地力回復が必要である。

反転耕の全体フローにおける耕盤・地力の回復の位置づけ

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① プラウ耕を実施した後には土壌診断を実施し、堆肥、肥料、土壌改良資材等の施用量

を決定する。

イ 留意事項

土壌診断の分析項目及び分析場所は、地域の営農指導に準拠する。

下層土の地力が低く、プラウ耕により地力が低下する場合は堆肥を施用する。

下層土の pH が低い場合は石灰等を施用する。

水田でのプラウ耕は耕盤を破壊することになるため、ほ場条件によっては漏水や農業

機械の走行ができなくなる問題が発生する。耕盤層は、水稲栽培を行うことで形成さ

れるが、初年度はローラによる鎮圧やベントナイト等の資材の施用により、農業機械

が落輪しない程度の支持層を形成する必要がある 14)。

14) 農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き 第1版.Ⅵ反転耕

地力の回復

整地

反転耕

準備作業

Page 14: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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VI.水路、農道、畦畔・法面、農地隣接林地除染工

1.水路除染工

水路除染工を行う場合は、水路内に堆積した土砂の除去を基本とする。

【 解 説 】

農地除染実証工事では、放射性セシウムを含んでいると想定される土砂が水路内に堆積し

ている場合は除去により除染を行った。

土砂の除去による水路除染工は以下の手順で進める。

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

a 仮締切

① 作業性の向上のため、水を仮締切により遮断する。仮締切施工後、水路内に滞留し

た水は、水中ポンプなどを用いて除染区間の下流に仮回しする。

b 水路除染

① 水路底に堆積した土砂等は人力(スコップなど)またはバックホウを併用して除去

②水路除染

①仮締め切り(水替え)

④復旧工

③大型土のう運搬・場内仮置・

場外搬出

堆積物を除去するに当たって、含水比の低下を促進

するため、上流域で仮締切を行う。

・排水完了後、放射性セシウムを含んでいると想定

される水路底に堆積した土砂の除去、側面の土羽

部表土の削り取りを行い、その場で仮置きや小型

土のうに詰め込む。

・仮置きや小型土のうに詰め込んだ土砂は、大型土

のうに詰め込む。

水路法面を現場状況に応じた適切な工法を検討し

て復旧する。

・土砂を入れた大型土のうは不整地運搬車等を用い

て場内所定の仮置場へ運搬し、仮置きする。

・場内所定場所に仮置きした大型土のうは、計画的

に場外搬出する。

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74

する。

② 側面の土羽部は、農地表土の削り取りと同様の厚さで削り取る。側壁がコンクリー

トの場合は基本的に、手作業等で比較的容易に除去できる付着物や苔を取り除くこ

ととし、水路のコンクリート表面は、降雨等により汚染の環境的減衰が進んでいる

ことから、水を使う洗浄は行わないこととする。

③ 掘り上げた土砂は、必要に応じて小型土のう袋に詰めて水路際に仮置きする。

④ バックホウを用いて人力併用で大型土のうに詰め込み、その場に仮置きする。

c 大型土のう運搬・場内仮置・場外搬出

① 仮置きした大型土のうはクレーン機能付きバックホウにて不整地運搬車等に積み、

場内小運搬にて農道脇など除染が完了した場所に仮置きする。

② 大型土のうの搬出作業手順は、「Ⅴ.1.(2)除去土壌搬出」参照。

d 復旧工

① 除染を終えた水路を、従前の断面形状に戻すか、あるいは削り取り後の形状を維持

するかについて、地元と調整のうえ決定する。

② 従前の断面形状に戻す場合、粘質土の客土の入手が困難な場合は地元と調整を行い

地権者の承諾を得た上で除染後の近接ほ場の粘性土を集め、水路土羽部をバックホ

ウ法面バケットにて復旧する。削り取り後の形状を維持する場合は、土質、勾配等

の法面の安定性により保護工を検討する。

イ 留意事項

a 水路除染

水路底がコンクリートの場合、底面に堆積した土砂を除去する。農地除染実証工事で

は、土水路の場合の堆積土砂は底面から深さ 10cm を標準として除去した。

仮置きする位置の除染が完了している場合は、大型土のうの上下をシートで養生する。

水路内の苔などの付着物には、高濃度の放射性物質が蓄積している場合があるので、

線量計で放射線の数値を確認しながら取り除く。

b 大型土のう運搬・場内仮置・場外搬出

大型土のうの場外搬出における留意事項は、「Ⅴ.1.(2)除去土壌搬出」参照。

c 復旧工

法面を従前の断面形状に戻す場合、時間をおくと雑草が繁茂するため土による復旧が

困難となる。

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ウ 使用機材

機材は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機材

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

a 仮締切

水中ポンプ:排水用

仮締め切り用の資材(土のう、板など)

b 堆積土砂除去

スコップ、シート:浚い用、土砂集積用

バックホウ(0.28m3 級):浚い用、土砂集積用

バックホウ(0.28m3 級):大型土のう詰込用

c 大型土のう運搬・場内仮置・場外搬出

クレーン機能付きバックホウ(0.28~0.45m3 級):積込用

不整地運搬車等:大型土のう場内小運搬用

ダンプトラック(10t):場外運搬用

d 復旧工

平爪バケットまたは法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級)

【参考】

堆積土砂の除去機械には、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構と民間農業機械製造会

社により共同開発された「用水路内土砂掬い上げ機」がある。

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―農地除染実証工事における事例―

写真 64 人力による土砂除去状況 写真 65 大型土のう詰込作業

写真 66 大型土のう仮置場シート養生 写真 67 場内小運搬作業

写真 68 トラック積込作業

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2.農道除染工

農道の除染は、砕石舗装部分、路肩、法面に分け、表面の削り取りを基本とする。

【 解 説 】

農地除染実証工事で用いた表土削り取りの工法を例示する。農道も農地と同様に放射性セ

シウムが付着していると想定されることから、農道表面を削り取る。

なお、環境省が定める「除染関係ガイドライン」15)では、表土削り取りを含め、他の工

法も示されているため、参照されたい。

15) 「除染関係ガイドライン(平成 23 年 12 月 第 1 版)第 2 編 除染等の措置に係るガイドライン」(環境省)

① 除草及び固化剤散布

(必要時)

② 路肩、法面表土削り取り

③ 砕石舗装削り取り

④ 大型土のう運搬・場内仮置

・場外搬出

⑤ 路肩、法面復旧

必要に応じて除草及び固化剤散布作業を行う。

バックホウと人力の併用作業で路肩、法面の表土を

削り取る。

砕石舗装厚さを目標に、バックホウと人力の併用作

業で削り取り、大型土のうに詰め込む。

土砂を入れた大型土のうは不整地運搬車等を用い

て場内所定の仮置場へ運搬し、仮置きする。

場内所定場所に仮置きした大型土のうは、計画的に

場外搬出する。

路肩、法面を現場状況に応じた適切な工法を検討し

て復旧する。

⑥ 砕石舗装復旧 基本的に再生骨材を用いてバックホウにて撒出し

敷均し転圧する。

搬入する骨材は放射性セシウム濃度を管理する。

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ア 作業手順

a 除草及び固化剤散布

① 除草の作業手順等は、「Ⅳ.1.除草」を参照。

② 固化剤散布の作業手順等は「Ⅳ.3. 固化剤散布」を参照。

b 路肩・法面表土削り取り

① 路肩、法面の表土削り取りは、機械施工の場合、バックホウに平爪バケットまたは

法面バケットを装着して施工する。人力施工の場合はスコップ作業で削り取る。削

り取った土砂はバックホウにより大型土のうに詰め込み、不整地運搬車等で除染が

完了した地区内所定の場所に運搬・仮置きする。

c 砕石舗装削り取り

① 砕石舗装は、バックホウと、スコップの併用作業で削り取る。削り取った土砂はバ

ックホウにより大型土のうに詰め込み、その場に仮置きする。

d 大型土のう運搬・場内仮置・場外搬出

① 仮置きした大型土のうはクレーン機能付きバックホウにて不整地運搬車等に積み、

場内小運搬にて除染が完了した場所に仮置きする。

② 大型土のうの搬出作業手順については「Ⅴ.1.(2)除去土壌搬出」参照。

e 路肩、法面復旧

① 除染を終えた農道法面を、従前の断面形状に戻すか、あるいは削り取り後の形状を

維持するかについて、地元と調整のうえ決定する。

② 法面を従前の断面形状に戻す場合、粘質土の客土の入手が困難な場合は地元と調整

を行い地権者の承諾を得た上で除染後の近接ほ場の粘性土を集め、土羽部をバック

ホウ法面バケットにて復旧する。削り取り後の形状を維持する場合は、土質、勾配

等の法面の安定性により保護工を検討する。

f 砕石舗装復旧

① 砕石舗装部は砕石をバックホウにて撒出し敷均し、振動ローラで転圧する。仕上が

り厚さは現況復旧とする。

イ 留意事項

a 路肩・法面表土削り取り

特に法面の削り取り中に農地や水路に土砂が混入しないよう注意して作業する。

比較的法長が大きい法面については、表土を植生の根とともに除去すると施工後に降

雨による土砂流出や法面崩壊の可能性を考慮し、除染工法を検討する必要がある。

路肩と砕石舗装の境界がわからない場合の路肩削り取り厚さは、砕石舗装の厚さに合

わせる。

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79

b 砕石舗装削り取り

農地に砕石が混入しないよう注意して作業する。

削り取り部分を汚染された車両が通行し、二次汚染されないよう注意する。

農地除染実証工事では、砕石舗装厚さを 5~10cm で実施した。

アスファルト舗装の場合は、「Ⅵ.1.ア作業手順 コンクリート水路の場合」と同様

の方法による。

c 路肩、法面復旧

法面を従前の断面形状に戻す場合、時間をおくと雑草が繁茂するため土による復旧が

困難となる。

d 砕石舗装復旧

農地に砕石が混入しないよう注意して作業する。

使用する骨材は放射性セシウムを含まないことを基本とする。

再生骨材を使用する場合は所定の規準を満たすものとする。(例:福島県土木工事共

通仕様書 下層路盤の品質規格)

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

a 路肩・法面表土削り取り

平爪バケットまたは法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級):削り取

り用、大型土のう詰込用

スコップ

汚泥吸排車(比較的法長が大きい法面の場合に検討する。)

b 砕石舗装削り取り

平爪バケットまたは法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級):削り取

り用、大型土のう詰込用

スコップ

c 路肩、法面復旧

平爪バケットまたは法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級)

コンパクタ:路肩転圧

d 砕石舗装復旧

バックホウ(0.28~0.45m3 級):撒出し、敷均し

振動ローラ(3~4t級):舗装面仕上げ用

Page 21: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

80

【参考】

砕石舗装除去機械には、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構と民間農業機械製造会社

により共同開発された「農道表層剥ぎ取り機」がある。

―農地除染実証工事における事例―

写真 69 バックホウによる作業状況

―農地除染実証工事における事例―

【法高 1.5m を超える法面の除染】

比較的法長が大きく、雑草が密に繁茂している法面においては、表土を植生の根とともに除去

すると、施工後に降雨による土砂流出や法面崩壊が懸念される。このため、表土削り取りを行

わず、植生の根を残した施工とし、除草後、レーキで表面を掻き乱した後に汚泥吸排車により

吸引し、除草残さ及び表土面に吸着した放射性セシウムを吸い取り除去する工法を採用した。

Page 22: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

81

3.畦畔・法面除染工

畦畔、法面の除染を行う場合は、表土の削り取りによって空間線量率を低減する。

【 解 説 】

畦畔、法面も農地同様に放射性セシウムが降下しており、農地の空間線量率を低減す

るために除染を行う。

畦畔、法面の除染は以下の手順による。

② 畦畔、法面表土削り取り

① 除草及び固化剤散布

(必要時)

③ 大型土のう運搬・場内仮置

・場外搬出

④ 畦畔、法面復旧

必要に応じて除草及び固化剤散布作業を行う。

ほ場の表土削り取りと同様の厚さで、畦畔、法面の

表土を削り取る。削り取った土を大型土のうに詰め

る。

土砂を入れた大型土のうは不整地運搬車等を用い

て場内所定の仮置場へ運搬し、仮置きする。

場内所定場所に仮置きした大型土のうは、計画的に

場外搬出する。

畦畔、法面を、現場状況に応じた適切な工法を検討

して復旧する。

Page 23: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

82

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

a 除草及び固化剤散布

① 除草の作業手順等は、「Ⅳ.1.除草」を参照。

② 固化剤散布の作業手順等は「Ⅳ.3. 固化剤散布」を参照。

b 畦畔、法面表土削り取り

① バックホウは平爪バケットまたは法面バケットを装着し、人力はスコップ作業で削

り取る。

② 削り取った土砂はバックホウにより大型土のうに詰め込み、その場に仮置きする。

c 大型土のう運搬・場内仮置・場外搬出

① 仮置きした大型土のうはクレーン機能付きバックホウにて不整地運搬車等に積込

み、場内小運搬にて除染が完了した場所に仮置きする。

② 大型土のうの搬出作業手順は「Ⅴ.1.(2)除去土壌搬出」参照。

d 畦畔、法面復旧

① 除染を終えた畦畔は、従前の断面に復旧することを基本とする。

② 除染を終えた法面を、従前の断面形状に戻すか、あるいは削り取り後の形状を維持

するかについて、地元と調整のうえ決定する。

③ 従前の断面形状に戻す場合、粘質土の客土の入手が困難な場合は地元と調整を行い

地権者の承諾を得た上で除染後の近接ほ場の粘性土を集め、土羽部をバックホウ法

面バケットにて復旧する。削り取り後の形状を維持する場合は、土質、勾配等の法

面の安定性により保護工を検討する。(農地除染実証工事ではわら付き張芝を保護

工として採用)

イ 留意事項

a 畦畔、法面表土削り取り

バックホウによる削り取り工法はバックホウと人力の併用とするが、法面崩壊が懸念

される箇所ではその他の工法の導入を検討する。

比較的法長が大きい法面については、「Ⅵ.2.イ.a 路肩・法面表土削り取り」参照。

ほ場除染後に畦畔を施工する場合は、隣接するほ場にビニールシート、コンパネ等を

敷いて、ほ場の二次汚染を防止する。

b 畦畔、法面復旧

法面を従前の断面形状に戻す場合、時間をおくと雑草が繁茂するため土による復旧が

困難となる。

Page 24: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

83

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

a 畦畔、法面表土削り取り

平爪バケットまたは法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級):削り取

り用、大型土のう詰込用

スコップ

b 畦畔、法面復旧

畦畔及び法面の復旧については、粘質土の客土を用いることを原則とするが、粘質土

の客土の入手が困難な場合は地元と調整を行い地権者の承諾を得た上で除染後のほ

場内の表土を用いることができる。

法面バケットを装着したバックホウ(0.28~0.45m3 級)

地権者の意向または土質(砂質系)によっては、畦ぬり機を使用して漏水防止を図る。

【参考】

畦畔・法面の掘削機械には、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構と民間農業機械製造

会社により共同開発された「畦畔表土削り取り機、法面表土削り取り機」がある。

―農地除染実証工事における事例―

写真 70 畦の復旧 1

(法面バケット付きバックホウ) 写真 71 畦の復旧 2

(畦ぬり機)

Page 25: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

84

4.農地隣接林地除染工

○ 農地隣接林地とは、除染を行う農地と道路水路等を介して接する林地の総称とする。

○ 環境省が別途定める除染関係ガイドライン 16)等を参照して適切な工法により除染を行

う。

―農地除染実証工事における事例―

写真 72 作業状況 1 写真 73 作業状況 2

16)除染関係ガイドライン(環境省 平成 23 年 12 月) 第1版

Page 26: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

85

VII.除染効果の確認

○ 除染工事実施による除染効果を確認するため、空間線量率等の測定を行う。

○ 測定結果に基づく効果の確認は、農地と、水路、農道、畦畔・法面では、使用目的が

異なるため、異なる方法で実施する。

【 解 説 】

農地における除染効果の確認は、除染後の農地で作物を栽培することを踏まえ、土壌

の放射性セシウム濃度と空間線量率の値に基づき実施する。

水路、農道、畦畔・法面における除染効果の確認は、空間線量率の値に基づき行う。

◆農地の除染効果の確認

◆水路、農道、畦畔・法面の除染効果の確認

地区の除染後の農地の

平均的な値と比較

各筆の除染後の放射性

セシウム濃度(簡易測定)

と空間線量率を測定

地区平均値

と乖離した場

合は、関係者と

対応について

協議

客土工・地力回復対策

(必要に応じて)

地区で三筆の空間線量率

を測定(最終測定)

周辺の除染後の農地の

平均的な値と比較

除染後の空間線量率測定

周辺農地や

農道・水路の値

と乖離した場

合は、関係者と

対応について

協議

復旧工(農道、畦畔等)

Page 27: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

86

作業手順

① 農地では、各筆における農地除染後(各工法の最終工程完了後)に、各筆の土壌中の

放射性セシウム濃度(表層 15cm・5 点を混ぜ合わせ)及び空間線量率(地上1m・中

央 1 点)を測定する。土壌中の放射性セシウム濃度の測定は、客土前に実施し、速や

かに結果を得る必要があることから、簡易測定法(第 1 編 調査・設計編 Ⅲ.3 を参照)

による。

② 農地の放射性セシウム濃度及び空間線量率の計測結果が、地区の除染後の農地の平均

的な値と乖離した場合は、対応等について関係者と協議する。

③ 水路、農道、畦畔・法面の空間線量は、表 1 の位置、内容で測定する。

表 1 水路、農道、畦畔・法面の空間線量測定位置、内容

工種 測定位置 測定基準 適用

水路 水路中央部で、地上(水路底)

1cm及び1mで測定する。

・40mに1か所の割合で、除染後(堆積土砂除去

後)行う。

・水路底1cmでの測定は測定面に向けて行い遮へ

い体は用いない。 *水路、農

道 及 び 法

面 の 測 定

は、同一測

線上で行う

ことが望ま

しい。

農道 道路中央部で、地上1cm及び

1mで測定する。

・40mに1か所の割合で行う。

・地上1cmでの測定は測定面に向けて行うものとし

遮へい体は用いない。

法面

(山地・

崖面)

法尻、法肩及び中央部の3か所

で、地上1cm及び1mで測定す

る。山地及び崖面も同様に上

部、中央部、下部の3か所で、

地上1cm及び1mで測定する。

・40mに1か所の割合で行う。

・地上1cmでの測定は測定面に向けて行い遮へい

体は用いない。

畦畔 天端の中央部で、地上1cm及び

1mで測定する。

・ほ場整備後の農地(おおむね30m*100m)は、長

辺2か所、短辺1か所とし、除染後(削取り後客土

前)行う。

・ほ場整備前の農地では、長辺1か所短辺1か所を

原則とし、現場の状況に応じて適宜追加する。

・地上1cmでの測定は測定面に向けて行い遮へい

体は用いない。

④ 水路、農道、畦畔・法面の空間線量(地上 1m)の計測結果が、周辺の除染後農地の

平均的な値や、水路、農道の値と乖離した場合は、対応等について関係者と協議する。

⑤ すべての除染作業及び客土工が完了した後、地区の状況を確認するために空間線量率

を測定する。事前調査において土壌のサンプリングを行ったほ場(1 地区 3 筆)を対

象に空間線量率(地上1m・中央 1 点)を測定する。工事内容、除染工事前後の放射

性セシウム濃度及び空間線量率等を様式を定めて地元に報告する(農地除染実証工事

の報告様式例を別表2に添付する。)。

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87

―農地除染実証工事における事例―

写真 74 除染後農地の簡易測定状況(1m) 写真 75 除染後農地の簡易測定状況(1cm)

*遮へい体を用いている

【 参 考 】

農地除染実証工事における表土削り取り後の放射性セシウム濃度

※実証事業 5 地区、408 点の計測データ

図 18 表土削り取り後の放射性セシウム濃度

農地除染実証工事では作土層の放射性セシウム濃度が平均値から乖離した地点につい

て調査を行った。

また、これらは土壌の攪乱がある、地下水が高い(ほ場表面まで)などの地点が多かっ

たため関係者と協議し、必要に応じて補足的な削り取りを実施した。

193(47.3%)

70(17.2%) 48

(11.8%) 23(5.6%) 16

(3.9%)16

(3.9%)12

(2.9%)

30(7.4%)

020406080

100120140160180200220

地点数

Bq/kg

全408地点

平均値 1,180Bq/kg

Page 29: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

88

別表2

農地除染工事後の農家への報告フォーマット

農地除染では、工事後の農家への報告は、以下に区分して、それぞれ次頁の表 A~表 D の

フォーマットで行う。

・表 A 地区全体の報告フォーマット

・表 B 表土削り取りを実施した農地の報告フォーマット

・表 C 水による土壌攪拌、除去を実施した農地の報告フォーマット

・表 D 反転耕を実施した農地の報告フォーマット

Page 30: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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表1 

地区

全体

の報

告フ

ォー

マッ

(B

q/kg

)1m

高1m

表2 

表土

削り

取り

を実

施し

た農

地の

報告

フォ

ーマ

ット

当初

削り

取り

削り

取り

平均

厚さ

削り

取り

土量

施工

後放

射性

物質

濃度

※3

施工

後空

間線

量率

※2

(μ

Sv/

hr)

施工

後空

間線

量率

※4

(μ

Sv/

hr)

(m

2)

(cm

)(m

3)

(B

q/kg

)1m

高1cm

追加

削り

取り

工客

土量

土壌

改良

状況

削り

取り

平均

厚さ

削り

取り

土量

施工

後放

射性

物質

濃度

※3

施工

後空

間線

量率

※2

(μ

Sv/

hr)

施工

後空

間線

量率

※4

(μ

Sv/

hr)

(cm

)(m

3)

(B

q/kg

)1m

高1cm

高(m

3)

表3 

水に

よる

土壌

撹拌

、除

去を

実施

した

農地

の報

告フ

ォー

マッ

(m

2)

(B

q/kg

)1m

高1cm

表4 

反転

耕を

実施

した

農地

の報

告フ

ォー

マッ

(m

2)

(B

q/kg

)1m

高1cm

※1、

※2: 地

区毎

に3筆

で計

測。

※1:地

区内

の標

準的

なほ

場を

選定

の上

、1ほ

場5点

(ほ

場の

対角

線の

交点

1点

と、

交点

と各

頂点

(4隅

)と

の中

点4点

。乱

れが

ない

位置

を選

定。

)の

表層

から

15cm

の土

壌を

混ぜ

合わ

せ、

放射

性物

質濃

度を

測定

※2:ほ

場の

中心

にお

いて

地上

1m

高さ

で計

測。

※3:以

下に

示す

簡易

測定

法な

どで

計測

  

 (方

法1)放

射性

物質

濃度

を、

1ほ

場5点

(※

1に

同じ

)の

表層

から

15cm

の土

壌を

混ぜ

合わ

せて

測定

。( N

aIシ

ンチ

レー

ショ

ンサ

ーベ

イメ

ータ

ーに

よる

測定

を想

定)

  

 (方

法2)空

間線

量率

を、

1ほ

場5点

点(※

1に

同じ

)に

て測

定し

、5点

の平

均値

で評

価。

相関

式を

用い

て空

間線

量率

から

土壌

の放

射性

物質

濃度

を推

計。

※4:上

記の

(方

法2)で

測定

した

場合

に記

載。

水に

よる

土壌

撹拌

・除

去工

の排

出土

量に

つい

ては

、固

化材

を投

入し

て固

めて

いる

ため

、ほ

場の

土量

のみ

の把

握は

困難

施工

後空

間線

量率

※4

(μ

Sv/

hr)

地番

・筆

番面

積施

工後

放射

性物

質濃

度※

3施

工後

空間

線量

率※

2(μ

Sv/

hr)

施工

後空

間線

量率

※4

(μ

Sv/

hr)

地番

・筆

番面

積反

転耕

法の

区分

(1段

工法

、2段

工法

施工

後放

射性

物質

濃度

※3

施工

後空

間線

量率

※2

(μ

Sv/

hr)

(散

布し

た改

良材

の種

類と

量を

記載

施工

前放

射性

セシ

ウム

濃度

※1

施工

前空

間線

量率

※2

(μ

Sv/

hr)

施工

後空

間線

量率

※2

(μ

Sv/

hr)

地番

・筆

番面

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90

VIII.客土工

○ ほ場表土の削り取り後、客土を行う場合は以下の手順により復旧する。

○ 客土材を土取り場から搬入する場合と購入する場合がある。

【 解 説 】

客土工は次の手順による。

② 客土材小運搬

① 客土材の掘削・積込、

運搬(必要時)

③ 客土敷均し・表土整地

④ 土壌改良資材等の散布

(必要時)

⑤ 耕起

客土材を土取り場から搬入する場合、土取り場の安

全対策を行い、客土材の掘削・積込を行う。土取り

場から客土材を、各筆の入り口または仮置き場まで

運搬し、仮置きする。

ほ場の入り口や農道付近まで搬入された客土材を、

不整地運搬車等でほ場内に小運搬する。また、必要

に応じて工事区域付近で一時仮置きした客土材を

ほ場まで小運搬する。

場内小運搬された客土材を、敷均し、整地する。

必要に応じて、土壌改良資材等を散布する。

客土後のほ場を耕起する。

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91

(1)客土材の掘削・積込・運搬

○ 客土材の確保に当たっては、地元関係者の協力を得つつ、綿密な調整のもと選定する。

○ 客土材の必要量を土取り場で効率よく掘削し、運搬用機械に積み込む。

○ 採土前には安全性に十分配慮して、土取り場の安全対策を行う。

○ 採土後には、土取り場の安全な復旧を行う。

○ 土取場から一時仮置き地またはほ場までの運搬には、能率がよく、かつ、周辺への影

響が少ない手段を選択する。

○ 必要に応じて地区内に客土の仮置場を設置し、積み替えを行う。

【 解 説 】

作業手順等は次のとおり。

ア 作業手順

① 施工中の安全性に配慮して安全対策を行う。

② ショベル系掘削機械、ブルドーザ等により客土材を掘削し、運搬機械に積み込む。

③ 土取場からほ場までダンプトラック等により運搬する。

④ 運搬した客土材は、各筆の道路沿いに所定の量だけ置土していく方法と、所々に仮置

き場を設けて一時あずけしておく方法とがある。農地除染では、客土量が比較的少な

いのでほ場の乗り入れ口までの搬入が一般的である。

⑤ 土取り場の地形の改変に伴い、周辺地域の安全性(斜面崩壊、出水量の増加など)に

は十分な配慮を行い、必要に応じた対策(法面保護工など)を講じる。また、採掘許

可等の許可が必要な場合は、協議を行い許可を得る。

客土材の掘削・積込

・運搬(必要時)

客土材小運搬

耕起

土壌改良資材等の散布

(必要時)

客土敷均し・表土整地

Page 33: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

92

イ 留意事項

a 客土材の掘削・積込

搬入を予定する客土は、放射性物質濃度を事前に測定し、客土として搬入できるもの

であることを確認しておく。

客土の目的に適合する土性の土取場を選定するが、土取場にある土の全部が客土とし

て適しているとは限らないので、不適当な土を積み込まないように留意する。

石礫・根株等が混入しないよう選別して積み込む。

土取場は排水に常に留意し、施工機械特に運搬用機械の出入りに支障のないように留

意するとともに、乾燥した客土を搬入するようにする。

土取場は、掘削・積込作業の機械が十分に稼働できる広さを確保する。

切土高が高くなる場合は、災害防止に注意を払う。

客土材の土量は、運搬台数の把握と切土後の土取り場を測量し、その両面で確認を行

う。

b 運搬

土取場からほ場内まで一貫して運搬する方法が一般に経済的であるが、ほ場外とほ場

内で運搬機械を変える必要がある場合など、必要に応じて仮置場を配置し積み替える。

仮置き場を配置する場合は、ほ場内またはその近くに設けることが望ましい。しかし、

そのために地区内の道路や付帯構造物に支障を及ぼすような場合にはこの限りでな

い。

通過路線では、交通事故の防止に配慮する。

公道を使用する場合には、運搬道路の保全に努める。

客土はほ場内のすべての除染が終わった後実施することとしているが、現場条件によ

り、未除染部分が残る時点で客土を行う場合には、客土材の運搬等で二次汚染を生じ

ないよう注意する。

ウ 使用機材

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

a 客土材の掘削・積込

ショベル系掘削機:主に、パワーショベルまたはバックホウが用いられるが、バック

ホウは、地表面より低い所の掘削が多い場合に用いられる。

ブルドーザ及びトラクタショベル:ブルドーザで掘削及び押土し、トラクタショベル

で積み込む。土層が軟弱な場合には、直接トラクタショベルで掘削し積み込む。

Page 34: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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スクレーパまたはスクレープドーザ:これらは、掘削及び積込の外、運搬も行うこと

が可能な機械である。スクレープドーザは、シャトルモーション(そのままの姿勢で前

後進ができる)を特徴とするので、スクレーパで行う場合より土取場は狭くてもよい。

客土材の掘削及び積込用機械には、様々な土質の土の掘削が可能であり、また、トラ

ックへの積込も容易であるショベル系掘削機械を使う場合が多い。しかし、地勢また

は土質により、バケットエキスカベーターまたはバケットホイルエキスカベーター等

の連続掘削機を使う方が有利な場合もあるので、どの機械を用いるかを検討する。

b 運搬

ダンプトラックでの運搬が一般的である。(10t 積ダンプトラック)

仮置場で積み替える場合には、トラクタショベルまたはバックホウにより積み込む。

―農地除染実証工事における事例―

写真 76 土取り場の安全対策(立ち入り規制等) 写真 77 乗り入れ口に仮置き

Page 35: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(2)客土材小運搬

ほ場の入り口や農道付近まで搬入された客土材を、不整地運搬車等でほ場内に小運搬す

る。また、必要に応じて工事区域付近で一時仮置きした客土材をほ場まで小運搬する。

【 解 説 】

運搬経路は除染完了、未除染の区域を明確にしておき、二次汚染がないよう留意すること。

ア 作業手順

① ほ場の農道沿い等に積み下ろした客土を、バックホウで不整地運搬車等に積込み、

ほ場の奥側へ適宜積み下ろしていく。

イ 留意事項

客土はほ場内のすべての除染が終わった後実施することとしているが、現場条件によ

り、未除染部分が残る時点で客土を行う場合には、客土材の運搬等で二次汚染を生じ

ないよう注意する。

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

バックホウ(0.45m3 級)

不整地運搬車(4~11t 積)

客土材の掘削・積込

・運搬(必要時)

客土材小運搬

耕起

土壌改良資材等の散布

(必要時)

3 客土敷均し・表土整地

Page 36: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(3)客土敷均し・表土整地

場内小運搬された客土材を、敷均し、整地する。

【 解 説 】

ア 作業手順

① ブルドーザまたはバックホウで客土材を全面に均等に敷均して整地する。

イ 留意事項

着手前の測量結果に基づき均平作業を行う。

客土の施工は、現況の田面高及び削り取った厚さから設計値を算定して管理する。

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示

している。

ブルドーザ(湿地、超湿地)(10t 級超湿地)またはバックホウ(0.45m3 級)

―農地除染実証工事における事例―

写真 78 客土の敷均し 写真 79 客土の整地

客土材の掘削・積込

・運搬(必要時)

客土材小運搬

耕起

土壌改良資材等の散布

(必要時)

客土敷均し・表土整地

Page 37: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(4)土壌改良資材等の散布

選定された土壌改良資材等を散布する。

【 解 説 】

ア 作業手順

① 選定された土壌改良資材等をほ場に、均等に散布する。

② 土壌改良資材等と土との混合は、耕起と同時に行う。

イ 留意事項

散布量にむらが起こらないよう注意して散布する。

粉状の土壌改良材を使用する場合は、強風時には飛散が多いため行わない。

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

農用トラクタ(30PS 級)、ライムソワー

―農地除染実証工事における事例―

写真 80 土壌改良資材の散布

客土材の掘削・積込

・運搬(必要時)

客土材小運搬

耕起

土壌改良資材等の散布

(必要時)

客土敷均し・表土整地

Page 38: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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(5)耕起

客土と土壌改良資材等を混合しながら、破土・耕起を行う。

【 解 説 】

ア 作業手順

① 客土材の均一性を高め、耕起を行うにはディスクハローやロータリーティラーを用い

る。客土材の改良や在来土との混合が必要な場合は、それらの作業も兼ねて行う。

イ 留意事項

降雨後など土壌水分が多すぎると耕起作業に適さないので、ほ場条件が良いときに耕

起作業を行う。

ウ 使用機械

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

砕土・耕起:ディスクハローやロータリーティラー

農用トラクタ(30PS 級)

客土材の掘削・積込

・運搬(必要時)

客土材小運搬

耕起

土壌改良資材等の散布

(必要時)

客土敷均し・表土整地

Page 39: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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IX.地力回復対策

客土と合わせて土壌改良資材等の散布を実施しない場合、必要に応じて、地力回復対策を

実施する。

【 解 説 】

表土削り取り、水による土壌攪拌除去を実施した農地において、関係者が客土を希望しな

い場合が想定される。

反転耕、客土を行う場合の地力回復対策については、それぞれ反転耕、客土工に記載。

(1)土壌診断

必要に応じて地力が低下したほ場の土壌診断を行う。

【 解 説 】

土壌診断の必要性については、施工前に耕作者等の地元関係者との協議・調整に基づき判

断する。

ア 作業手順

① 除染後のほ場の土壌からサンプルを採取し、土壌診断を行う。

② 土壌診断のサンプル採取地点及び分析項目は、当該地域における普及指導センター

の指導に準拠する。特に、放射性セシウムの吸収抑制に関係の高い交換性カリウム、

陽イオン交換容量は必ず分析するものとする。

(2)肥料、有機質資材及び土壌改良資材の準備

土壌診断により土壌改良が必要な場合には、低下した地力の回復を図るために肥料、有機

質資材及び土壌改良資材を選定し、必要な施用量の算定を行う。

【 解 説 】

ア 作業手順

① 普及指導センターの指導により肥料、有機質資材及び土壌改良資材を選定し、低下

した地力の回復を図るために必要な施用量を算定する。

Page 40: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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② 肥料、有機質資材及び土壌改良資材の施用から営農再開までの期間を考慮し、施用

する肥料を選定する。

(3)散布

選定した肥料、有機質資材及び土壌改良資材を散布する。

【 解 説 】

ア 作業手順

① 普及指導センターの指導により選定した肥料、有機質資材及び土壌改良資材を適量散

布する。

イ 留意事項

散布量にむらが起こらないよう注意して散布する。

ウ 使用機材

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

農用トラクタ(30PS 級)

ブロードキャスターまたはライムソワ―

(4)耕起

散布した肥料、有機質資材及び土壌改良資材の飛散を防ぐため、耕起を行う。

【 解 説 】

ア 作業手順

① 散布した肥料、有機質資材及び土壌改良資材の飛散を防ぐため、農用トラクタで耕起

を行う。

② 除染後の農地土壌の均一性を高めるため、アタッチメントにディスクハローまたはロ

ータリーティラーを用いる。

イ 留意事項

降雨後など土壌水分が多すぎると耕起作業に適さないので、ほ場条件が良いときに耕

起作業を行う。

Page 41: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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ウ 使用機材

機械は以下のものが考えられ、これらの機械の中から、現場条件を勘案して適切な機械

を選定する。

なお、農地除染実証工事で使用した各機材の規格を参考として( )内に示している。

農用トラクタ(30PS 級)

ディスクハローやロータリーティラー

Page 42: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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X.除染工事施工管理

1.施工管理の基本構成

農地の除染対策工事の施工管理は、工程管理、出来形管理、品質管理により行う。具体的

な方法は、農林水産省土木施工管理基準を準用し、同基準に示されていない表土削り取り等

の施工管理は、農地除染実証工事の実績等を基に管理基準値を定める。

【 解 説 】

① 農林水産省土木施工管理基準に基づく施工管理の基本構成は、次のとおりである。

ア 工程管理

契約工期は、各工種の施工能力、施工内容及び数量、現場条件、施工時期、施工班編成を

基に算定した日数に、準備及び後片付けに必要な日数を加え設定している。

工事の着手段階では、契約工期を考慮し、工事の施工達成に必要な作業手順及び日程を定

めて、工程内容に応じた方式(ネットワーク方式、バーチャート方式等)により工程計画表

を作成する。

工事実施途中段階では、計画工程と実績を比較検討の上、工程管理の見直しが必要な場合

は、施工方法の変更、施工班編成の増強等の処置を講じるものとする。

イ 直接測定による出来形管理

工事の出来形を把握するため、工作物の寸法、基準高等の測定項目を施工順序に従い直接

測定(以下、「出来形測定」という。)し、その都度、結果を管理方法に定められた方式によ

り記録を行い、常に適正な管理を行うものとする。

ウ 撮影記録による出来形管理

出来形測定、品質管理を実施した場合または施工段階(区切り)及び施工の進行過程が確認

できるよう、撮影基準等に基づいて撮影記録し、常に適正な管理を行うものとする。

エ 品質管理

資材等の品質を把握するため、物理的、化学的試験を実施(以下、「試験等」という。)し、

その都度、結果を管理方法に定められた方式により記録し、常に適正な管理を行うものとす

る。

Page 43: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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2.出来形管理

(1)直接測定による出来形管理

施工数量及び施工品質等の出来形を確認するため、直接測定による出来形管理を実施す

る。

【 解 説 】

工事の施工管理では、施工数量及び施工品質を示す指標となる施工精度を直接測定により

確認する。

農地除染実証工事では、農林水産省土木施工管理基準に示されている共通工事、ほ場整備

工事、農用地造成工事等の工種については、同基準の基準値、測定規準を準用し、同基準に示

されていない農地除染実証工事における実績を基に示す除染工事特有の管理基準値は下表の

とおりとした。

表 2 農地除染工事における出来形管理の方法及び管理値

工種 項目 管理基準値

(mm)

(参考)

規格値(㎜) 測定基準

摘要

固化剤散布 散布量(w)

設計値以上 1筆ごと

表土削り取り

(農地・畦畔) 厚さ(h) +30、-0 +40、-0

10a 当たり 3 点(農地)

10a 当たり 2 点(畦畔)

ただし、地区全体平

均値は、管理値+20mm

とする(現況状況等

により管理値+30mm

とする。)。

客土(農地) 厚さ(h) +100、-35 -50 10a 当たり 3 点(農地)

管理基準値及び規格

値はほ場整備工事基

盤造成表土整地引用

畦畔復旧 幅(B)

高さ(h)

+100、-35

+100、-35

-50

-50 10a 当たり 2 点(畦畔)

管理基準値及び規格

値はほ場整備工事畦

畔復旧引用

表土削り取り

(農道) 厚さ(h) +30、-0 +40、-0

施工延長 50mにつき 1か

所の割合で測定

表土削り取り(農

地・畦畔)に準ずる。

農道復旧(砂

利道)

幅(B)

厚さ(h)

+150、-100

+30、-30

-150

-45

施工延長 50mにつき 1か

所の割合で測定

管理基準値及び規格

値はほ場整備工事道

路工(砂利道)引用

水による土壌

攪拌・除去 耕起深さ(h) ― 設計値以上

直接測定(h)

ほ場ごとに1か所

反転耕 反転深さ(h) ― 設計値以上

つぼ堀による直接測定

(h)

10a 当たり 3 点(農地)

土壌改良資材

散布 散布量(W) ― 設計値以上 1筆ごと

Page 44: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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-農地除染実証工事における事例-

出来高管理の方法の補足として、農地除染実証工事の事例を以下に示す。

ア 表土削り取り(農地、畦畔)

削り取り厚さの規格値は 50mm として施工した(農地除染実証工事の施工結果の解析の結果によ

り、「表 2 農地除染工事における出来形管理の方法及び管理値」では規格値を 40mm としている。)。

ほ場整備後の農地(おおむね 100m×30m)を対象とした工区では、以下模式図に示すとおり、

農地は 10a 当たり短辺方向に 3 点、畦畔(天端中央)は長辺 2 点、短辺 1 点で測定した。

図 19 ほ場、畦畔の出来形測定箇所

ほ場整備未実施の工区における畦畔の測定地点は、基本的に長辺、短辺ともに 1 点とし、現況

状況に応じて適宜追加した。

イ 客土(農地)

客土厚さは、現況の田面高及び削り取った厚さから求めた厚さを設計厚(T)として管理した。

ウ 畦畔復旧

測定地点は、表土削り取り(畦畔)に同じ。

エ 水による土壌攪拌・除去

耕起深さ(湛水後の土壌攪拌の深度)は、事前に代かき機の代かき爪の高さを測定することで

管理した。

オ 反転耕

反転深さの測定と合わせて、施工効果の確認のため、表層の反転後における分布位置(頂部、

底部の高さ)及び反転角度の測定も行った。

農地の測定点

30m

畦畔の測定点

100m

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(2)撮影記録による出来形管理

施工状況や竣工後に確認できない不可視部分の施工数量及び施工精度等の品質は、写真撮

影の記録により管理する。

【 解 説 】

竣工検査時に確認できない不可視部の出来形管理は、写真の撮影記録により出来形管理を

行う。農地除染工事では、「農林水産省土木施工管理基準、別表第 2 撮影記録による出来形

管理」の共通工事、ほ場整備工事、農用地造成工事等の撮影基準及び撮影箇所を適宜準用する。

Page 46: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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3.品質管理

農地除染工事に用いる資材等の品質管理は、「農林水産省土木施工管理基準、別表第 3 品

質管理」に準じて実施する。

【 解 説 】

農地除染工事に用いる資材の品質管理は、「農林水産省土木施工管理基準、別表第 3 品質管

理」に準じて実施する。農地除染工事で使用する材料には表 3 のようなものがあり、参考規

格を示す。

表 3 農地除染工事で使用する材料と参考規格

工事の段階 使用する材料 参考規格

汚染土壌や刈草の保管 耐候性大型土のう 耐候性大型土のう協会認定品

表土削り取り 固化剤 -

水による土壌攪拌・除去 凝集剤、固化剤 -

反転耕 吸着剤 -

客土 客土材 -

肥料、土壌改良材資材等 肥料取締法、地力増進法

仮仮置き場 遮水シート 日本遮水工協会規格等

-農地除染実証工事における事例-

農地除染実証工事で使用した材料の機能と具体名称を、参考として表 4 に示す。

表 4 材料の使用例

材料 具体名称 機能

固化剤

マグネントⅢ(マグネシウム系) 作土の固化

デナイト(マグネシウム系) 作土の固化

セメント、生石灰 汚泥の固化(水による土壌攪拌・除去)

凝集剤 PAC(ポリ塩化アルミ) 浮遊汚泥のフロック形成、沈降促進

高分子凝集剤(無機汚泥用) 浮遊汚泥フロックの粗大化、沈降促進

吸着剤 ゼオライト 作土中の放射性セシウム吸着

客土 砂質土(山砂)、粘質土 耕作土壌の補充

土壌改良資資材 炭酸カルシウム 酸性土壌の調整

遮水シート 合成樹脂系遮水シート 大型土のう保管場所の遮水

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-農地除染実証工事における事例-

農地除染実証工事における施工管理方法の事例を以下に示す。

ア 表土削り取りの削り取り厚さ測定

※農地除染実証工事では、表土削り取りにおいて以下の測定を行い、第1、第2及び第3について相

関関係を求めている。

第1.定規による表土削り取り厚さ直接測定(h)

1)測定頻度:農地 10a 当たり 3 か所、畦畔 10a 当たり 2 か所

第2.標高測定による表土削り取り厚さ直接測定(V1,V2)

1)測定頻度:農地 10a 当たり 3 か所、畦畔 10a 当たり 2 か所

第3.土量から表土削り取り厚さを求める方法(土量換算)

1)測定頻度:農地 3 筆(1ha 程度)について測定

2)試料数:一筆ごとに 5 試料

3)試験方法

①1 筆ごとの面積を算定

②対象土壌の乾燥密度を求める。

③削り取った土壌の含水比を求める。

④大型土のうに詰めた土壌の重量(湿潤重量)を測定し、筆ごとに集計。

⑤表土削り取り厚さを①~④のデータから算定

(参考:算定式)

表土削り取り厚さ(T) (cm)=湿潤土量④(ton)÷(1+③)÷乾燥密度②(ton/m3) ÷面積①(m2)×100

農地除染実証工事では、上記3方法の相関関係を確認の上、標高測定による削り取り厚さ直接測

定を管理値としている。

イ 表土削り取り作業におけるオペレーターの目標

削り取り厚の施工管理は、最低削り取り厚を確保しつつ、処分土量の低減を図るため極力余掘

が少なくなるよう努める。削り取り厚のオペレーターの目標を以下の3とおりとする。

①削り取り範囲の比較的低位部に、設計最低削り取

り厚さを人力による壷掘りで 5m ピッチ程度に設

けて、その底面をオペレーターの目標とする。

写真 81 オペレーターの目標①

Page 48: (6)沈殿土壌の固化 【 解 説 】除染等業務特別教育テキスト、厚生労働省労働衛生課編、p118 64 3 .反転耕 本手法はプラウ耕により土壌中の放射性セシウム濃度が高い表層と濃度が低い下層土

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②削り取り範囲の比較的低位部に、鋼板を設計最低

削り取り厚の深さに掘り込んで配置する。これを

5m ピッチ程度に設けることにより、段差を明示

するとともに、バケットの底部を接触させて目標

高さとする。

③削り取り範囲の比較的低位部に、ピンポールを 5m

ピッチ程度に設置し、その周囲を設計最低削り取

り厚さで人力により壷掘りし、オペレーターの目

標とする。

写真 84 削り取り厚さを確認する作業員の配置

ウ 不陸整正作業におけるオペレーターの目標

ローラによる不陸整正は、粉じんの巻き上げが起きないよう、最低速での1回走行を基本とす

る。不陸整正後の均平度は目標を設けない。

写真 83 オペレーターの目標③

写真 82 オペレーターの目標②