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ソーシャルワーク演習Ⅱ 第2回 「人を理解する」 神戸医療福祉大学 藤田益伸

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ソーシャルワーク演習Ⅱ第2回

「人を理解する」

神戸医療福祉大学

藤田益伸

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演習1:小学校5年生のA君の理解(p16)

•小学校5年生のA君が学校に行かなくなり、家にひきこもるようになった。

• A君がなぜ学校に行かなくなったのか、その原因を考えてみよう。

(正解があるわけではない。あなたが、どのように考えるかということに意味がある)

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解説(例1)

•他の子ども:クラス生徒のいじめが原因

•近所の人:両親から成績のことでひどく叱られ、もっと勉強するように強く言われ、そのことが原因で学校に行かなくなった

•心の相談員:発達段階に伴う精神的課題に直面し、その未熟な性格ゆえに対処できなく、ひきこもりという非社会的問題行動化するに至った

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解説(例2)

•家族相談者:父親はアルコール依存で、酔って帰宅することが多く、その父親と母親は、A君の目の前で頻繁に喧嘩し、その夫婦関係にA君は巻き込まれ、家族葛藤に耐えられず、学校に行かなくなり、家にひきこもるよういなったと考えられる

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解説(例3)

•父親が以前勤めていた会社の同僚:経済状況の悪化から、父親は会社のリストらにあい、失業中である。母親は病気がちで病院に通い、医療費がかさんでいた。A君の給食費を払うことも難しくなっていた。

•それを苦にしたA君は、学校にいくことを嫌がるようになった。家族の経済困窮がA君が学校に行かなくなった原因ではないか?

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多様な考えで人を理解する

(先の演習1について色々なシチュエーションを想定できる能力が大切である)

•人を理解することは1つではなく、多様な考えが可能である

•人を理解する。人の問題の原因を特定するとき、その正解は必ず1つでなければならないのか?

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クライエントを理解する(p18)

•M.リッチモンド「社会診断」

•(前略)すべてのタイプの援助に共通のソーシャル・ケース・ワークの方法と目的が、かならず必要である

•社会診断(Social Diagnosis)

•診断過程(Process)

→次項で説明

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クライエントを理解する(p18)

•社会診断(Social Diagnosis)•そのクライエントの社会状況とパーソナリティに関して、可能な限り正確な理解をしようとすること

•診断過程(Process)•探索、つまり、事実を集めることから、その過程は始まり、引き続いて、事実の詳しい検討と比較を行い、最後に社会的困難に関する説明と理解が行われる

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演習2 専門家による原因の理解• 高速道路で起こった2台の車の衝突の原因について調査する。

• 次のスライドから、「4人の専門家の原因調査の考え」が、原因調査者1~4として、説明した。

• 「4人の専門職名」を順番を変えて列挙した。

A:運転手に面接した心の相談員

B:自動車を組み立てる技術者

C:道路建設の専門家

D:交通巡査

原因調査者1~4は、A~Dのどの専門職でしょうか?

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原因調査者1

•そうですね。これまでに何度となく、この路面は高速道路として使うには貧弱だと言ってきました。濡れると、とても滑りやすくなるのです。今、それを証明する事故が、また1つ起こったのです。

•もし、その忠告がいれられて路面が直されていたならば、路面は事故が起きたときほど滑りやすくなっていなかったでしょうから、ほかの事情が同一であったとすれば、事故は起こらなかったでしょう。

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原因調査者2

•運転手のどちらかが、交通規則のどれかを犯したのである。その交通違反の行為を取り締まることが必要である。

•運転手は、交通規則を犯し、その規則違反が衝突の原因である

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原因調査者3

•その運転手が不安の状態にあった、すなわち、運転手は自分の悩みにすっかり気を取られていたので、交差点での別の車の接近に十分な注意を払うことができなかった。

•その人のかき乱された心の状態が衝突の原因である

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原因調査者4

•どちらかの車に構造上の欠陥があったのではないか。例えば、一方の車のブレーキ・ライニングが摩滅していたことも考えられる

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演習2 専門家による原因の理解• 高速道路で起こった2台の車の衝突の原因について調査する。

• 次のスライドから、「4人の専門家の原因調査の考え」が、原因調査者1~4として、説明した。

• 「4人の専門職名」を順番を変えて列挙した。

A:運転手に面接した心の相談員

B:自動車を組み立てる技術者

C:道路建設の専門家

D:交通巡査

原因調査者1~4は、A~Dのどの専門職でしょうか?

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演習2 回答

1. C:道路建設の専門家

2. D:交通巡査

3. A:運転手に面接した心の相談員

4. B:自動車を組み立てる技術者

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専門家の視点とは(p21)

•専門家は、専門家の視点である「専門性」に基づいて、人を理解する者

•ただし、

•1つの原因だけを、唯一の原因として選び出すことはできない

•多様な専門家の「視点」があってよい

•多様な視点から人を理解する、そして人にかかわることが必要である

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個人の理解と環境の理解(p24)

•M.リッチモンド「ソーシャル・ケース・ワークとは何か?」

環境

個人

B.環境の理解

A.個人の理解

D.間接的はたらきかけ

C.直接的はたらきかけ

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人を理解するためのパラダイム(p25)

•かつては、たった1つの治療的パラダイムから理解しようとした• 精神分析に基づく診断主義ケースワーク

•現在は、多種多様な理論的基盤に立って人を理解しようと努める•行動主義、心理社会療法、課題中心療法、家族療法、…

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人を理解するための面接(p26)

•構造化された面接•あらかじめ<場所><時間>が決められている相談

•一般的に相談室や面接室に、クライエントがやってくる

•一対一の対面法による会話が主流

•相談を「約束」することによって、ワーカー・クライエント(契約)関係が成立する

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人を理解するための面接(p27)

•構造化されていない面接•あらかじめ<場所><時間>が決められていない相談

•廊下での突然の話し合い、病室での会話、電話の応対など

•クライエントの家庭や地域に出かける(アウトリーチ)

•構造化されていない面接の方が、より高い専門技術を必要とすることがある

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クライエントを理解するための面接(p28)

•ここでは、「基本形」としての構造化された面接を想定した演習を行う。

•あなたはソーシャルワーカーである。

•クライエントが「私は勉強できなくて、悩んでいます」と言う。

•「人を理解する」演習として、あなたはどのように対応するか、セリフを考えてください

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内容のレベル1)私は勉強ができません

感情のレベル2)悩んでいます

・思考のための質問(現在)「どんな科目の勉強ができないのですか」

・感情に対する共感(現在)

「悩んでいらっしゃるのですね」・内容に対する質問(過去)

「いつから勉強ができなくなったのですか」

・内容に対する指示(未来)「どうしたら勉強ができるようになるか、一緒に考えてみましょう」

「私は勉強できなくて、悩んでいます」

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「他者」と「自己」の理解の枠組み(p32)

過去 現在 未来

内面気持ち行動考え欲求

外面環境・状況

※全体的・包括的に人を理解する

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第2回目の授業の課題

•あなたが、今よりもより深く「人を理解するため」に、何をしていけばよいでしょうか?

• 提出期限:5月21日(木)

23時59分59秒まで(厳守)

• 文字数:200字程度 書式:自由

• 提出期限を過ぎたレポートも受け取りますが、評価はマイナス評価とします

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課題の提出方法

•演習は学生ごとに担当の先生が異なります。

•課題・レポートは、第1回目の授業時に各担当の先生から、指示を受けた通りに提出してください。