Upload
others
View
6
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
心エコー図による疾患別にみた心房細動における左室収縮状態
古 川 啓 三松久保晴生渡 辺 俊 光朝 山 純勝 目 紘 *垣 内 孟 * *国 重 宏遠 藤 直 人松 浦 徹伊地知浜夫
Journalofcardiography6:551-560,1976
E汀ectsofat7rialfibrilla-tiononleftventricular
perf()rmanceofval‘iousdis(E?21sedhearts:Echocar-diographicstudy
Keizo
Haruo
Toshimitsu
Jun
Hiroshi
Takeshi
Hiroshi
Naoto
Tohru
Hamao
FURUKAVVAMATSUKUBOXVATANABEASAYAMAKATSUME*KAKIUCHI**KUNISHIGEENDOMATSUURAIJICHI
Su”lmaryLeftv(ごntricularend-diastolicdimension(Ddyejectionfl-action(EF)andnleanべ7elocityof(こircum一
良「e”tialfibershortening(mvcf)xvereechocarcliograPhicallym(?21suredin13Patientswithatrialfibrilla’tioll.Foreachbeat,changesinEFandmvcfwerells;sessedinrelationtothechangeinDdandthex711riationoftheratioof“r)re-1)I-eceding”to“I)l‘eceding”RR㎡tel‘va1(PPI/PI)。
lncasesofnormalleftventricularwaHthickness,highlysignificantPositive(刀I-relationsへvereob-tainedbetweenthebeat-to-beatchangeinDdand(;()rresPondingakerationinEF.0nthecontral″yjncasesofth(2thickenedleftv(2ntricularwa11,thesecorrelationsxverel-(?1ativelyPoor.Sig❹ficantinversecor-relationsbetweenPPI/PlandthechangeinEFMでrealsoobtainedandnomarkeddi仔e,rencewasdemon-stratedbetweenthedegreeofthicknessoftheleftventl-icularwall.ThesimilarresultwasobtainedbetweenmvcfandDd。
ltissuggestedthatinnuenceofPreloadonbeat-to-beat211terationsinleftv(2ntricularPerfornlanceislessimportmtillcases(丿thickenedv(jntricularwallandtheseresultsmaybederivedfromimpairmento臼eftv(?ntricular(1iastolicd汝ensibilitv.
京都府立医科大学第二内科京都市上京区河原町広小路(〒602)
*京都府立洛東病院**西陣病院
TheSecondDepartmentoflnternal!Vledicine,KyotoPlrefecturalun沁ersityofxledicine,Kaxvaranlachi,Kanligyo-ku,Kyot0,602*KyotoPrefecturalofHospitalofRakuto**NishijinHospital
- 5 5 1 -
古 川 , 松 久 保 , 渡 辺 , 朝 山 , 勝 目 , 垣 内 , 国 重 , 遠 藤 , 松 浦 , 伊 地 知
Keywords
atrialnbrillarioneJectlonfractlon
nleanvelo(jtyofcircumferentialnbershortening
は じ め に心房細動では,4今心拍毎にその左室収縮状態が
異なり,これらを適確にとらえる方法には困難を伴い臨床研究は限られていた.1)2)最近出現した心エ==1-図(UCG)法やインピーダンス法は,非
観血的かつ連続的な心機能評価を可能とし,これらの方法を用いた心房細動についての研究が行われている.3)4)今回私どもはUCG法を用い,各種
心房細動例につき心機能のよい指標とされている左室駆出率(EF),平均左室内周短縮速度(mvcf)
を各心拍毎に求め,これらの心周期による影響について検討した.
対 象 と 方 法Table1に示すように,心房卸l動患者13例
(男子6名,女子フ名)を対象とした.平均年令は60.1才であった.基礎疾患としては特?ill性心
房細勁(Lone)2例,虚lfl1性心疾患(IHD)2例,
123斗567890123
1111
心⊇町お巴昌匹 ににこヅ
卯94916670994斗3
A4468567656743
--一 一 - 一 一
- 5 5 2 -
-
Lone:loneatrialfibril】ation,IHD:ischemicheartdi!lease,HHD:hypertensi,・eheartdlli疸1翁痢白三R:mitral
reslurgitation,XIS:nlitralstenosis,Ai:mildaorticregurgitation.
Digitalis一
一
心IFMMMFFMFMFMFF’
}」」ゴヨEョレー
(十)(十)(十)ト)(十)(-)jjjj
一一十÷
ぐぐくぐ(-)(十)(+)
H
112222222222つ`
竺
Tablel.Clinicaldata
心エコー図による疾患MI」にみた心房細動における左室収縮状態
12
13-
フQりnj一
一
一
一
一
つ
`
1
1
1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.0
1.1
1.2
1.0
1.2
D d
(cm)
5.3-6.1
斗.5-5.4
斗.2-5.1
3.9-4.4
3.9一耳.5
4.1-5.0
5.1-5.7
3.7-4.0
斗.8-5.3
4.6-5.0
5.4-5.9
2.6-4.5
3.1-4.8
m v c f
(circ./sec)一 一
0.35-1.07
0.63-1.26
0.78-1.65
0.65-1.16
0.75-1.77
0.95-1.50
0.58-1.28
-
1.03-1.74
1.0牟-1.46
0.94-1.41
0.46-2.06
0.59-1.33_.
Preced.RR
(nlsec)一一
450-1580
515-1285斗95-1835
500-1780540-1870
470-1160530-1150
570-1170
440-1300
560-1900570-1380420-1290
370-1260
- 5 5 3 -
-一一2卜58
42-7745-82
28-6853-86
38-7436-71
24-58
31-78
45-8555-7829-87
26-70一一一一
DDR:【jiasto】icdescentrate,LVPVVT:leftventricularwallthickness,Dd:end-cliastolicdimension,EF:eJectionfraction,mvcf:nleanvelocityofcircumferentialnbershortening,Preced.RR:precedingRRinterval.
川 9 9丿旧
㈲0011
EF(%)
LVPXVT
Table2.Rangeofmeasuredvalues
そ れらを連続する2心拍で比較し,先行心拍のそれらに対する後続心拍の増減をパーセント表示しJDd,jEF,jmvcfとした.また先行RR時間
(PI)に対する先々行RR時間(PPI)の比をPPI/
Figurel.UCG,ECG,PCGandcarotidpulseinatrialfibrillation.
E)campleofleftventricularechogramrecordedsimultaneous】ywith(?kctrocardio町am,phonocardiogranlandcarotidpulseatpaperspeed100mnl/sec.
Ds:end6ystolicdinlension,LVET:leftventriculareJectiontinle.
にCase8を除き,頚動脈波より左室駆出時間(LVET)を求め,170rtuinら6)の方法に従い平均ノこ
室内周短縮速度(mvcOを求めた.上記方法で各心拍のDd,EF,mvcfを求め,
Case
123耳56’/890111
D D R
(cnl/sec)-
18.5
13.019.3
7.78.9
5.15.1
3.2
10.5
8.1
古 川 , 松 久 保 , 渡 辺 , 朝 山 , 勝 目 , 垣 内 , 国 重 , 遠 藤 , 松 浦 , 伊 地 知
PIとして求め,各症例につきjEF,jmvcfとjDd,jPPI/PIとの相関関係につき検討し,さ
らにjEFとjDd,PPI/PIにつき,またjmvcfとjDd,PPI/PIにつき偏相関係数を求めて検討
した.一方,左室壁厚(LVPWT),僧帽弁拡張期後退
速度(DDR)を計測し,上記相関におけるこれらの影響についても検討を加えた.
成 績Table2に各症例におけるDd,EF,mvcf,RR
時間の実測範囲,およびDDR,LVPWTを示した.Ddの変動範囲は,HHD,MR(Case5~11)では小さい傾向を示し,MS(Case12,13)では
●
●
♂ ● ゛
0
CASE4IHD
r=一〇.83
pく0.01
10Z
10Z
& 1 ゛ 4
0~ ● 一 一 ● s
1
△Dd
●●
● ● W 戸 〃 ●
●●
PPI/PI
2●
大きい傾向を,Ljone,IHD(Case1~4)では中間の変動を示した.EF,mvcfの変動範囲は,基礎疾患別にみた場
合 明 ら か な 差 は 認 め ら れ な か っ た . R R 時 間 はM S で は 若 干 短 い が , そ の 他 の 症 例 で は 大 部 分500-1500msecに分布した.LVPWTはHHD(Case5~8)で,その他の症例
に比し増加傾向を示した.一方DDRは,MS,HHDの1例(Case8)を除き極端な低下例は認
めなかった.Figure2は,横軸にPPI/PI,縦軸にjDdを
とり各疾患の代表例を示した.IHD,MSではPPI/PIの変化に従いjDdは±10%内外の範囲
で変化し,高い相関を示した(r==-0.83,-0.87).
0
0
cAsE6Hln
r一一0.62
Pく0.01
C A S E O M S
r--087
pく001
10Z
● ●
ムDd
M i ● ● ● ● ●
ムDd
● ●
●●●
●●
PPI/Pf
2
PPI/PI
2
Figure2.CorrelationsbetweenthechangeofDdandPPI/PlinCase4,6,11and13.
Largevariationof∠jDdincaseofIHDandMSincomparrisonwithjDdincaseofHHDandrVIR.
- 5 5 4 -
10Z
●1
0- ・
1
S10Z
. 「
r・
10Z
S1・・゜O°
- `
CASE3IHD
rs0.97
pく0.01
21Dd-20Z
・
●
50Z
25
AEF
●
●● ●
●@s
lm
111…・
-25
-51〕Z
CASE6H11D
rs0.64
pく0.01
20Z-10Z
心エコー図による疾患SIにみた心房細動における左室収縮状態
CASEgMR
rz0.72
pく0.01
0 1 0Z - 1 0ZS
50ZCASE13MS
r °0.91
p<0.01
aDd- 1 ←10Z-15Z
25
△EF
40-♂一″・・″
● ●
-25
-50Z
- 5 5 5 -
HHD,MRではPPI/PIに対するjDdの変化は
± 2 % 以 内 で あ り , そ の 相 関 も 低 か っ た ( r = -0.62,-0.08).Figure3は,横軸にjDd,縦軸にjEFをと
り両者の関係をみたものである.各疾患の代表例はともに高い相関(r=0.97~0.64)を示したが,HHD,MRではIHD,MSに比しその相関は若
干低い傾向を示した.他方,PPI/PIとjEFとの
関係についてにFigure4示したが,jDdとJEFとの相関関係に比し,全体的に両者の相関は低下したが,疾患による差は認められなかった.Figure5,6はjDdとjmvcf,PPI/PIとjmvcf
との関係につき各疾患の代表例を示したものである.EFの場合(Figure3,4)と同様の傾向を示
したが,相関係数はいずれもEFの場合に比べ低
下した.Table3は個々の症例におけるJEFとJDd,
PPI/PIの,またjmvcfとJDd,PPI/PIの偏相
関係数表である.jEFに関してはLone,IHD,MSの6例中5例がPPI/PIよりJDdと高い相
関を示した.HHD,MRの症例ではそれぞれ両者の相関に
明らかな差を示したものはなく,Case6は逆にjDdよりPPI/PIと高い相関を示した.一方
15Z
Figure3.Correlationsbelweenthebeat-to-beatchangeinDdandthecorrespondingaheration
inEFinCase3,6,9and13.
Good(;()rrelationswereobtainedinancases,howeverthesecorrelationsxvererelativelypoorincasesofHHDandMR.
4
÷ こ・ &
行RRだけでなく先々行RRを重視する報告もあり,8)9)一定していない.またこれらの因子の各心
拍の収縮に対する関与の程度は一定ではなく,基礎疾患により異なることが示唆されているが,1o)左室流入障害を特徴とする僧帽弁狭窄症を中心として弁膜症を対象とする報告は多い1)7)11)が,IHDやHHDを対象とする詳細な研究は少ない.3)12)
本研究ではIHD,HHDを基礎疾患とする心房細動例を主な対象として,各心拍毎のEF,mvcfの変化に対するPreloadとしての拡張終期径,Ddの変化と心周期の変化,PPI/PIとの関係につき検討した.
- 5 5 6 -
古 仏 松 久 保 , 渡 辺 , 朝 山 , 勝 目 , 垣 内 , 国 重 , 遠 藤 , 松 浦 , 伊 地 知
C 4 S L 3 1 H D
t= - 0.82
ロ く 0 . 0 1
0
CASEgMR
r一一0.75
pく0.01
0
Figure4.Negative
50Z
●●’:}
1
・・
50Z
堅
50Z
-50Z
iEF
JSZ・l “゛.
4EF
●●● I會・..
PPI/PI
2
PPI/PI
●゜2
C A S E 7 H H D
r= - 0.80
p < 0 . 0 1
0
CASE13MS
T一一0.72
pく0.01
0
50Z
’ j ・
.jsf
●魯
-50て
50Z
S ’ ・
-50Z
△EF
一
●
AEF
4 。 。
●●
PPI/PI
2
PPI/PI
2
CorrelationsbetweenPPI/PlandthechangeinEFinCase3,7,9and13.(ご()rrelationswerealsogoodina11(ごases,butnomarkeddi汀erencebetweenthesecaseswas
demonstrated
Jmvcfについコごは,MRの1例を除きPPI/PI
よりjDdと高い相関を示すものが多く,疾患による明らかな差は認められなかった.
考 案
心房細動では各心拍毎にr)1’eload,・11Fterload,cyclelengthが変化し,これらの変化がその後の
収 縮 に 影 響 を 及 ぼ す こ と は よ く 知 ら れ た 事 実 で あ
る.なかでもI)1‘eloadはFrallli-Starlingの機構を
介 し て 各 心 拍 の 収 縮 状 態 に 密 接 に 関 与 し て い る と
言われている.1)7)他方cy(2lelengthについては,
特にposte)ctl’asystolicpotentiationと関連して先
CASE4IHD
r-0.87
Pく0.01
j1Dd
15Z
50Z
@
一
・
一
-50Z
25
-25
乙mvcf
SIII
0
50Z △mvcf
1
・・・I
心エコー図による疾患別にみた心房細動における左室収縮状態
△mvcf
llI
010Z-20Z
- 5 5 7 -
が低下したと考えられる.
肥大心における左室拡張障害,あるいはcom -Plianceの低下は急速流入期より存在し,洞調律の症例では心房収縮によりこれを代償していると
されている.13)14)このことは肥大の存在する心房
細動例では,左室の拡張が障害され,1)lreload,即ちFrank-Starlingの機構が有効に働けないことを示唆する.しかし一方,左室拡張障害あるいはcomPlianceの低下は,左室壁厚や左室重量とは
関係せず,むしろ虚血や線維化の程度に比例するとの報告がある.15)16)この点につき,私どもも心
電 図 と の 対 比 を 行 っ た が, 特 に 明 ら か な 関 係 は み
25
50Z
CASEgMR
r`0.55
pく0.01
ADd
0 ’ 1 0Z - 10ZZ
:
ISゆf`″’
り/』・
50Z
EFの変動は,一般的には1)reloadの変動と高
い相関を示したが,左室壁肥厚例ではこれら両者の相関は低くなる傾向を示した.他方EFの変動
とPPI/PIとの相関はすべての症例で1)reloadの変
動との相関よりも低くなったが,疾患による明らかな差は見出せなかった.しかし,偏相関係数よ
り検討すると左室壁肥厚例でPreloadより高い相関を示すものも存在した.このことはFigure2に示すようにDdの変動幅が小さかったことによるもので,これらの症例での左室拡張障害に由来
す る 所 見 で あ る と 推 定 さ れ る . ま た M R で は ,逆流量を含めてEFを算出したため,同様に相関
CASE5liHD
r °0.55
pく0.01
25
jDd一 丿 ← 』 .
15Z -10Z.s
1・一
-25
50Z
Figure5.CorrelationbetweenthechangeinDdandthecorrespondingchangeinmvcfinCase
4,5,9and13.
Relativelygoodco】-relationswereobtainedincasesofIHDandlx/IS,buttheywerefairincasesofHHDandMR.
古 礼 松 久 保 , 渡 辺 , 朝 山 , 勝 目 , 垣 内 , 国 重 , 遠 藤 , 松 浦 , 伊 地 知
CASE3llU】
r・-0.75
pく0.01
CASEIIMR
r一一0.49
pく0.01
50Z
●●
rこ
-50Z
●●●.♂
で
-50X
50Z
ll一
一
S
I
・
Zxmvcf
●S
●●
PPI/PI
S●
●
CASE5B町)
r一一0.48
P(0,01
50zl△mvcf
, 。 ’ P P I / P I→ 2 - 4. ゜ j ゛ 。 ゛ ゛
NO
- 5 5 8 -
-
mark:p<010j,↑:p<tj.05,↑↑:p,rlotsignificant.
∠IDdvs
jEF一一0.80
0.86
0.950.69
0.61
0.2吽0.810.63
0.90
0.390.32十〇.54
0.83-
一 一 ・
一 一
-0.45
-0.32↑
-0.31↑
- 0 . 1 7 廿
-0.32↑
-0.08↑↑
-0.67
一
一0.57
-0.73
-0.66
-0.42
-0.45-
PPI/PlvsJmvcf
-
- 一 一
jDdvs∠lmvcf
-
0.56
0.460.78
0.650.43
0.410.75-
0.5斗
0.570.31↑
0.61
0.69- -
12345678901111213
PPI/Plvs
∠jEF
-0.76
-0.40
-0.67
-0.45
-0.75
-0.67
-0.67
-0.55
-0.90
-0.32↑
-0.49
- 0 . 0 4 忖
-0.35-
●● -
● ● ● ●
ト O ° ゛ - 1 °
● ●
Partialcorrelationcoeflicients
嗜
Case
一 一 -
Table3.
●●
Figure6.COrrelationsbetweenPPI/PlandthechangeinmVcfinCase3,5,11and13.1nverse(ご017relationwasgoodinCase3,butinothercasestheserelationswerepoor.
△mvcf
PPI/PI
心エコー図による疾患別にみた心房細動における左室収縮状態
られなかった.一方mvcfの変動も,EFの場合より劣るとは
いえ,Preloadの変動と高い相関を示したが,PPI/PIとの相関は有意性を欠くものも認められ
た,このことはPreloadがmvcfに対してかなり
影響することを意味する.一方Quinonesら17)の報告によると,mvcfは21fterloadの変動に大きく
影響を受けるが,I)reloadの変動に対してはほとんど影響を受けないとされている.AIrterloadに
関しては,今回大動脈圧を同時記録していないため今後の問題として残されているが,mvcfが
1)reloadの変動により影響を受け,各心拍毎に変動することはKarlinerら1)も報告しており,私どもの所見と一致した.
以上の研究での問題点はいくつかあげられる.第1には,各心拍毎に異なる左室収縮状態の指標としてEF,mvcfを用いたことにある.これらは,
それぞれ左室ポンプ機能,心筋収縮能をあらわすよい指標として現在用いられている.しかし,こ
れらの指標がどこまで正確に左室収縮状態を反映しているかは問題であるとする報告もみられる.18)19)第2に,PPI/Plz51inotroPicstateとよく相関
するとされているため,2o)私どもはPPI/PIとEF,mvcfの変動について検討したが,このような心
周期の変化と心筋のinotroPicstateについての関係は,現在なお不明な点が多い.またKarnnerら1)はI)r(210ad,21f’terloadがほぼ一定の心拍を選びPPI/PIの変化によるEF,mvcfの変動を証明しているが,PPI/PIのEF,mvcfの変動に及ぼ
す影響には,部分的にはI)reload,211Fterloadの変動が関与しているため,独立した因子となり得ない可能性がある.
今回の研究では,心房細動の各心拍毎の収縮には第1にI)1‘eload,すなわちFrank-SE;tarlingの機
構が,第2に心周期の変化が影響を及ぼし,かつFrank-S5tarlingの機構がすべての疾患で一様に働
かず,基礎疾患によりその働きの程度が異なるという傾向を示した.しかし症例が少なかったため,
明 確 な 結 論 は 得 ら れず, 今 後 症 例 を 増 し さ ら に 検
討を重ねる必要があると考えられる.
要 約各 種 心 房 細 動 例 1 3 名 に お いて , R R 時 間 , 心
エ==l一図より拡張終期径(Dd),左室駆出率(EF),
平均左室内周短縮速度(mvcf)を測定した.各心拍毎のEF,mvcfの変化りEF,jmvcf)とDdの変化(jDd),心周期の変化,即ち先々行
RRの先行RRに対する比(PPI/PI)の相関関係
につき検討した.左室壁厚正常例では,jDdとjEFの間に高
い相関を示し,他方壁肥厚例ではこれらの相関は
低下した.PPI/PIとjEFの間にも高い相関を認めたが,特に疾患による差は認められなかった.jmvcfとjDd,PPI/PIとの相関はEFの場合に比べ,いずれも低下したが同様の傾向を認めた.
壁肥厚例の左室収縮に対するPreloadの影響は低下する傾向を示し,これらは左室拡張障害による所見と推察された.
文 献
1)K11rlinerJS,GaultJH,BouchardRJ,HolzerJ:
Factorsinnuencingtheejectionfractionandthemeanrateofcircumferencialnbershortening
duringatrialfibrillationinman.CardiovRes8:18,1974
2)Glrc・enfiejdJCJr,HarleyA,ThompsonHK,Wal-
1aceAG:Pressure-nowstudiesinmanduringatrialf沁riUation.JClinlnvest47:2411,1968
3 ) 藤 井 淳 一 , 渡 辺 湖 , 渡 辺 坦 , 加 藤 和 三 : U C G
に よ る 左 心 機 能 曲 線 に つ い て . 心 臓 6 : 1 5 4 3 , 1 9 7 54 ) 北 村 和 人 , 国 重 宏 , 松 岡 謙 二 , 三 晶 頼 甫 , 朝 山 純 ,
遠 藤 直 人 , 高 梨 忠 寛 , 松 浦 徹 , 沢 山 俊 民 : 心 房 細動 に お け る 心 周 期 , 駆 出 時 間 , 1 回 拍 出 量 の 相 互 関
係:JX/linnesotaimpedancecardiographを用いて.臨床心音図4:325,197吽
5)PomboJF,TroyBL,Russe1ROJr:Leftven-t171cularvolumesandejectionfractionbyecho-(mrcliography.C仔culation43:480,1971
6)FortuinNJ,HoodWPJr,CraigeE:Evaluationofleftv(lntricularfunctionbyechocardiography・
(lrculation46:26,19727)BraunwaldE,FryeRL,AygenMM,Gilbert
JWJr:StudiesofStarling’・;1awoftheheart.III.
- 5 5 9 -
古 川 , 松 久 保 , 渡 辺 , 朝 山 , 勝 目 , 垣 内 , 国 重 , 遠 藤 , 松 浦 , 伊 地 知
Observationsinpatientswithmitralstenosisandatrialnbrillationontherelationshipsbetweenleftventricularend-(iiastolicsegment,n)1ingpressure
andthechara(こteristicsofventricularcontraction.
JClinlnvest39:1874,19608)EdmandsRE,GI-(lenspanK,FischC:Theroleof
lsotroplcvarlatlonlnventrlcularfunctlondurmg
lltrialnbrillation.JClinlnvest49:738,1970
9)Roge1S,MahlerY:Myocardiflltensioninatrialfi1)lriHation.JApp1Physio127:307,197斗
1 0 ) 加 藤 和 三 , 渡 辺 肌 新 谷 富 士 雄 , 渡 辺 坦 : 不 整
脈の血行動態.呼吸と循環22:307,197411)TavelME,BaughD0,FeigenbaunlH,Nasser
xvK:Leftventricularejectiontimeinatrialnbrilla-tion.Circulation46:744,1972
1 2 ) 加 藤 和 三 , 渡 辺 肌 渡 辺 坦 , 大 田 昭 夫 , 鈴 木 啓
吾 , 新 谷 富 士 男 , 福 田 に , 高 橋 宣 光 , 小 山 晋 太 郎 :冠 硬 化 症 の 血 行 動 態 ( 第 7 報 ) 心 房 細 動 . 目 循 誌31:1280,1967
1 3 ) 勝 目 紘 , 古 川 啓 三 , 松 久 保 晴 生 , 朝 山 純 , 渡 辺
俊 光 , 遠 藤 直 人 , 国 重 宏 , 松 浦 徹 , 伊 地 知 浜 夫 ,垣 内 孟 : U C G に お け る 左 房 径 の 経 時 的 変 飢 日
超医論文集28:181,197514)HammermeisterKE,XvarbasseJR:Therateof
changofleftventricularvolumeinman.II.Dia-stoliceventsinhealthanddil;ease.Circulation
49:739,197415)HamiltonGW,MurrayJA,KennedyJW:Quanti-
tativeangiocardiographyinischemicheartdisease.(こirculation45:1065,1972
16)TybergJV,YeatmanLA,ParmleyWべV,Ursche1
CへV,SonnenblickEH:E仔ectsofhypoxiaonillechanicsofcrlrdiaccontraction.AmerJPhvsiol
;Z18:1780,197017)QuinonesMA,GaaschWH,Cole,JA,Alexander
JK:Echocardiographicdeterminationofleftven-tricularstress-velocityrelationinman.Circulation
51:(589,1975
18)RossJJr,MCCullaghWH:Natureofenhanced
perforrnanceofthedilatedleftventricleinthedogduringchronicvolurTleoverloading.CirculatRes30:549,1972
19)TsakirisAG,vandenbergRA,BancheroN,Sturm
RE,XvoodEH:variationsofleftventricularend-(Eastolicpressure,volumeandejectionfraction
withchangeinoutnowresistanceinanesthetizedintactdogs.CirculatRes23:213,1968
20)S5habetaiR,UtherJB,PetersonKL,RossJJr:Potentiationofcontractionbyprematureactivation
inpatientswithnormalandabnormalleftven-tlricularfunction.AmerJCardio129:291,1972
- 5 6 0 -