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心外術後SSI2014/8/5
東京慈恵会医科大学附属病院 感染制御部 河野真二
Tex Heart Inst J 2013;40(2):125-‐39)
Preopera?ve① Prophylac?c An?bio?c Therapy ② Use of Mupirocin Nasal Ointment ③ Skin an?sepsis
intra−postopera?ve④Glucose control ⑤Body temperature ⑥Oxygen ⑦Blood transfusion ⑧その他
①Prophylac?c An?bio?c Therapy
v 何の抗菌薬をどのタイミングで投与するか? セファゾリンとバンコマイシン MRSAがいた場合
v 抗菌薬投与期間はどの程度がよいか?
Ann Thorac Surg 2006;81:397–404
Summary of the Surgical Infection Prevention Guideline Writers Workgroup consensus positions.
Dale W B et al. Clin Infect Dis. 2004;38:1706-1715
© 2004 by the Infectious Diseases Society of America
Suggested initial dose and time to redosing for antimicrobial drugs commonly utilized for surgical prophylaxis.
Dale W B et al. Clin Infect Dis. 2004;38:1706-1715
© 2004 by the Infectious Diseases Society of America
執刀前1時間以内に確実に予防的抗菌薬初回投与を行うのが適当
また術中から術後数時間抗菌薬の 適正な血中濃度を保つことが重要
Vancomycin for Surgical Prophylaxis?Clinical Infec?ous Diseases 2012;54(10):1474–9
現在コンセンサスを得ているのは、心臓外科手術におけて、バンコマイシンは、ルーチンあるいはデフォルトとして薬剤選択すべきでない。
では、MRSAでたら、VCM。 でなかったら、CEZでいいのか?
Vancomycin versus cefazolin prophylaxis for cardiac surgery in the sehng of a high prevalence of methicillin-‐resistant staphylococcal infec?ons. J Thorac Cardiovasc Surg 2002;123(2):326-‐32.
MRSA 感染が広く流行している心臓外科専門病院において、バンコマイシンとセファゾリンによる術前予防の効果を検討。
心臓外科手術の予防抗菌薬として、両薬剤は、 変わらぬ効果を有していた。
VCM使用で、予防効果は?
ただしこの論文を含めて、この時代のMRSA 流行率は、現在より低く、そのまま当てはまらない。
ただし、バンコマイシン投与群で、methicillin-‐suscep?ble staphylococci が有意にみられた。(17 cases, 3.7%, vs 6 cases, 1.3%, P = .04)
これは、ブドウ球菌に対する効果が、CEZのほうが、強いことを意味しているのでは、 ないかと推測される。 J Thorac Cardiovasc Surg 2002;123(2):326-‐32.
Glycopep?des Are No More Effec?ve than b-‐Lactam Agents for Preven?on of Surgical Site Infec?on aoer Cardiac Surgery: A Meta-‐analysis
Clinical Infec?ous Diseases 2004; 38:1357–63
7のRCTにおける 5761人の患者 グリコペプチドによる予防抗菌薬投与患者とβラクタム薬予防患者とのSSI発生に関する比較
バンコマイシンだけではダメ?
Clinical Infec?ous Diseases 2004; 38:1357–63
Figure 2. Summary of the risk of surgical site infec?on (SSI) aoer receipt of glycopep?de or b-‐lactam prophylaxis for the outcome of all SSIs and the subanalyses of organism responsible for SSI.
Figure 1. Summary of the risk of surgical site infec?on (SSI) aoer receipt of glycopep?de or b-‐lactam prophylaxis for the outcome
of all SSIs and the subanalyses by site of SSI.
グリコペプチド(バンコマイシン)は、βラクタム(セファゾリン)に劣る。
当然のことながら、 MRSAには強い!
抗菌薬種類のまとめ
①Prophylac?c An?bio?c Therapy
v 基本は、セファメジン。アレルギー患者の場合は、VCM。
v MRSA検出患者に関しては、VCMの使用を検討するが、 CEZの併用もMSSAなどの陽性球菌への効果を期待して考 慮すべきかもしれない。 (個人的には、グラム陰性桿菌カバーも兼ねるCEZは併用ありと考える。)
N Engl J Med 1992; 326:281-‐286
執刀前1,2時間以内に投与するとSSI発生率が低い
タイミングについては、詳細は、述べないがデータは以下。
Summary of previously published guidelines on antimicrobial prophylaxis for operations targeted for national surveillance.
Dale W B et al. Clin Infect Dis. 2004;38:1706-1715
© 2004 by the Infectious Diseases Society of America
投与期間に関しては、意見がわかれている。
Ø SSI発生および耐性獲得について、48時間以内投与と 48時間以上投与した場合の抗菌薬予防効果の比較
Ø 専門病院1施設における4年間に渡る観察コホート研究
Ø CABG施行後の2641人の患者
Prolonged an?bio?c prophylaxis aoer cardiovascular surgery and its effect on surgical site infec?ons and an?microbial resistance. Circula?on. 2000; 101:2916–2921.
長期投与すると何が問題?
Circula?on. 2000; 101:2916–2921.
3日間以上の投与で、2日間以下と比較して耐性菌感染のオッズ比が1.6倍になると報告。
胃切除における3 ~ 4 日間の予防抗菌薬投与で腸内細菌叢のビフィズス菌(Bifidobacterium)の減少と、P. aeruginosa 、腸球菌(Enterococcus)の増加。
Changes in the intes?nal flora aoer the administra?on of prophylac?c an?bio?cs to pa?ents undergoing a gastrectomy. Surg Today. 2002;32(7):581-‐6.
長期投与すると何が問題?
長期投与によって、術後予防効果が高くなったとの報告は、得られていない。
An?bio?c prophylaxis in cardiac surgery: Systema?c review and meta-‐analysis. J An?microb Chemother. 2012; 67:541–550.
An?bio?c prophylaxis for cardiothoracic opera?ons. Meta-‐analysis of thirty years of clinical trials. J Thorac Cardiovasc Surg. 1992; 104:590–599.
システマティックレビューでは
長期投与していいことは?
投与期間のまとめ
v 投与のタイミングは、執刀前1時間以内の投与が基本で、(VCMのみ120分前から投与開始)
v 長期投与による耐性化が原因となり、新たな感染の出現が危惧される。(これが一番危険)
v 長期投与していいことは、いまのところなし。
①Prophylac?c An?bio?c Therapy
②Use of Mupirocin Nasal Ointment
Tex Heart Inst J 2013;40(2):125-‐39ムピロシンの対応は、様々。
INTRANASAL MUPIROCIN TO PREVENT POSTOPERATIVE STAPHYLOCOCCUS AUREUS INFECTIONS N Engl J Med 2002;346:1871-‐7
黄色ブドウ球菌感染症の発症が減少する。
Development of mupirocin resistance among methicillin-‐resistant Staphylococcus aureus aoer widespread use of nasal mupirocin ointment. Infect Control Hosp Epidemiol. 1996 Dec;17(12):811-‐3.
ムピロシンを広範な使用が、耐性につながる。
でも、ルーチンに使っていると、耐性が増えるのもわかっている。
0
10
20
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60
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1990 1991 1992 1993
耐性率
耐性率
N Engl J Med 2010;362:9-‐17.
Ø Randomised, double-‐blind, placebo-‐controlled trial
Ø 2005年10月−2007年6月
Ø オランダの3大学病院と2総合病院の外科及び内科病棟
Ø real-‐?me PCRにて S. aureusが同定され、入院後24時間以内に治 療が開始できる患者を対象
Ø 2%のmupirocin軟膏+グルコン酸クロルヘキシジン石鹸使用群とプラセボ軟膏+プラセボ石鹸使用群でランダム化
Ø Primary outcome: S. aureusの院内累積感染数 Ø Secondary outcome:院内死亡率(原因を問わない)、入院期間、 入院からS. aureusによる医療関連感染症が 発症するまでの期間
N Engl J Med 2010;362:9-‐17.
N Engl J Med 2010;362:9-‐17.
累積感染の危険度はムピロシン群で継続的に低い
②Use of Mupirocin Nasal Ointment
まとめ
v ムピロシンによる鼻腔消毒は、確かにSSI感染を減らすことはわかっているが、全例ルーチンでの使用は耐性化の問題がでてくる。
v 必要な患者には、使用はしたいところだが、実際は、鼻腔培養期間や除菌期間などの問題もあり、難しい。
v 迅速PCR検査は、同定に有利であり、全身皮膚消毒と併用することでSSI予防効果が示された。
③Skin an?sepsis
N Engl J Med 2010;362:18-‐26.
Ø 前向き無作為臨床試験、2004年4月‐2008年3月、米国の6病院
Ø 対象は、18歳以上かつ大腸、小腸、食道、胃、胆道、胸部、婦人科臓器、泌尿器科手術
Ø 2%グルコン酸クロルヘキシジンと70%イソプロピルアルコールが含まれた消毒薬と 10%ポピドンヨードで消毒した手術を1対1に無作為割付
Ø 一次エンドポイント:術後30日でのSSI発生率、2次エンドポイント:SSIの各種類の発症率
清潔-‐不潔手術後の手術部位感染症の予防において、クロルヘキシジン・アルコールによる患者皮膚の術前洗浄はポビドン・ヨードによる洗浄よりも優れている。
全手術部位感染症は、クロルヘキシジン・アルコール群でポビドン・ヨード群に比べて有意に低かった(9.5%に対して16.1%、P値=0.004、相対リスク0.59、95%信頼区間0.45~0.85)。 クロルヘキシジン・アルコールはポビドン・ヨードに比べて、表皮切開性感染症(4.2%に対して8.6%、P値=0.008)と深部切開性感染症(1%に対して3%、P値0.05)の両方において、有意に防御的に働いたが、臓器腔感染症(4.4%に対して4.5%)では有意差がなかった。
Figure 1. Kaplan–Meier Curves Showing Cumula?ve Survival of Pa?ents Who Received Intensive Insulin Treatment or Conven?onal Treatment in the Intensive Care Unit (ICU).
心臓外科患者60%
厳格な血糖コントロール(80-‐110mg/dl)が、死亡率の低下につながるとする報告。
④Control of Hyperglycemia
その後、何年もターゲット探しにさまよい続け、低血糖コントロールが 盛んに行われた。 その後に、NICE SUGER STUDYが行われた結果 Intensive versus conven?onal glucose control in cri?cally ill pa?ents N Engl J Med 2009; 360: 1283-‐97
強化インスリン療法 (Intensive insulin therapy; IIT) 群では90日以内の死亡率が上昇
血糖コントロールは、いくつがいいのか?
Intraopera?ve hyperglycemia and periopera?ve outcomes in cardiac surgery pa?ents. Mayo Clin Proc 2005;80(7):862-‐6
心臓外科患者における術中高血糖と周術期アウトカムとの関連の大きさを検討
• retrospec?ve observa?onal study
• June 10, 2002, and August 30, 2002
• Mayo Clinic, a ter?ary care center
Mayo Clin Proc 2005;80(7):862-‐6
術中高血糖が、合併症の独立したリスク因子としている。 術中血糖値の20mg/dl上昇すると、30%合併症を増加させる。
Tight Glycemic Control in Diabetic Coronary Artery Bypass Graft Patients Improves Perioperative
Outcomes and Decreases Recurrent Ischemic Events
Circulation Volume 109(12):1497-1502March 30, 2004
多くの報告で、血糖コントロールが不良であれば、合併症の出現および死亡率の上昇につながると言われている。
Ø prospec?vely randomized trial
Ø 141人のCABG施行の糖尿病患者
Ø 麻酔前および術後12時間におけるGIK併用群とインスリン皮下注射群
glycemic control (serum glucose, 125 to 200 mg/dL) with GIK or standard therapy (serum glucose 250 mg/dL)
glucose-‐insulin-‐potassium (GIK) solu>on
Circulation Volume 109(12):1497-1502March 30, 2004
血糖コントロールスケール
Figure 1. Serum glucose.
Circulation Volume 109(12):1497-1502March 30, 2004
術中血糖が術後の血糖コントロールに影響する可能性がみてとれる。
Figure 5. Long-term survival.
Conclusions 糖尿病患者におけるインスリンによる厳格な血糖コントロールは、周術期のアウトカムの改善、生存率の上昇、虚血イベントやSSIなどの感染合併症を減少させる。
一部抜粋
Circulation Volume 109(12):1497-1502March 30, 2004
縦隔炎に対しての報告でも、
Ø A retrospec?ve cohort analysis Ø 心臓外科手術をした3065人を対象としてた厳格な血糖 コントロールを実行前後におけるDSWI率の比較 イギリスの心臓外科の専門市中病院 Ø 2004年1月1日〜2006年12月31日
Arch Surg. 2008; 143:451–456.
Arch Surg. 2008; 143:451–456.
Conclusion:新しいツールとして厳格な血糖コントロールを集学的に行ったプログラムは、成功かつ安全に施行できることが確認された
Results: 新プログラム後の18ヶ月において、DSWI発生率は、2.6%から1.0%に減少 =60%以上の減少
低血糖イベント発生率は、変わらずで、安全に施行できたとのこと。
で結局、血糖はタイトでないとだめなの?
Ø aggressive glycemic control (90-‐120 mg/dL) VS moderate glycemic control (120-‐180 mg/dL)
Ø 82人のCABG施行の糖尿病患者を両群に割付
Ø 麻酔導入〜術後18時間
Ø Primary end points : 主要な副反応の頻度
Ann Surg. 2011;254:458–463.
Ann Surg. 2011;254:458–463.
Ann Surg. 2011;254:458–463.
血糖コントロールのまとめ
v 心臓外科術後患者における術中、術後の血糖コントロール不良であれば、術後SSIに悪影響を与える。
v いわゆる厳格な血糖コントロールでなくても、通常の血糖コントロールを行うことによって、SSIの発生率を低下させることができる。
④Control of Hyperglycemia
PERIOPERATIVE NORMOTHERMIA TO REDUCE THE INCIDENCE OF SURGICAL-‐WOUND INFECTION AND SHORTEN HOSPITALIZATION
N Engl J Med 1996;334:1209-‐15.)
術中低体温となるとSSI発生率が上昇する?
低体温 →末梢血管収縮 →組織酸素分圧低下
組織酸素分圧が高いことが必要な状況 u 好中球が貪食能を発揮 (細菌に対する抵抗力の低下)
u 線維芽細胞によるコラーゲン産生 (創傷治癒の遅延)
⑤ Body temperature
N Engl J Med 1996;334:1209-‐15.)
⑥Oxygen
術中および術後数時間の高濃度酸素投与をするとSSI発生率が上昇することが 報告された。
JAMA. 2005;294:2035-‐2042
Ø double-‐blind, randomized controlled trial Ø 18歳〜80歳までの大腸手術を行った300人の患者 Ø 14 スペイン病院、2003年3月1日〜2004年10月31日 Ø Centers for Disease Control and Preven?on criteriaを用いて、
blinded 調査員による感染創を診断
高濃度酸素により、SSI発生を低下させたとする報告もあり。
つまり、酸素投与に関しては、多くの文献があり、しかも現在もRCTが行われていて、結論がでていない。
Blood transfusion and infec?on aoer cardiac surgery. Ann Thorac Surg 2013;95:2194–201.
⑦Blood transfusion
⑤⑥⑦のまとめ
v 酸素投与は、結論なし。
v 低体温は、いまのところ害と考える。
v 輸血に関しては、出血が悪いのか、輸血が悪いのかわからないが、感染率への寄与は有りそう。
ドレーン留置中は抗菌薬継続??
Ann Thorac Surg 2006;81:397–404
ドレーン留置と感染の話題
いわゆるエキスパートオピニオンとして
米国胸部外科学会でも緩い推奨
明確なエビデンスのないところ。
Is Early Tracheostomy a Risk Factor for Medias?ni?s aoer Median Sternotomy? J Card Surg 2009;24:632-‐636
気切は、2週間待ってから?気管切開の話題
7日以内の気切
J Card Surg 2009;24:632-‐636
J Card Surg 2009;24:632-‐636
Early群(7日以内)とlate群(7日以上)を比較して、気切までの期間を除いて、 有意差はなかった。
Is post-‐sternotomy percutaneous dilata?onal tracheostomy a predictor for sternal wound infec?ons?
European Journal of Cardio-‐thoracic Surgery 33 (2008) 1076—1081
European Journal of Cardio-‐thoracic Surgery 33 (2008) 1076—1081
術式による縦隔炎の発生率の違いがみられた。
その他のまとめ
v ドレーン留置期間は、エキスパートオピニオンであり、明確なエビデンスがない。
v 気切の時期と縦隔炎の発生の率は、早期に行っても、影響はなし。
v 気切患者では、縦隔炎のリスクは、上がる。
v 術式による発生率の違いあり。
最後にv 抗菌薬予防に関しては、適切な抗菌薬を、適切なタイミングで、適切な投与期間行うことが、最低限必要である。
v ムピロシン鼻腔除菌は、可能な限り行い、ブドウ球菌感染を減らす必要がある。
v 皮膚消毒は、クロルヘキシジンアルコールが推奨される。
v 術中からの通常の(決して厳格にする必要はない)血糖コントロールが、SSI発生を抑える。
v 低体温はおそらく良くない、酸素は結論まだ、輸血は、感染率上昇になんらかの関与がある。