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Spicaria rubidoてpurpureαAokiのジャガイモガ
に対する寄生性(予報〉
大島俊市場
緒 官
ジャガイモガはナス科作物の重要害虫で,タパコ仁はl枚量30%減,牧納金50%減という大きな被
害を与えることがある.わが国では昭和29年広島県川民町のタパコ畑で初めて発見された.専売公
社では岡山たばこ試験場川尻分室として現地に臨時の研究室を設置した.ここに述べる Spi・-:aria
rubido-抑F如何aは筆者が同室勤務中に得たジャガイモガ寄生菌である.この菌は殺虫剤と併用
できる天敵であると思われる.最初 Isariasp.として扱ったので通称イザリヤ菌と呼んでいる.ここ
にその研究結果を報告する.
終始懇切な指導を賜わった西門義一博士,菌を同定された森本徳右ヱ門博士,有益な助言を
いただいた青木清博士,御校聞を賜わった日高醇博士,協力していただいた内藤孝道氏,森下政
治氏に記して深甚の謝意を表する.
寄 生 性
1.材料及び方法
パレイジ=塊茎で飼育したジャガイモガを用や2つの方法で寄生性を試験した.
a)ジャーレ仁よる方法, water agar plateに分生胞子を塗布し,これ仁虫体を置き250C仁
7日間保ち寄生の有無を調査した.
b)土壊を用いる方法,飼育びん仁土を入れ,または畑のー部の土壌面を金網で仕切り,これ
仁分生胞子を撒布し老熟幼虫を放飼した.羽化虫数を調べて生存虫数とし,残りを死虫数
とした.死虫からは地表仁同菌特有の coremiaを出すので寄生したことがわかる.
2.結果
ジャーレ仁よる方法では,今日までの観察によれほ,本菌は瞬に最もよく寄生し,ついで幼虫で
あり,成虫仁は稀であって,卵仁は寄生しない.土嬢を用いる方法では,幼虫が帰化のため土に
潜るとき,地表仁胞子が撒布してあると感染し地中で死んでしまう. (第 1・2・3表〉この種の試験では標準区を飛散胞子から完全仁隔離することが困難で,標準区にもしほしは寄
生が起ることが観察された.
.................."'1'......・・・・......・'"・...・・・H....・・・・.......".....・8・...、......-'..・・ ・“'・・・・・・ー....引・ ・...........,....・・・ ・・h......、.......・・............日
‘元大原食研,現専売公社岡山たばこ試験場
第 1表 菌によ~殺虫試験
区 }JIJ 供黙虫数 生存虫数 死虫数
標 準 区 20 15 5*
胞子液撒布区 20 6 14
乾燥胞子撒布区 20 5 15
(注) 傘隣接区より感染したもの
第 2表 胞子撒布時期と殺虫効果
区 日IJ 供試虫数 生存虫数 死虫数
放飼と同時撒布区 20 4 16
放飼1目前撒布区 20 3 17
放飼1日後撒布区 20 16 4
第 3表 園地における殺虫効果
区 別 供試虫数 生存虫数 死虫数
標 準 区 50 15 35*
胞子撒布区 50 。 50
(注) ホ標準区1士搬区布からの胞子飛散により寄生死虫を生じた.
蝿に対する寄生性と温度との関係
7........8月の頃には寄生力が低下する事実が観察されたので,高温は寄生力を阻害するのではない
かと考え次の試験を行った.
1.材料及び方法
前述のジャーレによる方法を用いた.温度は恒温は定温擦を用。て200,250, 270及び300C
を,室温は8月以降,気温の低下を追って行川実験期間の平均気温は 14.20,18.60, 23.2。
及び28.80Cであった.
2.結・ 果
実験結果は第4・5表の如くである.
a)死虫数は温度の低下と共に増加し, 250C附近を境にそれより高温は寄生に不利である傾
向がみられた.このことは第4表では 10%水準,第5表では 1%水準で有意であった.
b)寄生を受けて死んだ虫体から,再び同菌が発生して胞子を形成するか,または雑菌の発生に
より胞子再生産が血書されるかは,実用上,連続的寄生の起る度合を左右する重要なことで
ある.この胞子形成作用は低温仁おいて活濠で高温では著しく不良であった.恒温300C区で
は雑菌に侵されて胞子再形成は全く認められなかった.250C以下ではよく行われる。このこと
は第4・5表仁ついて5%水準で有意であった.
-52ー
恒 温における温度と寄生率第 4表
雑 菌発$率
賀商発義聖子形長寄生率
300C
実験期
(払 8.2132. 8.28
。。,aτ
,a胃
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日
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死虫数
064EaazFO
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供試虫数
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区別
1
2
3
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度温
1∞%
唱
A
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M
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270C
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1
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250C
(払叩32. 9.19
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1
2
3
計
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200C
(3UU9 32.11. 8 。96.6
室温仁おける温度と寄生率第 E表
雑 菌発生率,ま菌発長,胞子形成
虫数寄生率
28.SOC
実験期
(払 M32. 8.19
aa宮
AUηJ''
-Aaeq300
死虫数
FDaazeDFD
-EA
区別 供試虫数
《
unununu
--'i'A内』
1
2
3
計
'EEEB
、EEE
・、
同司
Brl
平均温度
46.6%
噌
AAUAu-A
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qvnmwFnv。4
印.0%
nun習。
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噌
A
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nunununu
--'i'iqu
23.20C
3.7
hunununu
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-Eゐ唱
EE--EE・内
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90.0
《
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--'A-i
角。
《
unununu
----EA--Ean屯ω
18.60C
。
。
AunUAUAU
nunununu
--.,A
'
A
内品
1∞.0
(1 1010 2 10 10
3 10 10
計 30 30 1句.0
一一一一 一一 一
14.20C
(3m.29 32.11. 8
寄主範囲
1.材料及び方法
ジャーレ法により各種昆虫を供試し寄生性を調査した.250C. 7日間の調査とした.
2.結果
調査結果は第6表の如くである.
第 6表寄 主 範 関(ジャガイモガを除o
区 }JIJ 害 虫 名
(?ハカミキリ〈幼虫l イネズイムシ(幼虫).パ ク ガ〈幼虫及び麟〕
寄生力大なるもの {コナマダラメイガ〈クヲ,イ モ コ ガ〈ク).アズキゾウムシ( /; )
l?ロオオアリ(/; ) シ ロアリ〈クエノシメコクガ〈幼虫)
{モシシロテウ〈幼虫).ヤサイゾウムシl/; ). 寄生力中位のもの 4
tヨトウム・ン, ネキリムγ, ミノム・ン
寄生カ微弱のもの {?ロカメムシ
寄生しないもの {ハザミムシ,ゴキプリ,ガガシポ〈幼虫孔イエバェ(編).ハリガネムシ
貯蔵ジャガイモ塊茎に対するジャガイモガ防除効果
1.材料及び方法
細目の金網を張った金属製飼育箱lこ一定量のジャガイモ塊茎を入れ,これに一定数のジャガイモ
ガ幼虫を放飼した.幼虫が塊茎内に喰入したことを確めた後,処理区の箱へは翌日,菌の培養塊
を箱内に 10個〈蚕婦に培養したもの〉投入した.そして一定期間後のジャガイモガの増殖程度
を比較した.
2.結果
実験結果は第7表の如くである.
即ち処理区では寄生による虫数の減退がみられる.
第 7表 貯蔵ジャガイモに対する酋のジャガイモガ防除効果
第1回試験 (昭和30年 10月11回開始,同 11月16日調査. 10頭ずつ放飼)
云孟]睦虫霞幼虫 鏑 l1t.虫 tf"
区 日IJ --_
標 準区
処理区
27
0
6 33
1
附
第 3表(続き)
第2回試験 (昭和30年 10月 30日開始,同 12月30日調査. 50頭ずつ放飼)
...........__ .袋虫叡
区別 ----標準区
処理区
成lk
‘ 幼虫
47
0
32
0
2
0
13
0
(昭和31年 8月27日開始,同 10月31日調査,金あみかご貯蔵
室温.2世代を経過させた後,ジャガイモを切開して虫数を調査した)
第 3回試験
虫幼計鏑成虫glJ 区
標
処
111
445
75
631
7
0
2
9
3-4合
au噌
AqOAUnvnU
ハUnu
守
i
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u
R
U
1-2令
。4qaAUK-νAuhununu
nvoORundnunununu
qunE'i
内品
の双山戸
内
《
一
v
63
123
57
243
7
0
2
9
1
2
3
計
1
2
3
計
,・EEas
、,.,.t
,EBEE
,BEEEE
、
区
区
準
理
(注)標準区のジャガイモは変質腐敗の傾向がみられた.
瓢
青木 (1957)は,わが国で害虫駆除仁寄生菌を利用するに必要な条件として.(1)カイコに病
原性がないか,またはごく軽微の菌であること.(2)寄主である害虫が土中に生息するか,あるいは
その経過のー部をすごすものであることをあげて.Spi-:aria rubido・かげがIreaについてはカイコ仁対
する病原性はきわめて弱<.感染しても治癒する程度のものが多く自然発生は稀であると述べてい
る.このことから同氏は本菌の実用性を認め,カイコのウジパ工の駆除に応用することを研究してい
る.筆者の分離した同菌はジャガイモガの蛸によく寄生し,踊は通常土の中仁潜伏しているので,本
菌による生物学的防除には好適条件であると考える.
ジャガイモガ踊仁対する寄生と温度との間仁は密接な関係がみられ,高温では殺虫効果及び死虫
よりの胞子再生産力が著しく弱<.250C以下の低温では活糠である.一般にジャガイモガの生長
経過は高温ほE速く,夏期には旺盛な繁殖を示すものであるが,本菌の応用上からみると 7-8月
仁は防除効果を期待し難。-反対に低温では害虫の生長経過は遅くなり,菌の寄生能力は高くな
るので,秋・冬及び春仁互つての効果は期待できると思われる.ジャガイモガl主主として蛸態で越冬
するので寄生仁好適のようである.
寄生菌はその寄生範囲が広しその中仁分布のひろい普遍的なものを多く含むものほど有利と考
えられる.本菌は室内試験で比較的多くの他の害虫に寄生した.野外での寄生能力は未だ確認し
ていないが,青木の報告から推測しても,寄生の対しようとなる昆虫は極めて普通の野外昆虫仁求
めることが可能である.
論
この菌のジャガイモガの生息密度を低下させる効果仁ついて貯蔵ジャガイモを使って試験した.小
規模の試験であってその効果を断言する仁は至っていないが,明か仁ジャガイモガの増殖に有害仁働く
もののようである.
嫡 要
(1)ジャガイモガの輔および幼虫仁寄生する Sticariarubido・仰r仰reaAokiの寄生力及び死
虫からの胞子再生産は250C以上では著しく減退し, 250C以下では安定である.
(2)貯蔵パレイシ g仁対して本酋の撒布を行った結果は,無処理区631頭の発生仁対して処理
区は僅か9顕の発生であった.
{'
..考文献
青木清 1957.昆虫病理学.
大島俊市,内藤孝道:日本専売公社岡山たばこ試験場業穆報告. 1955. 115頁.1956. 131頁.1957.
153頁.
Steinbaus. E. A. 1949. Principles of Insect Patbology.
和田義人 1957.日本応用動物昆虫学会誌 1(1): 54.
写 真 1.S. rubido-purpurea o寄生をうけたジャガイモガ蛎
写真 2.S. rubido・purpu,.eaの寄生をうけたイネズイムシ幼虫
-57一