1
129 ★ローバーリング ツウ サクセス〈Rovering to Success〉 ベーデンパウエルがローバースカウトの青年のために書いた「幸福になる道」を示 す手引書。「ローバーリング ツウ サクセス」はスカウティングの「奥伝書」であ り「最後のメッセージ」の解説書であるという人もいる。1922 年に初版が刊行された。 この書物の中で特に注目に値する言葉として次のものがある。 「幸福への二つの歩み、それは…人生をゲームと考え、愛の心を人に施す」 「自分のカヌーは自分で漕げ」(Paddle your own canoe) また、 1922年3月23日、ベーデンパウエルが息子のピーターに書いた手紙を示すと…… 「ピーターよ、君が 16 才になったときに読むように長い手紙を書いてある。 それはローバーリング ツウ サクセスである。その本の中には 16 才の少年として の知らなくてはならないことを書いてある。もちろん他の少年達にも立派な人間に なっていくために読んでもらいたい。人生の道しるべとして読むように書いてある。 私の父は 3 才の時に死んだので、父から学ぶことはできなかった。 君が 16 才になるときは、私は死んでいるであろう。たとえ死んだとしても、その本 は君の良き父となるであろう。……父より」 この手紙を読むとローバーリング ツウ サクセスは、ベーデンパウエルが息子ピー ターに残した遺書であり、翻訳者の中村 知氏がスカウティングの「奥伝書」とい われるのも、うなづける。中村 知氏によれば「奥伝」が最高にして最終ではなく、 その上に「秘伝」がある。「秘伝」は「大自然」という本に書いてあり、すなわちウッ ドクラフトというものがそれである。それは宗教につながり、明確なる信仰がつか めたときに「皆伝」の域に達すると書かれている。 ★ローランドハウス〈Roland House〉 ローランド・フィリップスの作っ たスカウトハウス。 イギリスの貴族の家に生まれた ローランド・フィリップスは、オッ クスフォード大学を出ると、ロン ドンのスラム街に飛びこみボーイ スカウトを作り、隊長になって指 導した。このとき第 1 次大戦が勃 発し、彼は従軍を志願した。フィ リップスは自分の邸宅を売り払 い、その代金を友人に託し、スラ ム街によい家を建ててあの子らを 次々と教育してくれと頼んだ。彼 は戦死したが、友人のリーダー達 はスカウトハウス(名付けてロー ランドハウス)を建て、次々と子ども達を教育して立派な人物が生まれた。 ローランドハウスにはフィリップスの使っていたものが今でも展示され、彼が涙と 共に子どもを訓戒した涙の跡のついた机もあるということである。

ロ ★ローバーリング ツウ サクセスama7.fujiv.com/scout/pdf/129.pdf129 ロ ローバーリング ツウ サクセス〈Rovering to Success〉 ベーデンパウエルがローバースカウトの青年のために書いた「幸福になる道」を示

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

129

ロ◀

★ローバーリング ツウ サクセス〈Rovering to Success〉ベーデンパウエルがローバースカウトの青年のために書いた「幸福になる道」を示す手引書。「ローバーリング ツウ サクセス」はスカウティングの「奥伝書」であり「最後のメッセージ」の解説書であるという人もいる。1922 年に初版が刊行された。この書物の中で特に注目に値する言葉として次のものがある。

「幸福への二つの歩み、それは…人生をゲームと考え、愛の心を人に施す」「自分のカヌーは自分で漕げ」(Paddle your own canoe)また、1922年3月23日、ベーデンパウエルが息子のピーターに書いた手紙を示すと……

「ピーターよ、君が 16 才になったときに読むように長い手紙を書いてある。それはローバーリング ツウ サクセスである。その本の中には 16 才の少年としての知らなくてはならないことを書いてある。もちろん他の少年達にも立派な人間になっていくために読んでもらいたい。人生の道しるべとして読むように書いてある。私の父は 3 才の時に死んだので、父から学ぶことはできなかった。君が 16 才になるときは、私は死んでいるであろう。たとえ死んだとしても、その本は君の良き父となるであろう。……父より」この手紙を読むとローバーリング ツウ サクセスは、ベーデンパウエルが息子ピーターに残した遺書であり、翻訳者の中村 知氏がスカウティングの「奥伝書」といわれるのも、うなづける。中村 知氏によれば「奥伝」が最高にして最終ではなく、その上に「秘伝」がある。「秘伝」は「大自然」という本に書いてあり、すなわちウッドクラフトというものがそれである。それは宗教につながり、明確なる信仰がつかめたときに「皆伝」の域に達すると書かれている。

★ローランドハウス〈Roland House〉ローランド・フィリップスの作ったスカウトハウス。イギリスの貴族の家に生まれたローランド・フィリップスは、オックスフォード大学を出ると、ロンドンのスラム街に飛びこみボーイスカウトを作り、隊長になって指導した。このとき第 1 次大戦が勃発し、彼は従軍を志願した。フィリップスは自分の邸宅を売り払い、その代金を友人に託し、スラム街によい家を建ててあの子らを次々と教育してくれと頼んだ。彼は戦死したが、友人のリーダー達はスカウトハウス(名付けてローランドハウス)を建て、次々と子ども達を教育して立派な人物が生まれた。ローランドハウスにはフィリップスの使っていたものが今でも展示され、彼が涙と共に子どもを訓戒した涙の跡のついた机もあるということである。