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1 時系列分析 5 非定常時系列、単位根過程 担当: 長倉 大輔 (ながくらだいすけ)

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時系列分析 5非定常時系列、単位根過程

担当: 長倉 大輔

(ながくらだいすけ)

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非定常時系列、単位根過程

◼ 非定常時系列

定常性を満たさない時系列を非定常時系列という。代表的なものに、トレンド定常過程と単位根過程がある。

◼ トレンド定常過程

utを定常平均 0 の定常過程として、

yt = c + δ t + ut , t = 1, ….,

と定義される過程をトレンド定常過程と呼ぶ。

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程

トレンド定常過程はその過程から “トレンド”に相当する部分である δt を除くと:

yt – δt = c + ut

残るのは定常な部分だけになるので、トレンド定常過程と呼ばれる。

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程の平均と分散

トレンド定常過程の時点 tにおける平均は

E( yt ) = c + δ t,

自己共分散は

cov(yt , yt – k) = cov (ut , ut – k), k ≥ 0

となる。

平均が時点 tに依存しているので、これは明らかに定常過程ではない。

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程からのサンプル

以下はトレンド定常過程:

yt = 10 + 0.8t + ut , t = 1, ….,

において utがAR(1)過程:

ut = 0.9 ut –1 + εt, εt ~ i.i.d. (1)

に従っているトレンド定常過程からの t = 1,…,50に対してサンプルをプロットしたものである。

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10 +0.8t yt

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程の予測

トレンド定常過程の予測は utの予測ができれば簡単にできる。これを確認しておく。予測のための情報集合を

Ωt = { yt , …., y1 }

とすると、us = ys – c – δsより us (s =1,…,t ) が計算できる。つまり Ωt という情報集合は

Λt = {ut, …, u1}

という情報集合と等しい事がわかる(Λtより Ωt がわかるのは自明だろう) 。

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程の予測

よってΩt という条件のもとで yt+hの条件付き期待値(最適予測)は

E(yt+h | Ωt) = E( c + δ(t +h) + ut +h | Ωt)

= c + δ(t +h) + E(ut +h | Ωt)

= c + δ(t +h) + E(ut +h | Λt)

となる。同じく条件付き分散(MSE)は

var(yt +h | Ωt) = var(ut +h | Λt)

となる。

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程の予測の手順

トレンド定常過程の予測の手順は以下のようになる。

(1) yt , …, y1から ut , …, u1を求める。

(2) ut ,…, u1より ut の h期先予測 を求める。

(3) ytの h期先予測をより求める。

(4) のMSEは のMSEと同じである。

(5) yt+ hの区間予測は ut+h の区間予測にトレンド線を足せばよい。

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thtu |ˆ+

thttht uhtcy ||ˆ)(ˆ++ +++=

thty |ˆ+ thtu |

ˆ+

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非定常時系列、単位根過程

◼ (例) トレンド定常過程の予測

以下は先ほどのトレンド定常過程のサンプルにおいてt = 15 からの ytの h期先予測とその95%予測区間をプロットしたものである (εtには正規分布を仮定した)。

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10 +0.8t yt 予測値

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非定常時系列、単位根過程

◼ トレンド定常過程の予測の性質

トレンド定常過程の予測には以下の性質がある。

(1) 最適予測は予測期間が長くなるにつれてトレンド線に収束する。

(2) 予測のMSEは定常部分の予測のMSEと等しく、予測期間が長くなるにつれて定常部分の定常分散に収束する。

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程

1 変量のAR(1)モデル:

yt = δ + yt –1 + εt, εt ~ W.N.(σ2), t =1,…,

が(弱)定常であるための条件は

< 1

であった。

もし = 1 の場合、このような過程を単位根過程という。

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1

|| 1

1

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程の性質

単位根過程は δ = 0 の時と δ ≠ 0 の時とで性質がかなり違う。以下は

(δ = 0 の場合) yt = yt–1 + εt, εt ~ N(0, 1)

(δ = 0.8 の場合) yt = 0.8 + yt–1 + εt, εt ~ N(0, 1)

について t = 1,..,50 まで発生させたもののグラフである(y0 = 10としてある)。

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10 yt (δ = 0)

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10 +0.8t yt (δ = 0.8)

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程の性質

δ = 0 の場合は トレンドの無い定常過程 (特にAR(1))

に一見するとよく似ている。 またδ ≠ 0 (δ = 0.8) の場合はトレンド定常過程に一見するとよく似ている。

これら単位根過程と定常過程(トレンド定常過程)との違いは何であろうか?

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程とトレンド定常過程の違い

これら2つの違いは予測に顕著に現れる。

これを見るためにまず単位根過程におけるh期先予測を考えてみよう。

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程の t期における h 期先予測

予測のための情報集合を Ωt = {yt,…, y1} とする。yt +hはyt+h = δ + yt + h –1 + εt + h

である。 yt + h –1 = δ + yt + h –2 + εt + h –1を代入すると

yt +h = δ + δ + yt +h –2 + εt + h –1 + εt +h

となる。以下同様に代入していくと

yt + h = h δ + yt + ε t + 1 + … + εt + h

となる。これより最適予測 (条件付期待値)は

E(yt+h | Ωt ) = h δ + yt

となる。19

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非定常時系列、単位根過程

MSE (条件付分散)は

var( yt+h | Ωt ) = var (h δ + yt + εt+1 + … + εt+h | Ωt )

= σ2 + σ2 + …. + σ2

= h σ2

となる。また εt に正規分布を仮定した 95%予測区間は

[ hδ + yt –1.96(h σ2 )1/2 , hδ + yt +1.96(h σ2 )1/2]

となる。

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非定常時系列、単位根過程

まとめると、単位根過程の最適予測、MSE、95%予測区間は

(最適予測)

E(yt+h | Ωt ) = hδ + yt

(MSE)

var(yt+h | Ωt ) = hσ2

(95%予測区間 (εt ~ i.i.d. N(0, σ2 )を仮定) )

[ hδ + yt –1.96(h σ2 )1/2 , hδ + yt +1.96(h σ2 )1/2]

となる。

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非定常時系列、単位根過程

◼ (例)単位根過程の予測

以下は先ほどの単位根過程のサンプルにおいてt = 15 からの ytの h期先予測とその95%予測区間をプロットしたものである 。

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10 yt

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10 +0.8t yt

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非定常時系列、単位根過程

◼ 単位根過程の予測の性質

単位根過程の予測には以下の性質がある。

(1) 最適予測は予測期間が長くなっても何らかの値(定常過程の定常平均やトレンド定常仮定のトレンド線のような)に収束するという事はない。

(2) 予測のMSEは予測期間が長くなるにつれて際限なく大きくなる(予測精度は際限なく悪くなる)。

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演習問題

問題1 トレンド定常過程:

yt = –11 + 4 t + ut,

ut = 0.8 ut –1 + εt, εt ~ i.i.d. N (0, σ2)

に対して、時点 t = 5 において情報集合

Ω5 = {y5, y4, y3, y2, y1} ={4, 3, 2, 1, 0}

に基づいた y6 の最適予測(MSEを最小にする予測)

を求めなさい。

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演習問題

問題2 トレンド定常過程:

yt = c + δ t + ut , t = 1, ….,

ut = ut –1 + εt, εt ~ W.N. (σ2)

においてyt は

yt = c*+ δ* t + yt–1 + εt

とも表現できる事を示しなさい。ただし

c*= (1– )c + δ, δ*= (1– ) δ

である。この時問題1のトレンド定常過程を上記の別表現を用いて表すとどのようになるか?

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1

1

1 11

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演習問題

問題3単位根過程:

yt = δ + yt–1 + εt, t =1,….,

y0 = c, εt ~ W.N.(σ2)

において ytは

yt = δ t + ut,

ut = ut–1 + εt, u0 = c, t =1,….,

とも表現できる事を示しなさい。

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