34
2 新事業展開 中小企業・小規模事業者は、持ち前の機動性・柔軟性・積極性等の強みを活かし、我が国の産業構造転 換に大きく貢献してきた。既存の事業分野にとどまらず、常に新たな事業機会を模索しており、ときには 新市場の開拓者として、我が国経済を牽引している 1 中小企業・小規模事業者の積極果敢な挑戦は、企業自身の成長につながるばかりではなく、我が国経済 の活性化に寄与する可能性も大きい。本章では、既存事業とは異なる事業分野・業種への進出を図る新事 業展開に着目し、その効果や課題、今後の新事業展開に対する意向について概観する。 1 新事業展開を実施した企業の特徴 新事業展開の分類 本章では、新事業展開を次のように定義・分類 し、分析を行うこととする。 ○新事業展開:既存事業とは異なる事業分 野・業種への進出を図ることをいう 2 。さ らに、分析の内容により、新事業展開を事 業転換と多角化に分類する。 ○事業転換:過去 10 年の間に新事業展開を 実施し、10 年前と比較して主力事業 3 が変 わった場合をいう。 ○多角化:過去 10 年の間に新事業展開を実 施した場合で、事業転換以外をいう。 中小製造業の新事業展開の実施割合 ここではまず、製造業に着目し、事業所の従業 員規模別に新事業展開実施の割合を見る。 第 2-2-1 図により、2000 年と 2010 年で比較する と、従業員規模が小さな事業所ほど、新事業展開 を実施する事業所の割合は低くなっており、中小 事業所では大事業所の半分以下の割合となってい る。他方、中小事業所や小規模事業所では、新事 業展開を実施した事業所の過半が事業転換につな がっている。 企業の業績、従業員規模等 既存事業の枠を越え、新事業への挑戦を果たし た企業にはどのような特徴があるのであろうか。 ここからは、「中小企業の新事業展開に関するア ンケート調査 4 」をもとにして、過去 10 年の間に 新事業展開を実施した企業の特徴を、新事業展開 を実施・検討したことがない企業との比較を交え て示していく。 第 2-2-2 図は、新事業展開を実施した企業と、 実施・検討したことがない企業の業績見通しを示 したものである。売上見通し、利益見通し共に 「増加傾向」の割合が最も高いのが事業転換した 企業、次いで多角化した企業であり、新事業展開 を実施・検討したことがない企業の割合を上回っ ている。また、雇用についても、同様の傾向が表 れている 5 1 中小企業憲章前文。 2 統計を用いた分析では、業種分類を総務省「日本標準産業分類」の小分類ベースで見ている。 3 主力事業とは、売上高(出荷額)に占める割合が最も高い製商品・サービスを提供する事業全体をいう。 4 中小企業庁の委託により、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)が、2012 年 11 月に中小企業 15,000 社を対象に実施したアンケート調査。回収率 20.9%。詳 細は、参考資料を参照。 5 今年度の業績見込みについても、3年後の業績見通しと同様に、事業転換、多角化した企業の順に増加傾向の割合が高い(付注2-2-1を参照。)。ここでは、新事業 展開した場合の比較を行うため、「最近10年間に新事業展開を実施又は検討したことがあるか」という問いに対して、「実施も検討もしたことがない」と回答した企 業を示しているが、同問いには「検討したことがある又は検討中」と回答する企業もある。こうした企業の業績見通しについては、付注 2-2-2 を参照。総じて、多 角化した企業と未実施の企業の中間で、やや多角化に近い傾向を示していることが分かる。 2 91 中小企業白書 2013

新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

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第2章新事業展開

中小企業・小規模事業者は、持ち前の機動性・柔軟性・積極性等の強みを活かし、我が国の産業構造転換に大きく貢献してきた。既存の事業分野にとどまらず、常に新たな事業機会を模索しており、ときには新市場の開拓者として、我が国経済を牽引している1。中小企業・小規模事業者の積極果敢な挑戦は、企業自身の成長につながるばかりではなく、我が国経済の活性化に寄与する可能性も大きい。本章では、既存事業とは異なる事業分野・業種への進出を図る新事業展開に着目し、その効果や課題、今後の新事業展開に対する意向について概観する。

第1節 新事業展開を実施した企業の特徴

■新事業展開の分類本章では、新事業展開を次のように定義・分類

し、分析を行うこととする。

○新事業展開:既存事業とは異なる事業分

野・業種への進出を図ることをいう2。さ

らに、分析の内容により、新事業展開を事

業転換と多角化に分類する。

○事業転換:過去10年の間に新事業展開を実施し、10年前と比較して主力事業3が変

わった場合をいう。

○多角化:過去10年の間に新事業展開を実施した場合で、事業転換以外をいう。

■中小製造業の新事業展開の実施割合ここではまず、製造業に着目し、事業所の従業

員規模別に新事業展開実施の割合を見る。

第2-2-1図により、2000年と2010年で比較すると、従業員規模が小さな事業所ほど、新事業展開

を実施する事業所の割合は低くなっており、中小

事業所では大事業所の半分以下の割合となってい

る。他方、中小事業所や小規模事業所では、新事

業展開を実施した事業所の過半が事業転換につな

がっている。

■企業の業績、従業員規模等既存事業の枠を越え、新事業への挑戦を果たし

た企業にはどのような特徴があるのであろうか。

ここからは、「中小企業の新事業展開に関するア

ンケート調査4」をもとにして、過去10年の間に新事業展開を実施した企業の特徴を、新事業展開

を実施・検討したことがない企業との比較を交え

て示していく。

第2-2-2図は、新事業展開を実施した企業と、実施・検討したことがない企業の業績見通しを示

したものである。売上見通し、利益見通し共に

「増加傾向」の割合が最も高いのが事業転換した

企業、次いで多角化した企業であり、新事業展開

を実施・検討したことがない企業の割合を上回っ

ている。また、雇用についても、同様の傾向が表

れている5。

1 中小企業憲章前文。2 統計を用いた分析では、業種分類を総務省「日本標準産業分類」の小分類ベースで見ている。3 主力事業とは、売上高(出荷額)に占める割合が最も高い製商品・サービスを提供する事業全体をいう。4 中小企業庁の委託により、三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(株)が、2012年11月に中小企業15,000社を対象に実施したアンケート調査。回収率20.9%。詳細は、参考資料を参照。

5 今年度の業績見込みについても、3年後の業績見通しと同様に、事業転換、多角化した企業の順に増加傾向の割合が高い(付注2-2-1を参照。)。ここでは、新事業展開した場合の比較を行うため、「最近10年間に新事業展開を実施又は検討したことがあるか」という問いに対して、「実施も検討もしたことがない」と回答した企業を示しているが、同問いには「検討したことがある又は検討中」と回答する企業もある。こうした企業の業績見通しについては、付注2-2-2を参照。総じて、多角化した企業と未実施の企業の中間で、やや多角化に近い傾向を示していることが分かる。

第 2 部第1節

91中小企業白書 2013

Page 2: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

多角化

事業転換

多角化

事業転換

大事業所(300人超)(n=1,308)

中小事業所(300人以下)(n=62,926)

小規模事業所(20人以下)(n=39,857)

資料:経済産業省「工業統計表」再編加工(注) 1.従業者4人以上の事業所が対象。   2.n値は新事業展開を実施した事業所の数を表している。

(%)

9.8

15.4

11.0

18.6

15.1

38.8

新事業展開

横ばい 減少傾向増加傾向

横ばい 減少傾向増加傾向

横ばい 減少傾向増加傾向

0% 100%

新事業展開を実施・ 検討したことがない企業    (n=1,690)

多角化した企業  (n=633)

事業転換した企業   (n=201)

0% 100%

新事業展開を実施・ 検討したことがない企業

(n=1,684)

多角化した企業(n=635)

事業転換した企業 (n=202)

0% 100%

新事業展開を実施・ 検討したことがない企業

(n=1,694)

多角化した企業(n=636)

事業転換した企業 (n=202)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))

新事業展開

売上高(3年後の見通し)

新事業展開

経常利益(3年後の見通し)

新事業展開

常用雇用者(3年後の見通し)

48.8 32.3 18.9

35.2 38.4 26.4

20.2 47.8 32.0

42.6 37.1 20.3

32.4 39.7 27.9

18.3 47.4 34.3

40.1 42.1 17.8

25.6 51.4 23.0

15.1 60.7 24.2

第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年)

第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

第2章 新事業展開

92 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 3: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

21 ~ 50人 51~ 100人 100人超20人以下

0% 100%

新事業展開を実施・検討したことがない企業      (n=1,704)

多角化した企業(n=634)

事業転換した企業 (n=203)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))

新事業展開

31.0 31.0 14.3 23.6

19.7 23.5 19.6 37.2

31.0 26.3 15.2 27.5

第2-2-3図 新事業展開実施有無別の企業の従業員規模

こうした業績見通しの違いを踏まえると、事業

の再生や成長の観点から、新事業展開が重要であ

ることが見て取れる。

第2-2-3図は、新事業展開実施の有無別に、企業の従業員規模を示したものである。事業転換し

た企業は、新事業展開を実施・検討したことがな

い企業と比較して従業員規模に大きな違いはな

い。一方、多角化した企業は、従業員100人超の企業が約4割となるなど、従業員規模が大きな企業が占めている割合が高い。前掲第2-2-1図により、製造業の大事業所では多角化する割合が高い

ことを示したが、全業種でも同様の傾向を示して

いることが分かる。

一般的には、多くの事業を展開する大規模な企

業ほど、主力事業の入れ替わりを伴う事業転換が

起こりやすいと考えられるが、調査結果を見る

と、従業員規模が小さな企業ほど、新事業に自社

の経営資源を集中し、機動的に主力事業を転換さ

せている一方、従業員規模が大きな企業ほど、主

力事業を維持しながら新事業に進出し、事業分野

を拡大させている傾向にあることが分かる6。

6 主力事業の転換に伴い、以前の主力事業の売上規模がどのように変化したのかについては、付注2-2-3を参照。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第1節

93中小企業白書 2013

Page 4: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

あまり変わっていなかった 悪化していた好転していた

0% 100%

多角化した企業(n=589)

事業転換した企業(n=197)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 「分からない」を除いて集計している。

新事業展開

35.5 34.0 30.5

21.1 58.6 20.4

事 例

同社が開発したリューザブル単孔ポート(単孔式内視鏡下手術用デバイス)

新事業展開を実施した企業について、新事業展

開の検討を始めたときの業績傾向を見てみる(第2-2-4図)。これを見ると、事業転換した企業、多角化した企業共に、当時の業績は好転と悪化がほ

ぼ拮抗している。検討を始めた当時から業績が好

転していた企業ばかりが、新たな収益源確保のた

めに新事業展開を実施しているわけではなく、業

績が悪化している中で、現状打開のために新事業

医療機器事業に本格参入し、同事業の売上を大きく伸ばした企業

栃木県鹿沼市の株式会社スズキプレシオン(従業員65名、資本金3,000万円)は、半導体製造装置、医療機器等の部品の微細切削加工を得意とする企業である。10年ほど前までは、半導体製造装置関連が売上のほとんどを占めていた。同社に転機が訪れたのは、2005年頃、僅かながら部材を手掛けていた医療機器メーカーの取引先から、同社が製造業者としての免許を取得しないと仕入れられなくなるかもしれないとの相談を持ち掛けられたことであった。当時は現在と比べ、医療機器産業がそれほど注目されていなかったが、先行参入のメリットがあると判断し、本格的に医療機器事業に参入することを決意した。まず、医療機器分野に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格である ISO 13485の認証を取得する準備に取り掛かった。当時、同規格の認証を取得している企業は少なく、その取得が信用力の向上や取引先の開拓につながると考えたからである。現在、同社は医療機器製造業許可、医療機器製造販売業許可も取得し、医療機器メーカーと直接取引する体制を構築している。また、同社の高い技術力に加え、医療機器に関する知識や品質保証体制の構築、営業専任者を配置して、医療

関係者の要望を拾い上げるネットワークづくりが奏功している。半導体関連の事業環境が厳しさを増す中で、2012年度にはインプラント、内視鏡部品を中心とした医療機器事業の売上が、売上全体の6割を超えるようになっている。同社の鈴木庸介会長は、「当社は、ものづくり現場のスタッフも対応力があり、取引先の担当者が直接製造を手掛ける社員とコミュニケーションができる。量産となれば、現場の対応力も必要であり、営業の力だけでなく、組織的な対応力が当社の強みとなっている。」と語る。

2-2-1:株式会社スズキプレシオン

第2-2-4図 新事業展開の検討を始めたときの業績傾向

第2章 新事業展開

94 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 5: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

設計の様子

展開を実施した企業の二者が存在することが推察

される7。

以下の事例のように、業績が悪化している中で

後継者が新事業に活路を見いだし、第二創業とも

呼べる大胆な新事業へ転換を果たしたことが奏功

し、業績を大幅に改善させた企業もある。

現場のものづくりの精神を受け継ぎ、新事業を立ち上げたものづくり企業

長野県伊那市の有限会社スワニー(従業員13名、資本金400万円)は、筐体、機械部品等の3次元 CADによる設計の受託や3次元スキャナ、3次元プリンタ等の設備を駆使して、商品企画・開発から試作・量産までの支援を行う企業である。同社社長の橋爪良博氏の先々代が、精密電子部品の絶縁用静電粉体塗装等を行う企業として1970年に設立し、最盛期には60人程度の従業員が働いていた。しかし、取引先大手メーカーの組立工場等の海外移転により仕事が減り、橋爪社長が戻ってきた2010年には両親しか会社に残っていないという状況であった。橋爪社長は、同社に戻る以前、大手メーカーの派遣社員等として、製品設計、製造現場管理等の業務に携わってきた。その経験から、設計と試作、さらには製造が一体であることが重要と考え、アイディアを素早く設計・試作することで、独創的な製品開発ができる環境を製品開発技術者に提供したいとの思いを持つようになった。父親から会社を引き継いだ当初は、自分一人で徐々に現在の事業を始めるつもりであったが、自らの思いを様々な人に語り続けたところ、多くの相談が寄せられるようになった。そこで、同社は、設備や従業員を充実させ、現在では、全国の大手メーカー、中小企業等からの急な試作依頼にも対応する駆け込み寺的な存在となっている。新事業を立ち上げて間もないこともあり、同社の従業員には、ものづくりやデザインに興味を持つ地元の若者

が多い。設計の経験年数は少ないが、顧客とのやり取りを任され、設計図面から試作品を作り、繰り返し確認するなどにより、多くの経験を積んで技術力を向上させている。橋爪社長は、「事業は大きく変わったが、父親から受け継いだ現場のものづくりの精神は変わっていない。鳥肌が立つような、わくわくする製品の開発に携わり、今後もそうした製品を生み出していきたい。ものづくりが日本から失われてしまわないためには、地域の町工場が生き残っていかなければならない。当社の頑張りが刺激となって、地元伊那で、各地からの仕事が増え、若い技術者が育つこと等につながればと思う。また、若い私ができることならば、他地域でもできるのではないかと思ってもらえるきっかけになりたい。」と語る。

2-2-2:有限会社スワニー

7 新事業展開実施前後で業績がどのように変化したかについては、付注2-2-4を参照。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第1節

95中小企業白書 2013

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事 例

コマ大戦の様子

全日本製造業コマ大戦を主催し、製造業の活性化に取り組む企業

神奈川県横浜市の株式会社ミナロ(従業員13名、資本金1,000万円)は、人工木材(ケミカルウッド)を高精度に削り、自動車や船舶等の模型の製作を手掛ける企業である。同社の緑川賢司社長は、本業に取り組む傍ら、全国の製造業者が独自の喧嘩ゴマで技術力や構想力を競う、全日本製造業コマ大戦を主催している。同大会は、内向きがちな製造業を活気づけようと、緑川社長が2011年から構想を始め、SNS 等で全国の製造業者に参加を呼び掛けたことがきっかけである。こうした呼び掛けに賛同した企業や企業グループを中心に、2012年に開催された第1回全国大会には22チーム、2013年の第2回全国大会8には約200チームが参加する規模となった。対戦の勝敗を左右する要素は、直径2 cm以下という仕様の範囲内で、相手のコマにぶつけられても強く、かつ長時間回り続けるコマを製造できるかという点である。参加企業は、従業員一丸となって技術開発に取り組み、創意工夫してその条件を満たすコマを作り上げていく。その結果、企業内のモチベーション向上や、ベテランから若手への技術承継にもつながったという声も多い。さらに、複数の企業でチームを組んでコマを開発し出場するケースもあり、企業間の連携が深まるとともに、新しいアイディアや技術開発の誕生に寄与してい

る。また、各種メディアにも大きく取り上げられたことで、コマの販売等を通じた、新たな販路の確立にも貢献している。緑川社長は、「コマという遊びの要素を加えたことによって、みんなが生き生きと頑張っている。こうした取組をきっかけに、製造業同士の輪が広がっていけば、日本の製造業は必ず活気を取り戻す。」と語る。第1回全国大会では、神奈川県茅ヶ崎市の株式会社由紀精密が優勝し、第2回全国大会では、岐阜県美濃市の有限会社シオンが優勝した。今後は、大会を円滑に運営していくため、スポンサーを募り、国内ばかりでなく海外大会も開催しようと、更なる企画運営に意欲を示している。

2-2-3:株式会社ミナロ

8 前掲事例2-2-2で紹介した有限会社スワニーも、信州北越の地方大会で優勝し、同大会に参加した。

第2章 新事業展開

96 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 7: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

新事業展開を実施・検討したことがない企業     (n=1,518)

多角化した企業(n=599)

事業転換した企業 (n=184)

0% 100%

0% 100%

新事業展開を実施・検討したことがない企業     (n=1,182)

多角化した企業(n=548)

事業転換した企業 (n=178)

ある程度の成長が期待できる あまり成長が期待できない

全く成長が期待できない大きな成長が期待できる

成長が期待できる事業分野がある程度ある 成長が期待できる事業分野は少ない

成長が期待できる事業分野はない成長が期待できる事業分野が多くある

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 「分からない」を除いて集計している。

新事業展開

新事業展開

【主力事業の見通し】

【国内市場の見通し】

11.4 50.5 30.4 7.6

2.5 36.2 51.1 10.2

1.1 32.9 54.4 11.6

10.7 46.1 38.8 4.5

5.1 41.6 49.5 3.8

2.5 34.1 56.7 6.8

第2-2-5図 新事業展開実施有無別の主力事業と国内市場の見通し

新事業展開を実施した後の主力事業の見通しを

見ると、事業転換した企業、多角化した企業共

に、新事業展開を実施・検討したことがない企業

と比較して、主力事業の成長が期待できると回答

する割合が高い。この傾向は、特に事業転換した

企業で顕著であり、事業転換した企業は、既存事

業から、より成長余地の大きな事業分野へ転換を

果たしたことがうかがえる(第2-2-5図)。また、事業転換した企業、多角化した企業共に

新事業展開を実施・検討したことがない企業に比

べて、国内市場の見通しは明るく、自社の主力事

業ばかりでなく、国内市場全体に対しても、成長

が期待できると見込んでいることが分かる。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第1節

97中小企業白書 2013

Page 8: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

同社敷地内の直売所 いわき駅の駅ビルにある直営店舗

トマトの生産から直売、加工品販売まで手掛ける農業生産法人

福島県いわき市にある有限会社とまとランドいわき(従業員36名、資本金3,300万円)は、施設園芸先進国であるオランダの技術を導入して建設された大規模ガラス温室と日本有数の日照時間を活かして、低農薬で栄養価が高いトマトを年間約800トン生産する農業生産法人である。同社の温室では、日射量や光の強さ、トマトの養液の吸い上げ量等がセンサーで自動感知され、天窓やカーテンの開閉、養液の供給等がコンピュータで複合制御されている。これにより、ビタミン Cやリコピンの含有量が通常の2倍近く、完熟状態でも身の締まったトマトを、安定的に低農薬で生産することが可能となっている。同社は稲作、酪農を営む個人農家であった鯨岡千春氏により2001年に設立された。設立当初、生産したトマトを市場に出荷していたが、その後、敷地内やいわき駅ビルに直売所を開設。2008年には、トマトジュースの販売等、加工品事業も開始した。同商品は、規格外のト

マトを有効活用するため、2007年から、直売所で無料提供していたところ、評判となり要望に応える形で商品化したものである。生食用の新鮮なトマトを使ったジュースは珍しく、甘くて濃厚なのに飲みやすい味が受け入れられ、広まっていった。「ジュースが美味しかったので、生のトマトも食べてみたかった。」と言って直売所を訪れる人もいるなど、相乗効果も生まれている。当初はトマトジュースだけだった加工品も、パスタ用トマトソースやジャム、ゼリー、アイスクリーム等、品ぞろえが増えている。直売や加工品販売の事業を手掛けたことにより、トマト生産も拡大し、設立当初は約25名だった従業員が、現在の規模にまで増えている。同社の温室や直売所では、地元の主婦層がフルタイム雇用で活躍しており、また、収穫が最盛期を迎える夏場には、近隣の農家OBも応援に駆けつける。同社の元木寛専務取締役は、「常に地元の人たちに助けられてやってきた。今後も、より地域に密着した事業展開を考えていきたい。」と語る。

2-2-4:有限会社とまとランドいわき

第2章 新事業展開

98 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 9: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

自社ブランドの製商品・サービスがない自社ブランドの製商品・サービスがある

0% 100%

新事業展開を実施・検討したことがない企業    (n=1,691)

多角化した企業(n=634)

事業転換した企業 (n=204)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))

新事業展開

59.3 40.7

50.9 49.1

34.2 65.8

第2-2-6図 新事業展開実施有無別の自社ブランドの製商品・サービスの有無

第2-2-6図は、新事業展開実施の有無別に、自社ブランドの製商品・サービスを持っている企業

の割合を示したものである。事業転換した企業や

多角化した企業では、新事業展開を実施・検討し

たことがない企業に比べて、自社ブランドの製商

品・サービスを保有している割合が高い。

中小企業・小規模事業者にとって、自社ブラン

ドの製商品・サービスを持つことは容易ではな

い。前掲第2-2-2図で、新事業展開を実施した企業の業績との関係を示したが、個々の企業の経営

努力による自社ブランドの確立が、結果的に事業

転換等を可能として業績向上に結び付いた可能性

がある。

新事業展開と業績、自社ブランドの確立の相関

性を踏まえると、自社ブランドの開発が、新事業

展開にとって重要な要素であると考えられる。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第1節

99中小企業白書 2013

Page 10: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

▶▶ 中小企業・小規模事業者が開発した製商品・サービスの事例我々が住む現代社会には、中小企業・小規模事業者の絶え間ない努力の末に、開発された製商品・サービスが数多く存在する。こうした製商品・サービスは、我々の生活に根付き、我々のライフスタイルをも大きく変えてきた。ここでは、中小企業・小規模事業者が開発した、画期的な製商品・サービスの一例を紹介する。

[製商品・サービスの一例]■ホワイトローズ株式会社:ビニール傘東京都台東区のホワイトローズ株式会社(従業員3名、資本金3,500万円)は、世界で初めてビニール傘を開発した企業である。開発したのは終戦後間もなくの頃であったが、その後の安い海外製品の流入により国産メーカーが淘汰されていく中で、発明者だからと踏ん張り、独自性のある国産ビニール傘を現在も作り続ける唯一の企業である。

■株式会社フルタイムシステム:宅配ボックス ※開発当時は中小企業東京都千代田区の株式会社フルタイムシステム(従業員108名、資本金4億9,800万円)は、1985年に我が国初の宅配ボックスを開発した企業である。同社の代表取締役である原幸一郎氏が1983年に開発に着手、1985年に「配送物の安全保管管理システム(宅配ボックス)」で実用新案権を取得し、同社を設立した。

■オルファ株式会社:折る刃式カッター大阪府大阪市のオルファ株式会社(従業員88名、資本金3,600万円)は、カッターナイフ及び付属備品の製造・販売を手掛ける企業である。同社の創業者である岡田良男氏が、印刷所で紙を切るのに、経済的で使いやすいナイフとして、1956年に折る刃式カッターナイフを開発し、現在では世界100以上の国・地域に輸出するまでになっている。

■元禄産業株式会社:回転寿司大阪府東大阪市の元禄産業株式会社(従業員250名、資本金1,000万円)は、「元祖 廻る元禄寿司」を運営する企業である。同社の創業者である白石義明氏が、ビール工場のベルトコンベアにヒントを得て回転寿司のシステム一式を発明し、1958年、東大阪市に第1号店を出店した。その後、1962年に「コンベア旋回式食事台」で特許を取得し、日本万国博覧会に出展したことを機に全国に広まった。

コラム 2-2-1

第2章 新事業展開

100 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 11: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

(n=446)

0 10 20 30 40 50 60 70

新製品・サービスの開発費用が比較的少ない

親会社や取引先からの要請があった

競争が激しいが、市場として高成長している

社会的課題の解決につながる

新しい市場であり、先行参入するメリットがある

自社製品・サービスの提供ルートを活かせる

自社の技術・ノウハウを活かせる

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.新事業展開で成果を上げた企業とは、過去10年の間に新事業展開を実施し、その総合的な評価として、自社の経営に「良い影

響があった」と回答した企業を新事業展開で成果を上げた企業として集計した。   2.選択理由として挙げられた上位7項目を表示している。

(%)

66.4

35.0

19.5

19.3

18.2

13.9

13.9

第2-2-7図 新事業展開で成果を上げた企業の事業分野の選択理由(複数回答)

第2節 新事業展開における事業分野の選択理由と効果

前節では、新事業展開を実施した企業の特徴

を、業績見通しや従業員規模等から見てきた。本

節では、新事業展開における事業分野の選択理由

や効果について見ていく。

■新事業の事業分野企業が新事業の事業分野を選択するに当たって

は、どのような点を重視しているのであろうか。

第2-2-7図は、新事業展開で成果を上げた企業に

ついて、新事業の事業分野の選択理由を尋ねたも

のであるが、これを見ると、「自社の技術・ノウ

ハウを活かせる」が最も高い割合を占め、次いで

「自社製品・サービスの提供ルートを活かせる」

が挙げられている。経営資源に乏しい中小企業・

小規模事業者にとって、既存の経営資源を最大限

に活かせる分野を模索してきたことがうかがえ

る。

以下の事例のように、既存事業で培った技術・

ノウハウを応用して新事業に進出し、成功を収め

た企業もある。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第2節

101中小企業白書 2013

Page 12: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

同社が製造する太陽光発電架台

長年培った建築用鋼材技術を水平展開し、太陽光発電架台事業に取り組む企業

大阪府松原市の奥地建産株式会社(従業員117名、資本金6,000万円)は、住宅の天井や床、壁を支える鋼製下地材を製造する企業である。住宅ごとに必要な部材をまとめて生産し、一つ残らず正確に出荷する邸別生産・邸別出荷を実現している。この結果、住宅着工戸数が減少する中でも、住宅関連の売上を維持している。同社は2002年、大手電機メーカーからの依頼をきっかけに、太陽光発電架台の製造を開始した。屋根の形は家ごとに異なり、モジュールの設置に必要な部材や寸法も違う。大手メーカーでは個別に対応できないため、邸別生産・邸別出荷の実績を持つ同社に依頼があった。架台の製造は、鋼製下地材製造で培った技術を水平展開できる分野であったため、太陽光発電関連に注力することを決断し、2009年には他の企業に先駆けて産業用発電架台の製造も開始した。技術開発に強みを持つ同社は、基礎研究にも力を入れ、材料や構造に関する産学共同研究を実施している。また、全国7地点で、材料の長期曝露実験を行い、塩害や硫化水素、窒素酸化物等が素材に与える影響も調査している。こうした独自の基礎研究への取組等が評価され、産業用発電架台の注文を、同社が直接受けるようになった。

現在、太陽光発電架台の累計出荷数は20万棟分に達し、住宅用発電架台ではトップシェアを占める。太陽光発電関連事業の業績は順調に伸びており、2012年度には主力の住宅関連事業と同程度に成長する見込みである。同社では、近年の需要増加に対応するため、福島県須賀川市に新工場を建設中である。同工場は、太陽光発電設備を併設した電力自給自足型の工場であり、震災復興のシンボルとして大きな期待を集めている。

2-2-5:奥地建産株式会社

第2章 新事業展開

102 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 13: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

IH 加熱カート IH 加熱カート用食器

こうした取組により、新事業展開を実施した企

業は、どのような効果を得ることができるのであ

ろうか。第2-2-8図を見ると、「企業の PR・知名度の向上」、「企業の信用力向上」、「企業の将来

性・成長性」等の項目で「良い影響があった」と

回答する割合が高くなっている。他方、企業利益

の増加や安定化については、「良い影響があった」

と回答する企業がある一方、「悪い影響があった」

と回答する企業も一定程度存在している。新事業

展開は、企業収益への短期的効果よりも、企業の

積極的な事業展開が、企業の知名度や信用力の向

上を通じて、経営基盤全般に好影響を生んでいる

ことが見て取れる。

産学連携により漆塗りの技術を応用した新技術を開発し、新たな需要を開拓した企業

株式会社下村漆器店(従業員14名、資本金1,000万円)は、越前漆器の産地である福井県鯖江市において、漆器の伝統的技法を受け継ぐと同時に、時代の変化に合わせた商品開発で、事業の拡大を図ってきた企業である。同社は2000年に、大手航空会社のグループ企業から、IH加熱に対応した食器と食器トレーの開発依頼を受けた。この開発は技術的課題が多く、実用化には困難が予想された。しかし、商品化に成功すれば、大規模に給食サービスが行われている、病院や学校向けの需要を取り込むことができると考え、商品の研究開発に着手した。本業の漆器の製造・販売で、低価格の海外製品の流入拡大に危機感を覚えていた同社は、新たな市場に事業領域を広げることで収益源の確保を目指した。同社はまず、IH加熱に伴う局部的な熱膨張による変形を防止し、ステンレスと樹脂で異なる熱膨張率を考慮しながら、一体的に成形する技術を開発した。さらに、国立大学法人福井大学等との連携で、食材の色素が容器に付着して変色するのを防ぐと同時に、耐久性を向上させることを目的とした、セラミック系材料による薄膜

コーティング技術を開発した。これは、組成が異なる材料を塗り重ねる、越前漆器の伝統的な漆積層技術に、ナノ粒子の多層成膜技術を融合させたものである。こうした技術開発の独自性が評価され、2007年に食器トレーは特許を取得し、「第3回ものづくり日本大賞伝統技術の応用部門 優秀賞」を受賞した。IH加熱対応食器事業は、売上の約5割を占めるまでに成長しており、同社の主力事業となっている。現在は、調理前の食材等を盛り付けた食器を、カート内で IH加熱調理する新たな料理提供システムの事業化に取り組んでおり、福祉施設での実証実験等を通じて、レシピや操作マニュアル等の開発を行っている。

2-2-6:株式会社下村漆器店

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第2節

103中小企業白書 2013

Page 14: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

どちらともいえない悪い影響があった

良い影響があった

0% 100%

下請企業からの脱却(n=710)

優秀な人材確保(n=771)

企業利益の安定化(n=779)

雇用の増加(n=778)

企業利益の増加(n=779)

技術力や製品開発力の向上(n=769)

従業員の意欲向上や能力向上(n=779)

企業の将来性・成長性(n=779)

企業の信用力向上(n=774)

企業のPR・知名度の向上(n=773)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.それぞれの項目について、「良い影響」、「やや良い影響」を選択した回答を良い影響があったとして集計し、「悪い影響」、「やや

悪い影響」を選択した回答を悪い影響があったとして集計している。

64.7 34.5 0.8

60.7 37.2 2.1

60.7 34.0 5.3

53.3 42.0 4.7

51.8 46.4 1.8

51.0 31.3 17.7

45.8 50.0 4.2

43.9 40.4 15.7

29.3 66.4 4.3

20.3 77.7 2.0

第2-2-8図 新事業展開を実施したことによる効果

▶▶

0

5

10

15

20

25

30

コンテンツ関連

リハビリ・介護関連機器

その他エネルギー関連

余暇・観光関連

医療・介護周辺サービス

医薬品、医療用機器

農林漁業関連

IT関連新エネルギー関連

省エネルギー関連

環境保全・リサイクル関連

(%)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.新事業の関連分野については、過去10年の間に新事業展開を実施又は検討した企業のうち、「該当するものはない」

を除いて集計している。   2.今後、関心のある新事業分野については、今後新事業展開を実施又は検討すると回答した企業のうち、「該当するも

のはない」を除いて集計している。

今後、関心のある新事業分野(n=732)新事業の関連分野(n=759)

23.719.6

15.7 15.3 14.110.7 9.4 9.2

6.3 5.4 4.1

26.5 26.028.3

13.016.0

13.4 12.710.2 10.8

8.6

3.6

新事業の関連分野(複数回答)

新事業の関連分野前掲第2-2-7図により、企業が新事業の事業分野を選択する際には、自社の技術・ノウハウを活かせる事業分野を重視していることが分かったが、具体的にはどのような分野に進出してきたのであろうか。過去10年の間に新事業展開を実施又は検討した企業において、最も進出先が多かった事業分野は「環境保全・リサイクル関連」であり、次に「省エネルギー関連」、「新エネルギー関連」と続く。一方、今後新事業展開を実施又は検討する予定の企業に、今後関心のある新事業分野を尋ねたところ、「新エネルギー関連」や「省エネルギー関連」と回答する企業が約3割となり、将来においても、エネルギー関連事業への関心が高くなっている。また、「農林漁業関連」も約2割となっており、今後、6次産業化の一層の進展が期待される。

コラム 2-2-2

第2章 新事業展開

104 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 15: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

▶▶

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

50.0

1009080706050403020100(年)

資料:経済産業省「工業統計表」再編加工(注) 従業者数4人以上の事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。

(億円) (%)

出荷額全体に占める割合(右軸)

中小企業が占める割合(左軸)

2,4782,4312,5012,5132,4602,2462,1342,0482,0202,0901,981

46.542.642.6

35.636.334.132.7

35.234.534.133.8

中小企業の医療用機械器具・同装置の出荷額と割合の推移

成長分野を支える中小企業・小規模事業者前掲コラム2-2-2からも分かるように、中小企業・小規模事業者が新事業展開を実施しようとしている分野は、今後の成長が見込まれる分野に集中しており、中小企業・小規模事業者がこうした分野で存在感を高めている。今後の成長分野を代表して、医療用機械器具・同装置の出荷額の推移を見ると、この分野では中小企業・小規模事業者の出荷額が徐々に増えており、全体に占める割合も年々拡大している9。中小企業・小規模事業者がこうした成長分野で産業を下支えし、産業の発展に貢献していくことが期待される。

コラム 2-2-3

9 医療用機械器具・同装置の出荷額の推移については、付注2-2-5を参照。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第2節

105中小企業白書 2013

Page 16: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

小規模事業者(n=115) 中規模企業(n=710)

051015202530354045

特に課題はない

その他

既存事業の経営がおろそかになる

安定的な仕入先の確保が困難

業務提携先の確保が困難

新事業分野の参入障壁

有望な事業の見極めが困難

情報収集力が不足

資金調達が困難

製品開発力、商品企画力が不足

自己資金が不足

新事業経営に関する知識・

ノウハウの不足

販売先の開拓・確保が困難

新事業を担う人材の確保が困難

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。

(%)

32.236.5

19.1

33.0

14.8

23.5

14.810.4 9.6

7.0 6.18.7

1.77.0

42.1

34.5 34.8

14.9

25.4

10.1

16.613.1

8.2 6.5 6.93.9 2.3

8.0

第2-2-9図 規模別の新事業展開に際して直面した課題(複数回答)

第3節 新事業展開の課題

前節まで、新事業展開の事業分野と効果につい

て見てきたが、その過程では様々な課題に直面す

ることも考えられる。本節では、新事業展開を実

施した企業が直面した課題について論じる。

■新事業展開における課題新事業展開を実施した企業が直面した課題を、

規模別に比較して見ると、小規模事業者では「自

己資金が不足」、「資金調達が困難」のように資金

面の課題を挙げる事業者が多い(第2-2-9図)。第1部第4節で、小規模事業者の自己資本比率が

製造業を中心に低水準で安定していることを示し

たが、小規模事業者の全般的な資金調達の困難さ

が新事業展開を実施するに当たっての課題にも及

んでいることが分かる。

それに対し、中規模企業では「新事業を担う人

材の確保が困難」、「新事業経営に関する知識・ノ

ウハウの不足」と回答する企業が多くなっている。

また、「販売先の開拓・確保が困難」は、規模に

かかわらず多くの企業が挙げており、共通の課題

となっていることが分かる。

第2章 新事業展開

106 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 17: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

同社の歯科用無線口腔内カメラ

同社のデジタル X線画像装置「NAOMI」

第2-2-10図は、新事業展開に際して直面した課題として、「自己資金が不足」、「資金調達が困

難」と回答した企業に対し、資金の調達方法とし

て、今後活用したいものを尋ねた結果である。資

金面の課題が特に顕著だった小規模事業者では、

中規模企業と比較して、「補助金・助成金」や「資

本性融資(劣後ローン)」を活用したいという事

業者が多く、通常の融資以外の調達も視野に入れ

ていることが分かる。

独自の開発・マーケティング戦略で医療分野での事業展開を行う企業

長野県長野市の株式会社アールエフ(従業員230名、資本金17億8,220万円)は、歯科用無線口腔内カメラ、デジタル X線画像装置等医療用機器の開発・製造・販売を行っている企業である。同社社長の丸山次郎氏が1993年に夫婦二人で創業した当初、工業用の小型無線 CCD(電荷結合素子)カメラを開発し、鉄道模型等でも使われていたが、1996年、鉄道模型カメラを持って突然訪れた米国の歯科医師から、製品を口腔内カメラに転用できないかと熱望されたことをきっかけに、医療分野に参入した。国内では知名度が低かったが、先進市場の米国で、同社の口腔内カメラの品質と手頃な価格が高く評価され、それが国内外でのヒットにつながった。現在は、同社の CCD技術を活かした、デジタル X線画像装置を主力製品として、国内外で顧客を獲得しており、2012年春にはインプラント治療に欠かせない、歯科用 X線 CT(コンピュータ断層撮影)装置も上市している。同社の販路開拓は、開業医にターゲットを絞った直接販売であることに、大きな特徴がある。開業医にダイレクトメールを発送し、関心を持った医師に、全国の主要都市12か所に設けた店舗に来訪してもらい、その場で実機を確認しながら商談を進めるため、成約率が高まる。さらに、製品に関する様々な意見を直接聞いて、製品開発部門にフィードバックすることにより、迅速な製品改良や新製品開発につなげている。同社は、開発メーカーでありながら、営業が製品の仕様・価格・発売時期等の主導権を握っている。顧客ニーズを踏まえ、独自の技術を駆使し、高性能ながら他社では実現できない価格帯の製品を開発・販売し、業界トップのシェアを獲

得している。同社は、増加する需要に対応するため、長野市内に新工場を建設し、2012年8月に稼働させるとともに、福島県須賀川市の工業団地で、撤退した物流センターを改修して設立した新工場を11月に稼働させている。中国等海外への生産移転を考えず、将来も国内生産にこだわっていくのが同社の創業以来の経営方針である。また、大震災を教訓に、開業医が必要とする消耗品や、災害備蓄品の提供等を行う新会社を設立し、開業医の医師やスタッフが、診療に専念できる環境、災害に強い環境を目指した取組を新事業として展開している。同社のデジタル X線画像装置の名称「NAOMI」の由来となった同社副社長の柄沢直美氏は、「我々が、開業医のニーズを踏まえた、新たな機器やサービスを提供することにより、開業医の新規開業や事業運営の負担が軽減され、診療環境がより良くなることが、結果的に患者さんのためになる。」と語る。

2-2-7:株式会社アールエフ

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第3節

107中小企業白書 2013

Page 18: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

補助金・助成金

資本性融資(劣後ローン)

出資融資

0% 100%

中規模企業(n=112)

小規模事業者(n=37)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施し、直面した課題で「自己資金が不足」、「資金調達が困難」と回答した企業を集計している。   2.「その他」を除いて集計している。

62.2 18.9 10.8 8.1

74.1 13.4 2.7 9.8

第2-2-10図 規模別の資金の調達方法として今後活用したいもの

下請比率25%未満の企業(n=237) 下請比率25%以上の企業(n=139)

05101520253035404550

特に課題はない

その他

既存事業の経営がおろそかになる

業務提携先の確保が困難

安定的な仕入先の確保が困難

新事業分野の参入障壁

資金調達が困難

有望な事業の見極めが困難

情報収集力が不足

自己資金が不足

製品開発力、商品企画力が不足

新事業経営に関する知識・

ノウハウの不足

新事業を担う人材の確保が困難

販売先の開拓・

確保が困難

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 過去10年の間に新事業展開を実施した製造業の企業を集計している。

(%)

38.035.4 35.0

32.1

19.816.0 15.2

12.29.3

5.1 4.6 2.1 1.3

8.0

44.6

37.431.7

33.8

21.625.2

12.2 13.79.4 7.9 10.1

7.24.3 5.8

第2-2-11図 下請比率別の新事業展開に際して直面した課題(複数回答)

また、新事業展開の際の課題を製造業に限定し

て下請比率別に見ると、下請比率が高い企業の方

が、「販売先の開拓・確保が困難」と回答する割

合が高くなっており、親事業者との取引に依存し

ている企業にとっては、新たに販路を確保するこ

との難しさが表れているものといえる。さらに、

下請比率が高い企業ほど、新事業展開を実施した

際に、何らかの課題を抱える傾向にあることも分

かる(第2-2-11図)。

以上、新事業展開を実施することによって、企

業自身に様々な効果がある一方、新事業展開を実

施する過程においては、様々な課題に直面してい

ることが分かった。政府では、積極的に新事業に

第2章 新事業展開

108 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 19: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

課 題 具体的施策

人材確保 ■平成24年度補正予算に282億円を計上し、女性や新卒者等を対象として、中小企業・小規模事業者が行う職場実習(インターンシップ)等を支援する。(詳細は、第1章 コラム2-1-3を参照。)

販路開拓 ■中小企業・小規模事業者の新商品・新サービスの開発や販路開拓を補助。(詳細は、後掲コラム2-2-4を参照。)

経営ノウハウ不足■全国の拠点をフル活用して支援施策を広く展開し、地域から成長の芽を発掘。地域資源と経営力を結び付け、創業や第二創業を円滑化する環境を整備。

■中小企業・小規模事業者や起業を目指す者と専門家が参画し、自由に経営・起業に関する情報交換や相談ができる IT システムを構築する。(詳細は、第4章 コラム2-4-3を参照。)

自己資金の不足

■平成24年度補正予算で、貸付上限額の引上げ、上限金利の引下げ等、株式会社日本政策金融公庫の資本性劣後ローンの拡充を図り、事業再生のみならず、新事業展開に取り組む中小企業・小規模事業者の財務基盤を強化。(詳細は、後掲コラム2-2-5を参照。)

■また、新事業展開を促進する環境整備として、組織再編に伴う工場や設備その他の経営資源の移転、譲渡、廃棄等に関する企業の財務上の負担の軽減の検討。

第2-2-12図 新事業展開に関する主な具体的施策

▶▶

○予算 平成 25年度 予算額 19億円

○事業イメージ

取り組む意向のある企業が、実際に新事業に参入

し、その事業に注力していけるよう、様々な支援

策を講じており、新事業に取り組みやすい環境の

整備に取り組んでいる(第2-2-12図)。

新事業活動・農商工連携等促進支援事業中小企業・小規模事業者が新事業に取り組むに当たっては、既存事業で培ったノウハウ等がそのまま活かせるとは限らず、新事業特有の課題に直面することも多い。そのため、中小企業庁では、中小企業新事業活動促進法、農商工連携等促進法、地域資源活用促進法に基づき、新商品・新サービスの開発や販路開拓に意欲的に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、市場調査や試作品開発、展示会出展等の費用を補助することにより、地域における新事業の創出や経営の向上を図る事業を行っている。

コラム 2-2-4

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第3節

109中小企業白書 2013

Page 20: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

▶▶

資本性劣後ローン(挑戦支援資本強化特例制度)制度の概要・対象者   :創業・新事業展開・事業再生等に取り組む中小企業・小規模事業者であって、地域経済の活性化のため

に、一定の雇用効果が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業等に取り組む者

・対象資金  :設備資金及び運転資金

・貸付限度額 :(中小企業事業)3.0億円、(国民生活事業)2,000万円           

・貸付期間  :(中小企業事業)7年・10年・15年        (国民生活事業)7年~10年以内(再生計画が10年超の場合は7年~15年以内) ・貸付金利  :業績に応じた金利が適用。       (中小企業事業)0.40%~6.35%、(国民生活事業)0.90%~8.55%

・担保・保証人:なし

・その他   :本制度による債務については、金融検査上、自己資本とみなすことができる。        期限前弁済は、原則として不可。

一方、新事業展開を実施した企業の中には、自

らの創意工夫によって直面した課題を乗り越え、

成果を上げた企業も多い。

資本性劣後ローンについて新事業展開を実施するに当たっては、様々な課題がある中で、従業員規模が小さな企業ほど、資金面での課題を抱える傾向にある。政府は、平成24年度補正予算において、新事業展開等に取り組む中小企業・小規模事業者を対象とした株式会社日本政策金融公庫の資本性劣後ローンを拡充し、中小企業・小規模事業者の新たな取組等を支援している。

コラム 2-2-5

第2章 新事業展開

110 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 21: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

タケコートの製品群

製品開発と販路開拓の課題を乗り越え、汎用品製造企業から技術開発企業へ転換した企業

大阪府東大阪市の株式会社竹中製作所(従業員155名、資本金4,680万円)は、特殊な表面皮膜処理を施したねじ「タケコート」を開発し、国内外のプラント開発企業から注文を受ける企業である。1935年に艦船用のねじ製造を目的に設立され、高度成長期に大量生産体制で規模を拡大してきた同社の転機は、第二次石油ショックであった。同社会長の竹中弘忠氏は、従来までの大量生産体制では存続が難しいと考え、早急にビジネスモデルを変革する必要性に迫られた。こうした中、1984年、同社が独自に開発したのが「タケコート」である。取引先から「錆びないねじは作れないか。」との依頼を受け、ねじをフッ素加工する技術の開発に取り組んだ。開発の過程では、専門技術者の人材難等に直面したが、京都大学との共同研究で、めっきを超える防錆・防食性を備えたねじの開発に成功した。多額の資金と約5年の歳月を掛けて開発したねじだったが、採用実績がないことを不安視され、国内では4年間ほとんど受注することはなかった。そこで、開発から5年目に米国企業に売り込んだところ、優れた防錆・防食性が認められ、マレーシア沖の海底油田採掘プラント

で採用された。この実績によって、国内企業も次々に採用し始め、価格は汎用ねじの約2倍で取引されるようになった。現在、同社のねじは、東京湾アクアラインや明石海峡大橋でも採用され、海洋構造物におけるシェアは、約9割を誇っている。竹中会長は、「開発が成功したところで50%。製品が売れるようになって初めて成功と言える。」と販路開拓の難しさを語る。現在、同社はカーボンナノチューブを皮膜にした新製品「ナノテクト」を表面処理技術に応用し、更なる事業拡大に取り組んでいる。

2-2-8:株式会社竹中製作所

企業連携の取組について以上、見てきたように、中小企業・小規模事業者が新事業展開を実施するに当たっては、様々な課題に直面していることが分かる。この傾向は、中小企業・小規模事業者が総じて経営資源に乏しく、厳しい経営環境に置かれていることを示唆している。こうした現状を打開するためには、中小企業・小規模事業者同士が互いに連携し、不足している経営資源を相互補完する取組も一つの方法として考えられる。実際に企業連携を行っている企業が回答した連携の目的を見てみると、「既存事業の取引先の拡大」が最も多く、次に「新たな製品・サービスの開発・販売」が続く。また、企業連携の成果があった企業に対して、その成果の内容を尋ねたところ、「既存事業の取引先の拡大」や「新たな製品・サービスの開発・販売」の割合が4割を超え、大きな成果が上がっていることが分かる。前掲第2-2-9図からも分かるように、新事業展開の際の課題では製品開発や販路開拓の課題が上位を占めており、こうした企業連携の取組は、既存事業への効果ばかりでなく、新事業展開においても有効な取組の一つといえよう10。このため、組織再編に伴う工場や設備その他の経営資源の移転、譲渡、廃棄等に関する企業の財務上の負担軽減等、企業連携を促す環境整備を検討していくことが必要である。

10 企業連携の取組事例は、中小企業白書(2012年版)p.154も参照。

コラム 2-2-6

▶▶

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第3節

111中小企業白書 2013

Page 22: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0

10

20

30

40

50

60

業種転換

その他

海外展開

既存の取引先への

交渉力向上

取引先の要請への対応

既存事業の顧客ニーズの

変化への対応

技術力、コスト競争力の強化

新たな製品・

サービスの

開発・

販売

既存事業の取引先の拡大

(%)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.企業連携の目的は、他企業と連携して事業活動を行っている企業を集計している。   2.企業連携による成果は、他企業と連携して事業活動を行い、成果があった企業を集計している。

企業連携による成果(n=573)企業連携の目的(n=865)

47.4 45.4

32.7 29.5

21.316.6

11.8

3.41.8

49.744.5

36.829.5

18.723.0

8.22.42.3

企業連携の目的とその成果(複数回答)

IH 加熱反応装置の一例

コラム2-2-6事例:試作サポーター四日市地域で連携して新たな事業を展開した下請中小企業・小規模事業者グループ

三重県四日市市の試作サポーター四日市は、四日市機械器具工業協同組合に所属する中小企業・小規模事業者16社11が共同で立ち上げたグループである。所属企業は、工作機械や半導体関連の部品加工等、様々な業種の下請企業である。各社で培ってきた技術・ノウハウを活かしつつ、「単独ではできない新たなことができれば。」という思いで2009年に活動を開始し、2011年にはグループ活動のための法人を設立している。同グループでは、試行錯誤を重ねつつ活動内容を見直し、現在は、「自分たちにしかできないものを作る。」という考え方に基づいてターゲットを絞り、IH加熱技術を活用した試作や新製品の開発を中心に活動し、2012年末現在、約50件の受注を獲得している。また、地域に根ざした信頼関係のもと、互いの技術・ノウハウを共有しながら活動することによって、グループとしての強みを発揮するとともに、自社以外の会員企業の技術等を自らの事業に活かすことができるようにしている。その結果、各社が既存顧客へも幅広い提案ができるようになっている。

さらに、全国の企業グループのネットワーク「monozukulink.net(モノヅクリンクネット)」を各地の企業グループと共同で2011年に設立。企業グループ同士で交流することで、更に幅広い情報を交換し、事業展開の可能性拡大につなげている。今後は、IH加熱技術を活用した事業を米国で展開するなど、事業拡大に取り組んでいく方針である。

11 16社のうち、約半数が小規模事業者である。

第2章 新事業展開

112 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 23: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

新事業展開を実施・検討する予定がない新事業展開を実施・検討する予定がある

0% 100%

新事業展開を実施・検討したことがない企業 (n=1,717)

多角化した企業(n=636)

事業転換した企業 (n=202)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))

新事業展開

62.9 37.1

57.2 42.8

10.0 90.0

第2-2-13図 新事業展開実施有無別の今後の新事業展開の意向

第4節 今後の新事業展開に対する意向

前節では、過去10年の間に新事業展開を実施した企業に焦点を当て、その際の課題について見

てきた。本節では、今後の新事業展開に対する意

向について探ると同時に、新事業展開に消極的な

企業が、実施を躊躇している要因について分析す

る。

■これまでの取組との関係第2-2-13図は、新事業展開実施の有無別に、今後の新事業展開の意向を示したものである。こ

れを見ると、事業転換や多角化を実施してきた企

業では、約6割の企業が、今後の新事業展開について積極的な意向があるのに対して、新事業展開

を実施・検討したことがない企業では、そのほと

んどが、今後の新事業展開について、消極的な意

向を示していることが分かる12。これまでの新事

業展開の取組の有無と、今後の取組の意向には、

相関性があることがうかがえる。

新事業展開を実施した企業は、事業の再生や成

長の機会を勝ち取って、事業環境を好転させ、更

なる成長の機会を求めて、今後の新事業展開にも

積極的な意向を示していると推察される。

■新事業展開を躊躇させる要因とそれを払拭するための取組前掲第2-2-13図の傾向を踏まえると、今後、新事業展開を実施する企業は、固定化していくこ

とが懸念される。新事業展開に消極的な意向を示

している要因は何であろうか。その背景に存在す

る障害について見ていく。

第2-2-14図は、新事業展開を実施・検討する

予定がない企業に対して、その理由を尋ねたもの

と、新事業展開を実施した企業が実際に直面した

課題を比較したものである。これを見ると、新事

業展開を実施・検討する予定がない企業は、「有

望な事業の見極めが困難」、「既存事業の経営がお

ろそかになる」のように、情報収集・分析不足が

原因で、最適な事業分野を見極めることができて

おらず、また、既存事業への悪影響を懸念して、

12 新事業展開の意向別に見た企業の業績や主力事業と国内市場の見通し、自社ブランドの製商品・サービスの有無については、付注2-2-6、付注2-2-7、付注2-2-8を参照。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

113中小企業白書 2013

Page 24: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

実施・検討する予定がない理由(n=2,071) 新事業展開に際して直面した課題(n=825)

051015202530354045

特に課題はない

特に理由はない

その他

新事業分野への参入障壁

安定的な仕入先の確保が困難

業務提携先の確保が困難

情報収集力が不足

資金調達が困難

販売先の開拓・

確保が困難

自己資金が不足

製品開発力、商品企画力が不足

新事業経営に関する知識・

ノウハウが不足

新事業を担う人材の確保が困難

既存事業の経営がおろそかになる

有望な事業の見極めが困難

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.実施・検討する予定がない理由は、新事業展開を実施・検討する予定がないと回答した企業を集計している。   2.新事業展開に際して直面した課題は、過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。

(%)42.8

35.832.2

28.6

19.5 18.8 17.214.2 13.7

4.8 4.2 3.46.3

15.112.7

4.6

40.7

32.6

23.9

17.5

34.8

12.016.4

6.5 6.8 8.4

2.2

7.9

第2-2-14図 新事業展開を実施・検討する予定がない理由と実施企業が直面した課題の比較(複数回答)

新事業展開に踏み切れていない現状がうかがえ

る。一方、新事業展開を実施した企業が実際に直

面した課題を見ると、同項目を選択している割合

は低く、新事業展開を実施した企業は、こうした

課題を解決してきたことが推察される。

では、新事業展開の必要性は感じているもの

の、実施を躊躇している企業については、具体的

にどのような取組が必要なのであろうか。

新事業展開を実施し、成果を上げた企業が、事

前に取り組んだことを見ると、「自社の強みの分

析・他社研究」や「既存の市場調査結果の収集・

分析」の割合が高くなっている(第2-2-15図)。このように、自社の事業内容を改めて検証し、他

社と差別化できる技術・サービス等を明確にする

ことで、自社にとって最適な事業分野の見極めが

可能となり、既存事業との相乗効果も生まれるの

であろう。また、こうした取組の実施度は、新事

業展開で成果を上げた企業と上げられなかった企

業で、大きな違いが見て取れ、新事業展開におけ

る最終的な成果を左右する要素にもなっている。

第2章 新事業展開

114 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 25: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

新事業展開で成果を上げた企業(n=444) 新事業展開で成果を上げられなかった企業(n=322)

0 10 20 30 40 50

特に事前に取り組んだことはない

その他

テスト・マーケティング

経営者ネットワークからの情報収集

独自の市場調査(外部委託を含む)

支援機関等への相談や情報収集

既存の市場調査結果の収集・分析

自社の強みの分析・他社研究

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.新事業展開の総合的な評価として、自社の経営に「良い影響があった」と回答した企業を新事業で成果を上げた企業として集計

し、「どちらともいえない」、「悪い影響があった」と回答した企業を新事業で成果を上げられなかった企業として集計した。

(%)

44.823.6

34.729.5

28.625.2

23.423.9

20.719.3

9.011.8

3.22.5

9.718.0

第2-2-15図 新事業展開に際して、事前に取り組んだこと(複数回答)

以上を踏まえると、様々な要因から、新事業展

開の実施を躊躇している企業にとって、まずは、

現在の主力事業の見通しを含めた自社の事業内容

の検証や、情報収集に努めるなどの取組を行うこ

とが重要である。こうした取組によって、新事業

展開を実施するための障害を克服することができ

るばかりでなく、新事業展開を成功させる近道に

もなり得ると考えられる。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

115中小企業白書 2013

Page 26: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

事 例

画像診断画面

このように、企業が新事業展開を実施・検討す

るに当たって、躊躇させる要因も多いが、企業自

身の努力等により、その要因を克服することも可

能である。そのためには、経営者がリーダーシッ

プを発揮し、率先して実行していくことが必要で

ある。

中小企業・小規模事業者が強い決意を持って新

事業への進出に踏み出し、様々な課題に直面しつ

つも独自の創意工夫で乗り越えていくことで、企

業自身の成長につながり、ひいては我が国経済の

活性化に寄与していくことが期待される。

社長の前職でのスキルを活かし、医療卸から医療周辺サービスへ事業転換した企業

東京都文京区の株式会社三勢(従業員5名、資本金3,000万円)は、レントゲン機器、車椅子等を取り扱う医療卸であった。同社社長の中川清人氏は、2003年に入社したが、入社当時、同社の売上が徐々に落ち込むのを目の当たりにし、「流通中抜き」という時代の変化を肌で感じていた。前職で大手企業の IT コンサルタントとして活躍していた中川社長は、社会への貢献度が大きく、他社が簡単にはまねできない新事業を模索していた中、IT の導入で病院経営を改善できることに気付き、医療現場の経営改善支援を新事業として展開することを考えた。その第一歩として開発したのが、遠隔画像診断サービス「Doc えいくん」である。CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)で撮影された画像の解析は専門性が高く、大規模な病院には画像解析を専門に行う読影医が勤務している。中小規模の病院では読影医を抱える余裕はないが、現場の医師が、読影医の専門的な所見を必要としていることに気付く。そこで、病院と読影医を通信システムで結び、48時間以内に読影医の所見をフィードバックするサービスを提供した。大手企業による同様のサービスは存在するが、同社の遠隔読影サービスは、専用システムの導入が不要で、他社製品に

比べて大幅な低価格を実現。しかも、大学病院等の読影チームが解析を行うことにより、サービスの品質も担保した。こうした低コスト・高品質のサービスが評価され、同社のシステムを導入する顧客は着実に増加していった。中川社長が入社した当時と比較して、売上は約4割減少したが、営業利益は増加し、収支は大幅に改善した。今では卸売業からほぼ撤退し、医療周辺サービス業が主力事業となっている。

2-2-9:株式会社三勢

第2章 新事業展開

116 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 27: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

▶▶

0

5

10

15

20

25

30

35

40

全体(n=849)

サービス業等(n=134)

小売業(n=61)

卸売業(n=120)

運輸業(n=47)

製造業(n=399)

建設業(n=88)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

   2.n値は過去10年の間に新事業展開を実施した企業の数を表している。

(%)

22.4

26.0 25.3

29.6

33.931.3

27.2

業種別の新事業展開実施企業の割合

新事業展開に関する業種別の分析以上、中小企業・小規模事業者の新事業展開に関して、実施企業の特徴、事業分野、課題、今後の意向等について分析してきた。本コラムでは、その内容を業種別に検証する。

新事業展開実施企業の割合を業種別に見ると、卸売業や小売業、サービス業等の企業が約3割と最も高く、積極的に新事業への挑戦を行ってきたことが分かる。業種別にはやや違いが見られるが、どの業種の企業においても、一定の割合で新事業展開を実施していることが分かる13。

新事業展開を実施した企業について、事業転換と多角化の割合を示したものを見ると、建設業や運輸業の企業は、全体と比較して事業転換の割合が低く、多角化の割合が高い。一方、卸売業や製造業の企業では、事業転換の割合が高く、多角化の割合が低い。

コラム 2-2-7

13 本コラムでは、アンケート調査結果を用いて分析を行っている。前掲第2-2-1図とは資料が異なることに留意が必要である。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

117中小企業白書 2013

Page 28: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0% 100%

全体(n=849)

サービス業等(n=134)

小売業(n=61)

卸売業(n=120)

運輸業(n=47)

製造業(n=399)

建設業(n=88)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

多角化事業転換

15.9 84.1

27.6 72.4

17.0 83.0

30.0 70.0

21.3 78.7

18.7 81.3

24.3 75.7

業種別の事業転換、多角化割合

0% 100%

サービス業等(n=127)

小売業(n=55)

卸売業(n=116)

運輸業(n=44)

製造業(n=364)

建設業(n=80)

あまり変わっていなかった 悪化していた好転していた

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

   3.「分からない」を除いて集計している。

16.3 60.0 23.8

25.5 48.6 25.8

27.3 61.4 11.4

24.1 56.9 19.0

23.6 45.5 30.9

27.6 54.3 18.1

業種別の新事業展開の検討を始めたときの業績傾向

新事業展開の検討を始めたときの業績傾向を業種別に示したものを見ると、運輸業やサービス業等では、業績が好転している間に新事業展開を実施しようとした企業が多くなっており、積極的に事業拡大を図ろうとした意図がうかがえる。一方、建設業や小売業では、当時の業績が悪化していた企業が多く、既存事業の不振が原因で、新事業に活路を見いだそうとした企業が多いことが推察される。

新事業展開を実施したことによる効果を業種別に示したものを見ると、全ての業種の企業で「良い影響があった」と回答する割合が過半を占めている。また、「悪い影響があった」と回答する割合は、いずれも1割に満たず、新事業展開は、業種を問わず自社の経営に好影響を及ぼしていることが分かる。

第2章 新事業展開

118 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 29: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0% 100%

悪い影響があったどちらともいえない良い影響があった

サービス業等(n=122)

小売業(n=58)

卸売業(n=112)

運輸業(n=43)

製造業(n=363)

建設業(n=76)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

52.6 42.1 5.3

59.2 34.7 6.1

60.5 37.2 2.3

57.1 36.6 6.3

51.7 39.7 8.6

60.7 33.6 5.7

業種別の新事業展開を実施したことによる効果

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.過去10年の間に新事業展開を実施した企業を集計している。   2.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

   3.それぞれの業種で、回答割合の高い上位5項目を表示している。

建設業(n=86)

新事業を担う人材の確保が困難(40.7%)

販売先の開拓・確保が困難(36.0%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(27.9%)

自己資金が不足(17.4%)

4有望な事業の見極めが困難(15.1%)

製造業(n=382)

販売先の開拓・確保が困難(40.3%)

新事業を担う人材の確保が困難(36.6%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(34.0%)

製品開発力、商品企画力が不足(33.2%)

自己資金が不足(20.2%)

運輸業(n=46)

新事業を担う人材の確保が困難(65.2%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(21.7%)

自己資金が不足(19.6%)

業務提携先の確保が困難(13.0%)

販売先の開拓・確保が困難(13.0%)

卸売業(n=120)

新事業を担う人材の確保が困難(43.3%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(36.7%)

販売先の開拓・確保が困難(32.5%)

製品開発力、商品企画力が不足(24.2%)

自己資金が不足(15.8%)

小売業(n=60)

新事業を担う人材の確保が困難(40.0%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(28.3%)

販売先の開拓・確保が困難(25.0%)

自己資金が不足(16.7%)

資金調達が困難(16.7%)

サービス業等(n=131)

新事業を担う人材の確保が困難(42.0%)

新事業経営に関する知識・ノウハウの不足(33.6%)

販売先の開拓・確保が困難(32.1%)

情報収集力が不足(20.6%)

製品開発力、商品企画力が不足(19.8%)

5321

業種別の新事業展開に際して直面した課題(複数回答)

新事業展開を実施した企業に対し、直面した課題を示したものを見ると、多くの課題の中でも、「新事業を担う人材の確保が困難」や「新事業経営に関する知識・ノウハウの不足」が全ての業種の企業で上位を占めており、業種を問わず、共通の課題であることが分かる。新事業展開を実施する際には、事業の転換や拡大等により、専門性を持った新たな人材や知識・ノウハウが必要となるが、こうした新事業特有の課題に直面していることがうかがえる。

また、今後の新事業展開の意向を業種別に見てみると、卸売業や小売業では約4割の企業が「新事業展開を実施・検討する予定がある」と回答し、全体と比較して、より積極的な意向を示している。一方、運輸業の企業では、その割合は2割に満たず、卸売業の企業と比較すると約2倍の開きがある。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

119中小企業白書 2013

Page 30: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0% 100%

全体(n=3,108)

サービス業等(n=428)

小売業(n=177)

卸売業(n=404)

運輸業(n=188)

製造業(n=1,522)

建設業(n=389)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、「宿

泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

新事業展開を実施・検討する予定がない

新事業展開を実施・検討する予定がある

28.3 71.7

32.3 67.7

18.1 81.9

39.6 60.4

37.9 62.1

35.0 65.0

32.6 67.4

業種別の新事業展開の意向

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 1.今後の新事業展開について、実施・検討する予定がないと回答した企業を集計している。   2.ここでいうサービス業等は、「情報通信業」、「金融業、保険業」、「不動産業、物品賃貸業」、「専門・技術サービス業」、

「宿泊業」、「飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「その他」の合計である。

   3.それぞれの業種で、回答割合の高い上位5項目を表示している。

建設業(n=272)

既存事業の経営がおろそかになる(47.1%)

有望な事業の見極めが困難(46.7%)

新事業を担う人材の確保が困難(35.7%)

新事業経営に関する知識・ノウハウが不足(28.3%)

4

自己資金が不足(19.1%)

製造業(n=1,022)

有望な事業の見極めが困難(43.8%)

既存事業の経営がおろそかになる(34.9%)

新事業を担う人材の確保が困難(30.2%)

新事業経営に関する知識・ノウハウが不足(29.5%)

製品開発力、商品企画力が不足(29.4%)

運輸業(n=153)

有望な事業の見極めが困難(42.5%)

新事業を担う人材の確保が困難(39.9%)

既存事業の経営がおろそかになる(35.9%)

新事業経営に関する知識・ノウハウが不足(34.0%)

自己資金が不足(21.6%)

卸売業(n=239)

有望な事業の見極めが困難(44.8%)

新事業を担う人材の確保が困難(36.8%)

既存事業の経営がおろそかになる(36.4%)

新事業経営に関する知識・ノウハウが不足(33.9%)

販売先の開拓・確保が困難(23.8%)

小売業(n=110)

有望な事業の見極めが困難(36.4%)

新事業を担う人材の確保が困難(27.3%)

特に理由はない(23.6%)

既存事業の経営がおろそかになる(20.9%)

自己資金が不足(17.3%)

サービス業等(n=275)

有望な事業の見極めが困難(36.4%)

既存事業の経営がおろそかになる(33.1%)

新事業を担う人材の確保が困難(29.8%)

新事業経営に関する知識・ノウハウが不足(22.5%)

特に理由はない(18.9%)

5321

業種別の新事業展開を実施・検討する予定がない理由(複数回答)

前掲の業種別の効果により、業種を問わず、新事業展開実施の効果が高いことを示したが、今後の新事業展開の意向に関しては、業種によって違いが見られる。

下図は、新事業展開を実施・検討する予定がないと回答した企業に対し、その理由を尋ねたものである。いずれの業種でも、「有望な事業の見極めが困難」を選択する企業が多く、進出する市場等に関する情報収集が障害になり、新事業展開に踏み切れていないことがうかがえる。また、特に建設業では、「既存事業の経営がおろそかになる」と回答する企業の割合が高く、経営資源に余裕がないことを背景として、新事業と既存事業の両立が難しいことを意識していることが分かる。

第2章 新事業展開

120 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 31: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0% 100%

損失の程度

企業の存続に関わるほどの損失があった

3.2

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 過去10年の間に新事業展開を実施又は検討した企業を集計している。

(注) 無回答は除いている。

かなり損失があった25.4

少し損失があった49.6

ほとんどなかった21.9

うまくいかなかった新事業はない50.4%

うまくいかなかった新事業がある49.6%

(n=1,281)

(n=627)

うまくいかなかった新事業の有無と損失の程度

0% 100%

かなり損失があった又は    

企業の存続に関わるほどの損失があった

(n=177)

少し損失があった(n=307)

損失はほとんどなかった(n=133)

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 過去10年の間に実施・検討した新事業の取組で、うまくいかなかった事業が「ある」と回答した企業を集計している。

事業立ち上げ準備段階

販売開始後1年未満

販売開始後1~ 2年目

企画段階

販売開始後5年目以降

まだ中止・撤退は決めていない

販売開始後3~ 4年目

34.6 9.8 8.3 6.8 12.8 9.0 18.8

2.6 14.7 12.7 22.8 20.5 5.9 20.8

0.0

4.0 7.3 27.7 28.8 13.0 19.2

新事業の中止・撤退の時期と損失の程度

新事業展開がうまくいかなかった場合の中止・撤退中小企業・小規模事業者が既存事業の枠を越え、新事業展開に挑戦することは、企業自身の成長につながり、重要であるが、こうした新事業展開への挑戦は、予期せぬ事態等により、失敗につながるケースもある。過去10年の間に新事業展開を実施又は検討した企業のうち、約半数が、失敗を経験している。また、失敗経験がある企業について、損失の程度を見ると、「ほとんどなかった」が約2割となっており、失敗を経験した企業の大半は、何らかの損失を被っていることが分かる。

また、損失の有無別に、新事業を中止・撤退した時期を見ると、損失が軽微な企業ほど、早い段階で新事業の中止・撤退を決断していることが分かる。

コラム 2-2-8

▶▶

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

121中小企業白書 2013

Page 32: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

0

10

20

30

40

50

60

その他

許認可等の手続きが

障害となった

別の事業へ乗り換えたため

事業計画の策定が困難だった

資金調達が困難だった

業務提携先の確保が困難だった

関連情報の入手が困難だった

既存事業に注力するため

技術力が不足

人材の育成・

確保が困難だった

販路開拓が困難だった

期待したほどの市場性・

成長性がないと判明した

資料:中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))(注) 過去10年の間に実施・検討した新事業の取組で、うまくいかなかった事業が「ある」と回答した企業を集計している。

(%) (n=494)

50.6

42.1

25.1 22.9 20.6

10.5 9.7 8.5 7.33.8 3.6

7.1

新事業から中止・撤退した理由(複数回答)

新事業から中止・撤退した理由では、「期待したほどの市場性・成長性がないと判断した」という回答が最も多かったことを鑑みると、新事業展開を実施する際には、進出する市場の成長性等について丁寧に情報収集し、失敗した場合の対応まで含めて入念に準備する必要がある。その上で、常に新事業の動向を見極めながら、中止・撤退の判断を迅速に行うことが重要といえよう14。

14 中小企業白書(2011年版)p.232では、新事業が黒字転換するまでに要した期間について、当初の見込みよりも長い時間が掛かる傾向にあると分析している。そのため、新事業展開を実施した企業は、その後の事業の中止・撤退について、市場の動向を注視し、自社の製商品・サービスが市場のニーズに合っているかを含めて、総合的な観点から事業の将来性を見極めていく必要がある。

第2章 新事業展開

122 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 33: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

▶▶ 知財に関する代表的な支援策新事業に挑戦し、事業の拡大に成功してきた企業の中には、国内にとどまらず、海外にも目を向けて販路を拡大し、発展を遂げてきた企業も多い。ここでは、国内外の販路拡大を考える上で重要な知財に関する代表的な支援策を紹介する。

○知財総合支援窓口15

「知財は敷居が高く相談に行きにくい」、「どこへ相談に行けばいいか分からない」、という中小企業・小規模事業者の声を踏まえ、2011年度から、知的財産に関する悩みや課題に関する相談を一元的に受け入れる「知財総合支援窓口」を都道府県ごとに設置し、様々な専門家や支援機関等とも連携して、知的財産のワンストップサービスを次の通り提供している。

ⅰ 知財総合支援窓口に窓口支援担当を配置し、中小企業等が企業経営の中で抱えるアイディア段階から事業展開、海外展開までの幅広い知的財産の課題等をその場で解決支援。

ⅱ 上記ⅰによる解決が困難なより高度な知的財産の課題等に対して、弁理士や弁護士等の知財専門家の活用や支援機関との連携による解決支援。

ⅲ 知的財産を活用していない中小企業等の発掘及び知的財産の活用促進。ⅳ 知的財産に関する各種支援施策の紹介・説明、特許等の産業財産権に関する出願等手続支援(電子出願支援を含む)。

○外国出願補助金(地域中小企業外国出願支援事業)経済のグローバル化に伴い、中小企業・小規模事業者の海外進出が進展する中16、海外市場の販路開拓や模倣被害への対策には、進出先において特許権等を取得することが重要である。しかし、海外での権利取得には多額の費用が掛かり、資力に乏しい中小企業・小規模事業者には大きな負担となっている。特許庁では、地域の中小企業・小規模事業者の戦略的な外国出願を促進するため、都道府県等中小企業支援センターを通じ、外国への事業展開等を計画している中小企業・小規模事業者に対して外国出願に掛かる費用の一部を助成することにより、中小企業・小規模事業者のグローバル展開を支援している。中小企業・小規模事業者への助成金(助成率:原則1/2)・助成額:1企業に対する上限額:300万円

(案件ごとの上限額:特許150万円、実用新案・意匠・商標60万円、冒認対策商標17:30万円)・対象経費:外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等

コラム 2-2-9

コラム2-2-9事例:株式会社佐原知財総合支援窓口及び外国出願補助金を活用し、中国ビジネスを展開する企業18

岩手県一関市の株式会社佐原(従業員225名、資本金3,000万円)は、住宅用窓サッシの自然換気装置「給気ブレス」や、硝子加工製品等の開発・製造を行う研究開発型の企業である。給気ブレスの分野においては国内トップシェアを占め、「ブレスの佐原」として、業界をリードしてきた。新規プロジェクトでは、温度の変化によって形状が変化する形状記憶合金の特性に着目した温度感知技術の開発を開始し、世界で初めて

温度の変化によって、給気口が自然開閉する形状記憶合金付き換気装置を実用化した。この装置は、現在でも同社を代表する高付加価値製品として、ロングセラーを続けている。同社においては、知的財産権に関する外国出願は行っていなかった。リーマン・ショック以降の国内市場が縮小傾向にあり、今後の展開先として海外に活路を求めることを視野に入れ、中国の展示会に出展した

15 詳細は、知財総合支援窓口のホームページを参照。http://chizai-portal.jp/16 中小製造業の輸出企業の数については、付注2-2-9を参照。17 第三者による抜け駆け出願(冒認出願)の対策を目的とした商標出願。18 当該企業は、「がんばろう日本!知的財産権活用企業事例集2012」にも掲載されている。この冊子では、知恵と知財を武器に活躍している中小企業の取組事例を数多く紹介している。

第 2 部自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者

第4節

123中小企業白書 2013

Page 34: 新事業展開 - METI...15.1 60.7 24.2 第2-2-1図 製造事業所の従業者規模別の新事業展開実施事業所数の割合(2000~2010年) 第2-2-2図 新事業展開実施有無別の業績見通し

住宅用窓サッシの自然換気装置「給気ブレス」 温度の変化によって給気口が自然開閉する形状記憶合金付き換気装置

ところ、中国ではシックハウス対策が大きな課題となっており、室内換気に対して大きな反響を呼んだ。中国での事業展開に際し、中国における模倣品に対して戦うカードとして、同社始まって以来の特許と商標を外国出願することにした。外国出願に当たっては、岩手県の知財総合支援窓口において、中国の知的財産権制度の説明や、中国に輸出する換気装置や自社ブランドに関する先行調査の支援を受け、出願可否の

判断を行うとともに、高額となる外国出願経費の面では、岩手県の中小企業支援センターによる外国出願補助金を活用している。同社は、現在、大手デベロッパーや建設会社等を訪問して製品の売り込みを開始し、さらに、輸出の受け皿となる現地法人を設立。上海の建築物件に「給気ブレス」を納入するなど、中国における本格的なビジネスに乗り出している。

第2章 新事業展開

124 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan