135
371 [用語の解説] 1.基本統計用語等 (1)農家等分類関係(1990 年世界農林業センサス以降の定義) 用   語 定        義 農家 経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯または農産物販売金額が年 間15万円以上ある世帯 販売農家 経営耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家 主業農家 農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、1年間に60日以上 自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家 準主業農家 農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、1年間に60日以上 自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家 副業的農家 1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいない 農家(主業農家及び準主業農家以外の農家) 専業農家 世帯員のなかに兼業従事者(1年間に30日以上他に雇用されて仕事に従 事した者または農業以外の自営業に従事した者)が1人もいない農家 兼業農家 世帯員のなかに兼業従事者が1人以上いる農家 第1種兼業農家 農業所得の方が兼業所得よりも多い兼業農家 第2種兼業農家 兼業所得の方が農業所得よりも多い兼業農家 自給的農家 経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円未満の農家 農家以外の農業事業体 経営耕地面積が10a以上または農産物販売金額が年間15万円以上の農 業を営む世帯(農家)以外の事業体 農業サービス事業体 委託を受けて農作業を行う事業所(農業事業体を除き、専ら苗の生産及び 販売を行う事業所を含む) 土地持ち非農家 農家以外で耕地及び耕作放棄地を5a以上所有している世帯 (2)農業経営体分類関係(2005 年農林業センサス以降の定義) 用   語 定        義 農業経営体 農産物の生産を行うかまたは委託を受けて農作業を行い、 (1)経営耕地面 積が30a以上、 (2)農作物の作付面積または栽培面積、家畜の飼養頭羽数 または出荷羽数等、一定の外形基準以上の規模(露地野菜15a、施設野菜 350㎡、搾乳牛1頭等)、 (3)農作業の受託を実施、のいずれかに該当する者 (1990~2000年センサスでは、販売農家、農家以外の農業事業体及び農 業サービス事業体を合わせた者に相当する) 農業経営体のうち  家族経営 農業経営体のうち個人経営体(農家)及び1戸1法人(農家であって農業 経営を法人化している者) 個人経営体 農業経営体のうち世帯単位で事業を行う者であり、1戸1法人を除く 法人経営体 農業経営体のうち法人化して事業を行う者であり、1戸1法人を含む

[用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

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371

第1部

用語の解説

[用語の解説]1.基本統計用語等

(1)農家等分類関係(1990 年世界農林業センサス以降の定義) 用   語 定        義

農家 経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯または農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯

販売農家  経営耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家

主業農家 農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家

準主業農家 農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家

副業的農家 1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいない農家(主業農家及び準主業農家以外の農家)

専業農家 世帯員のなかに兼業従事者(1年間に30日以上他に雇用されて仕事に従事した者または農業以外の自営業に従事した者)が1人もいない農家

兼業農家  世帯員のなかに兼業従事者が1人以上いる農家

第1種兼業農家  農業所得の方が兼業所得よりも多い兼業農家

第2種兼業農家  兼業所得の方が農業所得よりも多い兼業農家

自給的農家  経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円未満の農家

農家以外の農業事業体 経営耕地面積が10a以上または農産物販売金額が年間15万円以上の農業を営む世帯(農家)以外の事業体

農業サービス事業体 委託を受けて農作業を行う事業所(農業事業体を除き、専ら苗の生産及び販売を行う事業所を含む)

土地持ち非農家  農家以外で耕地及び耕作放棄地を5a以上所有している世帯

(2)農業経営体分類関係(2005 年農林業センサス以降の定義) 用   語 定        義

農業経営体

 農産物の生産を行うかまたは委託を受けて農作業を行い、(1)経営耕地面積が30a以上、(2)農作物の作付面積または栽培面積、家畜の飼養頭羽数または出荷羽数等、一定の外形基準以上の規模(露地野菜15a、施設野菜350㎡、搾乳牛1頭等)、(3)農作業の受託を実施、のいずれかに該当する者(1990~2000年センサスでは、販売農家、農家以外の農業事業体及び農業サービス事業体を合わせた者に相当する)

農業経営体のうち 家族経営

 農業経営体のうち個人経営体(農家)及び1戸1法人(農家であって農業経営を法人化している者)

個人経営体  農業経営体のうち世帯単位で事業を行う者であり、1戸1法人を除く

法人経営体  農業経営体のうち法人化して事業を行う者であり、1戸1法人を含む

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372

(3)農家経済関係用   語 解        説

総所得  農業所得+農業生産関連事業所得+農外所得+年金等の収入

農業所得 農業粗収益(農業経営によって得られた総収益額)-農業経営費(農業経営に要した一切の経費)

農業生産関連事業所得 農業生産関連事業収入(農業経営関与者が経営する農産加工、農家民宿、農家レストラン、観光農園等の農業に関連する事業の収入)-農業生産関連事業支出(同事業に要した雇用労賃、物財費等の支出)

農外所得 農外収入(農業経営関与者の自営兼業収入、給料・俸給)-農外支出(農業経営関与者の自営兼業支出、通勤定期代等)

用語・解説

(4)農家世帯員の農業労働力関係

国内生産額概念図

国内総生産

国内純生産

国内(農業)生産額:生産された財及びサービスを生産者が出荷した時点の価格で評価したもの国内(農業)総生産:「国内生産額-中間投入(生産に要した財・サービスの費用)」国内(農業)純生産:「国内総生産-(固定資本減耗+間接税-経常補助金)」

生産に要した財やサービス等の中間投入

固定資本減耗及び純 間 接 税( 間 接税ー経常補助金)

仕事への従事状況 世帯員 原則として住居と生計を共にする者

(1)基幹的農業従事者 自営農業に主として従事した世帯員(農業就業人口)のうち、ふだんの主な状態が「主に仕事(農業)」である者(2)農業就業人口 自営農業のみに従事した者または自営農業以外の仕事に従事していても年間労働日数で自営農業が多い者(3)農業従事者  15歳以上の世帯員で年間1日以上自営農業に従事した者

  農業専従者 農業従事者のうち自営農業に従事した日数が150日以上の者

自営農業のみに従事

自営農業とその他の仕事両方に従事

その他の仕事のみに従事

仕事に従事しなかった

自営農業が主

その他の仕事が主

ふだんの主な状態

主に仕事

主に家事や育児

その他

(1)

(2) (3)

基幹的農業従事者

農業就業人口農業従事者

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373

第1部

用語の解説

(3)新規参入者

(1)自営農業就農者

(2)雇用就農者

就農の形態 新規就農者 次のいずれかに該当する者

(1)自営農業就農者 農家世帯員で、調査期日前1年間の生活の主な状態が、「学生」または「他に雇われて勤務が主」から「自営農業への従事が主」になった者(2)雇用就農者 調査期日前1年間に新たに法人等に常雇い(年間7か月以上)として雇用されることにより、農業に従事することとなった者(3)新規参入者 調査期日前1年間に土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を開始した者○新規学卒就農者 自営農業就農者で「学生」から「自営農業への従事が主」になった者及び雇用就農者で雇用される直前に学生であった者○離職就農者 新規就農者のうち、調査期日前1年間の生活の主な状態が、「他産業への勤務が主」から「農業への従事が主」になった者(在宅、Uターンを問わない。)

自営農業に従事

法人等に常雇いとして雇用

新たに農業経営を開始

就農前の主な状態

学生

他に雇われて勤務

(6)農業地域類型区分用   語 定        義

農業地域類型区分 地域農業の構造を規定する基盤的な条件(耕地や林野面積の割合、農地の傾斜度等)に基づき市町村及び旧市区町村を区分したもの

区   分 基 準 指 標 (下記のいずれかに該当するもの)

都市的地域

○可住地に占めるDID面積が5%以上で、人口密度500人以上またはDID人口2万人以上の旧市区町村または市町村

○可住地に占める宅地等率が60%以上で、人口密度500人以上の旧市区町村または市町村

 ただし、林野率80%以上のものは除く

平地農業地域

○耕地率20%以上かつ林野率50%未満の旧市区町村または市町村 ただし、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑との合計面積の割合が90%以上のものを除く

○耕地率20%以上かつ林野率50%以上で、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑の合計面積の割合が10%未満の旧市区町村または市町村

中間農業地域

○耕地率が20%未満で、「都市的地域」及び「山間農業地域」以外の旧市区町村または市町村

○耕地率が20%以上で、「都市的地域」及び「平地農業地域」以外の旧市区町村または市町村

山間農業地域 ○林野率80%以上かつ耕地率10%未満の旧市区町村または市町村

注:1)決定順位:都市的地域→山間農業地域→平地農業地域・中間農業地域 2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/㎢以上の国勢調査基本単位区等が市  区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

  3)傾斜は1筆ごとの耕作面の傾斜ではなく、団地としての地形上の主傾斜をいう。  4)農業地域類型区分の「中間農業地域」と「山間農業地域」をあわせた地域を「中山間地域」という。  5)旧市区町村とは、1950年時点での市区町村をいう。

新規学卒就農者

離職就農者

(5)新規就農者関係(新規就農者調査の定義)

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374

(7)地域振興立法等の指定地域用   語 解        説

特定農山村法による「特定農山村地域」

○勾配20分の1以上の田面積が全田面積の50%以上、ただし全田面積が全耕地面積の33%以上

○勾配15度以上の畑面積が全畑面積の50%以上、ただし全畑面積が全耕地面積の33%以上

○林野率75%以上(上記のいずれかに該当)○15歳以上人口に対する農林業従事者数の割合が10%以上、または総土地面積に対する農林地割合81%以上

山村振興法による「振興山村」

○林野率75%以上(1960年林業センサス)○人口密度1.16人/町歩未満(1960年林業センサス)等

過疎地域自立促進特別措置法による「過疎地域」

次の1ないし2のいずれかに該当1 (1)かつ(2)に該当 (1)人口要件:以下のいずれかに該当  1)昭和35(1960)年から平成7(1995)年の人口減少率が30%以上  2)昭和35(1960)年から平成7(1995)年の人口減少率が25%以上、   平成7(1995)年の高齢者比率(65歳以上)24%以上  3)昭和35(1960)年から平成7(1995)年の人口減少率が25%以上、   平成7(1995)年の若年者比率(15歳以上30歳未満)15%以下  4)昭和45(1970)年から平成7(1995)年の人口減少率が19%以上  ただし、1)、2)、3)の場合、昭和45(1970)年から平成7(1995)年の25年間で 10%以上人口増加している団体は除く。

 (2)財政力要件:平成8(1996)年度から平成10(1998)年度の3か年平均の財 政力指数が0.42以下かつ、公営競技収益が13億円以下

2 (1)かつ(2)に該当 (1)人口要件:以下のいずれかに該当  1)昭和35(1960)年から平成17(2005)年の人口減少率が33%以上  2)昭和35(1960)年から平成17(2005)年の人口減少率が28%以上、   平成17(2005)年の高齢者比率(65歳以上)29%以上  3)昭和35(1960)年から平成17(2005)年の人口減少率が28%以上、   平成17(2005)年の若年者比率(15歳以上30歳未満)14%以下  4)昭和55(1980)年から平成17(2005)年の人口減少率が17%以上  ただし、1)、2)、3)の場合、昭和55(1980)年から平成17(2005)年の25年間で 10%以上人口増加している団体は除く。

 (2)財政力要件:平成18(2006)年度から平成20(2008)年度の3か年平均の財 政力指数が0.56以下かつ、公営競技収益が20億円以下

半島振興法による「半島振興対策実施地域」

○三方が海に囲まれ、平地に恵まれず、水資源が乏しい等国土資源の利用の面における制約から産業基盤及び生活環境の整備等について他の地域に比較して低位にある地域であって、2以上の市町村の区域からなり、一定の社会的経済的規模を有する地域

離島振興法による「離島振興対策実施地域」

○我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、自然環境の保全等に重要な役割を担っている離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定および福祉の向上等が必要と認められる離島の地域

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375

第1部

用語の解説

(8)全国農業地域区分全国農業地域名 所属都道府県名 全国農業地域名 所属都道府県名

北   海  道 北海道 近     畿滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山

東      北青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島

中     国山陰山陽

(山陰、山陽)鳥取、島根岡山、広島、山口

北      陸 新潟、富山、石川、福井 四     国 徳島、香川、愛媛、高知

関東 ・ 東山北関東南関東東 山

(北関東、南関東、東山)茨城、栃木、群馬埼玉、千葉、東京、神奈川山梨、長野

九     州北九州南九州

(北九州、南九州)福岡、佐賀、長崎、熊本、大分宮崎、鹿児島

東      海 岐阜、静岡、愛知、三重 沖     縄 沖縄

(9)食料自給率関係用  語 解        説

食料自給率

 国内の食料消費が、国内の農業生産でどの程度賄えているかを示す指標。

○品目別自給率  以下算定式により、各品目における自給率を重量ベースで算出。

○総合食料自給率  食料全体における自給率を示す指標として、供給熱量ベース、生産額ベースの2と おりの方法で算出。畜産物については、国産であっても輸入した飼料を使って生産され た分は、国産には算入していない。○供給熱量ベースの総合食料自給率  「五訂日本食品標準成分表」に基づき、重量を供給熱量(カロリー)に換算したうえで、 各品目を足し上げて算出。これは、1人・1日当たり国産供給熱量を1人・1日当たり 供給熱量で除したものに相当。○生産額ベースの総合食料自給率  農産物価統計の農家庭先価格等に基づき、重量を金額に換算したうえで、各品目を 足し上げて算出。これは、食料の国内生産額を食料の国内消費仕向額で除したものに 相当。○飼料自給率  畜産物に仕向けられる飼料のうち、国内でどの程度賄われているかを示す指標。「日 本標準飼料成分表等」に基づき、TDN(可消化養分総量)に換算したうえで、各飼料を 足し上げて算出。

  品目別自給率 = 国内生産量

= 国内生産量

国内消費仕向量 国内生産量-輸出量+輸入量±在庫増減

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376

用  語 解        説

都道府県別食料自給率

 各都道府県における食料消費が、当該県の農業生産でどの程度賄えているかを示す指標。国全体の総合食料自給率の基となるデータや都道府県ごとの統計データ等を基にして算出。

○供給熱量ベースの都道府県別食料自給率

分母となる1人・1日当たり供給熱量は、全国1人・1日当たり供給熱量と同じとしている。

分子については、当該県の人口を加味し、品目ごとに、全国の国産供給熱量を当該県の生産量に応じて按分し、

これらを合計して算出。

○生産額ベースの都道府県別食料自給率

分母となる食料消費仕向額については、全国の食料消費仕向額を当該県の人口に応じて按分して算出。分子に

ついては、品目ごとに全国の国内生産額を当該県の算出額等に応じて按分し、これらを合計して算出。

 供給熱量ベースの =

1人・1日当たりの各都道府県産熱量都道府県別食料自給率 1人・1日当たりの供給熱量

 生産額ベースの =

各都道府県の食料生産額都道府県別食料自給率   食料消費仕向額

(9)食料自給率関係(続き)

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377

第1部

用語の解説

2.五十音順・アルファベット順

一般的衛生管理 HACCP手法導入の前提となる、施設・設備や機械・器具の衛生管理、食品の一般的取扱い、作業員の衛生管理等、作業環境を衛生的に確保するための管理事項。

遺伝資源

 植物・動物・微生物等あらゆる生物に由来する素材であって、現実の、または潜在的な価値を有するもの。例えば、農業では品種改良の素材として活用される作物(最新の品種のみならず、古い品種や有用性がはっきりしないが潜在的に利用可能と思われるものも含む)。

稲発酵粗飼料(稲WCS)

 稲の実が完熟する前に、実と茎葉を一体的に収穫し、乳酸菌発酵させた飼料。稲ホールクロップ・サイレージ(稲WCS)とも呼ばれる。水田の有効活用と飼料自給率の向上に資する飼料作物として、作付面積が拡大している。

温室効果ガス

 地面から放射された赤外線の一部を吸収・放射することにより地表を暖める働きがあるとされるもの。京都議定書では、二酸化炭素(CO2)、メタン(水田や廃棄物最終処分場等から発生)、一酸化二窒素(一部の化学製品原料製造の過程や家畜排せつ物等から発生)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs、空調機器の冷媒等に使用)、パーフルオロカーボン類(PFCs、半導体の製造工程等で使用)、六ふっ化硫黄(SF6、半導体の製造工程等で使用)を温室効果ガスとして削減の対象としている。

家族経営協定

 家族で営農を行っている農業経営において、家族間の話合いを基に経営計画、各世帯員の役割、就業条件等を文書にして取り決めたものをいう。家族農業経営においても、効率的・安定的な経営を目指すためには、経営に携わる構成員の役割、就業条件等の明確化を図っていくことが重要である。この協定により、女性や後継者等の農業に従事する世帯員の役割が明確化され、農業者年金制度等の助成対象となるほか、認定農業者制度の共同申請の活用等が可能となる。

危害分析・重要管理点(HACCP)手法

 HACCPは、HazardAnalysisandCriticalControlPointの略。原料受入れから最終製品までの各工程で、微生物による汚染、金属の混入等の危害を予測(危害分析:HazardAnalysis)したうえで、危害の防止につながる特に重要な工程(重要管理点:CriticalControlPoint、例えば加熱・殺菌、金属探知機による異物の検出等の工程)を継続的に監視・記録する工程管理の手法。製造工程全般を通じて製品のより一層の安全性を確保できる。

供給熱量(摂取熱量)

 食料における供給熱量とは国民に対して供給される総熱量をいい、摂取熱量とは国民に実際に摂取された総熱量をいう。一般には、前者は農林水産省「食料需給表」、後者は厚生労働省「国民健康・栄養調査」の数値が用いられる。両者の算出方法は全く異なることに留意する必要があるが、供給熱量は流通段階も含めて廃棄された食品や食べ残された食品も含まれているため、これと摂取熱量との差は、食品の廃棄や食べ残しの目安とされる。

京都議定書

 平成9(1997)年に京都市で開かれた「気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)」で採択された国際約束をいい、気候変動枠組条約附属書Ⅰに掲げられる先進国に対するCO2等の温室効果ガスの具体的な削減数値等が決められている。第1約束期間(平成20(2008)~24(2012)年)の先進国全体の温室効果ガスの平均年間排出量が、基準年の平成2(1990)年に比べ5%以上の削減になるよう、各国の数値目標が決められており、我が国は6%の削減義務を負っている。

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378

ゲノム 生物がもつ遺伝情報の全体を指す。遺伝情報はDNA上にアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基の配列として書き込まれており、その配列の解読が進むことで新品種開発の効率化等が期待される。

耕作放棄地

 農林水産省の統計調査における区分であり、農林業センサスにおいては、以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地をいう。なお、これに対して、過去1年間全く作付けしなかったが、ここ数年の間に再び耕作する意思のある土地は不作付地といわれ、経営耕地に含まれる。

高病原性鳥インフルエンザ

 鳥インフルエンザのうち、家きんに高致死性の病原性を示すもの等を高病原性鳥インフルエンザという。家きんがこれに感染すると、全身症状をおこし、神経症状、呼吸器症状、消化器症状等が現れ、大量に死亡する。なお、鳥インフルエンザウイルスについては、生きた鳥との濃厚接触により人に感染した例が知られているものの、鶏卵、鶏肉を食べることにより感染した例は報告されていない。

コールドチェーン 生鮮食料品等について、生産段階から消費段階まで所定の低温に保ちながら流通させる体系をいう。

国内総生産(GDP)

 GDPは、GrossDomesticProductの略。国内において一定期間(通常1年間)に生産された財貨・サービスの付加価値額の総計をいう。国内の経済活動の水準を表す指標となる。

作況指数

 作柄の良否を表す指標で、その年の10a当たり平年収量に対する10a当たり(予想)収量の比率で表す。10a当たり平年収量は、作物の栽培開始前に、その年の気象の推移や被害の発生状況等を平年並みとみなし、最近の栽培技術の進歩の状況等を考慮して、実収量のすう勢を基に算出したその年に予想される収量のことである。

残留農薬のポジティブリスト制度

 食品中に残留する農薬等について、一定量を超える農薬等が残留する食品の販売等を禁止する制度。農薬等は原則禁止を前提に、使用を認めるものについてリスト化する(ポジティブリスト)方式がとられている。輸入食品の増大や食品中への農薬等の残留に関する消費者不安の高まり等から、平成15(2003)年食品衛生法が改正され、基準が設定されていない農薬等が一定量を超えて残留する食品の販売等が禁止されることになった。平成18(2006)年5月29日施行。

シーベルト

 人間が放射線を浴びた時の影響を示す単位。ベクレルからシーベルトには、以下の式で換算できる。

  mSv(ミリシーベルト)=Bq(ベクレル)×実効線量係数注:実効線量係数とは、放射能の単位であるベクレルから生態影響の単位であるミリシーベルト(シーベルトの 1/ 1000)に換算する係数。核種(セシウム 137 等)や摂取経路により ICRP 等で示されており、セシウム 137 の場合、1.3 × 10- 5 とされている。

ジェネリック農薬 当初開発した製造業者(先発メーカー)がもつ特許の有効期間(20~25年)が過ぎた後、異なる業者(後発メーカー)が製造する、有効成分が同等の農薬。毒性等の各種試験データが提出され、安全性を確認したうえで、農林水産大臣により登録。

集落営農

 集落等地縁的にまとまりのある一定の地域内の農家が農業生産を共同して行う営農活動をいう。(1)転作田の団地化、(2)共同購入した機械の共同利用、(3)担い手が中心となって取り組む生産から販売までの共同化等、地域の実情に応じてその形態や取組内容は多様である。

食の外部化

 共働き世帯や単身世帯の増加、高齢化の進行、生活スタイルの多様化等を背景に、家庭内で行われていた調理や食事を家庭外に依存する状況がみられる。これに伴い、食品産業においても、食料消費形態の変化に対応した調理食品、そう菜、弁当といった「中

なかしょく

食」の提供や市場の開拓等に進展がみられている。こういった動向を総称して「食の外部化」という。→「中食」を参照

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379

第1部

用語の解説

食品リサイクル・ループ

 食品リサイクルを一層円滑に進める観点から、食品関連事業者が排出した食品廃棄物を肥飼料等に再利用し、その肥飼料等を使用して生産された農畜水産物等をその食品関連事業者が再び商品の原料として利用すること。

地産地消

 地域の農林水産物の利用を促進することにより国産の農林水産物の消費を拡大する取組のこと。 この取組を進めていくため平成22(2010)年11月、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化法)が成立した。

直播栽培

 稲の種籾を直接田に播種する栽培方法で、慣行栽培(移植栽培)で必要な育苗や移植の作業を省略できる。播種の仕方等により様々な方法があるが、大別すると、耕起・代かき後の水を張った水田に播種する湛水直播栽培と、水を張っていない状態の田に播種する乾田直播栽培がある。

デオキシニバレノール、ニバレノール

 麦類(小麦及び大麦)の赤かび病の病原菌であるフザリウム属のかびが産生するかび毒であり、麦の品質低下や収穫量の減少をもたらす。麦に産生されたデオキシニバレノールの摂取により、人や家畜に対して、食欲の減退、嘔吐、胃腸炎、下痢等の消化器系への症状や、免疫機能の抑制等の中毒症状をもたらすことが知られている。なお、発がん性を示す根拠は報告されていない。

特定非営利活動法人/非営利団体(NPO)

 NPOは、NonProfitOrganizationの略で、様々な社会貢献活動を行い、団体構成員に対し収益を分配することを目的としない団体の総称である。様々な分野(福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力等)で、社会の多様化したニーズにこたえる重要な役割を果たすことが期待されている。NPOのうち、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得したものを特定非営利活動法人といい、銀行口座の開設や事務所の賃借等を団体の名で行うことができる。

土壌診断 土壌の状態(りん酸や加里等の肥料成分、pH、水はけ等)を調べ、その結果に基づいて、肥料の種類や施用量等、具体的な対策を処方するもの。作物の品質や収量を上げるための基礎的な取組の一つである。

トレーサビリティ

 食品のトレーサビリティは、農産物や加工食品などの食品が、どこから来て、どこへ行ったか「移動を把握できる」こと。食品の生産から消費にわたり、各自取り扱う商品(食品)の移動に関する記録を作成・保存することにより、結果として、生産から小売まで、食品の移動の経路を把握することが可能となり、食品事故が発生した際の迅速な回収等に役立つ。

中食

 レストラン等へ出かけて食事をする「外食」と、家庭内で手づくり料理を食べる「内食」の中間にあって、市販の弁当やそう菜、家庭外で調理・加工された食品を家庭や職場・学校等で、そのまま(調理加熱することなく)食べること。これら食品(日持ちをしない食品)の総称としても用いられる。

農業集落

 市町村の区域の一部において、農作業や農業用水の利用を中心に、家と家とが地縁的、血縁的に結び付いた社会生活の基礎的な地域単位のこと。農業水利施設の維持管理、農機具等の利用、農産物の共同出荷等の農業生産面ばかりでなく、集落共同施設の利用、冠婚葬祭、その他生活面に及ぶ密接な結び付きのもと、様々な慣習が形成されており、自治及び行政の単位としても機能している。

農業水利施設

 農地へのかんがい用水の供給を目的とするかんがい施設と、農地における過剰な地表水及び土壌水の排除を目的とする排水施設に大別される。かんがい施設には、ダム等の貯水施設、取水堰等の取水施設、用水路、揚水機場、分水工、ファームポンド等の送水・配水施設があり、排水施設には、排水路、排水機場等がある。このほか、かんがい施設や排水施設の監視や制御・操作を行う水管理施設がある。

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380

農業生産工程管理(GAP)

 GAPは、GoodAgriculturalPracticeの略。農業生産活動を行ううえで必要な関係法令等の内容に即して定められる点検項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動。

農業生産法人

 農地等の権利を取得することができる法人で、(1)法人形態要件(株式会社(公開会社でないもの)、持分会社、農事組合法人のいずれかであること)、(2)事業要件(主たる事業が農業であること)、(3)構成員要件(総議決権の4分の3以上が農業関係者であること等)、(4)役員要件(役員の過半が農業の常時従事者であること等)のすべてを満たす法人。

農業総産出額 農業生産活動による最終生産物の総産出額であり、農産物の品目別生産量から、二重計上を避けるために、種子、飼料等の中間生産物を控除した数量に、当該品目別農家庭先価格を乗じて得た額を合計したものである。

農事組合法人

 「農業協同組合法」に基づき3人以上の農民が発起人となって設立される、組合員の農業生産の協業を図りその共同の利益の増進を目的とする法人。 農事組合法人には、機械・施設等の共同利用施設の設置または農作業の共同化を行う法人と、法人自体が耕作等農業経営を行う法人、これらを両方とも行う法人がある。

農地の利用集積  農地を利用するため「所有」、「借入」、「農作業受託」により集積することをいう。

バイオマス

 動植物に由来する有機性資源で、化石資源を除いたものをいう。バイオマスは、地球に降り注ぐ太陽のエネルギーを使って、無機物である水とCO2から、生物が光合成によって生成した有機物であり、ライフサイクルのなかで、生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源である。

ベクレル 放射能の強さを計る単位であり、単位時間に原子核が崩壊する数を表したもの。1ベクレルは、1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を出す放射能の強さ。

6次産業化

1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組。 この取組を進めていくため平成22(2010)年11月、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化法)が成立した。

アルファベット

ASEAN

 東南アジア諸国連合(Association of South-East AsianNations)。昭和38(1963)年、東南アジアにおける経済成長や社会・文化的発展の促進、政治・経済的安定の確保、その他諸問題に関する協力を目的として、タイのバンコクにおいて設立された。設立当初は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5か国が加盟、その後、ブルネイ(昭和59(1984)年加盟)、ベトナム(平成7(1995)年加盟)、ラオス、ミャンマー(平成9(1997)年加盟)、カンボジア(平成11(1999)年加盟)が加わり、10か国となっている。また、平成9(1997)年のアジア通貨危機を契機に、我が国、中国、韓国の3か国が加わり、東アジアで地域協力をする「ASEAN+3」の枠組みも進められている。

BMI BMIは、BodyMass Indexの略。身長と体重の関係から算出される肥満度、低体重の指標。体重÷(身長×身長)で計算され、BMI≧25は肥満、BMI<18.5はやせ(低体重)とされる。

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381

第1部

用語の解説

BRICs BRICsは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4か国の頭文字を合わせたもの。大きな国土面積、人口をもち、天然資源が豊富であるとの共通点を有している。

BSE(牛海綿状脳症)

 BSEは、BovineSpongiformEncephalopathyの略。異常プリオンたんぱく質(細胞たんぱく質の一種が異常化したもの)に汚染された肉骨粉等の飼料(BSE感染牛の脳等を含む肉骨粉等)の摂取により経口感染すると考えられている牛の疾病。平均で5年、ほとんどの場合は4年から6年と推測される潜伏期間の後、脳組織がスポンジ状になり、行動異常等の神経症状を呈し、発病後2週間から6か月で死に至る。

EPA(経済連携協定)/FTA(自由貿易協定)

 EPAは、EconomicPartnershipAgreement、FTAは、FreeTradeAgreementの略。物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的として特定国・地域の間で締結される協定をFTAという。FTAの内容に加え、投資ルールや知的財産の保護等も盛り込み、より幅広い経済関係の強化を目指す協定をEPAという。「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)等においては、最恵国待遇の例外として、一定の要件((1)「実質上のすべての貿易」について「関税その他の制限的通商規則を廃止」すること、(2)廃止は、妥当な期間内(原則10年以内)に行うこと、(3)域外国に対して関税その他の通商障壁を高めないこと等)のもと、特定の国々の間でのみ貿易の自由化を行うことも認められている(「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)第24条他)。

LED(発光ダイオード)

 LEDは、LightEmittingDiodeの略。電流を流すと発光する半導体の一種。寿命が長く、小型で軽量、低消費電力等の特長がある。

TMRセンター

 TotalMixedRation(完全混合飼料)の略で、粗飼料や濃厚飼料等を混合し、牛が必要としているすべての栄養素をバランスよく含んだ飼料のこと。栄養的に均一で選び食いができないという特徴がある。これを専門的につくり、農家に供給する施設をTMRセンターという。

WTO(世界貿易機関)

 WTOは、WorldTradeOrganizationの略。ウルグアイ・ラウンド合意を受け、「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)の枠組みを発展させるものとして、平成7(1995)年1月に発足した国際機関。本部はスイスのジュネーブにあり、貿易障壁の除去による自由貿易推進を目的とし、多角的貿易交渉の場を提供するとともに、国際貿易紛争を処理する。

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382

3.農業・森林・水産業の多面的機能(1)農業雨水の保水・貯留による洪水防止機能

 畦畔に囲まれている水田や水を吸収しやすい畑の土壌における雨水を一時的に貯留する機能

土砂崩壊防止機能  棚田において、農業の生産活動を通じて斜面の崩壊や地すべりを未然に防ぐ機能

土壌侵食防止機能  水田や畑の適切な維持管理による土壌侵食を防止する機能

水源かん養機能 水田で利用される農業用水や雨水が地下に浸透し、時間をかけて河川に還元されるとともに、より深く地下に浸透した水が流域の地下水をかん養する機能

水質浄化機能 水田や畑の水中や土中の微生物が水中の有機物を分解し、作物が窒素を吸収するほか、微生物の働きにより窒素分を取り除き、水質を浄化する機能

有機性廃棄物処理機能

 水田や畑の土のなかで、バクテリア等の微生物が家畜排せつ物や生ごみ等から作った堆肥をさらに分解し、再び農作物が養分として吸収する機能

気候緩和機能 農地で栽培される作物の蒸発散によって熱を吸収し気温を下げることや水田の水面からの蒸発により気温が低下する機能

生物多様性保全機能

 水田がかんがい用水路により河川と連結して、原生自然に比べてより多様な生物相を示すなど、生物多様性を保全する機能

生態系保全機能 水田や畑が自然との調和を図りながら適切にかつ持続的に管理されることにより、植物や昆虫、動物等の豊かな生態系をもつ二次的な自然が形成・維持される機能

文化の伝承機能 日本の年中行事や祭事の多くは、豊作を祈る祭事等に由来しており、このような行事や地域独自の祭り等の文化を、農業活動を通じて伝承する機能

良好な景観の形成機能

 農業の営みを通じ、農地と農家の家屋、その周辺の水辺や里山等が一体となった良好な農村の景観を形成する機能

(2)森林生物多様性保全機能

 我が国の森林は、約200種の鳥類、2万種の昆虫類をはじめとする野生動植物の生息・生育の場となるなど、遺伝子や生物種、生態系を保全する機能

地球環境保全機能 温暖化の原因であるCO2の吸収や蒸発散作用により、地球規模で自然環境を調節する機能

土砂災害防止機能/土壌保全機能

 森林の下層植生や落枝落葉が地表の侵食を抑制するとともに、森林の樹木が根を張りめぐらすことによって土砂の崩壊を防止する機能

水源かん養機能 森林の土壌が雨水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化して洪水を緩和するとともに、川の流量を安定させる機能

快適環境形成機能

 蒸発散作用等による気候緩和や、防風や防音、樹木の樹冠による塵じんあい

埃の吸着やヒートアイランド現象の緩和等により、快適な環境を形成する機能

保健・レクリエーション機能

 フィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により直接的な健康増進効果や、行楽やスポーツの場を提供する機能

文化機能 森林景観が、伝統文化伝承の基盤として日本人の自然観の形成に大きくかかわるとともに、森林環境教育や体験学習の場を提供する機能

物質生産機能  木材のほか、各種の抽出成分、きのこ等を生産する機能

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第1部

用語の解説

(3)水産業漁獲によるチッソ・リン循環の補完機能

 適度な漁獲によって、食物連鎖によって海の生物に取り込まれたチッソ・リンを陸上へと回収し、チッソ・リンの循環を補完する機能

海域環境の保全機能

 カキやアサリ等の二枚貝類が、海水をろ過し、プランクトンや有機懸濁物を餌とすることで海水を浄化するなど、海域環境を保全する機能

水質浄化機能 干潟において、水中の有機物を分解し、栄養塩類や炭酸ガスを吸収し、酸素を供給するなど海水を浄化する機能

生態系保全機能 干潟が多くの水生生物の生活を支え、産卵や幼稚仔魚に成育の場を提供する機能

伝統漁法等の伝統的文化を継承する機能

 漁村の人々の営みを通じて、伝統漁法等の伝統的文化を継承する機能

海難救助機能 沈没・転覆・座礁・漂流・衝突・火災等船が航海中に起こる海難事故の発生時に、漁業者が行う救助活動

災害救援機能 震災やタンカー事故等災害時の、漁業者が行う物資輸送や流出油の回収等の救援機能

海域環境モニタリング機能

 赤潮・青潮やクラゲの大量発生等の漁業者による早期発見等、海域環境の異変の監視機能

国境監視機能 貴重な水産資源の密漁監視活動を通じて、密輸や密入国の防止等国益を守る機能

交 流 等 の 場 を提供する機能

 海洋性レクリエーション等のリフレッシュの場、自然の大切さを学べる交流の場を提供する機能

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巻末付録

巻末付録

〜年次報告50年を振り返って〜

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年次報告 50年を振り返って

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巻末付録

<巻末付録> 年次報告 50 年を振り返って

我が国の経済は、昭和 30(1955)年に戦前の水準を超えるまでに回復し 1、その後、いわゆる高度経済成長に入りましたが、その影響がいろいろな形で農業・農村にも及び始めました。農業と他産業との間において生産性や従事者の生活水準の格差が拡大するとともに、農産物の消費構造にも変化が生じる、農業から他産業へ労働力が移動するなどの現象がみられました。

このようななか、昭和 36(1961)年「農業基本法」が制定され、農業と他産業の生産性の格差が是正されるように農業の生産性を向上すること、農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することが目標とされました。この目標がどのように達成されたか、逆に所期の目標が達成されていないとすればなぜそうなったのか判断するために、「農業に関する年次報告」は、農業の生産性と農業従事者の生活水準の動向をはじめとした農業の動向について客観的記述を行い、政府から毎年国会に提出するものとして、「農業基本法」に位置付けられました。

その後、食料自給率の低下、農業者の減少・高齢化、農地面積の減少、農村の活力の低下等、食料・農業・農村をめぐる情勢が大きく変化したことから、平成 11(1999)年、農業の持続的発展と農村の振興を図り、食料の安定供給の確保と農業・農村の多面的機能の発揮を基本理念とする「食料・農業・農村基本法」が制定されました。「食料・農業・農村に関する年次報告」は、新しい基本法においても「農業基本法」と同様に位置付けられています。

平成 22(2010)年度の「食料・農業・農村に関する年次報告」は、昭和 36(1961)年の「農業基本法」のもとで国会に提出された「農業に関する年次報告」から数えて 50 回目に当たります。これを機に、以下のとおり、農政、食料・農業・農村分野での主な出来事や主な指標の変化等を振り返ります。

1 年次報告の位置付け

2 50 年間の主な動きと指標

1 �昭和 30(1955)年の 1人当たり実質国民所得が戦前(昭和 9(1934)~昭和 11(1936)年平均)のほぼ1割増の水準に達しました。

昭和 36(1961)年度年次報告 平成 21(2009)年度年次報告

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年次報告 50年を振り返って

一般経済社会・農政全体

主な出来事  

(1)

(注)◆は経済社会関係、○は農政関係<戦後~昭和 34(1959)年>◆ 我が国経済は戦前水準に回復。「もはや戦後ではない」(経済白書(昭和 31(1956)年))

○  農地改革(「自作農創設特別措置法」(昭和 21(1946)年)、「農地法」(昭和 27(1952)年)、「農業協同組合法」(昭和 22(1947)年))等一連の農村民主化の施策

○  農業生産の安定等のため、「農薬取締法」(昭和 23(1948)年)、「肥料取締法」(昭和 25(1950)年)、「植物防疫法」(昭和 25(1950)年)、「家畜伝染病予防法」(昭和26(1951)年)等関係法規を整備

○  農業生産の基盤の整備及び開発等に資することを目的として、「土地改良法」(昭和24(1949)年)を制定

<昭和 35(1960)~昭和 44(1969)年>◆ 「国民所得倍増計画」を閣議決定(昭和 35(1960)年)◆ 「全国総合開発計画」(全総)(拠点開発構想)を閣議決定(昭和 37(1962)年)◆  昭和 38(1963)年ガット 11 条国 1 に移行、昭和 39(1964)年には IMF 8条国 2

へ移行◆  ガット・ケネディ・ラウンド交渉(昭和 39(1964)~昭和 42(1967)年)、経済協

力開発機構(OECD)に加盟(昭和 39(1964)年)◆ オリンピック東京大会開催(昭和 39(1964)年)◆ 「公害対策基本法」を制定(昭和 42(1967)年)◆  「都市計画法」(昭和 43(1968)年)により、市街化区域、市街化調整区域が設定さ

れ、開発行為等を規制◆ 「新全国総合開発計画」(新全総)(大規模プロジェクト構想)を閣議決定(昭和 44 (1969)年)

○ 「農業基本法」を制定(昭和 36(1961)年)  ・ 農業の生産性の向上、農業従事者と他産業従事者との生活水準の均衡を目標  ・ 生産対策(農業生産の選択的拡大、農業の生産性向上等)   ・  価格・流通対策(農産物価格の安定及び農業所得の確保、農産物の流通合理化等)  ・ 構造対策(農業経営の規模拡大、農業経営の近代化、協業の助長等)○  農業経営の近代化、経営改善に資するため、「農業近代化資金融通法」、「農業信用保

証保険法」を制定(昭和 36(1961)年)○ 果樹農業の発展を図るため、「果樹農業振興特別措置法」を制定(昭和 36(1961)年)○ 「農地法」の改正(昭和 37(1962)年)により、農業生産法人制度を創設

1 国際収支を理由とする貿易制限を行わない国2 国際収支の悪化を理由とする経常取引の制限を行わない国

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389

巻末付録

○ 「土地改良法」の改正(昭和 39(1964)年)により、土地改良長期計画を制度化○ 山村の経済力の培養等を図るため、「山村振興法」を制定(昭和 40(1965)年)○  酪農、野菜生産の発展を図るため、「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」(昭和

40(1965)年)、「野菜生産出荷安定法」(昭和 41(1966)年)を制定○  農業の振興を図るべき地域を明らかにし、農業の健全な発展を図るため、「農業振興

地域の整備に関する法律」を制定(昭和 44(1969)年)○ 自主流通米制度を発足(昭和 44(1969)年)

<昭和 45(1970)~昭和 54(1979)年>◆ 日本万国博覧会(大阪万博)開催(昭和 45(1970)年)◆  大幅に人口が減少するなどの過疎地域への対策として、「過疎地域対策緊急措置法」

を制定(昭和 45(1970)年)◆ 沖縄本土復帰、日本列島改造論(昭和 47(1972)年)◆  異常気象による世界的な穀物不作(昭和 47(1972)年)、米国産大豆輸出規制(昭

和 48(1973)年)◆  第1次石油危機(昭和 48(1973)年)により、物価の急騰、マイナス経済成長、経

常収支の赤字。第2次石油危機(昭和 54(1979)年)◆ ガット・東京ラウンド(昭和 48(1973)~昭和 54(1979)年)◆  総合的かつ計画的な国土の利用を図るため、「国土利用計画法」を制定(昭和 49(1974)

年)◆ 「第三次全国総合開発計画」(三全総)(定住構想)を閣議決定(昭和 52(1977)年)

○ 「総合農政の推進について」を閣議決定(昭和 45(1970)年)  ・ 経営規模の拡大と生産性の向上  ・ 米の生産調整の実施  ・ 流通加工の近代化  ・ 農家所得を他産業従事者の所得に均衡  ・ 離農の促進  ・ 農村の総合的開発○ 「農地法」の改正(昭和 45(1970)年)により、農地取得上限面積を撤廃等○  第1次過剰米処理(昭和 45(1970)年)、米の生産調整の本格的実施(昭和 46(1971)

年)○  農業者の老後の生活の安定及び福祉の向上に資するため、「農業者年金基金法」を制

定(昭和 45(1970)年)○  生鮮食料品等の取引の適正化、生産・流通の円滑化を図るため、「卸売市場法」(昭和

46(1971)年)を制定○  農村地域への工業導入を計画的・積極的に進めるため、「農村地域工業等導入促進法」

を制定(昭和 46(1971)年)○ 「生産緑地法」を制定(市街化区域内での生産緑地設定)(昭和 49(1974)年)

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年次報告 50年を振り返って

<昭和 55(1980)~平成元(1989)年>◆  プラザ合意(昭和 60(1985)年)により、急激な円高。株価や地価等の資産等が急

騰し、バブル景気◆  「国際協調のための経済構造調整研究会報告書(前川レポート)」(国際化時代にふさわ

しい農業の推進)を公表(昭和 61(1986)年)◆  「第四次全国総合開発計画」(四全総)(交流ネットワーク構想)を閣議決定(昭和 62(1987)年)

◆ 多様な余暇活動に資するため、「総合保養地域整備法」を制定(昭和 62(1987)年)◆  地域の特性を生かした国土形成を促進するため、「多極分散型国土形成促進法」を制

定(昭和 63(1988)年)◆ 日米構造協議開始(平成元(1989)年)

○ 「80 年代の農政の基本方向」を農政審議会が答申(昭和 55(1980)年)  ・ 食料の安定供給と安全保障(食料自給力の維持強化、食料輸入の安定、備蓄の確    保等)  ・ 健康的で豊かな食生活の保障(日本型食生活の意義、消費者に対する情報提供等)  ・ 農業生産の再編成(農業生産の重点的展開、優良農地の確保整備等)  ・ 生産性の高い農業の実現(生産性向上の展望等)  ・ 活力ある農村社会の形成(農村地域の展望等)  ・ 緑資源の維持培養(緑資源の機能と現状等)○  人口の著しい減少により機能が低下した地域の振興を図るため、「過疎地域振興特別

措置法」を制定(昭和 55(1980)年)○ 「食糧管理法」改正(昭和 56(1981)年)により、配給制度を停止等○ 「21 世紀へ向けての農政の基本方向」を農政審議会が答申(昭和 61(1986)年)  ・ 産業として自立し得る農業の実現  ・ 消費者ニーズの変化に対応できる生産・流通体制の整備  ・ 農産物市場アクセスの改善  ・ 先端技術の開発・普及と高度情報技術の活用   ・ 国土経営に資する活力ある農村社会の建設○ 日米農産物交渉が決着(牛肉・オレンジ自由化、12 品目)(昭和 63(1988)年)

<平成2(1990)~平成 11(1999)年>◆ 東西ドイツの統一、ソ連の崩壊等による冷戦体制の終結(平成 3(1991)年)◆ バブル経済崩壊(平成3(1991)年)◆  新たな世界貿易ルールとして、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意(平成5(1993)

年)◆ 環境保全についての基本理念等を定めた「環境基本法」を制定(平成5(1993)年)◆ 阪神・淡路大震災が発生(平成7(1995)年)◆  「21 世紀の国土のグランドデザイン」(多軸型国土構造)を閣議決定(平成 10(1998)

年)

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391

巻末付録

○ 市民農園の整備を推進するため、「市民農園整備促進法」を制定(平成2(1990)年)○ 「新しい食料・農業・農村政策の方向」(新政策)を公表(平成4(1992)年)  ・ 土地利用型農業の経営の展開  ・ 経営体の育成と農地の効率的な利用  ・ 米の生産調整と管理  ・ 価格政策  ・ 環境保全に資する農業  ・ 適正な土地利用の確保と農村の定住条件の確保  ・ 中山間地域等に対する取組○ 「農業経営基盤強化促進法」(認定農業者制度の創設等)を制定(平成5(1993)年)○ 冷害による戦後最悪の米不作(平成5(1993)年)○  特定農山村地域の特性に即した農林業の振興を図るため、特定農山村法 1 を制定(平

成5(1993)年)○ ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を決定(平成6(1994)年)○ 「食糧管理法」を廃止し、新たに食糧法 2 を制定(平成7(1995)年)○ 青年の就農促進を図るため、青年就農促進法 3 を制定(平成7(1995)年)○  農山漁村滞在型余暇活動の促進のため、農山漁村滞在型余暇活動促進法 4 を制定(平

成 6(1994)年)○  「農業基本法」に基づく戦後の農政を抜本的に改革し、新たな食料・農業・農村政策

として再構築していくため、農政改革大綱をとりまとめ、公表(平成 10(1998)年)○ 「食料・農業・農村基本法」を制定(平成 11(1999)年)  ・ 食料の安定供給の確保、多面的機能の十分な発揮、農業の持続的な発展、農村   の振興の4つの理念  ・ 基本計画の策定、食料自給率の目標設定  ・ 消費者重視の食料政策の展開   ・ 望ましい農業構造の確立と経営施策の展開  ・ 市場評価を適切に反映した価格形成と経営安定対策  ・ 自然循環機能の維持増進  ・ 中山間地域等の生産条件の不利補正○  環境保全型農業を推進するため、持続農業法 5 や家畜排せつ物法 6 を制定(平成 11(1999)年)

<平成 12(2000)年~  >◆ 92 年ぶりに口蹄疫が発生(平成 12(2000)年)◆  地方分権一括法 7 施行(平成 12(2000)年)により、国及び地方公共団体が分担す

べき役割が明確化等

1 正式名称は「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律」2 正式名称は「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」3 正式名称は「青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法」4 正式名称は「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」5 正式名称は「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」6 正式名称は「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」7 正式名称は「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」

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年次報告 50年を振り返って

◆ WTO の包括的な貿易交渉、ドーハ・ラウンドが開始(平成 13(2001)年)◆  平成 12(2000)年以降、国内での BSE(牛海綿状脳症)の発生(平成 13(2001)年)、

残留農薬問題等により、国民の食に対する関心と不安が高まり◆ サブプライム問題が表面化、世界的な金融危機(平成 19(2007)~平成 20(2008)年)◆  10 年ぶりに口蹄疫が発生。高病原性鳥インフルエンザに家きん、野鳥が感染(平成

22(2010)~平成 23(2011)年)◆ 東日本大震災が発生(平成 23(2011)年)

○  農業生産条件の不利性を補正するため、従来から実施している「中山間地域総合整備事業」等に加えて、中山間地域等直接支払制度を開始(平成 12(2000)年度)

○ 初めての「食料・農業・農村基本計画」を策定(平成 12(2000)年)  ・ 供給熱量ベース食料自給率目標 45%(平成 22(2010)年度)  ・ 食料消費に関する施策  ・ 不測時における食料安全保障  ・ 望ましい農業構造の確立  ・ 技術の開発及び普及  ・ 農産物の価格の形成と農業経営の安定  ・ 自然循環機能の維持増進  ・ 農村の総合的な振興  ・ 中山間地域等の振興○  「食」と「農」の再生プラン(消費者に軸足を置いた農政展開)を公表(平成 14(2002)

年)○  食品の安全の確保を総合的に推進することを目的として、「食品安全基本法」を制定。

科学に基づく食品安全行政を推進するため、内閣府に食品安全委員会を設置。消費者を重視した農林水産行政を確立するため、農林水産省に「消費・安全局」を新設(平成15(2003)年)。牛の個体識別を義務付ける法律 1 を制定(平成 15(2003)年)。

○  「構造改革特別区域法」の制定(平成 15(2003)年)により、農地リース方式による一般法人の農業参入が可能となり、平成 17(2005)年、「農業経営基盤強化促進法」の改正により、農地リース方式による農業参入が全国展開

○  食糧法改正(平成 16(2004)年)により、計画流通制度の廃止、生産調整等の見直し等

○「食料・農業・農村基本計画」を策定(平成 17(2005)年)  ・ 供給熱量ベース食料自給率目標 45%(平成 27(2015)年度)  ・ 生産額ベース食料自給率目標 76%(平成 27(2015)年度)  ・ 食の安全の確保に対する高い関心に対応したリスク管理  ・ 品目別の価格・経営安定対策から品目横断的な政策への移行  ・ 担い手・農地制度の改革  ・ 環境保全を重視した施策の一層の推進  ・ 農地・農業用水等の地域資源の保全管理のための政策の構築等

 

1 正式名称は「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」

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巻末付録

 

○  担い手確保・育成の観点から、経営所得安定対策等大綱を決定(平成 17(2005)年)、品目横断的経営安定対策(平成 18(2006)年)、水田・畑作経営所得安定対策(平成19(2007)年)を実施

○ 「農地・水・環境保全向上対策」を導入(平成 19(2007)年)○ 農商工等連携促進法 1 を制定(平成 20(2008)年)○  「農地法」の改正(平成 21(2009)年)により、一般法人の農地の貸借を全国で可

能となるよう措置、優良農地の確保のため農地の転用規制の強化等○ 「食料・農業・農村基本計画」を策定(平成 22(2010)年)  ・ 供給熱量ベース食料自給率目標 50%(平成 32(2020)年度)  ・ 生産額ベース食料自給率目標 70%(平成 32(2020)年度)  ・ 再生産可能な経営を確保する政策への転換  ・  多様な用途・需要に対応して生産拡大と付加価値を高める取組を後押しする政   策への転換  ・ 意欲ある多様な農業者を育成・確保する政策への転換  ・ 優良農地の確保と有効利用を実現し得る政策の確立  ・ 活力ある農山漁村の再生に向けた施策の総合化  ・ 安全を実感できる食生活の実現に向けた政策の確立○ 戸別所得補償モデル対策を実施(平成 22(2010)年)○  「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利

用促進に関する法律」(六次産業化法)を制定(平成 23(2011)年)

主な指標  

昭和 35 年度 平成 22 年度 (1960) (2010)

■ 国内総生産(GDP)(名目) 16.7 兆円 � 474.0 兆円 * 1

■ 1 人当たりの GDP(名目) 18 万円 � 372 万円 * 1

■ 貿易収支  ▲ 1,572 億円 � 6 兆 6,347 億円 ■ 人口  9,342 万人 � 1 億 2,806 万人 * 2

■ 為替レート(1 ドル)  360 円  � 81.79 円* 3

■ 国家予算(一般会計)額に占める農業関係  予算の割合 7.9 %  �   3.3 % * 4

資料:内閣府「国民経済計算」、「月例経済報告」、総務省「国勢調査」、財務省「貿易統計」 注:1)貿易収支、人口は暦年の値   2) * 1 は平成 21(2009)年の値。* 2 は速報値。* 3 は平成 23(2011)年 3 月名目(インターバン

ク直物中心相場(月中平均))*4は農山漁村地域整備交付金が含まれていない。

1 正式名称は「中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律」

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年次報告 50年を振り返って

回想

今村 奈良臣氏         (元食料・農業・農村政策審議会会長)

私は旧農業基本法にもとづく最後の農政審議会会長をつとめるとともに、新しい食料・農業・農村基本法にもとづく初代の食料・農業・農村政策審議会の会長をつとめることとなりました。食料・農業・農村政策審議会の会長就任に当り、農政審議会会長時代の反省も込めて次のような食料・農業・農村政策に対する私なりの基本スタンスを決めて臨みました。

1.農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である2.食と農の距離を全力をあげて縮める3.農業ほど人材を必要とする産業はない4.トップ・ダウン農政からボトム・アップ農政への改革に全力をあげる5.共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる

この基本の5項目を更に各項目5つの小項目に具体的に整理し、新しい食料・農業・農村政策の確立に全力をつくすべく努力目標を自ら課すこととして臨みました。

農政審議会会長時代に「農業に関する年次報告」を2回、食料・農業・農村政策審議会会長時代に3回にわたる「食料・農業・農村に関する年次報告」いわゆる農業白書を決定・公表するとともに、第1回の「食料・農業・農村基本計画」の策定・答申を行いました。これらの史的意義に関する評価は国民の判断に委ねるほかありません。この時期、BSE の激発等食品安全問題への国民の関心は非常な高まりを見せ、それらへの対応に追われたことは記憶に新しいことです。また、この時期の画期的な政策転換として実現したのが、「中山間地域等直接支払制度」の確立でした。かつて私が『補助金と農業・農村』

(1978 年、家の光協会刊、第 20 回エコノミスト賞受賞)で提起したR・D・F(Rural Development Fund)構想が現実の農政改革の中で実現し、現在に至るも高い評価が与えられていることは感慨深いことです。

農政改革は容易ではないと実感してきた新旧2代にわたる会長としての回想です。

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巻末付録

農業白書作成の思い出

満永 正昭氏    (元農林水産省調査課)

農業基本法第6条の規定に基づいて、毎年、国会に提出することとなった「農業の動向に関する年次報告」が昭和 36 年度に提出されて以来、平成 22 年度の白書が 50 年を迎えました。その記念すべき節目に再び筆を取る機会を得たことは誠に感慨深いことです。

私が昭和 36 年度の第1回報告から通算で 16 回の執筆に携わった当時を振り返り、特に思い出深い二点について書き記したいと思います。

最初の白書は、当時農林省大臣官房企画室において担当者が初稿の執筆にあたりました。先ず農業基本法の精神(農業生産の選択的拡大、自立経営の育成等)に即して、農業施策を総合的に検討するため、農業の実態を把握し、その背景、必要な施策は何であるかを明らかにすることが必要でした。この考え方に基づいて、農業の動向、講じた施策の反省、新たに講じようとする施策は何かという白書の三部構成の原型が形づくられたと記憶しています。現在において、当時を改めて思い返すと、とにかく試行錯誤の連続であったように思います。

また、講じた施策や講じようとする施策を総合的に判断する指標として、自給率という考え方を用いたのも一つの特徴だと思います。この自給率の導出に当っては、食料需給表を用いて試算を重ねましたが、審議会委員や各方面の有識者のアドバイスを得ながら、こちらも試行錯誤の連続でした。

この自給率の考え方は、農業政策をどのように考え、農業をどの方向に誘導するかという政策の方向付けの参考指標として重要なものと考えています。

私が白書を担当していた当時から 50 年の年月が経過し、昨今では我が国の TPP への対応に高い関心を寄せています。時代の変遷とともに我が国農業を巡る情勢は変化していますが、農業の実態を明らかにし、必要な施策を明示する白書の役割は不変です。

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年次報告 50年を振り返って

食料消費・食生活と食品産業

主な動き  

○� 昭和20年代(1945~ 1954年)、戦後の極度に困難な食料事情のもと、ララ 1からの物資寄贈を受けるとともに、国内での食料不足を補うため、エジプト等より米等を輸入。○� 学校給食は、昭和 22(1947)年、救援物資を受けつつ、主要都市の約 300 万人の児童を対象に再開し、徐々に全国展開。

○� その後、米国からの援助小麦粉によるパンの完全給食が実施。昭和 29(1954)年、「学校給食法」が施行。

○� 食料供給の量的な拡大が進むにつれ、昭和 30(1955)年頃から食生活は質的にも大きく向上。米の消費は昭和 37(1962)年のピークとなった後、減少が継続。○� 昭和 30年代後半から昭和 40年代前半(1960 ~ 1969 年)頃には、炊飯器、冷蔵庫等の電化製品が家庭にも普及し、家事労働は大幅に省力化、食生活も大きく変化。

○� 昭和 40 年代(1965 ~ 1974 年)には、果物、肉類、牛乳の消費が大きく伸びる一方、穀類の消費割合が大きく低下。

○� 昭和 44(1969)年、農林業以外の女性雇用者に占める主婦の割合が4割を占める2に至る。昭和 40年代(1965 ~ 1974 年)以降、生活スタイルの多様化等により食生活の外部化が一層進展。

○� 昭和 54(1979)年、欧米諸国に比べて脂質の摂取比率が低く、炭水化物の割合が高いなど平均的にみて栄養バランスのとれた、米飯を中心とする日本型食生活が形成。

○� 昭和 55(1980)年の食料費に占める外食の割合は 14%(昭和 45(1970)年 10%)、加工食品の割合は 32%(同 32%)となり、以降も上昇傾向3。

○� 昭和 60(1985)年頃からは、食の洋風化・多様化が一層進み、脂質の割合が上昇するなど栄養バランスの崩れ。欠食等食生活の乱れ。

○� 平成 10(1998)年頃からは、BSEの発生等を受け、食の安全に対する意識が特に高まり。○� 近年は、単身世帯の増加等により、食生活の外部化・簡便化がさらに進展。また、景気悪化を背景に低価格志向が高まり。

(2)

昭和 30(1955)年頃の学校給食の様子

学校給食の献立例(昭和 30(1955)年):コッペパン、ミルク(脱脂粉乳)、あじフライ、サラダ、ジャム

ア 食料消費・食生活

栄養(P(たんぱく質)、F(脂質)、C(炭水化物))の供給熱量比率 4

P12.9

F24.9C62.2

(平成 21(2009)年度)P13.0

F28.4C58.6

(昭和 54(1979)年度)

1 戦乱で窮乏に陥った国々への援助物資を送る活動を行っていた米国の宗派を超えた宗教団体や労働団体等が集まってつくった団体

2 総務省「労働力調査」3 総務省「家計調査」4 農林水産省「食料需給表」

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巻末付録

主な指標  

� 昭和 35 年度� � 平成 21年度� (1960)� � (2009)

■ エンゲル係数� 42% � �� 23 %*1

■ 国民 1人 1日当たりの供給熱量� 2,291 kcal� �� 2,436 kcal■ PFC 供給熱量比率:   P(たんぱく質)� 12.2% � �� 13.0 %   F(脂質)� 11.4% � �� 28.4 %   C(炭水化物)� 76.4% � �� 58.6 %■ 国民 1人 1年当たり供給純食料:   米� 114.9 kg � �� 58.5 kg   小麦� 25.8 kg � �� 31.8 kg   野菜� 99.7 kg � �� 91.7 kg   果実� 22.4 kg � �� 39.3 kg    うち みかん� 5.9 kg � �� 5.0 kg    うち りんご� 7.0 kg � �� 8.7 kg   肉類� 5.2 kg � �� 28.6 kg    うち 牛肉� 1.1 kg � �� 5.9 kg    うち 豚肉� 1.1 kg � �� 11.5 kg   鶏卵� 6.3 kg � �� 16.5 kg   牛乳及び乳製品� 22.2 kg � �� 84.8 kg   魚介類� 27.8 kg � �� 30.0 kg   油脂類� 4.3 kg � �� 13.1 kg

� 昭和 55年� � 平成 17年■ 飲食料の消費形態別最終消費額:� (1980)� � (2005)

   生鮮食品� 14 兆円� �� 14 兆円   加工食品� 22 兆円� �� 39 兆円   外食� 12 兆円� �� 21 兆円

資料:総務省「家計調査」、農林水産省「食料需給表」、総務省等「産業連関表」を基に農林水産省で試算 注:�エンゲル係数は、農林漁家世帯を除く二人以上の世帯の家計支出に占める食料費の割合(暦年の値)。昭

和 35(1960)年は全都市の値。* 1は平成 22(2010)年の人口 5万人以上の市の値

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年次報告 50年を振り返って

主な動き  

(加工食品)○� 昭和 30 年代半ば(1960 年頃)から、製造工程や包装工程の機械化、食品添加物や冷凍等による原料貯蔵の長期化等、食料品製造技術は著しく進歩。

○� 昭和 33(1958)年、インスタントラーメンが出現。昭和 43(1968)年にはレトルト食品、昭和 46(1971)年にはカップラーメンが発売されるなど即席食品が次々に登場。

○� 2ドア式の冷凍冷蔵庫の普及を背景に冷凍食品生産が年々増加。昭和 46(1971)年、冷凍食品のうち調理済み食品が過半。

○� 昭和 50 年代後半(1980 年頃)以降、高品質食品、健康に配慮した食品の提供が活発化。例えば、電子レンジ食品の新製品、油分を減らしたマヨネーズ、減塩しょうゆ、低塩分みそ等。

(飲料)○ 昭和 30年代半ば(1960 年頃)から、炭酸飲料・果汁飲料の需要増大が本格化。○� 昭和 50 年代(1975 年)頃から自動販売機が急速に普及し始め、飲料需要がさらに増大。果実・炭酸飲料に加え、缶コーヒー、スポーツドリンク、ウーロン茶飲料等市場が急成長。

○� 平成に入り(1989 年~)、ペットボトルの普及とともに、茶飲料、ミネラルウォーター市場はさらに拡大。

○� 近年、国内における資本・業務提携の動きが活発化するとともに、海外市場への投資活動やM&A(企業の合併や買収)等の動きも拡大傾向。

(外食・中食)○� 昭和 44(1969)年3月、第2次資本の自由化により、飲食業が自由化業種に指定され、米国の外食企業が我が国へ進出。これに伴い、チェーン経営によるファストフードやファミリーレストランの業態が登場。

○� 昭和 50 年代(1975 ~ 1984 年)、生活スタイルの多様化、コンビニエンスストア市場の拡大等を背景に、弁当、おにぎり等の中食の利用が拡大。デパート等での中食の売り場の増大やそう菜を配達するサービスも発展。

カップラーメン

昭和 45(1970)年当時のファミリーレストラン

左:店頭でのコロッケ販売右:スーパーマーケットのそう菜売り場

イ 食品産業

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録付末巻

出外等ーャジレ、上向の準水得所、化様多のルイタス活生、は模規の場市食中・食外  ○機会の増大等により拡大したが、最近は景気低迷のなか若干減少傾向。

メの舗店、ていつに報情の等程過産生や地産生の料材原、が者業事食中・食外、年近  ○ニュー、パンフレット等で紹介する取組の他、ホームページ等を活用して消費者に店舗情報を提供する取組が進展。なお、IT を活用して外食店舗を紹介する業態も発展。

(流通)0691(半後代年03和昭  ○ ~ 1964 年)から、セルフ販売方式1のスーパーマーケット

が増加。トラック輸送が増加するとともに、物流拠点の整備が進展。・凍冷、ナテンコ・車貨蔵冷。及普が系体通流温低、らか)頃年0791(ば半代年04和昭  ○

冷蔵自動車、冷凍・冷蔵倉庫やショーケース等が増加。の場市売卸方地、場市売卸央中、降以、れさ定制が法場市売卸、年)1791(64和昭  ○

整備が進展。。開展が態業なた新等アトススンエニビンコ、らか)頃年0891(半後代年05和昭  ○

POS(販売時点情報管理)2システムが導入され、普及。店売小品料食の来従、し昇上にらさがトイエウの売販品料食るよに店模規大、は年近  ○

が大きく減少。

1 店頭に商品を陳列し、消費者が手にとって選んでもらう販売方式2 POS は、Point of sales の略。商品についているバーコードを読み取り、売上計算や在庫管理等を行う方式

主な指標  

昭和 35 年 平成 21年 (1960) (2009)

■ 食料品製造業の出荷額 1 兆 8,293 億円 ⇒ 24 兆 4,481 億円■ 外食店舗数 22 万 9,962     ⇒ 72 万 4,559* 1

■ 食の外部化率 28 %*2 ⇒ 42 % ■ 中央卸売市場数 42    ⇒ 76* 3

■ 飲食料品小売業の年間販売額 1 兆 8,526 億円 ⇒ 40 兆 8,133 億円*4

   うち 料理品小売業 183 億 6,031 万円 ⇒ 2 兆 3,364 億円*4

■ 食料品スーパーの年間販売額 4 兆 1,201 億円*5 ⇒ 17 兆 1,063 億円*4

■ コンビニエンスストアの年間 2 兆 1,776 億円*5 ⇒ 7 兆 68 億円*4

  販売額

)財(、」査調計統業商「、」査調計統業工「省業産済経、」査調計統業企・所業事「、」査調計統所業事「省務総 :料資食の安全・安心財団附属機関外食産業総合調査研究センター推計

。値の年)0102(22成平は3*。値の年)5791(05和昭は2*。値の年)6002(81成平は1* )1:注 * 4は平成 19(2007)年の値。* 5は昭和 57(1982)年の値

   2)食料品製造業は、従業者4人以上の事業所の値の店食飲興遊、店食飲般一は年)6002(81成平、店食飲は年)0691(53和昭、ていつに数舗店食外 )3   

事業所数の合計であり、産業分類が異なる。販こばた-出支こばた・料飲・料食の計家(/)模規場市店理料+模規場市業産食外(=率化部外の食 )4   

売額+外食産業市場規模)。るな異で年)7002(91成平と年)2891(75和昭、は類分態業のアトススンエニビンコ、ーパース品料食 )5   

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400

年次報告 50年を振り返って

主な指標  

昭和 35 年 平成 22年 (1960) (2010)

■ 農産物輸入額 6,223 億円 ⇒ 4 兆 8,281 億円   うち穀物 1,049 億円 ⇒ 6,969 億円     果実 75 億円 ⇒ 3,485 億円     野菜 38 億円 ⇒ 3,451 億円     畜産物 1,449 億円 ⇒ 1 兆 2,351 億円

資料:財務省「貿易統計」

国際化と食料・農産物輸入

主な動き  

○  昭和 30(1955)年にガットに加入し、昭和 35(1960)年に農産品 121 品目の輸入自由化。以降、昭和 36(1961)年大豆等、昭和 38(1963)年バナナ、粗糖等の自由化。

○  ガット・ケネディ・ラウンド交渉妥結(昭和 42(1967)年)を受け、植物性油脂、チョコレート、ビスケット類、グレープフルーツ、豚肉、配合飼料等の自由化。

○  昭和 47(1972)年、農林水産物のうち 50%強(270 品目)の関税引き下げ等。○  ガット・東京ラウンド妥結(昭和 53(1978)年)を受け、牛肉・かんきつの輸入枠を拡大。

○  日米農産物交渉(昭和 63(1988)年)において、牛肉・かんきつの輸入枠の順次拡大、輸入数量制限を撤廃等合意。

○  平成5(1993)年、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉合意。農産品についてすべて関税化。米に関しては関税化の代わりにミニマム・アクセス機会の提供等。

○  平成7(1995)年にWTO(世界貿易機関)が発足し、平成 13(2001)年、WTOドーハ・ラウンド交渉開始。

○  平成 11(1999)年、ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき適用してきた米の関税化の特例措置について、関税化措置へ切換え。

○  平成 14(2002)年、シンガポールとの間で EPA(経済連携協定)が初めて発効。以降、平成 23(2011)年2月までにメキシコ、マレーシア、フィリピン、タイ、インド、ペルー等 13の国・地域との EPA が発効・署名・交渉完了。

(3)

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401

巻末付録

農林水産物の自由化の推移

輸入数量制限品目 主な出来事 主な輸入数量制限撤廃品目

昭和 30 年(1955) − ガット加入

35(1960) − 121 品目輸入自由化 ライ麦、コーヒー豆、ココア豆

36(1961) − 貿易為替自由化の基本方針決定 大豆、しょうが

37(1962)

103 *81 羊毛、たまねぎ、鶏卵、鶏肉、にんにく

38(1963) 76 ガット11 条国へ移行 落花生、バナナ、粗糖

41(1966) 73 ココア粉

42(1967) 73 ガット・ケネディ・ラウンド決着(昭和 39 年〜)

45(1970) 58 豚の脂身、マーガリン、レモン果汁

46(1971) 28

ぶどう、りんご、グレープフルーツ、植物性油脂、チョコレート、ビスケット類、生きている牛、豚肉、紅茶、なたね

47(1972) 24 配合飼料、ハム・ベーコン、精製糖

49(1974) 22 麦芽

53(1978) 22 日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ) ハム・ベーコン缶詰

54(1979) 22 ガット・東京ラウンド決着(昭和 48 年〜)

59(1984) 22 日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ)

60(1985) 22 豚肉調製品(一部)

61(1986) 22 グレープフルーツ果汁

63(1988) 22〔39〕 日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ、12 品目)ひよこ豆

平成元(1989) 20〔37〕 プロセスチーズ、トマトジュース、トマトケチャ

ップ・ソース、豚肉調製品2

(1990) 17〔31〕 フルーツピューレ・ペースト、パイナップル缶詰、非かんきつ果汁、牛肉調製品

3(1991) 14〔26〕 牛肉、オレンジ

4(1992) 12〔22〕 オレンジ果汁

5(1993) 12〔22〕 ウルグアイ・ラウンド決着(昭和 61 年〜)

7(1995) 5〔8〕

小麦、大麦、乳製品(バター、脱脂粉乳等)、でん粉、雑豆、落花生、こんにゃく芋、生糸・繭

11(1999) 5〔8〕 米

12(2000) 5〔8〕 WTO 農業交渉開始

資料:農林水産省作成 注:1)輸入数量制限品目数は、各年末現在の数である(CCCN(関税協力理事会品目表)4桁分類。〔 〕内はHS(国

際統一商品分類)の 4桁分類)   2)昭和 37(1962)年4月、輸入管理方式がネガディブリスト方式となった。*は昭和 37(1962)年4月の輸入

数量制限品目数   3)品目名については、商品の分類に関する国際条約で定められた名称によらず、一般的な名称により表記したも

のを含む。   4)日米農産物交渉における 12品目とは、①プロセスチーズ、②フルーツピューレ・ペースト、③フルーツパルプ・

パインナップル缶詰、④非かんきつ果汁、⑤トマト加工品(トマトジュース及びトマトケチャップ・ソース)、⑥ぶどう糖・乳糖等、⑦砂糖を主成分とする調製食料品、⑧粉乳・れん乳等乳製品、⑨でん粉、⑩雑豆、⑪落花生、⑫牛肉及び豚肉調製品

   5)現在の輸入数量制限品目は、水産物輸入割当対象品目(HS4 桁分類の 0301、0302、0303、0304、0305、0307、1212、2106 の一部)

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402

年次報告 50年を振り返って

農産物貿易自由化の進展

塩飽 二郎氏        (元農林水産省農林水産審議官)

グローバリゼーションの進展に伴い、農業・食料に係る国際問題は伝統的な貿易や開発問題に加え、生物多様性、気候変動等幅広い領域への対応を余儀なくされています。

貿易に限って見ると、我が国がガット加盟後に参加したケネデイ・ラウンドや東京ラウンドでは関税のある程度の引き下げ結果にとどまりましたが、1986 年に開始されたウルグアイ・ラウンドでは、輸入と輸出に加え国内政策もカバーし、包括的な規律の設定と支持・保護の引き下げが実現しました。さらに、70年代・80年代には貿易黒字の増加を背景に、牛肉・かんきつの自由化交渉や 12品目に対するガット提訴とパネル裁定が行われました。また、2001 年からはガットの後継機関であるWTOにおいて、途上国の経済水準の向上を重点に掲げ「ドーハ開発アジェンダ」の名称の下に多角的貿易交渉が行われてきましたが、農業や途上国に対するセーフガードを巡る対立が主因で未だに決着がついていません。

このこともあって、多角的貿易主義の信奉国であった我が国も二国間取り決め志向に転換し、すでに 13か国との FTAs を締結したほか、さらに豪州、韓国、EU等との交渉に取り組んでいます。他方、一次産品の価格安定のための商品協定交渉が、小麦、砂糖、コーヒー、ココア、脱脂粉乳などについて行われましたが、その国際カルテル的性格に対する米国などの批判から現在では嘗てのような価格条項のない協定になっています。

以上のように、我が国は過去 50年間にわたって様々な貿易交渉に対応してきました。その場合、一貫して農産物部門の市場アクセス拡大に対する輸出国の攻勢に対する受身のdefence に圧倒的な力点が置かれたことに特色がありました。また、我が国の基本的立場を支えた理念は、時代により表現に変化はあったものの、農業の持つ多面的な役割への配慮の必要性でした。アングロサクソン特有の功利的な哲学に裏打ちされたガットやWTOにおいては、このような理念の主張のみを掲げた交渉には著しい限界があります。とりわけウルグアイ・ラウンド交渉においては、関税を唯一の保護手段に掲げ、ウエーバーによる輸入制限や可変課徴金などの非関税障壁はもちろん、生産制限の実効性維持のために正当化されてきた輸入制限についてすら「例外のない関税化」が圧倒的な要求になりました。このような場合、それに対抗する実効的手だてを理念に求めることは大きな制約があります。バーゲンとしての交渉に着目した歯止めとしての相手国市場へのアクセス要求、その裏打ちとしての恒常的な農産物の輸出の存在が不可欠な所以です。

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403

巻末付録

半世紀のお付き合い

岸  康彦氏      (元日本経済新聞論説委員)

私は 1959(昭和 34)年 10月に新聞社へ入り、その月から農林省(現在の農林水産省)を担当しました。農業基本法制定の準備が進んでいた時期です。以来、農業との関わりは切れることなく続いていますから、白書とのお付き合いも、読み方の濃淡はあるにせよ49冊全部ということになります。

38年に及んだ農基法の時代を仮に前半と後半に分ければ、前半の白書は、農業経済の概観、農産物の需給と価格、そして農業経営の動向という3本建てで構成されることが多かったと思います。加速する経済成長の中で他産業との格差が拡大するのを、何とかして埋めようという目的でできた農基法ですから、白書もまた、法の理念をそのまま反映した内容でした。

風向きが変わってきたのは、農政審議会が 「80 年代の農政の基本方向」を答申した1980 年あたりからと記憶しています。答申は過剰が深刻化する米の消費を増やす狙いもあって、ご飯を中心とする日本型食生活を提唱したことで知られていますが、一方では食品産業の振興を強調していました。白書でも次第に食料消費、食品産業などが重要テーマとなります。農基法の条文には「消費者」も「食品産業」も出てきませんでしたが、時代が農政にそれを求め始めたのです。

ウルグアイ・ラウンド終盤の 1992 年に農林水産省が決めた「新しい食料・農業・農村政策の方向」(新政策)は、農政の柱として農業のほかに食料と農村を加え、さらに「国民的視点に立った政策展開」を打ち出しました。押し寄せるグローバル化の波に対抗するには、国民の農業理解が欠かせません。この前後からカラー印刷の写真やグラフを増やし、くだけた書きぶりの「コラム」をはさむなど、白書も親しみやすさをアピールするようになりました。

そして今、食料・農業・農村基本法の時代には、白書も現状報告にとどまらず、国民へのメッセージという性格をさらに強めています。ここ数年の白書が巻頭に「トピックス」を置き、重要テーマを平易に解説しているのも、その役割を意識してのことでしょう。

毎年のことですから、白書にも充実度に何がしか差が出るのは当然で、私自身、批判の文章を書いたこともあります。それでも、白書が農業と農政の動きを知るための最良のテキストであることに変わりはありません。

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年次報告 50年を振り返って

国内農業生産と食料自給率

主な動き  

○� 戦後の食糧増産への取組等により、農業総産出額は、昭和 35(1960)年には1兆9千億円まで増加。

○� 昭和 36(1961)年以降、「農業基本法」のもとで選択的拡大政策を受け、果実・野菜・畜産の生産が大幅増。一方、明治以降に我が国経済の基幹産業として発達した蚕糸業は大幅に縮小。�� 

○� 昭和 42(1967)年、米の自給を達成。その後、昭和 45(1970)年から過剰米処理が始まり、昭和 46(1971)年、米の生産調整の本格的実施。

○ 昭和 50(1975)年頃から、みかん等が過剰。○� 農業総産出額は、昭和 59(1984)年には 11兆7千億円となったが、これをピークとして、その後一貫して減少。

○� 昭和 63(1988)年頃には、米、畜産、野菜・果実の産出額がほぼ同じとなり、平成21(2009)年は、畜産(2.5 兆円)、野菜・果実等(2.7 兆円)が米(1.8 兆円)を上回る状況。 

○� 食料自給率(供給熱量ベース)は、昭和 35(1960)年度には 79%であったが、その後一貫して低下傾向。平成元(1989)年度に5割を割り込み、その後も低下。ここ10数年は 40%程度で推移。

(4)

主な指標  

� 昭和 35 年� � 平成 21年� (1960)� � (2009)

■ 農業総産出額� 1 兆 9,148 億円� ⇒� 8 兆 491 億円   米� 9,074 億円� ⇒� 1 兆 7,950 億円�    (47%)� �    (22%)   野菜� 1,741 億円� ⇒� 2 兆 331 億円�     (9%)� �    (25%)   果実� 1,154 億円� ⇒� 6,751 億円�     (6%)� �     (8%)   畜産� 3,477 億円� ⇒� 2 兆 5,096 億円�    (18%)� �    (31%)   養蚕� 564 億円� ⇒� 16 億円*1

�     (3%)� �     (0%)

資料:農林水産省「生産農業所得統計」 注:1)( )は構成比   2)* 1は平成 14(2002)年の値

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巻末付録

主な指標  

� 昭和 35 年度� � 平成 21年度� (1960)� � ��(2009)

■ 食料自給率(供給熱量ベース)� 79%� ⇒� 40%■ 食料自給率(生産額ベース)� 93%� ⇒� 70%■ 主食用穀物自給率� 89%� ⇒� 58%■ 飼料自給率� 55%*1� ⇒� 25%■ 品目別自給率   米� 102%� ⇒� 95%   小麦� 39%� ⇒� 11%   大豆� 28%� ⇒� 6%    うち 食用� 70%� ⇒� 26%   野菜� 100%� ⇒� 83%   果実� 100%� ⇒� 41%    うち みかん� 111%� ⇒� 101%    うち りんご� 102%� ⇒� 58%   肉類� 93%� ⇒� 58%����(8%)    うち 牛肉� 96%� ⇒� 43%(11%)    うち 豚肉� 96%� ⇒� 55%����(6%)   鶏卵� 101%� ⇒� 96%(10%)   牛乳及び乳製品� 89%� ⇒� 71%(30%)

資料:農林水産省「食料需給表」 注:1)食用大豆には、みそ、しょうゆ向けのものは含まれていない。   2)�肉類、牛肉、豚肉、鶏卵、牛乳及び乳製品の( )については、飼料自給率を考慮した値である。なお、

昭和 35(1960)年度についてはデータがないため、算出していない。   3)* 1は昭和 40(1965)年度の値

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406

年次報告 50年を振り返って

農産物・農業資材価格

主な動き  

○� 昭和 35(1960)年以降、農産物価格指数は、生産者米価の引上げ等により、昭和55(1980)年頃まで全体的に上昇したが、その後は横ばいで推移。

○ 米の価格は、平成 10(1998)年頃から大きく低下。その他の農産物もおしなべて低迷。○� 一方、肥料、農薬等農業生産資材の価格は上昇を続け、農業交易条件指数は、昭和35(1960)年以降一旦上昇するも、平成2(1990)年をピークに低下傾向。

(5)

主な指標  

� 昭和 35 年� � 平成 22年� (1960)� � ��(2010)

■ 農産物価格指数� 100� ⇒� 371* 1

■ 農業生産資材価格指数� 100� ⇒� 344* 1

■ 消費者物価指数(食料)� 100� ⇒� 566■ 農業交易条件指数� 100� ⇒� 108* 1

■ 米の小売価格(5kg)� 494 円� ⇒� 1,739 円■ 鶏卵の小売価格� 152 円� ⇒� 219 円  (Lサイズ 10個相当)(参考)■ 公務員の初任給� 10,800 円� ⇒� 181,200 円■ バス代(初乗り)� 15 円� ⇒� 207 円■ 鉄道運賃(最低運賃)� 10 円� ⇒� 160 円

資料:総務省「消費者物価指数」、「小売物価統計調査」、農林水産省「農業物価統計」、人事院「国家公務員の初 任給の変遷」

 注:1)小売物価は東京都区部の値。鉄道運賃は JR以外の私鉄の運賃   2)公務員の初任給は、国家公務員国家Ⅰ種で、年度の値   3)*1は平成 21(2009)年(度)の値

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407

巻末付録

農業技術と労働時間

主な動き  

(機械化)○� 昭和 20 年代後半(1950 〜 1954 年)以降、動力耕うん機が普及し始め、耕起・代かき作業は畜力から動力へ。

○� 昭和 30年代(1955 〜 1964 年)に入り、小型化されたトラクターが急速に普及し、耕起整地作業が省力化。病害虫の防除のための動力噴霧機、動力散粉機が広く普及。

○� 昭和 28(1953)年頃、動力刈取機が出現し、昭和 40年代前半(1965 〜 1969 年)にはバインダーが一気に普及。続いて、自動脱穀機に刈取機を組み合わせた自脱型コンバインが普及。

○ 昭和 40年代前半(1965 〜 1969 年)、開発・普及が遅れていた田植機が実用化。○� 乾燥機については、昭和 40(1965)年前後に開発され、個人で使用されていたが、共同乾燥調製施設として、ライスセンターや一部でカントリーエレベーターも導入。

○� 昭和 40 年代後半(1970 〜 1974 年)には、田植から稲刈り、脱穀、乾燥まですべて機械で行う中型機械一貫体系が確立。その後、農業機械は大型化・高性能化し、労働時間はさらに短縮。

 (栽培技術等)○� 昭和 30年代(1955 〜 1964 年)、冷害を防ぐために、保

温おん

折せっ

衷ちゅう

苗なわ

代しろ

(手植え)が東北地方等で急速に普及。同年代後半、苗代の被

覆ふく

資材は油紙からビニールへ。○� 昭和30(1955)年頃から、農薬散布による除草の普及。昭和40年代半ば(1970年頃)、農薬による環境汚染が問題となり、低毒性農薬等へ転換。平成に入り(1989 年〜)、無人ヘリによる農薬散布等が実用化。

○� 昭和 56 〜平成元年(1980 年代)、米の生産調整により、転作団地を毎年移動させ、数年で元に戻るブロック・ローテーション(集団的土地利用)が普及。

○� 稲の品種改良には 150 年の歴史があり、多くの品種が育成されたが、昭和 31(1956)年に育成されたコシヒカリは、30年以上にわたって我が国一の栽培面積と生産量を維持。

○� コシヒカリ、ササニシキに代表される良食味品種の作付けが、昭和 50年代(1975 〜 1984 年)に入り急増。これらの品種は病害に弱く、倒伏しやすい欠点があるため、水管理と窒素の分

ぶん

施し

を組み合わせたきめの細かい生育調整技術が発達。

○� 平成5(1993)年の大冷害を契機に、「ひとめぼれ」に代表される耐冷性を強化した品種の作付けが急増。

(6)

トラクター

昭和 35(1960)年頃の動力噴霧機による農薬の散布

ア 稲作

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408

年次報告 50年を振り返って

保温折衷苗代

田植定規を目印に田植

鎌を用いての手刈り作業

ビニールハウス内での育苗

乗用田植機による田植

コンバインによる刈取り

主な指標  

昭和 45 年 平成 17年 (1970) (2005)

■ 10a 当たり平年収量(水稲) 431 kg ⇒ 527 kg■ 田植機の所有率 0.6 % ⇒ 87 %■ 10a 当たり田植え労働時間 23 時間 ⇒ 3 時間*1

■ コンバインの所有率 0.8 % ⇒ 69%■ 10a 当たり稲刈り・脱穀労働時間 36 時間 ⇒ 4 時間*1

資料:農林水産省「農林業センサス」、「作物統計」、「米及び麦類の生産費」 注:1)農業機械の所有率=農業機械を所有している農業経営体数 /販売目的で稲を作付けた農業経営体数×   100。昭和 45(1970)年については、農家と農家以外の農業事業体数で算出

   2)*1は平成 21(2009)年産

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409

巻末付録

事 例  農業基本法のもとでの生産現場の取組

○ 大規模で生産性の高い水田農業に向けた取組(秋田県大お お

潟が た

村む ら

(主要食糧増産を目的として干拓事業に着手)八郎潟は、我が国第二の広さ(東西 12km・南北 27km、面積は2万2千

ha、東京山手線内側の 2.5 倍)をもつ最深部でも4〜5mの浅い湖で、古くは江戸時代から干拓事業の構想がありました。これら構想は財政等の事情により実現されませんでしたが、昭和 32(1957)年、主要食糧の増産を目的として、本格的な干拓事業が着手されるに至りました。工事は順調に進み、昭和 43(1968)年の第一次入植(56 戸)以来、全国 38 都道県から計 600 戸近くの入植が行われました。本事業は、我が国農業のモデルとなるような生産性の高い

機械化農業を目指したものであり、昭和 52(1977)年には、1万7千 ha(標準区画 1.25ha)の大規模干拓地が完成しました。

(機械化の進展等により生産力高まる)入植が始まった当初、干拓地の土壌は排水の悪い重粘土質の軟弱基

盤となっており、入植農家は特に田植作業、収穫作業等で大変な苦労をしました。しかし、その後、土地が乾くとともに、田植機、コンバイン等の機械化が進んだこともあり、農作業上の問題はほぼ解決され、生産力を高めていきました。 

(様々な問題が発生するもほぼ解決へ)一方で、昭和 50(1975)年以降は、米の生産調整を進めるに当た

って国が田畑複合経営を指導するなか、農業経営、営農上の問題等から、国等と農家との間で対立がみられるようになり、稲の青刈り問題、稲作の上限面積を守らない農家の増加、不正規流通米検問等様々な問題が発生しました。これらに対しては、稲作の上限面積の拡大等、関係者により様々な対応がなされましたが、生産調整をめぐる経緯、土壌が畑作物生産に不向きということもあり、生産調整協力農家は平成21(2009)年まで農家全体の半数弱で推移しました。しかし、平成 22(2010)年には、戸別所得補償モデル対策の実施等により、生産調整への

参加農家は全農家の8割強に急増し、生産調整をめぐる問題も解消しつつあります。

(大規模を活かし、さらに収益性の高い経営に取り組む)大潟村全体の農業生産の状況をみると、平成 21(2009)年において、農産物作付面積は

9,164ha(水稲 8,299ha、小麦 229ha、大豆 603ha 等)、農業産出額は 118 億円(うち米 114 億円)となっています。大潟村では、1戸当たりの経営耕地面積が 15ha 以上の農家が全体の9割強を占め、農家1戸

当たり農業所得が平均で1千万円を超えること等から、多くの農家で後継者が確保できています。今後、これまで努力してきた環境保全型農業をますます推進するとともに、平成 22(2010)年から取り組まれている米粉用米の生産を伸ばすこと等により、さらに収益性の高い農業経営づくりに取り組むこととしています。

岩手県

秋田県

大潟村

上空から見た大潟村

幹 

線 

用 

水 

排 水 路

90m

排 水 路

排 水 路

農道

農道

140m1.25ha

基本ほ場(約 10ha、8区画)の例

カントリーエレベーター 米粉めん製造工場

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年次報告 50 年を振り返って

イ 畑作・野菜作・果樹作

主な動き  

(畑作)○� 畑作においては、昭和 30年代半ば(1960 年頃)から、防除機器の動力化、大型化が進み、昭和 40(1965)年頃から大型トラクターの導入が進む。平成に入り(1989年〜)、収穫機が普及。

(野菜作)○� 野菜作においては、各作物で、播

種しゅ

・定植・移植機、収穫機、施肥機等が開発され、各地で普及。

○� 昭和 30 年代半ば(1960 年頃)から、施設栽培用ハウスの大型化・連棟化、暖房機等により施設園芸が発達。

○� 昭和 40 年代半ば(1970 年頃)から、予冷、保冷等技術の発達により、品質を保持しつつ長期貯蔵が可能。

(果樹作)○ 昭和 30年代(1955 〜 1964 年)から、薬剤散布、耕うん、運搬が機械化。○ 昭和 50年代(1975 〜 1984 年)から、りんご等のわい化栽培技術が普及。○� 昭和 50 年代(1975 〜 1984 年)から、近赤外光による糖度測定で選別する技術が開発され、非破壊選果(光センサー選果)機が普及。ガス濃度を調整してより長期に新鮮に保存する CA貯蔵技術が普及。

○ 平成に入り(1989 年〜)、性フェロモン剤を利用した害虫防除が普及。

トラクターによる耕起 麦の収穫

ねぎの収穫 施設栽培用ハウス

りんごのわい化栽培 光センサー選果

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411

巻末付録

事 例  農業基本法のもとでの生産現場の取組

○ 我が国有数のキャベツ生産地の取組(愛知県豊と よ

橋は し

市し

・田た

原は ら

市し

(昭和初期にカンラン栽培を開始)愛知県の渥

あつ

美み

半島に位置する豊橋市・田原市は、温暖な気候を生かした園芸農業が盛んで、農業産出額 1,200 億円の7割を野菜・花き部門が占めます。現在、東西の大消費地をかかえた我が国有数のキャベツ産

地となっていますが、その形成は昭和初期までさかのぼります。昭和5(1930)年、渥美郡高

たか

師し

村む ら

(現豊橋市)において、数多くの試作の末、キャベツの優良品種が選定され、昭和7(1932)年には 10ha で作付けられ「高師カンラン*1」として出荷されました。また時期を同じくして、渥美郡田

原はら

町ちょう

(現田原市)でも、すいか跡地で夏まき冬どりカンランの栽培に成功していたといわれています。この地域でも、養蚕業が大正時代まで盛んでしたが、昭和

初期に衰退したことに伴い、戦前には既に消費地向けのキャベツ産地となりました。

(基盤整備、機械化により、生産が飛躍的に拡大)戦時中に生産は一時縮小するものの、昭和 28(1953)年の小規模畑地かんがい事業の開始

を皮切りに、昭和 37(1962)年以降、農業構造改善事業等により農道やほ場が整備されたことから、戦前以上の産地に発展しました。また、昭和 30年代(1955 〜 1964 年)以降、動力耕うん機が普及し、10a当たり労働時間が 100 時間以下になるなど効率化が進んだことから、2ha 以上の経営も多くなりました。昭和 38(1963)年に始まった野菜の価格補

填てん

制度や「野菜生産出荷安定法」(昭和 41(1966)年)のもとでキャベツの価格低落時に補填が行われることになったことも、安定的な生産を可能としました。さらに、水源に乏しく、しばしば水不足に悩まされてきた当地域の用水確保を目的として、水源施設から幹線水路等まで一貫して整備する豊川用水事業が実施され、昭和 43(1968)年に全面通水したことから、生産は飛躍的に拡大し、昭和 46(1971)年には、キャベツの作付面積が 10 年前の4倍、約2千 900ha まで増加しました。昭和 40年代後半(1970 〜 1974 年)には転作作物としての生産も増加し、昭和 56(1981)

年には全国出荷量の1割を出荷するまでに拡大しました。

(産地をあげて環境に配慮した生産に取り組む)現在、当地域では、消費者ニーズに合わせて、産地をあ

げて環境に配慮したキャベツ生産に取り組んでおり、田原市を拠点とする JA 愛知みなみのキャベツ生産者全員(445人)がエコファーマーの認定を受けています(作付面積は800ha)。このように育てられたキャベツは、外食店等でこだわりの食材として提供されています。また、連作障害を回避するために、夏に堆

たい

肥ひ

を入れたり、ソルゴー等の緑肥作物を導入したりする取組を行う一方、播

種しゅ

や苗移植の機械を導入しながら大規模な経営に取り組んでいます。

(さらなる販売力強化に取り組む)キャベツ生産は近年もふえているものの、他の産地と同様、高齢化や後継者の確保の問題を

かかえています。また、近年の肥料や農薬等の生産資材価格の高騰が経営に大きく影響している状況にあります。このため、今後は、「あいちのキャベツ」を全国に発信し、産地としてのさらなる販売力の強化に取り組んでいくこととしています。

*1 カンランとはキャベツの別名

スプリンクラーによる灌水

農薬飛散を防ぎ、周囲の農業者の注意喚起のため立てられる黄色旗

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年次報告 50 年を振り返って

農業技術の開発・普及に思う

山極 榮司氏        (元農林水産省技術総括審議官)

戦後の農業技術の開発・普及は、我が国の農業・農村の発展にとって大きな役割を果たしてきました。水稲ではコシヒカリなどの優良品種が登場し、田植機・コンバインを駆使した生産性の高い多収機械化栽培技術が開発されました。園芸ではリンゴのふじ、イチゴの女峰・とよのかといった良食味品種が育成され、温室等の施設を利用した長期・周年出荷技術も普及してきました。畜産でも人工授精技術・多頭羽飼育も進んでいます。この時代の最も画期的な技術革新といえば、保温折衷苗代の開発から田植機開発・機械移植へ連なる農業者と農業技術者の協働による「技術の連鎖」ではなかったでしょうか。

しかし、こうした農業者の創意と意欲に支えられた個別の華々しい技術開発も 40年代半ば頃迄で、新たな農業の、突破口となるような技術開発は見られなくなったように感じます。そして、それ以降、米の過剰問題が表面化したこともあり、また肥料・農薬の多投入に伴う食の安全性への不安や園芸・畜産等の廃棄物処理に伴う環境負荷の増大等もあって、この時代の技術問題も、稲作と畑作のバランス、コスト低減と生産性向上に配慮した土地利用型農業技術の確立というように総合化、体系化が重要になってきました。さらに中長期的な食料、エネルギー、環境問題等に対応し、バイオテクノロジーや環境保全型技術を活用した革新的技術をどう開発・普及するかという課題にも直面しています。

元来、農業は自然循環機能の維持増進に深い係わりを持つ産業であり、農村は地域文化、さらには日本文化の伝承に大きな役割を果たしてきました。そのことに思いを致し、これから農業技術がそうした農業と農村の持続的発展に一層貢献できるものであって欲しいと思います。また、農業が地域に根ざす産業でありますので、地域の農業者等の意向をベースに開発・普及関係者等の革新技術等を生かすように共通認識の下で技術の開発・普及が展開される新しい体制づくりが必要ではないでしょうか。

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巻末付録

主な動き  

(酪農)○� 昭和 40年代後半(1970 〜 1974 年)から、凍結精液による人工授精技術が普及。昭和 50年代(1975 〜 1984 年)に入ると、受精卵移植技術が実用化。

○� 搾乳は、昭和 40年代(1965 〜 1974 年)、バケットミルカーからパイプラインミルカーに代わり省力化。さらにバルククーラー(牛乳冷却槽)が普及。

○� 昭和 50年代(1975 〜 1984 年)に入ると、多頭化が進み、飼料給与や搾乳が省力化できるフリーストールとミルキングパーラー方式の牛舎が普及。

○� 昭和 60(1985)年頃から、自動給餌機・乳量計測等のコンピューター化が進展。 

(肉牛飼育)○� 昭和 20 年代後半(1950 〜 1954 年)に普及し始めたトラクター等機械化の動きのなかで、牛は役用としての役割を消失し、昭和 30年代半ば(1960 年頃)から肉用へ転換。

○� 昭和 40年代(1965 〜 1974 年)、肉専用種としての飼養形態が定着。出荷時体重の大型化が進み、肥育技術の精密化が進展。

(養豚)○� 昭和 30年代(1955 〜 1964 年)、飼養規模の拡大に向けて、コンクリート床の豚舎での飼養が普及。

○� 昭和 40年代(1965 〜 1974 年)、省力化のためのすのこ式豚舎や衛生対策のためのウインドレス豚舎が増加。

○� 昭和 50年代(1975 〜 1984 年)、子豚生産から肥育まで行う一貫経営が増加。疾病や事故の防止、豚肉の品質向上の観点から、極端な密飼いが減少。

(採卵養鶏)○ 昭和 30年代(1955 〜 1964 年)、平飼いからケージ鶏舎への転換。○� 昭和 60(1985)年頃から、オールイン・オールアウト方式(群ごとに大量に雛を仕入れて育て、鶏卵の出荷・廃鶏時期を同期化)の普及が開始。

○ 昭和 60(1985)年頃から、ウインドレス鶏舎の利用が進むとともに、給餌や採卵が自動化。

フリーストール牛舎

肥育牛舎内の様子

ウ 畜産

すのこ式豚舎

開放鶏舎 ウインドレス鶏舎の内部

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年次報告 50 年を振り返って

事 例  農業基本法のもとでの生産現場の取組

○ 酪農産地形成の取組(愛媛県西せい

予よ

市し

(厳しい自然環境のなか、入植)愛媛県西予市の山あい、標高 1,200 〜 1,400 mに位置する大野ヶ原地区

は、戦前は原野の状態でした。終戦直後の緊急開拓事業により、農家7戸 15人が入植し、昭和 24(1949)年に大野ヶ原開拓農業協同組合が設立されました。翌年、農林省により開拓地として認可され、120 戸の入植(開拓面積748ha)が募集されましたが、第1次入植農家は 30 戸であり、自ら住む家をつくることから始まりました。以来、入植者は次第に増加し、昭和 25(1950)〜昭和 30(1955)年に約 100 戸の農家が入植しました。厳しい自然環境のなかで、入植者は、土地を開墾し、ばれ

いしょ、にんじん、キャベツ等様々な作物の栽培を試みましたが、霜害や風害による農作物壊滅等から、食料不足になり、住民の多くが栄養失調に陥ったこともありました。加えて、道路、電気、水道等社会インフラの未整備もあり、離農者が少なくありませんでした。

(夏秋だいこんに加え、酪農を開始)このようななかでも、入植農家は試行錯誤を重ね、昭和 30(1955)年頃から、風に強く、

夏季に冷涼な気象条件を活かし端は

境ざかい

期き

に出荷できる夏秋だいこん生産や漬物加工を開始し、作物生産の面ではこの取組に特化しました。また、昭和 30年代後半(1960 〜 1964 年)には、選択的拡大等の動きのなかで、全戸で育成していた和牛を換金して購入資金をつくり、乳牛 40頭を導入し、離農した農家の跡地で飼養することとしました。

(規模拡大、ブランド化、加工品製造・販売等により売上げ伸ばす)その後、乳牛の育成や牧草の供給を共同で実施する公共育

成牧場を整備するため、昭和 46(1971)年から四国カルスト地区国営草地開発事業が始まり、県境一帯にある未利用の山林原野を牧草地化し、昭和 50(1975)年には農業公社牧場が開設されました。酪農の規模拡大に向け、採草機械、搾乳機械の導入やスチールサイロの建設等を行い、飼養頭数をふやしていきました。当地域で生産された牛乳は「四国カルスト高原牛乳」とい

うブランドで、デパート等で販売されるようになり、売上げも大きく伸びました。牛乳の知名度も上がり、自然環境を求めて訪れる観光客がふえたことから、地区内農家によるペンション建設とともに、酪農家の女性が中心となった牛乳やアイスクリーム等の加工品等の製造・販売が始まりました。昭和 59(1984)年には、自給飼料を中心としたサイレー

ジが通年供給できる体制となり、飼料価格に影響されない安定した経営が可能となりました。また、平成に入り(1989年〜)、開拓3世の就農を契機として、大型トラクターやパイプミルカーが導入され、規模拡大や機械化による省力化が図られました。その結果、当地区は現在全体で乳牛 600 頭、1戸当たり飼養頭数 30〜 50 頭となり、県下でも有数の酪農地帯となっています。

(広大な風景を活用した活動にも取り組む)現在、大野ヶ原地区では 19戸の農家がありますが、開拓1世が築いた基盤の上に、自給飼料

中心で大規模機械化体系のもとでの経営が確立され、いずれの農家も後継者が確保されています。開拓1世で設立された「拓友会」のメンバーが、地元の清掃や花植え等の活動を行い、現在も地域を支えています。今後とも、世代を超えて連携し、牛乳や近年取組を始めた肉牛の独自ブランドを確立していくとともに、四国カルストの広大な風景を活用したグリーン・ツーリズム活動の推進に取り組んでいくことにより、さらなる地域の活性化を目指しています。

西予市

愛媛県高知県

昭和 30(1955)年頃の共同防除の様子

牧草地の向こうに広がる原生林

県下有数の酪農地帯

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巻末付録

農業白書の畜産分野を担当して思い出すこと

土田 武夫氏    (元農林水産省調査課)

私が農林水産省畜産局食肉鶏卵課から大臣官房調査課�(年次班)に異動になった当時(昭和 55年)は、米を始め多くの農産物が供給過剰ないしは需給緩和の状況にあり、畜産物も、昭和 47年度以降計画生産に取組んでいる鶏卵に続き、昭和 54年度から生乳は中央酪農会議を中心として計画生産に、豚肉は養豚経営安定会議を中心として子取り用めす豚頭数の調整対策を実施するという状況にありました。経済の高度成長期にみられた堅調な畜産物需要の伸びに支えられて畜産の各部門は高い生産の伸びを示していたものが、生産抑制対策に取り組まざるを得なくなりました。こうした中での畜産部門の動向分析となると、なんともやりにくいと考えたことを思い出します。

さて、食肉鶏卵課から調査課に異動といいましたが、この時の辞令は食肉鶏卵課との併任辞令でした。鶏卵の価格低落時に実施する「畜産物の価格安定等に関する法律」に基づく生産者団体による鶏卵の調整保管(市場隔離)と(株)全国液卵公社による鶏卵の買い上げに備えたものでした。調査課からは調査課の業務を優先して仕事に当たるように言われ、食肉鶏卵課からは鶏卵係の業務に十全を期すように言われても身は一つです。このため、併任期間中は午後5時頃までは食肉鶏卵課で、それ以降は調査課での業務ということで勤務時間の仕分けをしましたが、大変難渋したものです。

鶏卵の価格対策を終えた7月には併任辞令を解かれましたものの、年次班の各班員との間の農業の動向分析に関する業務の遅れにはいかんともし難いものがありましたが、幸いにも年次班各員からの助言、また調査課長の適切な指導をいただき担当分野を書き終えることができました。今でも調査課長から「君、あれのあの部分はどうなっている。」と問われている夢を見て目を覚ますことがあります。私にとっては、調査課年次班の3年間は大いに勉強になり、貴重な体験であったと思っています。

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年次報告 50年を振り返って

農家経済

主な動き  

うよるきでがとこむ営を活生るす衡均と者事従業産他(営経立自、は」法本基業農「  ○な所得を確保することができる経営)の育成を目標。

にクーピを%9.21、度年)7691(24和昭、は合割るめ占に家農全の数家農営経立自  ○減少し、その後も伸び悩み、平成9(1997)年には5%。

。入収業兼は分部大、ののもたけ続を加増てしと体総は得所家農、でかなの長成度高  ○農業所得は、昭和 50(1975)年以降、100 万円程度で推移。

業農るめ占を合割当相が営経な的定安つか的率効、もで」法本基村農・業農・料食「  ○構造を目指すこととされているが、300 万円以上の所得を得ている販売農家は、平成19(2007)年には全販売農家の 14%。

02成平、てしとクーピを円億千1兆6の度年)0991(2成平、は産生純業農の体全  ○(2008)年度は3兆円となり、ほぼ半減。

(7)

主な指標  

昭和 35 年 平成 9年■ 自立経営農家のシェア: (1960) (1997)

   戸数 8.6 % ⇒ 5%   農業粗生産額 23 % ⇒ 29 %

昭和 35年 ⇒ 平成 21年 (1960) (2009)

■ 農家総所得 45 万円 ⇒ 457 万円■ 農業所得 23 万円 ⇒ 104 万円■ 農外所得・年金等収入 22 万円 ⇒ 352 万円

昭和 35年度 ⇒ 平成 20年度 (1960) (2008)

■ 農業純生産 1 兆 3,076 億円 ⇒ 3 兆 410 億円

資料:農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算」、「農業経営統計調査」、「農家経済調査」得所業農の準水同と入収先め勤の帯世者労勤の住在村町たみでりた当人1員帯世、はと家農営経立自 )1:注 

を確保している農家のことをいう。昭和 35(1960)年度の自立経営農家は、下限農業所得が年間1戸当たり 48万円で、平成9(1997)年度では 613 万円

以年)4002(61成平はで査調計統営経業農、ていつに入収等金年・得所外農、得所業農、得所家農 )2   降農業経営関与者に限定して経営収入等を把握する調査体系に見直したことから、以前の結果と接続しない。

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417

録付末巻

農業経営体・農業就業者

主な動き  

○ 農家数は、昭和 35(1960)年以降、一貫して減少。が家農業兼種2第はに年)0791(54和昭、し化業兼は家農のく多に期長成済経度高  ○

過半を占め、専業農家は 16%にまで減少。でま%4はに年)0102(22成平は合割るめ占に者業就全、け続を少減は者業就業農  ○

低下。また、高齢化が進行し、農業就業者に占める 60歳以上の割合が平成2(1990)年に5割を超え、平成 22(2010)年には7割強(65歳以上では6割)まで上昇。

人万8の年)2691(73和昭、は者たし業就に業農家自ちうの者卒学規新の弟子家農  ○(就業者の1割)から、その後大きく減少し、平成 22(2010)年には 1,800 人。

(8)

主な指標  

昭和 35 年 平成 22年 (1960) (2010)

■ 農家数 606 万戸 ⇒ 163 万戸■ 専業農家数 208 万戸 ⇒ 45 万戸   うち男子生産年齢人口がいる割合 69 %*1 ⇒ 41 %■ 兼業農家数 398 万戸 ⇒ 118 万戸■ 主業農家数 82 万戸*2 ⇒ 36 万戸■ 農業就業人口 1,454 万人 ⇒ 261 万人   うち 60歳以上の割合 17 % ⇒ 74 %   全就業人口に占める割合 33 % ⇒ 4 %■ 基幹的農業従事者 1,175 万人 ⇒ 205 万人■ 新規学卒就農者 79,100 人*3 ⇒ 1,770 人■ 集落営農数 9,961 集落営農*4 ⇒ 14,643 集落営農*5

■ 農業生産法人数 2,740 法人*6 ⇒ 11,829 法人■ 1経営体当たり平均経営耕地面積 0.9 ha* 7 ⇒ 2.2 ha

(参考)■ 乳用牛の 1戸当たり飼養頭数 2 頭 ⇒ 68 頭■ 豚の 1戸当たり飼養頭数 2 頭 ⇒ 1,437 頭*8

、」査調者農就規新「、」査調態実農営落集「、」スサンセ業林農「省産水林農、」査調力働労「、」査調勢国「省務総 :料資「農林漁家就業動向調査」、「家畜の飼養動向」、「畜産統計」、農林水産省調べ

。帯世の上以円万51間年が額金売販物産農はたま帯世む営を業農の上以a01が積面地耕営経、は家農 )1:注 ただし、昭和 55(1980)年以前は、経営耕地面積は東日本では 10a以上、西日本では5a以上の農業を営む世帯または年間農産物販売金額が年次により2~ 10万円以上の世帯

*。値の年)2691(73和昭は3*。値の年)0991(2成平は2*。値の年)0891(55和昭は1* )2   4は平成 12(2000)年の値。* 5は平成 23(2011)年の値。* 6は昭和 45(1970)年の値。* 7は農家1戸当たりの値。* 8は平成 21(2009)年の値。*9は販売農家数

*8

* 9

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年次報告 50年を振り返って

かつて農作業受委託をめぐって

吉原 孝氏(日本政策金融公庫)(元農林水産省調査課出向)  

平成元年度と2年度の白書において、私は主に農地の流動化と経営規模の拡大の動向について担当しました。

バブル経済崩壊直前の当時、農地価格は都市近郊での上昇と農村部での下落が続いて地域間格差が拡大し、農業経営への影響は地域ごとに異なった様相を呈していました。また、農用地利用増進法の制定から 10年を経て、農地の権利移転の中心は所有権移転から貸借へと移り、さらに、実質的な規模拡大となる農作業受委託が注目されました。平成2年の農林業センサスでは、自己の農業経営を持たず農作業受託を行う「農業サービス事業体」の調査結果が初めて登場しました。私は、こうした規模拡大の地域ごとの動向とその促進のための課題を呈示しようと努めましたが、総じていえば、規模拡大のテンポは遅く課題は大きいものでした。

思い出深いのは、農作業受委託に関する農林水産省内での議論です。私は、統計資料による農作業受委託面積の把握や分析の方法について、農地政策所管部署等の先輩諸氏から多くを教わり重要な示唆も頂きました。そして、稲作経営の規模について、農地の所有と借入による経営面積に、主要な稲作作業の受託面積の平均値を加算する方法によって実質的な経営規模を算出・グラフ化し、その地域ごとの状況を示すことができました。特に、東海地域における農作業受委託の進展はインパクトがありました。その一方、同じ検討の過程で、「農作業受託は経営規模の拡大ではなく、単なる賃稼ぎだ。」といった話を何度か耳にしました。いわゆる自作農主義の理念に関わる話です。当時、既に古風なものとなりつつあったとはいえ、30歳前後で出向中の身であった私にとって、決して悪い意味ではなく新鮮で考えさせられる内容でした。時は流れ、平成 21年の農地法改正によってその第1条の自作農主義が薄れるに至り、隔世の感を禁じ得ません。

しかし、感慨に耽っている場合ではありません。この20年、担い手の減少等が続くなか、農地の流動化に大きな進展はなく、もはや流動化以前に農地自体の維持も課題となっています。現在、農業政策金融の業務に携わる私としては、今次白書が示す喫緊の政策課題の一端を着実に遂行することが使命です。

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録付末巻

農地と農業生産基盤

主な動き  

八・水用知愛。開展が拓干、墾開、れさ施実が業事拓開急緊、めたの産増糧食、後戦  ○郎潟干拓等の大規模事業も実施。

利水業農が域地積安県島福、し貌変に帯地田水の指屈内国りよに良改水排が野平潟新  ○施設の整備により優良米の産地に発展するなど、全国各地で農業生産基盤の整備により地域の農業が発展。

期長成度高、後のそ、がたし加増でまah万906の年)1691(63和昭、は積面地耕  ○を中心に転用によるかい廃が続き、平成 22(2010)年には 459 万 ha まで減少。

平らか年)0691(53和昭、りよに等少減の数家農、は積面地耕営経りた当体営経1  ○成 22(2010)年に2倍程度まで拡大。大規模経営の数はふえているが、多くの農家では引き続き小規模で分散錯圃の状態。

度程a03の田水、は備整の盤基産生業農の等地農  ○以上区画整備率が 30 年あまりで6割に上昇すること等により、作業の効率化に寄与。

に等とこたっなくなれわ行が作毛二、は率用利地耕  ○より作付延べ面積が減少したことから、大きく低下。

(9)

主な指標 

昭和 35 年 平成 22年 (1960) (2010)

■ 耕地面積 607 万 ha ⇒ 459 万 ha

昭和 39年 平成 21年 (1964) (2009)

■ 田の 30a 程度以上区画整備率 2 % ⇒ 62 %■ 畑地かんがい施設整備率 1 % ⇒ 21 %

昭和 35年 平成 22年 (1960) (2010)

■ 作付延べ面積 813 万 ha ⇒ 424 万 ha■ 耕地利用率 134 % ⇒ 92 %■ 耕作放棄地 13 万 ha* 1 ⇒ 40 万 ha

」査調礎基報情盤基業農「、」査調画計合総良改地土「、」計統積面付作び及地耕「、」スサンセ業林農「省産水林農:料資 注:* 1は昭和 50(1975)年の値。*2は平成21(2009)年の値

愛知用水

* 2

* 2

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420

年次報告 50 年を振り返って

事 例  農業基本法のもとでの生産現場の取組

○ 近代化・機械化のモデル的営農集団の取組(北海道網あば

走しり

市し

(大型機械の共同利用を目的として設立)オホーツク網走第 20営農集団利用組合は、網走市の広大な丘陵地帯で、

大麦(76ha)、でん粉原料ばれいしょ(63ha)、てんさい(82ha)の畑作3作物を中心に、野菜(だいこん)(38ha)を栽培する農家9戸から構成される機械利用組合です。昭和 35(1960)年頃、他の畑作地帯では既にトラクター

の導入が始まっていましたが、この地域ではまだ農耕馬で作業を行っていました。昭和 39(1964)年、第1次構造改善事業実施を機に、10 農家が大型機械の共同利用を目的として営農集団を設立し、トラクターが導入されました。また、第2次構造改善事業(昭和 45(1970)年)によりトラクターが追加され、本格的な共同利用が始まりました。

(かんがい施設の整備に伴い、だいこん栽培を開始)昭和 45(1970)年以降、米の過剰傾向を背景に全道的に

畑作物の大規模作付けが奨励されたなかで、当地区の農家も、補助事業を活用しつつ、100 馬力のトラクター、てんさい移植機等の大型機械を導入し、その後、倉庫の共同利用や肥料の共同購入等も行われるようになりました。昭和 58(1983)年に国営畑地帯総合パイロット事業が開始され、畑地かんがい用水の確保、

排水改良・農地造成により労働時間の大幅な減少等生産性が向上しました。一方、将来的に畑作3作物の価格維持は難しいと判断し、昭和 63(1988)年から独自に新規導入作物の栽培試験を行いました。その結果、トラクターを改良するだけで作業可能なだいこんの栽培が適当と考え、平成2(1990)年から取組を開始しました。

(効率的な機械利用等により生産力上昇)だいこん栽培の取組当初は、組合の施設で選果し、千葉県

船ふな

橋ば し

市し

や愛知県名な

古ご

屋や

市し

の市場へ出荷していましたが、生産量が増加し、平成7(1995)年からは選果を JA施設に移行し、関東、東海、関西へと販路を拡大しました。早期出荷ができ、高値で販売できたこともあり、だいこんの販売額が全体の3〜4割を占めるようになるとともに、だいこんの栽培が市内の他地域にも拡大したことから、平成 11(1999)年には網走市が夏だいこんの指定産地になりました。これら長年の取組により、地区内の生産力は大幅に上昇し、

平成 22(2010)年の出荷額は2億8千万円となりました。加えて、効率的な機械導入に努めてきたことから、生産費に占める機械費の割合は、北海道の畑作平均で 35%であるのに対し 13%程度と非常に低くなっています。また、営農集団では、てんさいの精糖工場への運搬、除雪、でん粉のしぼり汁の畑への散布等の事業も行い、収入の確保を図っています。 

(所得が安定し、後継者も就農)組合設立時、農家の間には経営規模の格差があり、同じ作業をしても収入の差が生じていたた

め、離農跡地等の取得は、経営規模の小さい農家から優先的に行われるようにした結果、1戸当たり経営規模は平均 30ha 規模に平準化されました。また、この地区は、農家と農家との間に畑が広がる散居集落で、農家同士のつながりが疎遠になりつつあったため、昭和 50(1975)年生活の利便性や教育面の充実を考え、他の地域に先駆けて、集落で市街地へ集団移住を行いました。現在の組合員農家は3代目に当たり、長期間にわたり共同での機械利用等の取組や意識が各

農家で受け継がれています。どの農家の農業所得もほぼ安定していることから、9農家のうち6戸で後継者が就農しているとともに、残りの3戸も経営者の平均年齢は 45歳と非常に若くなっています。

北海道

網走市

だいこんの収穫

選果施設に集められるだいこん

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421

巻末付録

農村生活・農業集落

主な動き  

○ 昭和30年代後半(1960〜1964年)以降、多くの若者等が地方圏から大都市圏へ流出。○ 農村地域の人口は一貫して減少し、高齢化が都市部に先行して進行。○ 多くの農業集落で混住化が進展し、農家の割合が大きく低下。○� 近年、多くの農業集落では、集落機能が低下し、地域資源の維持が困難になるとともに、買い物、通院等生活上困難に直面する集落も存在。

○� 農村での生活環境は整備が進められてきているが、汚水処理施設の普及率等は依然低位。

(10)

主な指標 

� 昭和 35 年� � 平成 17年� (1960)� � � �(2005)

■ 全国人口に占める農村(非DIDs)人口の�    56%� ⇒�     34%  割合� 昭和 45年� � 平成 17年� (1970)� � ��(2005)

■ 農業集落における農家の割合�    46%� ⇒�     11%■ 農業集落数� 14 万 3千集落� ⇒� 13万9千集落*1

   農家率 80%以上�    51%� ⇒� ������������17%   農家率 50〜 80%�    27%� ⇒� ������������19%   農家率 50%未満�    22%� ⇒� ������������65%■ 人口集中地域(DIDs)までの所要時間別  農業集落数の割合   30分以内�    34%� ⇒� ������������68 %*1

   1時間以内�    73%� ⇒� ������������93%*1

■ 農村地域(町村)の生活環境整備の状況   道路舗装率�     5%� ⇒� ������������68%   ごみ収集率�    47%� ⇒� ������������93%   上水道等普及率�    63%� ⇒� ������������93%   汚水処理施設普及率�     1%� ⇒� ������������47%

資料:総務省「国勢調査」、「公共施設状況調」、農林水産省「農林業センサス」 注:* 1は平成 22(2010)年の値

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年次報告 50年を振り返って

10 年前の回想と今後の白書に寄せる期待

佐藤 陽介氏(新潟県上越市)(元農林水産省調査課研修員)

私が執筆にかかわった平成 12年度は、今回の年次報告の 10年前に当たり、前年度に制定された食料・農業・農村基本法に基づく同基本計画が策定された転換期でもありました。

私は新潟県上越市の職員で、2年間の派遣研修のうちの2年目でした。いわゆる生え抜きではなく知見も乏しかった私は、見方を変えれば、当時の食料・農業・農村をめぐる動向に最も関心を寄せていた門外漢の一人ではなかったかと半ば自負しています。

当時、加工乳等に起因する大規模な食中毒事故が発生し、食に対する国民の不安が高まる中、我が国の食料消費と食品産業の動向に関する整理を行いました。とりわけ、食料の生産(「農」)と消費(「食」)の距離の拡大について、物理的な距離の拡大や流通経路の複雑化等の指摘を通じて明らかにしました。その上で、食料や農業に対する関心の低下にもつながりかねないとして、近年導入が進む食品トレーサビリティシステムの先行事例も引きながら、意識の上での距離の縮小を図っていく必要性を示しました。

この間、自らの関心にこたえるようにして情報収集に取り組めたのは、消費者の一人として身近な分野をまかせていただいた上に、関係部署の適切かつ円滑な協力が得られたからにほかなりません。

あれから 10年。相次ぐ表示偽装事件等により、食に対する不安は依然根強いものがあります。生産者等と消費者の「顔のみえる関係」の構築が求められる点は現在も変わらぬ課題です。

一方、児童たちの食に対する理解を深めるための取組事例として前年度に紹介した当市のある小学校の空腹体験は現在も続けられており、当時の児童たちは早ければ子を持つ親となる世代に差し掛かりました。年次報告で紹介したことが今日まで続くきっかけとなったかは定かではありませんが、「白書」に書かれ広く国民に読まれることがそれ自体で関係者を励まし取組を後押しするものであることは確かです。

今後もなお年次報告が、多様な視点からの分析や考察の結果を国民に分かりやすく示すとともに、多くの示唆に富みながら元気を与えるものであり続けることを期待しています。

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巻末付録

年次報告は、食料・農業・農村をめぐる情勢が大きく変化していくなか、動向を客観的に捉え、様々な視点から分析等を行ってきました。以下のとおり、農政の主な節目ごとに特徴的な記述等を振り返っていきたいと思います。

年度 特徴的な記述

昭和 36 年度(1961)

○� 農業従事者の生活水準もかなりの上昇をみたが、農業と他産業との生産性の開差は拡大

○� 畜産物、果実等の成長農産物に対する需要の所得弾力性は非常に高い○� 兼業化の形態による他産業への労働力の移動が進む一方、専業農家の発展の動きも活発

○� 農業基本法の制定とともに、今後の農業および農政の向かうべき道は明らかにされ、農政はこの新たな方向に向かって推進

昭和 40 年度(1965)

○� 農業の労働生産性は、国際的にみても劣っていない○� 35 年度以降、急上昇が続いた農産物の生産者価格は、39 年度は前年度比4.8%の上昇にとどまった

○� 農業就業人口はひきつづき減少をたどっており、農家1戸当たりの農業就業者も減少した

昭和 45 年度(1970)

○ 緊急最大の課題は、米の生産調整を着実かつ効果的に実施すること○� 専業的農家を中核とした生産の組織化によって高能率な農業の確立を図り、また、生活環境等を整備して新しい農村社会の建設を総合的な見地から計画的に促進していくことが重要な課題

○� 農業は、いわゆる畜産公害および食料品での農薬の残留問題等を発生させるに至っている

○ 「総合農政の推進について」に示された農政の基本的方向に即して総合農政を本格的に展開

昭和 48 年度(1973)

○� 世界的規模での食料需給のひっ迫、特に穀物の国際価格の高騰や石油問題など、資源、エネルギー危機の発生に直面するに至り、物価の安定、国民食料の総合的供給体制の確立、産業構造の根本的転換を迫られる

昭和 50 年度(1975)

○� 土地、水資源の確保、整備とその高度利用、農業生産の中核的担い手の育成を通じて、可能な限り国内供給力を強化することが農政の最も重要な課題

○� 海外に依存せざるを得ない農産物については、輸入の安定的確保や備蓄の推進を図り、長期的視点に立って総合食糧政策を展開していくことが必要

昭和 55 年度(1980)

○� 農業は、国民食料の供給という重要な使命を担いつつ発展を続けてきたが、農業構造の改善は十分に進まず、今後もこの基本的な課題に取り組む必要

○� 米の供給過剰をはじめとする農産物需給緩和の問題、食料品価格の割高感の問題、農業所得の確保の問題等に直面

○ 「80 年代の農政の基本方向」に沿って、農政を一層強化することが必要○� 供給過剰が続く米については、転作の推進とともに、消費の拡大を図るため米食を中心とする日本型食生活の定着に努める

昭和 61 年度(1986)

○ 急速な円高は、農業・農村にも様々な影響○� 地域の実情を踏まえた構造改善のためのねばり強い多様な取組のなかで、稲作の生産性向上に努力していく必要

○� 農産物の国際需給が過剰基調にあるなかで各国の輸出競争は激化。世界の農産物貿易の秩序ある発展を促進するための新しいルール策定の作業等が開始

○ 「21 世紀へ向けての農政の基本方向」に即し、国際化時代に対応する生産性の高い農業を実現するための着実な努力を続けていくことが必要

3 50 年間の年次報告での主な記述を振り返る

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年次報告 50年を振り返って

年度 特徴的な記述

昭和 63 年度(1988)

○� 貿易収支の不均衡等を背景に貿易摩擦が激化。農産物の市場開放要請はかつてないほどの高まりをみせ、幾多の経過をたどり63 年6月には牛肉、かんきつについて、同年7月にはいわゆる農産物 12 品目についての輸入枠の撤廃等が決定

平成 4 年度(1992)

○� 国民が、豊かで、栄養バランスのとれた食生活を享受しているなかで、それを支える国内の食料供給力は低下傾向

○� 農業労働力のぜい弱化した農家が増加し、耕作放棄地・不作付地の増加、耕地利用率の低下等が進行

○� 食料消費の多様化や円高の進行に伴い農産物輸入の増加が続く一方、新たな農産物貿易のルールのあり方をめぐり各国間で交渉が継続

○ 「新しい食料・農業・農村政策の方向」(新政策)を踏まえて、農業、農村の維持・発展を目指していくことが重要

平成 5 年度(1993)

○� 記録的な低温、多雨、日照不足となった夏期の天候は農業生産に甚大な被害をもたらし、米は戦後最悪の作柄。緊急特例的に必要量の輸入

○� 5年 12 月、米を除くすべての輸入数量制限品目等の関税化のほか、関税率、農業の国内支持及び輸出補助金の削減等を主な内容とするガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉の最終合意案を受け入れ

平成 7 年度(1995)

○� ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施、円高の一層の進行等新たな国際環境に直面

○� 昭和一けた世代が世代交代の時期にさしかかりつつあるなど、農業構造の大きな変化が迫っている

○� 人口の減少、高齢化の進行に加え、内外の経済環境の激変に伴う影響もあり、農村地域の活力の低下がこれまで以上に懸念されている

平成 10 年度(1998)

○� 戦後農政を、国民全体の視点に立って抜本的に見直し、国民の理解と支持のもとに、現行基本法による政策理念を越えた新たな政策体系を再構築することが、新時代に対する緊急かつ重要な課題○� 食料・農業・農村基本問題調査会から、21 世紀を展望した食料・農業・農村政策の基本方向について答申。また、新たな食料・農業・農村政策の具体的指針となる農政改革大網が決定

平成 11 年度(1999)

○� 食料・農業・農村基本法は、農業・農村への期待の高まりにこたえて、戦後の農政を抜本的に見直し、新たな理念のもとに政策体系を再構築。新世紀における食料・農業・農村政策の基本指針

○� 今後は、新しい基本法に即した施策の具体化について、国、地方公共団体、農業者、消費者、関係事業者等が役割を分担しながら、着実に推進していくことが重要

平成 12 年度(2000)

○� 基本計画において設定された目標(食料自給率:22 年度に 45%)の達成に向けて、国民の理解と参加のもとに生産、消費の両面から取組みを進めることが必要○� 加工乳等に起因する大規模な食中毒をはじめ、食品の安全性にかかわる事故が相次いでおり、食品の安全性に対する消費者の関心はかつてなく高まっている

○� 専ら農業を営む者等が、意欲をもって経営の体質強化と創意工夫を活かした農業経営の展開に取り組むことができるよう条件整備を進めることが必要

○� 農村で農業生産活動が行われることにより生じる、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面的機能は、重要な役割

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巻末付録

年度 特徴的な記述

平成 14 年度(2002)

○� BSE の発生、食品の事故や不正表示、無登録農薬の販売・使用など、国民の「食」に対する不安、「農」を含む食料産業に対する不信が高まっている。政府において食品安全行政の改革を進め、新たな法律を制定し組織体制を見直すこととしている

○� 稲作の構造改革が遅れていることに加え、30 年余にわたり実施されてきた生産調整に対する限界感・不公平感が増大。「米政策改革大網」の趣旨を踏まえ、水田農業・米政策の大転換を図っていくため、生産者・生産者団体をはじめ行政、流通業者、消費者等の関係者が一丸となって取り組んでいくことが重要

平成 16 年度(2004)

○� 17 年3月に策定された食料・農業・農村基本計画で示された基本的視点に沿って、農政全般の改革を早急に推進する必要

○ 「食」と「農」をめぐる様々な問題には、この二つの間の距離の拡大が影響○ 食の安全の確保を通じて消費者の信頼を回復し、国民の食卓と農業生産の現場の結び付きを強めることにより食料の安定供給システムを確立する必要性が高まり○ 農業の構造改革の加速化と地域農業の再編に取り組むとともに、国産の強みを最大限に活かした農業生産体制へ転換していく必要性が高まり○ 農業の有する多面的機能の発揮等の役割を担う農村地域の再生と地域の創意工夫を活かした活力ある農村の創造の必要性が高まり

平成 21 年度(2009)

○ 新たな政権のもと、食料自給率向上のために水田農業のてこ入れを行うことをねらいとして、平成 22 年度(2010 年度)に戸別所得補償モデル対策を実施○ 食料・農業・農村政策を国家戦略の一つとして位置付け、大幅な政策の転換を図っていくため、新たな基本計画を策定○ 食料自給率について、平成 32 年度(2020 年度)の目標として供給熱量ベースで 50%まで引き上げることが初めて掲げられた(生産額ベースの目標は70%)○ 意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続できる環境を整え、農業の産業としての持続性を維持○ 農村に存在する資源と産業とを結び付け、地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を促す農業・農村の6次産業化を進める必要

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年次報告 50年を振り返って

高度成長の終息と農業(49〜 52 年度)、白書に期待すること

戸田 博愛氏     (元農林水産省調査課長)

昭和 30年代から続いた経済の高度成長は、国際的な食糧や石油の価格高騰等の影響を受けて終息に向かわざるを得ませんでした。この経済基調の変化は、それまでとは非常に異なった影響を農業に与えました。白書もここに重点を置き、例えば、51年度には「経済成長の鈍化と農業・農村」とのタイトルを特に設けて記述しています。

45〜 48 年度間に年率 8.5%の減少を記録した農業就業人口は、50年代前半には年率2.5%の減少にとどまりました。工場や住宅等の用地需要の増大と農業の将来への不安等から耕地が大量に非農業用途へと転用されていました。49 年には 4.2 万 ha�の耕地がかい廃されましたが、不況のもとで 52 年には 2.2 万 ha に減少しました。高度成長下での労働力と土地の二大資源の大幅な減少は産業としての農業の将来に大きな不安を投げかけていました。

農業労働力と土地の減少の鈍化は、一方では農業の発展にとっての一つの契機となるとともに、他方では農家が今まで以上に農業所得に依存しなければならなくなることを意味していました。

輸入食糧や石油の高騰によるインフレの進行と不況による家計収入の停滞により、食糧消費にも大きな変化が現れました。食糧消費の伸びが鈍化し、特に好調だった畜産物や加工食品の伸びも鈍りました。コメの過剰傾向は続いており、農業所得依存の高まった農家にとって、生産性の向上によるコスト低下やこれまで輸入に依存してきた農産物の生産拡大の必要性が強まってきました。

こうした状況を踏まえて、白書は農業経営発展による農業所得確保の重要性を強調し、特に51年度白書では「農業経営発展の四つの方法」をあげています。第一は資本の集約化、第二は経営の複合化、第三は耕地規模の拡大、第四は農業生産の組織化です。今後は麦作や飼料作等の土地利用型農業の発展が必要で、第二、第三、第四の方法が重要になるとしました。

こうした過去の経験から、今後の白書に期待したいことの第一は日本経済と農業の関係に視点を置いた分析に力を注いでほしいことです。第二に多方面から寄せられる政策提言等の実現可能性と問題点等の判断に役立つような農業の現実の客観的分析を強化してほしいことです。農業の実態を軽視して頭の中だけで組み立てた理論や点に注目し面的広がりを見ない展望に悩まされてきたので、この点を特にお願いしたいと思います。

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427

巻末付録

国会提出日 当時の内閣総理大臣、農林大臣・農林水産大臣昭和 36 年度 農 業 に 関 す る 報 告 昭和 36(1961)年 12 月 27 日 池田 勇人 内閣総理大臣 河野 一郎 農 林 大 臣

37 年度 〃 38(1963)年 1 月 25 日 池田 勇人 内閣総理大臣 重政 誠之 農 林 大 臣

38 年度 〃 39(1964)年 1 月 24 日 池田 勇人 内閣総理大臣 赤城 宗德 農 林 大 臣

39 年度 〃 40(1965)年 1 月 26 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 赤城 宗德 農 林 大 臣

40 年度 〃 41(1966)年 2 月 8 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 坂田 英一 農 林 大 臣

41 年度 〃 42(1967)年 3 月 22 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 倉石 忠雄 農 林 大 臣

42 年度 〃 43(1968)年 3 月 21 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 西村 直己 農 林 大 臣

43 年度 〃 44(1969)年 2 月 25 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 長谷川四郎 農 林 大 臣

44 年度 〃 45(1970)年 3 月 26 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 倉石 忠雄 農 林 大 臣

45 年度 〃 46(1971)年 3 月 31 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 倉石 忠雄 農 林 大 臣

46 年度 〃 47(1972)年 3 月 31 日 佐藤 榮作 内閣総理大臣 赤城 宗德 農 林 大 臣

47 年度 〃 48(1973)年 3 月 30 日 田中 角榮 内閣総理大臣 櫻内 義雄 農 林 大 臣

48 年度 〃 49(1974)年 4 月 5 日 田中 角榮 内閣総理大臣 倉石 忠雄 農 林 大 臣

49 年度 〃 50(1975)年 4 月 1 日 三木 武夫 内閣総理大臣 安倍晋太郎 農 林 大 臣

50 年度 〃 51(1976)年 4 月 13 日 三木 武夫 内閣総理大臣 安倍晋太郎 農 林 大 臣

51 年度 〃 52(1977)年 4 月 13 日 福田 赳夫 内閣総理大臣 鈴木 善幸 農 林 大 臣

52 年度 〃 53(1978)年 4 月 17 日 福田 赳夫 内閣総理大臣 中川 一郎 農 林 大 臣

53 年度 〃 54(1979)年 4 月 13 日 大平 正芳 内閣総理大臣 渡辺美智雄 農林水産大臣

54 年度 〃 55(1980)年 4 月 17 日 大平 正芳 内閣総理大臣 武藤 嘉文 農林水産大臣

55 年度 〃 56(1981)年 3 月 31 日 鈴木 善幸 内閣総理大臣 亀岡 高夫 農林水産大臣

56 年度 〃 57(1982)年 4 月 9 日 鈴木 善幸 内閣総理大臣 田澤 吉郎 農林水産大臣

57 年度 〃 58(1983)年 4 月 12 日 中曽根康弘 内閣総理大臣 金子 岩三 農林水産大臣

58 年度 〃 59(1984)年 4 月 10 日 中曽根康弘 内閣総理大臣 山村新治郎 農林水産大臣

59 年度 〃 60(1985)年 4 月 5 日 中曽根康弘 内閣総理大臣 佐藤 守良 農林水産大臣

60 年度 〃 61(1986)年 4 月 8 日 中曽根康弘 内閣総理大臣 羽田  孜 農林水産大臣

61 年度 〃 62(1987)年 4 月 3 日 中曽根康弘 内閣総理大臣 加藤 六月 農林水産大臣

62 年度 〃 63(1988)年 4 月 5 日 竹下  登 内閣総理大臣 佐藤  隆 農林水産大臣

63 年度 〃 平成元 (1989)年 4 月 11 日 竹下  登 内閣総理大臣 羽田  孜 農林水産大臣

平成元年度 〃 2(1990)年 4 月 10 日 海部 俊樹 内閣総理大臣 山本 富雄 農林水産大臣

2 年度 〃 3(1991)年 4 月 5 日 海部 俊樹 内閣総理大臣 近藤 元次 農林水産大臣

3 年度 〃 4(1992)年 4 月 10 日 宮澤 喜一 内閣総理大臣 田名部匡省 農林水産大臣

4 年度 〃 5(1993)年 4 月 9 日 宮澤 喜一 内閣総理大臣 田名部匡省 農林水産大臣

5 年度 〃 6(1994)年 4 月 12 日 細川 護煕 内閣総理大臣 畑 英次郎 農林水産大臣

6 年度 〃 7(1995)年 4 月 18 日 村山 富市 内閣総理大臣 大河原太一郎 農林水産大臣

7 年度 〃 8(1996)年 4 月 12 日 橋本龍太郎 内閣総理大臣 大原 一三 農林水産大臣

8 年度 〃 9(1997)年 4 月 11 日 橋本龍太郎 内閣総理大臣 藤本 孝雄 農林水産大臣

9 年度 〃 10(1998)年 4 月 10 日 橋本龍太郎 内閣総理大臣 島村 宜伸 農林水産大臣

10 年度 〃 11(1999)年 4 月 16 日 小渕 恵三 内閣総理大臣 中川 昭一 農林水産大臣

11 年度 食料・農業・農村に関する報告 12(2000)年 4 月 4 日 小渕 恵三 内閣総理大臣 玉沢徳一郎 農林水産大臣

12 年度 〃 13(2001)年 4 月 10 日 森  喜朗 内閣総理大臣 谷津 義男 農林水産大臣

13 年度 〃 14(2002)年 5 月 17 日 小泉純一郎 内閣総理大臣 武部  勤 農林水産大臣

14 年度 〃 15(2003)年 5 月 20 日 小泉純一郎 内閣総理大臣 亀井 善之 農林水産大臣

15 年度 〃 16(2004)年 5 月 18 日 小泉純一郎 内閣総理大臣 亀井 善之 農林水産大臣

16 年度 〃 17(2005)年 5 月 17 日 小泉純一郎 内閣総理大臣 島村 宜伸 農林水産大臣

17 年度 〃 18(2006)年 6 月 6 日 小泉純一郎 内閣総理大臣 中川 昭一 農林水産大臣

18 年度 〃 19(2007)年 5 月 25 日 安倍 晋三 内閣総理大臣 松岡 利勝 農林水産大臣

19 年度 〃 20(2008)年 5 月 16 日 福田 康夫 内閣総理大臣 若林 正俊 農林水産大臣

20 年度 〃 21(2009)年 5 月 19 日 麻生 太郎 内閣総理大臣 石破  茂 農林水産大臣

21 年度 〃 22(2010)年 6 月 11 日 菅  直人 内閣総理大臣 山田 正彦 農林水産大臣

22 年度 〃 23(2011)年 5 月 31 日 菅  直人 内閣総理大臣 鹿野 道彦 農林水産大臣

(付表-1) 「農業に関する年次報告」、「食料・農業・農村に関する年次報告」の      国会提出時の内閣総理大臣、農林大臣・農林水産大臣

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428

年次報告 50年を振り返って

(付表-2) 昭和 36(1961) 年以降の主な自然災害による農林水産業被害状況

資料:農林水産省調べ、農林水産省「生産農業所得統計」、「生産林業所得統計報告書」、「漁業・養殖業生産統計年報」 注:1) 農林水産業産出額は、災害発生年の農業、林業及び水産業にかかる産出(生産)額の合計値。災害が2か年に    またがる場合は、2年目の農林水産業産出額。昭和 43(1968)年以前は、統計データがないため、農林水産業産    出額を記載していない。   2) 東日本大震災の農林水産業被害額は平成 23(2011)年5月 18日現在。農林水産業産出額は平成 20(2008)年

年月 災害名 主要被害地域農林水産業被害額(1)(億円)

農林水産業産出額(2)(億円)

(1)/(2)

昭和 39 年6月 (1964) 新潟地震 秋田、山形、福島、新潟、石川、

長野 199 - -

40 年9月 (1965) 台風第 23・24 号 全国(熊本、鹿児島を除く) 1,440 - -

41 年9月 (1966)

台風第 24・26 号、9月豪雨

全国(北海道、秋田、山形、富山、石川、福井、愛知、滋賀、京都、奈良、大阪、山口、徳島、熊本、沖縄を除く)

504 - -

42 年7月 (1967) 7 月の豪雨

福井、長野、岐阜、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎

532 - -

42 年8月 (1967) 8月下旬豪雨 宮城、山形、福島、新潟 683 - -

43 年5月 (1968) 十勝沖地震 青森 196 - -

47 年7月 (1972)

台風第 6・7・9 号、梅雨前線 全国 2,402 69,973 3.4%

51 年9月 (1976) 台風第 17 号・豪雨 全国(北海道、岩手、宮城、秋田、

福島、茨城、千葉を除く) 3,431 124,417 2.8%

51 年 12 月~ 52 年3月(1976) (1977) 降雪・低温 全国(沖縄を除く) 1,339 135,957 1.0%

52 年8月 (1977) 有珠山噴火 北海道 211 135,957 0.2%

53 年6月 (1978) 宮城県沖地震 宮城 186 137,186 0.1%

54 年 10 月 (1979) 台風第 20 号 全国(富山、長崎、熊本を除く) 1,230 142,845 0.9%

55 年 12 月~ 56 年3月(1980) (1981) 豪雪 全国(沖縄を除く) 2,128 144,762 1.5%

57 年7~8月 (1982) 台風第 10 号及び梅雨

北海道、東北(青森、宮城を除く)、関東、北陸、東海、近畿、岡山、山口、四国(徳島を除く)、九州

4,558 145,863 3.1%

58 年3月 (1983) 日本海中部地震 秋田、青森 400 148,691 0.3%

58 年7月 (1983) 梅雨前線豪雨 島根、佐賀、広島 1,701 148,691 1.1%

58 年 12 月~ 59 年3月(1983) (1984) 豪雪 北陸地方 1,369 156,182 0.9%

平成3年 (1991) 雲仙岳噴火 長崎 374 151,549 0.2%

4年 (1992) 雲仙岳噴火 長崎 163 147,357 0.1%

5年 (1993) 雲仙岳噴火 長崎 353 138,092 0.3%

5年7月 (1993) 北海道南西沖地震 北海道 753 138,092 0.5%

5年5~8月 (1993) 5~8月豪雨 熊本、鹿児島 4,637 138,092 3.4%

7年1月 (1995) 阪神淡路大震災 兵庫 900 134,599 0.7%

16 年 10 月 (2004) 台風 23 号 兵庫、香川 2,413 107,515 2.2%

16 年 10 月 (2004) 新潟県中越地震 新潟 1,330 107,515 1.2%

17 年 12 月~ 18 年 3 月(2005) (2006) 平成 18 年豪雪 新潟、愛媛、青森 234 103,705 0.2%

19 年7月 (2007) 新潟県中越沖地震 新潟、長野 228 103,530 0.2%

20 年6月 (2008)

平成 20 年岩手・宮城内陸地震 岩手、宮城 1,315 105,385 1.2%

23 年3月 (2011) 東日本大震災 東北、関東 17,746 105,385 16.8%

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第2部平成22年度食料・農業・農村施策

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  概 説

1 施策の重点「食料・農業・農村基本計画」の目標の

実現及び課題の克服を図るため、食料自給率向上に向けた施策、食料の安定供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、農村の振興に関する施策及び食料・農業・農村に横断的に関係する施策を総合的に展開しました。

特に、戸別所得補償制度に関するモデル対策の実施、農業・農村の6次産業化等による所得の増大、食の安全と消費者の信頼を確保する施策等を推進しました。

2 財政措置農林水産業を立て直し、 食と地域の再

生を図るため、「コンクリートから人へ」の理念に立って、農業者を直接支援する事業に予算を重点的に配分し、22 年度農業関係一般会計当初予算額として、総額1兆8,325 億円及び農山漁村地域整備交付金として 1,500 億円を計上しました。これにより、①戸別所得補償制度モデル対策、②食料供給力の向上対策、③農山漁村の活性化対策、④食の安全の確保対策、⑤農山漁村の6次産業化対策を推進しました。

また、22 年度の農林水産省関係の財政投 融 資 計 画 額 は 1,862 億 円 を 計 上 し ま した。このうち主要なものは、(株)日本政策金融公庫への 1,720 億円となっています。

3 立法措置第 174 回国会において、 以下の法律が

成立しました。・「農業経営に関する金融上の措置の改善

のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律」

・「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」

・「口蹄疫対策特別措置法」

第 176 回国会において、 以下の法律が成立しました。・「地域資源を活用した農林漁業者等によ

る新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」また、 第 177 回国会において、 以下の

法律が成立しました。・「家畜伝染病予防法の一部を改正する法

律」さらに、22 年度において、以下の法律

が施行されました。・「口蹄疫対策特別措置法」・「米穀等の取引等に係る情報の記録及び

産地情報の伝達に関する法律」のうち、米穀等の取引等に係る情報の記録に関する部分

・「農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律」

・「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」

・「商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律」のうち、商品取引所と金融商品取引所の相互乗入れ等に関する部分及び取引所外取引や海外取引所取引に対する許可制の導入等に関する部分

・「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」

4 税制上の措置重点施策をはじめとする施策の総合的な

推進を図るため、以下をはじめとする税制措置を講じました。(1)農業者等の経営の直接支援

ア ハウス栽培等で使用する農林漁業用A重油にかかる免税・還付措置の適用期限を1年延長(石油石炭税)

イ 中小企業者等である農林漁業者等が機械等を取得した場合の特別償却制度または税額控除制度の適用期限を2年

431

第2部

概 説

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延長(所得税・法人税)(2)循環型社会構築の推進

ア 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」に基づく管理施設にかかる課税標準の特例措置について、その適用期限を2年延長したうえ、 廃止。 なお、23 年4月1日から 24 年3月 31 日までの間に取得したものにかかる課税標準を最初の5年間価格の4分の3(現行3分の2)(固定資産税)、バイオ燃料製造設備にかかる課税標準の特例措置(3年間価格の2分の1)の適用期限を2年延長(固定資産税)

(3)農山漁村の活性化ア 中核的地方卸売市場にかかる課税標

準 の 特 例 措 置(5 年 間 価 格 の 3 分 の2)について、その適用期限を1年延長したうえ、廃止(固定資産税)

イ 食品製造業者等が研究開発を行った場合の試験研究費の増加額等にかかる税額控除制度について、その適用期限を2年延長(所得税・法人税、法人住民税)

5 金融措置各種の金融支援措置について、農業施策

の見直しに合わせて、無利子資金・低利資金・一般金利資金のそれぞれが役割に応じて活用されるよう、多様な経営体の特性に応じた金融支援策を構築しました。(1)(株)日本政策金融公庫

主業農家の生産・加工・販売分野におけるチャレンジ性のある取組を支援するのに必要な無利子資金である農業改良資金の貸付主体を都道府県から(株)日本政策金融公庫に変更したほか、22 年度に借り入れる農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)について、資金繰りに余裕がない貸付当初5年間の金利負担を軽減する措置を講じました。

また、大規模災害等に対応する民間資金

を円滑に供給する危機対応円滑化業務の実施に必要な措置を講じたほか、(株)日本政策金融公庫の円滑な業務に資するため、貸付けにより生じるコストについて、一般会計から補給金・補助金を交付しました。(2)農業近代化資金

22 年度に認定農業者が借り入れる農業近代化資金について、スーパーL資金と同様に、資金繰りに余裕がない貸付当初5年間の金利負担を軽減する措置を講じました。(3)農業改良資金

農業改良資金が農業者等にとって使いやすいものとなるよう、貸付主体を都道府県から農業金融のノウハウを有する(株 ) 日本政策金融公庫等に変更するとともに、貸付原資について特別会計から無利子で供給する方式を、一般会計からの利子補給方式に変更しました。(4)農業信用保証保険

農業者への資金の円滑な供給が図られるよう、①(独)農林漁業信用基金による融資保険の対象融資機関に銀行等を追加、②経営意欲のある農業者の資金繰り支援のため、運転資金について無担保・無保証人の特別保証枠を設定、③農業信用基金協会及び(独)農林漁業信用基金に対して、保証引受及び保険引受に必要な財務基盤の強化を図るなどの措置を講じました。

6 政策評価効果的かつ効率的な行政の推進、行政の

説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づき政策評価基本計画(5年間計画)及び実施計画(単年度計画)により事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)、事後評価(政策を決定したのちに行う政策評価)を推進しました。

な お、22 年 3 月 策 定 の「 食 料・ 農業・ 農 村 基 本 計 画 」、 租 税 特 別 措 置 に かかる新たな政策評価の実施等を踏まえ、

432

平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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22 年8月に政策評価基本計画を新たに策定しました。

Ⅰ 食料自給率向上に向けた施策

1 食料自給率向上に向けた取組食料自給率向上に向け、①戸別所得補償

制度を導入し、意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整えること、 ②

「品質」や「安全・安心」といった消費者ニーズに適

かな

った生産体制への転換を進めること、③農業・農村の有する「資源」を有効に活用し、地域ビジネスの展開や新産業の創出を図ることを通じて、「6次産業化」を進めることを基本として以下の施策を推進しました。

具体的には、生産面では、戸別所得補償モデル対策等により水田をはじめとした生産資源を最大限活用する取組を推進しました。特に、二毛作により小麦の作付けを飛躍的に拡大するとともに、作付けられていない水田や有効利用が図られていない畑地を有効に活用した米粉用米・飼料用米、大豆等の作付けの大幅拡大、技術開発とその普及を通じた単収・品質の向上を図る取組を推進しました。また、農地については、遊休農地解消のための取組等を行うとともに、転用規制の厳格化等を通じ、農地の確保に取り組みました。

消費面からは、人口減少社会・高齢化社会の一層の進展が見込まれるなかで、従来以上に消費者理解を得ながら潜在的需要の掘り起こし等を進め、消費者や食品産業事業者に国産農産物が選択されるような環境の形成を推進しました。特に、我が国の総人 口 の 1 割 強 に 相 当 す る 約 1,700 万 人 にも及ぶ朝食欠食の改善による米の消費拡大や、健康志向の高まりを受けた脂質の摂取抑制等に取り組みました。また、大豆加工食品について国産大豆の使用割合の大幅な引き上げに取り組みました。

さらに、単に和食への回帰をねらうだけでなく、食品産業の技術開発の進捗等を踏まえ、欧風化した現在の食生活の中に国産農産物を上手に取り込むことに積極的に取り組みました。特に、現在浸透しているパン食、めん食について国産小麦・米粉の利用拡大、畜産物について飼料用米等の国産飼料を用いた畜産物の生産拡大に取り組みました。

2 主要品目ごとの生産数量目標の実現に向けた施策

(1)米ア 鉄コーティング種子による湛水直播

栽培や不耕起V溝乾田直播栽培等の新技術の導入、米粉用米・飼料用米等の低コスト生産に向けた多収性品種の導入、植物浄化技術の導入・普及推進によるカドミウム濃度低減吸収抑制対策等を都道府県等を通じて推進しました。また、米粉用米、飼料用米増産に対応するため、既存の大規模乾燥調製施設の再編整備を推進しました。

イ 米穀の需給及び価格の安定を図るため、「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を 22 年 11 月に策定し、公表しました。

ウ 戸別所得補償モデル対策の実施による米粉用米、飼料用米等の生産振興の状況等も踏まえ、米穀の適正かつ円滑な流通を確保するため、改正された「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(22 年4月施行)に基づき、適切な保管及び販売を徹底するとともに、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」

(22 年 10 月施行)に基づき、取引等の記録の作成・保存を徹底しました。

エ 多様化する流通実態に応じた適正な価格形成に基づく市場取引の実施に資するための市場取引価格の動向を把握し毎月公表しました。

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第2部

概 説

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(2)麦パン・中華めん用小麦の作付け拡大に向

け、新品種・新技術の導入や実需者との連携による需要開拓、水田の高度利用(二毛作)等を積極的に推進しました。(3)そば

排水性の向上のための水田の団地的な利用と汎用化、麦等の後作として作付け拡大及び機械化適性を有する多収品種の育成を推進しました。(4)かんしょ・ばれいしょ

かんしょについては、意欲あるすべての経営体への農地・作業の集積や受託組織の育成等を推進しました。

ばれいしょについては、加工食品用途への供給拡大に必要なソイルコンディショニング技術(畦

うね

から土ど

塊かい

・礫れき

を取り除くことにより、ばれいしょの高品質化、収量向上及び収穫作業の効率化を可能にする技術)を導入した機械化栽培体系の確立等を推進しました。(5)大豆

大豆の作付け拡大に向け単収向上や作柄の安定化に資する大豆 300 A技術や湿害対策技術の普及、国産大豆の契約栽培による安定的な取引関係の構築及び食品製造事業者等による商品開発の取組等を推進しました。(6)なたね

良質で高単収なたね品種の育成及び国産なたねを取り扱う搾油事業者と農業者の連携を推進しました。(7)野菜

消費者等のニーズに的確に対応した安定的な野菜の生産・出荷体制の確立を図るため、契約取引や需給調整の的確な実施を図るとともに、産地の収益力向上のため、農産物処理加工施設等の整備、リース方式による園芸施設の導入、植物工場の普及・拡大を通じた施設園芸の高度化等を推進しました。

また、輸入急増や異常気象への対応に必

要な共同利用施設の整備等の推進や高温等の被害を受けた園芸産地に対し、次期作の安定生産に向け、効果の高い被覆資材や高温抑制型温室の導入等を支援しました。(8)果樹

消費者の求める高品質な国産果実の安定供給体制の確立のため、果樹産地構造改革計画に基づき優良品目・品種への転換等の取組を行う担い手への支援を推進するとともに、うんしゅうみかんとりんごを対象に需給安定対策等を実施しました。

また、輸入急増や異常気象への対応として、(7)の野菜に対する施策と同様の支援をしました。(9)畜産物

国産畜産物の競争力強化に向け、担い手の育成・確保のための産地リーダーの養成、生産・経営技術の指導、産肉・泌乳能力等の高い種畜の選抜・利用及び繁殖性の改善指導、高能力家畜への更新促進、新しい飼養管理技術の普及、流通の合理化、国産チーズの供給拡大・高付加価値化等を推進しました。(10)甘味資源作物

てん菜については直播栽培体系の確立・普及や家畜ふん尿等の未利用資源の活用等による肥料等に過度に依存しない持続的な畑作体制の確立を推進しました。

さとうきびについては、農作業受委託の活用や機械化一貫体系の確立を推進しました。(11)茶

産地の生産性向上と収益性確保のため、特色ある品種への改植、荒茶加工施設や仕上茶加工施設等の整備及び再編利用の取組を推進するほか、リーフ茶の需要喚起のため、生産者と茶商工業者等の連携体制の構築や新商品開発等の取組を推進しました。(12)飼料作物等

高収量・高品質な稲発酵粗飼料等の利活用の推進や草地基盤整備、放牧の推進、国産粗飼料の広域流通、飼料用米の利活用、

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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飼料生産の組織化・外部化及び飼料生産組織の経営高度化等の取組を推進しました。(13)その他地域特産物等

こんにゃくいも、雑豆等の特産農産物については、付加価値の創出、新規用途開拓、機械化・省力作業体系の導入等を推進しました。

また、繭・生糸については、養蚕・製糸業と絹織物業者等が提携し、高品質な純国産絹製品づくりを推進しました。

さらに、葉たばこについては、葉たばこ審議会の意見を尊重した種類別・品種別価格により、日本たばこ産業 ( 株 ) が買入れしました。

加えて、いぐさ・畳表については、いぐさ・畳表産地と畳製造事業者等が提携した付加価値の高い畳製品づくりの推進及び国産畳表の価格下落影響緩和対策を講じました。

Ⅱ 食料の安定供給の確保に関する  施策

1 食の安全と消費者の信頼の確保(1)食品の安全性の向上

ア リスク分析に基づいた食の安全確保(ア)食品安全委員会において、厚生労

働 省、 農 林 水 産 省 等 か ら 要 請 を 受け、または自らの判断により、科学的 知 見 に 基 づ き、 客 観 的 か つ 中 立公正に食品健康影響評価(リスク評価)を実施しました。

(イ)リスク管理を一貫した考え方で行うための標準手順書に基づいた情報の収集・分析、科学的・統一的な枠組みのもとでの有害化学物質・有害微生物の調査や生産資材の試験等を実施しました。

  また、安全性向上に活用するための試験研究や調査結果の科学的解析に基づき施策・措置について企画や立案を行いました。

(ウ)食品中に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の周知に努めるとともに、制度導入時に残留基準を設定した農薬等についての、食品健康影響評価結果を踏まえた残留基準の見直し、新たに登録等の申請があった農薬等についての残留基準の設定を推進しました。

(エ)食品の安全性等に関する国際基準の策定作業への積極的な参画や、国内における情報提供や意見交換を実施しました。

イ リスクコミュニケーションの推進(ア)食品安全委員会は、リスク評価結

果等について、消費者、事業者、生産者等の関係者による情報共有を図るために、ホームページ等を通じた正確かつわかりやすい情報提供や関係行政機関と連携した意見交換会、意 見・ 情 報 の 募 集 等 を 実 施 し ま した。

(イ)消費者庁は、食の安全・安心を確保 す る た め の 施 策 に つ い て、 消 費者・事業者等との意見交換会を開催するとともに、安全啓発資料等の作成及びこれらを活用した講座を全国20箇所で実施しました。

(ウ)厚生労働省は、食品の安全性確保に関する施策等について、消費者、事業者、生産者等の関係者に対する説明・意見聴取のため、関係府省や地 方 公 共 団 体 と 連 携 し た 意 見 交 換会、施策の実施状況の公表、ホームページを通じた情報提供、意見・情報の募集等を実施しました。

(エ)農林水産省は、食品の安全確保に関する施策等の策定に国民の意見を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、消費者、生産者、事業者等の関係者に正確かつわかりやすい情報を積極的に提供するとともに意見交換を実施しました。

435

第2部

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ウ 危機管理体制の整備食品の摂取による人の健康への重大

な被害が拡大することを防止するため、消費者庁を中心とした関係府省庁の消費者安全情報総括官による情報の集約及び共有に努めるとともに、消費者の生命または身体に生ずる被害に関する緊急事態等における対応体制を点検、改善しました。

エ 研究開発の推進(ア)食品の安全を確保するための各種

調査研究を推進しました。また、食品の汚染物質への暴露状況の詳細な把握を通じてリスク低減方策を検討しました。

(イ)食品の加工・流通の高度化、国際化等により多様化する危害要因について、生産から流通・加工段階にわたる体系的なリスク低減技術の開発を推進しました。

(ウ)鳥インフルエンザ、BSE 等の診断・防疫措置の迅速化、効率化等を図る技術の開発を推進しました。

オ リスク評価機関の機能強化について食品の安全性の向上を図るため、リ

スク評価機関の機能強化について推進しました。

(2)フードチェーンにおける取組の拡大ア 生産段階における取組(ア)農業生産工程管理(GAP)の導入・

推進GAP の導入を支援するとともに、

取組内容の高度化を図るため高度な取組内容を含む GAP の共通基盤部分に関するガイドラインを策定し、そ れ を 活 用 し た 取 組 を 推 進 し ま した。

(イ)生産資材の適正な使用農薬、肥料、飼料・飼料添加物、

動物用医薬品の適正使用や、科学的デ ー タ に 基 づ く 生 産 資 材 の 使 用 基準、有害化学物質等の残留基準値の

設定・見直し等のリスク管理措置等を的確に行い、安全な農畜水産物の安定供給を確保しました。

イ 製造段階における取組(ア)食品製造事業者の中小規模層にお

ける危害分析・重要管理点(HACCP)手法の導入を加速化するため、「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時設置法」による長期低利融資を行うとともに、低コスト導入手法の構築・普及、専門家からの助言・指導が受けられる体制の構築、現場責任者・指導者養成のための実践的な研修の取組を支援しました。

   ま た、HACCP 手 法 の 導 入 が 困 難な零細規模層に対して一般的衛生管理を徹底させるための基礎的な研修等の取組を支援しました。

(イ)食品等事業者に対する監視指導や事業者による自主的な衛生管理を推進しました。また、食品衛生監視員の資質向上や検査施設の充実等を推進しました。

(ウ)長い食経験を考慮し使用が認められている既存添加物については、毒性試験等を実施し、安全性を検討しました。また、国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている食品添加物については、国が主体的に指定に向けて検討しました。

(エ)いわゆる健康食品について、制度の普及・啓発に取り組むとともに、健 康 食 品 等 を 取 り 扱 う 事 業 者 に よる自主的な安全確保に取り組みました。

(オ)特定危険部位(SRM)の除去・焼却、BSE 検査の実施等により、食肉の安全を確保しました。

ウ 輸入に関する取組輸入食品の安全性の確保は重要な課

題となっており、国民の関心も極めて高いことから、輸出国政府との二国間

436

平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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協議や在外公館を通じた現地調査等の実施、情報等の入手のための関係府省との連携の推進、監視体制の強化等により、輸入食品の安全性の確保を図りました。

エ 流通段階における取組食品事故発生時の回収や原因究明等

の迅速化に資するため、食品の移動の追跡・遡及の備えとするトレーサビリティに関し、米穀等については、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(22 年10 月施行)により取引等の際の記録の作成・保存の義務化を内容とするトレーサビリティ制度を実施しました。これと併せ、他の飲食料品について、農業者の取組に関する情報収集を行いま し た。 さ ら に、 国 産 牛 肉 に つ い ては、制度の適正な実施が確保されるよう DNA 分析技術を活用した監視等を実施しました。

(3)食品に対する消費者の信頼の確保ア 食品や農林水産分野における標準化

の推進事業者や消費者の多様なニーズにこ

たえられるよう、JAS 規格の制定と見直しの手続きの透明化を進めました。

また、食品の品質管理や消費者の信頼確保等に意欲的に取り組む食品産業事業者と関連事業者との情報の共有を進めるとともに、既存の JAS 規格の見直しや、規格への新たなニーズについて調査を行いました。

イ 食品表示の適正化の推進DNA 分析等科学的手法を活用した

食品表示の真正性の確認を行うことにより、食品表示について国(食品表示Gメン)による監視を徹底するとともに、消費者の協力を得て表示の監視を行う食品表示ウォッチャー制度や食品産業事業者に対する表示指導の強化等に取り組むことにより、食品表示の一

層の適正化に努めました。ウ 原料の原産地表示の推進

加工食品における原料原産地表示の義務付けの着実な拡大に向けて取り組んだほか、食品産業のうち、原産地表示のためのガイドラインにより自主的な原料原産地表示を進めようとする業界の事業者に対し、消費者の「食」への信頼確保を図っていくため、アドバイザーの育成等に取り組みました。

エ フード・コミュニケーション・プロジェクトの推進

食への信頼向上に向けた食品産業事業者の主体的な活動を促すため、食品の品質管理や消費者対応等の取組に関する情報の積極的な提供を働きかけるとともに、この取組が取引先や消費者により適正に評価される機会を増大させました。

オ 消費者への情報提供食品安全等について、消費者にわか

りやすく、親しみやすいホームページを作成しました。また、「消費者の部屋」等において、消費者からの相談を受付けるとともに、特別展示等を開催し、農林水産行政や食生活に関する情報を幅広く提供しました。

カ 研究開発の推進食品・農産物の原産地、生産履歴情

報、品種・系統等の判別技術の開発を推進しました。

2 国産農作物を軸とした食と農の結び付きの強化

(1)国民との結び付きの強化ア 食料自給率向上に向けた国民運動の

推進食 料 自 給 率 向 上 に 向 け た 国 民 運 動

「フード・アクション・ニッポン」の推進を通じて、食料自給率向上に資する具体的な行動を喚起しました。推進パートナー企業の拡大や連携の強化、

437

第2部

Page 67: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

米粉の消費拡大等に重点的に取り組みました。

イ 国産農産物の消費拡大の促進(ア)食料自給率向上のため、食品産業

等と連携し、朝食欠食の改善や米飯学校給食の推進に取り組みました。

  また、ごはん食の弁当をテーマとした新市場開拓の取組や、医師や病院栄養士等の専門家を通じて健康面からごはん食の効用をわかりやすく発信する取組を支援しました。

(イ)食料自給率向上に向けた国民運動「フ ー ド・ ア ク シ ョ ン・ ニ ッ ポ ン」の活動の一環として「米粉倶楽部」の取組を展開し、様々な企業・団体等が米粉の消費拡大のための活動をしていくことで、米粉の認知拡大と消費の増大を図りました。

(ウ)「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」(21 年7月施行)に基づき、米粉用米、飼料用米の利用促進を図るため、生産・流通・加工・販 売 の 各 関 係 者 に よ る 連 携 を 前 提に、米粉用米、飼料用米の生産拡大や必要な機械・施設の整備等を総合的に支援しました。

(エ) 麦や大豆等の生産拡大を図るため、 パ ン や 中 華 め ん 等 の 用 途 に きめ細かく対応した専用品種の作付けや、地域の食品製造業者と連携した特色のある製品づくりを推進し、需要の拡大を図りました。また、野菜や果実の摂取増加等について、出前授業等の取組を支援しました。

ウ 食品ロスの削減に向けた取組食品廃棄物の発生抑制に向けた課題

と対応方向について取りまとめを行うとともに、食品産業事業者向けの説明会を開催しました。

また、フードバンクの活動体制の整備を支援しました。

エ 国民運動としての食育の推進食育推進基本計画等に基づき、関係

府省が連携しつつ、様々な分野において国民運動として食育を推進しました。

また、子どもの望ましい基本的な生活習慣を育成し生活リズムの向上を図るための「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進しました。

オ 生産から消費までの段階を通じた食育の推進

(ア)「食事バランスガイド」を活用した日本型食生活の実践を推進するため、食育実践活動に使用する指導者向 け 教 材 集 等 を 作 成 し ま し た。 また、広域的、先進的であって、全国へ波及効果が期待できる活動等に対し支援しました。

(イ)食や農への理解を深めるための教育ファームが全国で幅広く継続的に展開されるよう、地域における教育ファームの運営、教育ファーム推進計画作成に向けた検討、市町村等協議会の運営に対して支援しました。

カ 学校における食育の推進栄養教諭が中核となって家庭や地域

との連携を図りながら食育を推進するための実践的取組の展開、推進体制の整備等への支援等を実施しました。

また、学校給食における地場産物の活用を促進するための調査研究、学校給食における衛生管理の充実のための事業等を実施しました。

キ 食育推進基本計画の見直しこれまでの食育推進の成果と食をめ

ぐる諸課題を踏まえ、生涯にわたって間断なく食育を推進する「生涯食育社会」の構築を目指すとともに、食をめぐる諸課題の解決に資するよう食育を推進していくことを定めた、「第2次食育推進基本計画」を 23 年3月に食育推進会議において決定しました。

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 68: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(2)地産地消の推進ア 幅広い者の主体的な地産地消の取組

を一層推進するため、地産地消活動の優良事例や、地場産物を積極的に活用し た 料 理 等 の 優 良 事 例 に つ い て、 調査・分析を行うとともに、その成果の普及を行いました。

イ 講習会の実施や地産地消のさらなる発展に活躍が期待されるコーディネーターの選定、派遣等により、地産地消に取り組む人材の育成・確保を促進するとともに成功事例のノウハウ等を普及しました。

ウ 地産地消の取組の核となる農産物直売所や処理加工施設等の整備を支援しました。

エ 地産地消活動の収益力向上のため、市町村、生産者団体、学校給食等の関係者が参画した協議会活動等や、販売企画力、生産技術力、人材育成力の強化、農産物直売所のネットワーク化等を支援しました。

オ 学校給食における地場農畜産物の利用を拡大するため、生産者と学校給食関係者との連携活動に対する助成、地場産物の利用を拡大したメニューの開発・原材料費の助成等を行いました。

カ 「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」に基づき、地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針を策定しました。

3 食品産業の持続的な発展と新たな展開(1)フードチェーンにおける連携した取

組の推進ア 食品流通の効率化・高度化(ア)食品流通の効率化

食品産業の強化と農林水産業の振興を図るため、フードチェーンの各段階における関係者が連携して行う輸送行程の効率化等に関する取組の

調査を実施しました。(イ)卸売市場の機能・連携強化等

安全で効率的な卸売市場システムを確立するため、コールドチェーン体制づくりの支援等を通じた品質管理の高度化、卸売市場の再編を推進しました。

(ウ)食品小売業の活性化食品販売機能の強化や販売商品の

付 加 価 値 創 出 に か か る 事 例 の 調 査や、 そ の 結 果 の 取 り ま と め を 通 じて、食料品小売店の機能を維持・強化する方策の策定を支援しました。

イ フードチェーンにおける取引情報の標準化の推進

食 品 産 業 の 持 続 的 な 発 展 を 図 る ため、食品事業者や関係事業者と協働して、フードチェーンにおいて関係者間で伝達が必要な事項の共通化の取組を推進しました。

ウ 高齢化の進展等に対応した食料提供民間事業者等による多様な配達サー

ビスの健全な発展等を通じ、消費者への食料品の円滑な提供を図る観点から、必要な調査研究を実施しました。

(2)国内市場の活性化ア 農商工連携や地域食品のブランド化

等の推進(ア) 農商工等連携の一層の推進のた

め、専門的なアドバイスを行うコーディネーター活動や様々な異業種とも連携した新商品開発や輸出促進も含めた販路拡大、人材育成、これらの本格的な事業化を促進するため、農林漁業者と食品産業事業者が安定的な取引関係を確立して行う食品の加工・販売施設や農林漁業用機械施設の整備等を支援しました。また、交流会の開催や情報発信等を通じて外食・中食産業と農業の連携を促進しました。

(イ)加工・業務用需要に対応した国産

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第2部

Page 69: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

原材料の安定的な供給連鎖(サプライチェーン)の構築に向け、生産者・中間業者・食品製造業者等による一体的な取組を支援しました。

(ウ)地域の農水産物を利用した機能性食品の開発を推進するとともに、地域食品にかかる機能性評価手法に関する研修や普及、地域食品の開発に必要な技術的情報を収集・提供する取組を推進しました。

(エ)食品産業の競争力の強化のため、競争的資金を活用して技術開発を促進するとともに、異業種・異分野間を含めた産学官の連携形成等の取組を支援しました。

(オ)地域食品のブランド化を推進するため、ブランド化に取り組む事業者等を対象とした研修会の開催、ブランドアドバイザーの派遣等の取組を推進しました。

(カ) 国産農林水産物を活用した新商品・メニューの開発や、当該新商品・メニューの販路拡大を核とした地域の交流の取組を支援しました。

(キ)農林漁業者等による農山漁村の6次産業化を推進するため、6次産業化に取り組む農林漁業者等をサポート す る 人 材 の 育 成 に 取 り 組 み ま した。

イ 食品産業における環境負荷の低減及び資源の有効利用

(ア)食品廃棄物の削減及び有効利用促進対策

食品リサイクル・ループ等の地域資源循環システムの構築、技術の改良による食品廃棄物の新規用途開発に向けた事業化の支援等食品廃棄物の削減及び有効利用のための取組を促進しました。

(イ)容器包装リサイクル促進対策「容器包装に係る分別収集及び再

商品化の促進等に関する法律」に基

づく義務履行の促進、容器包装廃棄物の排出抑制のための取組として、食品関連事業者への点検指導、食品小売事業者からの定期報告及び容器包装リサイクル法にかかる事業者へのコンプライアンス(法令の遵守及び倫理の保持等)向上のための研修会等を実施しました。

(ウ)CO2 排出削減対策食 品 産 業 に お け る CO2 排 出 削 減

の取組を推進するため、研修会の開催、業種特性に応じた排出抑制手法の提示、優良な取組の普及、自主行動計画の進捗状況の点検等を実施しました。

ウ 食品関係事業者のコンプライアンスの確立のための取組

食品関係事業者の自主的な企業行動規範等の策定を促すなど食品関係事業者のコンプライアンス確立のための各種取組を全国各地における研修会の実施を通じて促進しました。

(3)海外展開による事業基盤の強化アジア等における日本の食文化の発信の

強化と連携した形で食品製造業・流通業の現地生産・販売の取組等を促進するため、現地生産・販売に必要な情報の収集・提供、現地での連絡協議会の開催、技術的課題の解決等を支援しました。

4 総合的な食料安全保障の確立不測時のみならず、平素から食料の供給

面、需要面、食料の物理的な入手可能性を考慮するアクセス面等を総合的に考慮し、関係府省との連携を検討しつつ、総合的な食料安全保障を確立するため、食料の安定供給に影響を与える可能性がある様々なリスクについて分析・評価、対応策の検討・実施を恒常的に進める手法を導入しました。

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 70: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(1)生産資材の確保等生産面における不安要因への対応

ア 肥料の供給安定化対策肥料供給の安定化のため、海外原料

の安定確保や国内の有機資源の有効利用に向けた取組を支援するとともに、土壌診断や診断結果に基づく施肥設計の見直しによる施肥量の適正化・抑制を推進しました。

イ 遺伝資源の収集・保存・提供機能の強化

食 料 の 安 定 供 給 に 資 す る 品 種 の 育成・改良に貢献するため、農業生物資源ジーンバンクにおいて、収集した遺伝 資 源 を 基 に、 幅 広 い 遺 伝 変 異 を カバーしたコアコレクションの整備を進め、植物・微生物・動物遺伝資源のさらなる充実と利用者への提供を促進しました。

ウ 動植物防疫体制の強化(ア)家畜防疫体制の強化

世界各国における口蹄疫・高病原性鳥インフルエンザ等の発生等を踏まえ、国内における家畜の伝染性疾病の発生予防及びまん延防止、発生時の危機管理体制の整備等を実施しました。

(イ)輸入検疫体制の強化防疫官の適切な配置等検査体制の

整備・強化や、病害虫の危険度評価に基づいた検疫措置等により、家畜及び水産動物の伝染性疾病及び病害虫の侵入・まん延を防止しました。また、政府が輸入する米麦について残留農薬等の検査を実施しました。

(ウ)産業動物獣医師の育成 ・ 確保獣医系大学の学生への臨床研修等

の 実 施 に よ る 産 業 動 物 獣 医 師 の 育成・確保の支援と、無獣医師地域等における獣医療の提供を支援しました。

(2)流通・消費面における不安要因への対応

ア 食のライフラインの確保新型感染症発生時等における食品産

業事業者等の事業継続計画の策定を促進するとともに、その効率化のための情 報 収 集 及 び 提 供 を 行 い ま し た。 また、家庭における食料品の備蓄を推進しました。

イ 適切な備蓄の実施(ア)米

米穀について、22 年6月末時点で現行の適正備蓄水準として、98万tの在庫量を保有しました。

(イ)麦海外依存度の高い小麦について、

港湾スト等により輸入が途絶した場合に備え、外国産食糧用小麦需要量の 1.8 か月相当分の政府備蓄を実施しました。

(ウ)大豆海外依存度の高い大豆について、

輸出国における災害、港湾スト等の不測時に対応するため、食品用大豆の年間需要の約2週間分の政府備蓄を実施しました。

(エ)飼料穀物海外依存度の高い飼料原料につい

て、天災等による輸送ルートにおける障害等、不測の事態に対応するため、 と う も ろ こ し・ こ う り ゃ ん を60 万t備蓄しました。

ウ 備蓄の在り方の検討「主要食糧の需給及び価格の安定に

関する法律」において、米・麦の供給が不足する事態に備えるための措置として米・麦の備蓄が位置付けられていることを十分に踏まえ、消費者・実需者への安定的な供給を確保することを旨として、備蓄の在り方を検討し、米穀については棚上備蓄方式に、麦については民間備蓄に移行することとしま

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第2部

Page 71: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

した。(3)国際的な食料の供給不安要因への対

応ア 国際食料需給・価格動向分析等(ア)国際食料需給・価格動向分析

省内外において収集した国際的な食料需給にかかる情報を一元的に集約するとともに、我が国独自の短期的な需給変動要因の分析や、中長期の需給見通しを策定し、これらを国民にわかりやすく発信しました。また、世界の超長期食料需給予測を行うためのシステムの研究・開発に取り組みました。

(イ)農産物の安定的な輸入の確保穀物の輸入先国との緊密な情報交

換を通じ、安定的な輸入を確保しました。

(ウ)商品先物市場の透明性の向上各国規制当局と商品先物市場の監

督上必要な情報を交換する枠組みの強化を進めるとともに、我が国の商品先物市場における公正な取引を確保していくための監視体制を強化しました。

(エ)国際港湾の機能強化食糧等を安定的かつ安価な供給を

目的とする「国際バルク戦略港湾」の選定に向けた取組みを推進しました。 ま た、 国 際 海 上 コ ン テ ナ タ ーミナル、国際物流ターミナルの整備等、国際港湾の機能強化を推進しました。

イ 国際協力の推進(ア)世界の食料安全保障にかかる国際

会議への参画ア ジ ア 太 平 洋 経 済 協 力(APEC)

として初めての食料安全保障担当大臣会合(22 年 10 月)を我が国で開催し、食料安全保障について APECと し て 目 指 す べ き 共 通 目 標 を 定 めた「APEC 食料安全保障に関する新

潟宣言」と、共通目標の実現のための 具 体 的 な 行 動 を 定 め た「行 動 計画」を採択しました。このほか、第2回 ASEAN+3 食料安全保障の協力戦略に関するラウンドテーブル会合

(22 年 5 月 ) の 主 催、 ま た、G8 ムスコカ・サミット(22 年6月)、国連ミレニアム開発目標サミット(22年9月)、FAO アジア・太平洋地域総会(22 年9月)、FAO 世界食料安全保障委員会(22 年 10 月)、第 10回 ASEAN+3 農 林 大 臣 会 合(22 年11 月)、第3回ベルリン農業大臣サミット(23 年1月) 等の国際会議に参画し、世界の食料生産の促進と農業投資の増大の重要性を主張するなど、世界の食料生産の増大に向けた国際的な取組を推進しました。

(イ)食料・農業分野における技術・資金協力

世界の貧困削減・飢餓撲滅に貢献すべく、食料・農業分野における国際協力を実施しました。a 援助需要を的確に反映した国別

援助計画を策定しました。b 開発途上国からの要請に応じ、

技術協力及び資金協力を実施しました。

c 開発途上国における食料安全保障 の 確 保 や 地 球 環 境 問 題 へ の 対応、農業交渉等における我が国の主張への理解等を図るため、研修員の受入れ、専門家の派遣及び国際機関への資金拠出等を実施しました。

(ウ)国際的な食料の安定供給の確保に向けた支援策の強化a  東 ア ジ ア 地 域 に お け る 大 規 模

災 害 等 の 緊 急 時 に 備 え る た め の米 の 備 蓄 の 造 成 等 を 内 容 と す る

「ASEAN+3 緊急米備蓄」の実現等に努力しました。

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 72: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

b ASEAN 地 域 の 食 料 安 全 保 障 の強化を図るため、域内各国の統計情報等の整備への支援を強化しました。

c 世界の穀物需給の安定に貢献するため、乾燥・塩害等の不良環境に強い遺伝子を活用した小麦・稲等を開発するための国際共同研究を推進しました。

d アフリカの食料安全保障に貢献するため、米生産倍増に加え豆類の増産支援を開始しました。

ウ 海外農業投資の支援海外農業投資を支援するため、関係

府省・機関により構成される「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」において取りまとめた「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」(21 年8月)に基づき、民間企業からの総合的な支援の要望への対応等を実施しました。

この一環として、FAO への拠出により、世界的な農業投資情報の一元化や農業投資促進のための政策ガイダンス作り等の作業を進めました。

また、22 年4月に米国、 アフリカ連合等とともに、国際機関による責任ある行動原則の策定を促進するための会合を開催するなど、国際的な行動原則の策定を支援するとともに、G8 ムスコカ・サミット(22 年6月)、FAO世 界 食 料 安 全 保 障 委 員 会(22 年 10月)、APEC 食料安全保障担当大臣会合

(22 年 10 月)等の国際会議への参加や主催を通じて、国際機関による行動原則の策定等に向けた取組を支持することが合意されました。

5 輸入国としての食料安定供給の重要性を踏まえた国際交渉への対応

(1)WTO 交渉における取組「多様な農業の共存」という基本理念の

もと、各国の農業が発展することができるような貿易ルールの確立に向け、関係国等と連携を図りつつ、政府一体となって戦略的かつ前向きに対応しました。

具体的には、23 年1月にスイスのダボスで開催された WTO 非公式会合等の場において、G10(食料輸入国で構成するグループ)諸国と連携を図りつつ、我が国の食料輸入国としての立場を主張しました。(2)EPA(経済連携協定) / FTA(自由

貿易協定)への取組等センシティブ品目に配慮しながら交渉

を 行 っ た 結 果、22 年 11 月 に は 日 ペ ル ーEPA 交渉を完了し、23 年2月には日インド EPA の署名及び日メキシコ EPA 再協議の実質合意を行いました。

22 年 11 月に「包括的経済連携に関する基本方針」が閣議決定されたことを受け、

「高いレベルの経済連携」の推進に取り組みつつ、新しい農政への転換を検討するため、「食と農林漁業の再生実現会議」を設置しました。

基本方針のもとでは、23 年2月に日カナダ EPA の可能性に関する共同研究の開始に合意し、3 月に第 1 回目の共同研究を実施するとともに、 同月には日モンゴルEPA 官民共同研究を終了しました。

なお、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、情報収集等のための協議を関係国と行いました。

Ⅲ 農業の持続的な発展に関する施策

1 戸別所得補償制度の創設と生産・経営関係施策の再整理

(1)戸別所得補償のモデル対策と米の需給調整

ア 水田におけるモデル対策の実施水田農業の経営を安定させ、自給率

向上に取り組む環境をつくっていくため、

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第2部

Page 73: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(ア)水田を有効活用して、麦・大豆・米粉用米・飼料用米等の戦略作物の生産に対して、主食用米並みの所得を確保し得る額を直接支払いにより交付する「水田利活用自給力向上事業」

(イ)米の生産数量目標に即した生産を行う販売農家・集落営農に対して、米の所得補償を直接支払いにより交付 す る「米 戸 別 所 得 補 償 モ デ ル 事業」

の2つの対策を一体的に講じました。イ 米の需給調整の推進

主食用米の需要は、人口の減少や高齢化の進展等により今後も減少していくことが見込まれるため、引き続き需給調整を図ることが必要との観点から、年度ごとに需要実績等に基づき生産数量目標を策定・配分し、需要に応じた米の供給を推進しました。

22 年度についても、上記の考え方を基本に、翌年産米の生産数量目標を設定しました。

(2)戸別所得補償制度の本格実施に向けた検討

戸別所得補償制度の本格実施に当たっては、水田におけるモデル対策の実施状況を踏まえて恒常的に販売価格が生産費を下回っている米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたねの土地利用型作物を対象に制度設計を行いました。この中には、①品質加算、②規模拡大加算、③再生利用加算、④緑肥輪作加算、⑤集落営農の法人化支援等の各種加算措置等が盛り込まれました。(3) 生産・経営関係施策の実施及び再整

理ア 水田・畑作経営所得安定対策の実施

水 田 作 及 び 畑 作 の 土 地 利 用 型 農 業を営む農業者の経営安定を図るため、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょを対象として、「水田・畑

作経営所得安定対策」 を実施しました。

イ 野菜関係対策の実施野菜農業の健全な発展と国民消費生

活の安定に資するため、主要な野菜について、その価格の著しい低落があった場合における生産者補給金の交付及び締結契約に基づく交付金の交付等を行う「野菜価格安定対策」を実施しました。

ウ 果樹関係対策の実施消費者の求める高品質な国産果実の

安定供給体制の確立のため、果樹産地構造改革計画に基づき優良品目・品種への転換等の取組を行う担い手への支援を推進するとともに、うんしゅうみかんとりんごを対象に需給安定対策等を実施しました。

エ 砂糖及びでん粉関係対策の実施「砂糖及びでん粉の価格調整に関す

る法律」に基づき、砂糖及びでん粉の価格調整制度を適切に運用しました。

また、さとうきび・でん粉原料用かんしょの生産者及び国内産糖・国内産いもでん粉製造事業者に対して、経営安 定 の た め の 支 援 を 実 施 し、 国 内 産糖・いもでん粉工場の食品安全・環境対策を推進しました。

オ 畜産物関係対策の実施(ア)加工原料乳の再生産と肉用子牛生

産の安定を図るため、加工原料乳生産者補給金制度、肉用子牛生産者補給金制度を適正に運用しました。

(イ)指定食肉(牛肉・豚肉)の価格安定を図るため、「畜産物の価格安定に関する法律」を適正に運用しました。

(ウ)上記のほか、a 酪農関係では、国産チーズの供給

拡大・高付加価値化の推進に加え、生 乳 需 給 が 緩 和 し て い る 状 況 の なか、チーズや生クリーム等の需要創

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 74: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

出を緊急的に支援する対策の措置b 肉用牛関係では、①肉用子牛対策

として、補給金制度を補完する2段階の事業について、全国一本のシンプルな仕組みに統合するなどの見直し、②肉用牛肥育対策として、マルキンと補完マルキンを統合するとともに、補てん金の算定方法を全国一本化するなどの見直し

c 養豚関係では、①各都道府県独自の基準で実施していた既存事業につい て、 基 準 の 一 本 化 を 図 る と と もに、国の負担を引き上げるなどの見直し、②生産者への直接交付方式のモデル実施

d 養鶏関係では、卵価安定基金における補てん準備金の造成に対する一部助成に加え、成鶏のとう汰・更新等緊急的な鶏卵の需給安定対策の措置等、畜産農家等の経営安定対策の強化を図りました。

カ  水田・畑作経営所得安定対策等の見直し

戸 別 所 得 補 償 制 度 の 導 入 に あ わ せて、既存の水田・畑作経営所得安定対策 と の 関 係 を 検 証・ 整 理 す る と と もに、政策目的と政策手段の対応関係を明確にする観点から、米の生産調整の達成を認定農業者制度の要件から削除しました。

キ 作目別各種生産振興施策の改善これまで作目別に実施されてきた各

種生産振興施策について、作目ごとに克服すべき課題について、解決に向けた対策を講じつつ、作目を問わず必要と さ れ る 施 策 に つ い て は、 メ ニ ュ ー化・統合化を進めるなど、国民にとってわかりやすく、使いやすい施策にしていくための改善を図りました。

2 農業・農村の6次産業化等による所得の増大

(1)生産・加工・販売の一体化農林漁業者等による6次産業化を推進す

るため、農林漁業者等が農林水産物等の生産に加え、加工や販売を一体的に行う取組や当該取組に資する研究開発とその成果を利用する取組に対して、金融上の支援等を行う制度を創設しました。(2)産地の戦略的取組の推進

産地単位での生産力の強化や加工・販売への取組を通じて、産地の収益力を高め、その持続的発展を図るため、生産・販売戦略を産地単位で作成することを推進し、それに基づき実施される産地機能の中核となる基幹施設の整備や機械・設備の導入、技術導入、販売企画力の強化、産地間連携の促進、地域ブランドの確立等に向けた取組に対して重点的に支援しました。また、産地の収益力を向上させる取組について、その効果を最大限に発揮させるため、普及指導員等を中核として新技術、経営、販売、加工等の多様な外部専門家が一体となって支援する体制の構築を推進しました。(3)収益性の高い部門の育成・強化

ア 農業所得の増大を図り、農地を有効に利用していくうえで、収益性の高い非食用作物についても育成・強化を図りました。特に、世界第3位の産出額を有する花きについては、22 年4月に策定した花き産業振興方針を踏まえ、教育効果の高い花育活動の推進等による需要拡大や、生販連携を通じた日持ち保証販売の推進等により輸入品に対する競争力を強化する取組を進めました。

イ 農産物が有する多彩な物質を生成する機能等を活かした新たな産業の創出に向けて、新たな食品素材や工業原料等になり得る機能性成分をもつ農産物の開発・発掘、製品化に向けた産地と企業のマッチング等を支援しました。

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第2部

Page 75: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

ウ 高度な環境制御により計画生産・出荷を可能とする植物工場の普及に向けて、23 年度末までに、 省エネ化、 自動化等を通じて生産コストの3割縮減を 図 り、21 年 時 点 で 全 国 50 か 所 程度で稼働している設置数の3倍増を目標として取り組みました。

(4) 農林水産物・食品の総合的な輸出促進

「新成長戦略」(22 年6月閣議決定)において、我が国の農林水産物・食品の輸出額を 29 年までに1兆円水準とする目標を掲げ、以下の輸出促進の取組を推進しました。

ア 海外販売促進活動、海外市場調査等の取組や、海外においてマッチング商談会を設定する事業者の取組を支援

イ 輸出に取り組む産地が直面する共通の課題に対する解決策の提示

ウ 輸出の課題に対して高い知見・ノウハウを有する者のネットワーク構築

エ 海外で開催される国際見本市へのジャパンパビリオン設置、海外の新興市場における日本産農林水産物・食品の販売拠点設置

オ 在外公館等を活用した日本食イベント「WASHOKU-Try Japan's Good Food」の実施による日本食・日本食材や日本食文化の普及

カ 輸出農産物の品種を DNA レベルで識別する技術の開発等による権利保護支援

キ 海外外食事業者向け日本産食材輸出促進の支援

ク 輸出振興に資する生産・流通・加工技術の開発の促進

ケ 「農林水産知的財産保護コンソーシアム」や「東アジア植物品種保護フォーラム」の活動等を通じた知的財産の保護の強化

コ ( 独 ) 日 本 貿 易 振 興 機 構(JETRO)による貿易相談業務、海外市場調査、

地域における輸出の取組への支援等を通じた海外販路開拓の支援

また、22 年 12 月、中国農業発展集団(中国国営企業)と農林水産省との間で、日本産農林水産物・食品の中国輸出増加等を内容とする覚書に署名しました。(5)農業生産資材費の縮減等

ア 農業生産資材費の縮減(ア)肥料、飼料、農薬、農業機械等の

農業生産資材費の縮減に向け、単肥や 単 肥 を 混 合 し た 配 合 肥 料、 エ コフィード等の低コスト飼料、大型包装農薬やジェネリック農薬、中古農業機械等の低コスト生産資材の活用を推進しました。

(イ)農業者の生産資材の効率的利用を促進するため、土壌・たい肥中の肥料成分を踏まえた施肥や局所施肥等による肥料利用効率の向上、総合的病害虫・雑草管理(IPM)の活用による農薬使用量の抑制、作期分散による農業機械稼働率の向上等を推進しました。

  また、これらの取組の推進に向け、都道府県や関係団体が策定している資材費低減のための行動計画の見直しを促進しました。

イ 飼料価格高騰対策配合飼料価格の大幅な変動に対応す

るための配合飼料価格安定制度を適切に運用し、国産飼料の増産や食品残さを飼料として利用する取組等を支援しました。

ウ 省エネルギー対策施設園芸用省エネルギー設備のリー

スやヒートポンプ、木質バイオマス利用加温設備等の先進的加温設備の導入に対する支援を実施しました。

446

平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 76: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

3 意欲ある多様な農業者による農業経営の推進

(1)意欲ある多様な農業者による農業経営の育成・確保

戸別所得補償制度の導入により、兼業農家や小規模経営を含む意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整備するとともに、新規就農者を幅広く確保し、農業経営の多角化・複合化等の6次産業化による付加価値の向上分を経営に取り入れる取組を推進しました。

また、現場の主体的判断を尊重した多様な努力・取組を支援するため、地域の関係機関が一体となった体制により、技術や経営能力の向上等を促進しました。

さらに、離農農家や負債をかかえる農家の経営資源の円滑な継承の在り方について検討を進めました。

ア 家族農業経営の育成・確保戸別所得補償モデル対策の実施に併

せ、地域農業の担い手の中心となる家族農業経営について、経営規模の拡大や農業経営の多角化・複合化等の6次産業化の取組による経営改善を促すこととし、その際、農業者の自主的な申請に基づき市町村等地域の関係機関が協力して地域農業の担い手を育成・確保する仕組みとして定着・普及している、認定農業者制度の活用を推進しました。

イ 集落営農の育成・確保地域農業の生産性向上、経営規模が

零細で後継者が不足している地域における農業生産活動の維持等を図るため、小規模な農家や兼業農家も参加した集落営農の育成・確保を推進しました。

具体的には、地域における新たな組織づくりに必要な合意形成を促進するとともに、地域の実情を勘案し、集落営 農 の 法 人 化 や 6 次 産 業 化、 地 域 農業・農地の維持等の取組を推進しまし

た。ウ 法人経営の育成・確保

農業経営を継続・発展させる意欲と能力を有する法人経営は、地域における雇用創出や農業生産活動の活性化、農地の保全と有効な活用に寄与していることから、その育成・確保を図りました。

具体的には、人材の育成、施設・機械の整備、資金調達の円滑化等を推進するとともに、法人化を目指す農業者や農業への参入を希望する会社、特定非営利活動法人/非営利団体(NPO)等に対する情報提供等の取組を促進しました。また、経営の多角化・複合化等の6次産業化の取組を促進しました。

(2)人材の育成・確保等ア 新たな人材の育成・確保(ア)就農形態の多様化に対応した若者

等の就農促進就農形態が多様化するなかで、農

内外からの意欲ある若者等の就農を促進するため、就農相談や就農希望者と農業法人等のマッチングを支援するとともに、農業法人等に雇用される形での就農を後押しするため、農業法人等での就業体験の推進や農業法人等で働きながら技術習得する実践的な研修(OJT 研修)の実施を支援しました。

また、新たに農業を始めたい者へは、無利子資金の貸付けのほか、農業機械や施設等の取得に対して初期投資の負担軽減を図る支援を行いました。

(イ)農業研修教育の充実青少年の成長段階に応じ、農業に

対する関心・理解を深め、将来の農業の担い手を育成していくため、小学校から就農後までの各段階における農業教育の取組への支援を実施し

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第2部

Page 77: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

ました。また、地域産業界や関係機関と連

携し、バイオテクノロジー等先端的な技術・技能を取り入れた教育等を行っている学校をスーパー専門高校と し て 指 定 す る 取 組 を 実 施 し ま した。

さらに、道府県農業大学校等での実践的な研修機会を充実するための体 制 整 備 や 施 設 整 備 を 支 援 し ま した。

(ウ)障害者の就労促進農業分野での障害者の就労を促進

するため、農業法人等における障害者就労の取組の実証や普及・啓発を実施しました。

(エ)農業分野における外国人研修・技能実習制度の適正な運営

外国人研修生・技能実習生の受入れに関し、その運営の適正化、「出入国管理及び難民認定法」の改正に伴う新たな制度への円滑な移行を図るため、地域の受入体制づくりの支援等を実施しました。

イ 農村を支える女性への支援と高齢農業者の活動の促進

(ア)政策・方針決定過程への女性の参画の促進

地域における方針決定の場への女性の参画を促進するため、農業協同組合の女性理事枠や農業委員における議会推薦枠の設定と活用の周知徹底、地域組織レベルでの女性登用状況の調査・公表、女性の登用が遅れている地域に対する重点的な推進活動等を実施しました。

(イ)女性の経済的地位の向上と女性が活動しやすい環境づくり

女性の経済的地位の向上と女性が活動しやすい環境整備を図るため、女性の起業活動の拡大に必要な、高度な経営感覚を身に付けるための研

修及び情報提供等の支援を実施しました。

(ウ)高齢農業者の活動の促進農村において高齢者が健康に生涯

現役で活躍できるよう医療関係者によ る 健 康 状 態 調 査 等 の 健 康 管 理 活動、地元農産物等を食材とした食事メニューや加工品の開発・普及、ヘルパーや配食活動等を行う農村女性グループの人材養成活動等を支援しました。

(3)作業を受託する組織の育成・確保農作業の外部化により、高齢化や担い手

不足が進行している生産現場の労働負担の軽減を図るとともに、規模拡大や主要部門への経営資源集中等を通じた経営発展を促進する観点から、 地域の実情を踏まえつつ、生産受託組織や酪農等のヘルパー組織の育成・確保を推進しました。(4)意欲ある多様な農業者による農業経

営の特性に応じた資金調達の円滑化意欲ある農業者が、それぞれの経営の発

展段階に応じ、 自らの創意工夫を活かした農業経営の発展を目指すことができるよう、資金調達の支援を図りました。この一環として、農業者の資金借入れの際の負担軽減や直接金融を含む民間資金の有効活用等を通じて、経営の特性に応じた資金調達の円滑化や多角化等を推進しました。

4 優良農地の確保と有効利用の促進農地制度については、21 年に、国内の

農業生産の基盤である農地の確保とその有効利用の徹底を図る観点から、農地法等を改正(21 年 12 月施行) し、22 年度はこの新たな農地制度の適切な運用に取り組みました。

また、農業生産を目的とする土地利用とそれ以外の土地利用とを一体的かつ総合的に行うことができる計画を、地域住民の意見を踏まえつつ策定する制度の検討を始めました。

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 78: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(1)計画的な土地利用の推進と転用規制の厳格化

新たな農地制度に基づく農地の転用規制の厳格化及び農業振興地域制度の充実と、これらの適切な運用に努め、農用地等の確保等に関する基本指針を変更(22 年6月)するなど、優良農地の確保に取り組みました。(2)意欲ある多様な農業者への農地集積

の推進市町村段階で農地の集積を仲介する農地

利用集積円滑化団体が行う農地の利用調整活動を支援しました。(3)耕作放棄地対策の推進

ア 耕作放棄地を早急に解消するため、改正農地法に基づく遊休農地解消のための仕組みの適正な運用等とあわせて、荒廃した耕作放棄地の再生利用を支援しました。

イ 耕畜連携の取組により、畑不作地への新規飼料作物作付けを推進しました。

ウ 改正農地法に基づき、現場で農地制度の運用を担う農業委員会が行う農地の利用状況調査、遊休農地所有者等への指導等の活動を推進しました。

(4)農地情報の利活用の推進農地の整備や利用の状況等を集約する農

地の地図情報の整備を各道府県単位で行いました。また、戸別所得補償制度をはじめ、耕作放棄地の発生抑制・再生利用対策、農業生産基盤の保全管理や整備等の各般の農業施策等における農地の地図情報の利活用を推進しました。

5 農業災害による損失の補てん災害による損失を補てんし、被災農業者

の経営安定を図ることにより、農業の再生産が阻害されることを防止するとともに、農業生産力の発展に資するため、都道府県及び農業共済団体に対し、農業災害補償制度の適切な運営推進と一層の加入の促進を

指導しました。降雪による園芸施設の倒壊等につき、迅

速かつ適切な損害評価の実施及び共済金の早期支払体制の確立等が図られるよう、農業共済団体を指導しました。また、口蹄疫の発生に伴い共済掛金の返還等を行うとともに、水稲の規格外米が多発した県について損害評価の特例措置を農業共済団体の申請に基づき行いました。

農業共済の共済掛金及び農業共済団体の事務費等に対する助成措置を講じました。

6 農作業安全対策の推進農作業の安全対策を強化するため、「農

作業事故防止活動確立事業」により、地域における効果的な事故防止活動の取組手法の整理を行いました。

また、行政機関や民間事業者等の関係者の協力のもと、春と秋に「農作業安全確認運動」を実施し、農業者の安全意識の向上を図ったほか、農作業事故情報の収集体制の強化、農業機械の安全対策に関する研究を進めました。

7 農業生産力強化に向けた農業生産基盤整備の抜本見直し農業生産基盤の保全管理と整備につい

て、より効果的・効率的に実施することが求められていることから、施策体系や事業の仕組み等の抜本的な見直しに着手しました。(1)国民の食料を支える基本インフラの

戦略的な保全管理ア 農業用水の安定供給の確保(ア)食料供給力の基盤となる農業用水

の安定供給を確保するため、農業水利施設の適切な整備・更新を進めました。

(イ)農業水利施設のライフサイクルコスト(建設・維持管理等にかかるすべての費用)の低減を図るため、既存 施 設 の 劣 化 状 況 や 規 模 に 応 じ た

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第2部

Page 79: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

保全管理を行うストックマネジメントについて、各種事業の推進と並行し、技術水準の向上を図る取組等を進めました。

(ウ)地域の特性に応じた多様な畑作物の生産、品質の向上、安定供給を図るため、畑地かんがい施設等を総合的に整備しました。

イ 農地等にかかる総合的な防災対策(ア)集中豪雨や台風等による農用地・

農業用施設の自然災害の発生を未然に防止するとともに、土壌汚染の除去、農業用用排水の汚濁の除去等を図るため、ため池、排水機場等の農業用施設の整備、地すべり対策等の農地防災対策を実施しました。

(イ)津波、高潮、波浪その他海水または地盤の変動による被害から農地等を防護するため、海岸保全施設の整備等を実施しました。

(ウ)政府全体で進める防災情報基盤の整備や、地域全体の防災安全度を効率 的 か つ 効 果 的 に 向 上 さ せ る た めに、ため池総合整備対策を推進するなどハード整備とソフト対策が一体となった防災・減災対策を実施しました。

(2)地域の裁量を活かした制度の推進地域の創意工夫を活かした農山漁村地域

の総合的な整備を進めるため、農業農村、森林、水産の各分野でそれぞれが実施してきた既存制度を抜本的に見直しました。

具体的には、地方公共団体が農山漁村地域のニーズに合った計画を自ら策定し、農林水産省の各公共事業を自由に選択できるとともに、地方公共団体の自由な創意工夫によるソフト事業も実施可能な、自由度が高く、使い勝手の良い新たな制度を創設し、農山漁村地域の総合的整備を推進しました。

(3)食料自給率の向上等に資する農業生産基盤整備の推進

食料自給率向上のため、麦・大豆、米粉用米、飼料用米等の生産拡大を可能とする水田の汎用化等の基盤整備を推進しました。(4)農村環境の保全・形成に配慮した基

盤整備の実施「田園環境整備マスタープラン」を踏ま

え、地域住民や NPO 等による保全活動とも連携しつつ、生態系や景観等の農村環境の保全・形成に配慮した基盤整備を推進しました。(5)効率的・効果的な事業の実施

事業を効率的かつ効果的に進めるため、「農業農村整備事業等コスト構造改善プログラム」に基づき、コストの縮減に資する取組を推進しました。

8 持続可能な農業生産を支える取組の推進(1)環境保全型農業の推進

ア 我が国農業生産全体の在り方を環境保全を重視したものに転換することを推進するため、「農業環境規範」の普及・定着、持続性の高い農業生産方式の導入の促進、地域でまとまって化学肥料・化学合成農薬の使用を大幅に低減する先進的な営農活動への支援に取り組みました。

イ 環境保全効果の高い多様な農業生産方式の導入が農業経営に及ぼす影響やその効果等の調査・分析を実施しました。

ウ  環 境 保 全 型 農 業 に 取 り 組 む エ コファーマーの全国ネットワーク組織を立ち上げ、交流会や技術研修会による相互研鑽を通じて、点の取組を面的・全国的に展開しました。

エ 「有機農業の推進に関する基本的な方針」に基づき、有機農業への参入促進や普及・啓発の取組、有機農業の振興の核となる地域の育成を推進すると

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 80: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

ともに、技術の研究開発、研究成果の普及等、有機農業の推進体制の整備を図りました。

オ 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の趣旨を踏まえ、家畜排せつ物の適正な管理に加え、その利活用を図るため、耕畜連携の強化やニーズに即したたい肥づくり、地域の実情に応じてエネルギー利用等の高度利用を推進しました。

(2)環境保全機能に関する直接的な助成手法の検討

農業生産活動による環境保全機能の維持・向上に関する直接的な助成手法について 、 他の生産・経営関係施策や地域資源・環境の保全のための施策等との関係を整理しつつ、戸別所得補償制度の加算制度の検討とあわせて検討しました。

Ⅳ 農村の振興に関する施策

1 農業・農村の6次産業化(1)「地域資源」を活用した「産業」の創造

農林水産業及び農山漁村に由来する農林水産物、副産物等の地域資源を最大限活用するため、農林水産業を軸とした地場産業を活性化するとともに、技術革新や農商工連携等を通じ、様々な資源活用の可能性を追求しました。

また、農山漁村の6次産業化を推進するため、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」について農林漁業者等に周知を徹底するとともに、地方農政局等に設置した「6次産業化の推進に関する総合相談窓口」で、6次産業化に取り組もうとする農業者等からの個別相談に対応しました。

さらに、農林水産業・農山漁村に豊富に存在する農林水産物やバイオマス等の資源と様々な産業の先端技術を結び付けた、新

たな産業の創出に向け、「緑と水の環境技術革命総合戦略」 を策定するとともに、重点分野や新技術の事業化に向けた市場規模・技術課題等に関する調査の支援を実施しました。(2)バイオマスを基軸とする新たな産業

の振興稲わら、せん定枝等の未利用資源、食品

残さ等の廃棄物といったバイオマスを活用し、エネルギーやプラスチック等の製品を生産する地域拠点の整備に向け、そのためのビジネスモデルを検討するとともに、これらの取組に必要とされる技術の開発・実証等を推進しました。(3)農村における再生可能エネルギーの

生産・利用の推進農山漁村に豊富に存在するバイオマス、

小水力、 太陽光といった再生可能エネルギーの利活用を推進するため、資源の利用可能性調査や施設整備、制度的な環境整備を推進しました。

2 都市と農村の交流等(1)新たな交流需要の創造

ア グリーン・ツーリズムの普及・推進を図るため、観光関係者と農村地域が連携して行う都市農村交流の推進のための取組や、大学、環境団体、病院等と農山漁村の連携による新たな協働の取組、都道府県域を越えた交流・連携の取組のほか、交流環境の整備や交流を通じたアグリビジネス等の促進に必要な施設等の整備を支援しました。

イ  観 光 庁 と 連 携 し た「よ う こ そ! 農村」プロジェクト等関係府省の連携による都市と農村の交流を促進するとともに、「オーライ!ニッポン会議」の活動に対する支援、優良事例の表彰等を通じて、多様な主体と協調・連携した国民運動を展開しました。

  また、地域内外の結び付きによる創意工夫にあふれた地域活性化の取組を

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第2部

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「食と地域の「絆」づくり」として選定し、全国に発信・奨励しました。

ウ 観光交流人口の拡大による自立的な地域経済の確立を図るため、内外観光客の宿泊旅行回数・滞在日数の拡大を目指し、二泊三日以上の滞在型観光を促進する観光圏の形成のための取組を総合的に支援しました。

(2) 人材の確保・育成、都市と農村の協働

ア 農村地域の活性化を担う人材の確保・育成を安定的に支える仕組みの構築に向け、都市と農村地域をつなぎ農村地域における都市部人材を活用する取組を支援しました。

イ 地域住民、NPO、企業及び地方公共団体が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動を推進・支援しました。

ウ 空き家情報等の定住に関する情報提供体制の整備や定住後のサポート体制の構築等、都市から農村への定住等の促進に向けた地域の取組を支援しました。

エ 空き家住宅等の再生・活用等を推進する地方公共団体等を支援しました。ま た、 二 地 域 居 住 実 践 者 と 地 域 と のマッチング支援のための仕組み等の検討等を行いました。

オ 条件不利地域(過疎、山村、離島、半島、豪雪地域)において、交流の促進等を図るため、市町村等が行う地域内の既存公共施設を活用する施設整備等を支援しました。

(3)教育、医療・介護の場としての農山漁村の活用

ア 農山漁村が有する教育的効果に着目し、農山漁村を教育の場として活用するため、農林水産省、文部科学省、総務省が連携し、小学生が農山漁村において宿泊体験活動を行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進しまし

た。イ 「「子どもの水辺」再発見プロジェク

ト」の推進、水辺整備等により、河川における交流活動を支援しました。

ウ 歴史的砂防施設の適切な保存・活用等のためのガイドラインに基づき、周辺整備等を推進しました。

  また、歴史的砂防施設及びその周辺環境一帯を地域の観光資源の核に位置付けるなど、新たな交流の場の形成を推進しました。

エ エコツーリズム推進法を踏まえ、地域の自然環境の保全に配慮しつつ、地域の創意工夫を活かしたエコツーリズム の よ り 一 層 の 普 及・ 定 着 を 図 る ため、グリーンツーリズム等との連携・融合による地域活性化、世界遺産地域等の利用適正化、エコツアーの実態調査・解析事業等を総合的に実施しました。

3 都市及びその周辺の地域における農業の振興都市農業の役割や都市住民のニーズ、市

街化区域内農地の性格等を踏まえ、これまでの都市農地の保全や都市農業の振興に関連する制度の見直しに向けた検討のための実態調査を行うとともに、民間団体による市民農園等の開設促進や農業体験農園の全国的な普及を図るための講習会・研修会の開催、開設・経営に関する指導、情報発信等の取組等を支援しました。

4 集落機能の維持と地域資源・環境の保全(1)農村コミュニティの維持・再生

ア 良好な農村景観の形成等(ア)農山漁村活性化に向けた総合的な

取組の一環として、地域住民等による美しいむらづくりの優れた取組に対する表彰を通じて、良好な農村景観の形成を積極的に推進しました。

(イ)農村特有の良好な景観及び将来に

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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残すべき歴史的に価値の高い農業用用排水施設を保全、形成、再生するため、地域関係者の意識の向上や人材育成を促進するとともに、景観と調和した農業的土地利用を誘導するなど計画的な土地利用を推進しました。

(ウ)良好な農村景観の再生・保全を図るため、コンクリート水路沿いの植栽等、土地改良施設の改修等を推進しました。

(エ)生物多様性保全活動を活かして農村地域の活性化を図るため、活動団体間のネットワーク形成や各種情報提供等の取組を支援しました。

(オ)河川の蛇行復元や湿地の冠水頻度の増加等、自然再生事業を推進しました。

(カ)魚類等の生息環境改善や人と自然がふれあえる地域整備を図るため、河川やため池等の水路結合部の段差解消による水域の連続性の確保、生物の生息・生育環境を整備・改善する魚の住みやすい川づくりを推進しました。

イ 経済の活性化を支える基盤の整備(ア)日常生活の基盤としての市町村道

から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路ネットワークの整備を推進しました。また、地方道については、各地域の事業等の計画と整合をとり計画的に整備を支援しました。

(イ)農産物の海上輸送の効率化を図るため、船舶の大型化等に対応した複合一貫輸送ターミナルの整備を推進しました。

(ウ)「道の駅」の整備により、休憩施設 と 地 域 振 興 施 設 を 一 体 的 に 整 備し、地域の情報発信と連携・交流の拠点形成を支援しました。

(エ)都市と農村地域を連絡するなど、地域間の交流を促進し、地域の活性化に資する道路の整備を推進しまし

た。ウ 農村コミュニティの維持・再生のた

めの取組方策の検討農山漁村の再生・活性化のため、農

山漁村コミュニティの再生・地域活性化、食文化、再生可能エネルギー、医食農連携等のプロジェクトを総合的に盛り込んだ、「食」に関する将来ビジョンを策定しました。

(2)中山間地域等直接支払制度ア 農業生産活動の維持を通じて多面的

機能を確保するため、高齢化の進行に配慮した見直しを行ったうえで、中山間地域等直接支払制度に基づく直接支払いを実施しました。

イ 高齢化の進行を踏まえ、高齢者へのサポート体制や集落間の連携等安定的な受皿をつくることにより、農業生産活動の維持を図りました。

  なお、本直接支払制度については、戸別所得補償制度の検討とあわせて、現行の予算措置を法律上の措置とすることを含め、今後の施策の在り方について検討を開始しました。

ウ 意欲ある多様な農業者の育成・確保や生産性の向上等を推進するなどにより、中山間地域等における自律的かつ安定的な農業生産活動を促進しました。

(3)農地・水・環境保全向上対策ア 農地・農業用水等の資源や環境の良

好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみの効果の高い共同活動と農業者ぐるみの先進的な営農活動を、一体的かつ総合的に支援しました。

イ 農地・水・環境保全向上対策についての中間評価を実施し、共同活動の強化や環境保全型農業の推進等を図る観点から、これまでの実績や現場の意見も踏まえ、効果と課題を明確化しました。

ウ 国土の保全、水源のかん養、自然環

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第2部

Page 83: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

境の保全等の多面的機能の維持の観点から、今後の施策の在り方について検討し、地域共同による農地・農業用水等の保全活動に加え、今後、水路・農道等の長寿命化に取り組む集落を追加的に支援していくこととしました。

(4)鳥獣被害対策の推進ア 「鳥獣による農林水産業等に係る被

害の防止のための特別措置に関する法律」に基づき市町村が作成する被害防止計画の作成を推進しました。

イ 市町村が作成する被害防止計画に基づく、鳥獣の捕獲体制の整備、箱わなの導入、広域的な防護柵の設置、被害防除技術の導入、緩衝帯の設置、捕獲獣の地域資源としての利用等の取組を推進しました。また、鳥獣の生息環境にも配慮した森林の整備・保全活動等を推進しました。

ウ 地域における技術指導者の育成を図るため、普及指導員、市町村職員、農林漁業団体職員等を対象とする研修を実施しました。また、捕獲鳥獣の食肉利用のためのマニュアルを作成しました。

エ 野生鳥獣の種類や数を高精度で判別できるセンサーを用いた効率的な捕獲システムの開発等を推進しました。また、地域ブロック単位の連絡協議会の積極的な運営や、鳥獣被害対策のアドバイザーを登録・紹介する取組を推進しました。

(5)快適で安全・安心な農村の暮らしの実現

ア 生活環境の整備(ア)農村における効率的・効果的な生

活環境の整備a 地域再生等の取組を支援する観点

から、地方公共団体が策定する「地域再生計画」に基づき、関係府省が連携して道路や汚水処理施設の効率的・効果的な整備を推進しました。

b 農業の持続的な発展を図るとともに、地域の創造力を活かした個性的で魅力あるむらづくり等を推進するため、関係府省が連携しつつ、農業生産基盤と農村の集落基盤の一体的な整備を推進しました。

c 農山漁村における定住や二地域居住を促進する観点から、関係府省が連携しつつ、計画的な生活環境の整備を推進しました。

(イ)交通a 交通事故の防止、交通の円滑化を

確保するため、歩道の整備や交差点改良等を推進しました。

b 生活の利便性向上や地域交流に必要な道路、都市まで安全かつ快適な移動を確保するための道路の整備を推進しました。

c 地方バス運行の確保を図るため、運行にかかる欠損補助を実施しました。

d 離島住民が日常生活に不可欠な交通手段である離島航路において、構造改善投資に対して支援するとともに、運航の結果生ずる欠損に対して補助を実施しました。

e 地域住民の日常生活に不可欠な交通サービスの維持・活性化、輸送の安定性の確保等のため、島しょ部等における港湾整備を推進しました。

(ウ)衛生a 下水道、農業集落排水施設及び浄

化槽等について、市町村の意見を反映したうえで近年の人口減少等も踏まえ、都道府県が策定する「都道府県構想」を見直すとともに、地域の特性に応じた計画的・効率的な整備を推進しました。

  また、下水道においては、既存施設について、適時・適切な修繕と更新により施設の長寿命化を進めるための「ストックマネジメント手法」

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 84: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

の導入を推進しました。b 農村における汚水処理施設整備を

効率的に推進するため、農業集落排水施設と下水道との連携及び農業集落排水施設と浄化槽との一体的な整備を実施しました。

c 効率的な汚水処理施設整備を図るため、下水道や農業集落排水施設等複数の汚水処理施設が共同で利用できる施設の整備を図る汚水処理施設共 同 整 備 事 業(MICS) を 推 進 し ました。

  また、従来の技術基準にとらわれず地域の実情に応じた低コスト、早期かつ機動的な整備が可能な新たな整 備 手 法 の 導 入 を 図 る「下 水 道 クイックプロジェクト」を推進しました。

  さらに、財政力・技術力等が十分でなく下水道の整備がなかなか進まな い 状 況 に あ る 過 疎 市 町 村 に お いて、下水道整備を促進するため、過疎地域における幹線管きょ・終末処理場等の整備を都道府県が代行して行う「都道府県代行制度」を延伸しました。

d 人口散在地域ほど経済的な汚水処理施設である浄化槽の整備を推進しました。特に、低炭素社会対応型浄化槽(省エネルギータイプ)の整備への助成制度の充実を図り、地球温暖化対策の促進を図るとともに、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を促進しました。

(エ)情報通信高度情報通信ネットワーク社会の

実現に向けて、河川、道路、港湾、下水道において公共施設管理の高度化を図るため、光ファイバ及びその収容空間を整備するとともに、民間事業者等のネットワーク整備のさらな る 円 滑 化 を 図 る た め、 施 設 管 理

に支障のない範囲で国の管理する河川・道路管理用光ファイバやその収容空間を順次開放しました。

(オ)住宅・宅地優良田園住宅による良質な住宅・

宅地供給を促進し、質の高い居住環境整備を推進しました。

また、地方定住促進に資する地域優 良 賃 貸 住 宅 の 供 給 を 促 進 し ま した。

(カ)文化「文化財保護法」に基づき、農村

に継承されてきた民俗文化財に関して、特に重要なものを重要有形民俗文化財や重要無形民俗文化財に指定するとともに、その修理・防災や伝承 事 業 等 に 対 す る 補 助 を 行 い ま した。

また、重要有形民俗文化財以外の有形の民俗文化財に関しても、その文化財としての価値にかんがみ保存及び活用のための措置が特に必要とされるものについて登録有形民俗文化財に登録しました。

さらに、棚田や里山等の文化的景観や歴史的集落等のうち、特に重要なものをそれぞれ重要文化的景観、重要伝統的建造物群保存地区として選定し、修理・防災等の保存及び活用に対して支援しました。

(キ)公園都市計画区域の定めのない町村に

おいて、スポーツ、文化、地域交流活動の拠点となり、生活環境の改善を図る特定地区公園の整備を推進しました。

イ 医療・福祉等のサービスの充実(ア)医療

「 第 10 次 へ き 地 保 健 医 療 計 画 」(18 ~ 22 年度)に基づき、へき地診療所等による住民への医療提供等農村を含めたへき地における医療の

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第2部

Page 85: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

な土砂災害対策を実施しました。(ケ)土砂災害防止法に基づく土地利用

規制や、土砂災害警戒情報の提供等を実施し、ソフト対策の強化を推進しました。

(コ)農地災害等を防止するため、ハード整備に加え、防災情報を関係者が共有するシステムの構築、施設管理者等に対する支援体制の強化や減災のための指針づくり等のソフト対策を推進し、地域住民の安全な生活の確保を図りました。

  また、地域全体の防災安全度を効率 的 か つ 効 果 的 に 向 上 さ せ る た めの、ため池総合整備対策を推進しました。

(サ)橋梁の耐震対策、道路斜面や盛土等の防災対策、災害のおそれのある区間を回避する道路整備を推進しました。

  また、冬期の道路ネットワークを確保するため、道路の除雪、防雪、凍雪害防止を推進しました。

Ⅴ 食料・農業・農村に横断的に関係  する施策

1 技術・環境政策等の総合的な推進農業・農村の未来を切り拓くための技術

革新とそれに向けた研究施策を推進するため、農林水産分野の技術開発政策の新たな枠組みの構築に合わせて、技術・環境戦略として「今後取り組む技術と環境の研究課題について」を 22 年 12 月に策定しました。(1)革新的な技術開発の推進

様々な農政の課題に技術面で的確に対応するため、「農林水産研究基本計画」に基づき、以下の施策を推進しました。

ア 食料供給力の強化を図る研究開発(ア)食用米と識別性のある超多収飼料

用米品種、飼料用米の調製・給与技

確保を推進しました。(イ)福祉

介護・福祉サービスについて、地域密着型サービス拠点等の整備等を推進しました。

ウ 安全な生活の確保(ア)山腹崩壊、土石流等の山地災害等

を防止するため、復旧治山等の事業の実施を通じて地域住民の生命・財産及び生活環境の安全を確保しました。

(イ)山地災害危険地区における治山事業について、地域における避難体制の整備等との連携により、減災に向けた効果的な事業を実施しました。

(ウ)自力避難の困難な障害者等災害時要援護者関連施設に隣接する山地災害危険地区等において治山事業を計画的に実施しました。

(エ)床上浸水被害が頻発するなどの度重なる水害が発生し、生活に大きな支障がもたらされている地域において、被害の防止・軽減を目的として、治水事業を実施しました。

(オ)近年死者を出すなど甚大な土砂災害が発生した地域の再度災害防止対策を重点的に推進しました。

(カ)人命の保護を図るため、将来起こり得る大規模地震等に起因するがけ崩れ等により地域に甚大な被害を起こすおそれのある箇所において、施設整備を推進しました。

(キ)病院、老人ホーム等の災害時要援護者関連施設を保全対象に含む危険箇所にかかる砂防事業を実施しました。

(ク)地域の防災拠点等を保全する施設の整備や「土砂災害警戒区域等におけ る 土 砂 災 害 防 止 対 策 の 推 進 に 関する法律」(土砂災害防止法)に基づく警戒避難体制の整備を実施し、ハード・ソフト一体となった効率的

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 86: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

術等の開発、米粉のパン等への利用を拡大するための加工適性に優れた多収品種の選定、米粉パンの品質劣化防止技術等の基盤的技術開発を推進しました。

(イ)パン・中華めん用の小麦やなたね等の高品質品種、大豆、小麦等の湿害回避技術の開発を推進しました。

(ウ)農作業負担を軽減する農業自動化システムや農作業アシストシステムの開発を推進しました。

イ 新需要を創出する付加価値の高い農産物、食品、新素材、医薬品等の開発

(ア)LED 等の人工光源や波長等の光質制御が可能な被覆資材等により、野菜の品質向上や花きの生育・開花及び品質をコントロールする技術の開発を推進しました。

(イ)遺伝子組換えカイコによる人工血管・軟骨再生素材等の医療用素材の動物での安全性・有効性の確認と抗体タンパク質等の検査用試薬の実用化を推進しました。

(ウ)完全閉鎖型植物工場を用いて、医薬品原料等の高付加価値物質を生産するための完全人工環境下での植物栽培及び高生産型組換え植物創製にかかる技術開発を実施しました。

ウ 地球温暖化等環境問題に対応する技術の開発

(ア)農林水産分野における温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を行うとともに、水田における中干し等の温室効果ガスの排出を削減させる技術、森林や農地土壌等の吸収機能を向上させる技術の開発を推進しました。

(イ) 水稲における白未熟粒対策技術等、地球温暖化の進行に適応した農林水産物の収量や品質等を安定させる技術の開発を推進しました。

  また、野菜の新品種の開発を民間

企業と試験研究機関等の共同開発等を通じて推進しました。

  さらに、高温適応技術の実施状況、当面の適応技術及び短期・中長期的な研究開発課題について取りまとめた「平成 22 年度高温適応技術レポート」を公表しました。

(ウ)稲わら等作物の非食用部や木質バイオマスから、低コスト・高効率にバイオ燃料を生産する革新的な変換技術の開発、原料の調達コストを低減する収集技術、資源作物の栽培技術の開発や、石油化学製品に代替するプラスチック等のバイオマスマテリアルの製造技術開発等を推進しました。

  また、新たに CO2 の吸収効果が大きい藻類等バイオマスの利用技術の開発等を推進しました。

(エ)りん等の化学肥料の投入を減らす技術開発、有機農業の推進に資する省資源型農業の技術体系を推進しました。

(2)研究開発から普及・産業化までの一貫支援

ア 研究成果を確実に普及・実用化につなげていくため、民間等の幅広い分野の人材、情報等を活用し、研究マネジメント機能を強化しました。

  また、効率的、効果的に行政課題の解決につながる研究を実施するための体制を整備しました。

イ 研究段階に応じて人材、研究資金等を機動的かつ一体的に運用する視点に立って、農林水産業・食品産業等におけるイノベーションにつながる革新的な技術シーズを開発するための基礎研究及び開発された技術シーズを実用化に向けて発展させるための研究開発を推進しました。

ウ 研究開発から産業化までを一貫して支援するため、大学、民間企業等の地

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第2部

Page 87: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

域の関係者による技術開発から改良、開発実証試験までの取組を切れ目なく支援するとともに、公的研究機関の開発した新品種・新技術に加え、民間企業における機能性農作物に関する研究成果や、地域特産物等の機能性を活かした新食品・新素材の事業化を推進しました。

エ  地 域 の 大 学、 試 験 場、 企 業 等 に 対し、コーディネーターを派遣するとともに、事業化可能性調査、技術交流展示会、人材育成の実施等、地域における産学連携活動を一体的に支援しました。

オ 農業技術に関する近年の研究成果のうち、早急に生産現場への普及を推進する重要な技術を「農業新技術 2011」として選定し、関係機関相互の緊密な連携のもと、生産現場への普及推進に取り組みました 。

カ 産地においては、普及指導センターと大学、企業、試験研究機関等が連携しつつ、技術指導を核に総合的な支援を展開するなど、研究成果の普及・実用化体制の強化を推進しました。

(3)地球環境問題への貢献ア 地球温暖化対策への貢献(ア)農林水産分野における温室効果ガ

ス排出削減を推進するため、農業において、省エネ設備・機械の導入や施肥の適正化を推進しました。

(イ)農地の炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査を行いました。

(ウ)温室効果ガスのさらなる排出削減のため、農林水産分野において、排出削減・吸収量を認証しクレジットとして取引する制度への参画支援、排出削減効果や農地土壌の炭素貯留効果の「見える化」等の新たな地球温暖化対策を推進しました。

(エ)農山漁村地域におけるバイオマス等の再生可能エネルギーの利用を推進しました。

(オ)地球温暖化対策研究戦略に基づき、農林水産分野における地球温暖化防止技術及び適応技術の開発を推進しました。

(カ)世界的な温室効果ガスの排出削減や気候変動による影響への適応を進めるため、国際的な研究・技術協力を積極的に実施しました。

イ 循環型社会形成への貢献(ア)バイオマスの活用の推進に関する

施策を総合的かつ計画的に推進するため、「バイオマス活用推進基本法」

(21 年9月施行)に基づき、「バイオマス活用推進基本計画」を 22 年12 月に閣議決定しました。

(イ)バイオマスの効率的な収集・変換等の技術の開発、システムの構築を進めることとし、以下の取組を実施しました。

a 国産バイオ燃料の本格的な生産に向け、原料供給から製造、流通まで一体となった取組のほか、食料・飼料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料の収集・運搬からバイオ燃料の製造・利用までの技術を確立する取組を支援しました。

b 農林漁業に由来するバイオマスのバイオ燃料向け利用の促進を図り、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を推進するため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律」に基づく「製造連携事業計画」により新設されたバイオ燃料製造設備について、固定資産税の軽減措置を実施しました。

c 国産バイオマスエネルギーの生産コストを大幅に低減するため、稲わら等作物の非食用部や木質バイオマスから、低コスト・高効率にバイオ

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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た。(ウ)水田魚道の設置等、生態系に配慮

し た 水 田 や 水 路 等 の 整 備 技 術 の 開発・普及に取り組みました。

(エ)生物多様性保全を重視した農林水産 業 の 取 組 事 例 に つ い て 情 報 提 供し、 国 民 の 理 解 の 増 進 を 図 り ま した。

  特に、22 年 10 月に愛知県名古屋市 で 開 催 さ れ た 生 物 多 様 性 条 約 第10 回 締 約 国 会 議(COP10) 等 に おいて、我が国の農林水産業の生物多様性保全への貢献を国内外に発信しました。

( オ)COP10 では、主要議題であった遺 伝 資 源 へ の ア ク セ ス と 利 益 配 分

(ABS) や、 新 た な 戦 略 計 画(愛 知目標)等の採択に向けた交渉に積極的に対応しました。

(カ)COP10 とあわせて開催されたカル タ ヘ ナ 議 定 書 第 5 回 締 約 国 会 議

(MOP5) に お い て 行 わ れ た、 遺 伝子組換え生物の国境を越える移動から生ずる生物多様性への損害に対する「責任と救済」についての議論のなかで、我が国は議長国としてリーダーシップを発揮し、立場の異なる関係国にとって実効性のあるバランスのとれた内容となるよう、積極的に対応しました。

(キ)COP10 で採択された新戦略計画等を踏まえ、農林水産省生物多様性戦略を改定するための検討を開始しました。

(ク)遺伝子組換え農作物に関する取組については、生物多様性に及ぼす影響についての科学的な評価、安全性未確認の遺伝子組換え農作物に対する水際検査、国内の生産状況等の調査を実施しました。

(4)知的財産の保護・活用ア 技術開発の成果等の実用化を一層効

燃料を生産する革新的・先導的な変換技術の開発、原料の調達コストを低減する収集技術、資源作物の栽培技術の開発や、石油化学製品に代替するプラスチック等のバイオマスマテリアルの製造技術開発等を推進しました。また、新たに CO2 の吸収効果が大きい藻類等バイオマスの利用技術の開発等を推進しました。

d 下水処理場を核としたバイオマスの利活用や、下水道施設を利用した未利用エネルギーの循環等を推進しました。また、我が国が全量を輸入に頼るりん資源の安定的確保に向けて、下水汚泥等に含まれるりんの回収・活用を推進するための方策について検討しました。

(ウ)地域に賦存する様々なバイオマスの総合的な利活用を図るバイオマスタウン構想の策定やその実現に向けた取組を支援しました。

(エ)国際機関等におけるバイオマスに関する技術移転、途上国における能力強化支援、バイオ燃料の持続性の基 準・ 指 標 の 策 定 等 の 国 際 的 な 議論に積極的に参画し、バイオマスの普及と持続可能な利用を促進しました。

  また、東アジアにおけるバイオマスタウン構想の策定等を推進しました。

ウ 生物多様性保全への貢献(ア)有機農業や冬期湛水管理等、生物

多様性保全に効果の高い農業生産活動等を推進しました。

(イ)環境保全型農業の効果を示す生物種(昆虫等)を指標として明らかにするとともに、粘着板トラップ等を用いて農業現場で利用できる簡便な評価手法の開発を推進しました。

  また、生物の生息環境に関する簡便 な 評 価 手 法 の 開 発 を 推 進 し ま し

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第2部

Page 89: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

果的に実施していくことを目的に、研究者等を対象とした研修を開催するなど農林水産知的財産ネットワークの活動を充実しました。

  また、中小経営体による知的財産の活用 ・ 管理の手法を検討し、農林水産現場の新しい技術やノウハウの活用を促進しました。

  さらに技術移転機関(TLO)を活用して農林水産省所管の試験研究独立行政法人が保有する知的財産権の産業界への移転を促進しました。

イ 「食と農林水産業の地域ブランド協議会」の活用による地域ブランド化に取り組む主体とそれを支援する者との交流促進、地域段階における地域ブランドの確立に向けた取組に対する支援等、 地 域 ブ ラ ン ド 施 策 を 推 進 し ま した。

ウ 地元の食材を核とした伝統料理や新た な 創 作 料 理 に つ い て、 食 材 の 生 産者、地方行政、料理人、ホテル・旅館等 の 関 係 者 が 連 携 し て、 全 国 的 な 広告・宣伝や観光客向けの情報発信を行うとともに、商標・意匠等の知的財産権の取得を目指す取組を支援し、農山漁村の活性化を図りました。

  また、技術・技能が卓越し、日本産食材の利用拡大等の農林水産施策に貢献してきた料理人に対する新たな顕彰制度を創設しました。

エ 農山漁村の6次産業化支援のためのワンストップサービスの一環として、地方農政局、北海道農政事務所及び内閣府沖縄総合事務局(全国計9か所)に、知的財産総合相談窓口を設置しました。

  また、普及指導員が現場で適切な相談対応を行えるよう、普及指導員の知的財産に関する知識の向上を図りました。

オ 我が国の植物新品種を海外において

も適切に保護するため、植物品種保護制度の整備が遅れている東アジア地域において、制度の共通の基盤づくりを目指し、国際的に調和のとれた制度整備・充実を進めるため「東アジア植物品種保護フォーラム」のもとで引き続き技術協力、人材育成等の協力活動を東アジア各国への専門家の派遣や各国からの研修生の受入れ等を通じて推進しました。

カ 我が国の地名、品種名等の中国等での商標出願・登録について、一元的に監視を実施する「農林水産知的財産保護コンソーシアム」の活動を充実・強化しました。

キ 和牛の遺伝資源の保護・活用を図るため、精液の流通管理の強化、和牛の改良・生産体制の強化等を推進しました。

ク 篤農家の暗黙知であるノウハウを、農業者等が活用可能な形に置き換える世界最先端の AI(アグリインフォマティクス)システムの開発を推進しました。その際、知的財産としての管理手法等を検討しました。

ケ 決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みについて検討しました。

2 「農」を支える多様な連携軸の構築(1)「食」に関する将来ビジョンの策定

各府省の関連施策の連携の推進により、地域の活性化と日本経済の成長につなげる、10 の プ ロ ジ ェ ク ト か ら 構 成 さ れ る

「「食」に関する将来ビジョン」を策定しました。「「食」に関する将来ビジョン」では、基

本計画において、農山漁村の再生・活性化に向けた地域の主体的な取組を促進するための「農山漁村活性化ビジョン」を策定す

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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るとされたことも踏まえ、農山漁村コミュニティの再生・地域活性化、食文化、再生可能エネルギー、 医食農連携等に関する10 のプロジェクトについて農山漁村の将来像・目標を策定しました。(2)食と農の結び付きに関する情報発信

の強化と既存施策の重点化「農」を支える連携軸の基礎となる、農業・

農村の価値や役割、我が国の食文化、健全な食生活といった食と農の結び付きに関する様々な情報を基本計画の広報のなかで、ホームページ、副読本、講演、また雑誌等への寄稿等を通じて消費者等に対してわかりやすく発信する取組を推進しました。

また、米粉用米の生産拡大に対応した利用促進、国産農産物の消費拡大、農商工連携、都市と農村の交流等、複数の者の連携に着目した施策については、情報発信の強化、コーディネーター等によるマッチングの充実、関係者間のネットワークの強化等を図り、連携軸として発展させました。(3)関係者のマッチング等の充実と人材

の確保連携軸を構築しようとする消費者、生産

者、事業者、NPO、大学、研究機関が適切な相手先を円滑に確保できるよう、知識・技術等に関する研修や交流会を開催しました。 ま た、IT の 活 用 等 を 通 じ て、 関 係 者間のマッチング機会の拡充を進めるための地域説明会を開催しました。(4)連携軸の取組に関する国民理解の促

進と具体的行動の喚起消費者が農業者と農産物取引の事前契約

を行う農業である「地域支援型農業」(CSA)等について、先導的な取組や成功例を収集・分析しました。

Ⅵ 団体の再編整備等に関する施策

(1)農業協同組合系統組織の再編整備に関する施策

国民に対する食料の安定的な供給や国内の農業生産の増大等の実現に向けて、農業協同組合の機能や役割が発揮できるよう効率的な再編整備につき税制上の特別措置を引き続き講じました。(2)農業委員会系統組織の再編整備に関

する施策農業委員会の業務の効率的かつ効果的な

実施、農業者に対するサービスの向上を図るため、市町村及び都道府県の各段階における農業関係団体との連携強化の取組を支援しました。(3)農業共済団体の組織体制強化に関す

る施策将来にわたる農業共済団体の安定的な事

業運営基盤を確保するため、農業共済団体が自ら策定した組織体制強化計画に取り組むよう指導しました。

また、農業共済団体におけるより一層の業務の効率化を図るため、農業共済団体に対し1県1組合化への移行を推進するよう指導しました。(4)土地改良区の再編整備に関する施策

土地改良区の組織運営基盤の強化を図るため、市町村合併を踏まえた広域的な統合整備構想の策定及び合併等を補助事業等の実施を通じて支援しました。(5)団体間の連携の促進

支援を受ける担い手にとっての利便性向上と支援機関の密接な連携や効率的運営を図る観点から、農業団体及び地方公共団体等により構成される「担い手育成総合支援協議会」による担い手向けの支援を推進しました。

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第2部

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Ⅶ 食料、農業及び農村に関する  施策を総合的かつ計画的に推進  するために必要な事項

1 官民一体となった施策の総合的な推進(1)国、地方をはじめとする関係者の適

切な役割分担ア 施策の総合的な推進

食料自給率の向上に向けた取組をはじめ、政府一体となって実効性のある施策を推進しました。

イ 農林水産分野の情報化と電子行政の実現

(ア)農山漁村分野における情報化に資する取組が効果的に図られるよう、農山漁村地域における情報化活用事例の周知等を目的とした地域説明会を開催しました。

(イ)国民の利便性・サービスの向上等を図るため、国民に広く利用されている行政手続のオンライン利用の拡大や業務・システムの最適化等を推進しました。

ウ 効果的・効率的な技術・知識の普及指導

生産現場における様々な農政課題の解決を図るため、国と都道府県が協同して、高度な技術 ・ 知識をもつ普及指導員を設置し、普及指導員が農業者に直接接して行う技術 ・ 経営指導等を推進しました。

また、22 年4月に「協同農業普及事業の運営に関する指針」及びガイドラインを策定しました。

(2)効果的・効率的な施策の推進体制の整備

施策の具体的内容等が生産現場等に速やかに浸透するよう、関係者に対する周知・徹底、人材の育成や組織づくりを促進しました。

2 国民視点に立った政策決定プロセスの実現

(1)国民の声の把握透明性を高める観点から、国民のニーズ

に即した情報公開、情報の受発信を推進しました。

また、幅広い国民の参画を得て施策を推進するため、国民との意見交換等を実施しました。(2)科学的・客観的な分析

ア 施策の科学的・客観的な分析施策の立案から決定に至るまでの検

討過程において、できる限り客観的なデータに基づいた計量経済分析等の科学的な手法を幅広く導入したり、国民にわかりやすい指標を開発したりするなど、施策を科学的・客観的に分析し、その必要性や有効性を明らかにしました。

イ 政策を支える統計調査の実施と利用の推進

戸別所得補償制度を基軸とした重要施策の推進に必要となる統計調査を確実に実施しました。

(ア)23 年度からの戸別所得補償制度の本格実施に向けて、なたね、そば等の生産費や単収にかかる新たな統計データを把握できるよう、調査の内容を拡充しました。

(イ)戸別所得補償制度を支える農業経営統計調査や、作物統計調査の調査体系の見直しや新たな調査手法の確立を図るため試行調査を実施しました。

  また、水稲作付面積を科学的かつ効 率 的 に 把 握 す る た め、 衛 星 画 像データを用いた手法の確立に取り組みました。

(ウ)統計調査のアウトソーシングにおける調査の質を維持するため、統計調査員の資質向上を図るとともに、農林水産統計指導員の一層の活用を

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平成 22 年度 食料・農業・農村施策

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山の噴火がありました。これらの災害に対して、被害状況の早期

把握に努めるとともに、以下の措置を講じました。

1 東日本大震災(1)東北地方太平洋沖地震

ア 食料等の確保関係被災地において食料等が確保される

よう、関係団体等に対し協力を要請するとともに、被災自治体からの食料支援要請に対応し、食料、飲料及び育児用調整粉乳を被災地へ供給しました。

イ 生産関係(ア)配合飼料不足や停電に対応した家

畜への給餌の方法等についての技術指導及び生乳の廃棄を余儀なくされている酪農家の負担軽減のための急速乾乳の推奨等について通知を発出するとともに、配合飼料の円滑な供給を支援するため、備蓄飼料穀物の無償・無担保での貸し付け等を実施しました。

(イ)被災状況に応じた水稲、園芸等の営農準備のための技術指導を通知しました。

ウ 金融関係被災農林漁業者に対する資金等の円

滑な融通、既貸付金の償還猶予等について、関係金融機関に依頼するとともに、被害を受けた認定農業者等に対して、 貸 し 付 け 当 初 5 年 間 実 質 無 利 子と な る 農 業 経 営 基 盤 強 化 資 金(ス ーパー L 資金)の優先的融資及び経営状況 に 応 じ て 3 千 万 円 ま で の 実 質 無 担保融資を決定しました。

エ 農地・農業用施設関係「二次災害防止」及び「ダム・ため

池の点検対象施設の点検」を関係県に指示するとともに、被災県等から要請のあった災害応急用ポンプを被災県に搬送し供用しました。

図りました。(3)施策の進捗管理と政策評価の適切な

活用「食料・農業・農村基本計画」に記載さ

れた施策の進捗管理を取りまとめ、22 年9月と 23 年1月に公表しました。

政策評価については、「農林水産省政策評価基本計画」及び「農林水産省政策評価実施計画」を新たに策定し、「食料・農業・農村基本計画」を踏まえて新たな政策評価体系や定量的な評価が可能となるような成果志向の目標・指標を設定するとともに、政策・施策の効果、問題点等を検証しました。

また、租税特別措置等について透明化及び適宜適切な見直しを図る観点から新たに評価を実施しました。

さらに、 政策評価第三者委員会を公開し、議事録等をホームページに掲載するなど「政策評価に関する情報の公表に関するガイドライン」に即した対応を進めました。

3 財政措置の効率的かつ重点的な運用厳しい財政事情のもとで限られた予算を

最大限有効に活用する観点から、既存の予算を見直したうえで大胆に予算の重点化を行い、財政措置を効率的に運用しました。

Ⅷ 災害対策

23 年 3 月、東北地方を中心とする東日本大震災により、農地、農林水産関係施設等に甚大な被害が発生するとともに、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による放射性物質の降下に伴い一部周辺地域の野菜、原乳等について、出荷制限等が指示されました。

また、22 年度は、 梅雨前線等による 5月から 10 月の全国的な豪雨、夏場の猛暑、8 月から 9 月の台風第 4 号、9 号による暴風雨、12 月下旬以降の風雪害、1 月の火

463

第2部

Page 93: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

オ 共済関係農業共済掛金の払込期限等の延長・

共済金の早期支払いに向けて共済団体を指導しました。

カ その他(ア)農林水産業被害に関する相談窓口

の開設、農林水産省ホームページの情報提供の充実を行いました。

(イ)地震発生後直ちに、災害救助犬の速 や か な 検 疫・ 通 関 を 実 施 し ま した。

(ウ)被災地等における農業や食品の生産 輸 送 等 に 必 要 な A 重 油 や 軽 油 等の燃料について、経済産業省及び内閣府に対し優先配分を要請し、その確保に努めました。

(2)東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故

ア 農畜産物等・土壌等の調査都道府県が農畜産物等や農用地の土

壌中の放射性物質濃度を調査する際、科学的な助言や依頼に応じた調査の実施など、農林水産省所管の独立行政法人と連携して全面的に支援しました。

イ 風評被害関係卸売市場関係者及び小売事業者等に

対し、農林水産物等の取扱いについて適切な対応を要請しました。

ウ 供給確保関係(ア)被災県野菜の出荷自粛を受けて、

他県産地の出荷前倒し等による供給確保について関係団体に協力を要請しました。

(イ)飲料水・清涼飲料水関係団体に対し、容器入り飲料水(ミネラルウォーター類)の需要の増加に伴う対応について、輸入を含めた生産・供給の拡大を要請しました。

エ 生産関係(ア)原子力発電所の事故を踏まえた農

産物の取扱い、家畜の飼養管理に係る注意点について農・畜産農家に通

知しました。(イ)出荷制限が行われている県や農業

団体等に対して、野菜及び原乳の当面の廃棄処分に関する情報を提供しました。

オ 金融関係農畜産物の出荷制限により影響を受

ける農業者等に対する資金の円滑な融通を金融機関に要請するとともに、出荷制限の対象となった農業者等へのつなぎ融資等を決定しました。

カ その他(ア)農畜水産物等への影響について各

府省が提供している情報を一覧できるポータルサイトを農林水産省ホームページ上に開設しました。

(イ)①農畜産物等と放射性物質に関する Q & A、 ② 原 子 力 発 電 所 の 事 故に伴う出荷制限等への対応に関するQ & A、③原子力発電所事故にかかる円滑な食品流通の確保に関する Q& A 等 を 農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジ上に掲載しました。

2 災害復旧事業の早期実施農地・農業用施設、林地荒廃、治山施設、

林道、漁港等の被害に対して、災害復旧事業等により早期復旧を図りました。

3 激甚災害指定特に災害が大きかった以下の災害等につ

いては、激甚災害に指定し、災害復旧事業費に対する地方公共団体等の負担の軽減を図りました。

①「平成 22 年 5 月 22 日から同月 24 日までの豪雨による災害」

②「 平 成 22 年 6 月 17 日 か ら 7 月 17日までの豪雨による災害(梅雨前線)」

③「 平 成 22 年 6 月 23 日 か ら 10 月 15日までの間の地滑りによる災害」

④「平成 22 年 7 月 28 日から同月 30 日までの間の豪雨による災害」

464

平成 22 年度 食料・農業・農村施策

Page 94: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

⑤「平成 22 年 8 月 9 日から同月 16 日までの間の豪雨及び暴風雨による災害

(台風第 4 号)」⑥「平成 22 年 8 月 23 日及び同月 24 日

の豪雨による災害」⑦「平成 22 年 8 月 26 日の豪雨による

災害」⑧「平 成 22 年 8 月 30 日 か ら 9 月 1 日

までの豪雨による災害」⑨「平成 22 年 9 月 4 日から同月 9 日ま

での間の暴風雨及び豪雨による災害(台風第 9 号)」

⑩「平成 22 年 9 月 22 日及び同月 23 日の豪雨による災害」

⑪「平 成 22 年 10 月 18 日 か ら 同 月 25日までの間の豪雨による災害」

4 被害農林漁業者等の資金需要への対応災害の被害農林漁業者等に対する資金の

円滑な融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるよう、関係機関に対して依頼通知を発出しました。

5 共済金の早期かつ円滑な支払い災害発生時における遺漏なき被害申告、

迅速かつ適切な損害評価の実施及び共済金の早期支払体制の確立等が図られるよう、農業共済団体を指導しました。

6 その他の施策地方農政局等を通じ、台風等の暴風雨、

高温による農畜産物被害に対する農業者等への適切な技術指導が行われるよう通知を発出しました。

465

第2部

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平成23年度食料・農業・農村施策

第177回国会(常会)提出

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概 説

平成 23年度 食料・農業・農村施策

概  説 ……………………………………………………………………………………………………… 1

1 施策の背景  …………………………………………………………………………………………… 1

2 施策の重点 …………………………………………………………………………………………… 1

3 財政措置 ……………………………………………………………………………………………… 2

4 立法措置 ……………………………………………………………………………………………… 2

5 組織の再編整備 ……………………………………………………………………………………… 3

6 税制上の措置 ………………………………………………………………………………………… 3

7 金融措置  ……………………………………………………………………………………………… 4

8 政策評価  ……………………………………………………………………………………………… 4

Ⅰ 東日本大震災対策 …………………………………………………………………………………… 4

1 当面の復旧対策 ………………………………………………………………………………………… 4

2 本格的復興に向けた対策 ……………………………………………………………………………… 5

Ⅱ 食料自給率向上に向けた施策 …………………………………………………………………… 5

1 食料自給率向上に向けた取組 ……………………………………………………………………… 5

2 主要品目ごとの生産数量目標の実現に向けた施策 ……………………………………………… 6

Ⅲ 食料の安定供給の確保に関する施策 …………………………………………………………… 7

1 食の安全と消費者の信頼の確保 …………………………………………………………………… 7

2 国産農作物を軸とした食と農の結び付きの強化 ………………………………………………… 10

3 食品産業の持続的な発展 …………………………………………………………………………… 11

4 総合的な食料安全保障の確立  ……………………………………………………………………… 12

5 輸入国としての食料安定供給の重要性を踏まえた国際交渉への対応 ………………………… 15

Ⅳ 農業の持続的な発展に関する施策 ……………………………………………………………… 15

1 戸別所得補償制度と生産・経営関係施策の実施 ………………………………………………… 15

2 農業・農村の 6次産業化等による所得の増大 …………………………………………………… 17

3 意欲ある多様な農業者による農業経営の推進 …………………………………………………… 18

4 優良農地の確保と有効利用の促進  ………………………………………………………………… 21

5 農業災害による損失の補てん ……………………………………………………………………… 21

6 農作業安全対策の推進 ……………………………………………………………………………… 21

7 農業生産力強化に向けた農業生産基盤の保全管理・整備 ……………………………………… 22

8 持続可能な農業生産を支える取組の推進 ………………………………………………………… 22

Ⅴ 農村の振興に関する施策 ………………………………………………………………………… 23

1 農業・農村の 6次産業化の推進 …………………………………………………………………… 23

2 都市と農村の交流等  ………………………………………………………………………………… 23

3 都市及びその周辺の地域における農業の振興 …………………………………………………… 24

4 農村の集落機能の維持と地域資源・環境の保全 ………………………………………………… 24

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Ⅵ 食料・農業・農村に横断的に関係する施策……………………………………………………… 28

1 技術・環境政策等の総合的な推進 …………………………………………………………………… 28

2 「農」を支える多様な連携軸の構築… ………………………………………………………………… 32

Ⅶ 団体の再編整備等に関する施策… ………………………………………………………………… 32

Ⅷ 食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

  … …………………………………………………………………………………………………………… 33

1 官民一体となった施策の総合的な推進…… …………………………………………………………… 33

2 国民視点に立った政策決定プロセスの実現…… ……………………………………………………… 33

3 財政措置の効率的かつ重点的な運用…… ……………………………………………………………… 34

 「平成 23年度 食料・農業・農村施策」の年次は、法律名や予算の引用が必要となることから、

和暦を用いています。なお、「平成」は省略しています。

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  概 説

1 施策の背景23 年3月に発生した東日本大震災は、

国内観測史上最大規模の地震、津波及び原子力発電所の事故により、東北地方の太平洋沿岸を中心に全国の広範囲な地域の農地や農業関連施設等に甚大な被害を及ぼしたことから、被災した農業者、関連事業者が将来への希望と展望をもって農業及び関連産業を再開できるよう支援するとともに、農地や農業関連施設の復旧・復興等の災害対策に全力で取り組む必要があります。

農は食をつくり、食は人をつくり、人は国をつくる、まさに農は国の「ちから」です。農村は、食料を供給する役割を果たしているのみならず水・緑・環境の保全等の多面的機能を発揮しているところでもあります。

しかしながら、我が国の食料・農業・農村をめぐる情勢は、第1部「平成 22 年度食料・農業・農村の動向」で詳しく述べているように農業者の減少・高齢化、農業生産額や農業所得の減少、農地面積の減少が引き続いており、産業としての持続可能性が喪失する危機にあります。また、農村においても、過疎化や高齢化が進行し、地域コミュニティの維持すら困難となっているところもあります。

このような情勢のもと、22 年3月に策定した「食料・農業・農村基本計画」においては、戸別所得補償制度の導入、6次産業化による活力ある農山漁村の再生、消費者が求める「品質」と「安全・安心」といったニーズに適

かな

った生産体制への転換を3つの柱として、各般の施策を一体的に推進する政策体系を明らかにしました。この基本計画で示された目標の実現及び課題の克服に向け、引き続き各般の施策を具体化し着実に推進する必要があります。

本篇は、以上の基本認識のもと、22 年

度における食料・農業・農村の動向を考慮して、23 年度において講じようとする施策を取りまとめたものです。

2 施策の重点東日本大震災対策として、農地・農業用

施設の復旧、農業経営の継続・再建支援等に全力で取り組みます。

基本計画の目標の実現及びその課題の克服に向けて、 食料自給率向上に向けた施策、食料の安定供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、農村の振興に関する施策及び食料・農業・農村に横断的に関係する施策等を総合的かつ計画的に展開します。特に、戸別所得補償制度の本格実施、 農山漁村の6次産業化の推進、食の安全・安心の確保等以下の諸施策に重点的に取り組むこととしています。(1)東日本大震災対策

農地・農業用施設等の復旧、生産手段・流通機能の回復、農業経営の継続・再建支援及び農畜産物等の安全確認等当面の復旧対策をまず講じたうえで、 被災農業者等が、将来への希望と展望をもって農業及び関連産業を再開できるよう、復旧・復興に全力で取り組みます。(2)食料自給率向上に向けた施策

国際情勢、農業・農村の状況、課題克服のための関係者の最大限の努力を前提として定められた食料自給率目標の達成に向け、水田をはじめとする生産資源を最大限活用することを第一歩として、主要品目ごとの生産数量目標の達成に向けた施策を推進します。(3)食料の安定供給の確保に関する施策

いのちの源である「食」に対する国民の期待が高まるなか、「品質」や「安全・安心」といった消費者ニーズに適

かな

った生産・流通体制を整えていくことが必要です。このため、「後始末より未然防止」の考え方を基本に、リスクを把握するための実態調査を進めるとともに、農場から食卓にわたり科

1

概 説

Page 103: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

学的根拠に基づく安全性向上のための取組を推進します。あわせて、農薬や飼料等の生産資材の適正な使用の徹底を図るとともに、食品表示の適正化による消費者への的確な情報提供を行います。

また、国産農産物を軸とした食と農の結び付きの強化、食品産業の持続的な発展、家畜伝染病の内外での発生を踏まえた防疫対応強化等総合的な食料安全保障の確立、輸入国としての食料安定供給の重要性を踏まえた国際交渉への対応に向けた施策を推進します。(4)農業の持続的な発展に関する施策

意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整え、創意工夫ある取組を促していくことによって、食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持を目指す農業者戸別所得補償制度は、農業政策の最重要施策です。このため、22 年度に水田農業を対象とする戸別所得補償モデル対策を実施し、ここで得られた知見を踏まえて制度設計を行い、23 年度は水田に加えて、麦や大豆等の畑作物にも対象を拡大します。あわせて、意欲ある農業者を育成し、農業の生産性の向上を図っていくため「規模拡大加算」を新たに導入します。

また、生産・経営関係施策の実施、農業・農村の6次産業化等による所得の増大、意欲ある多様な農業者による農業経営の推進、優良農地の確保と有効利用の促進、農業災害による損失の補てん、農作業安全対策の推進、農業生産力強化に向けた農業生産基盤の保全管理・整備及び持続可能な農業生産を支える取組を推進します。(5)農村の振興に関する施策

農村を活性化させるためには、戸別所得補償制度により経営の下支えをするとともに、加工、販売を含めた有機的な展開により新たな付加価値を創造し、地域に所得と雇用を生み出していくことが必要です。このため、農村に由来する幅広い「資源」と、食品産業、観光産業、エネルギー産業等の

「産業」とを結び付け、地域ビジネスの展開や輸出による販売拡大に取り組む「農山漁村の6次産業化」を推進します。あわせて、未来を切り開く6次産業創出総合対策として、農林漁業者の加工・販売分野への進出や販売先の市場拡大に向けた取組を推進するとともに、「バイオマス活用推進基本計画」に基づくバイオマス活用の推進等の地域資源を活用した新産業の創出を支援します。

また、新たな交流需要の創設等による都市と農村の交流、都市及びその周辺の地域における農業の振興、農村集落機能の維持と地域資源・環境の保全の施策を推進します。(6)食料・農業・農村に横断的に関係す

る施策農業生産コストの低減や6次産業化の基

礎となる革新的技術の開発を推進するとともに、研究開発から普及・産業化までの一貫支援、地球環境問題への貢献及び知的財産の保護・活用を内容とする技術・環境政策を総合的に推進します。

3 財政措置23 年度農業関係一般会計当初予算額は、

総額1兆 7,672 億円及び農山漁村地域整備交付金として 318 億円を計上しています。これにより、①戸別所得補償制度の本格実施、②農業生産基盤の整備、③生産対策の充実・強化、④農山漁村の6次産業化対策、⑤食の安全・消費者の信頼確保対策、⑥技術開発を推進します。

また、23 年度の農林水産省関係の財政投融資計画額は、1,826 億円を計上しています。このうち主要なものは、(株)日本政策金融公庫への 1,700 億円となっています。

4 立法措置重点施策をはじめとする施策の総合的な

推進を図るため、 第 177 回国会に以下の

2

平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 104: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

カ 「「食」に関する将来ビジョン」の推進体制として、大臣官房政策課に食ビジョン推進室(仮称)を設置します。

(2)地方組織の再編整備農業経営の安定や食品安全に関する業務

等を国が的確に実施する体制を整備するため、地方農政事務所等を廃止し、65 の地域センター(仮称)を設置します。

6 税制上の措置重点施策をはじめとする施策の総合的な

推進を図るため、以下をはじめとする税制措置を講じます。(1)農業経営の安定化

ア 農業経営基盤強化準備金制度について、対象となる交付金等を見直したうえ、その適用期限を2年延長します(所得税・法人税)。

イ  輸 入・ 国 産 農 林 漁 業 用 A 重 油 に 係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を 1 年延長します(石油石炭税)。

(2)農林水産関連産業の振興ア 新用途米穀加工品等製造設備の特別

償却制度について、対象設備から米穀粉製造設備のひきうす式及び媒体式の粉砕装置を除外したうえ、その適用期限 を 2 年 延 長 し ま す(所 得 税・ 法 人税)。

イ 「特定農産加工業経営改善臨時措置法」に基づく特例措置について、次のとおり見直します。a 「特定農産加工業経営改善臨時措

置 法」 の 特 定 農 産 加 工 業 者 に 該 当するものが、23 年4月1日から 25年3月 31 日までの間に、承認を受けた経営改善措置に関する計画に定める機械装置の取得等をした場合には、その取得価額の 30%の特別償却 が で き る 措 置 を 講 じ ま す(所 得税・法人税)。

b 事業用施設にかかる資産割の特例(資 産 割 4 分 の 1 控 除) に つ い て、

法案等を提出します。・「農林水産省設置法の一部を改正する法

律案」・「森林法の一部を改正する法律案」・「東日本大震災に対処するための土地改

良法の特例に関する法律案」・「東日本大震災に伴う海区漁業調整委員

会及び農業委員会の委員の選挙の臨時特例に関する法律案」

5 組織の再編整備(1)本省組織の再編整備

ア 戸別所得補償の本格実施に伴う交付金と戸別所得補償制度全体の総括について、経営局が担当する体制を整備します。

イ 水田活用のための交付金や、従来、総合食料局食糧部において担当していた米麦の需給対策等の米麦政策を含む農畜産物にかかる政策を、生産局が一元的に担当する体制を整備するとともに、新たに生産振興審議官(仮称)を設置します。

ウ 総合食料局を、従来から担当していた食品産業政策に加え、生産・加工・販売の一体化のための産地の支援、知的財産保護、地域ブランド化、地産地消、輸出促進、バイオマスの利活用等を含む農山漁村・農林漁業の6次産業化等を担当する局に再編し、産業局(仮称)を新設します。

エ 口蹄疫等悪性伝染病の防疫対策に必要な危機管理体制や海外における食料の生産状況等の調査体制を強化するため、動物検疫所に専門家を増員配置するとともに、国際食料調査官(仮称)を新設します。

オ 政策評価、行政事業レビュー、業務のリスク管理等を推進する事務局体制を強化するため、政策評価審議官(仮称)―大臣官房評価改善課(仮称)のラインを設けます。

3

概 説

Page 105: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

その適用期限を2年延長します(事業所税)。

(3)農山漁村の活性化・環境対策の推進環境関連投資促進税制を創設し、バイオ

マスエタノール製造設備を対象とします(所得税・法人税)。

7 金融措置農業の6次産業化の推進・意欲ある多様

な農業者の育成の観点から、経営の特性に応じた農業者の創意工夫を生かすことのできる支援措置である農業制度金融の充実を図ります。

8 政策評価効果的かつ効率的な行政の推進、行政の

説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づき 22 年8月に定めた政策評価基本計画(5年間計画)及び実施計画(単年度計画)により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)、事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を推進します。

Ⅰ 東日本大震災対策

1 当面の復旧対策(1)農地・農業用施設等の復旧

ア 農地・農業用施設災害復旧等排水機場等の応急対策を実施すると

ともに、除塩事業及び農地等の災害復旧を市町村に代わって国・県等が行う仕組みを創設します。

イ 災害対策支援機械湛水した農地や被災した排水機場等

に、国が保有する排水ポンプ等を配備し、海水等を強制排水します。

ウ 農地・農業用施設等災害復旧関連の調査

農 地・ 農 業 用 施 設 等 の 被 災 状 況 調査、機能の点検・診断や復旧計画の策

定等を実施します。エ 農林水産業共同利用施設災害復旧

被災した農業協同組合等が所有する農林水産共同利用施設の復旧を行います。

(2)生産手段・流通機能の回復ア 東日本大震災農業生産対策交付金

農業生産関連施設の復旧、農業機械の導入、生産資材の購入、土壌分析等について、都道府県向け交付金として支援します。

イ 卸売市場施設災害復旧被災地域に対する生鮮食料品等の安

定的な供給体制を早急に確保するため、震災により被害を受けた卸売市場の復旧を支援します。

ウ 政府所有米麦処理等損傷した政府所有米麦等の廃棄処理

及び荷崩れの現状復旧を行います。また、損傷備蓄小麦の代替品等の遠隔地からの輸送経費等を助成します。

(3)経営の継続・再建支援ア 被災農家経営再開支援

被災農業者の経営再開を支援するため、経営再建の意思のある農業者が地域で行う復旧の取組に対して支援金を交付します。

イ 被災家畜円滑処理・関連業種再開支援

被災農家の円滑な経営再開を図るため、死亡した家畜の円滑な処理と畜産関連業種従事者の技術研修等の取組を支援します。

ウ 農業経営復旧等のための金融支援天災融資資金の実質無利子化、公庫

資金等の無担保・無保証人での一定期間実質無利子化及び民間融資の特別債務補償等を実施します。

エ 東日本大震災被災地域土地改良負担金の償還助成

被災した農地・農業用施設に係る負担 金 に つ い て、 最 大 3 年 間 の 利 子 助

4

平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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成事業を創設し、営農再開まで農家を支援します。

オ 農業共済掛金の払込期限等の延長・共済掛金の早期支払

被災農家に対し、農業共済掛金の払込期限等を延長するとともに、共済金の早期支払いに向けて共済団体を指導します。

(4)農畜産物等の安全確認ア 土壌等の放射性物質緊急実態調査

関係県への協力等により、農用地の土壌等に含まれる放射性物質の調査を進めます。

イ 農畜産物等放射性物質調査・分析(独)農業環境技術研究所、(独)農

林水産消費安全技術センターの農産物・土壌等の放射性物質濃度の調査・分析体制を強化します。

ウ 輸出農畜産物等放射能検査対応輸出品に係る放射能検査を行う場合

の測定機器整備等の支援及び日本産農林水産物の信頼回復のための情報発信を行います。

エ その他被 災 し 損 壊 し た 植 物 防 疫 所、(独)

農業生物資源研究所等の改修を実施します。

2 本格的復興に向けた対策本格的復興に向けて、活力ある農山漁村

地域への再編、防災機能強化による安全で安心できる生活環境の確保など、中長期的に対応すべき事項について、「東日本大震災復興構想会議」や「食と農林漁業の再生実現会議」における議論を踏まえ、被災地域の声も聞きながら、検討を進めていきます。

Ⅱ 食料自給率向上に向けた施策

1 食料自給率向上に向けた取組食料自給率向上に向け、①戸別所得補償

制度を本格実施し、意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整えること、②「品質」や「安全・安心」といった消費者ニーズに適

かな

った生産体制への転換を進めること、③農業・農村の有する「資源」を有効に活用し、地域ビジネスの展開や新産業の創出を図ることを通じて、「6次産業化」を進めることを基本として推進していきます。

具体的には、生産面では、戸別所得補償制度により水田をはじめとした生産資源を最大限活用します。特に、二毛作により小麦の作付けを拡大するとともに、作付けられていない水田や有効利用が図られていない畑地を有効に活用した米粉用米・飼料用米、大豆等の作付けの大幅拡大、技術開発とその普及を通じた単収・品質の向上を図ります。また、農地については、遊休農地解消のための取組等を行うとともに、転用規制等の適正な運用により優良農地の確保を推進します。

消費面からは、人口減少社会・高齢化社会の一層の進展が見込まれるなかで、従来以上に消費者理解を得ながら潜在的需要の掘り起こし等を進め、国民運動「フード・アクション・ニッポン」の推進等を通じて、消費者や食品産業事業者に国産農産物が選択されるような環境を形成します。特に、朝食欠食の改善による米の消費拡大や、健康志向の高まりを受けた脂質の摂取抑制等に取り組みます。また、大豆加工食品について国産大豆の使用割合の大幅な引上げに取り組みます。

さらに、単に和食への回帰をねらうだけでなく、技術開発の進捗等を踏まえ、欧風化した現在の食生活のなかに国産農産物を上手に取り込むことに積極的に取り組みます。特に、現在浸透しているパン食、めん食について国産小麦・米粉の利用拡大、畜産物についての飼料自給率の向上に取り組みます。

5

概 説

Page 107: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

2 主要品目ごとの生産数量目標の実現に向けた施策

(1)米ア 鉄コーティング種子による湛水直播

栽培や不耕起V溝乾田直播栽培等の新技術の導入、米粉用米・飼料用米等の低コスト生産に向けた多収性品種の導入、植物浄化技術の導入・普及促進によるカドミウム濃度低減対策を推進します。また、米粉用米、飼料用米増産に対応するため、既存の大規模乾燥調製施設の再編整備を推進します。

イ 米穀の需給及び価格の安定を図るため、「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を策定し公表します。

ウ 戸別所得補償モデル対策の実施による米粉用米、飼料用米等の生産振興の状況等も踏まえ、米穀の適正かつ円滑な流通を確保するため、改正された「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(22 年4月施行)に基づき、適切な保管及び販売を徹底するとともに、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」

(22 年 10 月施行)に基づき、取引等の記録の作成・保存を徹底します。

エ 多様化する流通実態に応じた適正な価格形成に基づく市場取引の実施に資するための市場取引価格の動向を把握し毎月公表します。

(2)麦戸別所得補償制度のなかでパン・中華め

ん用小麦品種に対する加算措置を設けることにより、 需要規模が大きいものの国産シェアが低いパン・中華めん用小麦の作付け拡大を推進します。また、水田の高度利用(二毛作)による小麦、大麦・はだか麦の作付け拡大を推進します。さらに、麦の生産拡大に伴い必要となる乾燥調製施設の整備等を支援します。(3)そば

水田作における排水性の向上、麦等の後

作として作付け拡大及び機械化適性を有する多収品種の育成を推進します。(4)かんしょ・ばれいしょ

かんしょについては、意欲あるすべての経営体への農地・作業の集積や受託組織の育成等を推進するとともに、産地におけるかんしょの収益力の向上を図るため共同利用施設整備等の取組を支援します。

ばれいしょについては、ジャガイモシストセンチュウの発生・まん延の防止を行うための施設整備等を推進するとともに、加工食品用途への供給拡大に必要なソイルコンディショニング技術(畦

うね

から土ど

塊かい

・礫れき

を取り除くことにより、ばれいしょの高品質化、収量向上及び収穫作業の効率化を可能にする技術)を導入した機械化栽培体系の確立等を推進します。(5)大豆

戸別所得補償制度のなかで単収向上や作柄の安定化に資する耕うん同時畝

うね

立て播種栽培技術等の大豆 300 A技術、 水田作における湿害対策技術の普及を図るとともに農林漁業者等による新商品開発の取組等により大豆の作付け拡大を推進します。さらに、大豆の生産拡大に必要となる乾燥調製施設の整備等を支援します。(6)なたね

良質で高単収なたね品種の育成及び国産なたねを取り扱う搾油事業者と農業者の連携を推進します。(7)野菜

野菜の生産・出荷の安定と消費者への野菜の安定供給を図るため、野菜価格安定対策を的確かつ円滑に実施するとともに、新たな支援策として、面積要件等の緩和による対象者の拡大、市場シグナル等に即応したセーフティネットの強化、生産者負担の軽減を図ります。

また、契約取引への一層の支援強化として、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化法)

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 108: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

の特例措置により、 指定産地によらずリレー出荷による周年供給に取り組む生産者を支援するほか、当該取組における発動要件を緩和します。さらに、契約取引において豊凶にかかわらず収入が確保されるセーフティネット支援を新たにモデル事業として実施するとともに、野菜価格高騰等への適切な対応に向け緊急需給調整対策を強化します。

加えて、産地の収益力向上に向けて、共同利用施設等の整備、リース方式による園芸施設の導入、植物工場の普及・拡大を通じた施設園芸の高度化等を推進します。(8)果樹

優良品目・品種への転換、高品質化を加速化するため、産地ぐるみで改植等を実施した際の未収益期間に対する支援を行います。また、優良品目・品種への転換や小規模園地整備、計画生産・出荷の推進や緊急的な需給調整対策、自然被害果実の流通対策、契約取引の強化や加工原料供給の安定化を図るための加工流通対策を総合的に行います。(9)畜産物

需要に即した畜産物の生産推進のため、多様な経営の育成・確保、チーズ向け生乳の供給拡大や多様な和牛肉生産への転換及び飼養管理技術の高度化等を推進します。(10)甘味資源作物

てん菜については、直播栽培体系の確立・普及や家畜ふん尿等の未利用資源の活用等による肥料等に過度に依存しない持続的な畑作体制の確立を推進します。

さとうきびについては、農作業受委託の活用や機械化一貫体系の確立を推進します。(11)茶

産地の生産性向上と収益力の強化を図るため、改植等による優良品種等への転換や茶園の若返り、荒茶加工施設や仕上茶加工施設等の整備及び再編利用の取組を推進するほか、リーフ茶の需要喚起のため、生産

者と茶商工業者等の連携体制の構築や新商品開発等の取組を推進します。(12)飼料作物等

高収量・高品質な稲発酵粗飼料等の利活用の推進や草地基盤整備、放牧の推進、国産粗飼料の広域流通、飼料用米の利活用、飼料生産の組織化・外部化等及び飼料生産組織の経営高度化の取組を推進します。(13)その他地域特産物等

こんにゃくいも、雑豆等の特産農産物については、付加価値の創出、新規用途開拓、機械化・省力作業体系の導入等を推進します。

また、繭・生糸については、養蚕・製糸業と絹織物業者等が提携し、高品質な純国産絹製品づくりを推進します。

さらに、葉たばこについては、葉たばこ審議会の意見を尊重した種類別・品種別価格により、日本たばこ産業 ( 株 ) が買入れします。

加えて、いぐさについては、いぐさ産地と畳製造事業者等の提携した付加価値の高い畳製品づくりの推進及び国産畳表の価格下落影響緩和対策を講じます。

Ⅲ 食料の安定供給の確保に関する  施策

1 食の安全と消費者の信頼の確保(1)食品の安全性の向上

ア リスク分析に基づいた食の安全確保(ア)食品安全委員会において、厚生労

働 省、 農 林 水 産 省 等 か ら 要 請 を 受け、または自らの判断により、科学的 知 見 に 基 づ き、 客 観 的 か つ 中 立公正に食品健康影響評価(リスク評価)を実施します。

(イ)リスク管理を一貫した考え方で行うための標準手順書に基づき、情報の収集・分析、科学的・統一的な枠組みのもとでの有害化学物質・有害

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Page 109: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

微生物の調査や生産資材の試験等を実施します。

  また、食品の安全性向上に活用するための試験研究及び調査結果の科学的解析に基づく施策・措置について企画や立案を推進します。

(ウ)食品中に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の周知に努めるとともに、制度導入時に残留基準を 設 定 し た 農 薬 等 に つ い て の 食 品健康影響評価結果を踏まえた残留基準の見直し、新たに登録等の申請があった農薬等についての残留基準の設定を推進します。

(エ)食品の安全性等に関する国際基準の策定作業への積極的な参画や、国内における情報提供や意見交換を実施します。

イ リスクコミュニケーションの推進(ア)食品安全委員会は、リスク評価結

果等について、消費者、事業者、生産者等の関係者による情報共有を図るために、ホームページ等を通じた正確かつわかりやすい情報提供や関係行政機関と連携した意見交換会、意見・情報の募集等を実施します。

(イ)消費者庁は、食の安全・安心を確保するための施策について、消費者に身近な地方公共団体や消費者団体等と連携し、消費者・事業者・行政等の情報共有・理解促進に資する意見交換会を実施します。

(ウ)厚生労働省は、食品の安全性確保に関する施策等について、消費者等関係者に対する説明・意見聴取のため、関係府省や地方公共団体と連携した意見交換会、施策の実施状況の公表、ホームページを通じた情報提供、意見・情報の募集等を実施します。

(エ)農林水産省は、食品の安全確保に関する施策等の策定に国民の意見を

反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、消費者、生産者、事業者等の関係者に正確かつわかりやすい情報を積極的に提供するとともに意見交換を実施します。

ウ 危機管理体制の整備食品の摂取による人の健康への重大

な被害が拡大することを防止するため、消費者庁を中心とした関係府省庁の消費者安全情報総括官による情報の集約及び共有を図るとともに、消費者の生命または身体に生ずる被害に関する緊急事態等における対応体制を強化します。

エ 研究開発の推進(ア)食品の安全を確保するための各種

調査研究を推進します。また、食品を汚染する有害化学物質について暴露状況を詳細に把握し、リスク低減方策を検討します。

(イ)食品の加工・流通の高度化、国際化等により多様化する危害要因について、生産から流通・加工段階にわたる体系的なリスク低減技術の開発を推進します。

(ウ)鳥インフルエンザ、BSE、口蹄疫等の診断・防疫措置の迅速化、効率化 等 を 図 る 技 術 の 開 発 を 推 進 し ます。

オ 食品安全庁等についての検討食品の安全性の向上を図るため、リ

スク管理機関を一元化した「食品安全庁」について、関係府省の連携のもと検討します。

また、リスク評価機関の機能強化については、そのための取組を継続的に実施します。

(2)フードチェーンにおける取組の拡大ア 生産段階における取組(ア)農業生産工程管理(GAP)の導入・

推進GAP の導入を支援するとともに、

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 110: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

取組内容の高度化を図るため高度な取組内容を含む GAP の共通基盤部分に関するガイドラインを活用した取組を推進します。

(イ)生産資材の適正な使用農薬、肥料、飼料・飼料添加物、

動物用医薬品の適正使用や、科学的デ ー タ に 基 づ く 生 産 資 材 の 使 用 基準、有害化学物質等の残留基準値の設定・見直し等のリスク管理措置等を的確に行い、安全な農畜水産物の安定供給を確保します。

イ 製造段階における取組(ア)食品製造事業者の中小規模層にお

ける危害分析・重要管理点(HACCP)手法の導入を加速化するため、「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時設置法」による長期低利融資を行うとともに、低コスト導入手法の構築・普及、専門家からの助言・指導が受けられる体制の構築、現場責任者・指導者養成のための実践的な研修の取組を支援します。

   ま た、HACCP 手 法 の 導 入 が 困 難な零細規模層に対して一般的衛生管理を徹底させるための基礎的な研修等の取組を支援します。

(イ)食品等事業者に対する監視指導や事業者による自主的な衛生管理を推進します。また、食品衛生監視員の資質向上や検査施設の充実等を推進します。

(ウ)長い食経験を考慮し使用が認められている既存添加物については、毒性試験等を実施し、安全性の検討を推進します。また、市場での流通実態のない既存添加物については、既存添加物名簿からの削除に向けた取組を推進します。さらに、国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている食品添加物については、国が主体的に指定に向けて検討します。

(エ)保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)をはじめとした健康食品について、事業者の安全性確保の取組を推進するとともに、制度の普及・啓発に取り組みます。

(オ)特定危険部位(SRM)の除去・焼却、BSE 検査の実施等により、食肉の安全を確保します。

ウ 輸入に関する取組輸入食品の安全性の確保は重要な課

題となっており、国民の関心も極めて高いことから、輸出国政府との二国間協議や在外公館を通じた現地調査等の実施、情報等の入手のための関係府省との連携の推進、監視体制の強化等により、輸入食品の安全性の確保を図ります。

エ 流通段階における取組食品事故発生時の回収や原因究明等

の迅速化に資するため、食品の移動の追跡・遡及の備えとするトレーサビリティに関し、米穀等については、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(22 年10 月施行)により取引等の際の記録の作成・保存の義務化を内容とするトレーサビリティ制度を実施します。これ と あ わ せ、 他 の 飲 食 料 品 に つ い ても、入出荷記録の作成・保存の義務付け 等 に つ い て 検 討 を 進 め ま す。 さ らに、国産牛肉については、制度の適正な実施が確保されるよう DNA 分析技術を活用した監視等を実施します。

(3)食品に対する消費者の信頼の確保ア 食品や農林水産分野における標準化

の推進事業者や消費者の多様なニーズにこ

たえられるよう、透明性の高い手続きにより JAS 規格の制定と見直しを進めます。

また、食品の品質管理や消費者の信頼確保等に意欲的に取り組む食品産業

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第2部

Page 111: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

事業者と関連事業者との情報の共有を進めるとともに、既存の JAS 規格の見直しや、新たなニーズに対応した規格についての検討を進め、食品や農林水産分野における標準化を推進します。

イ 食品表示の適正化の推進DNA 分析等科学的手法を活用した

食品表示の真正性の確認を行うことにより、食品表示について国(食品表示Gメン)による監視を徹底するとともに、消費者の協力を得て表示の監視を行う食品表示ウォッチャー制度や食品産業事業者に対する表示指導の強化等に取り組むことにより、食品表示の一層の適正化に努めます。

ウ 原料の原産地表示の推進23 年7月から、米トレーサビリティ

制度の産地情報伝達部分が施行され、消費者の商品選択の判断に資するよう、米穀等の産地情報伝達を義務化します。

また、加工食品における原料原産地表示の義務付けを着実に拡大するほか、食品産業のうち、原産地表示のためのガイドラインにより自主的な原料原産地表示を進めようとする業界の事業者に対し、具体的な表示方法等についての実践的な研修会等を実施することにより、食への信頼を確保します。

エ フード・コミュニケーション・プロジェクトの推進

食の信頼向上に向けた食品産業事業者の主体的な活動を促すため、食品の品質管理や消費者対応等の取組に関する情報の積極的な提供を働きかけるとともに、この取組が取引先や消費者により適正に評価される機会を増大させます。

オ 消費者への情報提供食品安全等について、消費者にわか

りやすく親しみやすいホームページによる情報提供をします。また、「消費

者の部屋」等において、消費者からの相談を受付けるとともに、特別展示等を開催し、農林水産行政や食生活に関する情報を幅広く提供します。

2 国産農作物を軸とした食と農の結び付きの強化

(1)国民との結び付きの強化ア 食料自給率向上に向けた国民運動の

推進食 料 自 給 率 向 上 に 向 け た 国 民 運 動

「フード・アクション・ニッポン」の推進を通じて、食料自給率向上に資する 具 体 的 な 行 動 を 喚 起 し ま す。 推 進パートナー企業の拡大や連携の強化、米粉の消費拡大等に重点的に取り組みます。

イ 国産農産物の消費拡大の促進(ア)食料自給率向上のため、食品産業

等と連携し、朝食欠食の改善や米飯学校給食の推進に取り組みます。

  また、医師や病院栄養士等の専門家を通じて健康面からごはん食の効用をわかりやすく発信してもらう取組を支援します。

(イ)食料自給率向上に向けた国民運動「フ ー ド・ ア ク シ ョ ン・ ニ ッ ポ ン」の活動の一環として「米粉倶楽部」の取組を展開し、様々な企業・団体等が米粉の消費拡大のための活動をしていくことで、米粉の認知拡大と消費の拡大を図ります。

(ウ)「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」(21 年7月施行)に基づき、米粉用米、飼料用米の利用促進を図るため、生産・流通・加工・販 売 の 各 関 係 者 に よ る 連 携 を 前 提に、米粉用米、飼料用米の生産拡大や必要な機械・施設の整備等を総合的に支援します。

(エ)麦や大豆等の生産拡大を図るため、パンや中華めん等の用途にきめ細か

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 112: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

く対応した専用品種の作付けや、地域の食品製造業者と連携した特色のある製品づくりを推進し、需要の拡大を図ります。

  また、野菜や果実の摂取増加等に対する、出前授業等の取組を支援します。

ウ 食品ロスの削減に向けた取組食品廃棄物の発生状況等の調査・検

討・分析を行い、具体的かつ効果的な発生抑制方策を取りまとめ、食品産業事業者に対し研修会を通じて普及啓発を図るとともに、フードバンクの活動体制の整備を支援します。

エ 国民運動としての食育の推進「第 2 次食育推進基本計画」等に基

づき、関係府省が連携しつつ、様々な分野において国民運動として食育を推進します。

また、子どもの望ましい基本的な生活習慣を育成し生活リズムの向上を図るための「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進します。

オ 生産から消費までの段階を通じた食育の推進

「生涯食育社会」の構築に向け、各世代の食生活上の課題を踏まえた啓発手 法 を 検 討・ 普 及 す る と と も に、 企業、学校、消費者団体等が連携して取り組む食育の実践等を促進するための広域的、先進的な活動に対して支援します。また、食育の実践を推進するため、地域における食育活動に対して支援します。

カ 学校における食育の推進栄養教諭が中核となって家庭や地域

との連携を図りながら食育を推進するための実践的取組の展開、推進体制の整備等への支援等を行います。

また、学校給食における地場産物の活用を促進するための事業、学校給食を取り巻く行政上の課題に対応するた

めの調査研究、学校給食における衛生管理の充実のための事業等を実施します。

(2)地産地消の推進ア 幅広い者の主体的な地産地消の取組

を推進するため、地産地消活動の優良事例等について、調査・分析を行うとともに、その成果を普及します。

イ 講習会の実施や地産地消の発展に活躍が期待されるコーディネーターの選定、派遣等により、地産地消に取り組む人材の育成・確保を促進するとともに成功事例のノウハウ等を普及します。

ウ 地産地消の中核的施設である農産物直売所や処理加工施設等の整備を支援します。

エ 地産地消活動の収益力向上のため、生産者、学校給食、外食・中食事業者等の関係者が参画した協議会活動や、販売企画力、生産技術力、人材育成力の強化、農産物直売所の機能強化、ネットワーク化等を支援します。

3 食品産業の持続的な発展(1)フードチェーンにおける連携した取

組の推進ア 食品流通の効率化・高度化(ア)食品流通の効率化

食 品 流 通 の 効 率 化 を 図 る た め、フードチェーンの各段階において、関係者が連携して行う取組を推進します。

(イ)卸売市場の機能強化・活性化等卸売市場の機能強化・活性化を図

るため、経営戦略的な視点をもった市場運営の確保、コールドチェーンシステムの確立をはじめとした生産者 や 実 需 者 の ニ ー ズ へ の 的 確 な 対応、卸売市場間の役割分担の明確化による効率的な流通の確保等に向けた取組を推進します。

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イ フードチェーンにおける取引情報の標準化の推進

食 品 産 業 の 持 続 的 な 発 展 を 図 る ため、食品事業者や関係事業者と協働して、フードチェーンにおいて関係者間で伝達が必要な事項の共通化の取組を推進します。

ウ 高齢化の進展等に対応した食料提供高齢者向け加工食品の安定的な供給

に向けた方策を検討し、課題や対応方向を整理したガイドラインを作成するとともに、食料品へのアクセス困難度を客観的に推計するための指標の実用化に向けた取組を支援します。

(2)国内市場の活性化ア 農商工連携や地域食品のブランド化

等の推進(ア)6次産業化プランナーによる農林

漁 業 者 に 対 す る 専 門 的 な ア ド バ イス、交流会・技術研修の開催、農林漁業者の新商品開発や商談会等を通じ た 販 路 開 拓 の 取 組 等 を 支 援 し ます。

(イ)加工・業務用需要に対応した国産原材料の安定的な供給連鎖(サプライチェーン)の構築に向け、生産者・中間業者・食品製造業者等による一体的な取組を支援します。

(ウ)食品産業の競争力の強化のため、競争的資金を活用して技術開発を促進するとともに、異業種・異分野間を含めた産学官の連携形成等の取組を支援します。

(エ)地域食品のブランド化を推進するため、ブランド化に取り組む事業者等を対象とした研修会の開催、ブランドアドバイザーの派遣等の取組を推進します。

イ 食品産業における環境負荷の低減及び資源の有効利用

(ア)食品廃棄物の削減及び有効利用促進対策

食品リサイクル・ループの構築、技術の改良による食品廃棄物の新規用途開発に向けた事業化の支援等食品廃棄物の削減及び有効利用のための取組を促進します。

(イ)容器包装リサイクル促進対策「容器包装に係る分別収集及び再

商品化の促進等に関する法律」に基づく義務履行の促進、容器包装廃棄物の排出抑制のための取組として、食品関連事業者への点検指導、食品小売事業者からの定期報告等を実施します。

(ウ)CO2 排出削減対策食品産業における CO2 排出削減の

取組を推進するため、中小事業者が取 組 可 能 な CO2 排 出 削 減 方 策 や 生産、製造、流通分野の事業者が連携した取組を調査・分析し、研修会を開 催 す る と と も に、 自 主 行 動 計 画の進捗状況の点検等を実施します。

ウ 食品関係事業者のコンプライアンスの確立のための取組

食品関係事業者の自主的な企業行動規範等の策定を促すなど食品関係事業者のコンプライアンス(法令の遵守及び倫理の保持等)確立のための各種取組を促進します。

(3)海外展開による事業基盤の強化アジア等における日本の食文化の発信の

強化と連携した形で食品製造業・流通業の現地生産・販売の取組等を促進するため、現地生産・販売に必要な情報の収集・提供、現地での連絡協議会の開催、技術的課題の解決等を支援します。

4 総合的な食料安全保障の確立不測時のみならず、平素から食料の供給

面、需要面、食料の物理的な入手可能性を考慮するアクセス面等を総合的に考慮し、関係府省との連携も検討しつつ、総合的な食料安全保障の確立を進めます。 そのた

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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め、食料の安定供給に影響を与える可能性がある様々なリスクについて分析・評価、対応策の検討・実施を恒常的に進めます。(1)生産資材の確保等生産面における不

安要因への対応ア 肥料の供給安定化対策

肥料供給の安定化のため、りん鉱石等の海外に依存している肥料原料の安定確保や米糠等国内の有機資源の肥料としての有効利用に向けた取組を支援するとともに、土壌診断や診断結果に基づく施肥設計の見直しによる施肥量の適正化・抑制を推進します。

イ 遺伝資源の収集・保存・提供機能の強化

食 料 の 安 定 供 給 に 資 す る 品 種 の 育成・改良に貢献するため、農業生物資源ジーンバンクにおいては、収集した遺伝資源を基に、幅広い遺伝変異をカバーしたコアコレクションの整備を進め、植物・微生物・動物遺伝資源のさらなる充実と利用者への提供を促進します。

ウ 動植物防疫体制の強化(ア)家畜防疫体制の強化

世界各国における口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ等の発生等を踏まえ、国内における家畜の伝染性疾病の発生予防及びまん延防止、発生時の危機管理体制の整備等を実施します。

(イ)輸入検疫体制の強化防疫官の適切な配置等検査体制の

整備・強化や、対象病害虫を明確化した適切な輸入植物検疫措置の実施等により、家畜及び水産動物の伝染性疾病及び病害虫の侵入・まん延を防止します。また、政府が輸入する米麦について残留農薬等の検査を実施します。

(ウ)産業動物獣医師の育成 ・ 確保獣医系大学の学生への修学資金の

貸与や臨床研修等の実施による産業動物獣医師の育成等の支援と、無獣医師地域等における獣医療の提供を支援します。

(2)流通・消費面における不安要因への対応

ア 食のライフラインの確保新型感染症発生時等における食品産

業事業者等の事業継続計画の策定を促進するとともに、その効率化のための情報収集及び提供を行います。また、家庭における食料品の備蓄を推進します。

イ 適切な備蓄の実施(ア)米

米穀の備蓄運営について、米穀の供給が不足する事態に備え、国民への 安 定 供 給 を 確 保 す る と い う 備 蓄制度本来の役割を明確化するため、これまでの回転備蓄方式を見直し、23 年 度 よ り 棚 上 げ 備 蓄 方 式 に 移行し、23 年6月末時点での在庫量100 万t程度を現行の適正備蓄水準として保有することとします。

(イ)麦海外依存度の高い小麦について、

港湾スト等により輸入が途絶した場合に備え、外国産食糧用小麦需要量の 2.3 か月分を備蓄し、そのうち政府が 1.8 か月分の保管料を助成します。

(ウ)飼料穀物海外依存度の高い飼料原料につい

て、天災等による輸送ルートにおける障害等、不測の事態に対応するため、 と う も ろ こ し・ こ う り ゃ ん を40 万t程度備蓄します。

(3)国際的な食料の供給不安要因への対応

ア 国際食料需給・価格動向分析等(ア)国際食料需給・価格動向分析

省内外において収集した国際的な

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Page 115: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

食料需給にかかる情報を一元的に集約するとともに、我が国独自の短期的な需給変動要因の分析や、中長期の需給見通しを策定し、これらを国民 に わ か り や す く 発 信 し ま す。 また、世界の超長期食料需給予測を行うためのシステムの研究・開発に取り組みます。

(イ)農産物の安定的な輸入の確保穀物の輸入先国との緊密な情報交

換を通じ、安定的な輸入を確保します。また、実需者に対して安定的に大豆を供給するため、輸入大豆の調達先の多角化及び諸外国における大豆安定供給の取組にかかる調査を実施します。

(ウ)商品先物市場の透明性の向上各国規制当局と商品先物市場の監

督上必要な情報を交換する枠組み及び我が国の商品先物市場において公正な取引を確保していくための監視体制を強化します。

(エ)国際港湾の機能強化食糧等の安定的かつ安価な供給を

目的とする「国際バルク戦略港湾」の 選 定 に 向 け た 取 組 み を 推 進 し ます。また、国際海上コンテナターミナル、国際ターミナルの整備等、国際港湾の機能強化を推進します。

イ 国際協力の推進(ア)世界の食料安全保障にかかる国際

会議への参画G20 と し て 初 め て 開 催 予 定 の 農

業大臣会合について、食料及び農産物価格の乱高下に対する国際協調等について議論すべく適切に対応します。 こ の ほ か、G8 サ ミ ッ ト、G20サミット、ASEAN+3 農林大臣会合、国際連合食糧農業機関(FAO)総会等世界の食料安全保障にかかる国際会議に参画し、世界の食料生産の増大に向けた国際的な取組を推進しま

す。(イ)食料・農業分野における技術・資

金協力世界の貧困削減・飢餓撲滅に貢献

すべく、食料・農業分野における国際協力を実施します。a 援助需要を的確に反映した国別

援助計画を策定します。b 開発途上国からの要請に応じ、

技術協力及び資金協力を実施します。

c ①世界の食料安全保障の確保や②気候変動等地球的規模の課題への対応、③自然災害・紛争後の復興支援を農林水産省の ODA における重点分野とし、研修員の受入れ、専門家の派遣及び国際機関への資金拠出等を実施します。

(ウ)国際的な食料の安定供給の確保に向けた支援策の強化

a  ア ジ ア 太 平 洋 経 済 協 力(APEC)地 域 及 び 世 界 の 農 業 生 産 増 大 に 貢献するため、APEC 地域の食料安全保 障 に 関 す る 取 組 を 推 進 す る た めの情報プラットフォームの構築等、APEC 食 料 安 全 保 障 担 当 大 臣 会 合(22 年 10 月 開 催 ) に お い て 承 認 された行動計画を着実に実施します。

b  東 ア ジ ア 地 域 に お け る 大 規 模災 害 等 の 緊 急 時 に 米 を 支 援 す る

「ASEAN+3 緊急米備蓄」の構築に努力します。

c ASEAN 地 域 の 食 料 安 全 保 障 を 強化するため、域内各国の統計情報等の整備を支援します。

d 世界の穀物需給の安定に貢献するため、乾燥・塩害等の不良環境に強い遺伝子を活用した小麦・稲等を開発するための国際共同研究を推進します。

e アフリカの食料安全保障に貢献するため、米生産倍増、豆類の増産に

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 116: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

加 え い も 類 の 増 産 支 援 を 開 始 し ます。

ウ 海外農業投資の支援海外農業投資を支援するため、関係

府省・機関により構成される「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」において取りまとめた「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」(21 年8月)に基づき、民間企業からの総合的な支援の要望への対応等を実施します。

この一環として、FAO への拠出により、世界的な農業投資情報の一元化や農業投資促進のための政策ガイダンスづくり等の作業を進めます。

ま た、FAO、 国 際 農 業 開 発 基 金(IFAD)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世 界 銀 行 等 に よ る「責 任 あ る 農 業 投資」のための行動原則の策定に向けた取組を支援します。

5 輸入国としての食料安定供給の重要性を踏まえた国際交渉への対応

(1)WTO 交渉における取組「多様な農業の共存」という基本理念の

もと、各国の農業が発展することができるような貿易ルールの確立に向けて交渉に取り組みます。

具 体 的 に は、22 年 11 月 の G20 首 脳 会議等で、23 年が交渉妥結の「機会の窓」とされており、妥結に向けて、我が国の食料輸入国としての立場を最大限に反映すべく、関係国等と連携を図りつつ、政府一体となって戦略的かつ前向きに対応します。(2)EPA(経済連携協定) / FTA(自由

貿易協定)への取組等23 年 5 月に「政策推進方針」が閣議決

定 さ れ た こ と を 受 け、EPA / FTA に つ いて は、「FTAAP・EPA の た め の 閣 僚 会 合」において、「包括的経済連携に関する基本方針」に基づく高いレベルの経済連携推進や経済安全保障の確立等、国と国との絆の

強化に関する基本的考え方を、震災や原子力災害によって大きな被害を受けている農業者・漁業者の心情、国際交渉の進捗、産業の空洞化の懸念等に配慮しつつ、検討します。

Ⅳ 農業の持続的な発展に関する施策

1 戸別所得補償制度と生産・経営関係施策の実施

(1)戸別所得補償制度の本格実施農業の戸別所得補償制度は、販売価格が

生産費を恒常的に下回っている作物を対象に、その差額を交付することにより、農業経営の安定と国内生産力の確保を図り、もって食料自給率の向上と農業の多面的機能を維持することを目的とするものです。

22 年度のモデル対策の実施状況を踏まえて、水田農業に加えて、麦、大豆等の畑作物に対象を拡大し、本格実施します。具体的には、

ア 麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたねを対象に、数量払を基本に、営農を継続するために必要最低限の額を交付する面積払を併用した仕組みにより所得を補償する

「畑作物の所得補償交付金」イ 水田で麦、大豆、米粉用米、飼料用

米等の戦略作物を生産する農業者に対して、主食用米並みの所得を確保し得る水準の交付金を面積払で直接交付する「水田活用の所得補償交付金」

ウ 主食用米については、モデル対策と同様に、生産数量目標に従って生産を行う販売農家・集落営農に対して、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額分に相当する交付金を直接交付する

「米の所得補償交付金」を措置します。

なお、米への助成については、モデル対策の変動部分に代わるものとして、23 年

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第2部

Page 117: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

産米にかかる「米価変動補てん交付金」を24 年度に措置することとしています。

食料自給率向上のためには、対象作物の生産性や品質の向上をはじめ、農地の有効活用や対象作物の生産を担う農業経営の基盤の確立を図ることが重要であることから、政策誘導が必要なものとして、①品質加算、②規模拡大加算、③再生利用加算、④緑肥輪作加算、⑤集落営農の法人化支援を講じます。(2)米の需給調整の推進

主食用米の需要は、人口の減少や高齢化の進展等により今後も減少していくことが見込まれるため、引き続き需給調整を図ることが必要との観点から、年度ごとに需要実績等に基づき生産数量目標を策定・配分し、需要に応じた米の供給を推進します。(3)生産・経営関係施策の実施

ア 水田・畑作経営所得安定対策水 田 作 及 び 畑 作 の 土 地 利 用 型 農 業

を営む農業者の経営安定を図るため、22 年産の販売収入に対して、収入減少影響緩和対策等を措置します。

イ 野菜関係対策の実施野菜の生産・出荷の安定と消費者へ

の野菜の安定供給を図るため、野菜価格安定対策を的確かつ円滑に実施するとともに、新たな支援策として、面積要件等の緩和による対象者の拡大、市場シグナル等に即応したセーフティネットの強化、生産者負担の軽減を図ります。

また、契約取引への一層の支援強化として、六次産業化法の特例措置により、指定産地によらずリレー出荷による周年供給に取り組む生産者を支援するほか、当該取組における発動要件を緩和します。加えて、契約取引において豊凶にかかわらず収入が確保されるセーフティネット支援を新たにモデル事業として実施します。さらに、野菜価格高騰等への適切な対応に向け緊急

需給調整対策を強化します。ウ 果樹関係対策の実施

優良品目・品種への改植、需給調整のための加工仕向けへの支援等を引き続き実施します。また、優良品目・品種への改植を促進するため、改植後数年間の未収益期間に対する経営支援対策を新たに実施します。

エ 砂糖及びでん粉関係対策の実施「砂糖及びでん粉の価格調整に関す

る法律」に基づき、砂糖及びでん粉の価格調整制度を実施するとともに、当該制度の安定的な運営を確保する観点か ら、 緊 急 に 制 度 の 実 施 主 体 で あ る

(独)農畜産業振興機構の砂糖勘定の収支改善を図るための交付金を交付します。

また、さとうきび・でん粉原料用かんしょ生産者及び国内産糖・国内産いもでん粉の製造事業者に対して、経営安定のための支援を実施します。

オ 畜産物関係対策の実施(ア)加工原料乳の再生産と肉用子牛生

産の安定を図るため、加工原料乳生産者補給金制度、肉用子牛生産者補給金制度を適正に運用します。

(イ)指定食肉(牛肉・豚肉)の価格安定を図るため、「畜産物の価格安定に 関 す る 法 律」 を 適 正 に 運 用 し ます。

(ウ)上記のほか、経営安定対策として、a 酪農関係では、①乳価の低いチー

ズ向け生乳を対象に助成金を交付、②加工原料乳及びチーズ向け生乳の取引価格が低落した場合の補てんを実施、③環境負荷軽減の取組を条件に飼料作付面積に応じた固定支払等の対策

b 肉用牛関係では、①肉用子牛対策として、肉専用種を対象に肉用子牛生産者補給金制度を補完する肉用牛繁殖経営支援事業、②肉用牛肥育対

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 118: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

策として、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン)

c 養豚関係では、生産者への直接交付方式による養豚経営安定対策事業

d 養鶏関係では、卵価低落時の価格差補てん事業に加え、大幅な卵価低落時に、需給改善を推進する仕組みを導入した鶏卵生産者経営安定対策事業

等を実施し、畜産農家等の経営安定を図ります。

カ 作目別各種生産振興施策の改善これまで作目別に実施されてきた各

種生産振興施策について、作目ごとに克服すべき課題については解決に向けた対策を講じつつ、作目を問わず必要とされる施策についてはメニュー化・統合化を進めるなど、国民にとってわかりやすく、使いやすい施策にしていくための改善を図ります。

2 農業・農村の6次産業化等による所得の増大

(1)生産・加工・販売の一体化農林漁業者等による農林漁業の6次産業

化を推進するため、農林漁業者等が農林水産物等の生産に加え、加工や販売を一体的に行う取組や当該取組に資する研究開発とその成果を利用する取組に対して、予算及び金融上の支援等を行います。(2)産地の戦略的取組の推進

産地単位での生産力の強化や加工・販売への取組を通じて、産地の収益力を高め、その持続的発展を図るため、生産・販売戦略を産地単位で作成することを推進し、それに基づき実施される産地機能の中核となる基幹施設の整備や機械・設備の導入、技術導入、販売企画力の強化、産地間連携の促進、地域ブランドの確立等に向けた取組に対して重点的に支援します。また、産地の収益力を向上させる取組について、その効果を最大限に発揮させるため、普及指導

員等を中核として新技術、経営、販売、加工等の多様な外部専門家が一体となって支援する体制の構築を推進します。(3)収益性の高い部門の育成・強化

ア 農業所得の増大を図り、農地を有効に利用していくうえで、収益性の高い非食用作物についても育成・強化を図ります。特に、世界第3位の産出額を有する花きについては、教育効果の高い花育活動の推進等により需要拡大を図りつつ、生販連携を通じた日持ち保証販売の推進等により輸入品に対する競争力を強化する取組を進めます。

イ 農産物が有する多彩な物質を生成する機能等を活かした新たな産業の創出に向けて、新たな食品素材や工業・製薬原料等になり得る機能性成分をもつ農産物の開発・発掘、製品化に向けた産地と企業のマッチング等を総合的に支援します。

ウ 高度な環境制御により計画生産・出荷を可能とする植物工場の普及に向けて、23 年度末までに、 省エネ化、 自動化等を通じて生産コストの3割縮減を 図 り、21 年 時 点 で 全 国 50 か 所 程度で稼働している設置数の3倍増を目標に拡大を図ります。

(4)農林水産物・食品の総合的な輸出促進

23 年 3 月の東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を受けて、諸外国において日本産食品の輸入規制を強化する動きがみられます。これまで、日本産食品は「安全で高品質」という特質によりアジア等の富裕層、中間層に評価され輸出を伸ばしていましたが、今後の輸出に影響が生じることが懸念されます。

今後、日本産食品の輸出に当たっては、日本産食品のイメージを回復し、改めて安全性をアピールし、国別に農林水産物の輸出を建て直していくことが必要と考えられます。このため、諸外国政府に対し、過剰

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Page 119: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

な規制とならないよう働きかけを行っていくとともに、放射性物質の検査のための体制の整備を進め、日本産品のイメージ回復のための対策や、輸出に係る農林漁業者、食品企業等に対する支援を実施していきます。

ア 放射性物質の検査証明を要求する国が多数あることに対応し、都道府県又は民間検査機関が輸出に取り組む事業者の輸出品に係る放射性物質の検査

(セシウム、ヨウ素などの放射性物質)を行う機器の整備等に要する費用を支援します。

イ 輸出先国・地域に対し、日本産農林水産物・食品は、厚生労働省が示した暫定規制値を下回るものしか流通・販売されていない等の正確な情報提供を行うための広報資料等を作成し、日本産農林水産物・食品の安全イメージの回復・増進に努めます。

ウ 主要な輸出先国・地域において、日本産農林水産物・食品の信頼回復や風評被害防止に向け国別に市場分析等を行います。

エ 日本国内や諸外国における商談会、輸出セミナーをはじめ、農林漁業者、食品企業等の輸出促進のための活動を支援します。

オ 「農林水産知的財産保護コンソーシアム」や「東アジア植物品種保護フォーラム」の活動等を通じた知的財産の保護の強化を推進します。

カ ( 独 ) 日 本 貿 易 振 興 機 構(JETRO)において、中小企業の海外展開支援のため、現地におけるきめ細かなビジネスマッチング支援、主要輸出市場における調査等を実施します。また、(独)中小企業基盤整備機構では、海外経験の少ない中小企業に対し、経営支援の一環として海外販路開拓戦略策定等を支援します。

キ 北海道の食クラスター活動と連携

し、農水産品の道外移出や輸出における物流効率化方策について調査を実施します。

(5)農業生産資材費の縮減等ア 農業生産資材費の縮減(ア)肥料、飼料、農薬、農業機械等の

農業生産資材費の縮減に向け、単肥や 単 肥 を 混 合 し た 配 合 肥 料、 エ コフィード等の低コスト飼料、大型包装農薬やジェネリック農薬、中古農業機械等の低コスト生産資材の活用を推進します。

(イ)農業者の生産資材の効率的利用を促進するため、土壌・たい肥中の肥料成分を踏まえた施肥や局所施肥等による肥料利用効率の向上、総合的病害虫・雑草管理(IPM)の活用による農薬使用量の抑制、作期分散による農業機械稼働率の向上等を推進します。

  また、これらの取組を都道府県や関係団体が策定している資材費低減のための行動計画に基づき促進します。

イ 飼料価格高騰対策配合飼料価格の大幅な変動に対応す

るための配合飼料価格安定制度を適切に運用し、国産飼料の増産や食品残さを飼料として利用する取組等を支援します。

ウ 省エネルギー対策施設園芸用省エネルギー設備のリー

スやヒートポンプ、木質バイオマス利用加温設備等の先進的加温設備の導入に対する支援を実施します。

3 意欲ある多様な農業者による農業経営の推進

(1)意欲ある多様な農業者による農業経営の育成・確保

戸別所得補償制度の導入により、兼業農家や小規模経営を含む意欲あるすべての農

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 120: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

業者が農業を継続できる環境を整備するとともに、新規就農者を幅広く確保し、農業経営の多角化・複合化等の6次産業化による付加価値の向上分を経営に取り入れる取組を後押しすること等により、競争力ある経営体が育成・確保されるようにします。

また、現場の主体的判断を尊重した多様な努力・取組を支援するため地域の関係機関が一体となった体制により、技術や経営能力の向上等の取組を促進します。 さらに、離農者や負債をかかえる農家の経営資源の円滑な継承の在り方について検討を進めます。

ア 家族農業経営の育成・確保地域農業の担い手の中心となる家族

農業経営について、経営規模の拡大や農業経営の多角化・複合化等の6次産業化の取組による経営改善を促します。その際、農業者の自主的な申請に基づき市町村等地域の関係機関が協力して地域農業の担い手を育成・確保する仕組みとして定着・普及している認定農業者制度の活用を推進します。

認定農業者に対しては、借り入れる資金等の負担軽減措置、交付金等を資産の取得のために積み立てた場合の課税の繰延措置、経営規模の拡大や経営の多角化を図るために必要な農業用機械・施設等の整備にかかる支援等を実施します。

イ 集落営農の育成・確保地域農業の生産性向上、経営規模が

零細で後継者が不足している地域における農業生産活動の維持等を図るため、小規模な農家や兼業農家も参加した 集 落 営 農 の 育 成・ 確 保 を 推 進 し ます。

このため、集落営農を農業者戸別所得補償制度の対象とするとともに、集落営農が法人化した場合の事務費の助成、集落営農の経理担当者を養成する活動等の支援、集落営農の組織化・法

人化に必要な農業用機械導入の支援等を実施します。

ウ 法人経営の育成・確保農業経営を継続・発展させる意欲と

能力を有する法人経営は、地域における雇用創出や農業生産活動の活性化、農地の保全と有効な活用に寄与していることから、その育成・確保を図ります。このため、低利融資や無担保・無保証人での融資、経営規模の拡大や経営の多角化を図るために必要な機械・施設等の整備にかかる支援、新規就農者の研修支援等、法人の育成に資する施策を実施します。

(2)人材の育成・確保等ア 新たな人材の育成・確保(ア)就農形態の多様化に対応した若者

等の就農促進就農形態が多様化するなかで、農

内外からの意欲ある若者等の就農を促進するため、就農相談会や就農希望者と農業法人等のマッチングを支援するとともに、農業法人等に雇用さ れ る 形 で の 就 農 を 後 押 し す る ため、農業法人等での就業体験の推進や農業法人等で働きながら技術習得する実践的な研修(OJT 研修)の実施を支援します。

また、新たに農業を始めたい者へは、無利子資金の貸付けのほか、農業機械等の取得に対して初期投資の負担軽減を図る支援を行います。

(イ)農業研修教育の充実就農希望者の技術習得を促進し、

円滑に就農できるよう、基礎から実践レベルまでの知識・技術を習得する研修や、農業現場での応用・実践的 な 研 修 等、 就 農 希 望 者 の 多 様 なニーズに対応した就農効果の高い研修の実施を支援します。

また、地域産業界や関係機関と連携し、バイオテクノロジー等先端的

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な技術・技能を取り入れた教育等を行っている学校をスーパー専門高校として指定する取組を実施します。

さらに、道府県農業大学校等での実践的な研修機会を充実するための体制整備や施設整備を支援します。

(ウ)障害者の就労促進農業分野での障害者の就労を促進

するため、農業法人等における障害者就労の取組の実証や普及・啓発を実施します。

(エ)農業分野における外国人技能実習制度の適正な運営

農業分野における外国人技能実習制度に関し、送出し国・技能実習生等のニーズに即した技能実習を促進するとともに、その運営の適正化を図るため、地域の受入体制づくりの支援等を実施します。

イ 農村を支える女性への支援と高齢農業者の活動の促進

(ア)政策・方針決定過程への女性の参画の促進

地域の生産・生活に関するあらゆる方針決定の場への女性の参画を促進するため、農業協同組合の理事や農業委員に女性が一人も登用されていない組織の解消を目指し、地域組織レベルでの女性登用状況の調査・公表、女性の登用が遅れている地域に対する重点的な推進活動等を実施します。

(イ)女性の経済的地位の向上と女性が活動しやすい環境づくり

女性の経済的地位の向上と女性が活動しやすい環境整備を図るため、女性農業者や起業グループが、高度な経営感覚を身に付けるための研修及 び 情 報 提 供 等 の 支 援 を 実 施 し ます。

(ウ)高齢農業者の活動の促進農村高齢者がいきいきと活躍でき

る環境づくりのため、高齢者グループが行う地域資源を活用した起業活動、高齢者の農作業や生活面への支援を推進するための組織づくり、健康管理に関する知識の普及や指導等の健康管理活動を支援します。

(3)作業を受託する組織の育成・確保農作業の外部化により、高齢化や担い手

不足が進行している生産現場の労働負担の軽減を図るとともに、規模拡大や主要部門への経営資源集中等を通じた経営発展を促進する観点から、 地域の実情を踏まえつつ、生産受託組織やヘルパー組織の育成・確保を推進します。(4)意欲ある多様な農業者による農業経

営の特性に応じた資金調達の円滑化ア(株)日本政策金融公庫

農業の6次産業化の推進や意欲ある多 様 な 農 業 者 の 育 成 の 観 点 か ら、 農業改良資金の融資枠を拡充するとともに、貸付限度額を引き上げるほか、23 年度に借り入れる農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)について、資金繰りに余裕がない貸付当初5年間の金利負担を軽減する措置を講じます。

また、大規模災害等に対応する民間資金を円滑に供給する危機対応円滑化業務の実施に必要な措置を講じるほか、(株)日本政策金融公庫の円滑な業務に資するため、貸付けにより生じるコストについて、一般会計から補給金・補助金を交付します。

イ 農業近代化資金23 年度に認定農業者が借り入れる

農業近代化資金について、スーパーL資金と同様に、資金繰りに余裕がない貸付当初5年間の金利負担を軽減する措置を講じます。

ウ 新スーパーS資金農業の6次産業化の推進や意欲ある

多様な農業者の育成の観点から、民間

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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イ 改正農地法に基づき、現場で農地制度の運用を担う農業委員会が行う農地の利用状況調査、遊休農地所有者等への指導等の活動を支援します。

5 農業災害による損失の補てん災害による損失を補てんし、被災農業者

の経営安定を図ることにより、農業の再生産が阻害されることを防止するとともに、農業生産力の発展に資するため、都道府県及び農業共済団体に対し、農業災害補償制度の適切な運営推進と、一層の加入促進を指導します。

災害発生時における遺漏なき被害申告、迅速かつ適切な損害評価の実施及び共済金の早期支払体制の確立等の措置を講じます。

農業共済の共済掛金及び農業共済団体の事務費等に対する助成措置を講じます。

6 農作業安全対策の推進年間約 400 件発生している農作業死亡

事故の低減に向け、ア 事故実態に基づき、重点化した安全

指導や農業機械の安全基準の見直し等を進めるため、対面調査等による農作業事故原因の詳細分析を実施

イ 農作業死亡事故のなかで最も多いトラクターの転落・転倒事故による死亡者を低減するため、携帯電話等によるトラクター転倒事故通報システムの実用化試験や転倒事故の救命効果が高い安全フレーム装着トラクターへの更新

ウ 行政機関や民間事業者等の関係者の協力のもと、春と秋に実施する「農作業安全確認運動」等を通じ、農業者の安全意識の向上を図るほか、農業機械の安全対策に関する研究

を進めます。

金融機関と都道府県農業信用基金協会との協調融資方式による、新たな短期運転資金制度(新スーパーS資金)を創設し、本資金の借入者が無担保・無保証人で基金協会の債務保証を受けられるなどの措置を講じます。

エ 農業信用保証保険農業者への資金の円滑な供給が図ら

れるよう、(独)農林漁業信用基金に対して、保険引受に必要な財務基盤の強化を図るなどの措置を講じます。

4 優良農地の確保と有効利用の促進農地制度については、国内の農業生産の

基盤である農地の確保とその有効利用の徹底を図る観点から 21 年 12 月に改正された農地法等に基づき制度を適切に運用します。

また、農業生産を目的とする土地利用とそれ以外の土地利用とを一体的かつ総合的に行うことができる計画を、地域住民の意見を踏まえつつ策定する制度の検討を進めます。(1)計画的な土地利用の推進

農地の転用規制及び農業振興地域制度の適正な運用を通じ、優良農地の確保に努めます。(2)意欲ある多様な農業者への農地集積

の推進農地の面的集積を通じた農業の生産性の

向上を図るため、戸別所得補償制度の一環として、 農地利用集積円滑化団体を通じて、面的集積(連担化)された農地に利用権を設定して経営規模を拡大する意欲ある農業者を支援します。(3)耕作放棄地対策の推進

ア 耕作放棄地を早急に解消するため、戸別所得補償制度による農業経営を継続できる環境づくりや改正農地法に基づく遊休農地解消のための仕組みの適正な運用等とあわせて、荒廃した耕作放棄地の再生利用を支援します。

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7 農業生産力強化に向けた農業生産基盤の保全管理・整備食料自給率が低迷するなかで、農業生産

基盤の保全管理と整備について、より効果的・効率的に実施するため、施策体系や事業の仕組み等の抜本的な見直しを進めることにより、国民の理解を得て、新たな展開を図ります。(1)国民の食料を支える基本インフラの

戦略的な保全管理ア 農業用水の安定供給の確保(ア)農業水利施設の適切な整備・更新

を図ることにより、食料供給力の基盤となる農業用水の安定供給を確保します。

(イ)農業水利施設のライフサイクルコスト(建設・維持管理等にかかるすべての費用)の低減を図るため、既存 施 設 の 劣 化 状 況 や 規 模 に 応 じ た保全管理を行うストックマネジメントについて、各種事業の推進と並行し、技術水準の向上を図る取組等を進めます。

(ウ)地域の特性に応じた多様な畑作物の生産、品質の向上、安定供給を図るため、畑地かんがい施設等を総合的に整備します。

イ 農地等にかかる総合的な防災対策(ア)集中豪雨や台風等による農用地・

農業用施設の自然災害の発生を未然に防止するとともに、土壌汚染の除去、農業用用排水の汚濁の除去等を図るため、ため池、排水機場等の農業用施設の整備、地すべり対策等の農地防災対策を実施します。

(イ)津波、高潮、波浪その他海水または地盤の変動による被害から農地等を防護するため、海岸保全施設の整備等を実施します。

(2)地域の裁量を活かした制度の推進地域の自主性と創意工夫による農山漁村

地域のニーズに応じた農業農村、森林、水

産分野の整備を推進します。(3)食料自給率の向上等に資する農業生

産基盤整備の推進食料自給率向上のため麦・大豆、米粉用

米、飼料用米等の生産拡大を可能とする水田の汎用化等の基盤整備を推進します。(4)農村環境の保全・形成に配慮した基

盤整備の実施「田園環境整備マスタープラン」を踏ま

え、地域住民や NPO 等による保全活動とも連携しつつ、生態系や景観等の農村環境の保全・形成に配慮した基盤整備を推進します。(5)効率的・効果的な事業の実施

事業を効率的かつ効果的に進めるため、「農業農村整備事業等コスト構造改善プログラム」に基づき、前年度に引き続きコストの縮減に資する取組を推進します。

8 持続可能な農業生産を支える取組の推進

(1)環境保全型農業の推進ア 我が国農業生産全体の在り方を環境

保全を重視したものに転換することを推進するため、「農業環境規範」の普及・定着、持続性の高い農業生産方式の導入の促進、化学肥料・化学合成農薬の使用を5割以上低減したうえでカバークロップの作付け、有機農業等環境保全効果の高い営農活動に取り組む農業者への直接支援に取り組みます。

イ  環 境 保 全 型 農 業 に 取 り 組 む エ コファーマーの全国ネットワーク活動を進め、交流会や技術研修会による相互研けん

鑽さん

を通じて、点の取組を面的・全国的に展開します。

ウ 有機農業推進法及び「有機農業の推進に関する基本的な方針」(19 年4月策定)に基づき、有機農業への参入促進や普及・啓発の取組、有機農業の振興の核となる地域の育成を推進するとともに、技術の研究開発、研究成果の

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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普及等、有機農業の推進体制の整備を図ります。

エ「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の趣旨を踏まえ、 家 畜 排 せ つ 物 の 適 正 な 管 理 に 加え、その利活用を図るため、耕畜連携の強化やニーズに即したたい肥づくり、地域の実情に応じてエネルギー利用等の高度利用を推進します。

(2)環境保全機能に関する直接的な助成手法の実施

化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取組と一体で、地球温暖化防止及び生物多様性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業者に対して直接支援を実施します。

Ⅴ 農村の振興に関する施策

1 農業・農村の6次産業化の推進(1)「地域資源」 を活用した「産業」 の

創造ア 農林水産業及び農山漁村に由来する

農林水産物、副産物等の地域資源を最大限活用するため、農林漁業者による6次産業化を促進するとともに、技術革新や農商工連携等を通じ、様々な資源 活 用 の 可 能 性 を 追 求 し ま す。 そ の際、潜在的な需要を開拓して新たな素材や新商品を開発するとともに、他産業における革新的な活用方法の創出と新たなビジネスモデルの創造を推進します。

  また、農林水産業・農山漁村に豊富に存在するバイオマス資源と様々な産業の先端技術を結び付けた、新たな産業の創出に向け、「緑と水の環境技術革命総合戦略」に基づき、重点分野や新技術の事業化に向けた市場規模・技術課題等に関する調査や新技術の開発実証を支援します。

イ 北海道の高品質な食と、関連する良好 な 景 観・ 建 築 物 等 を 一 体 的 に 活 用し、地域産業の活性化や観光振興を図るため、地域の風土・歴史に根差した地域ブランドを創出する認証制度の構築等を検討します。

(2)バイオマスを基軸とする新たな産業の振興

稲わら、せん定枝等の未利用資源、食品残さ等の廃棄物といったバイオマスを活用し、エネルギーやプラスチック等の製品を生産する地域拠点の整備に向け、そのためのビジネスモデルを検討するとともに、これらの取組に必要とされる技術の開発・実証等を推進します。(3)農村における再生可能エネルギーの

生産・利用の推進農山漁村に豊富に存在するバイオマス、

小水力、 太陽光といった再生可能エネルギーの利活用を推進するため、施設整備、制度的な環境整備を推進します。

2 都市と農村の交流等(1)新たな交流需要の創造

ア グリーン ・ ツーリズム等、食をはじめとする豊かな地域資源を活かし、農山漁村を教育、観光等の場として活用する、集落ぐるみの多様な都市農村交流等を促進する取組を支援します。

イ  観 光 庁 と 連 携 し た「よ う こ そ! 農村」プロジェクト等関係府省の連携による都市と農村の交流を促進するとともに、多様な主体の協調・連携による都市と農村の共生・対流を促進する国民運動を推進します。

ウ 観光地域づくりの取組を持続的なものにし、観光交流人口の拡大による自立的な地域経済の確立を図るため、地域と市場をつなぐ窓口として、地域の資源を活かした着地型旅行商品の企画・販売等を行う事業体「観光地域づくりプラットフォーム」形成のための

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Page 125: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

取組を総合的に支援します。(2)人材の確保・育成、都市と農村の協

働ア 集落の活性化を担う人材の確保・育

成を安定的に支えるため、集落がかかえる課題の分析、活性化活動への従事を希望する都市部の人材の募集、集落と人材のマッチング、課題解決に向けた実践研修活動に取り組む集落を支援します。

イ 空き家情報等の集落への定住に関する情報提供体制の整備や定住後のサポート体制の構築等、都市から農村への定住等の促進に向けた地域の取組を支援します。

ウ 空き家住宅等の再生・活用等を推進する地方公共団体等を支援します。また、二地域居住について、国の実施すべき具体的施策等を関係府省連携により推進します。

エ 条件不利地域(過疎、山村、離島、半島、豪雪地域)において、交流の促進等を図るために、市町村等が行う地域内の既存公共施設を活用する施設整備等を支援します。

(3)教育、医療・介護の場としての農山漁村の活用

ア 農山漁村が有する教育的効果に着目し、農山漁村を教育の場として活用するため、農林水産省、文部科学省、総務省が連携し、小学生が農山漁村において宿泊体験活動を行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進するとともに、農山漁村を教育、観光、医療・介護の場として活用する、集落ぐるみの多様な都市農村交流等を促進する取組を支援します。

イ 「「子どもの水辺」再発見プロジェクト」の推進、水辺整備等により、河川における交流活動を活性化します。

ウ 歴史的砂防施設の適切な保存・活用等のためのガイドラインに基づき、景

観整備・散策路整備等の周辺整備等を推進します。

  また、歴史的砂防施設及びその周辺環境一帯を地域の観光資源の核に位置付けるなど、新たな交流の場の形成を推進します。

エ エコツーリズムによる地域活性化のための人材・プログラムづくりと施設整備を含む基盤づくりを一体的に実施します。このうち人材・プログラムづくりとしては、地域の自然や生き物等の生物多様性を保全しつつ、活用するエコツーリズムを推進するために、地域コーディネーターによるプログラムやルールづくり、ネットワークづくり等に主体的に取り組む地域を支援します。さらに、自然に関する知識や経験等を備え、その大切さや魅力を伝える人材の育成、協議会への技術的助言、エコツーリズムの実施状況に関する情報の収集・提供等を実施します。

3 都市及びその周辺の地域における農業の振興都市農業の役割や都市住民のニーズ、市

街化区域内農地の性格等を踏まえ、これまでの都市農地の保全や都市農業の振興に関連する制度の見直しに向けた検討を行うとともに、市民農園や体験農園等の開設促進に向けた取組、援農ボランティアを育成する取組、都市農業の振興に必要な簡易な基盤、防災兼用井戸、市民農園の整備等を支援します。

4 農村の集落機能の維持と地域資源・環境の保全

(1)農村コミュニティの維持・再生ア 良好な農村景観の形成等(ア)良好な農村景観の再生・保全を図

るため、コンクリート水路沿いの植栽等、土地改良施設の改修等を推進します。

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 126: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(イ)生物多様性保全活動を活かして農村地域の活性化を図るため、活動団体間のネットワーク形成や各種情報提供等の取組を支援します。

(ウ)河川の蛇行復元や湿地の冠水頻度の増加等、自然再生事業を推進します。

(エ)魚類等の生息環境改善や人と自然がふれあえる地域整備を図るため、河川やため池等の水路結合部の段差解消による水域の連続性の確保、生物の生息・生育環境を整備・改善する魚のすみやすい川づくりを推進します。

イ 経済の活性化を支える基盤の整備(ア)日常生活の基盤としての市町村道

から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路ネットワークの整備を推進します。また、地方道については、各地域の事業等の計画と整合をとり計画的に整備を支援します。

(イ)農産物の海上輸送の効率化を図るため、船舶の大型化等に対応した複合一貫輸送ターミナルの整備を推進します。

(ウ)「道の駅」の整備により、休憩施設 と 地 域 振 興 施 設 を 一 体 的 に 整 備し、地域の情報発信と連携・交流の拠点形成を支援します。

(エ)都市と農村地域を連絡するなど、地域間の交流を促進し、地域の活性化 に 資 す る 道 路 の 整 備 を 推 進 し ます。

ウ 農村コミュニティの維持・再生のための取組

地域住民主体によるコミュニティ再生の取組の拡大を図るため、「食と地域の交流促進対策交付金」 を軸として、関係省庁と連携しつつ、教育の場としての農山漁村の活用、グリーン・ツーリズムの推進等の地域資源を活用

した地域の活性化や、食料品や日用品の提供機会の確保といった、農山漁村での生活条件を確保する取組等を推進します。

(2)中山間地域等直接支払制度ア 戸別所得補償制度の本格実施に当た

り、条件不利地域における適切な補完となるように見直したうえで、引き続き農業生産活動の維持を通じて多面的機能を確保するため、中山間地域等直接支払制度に基づく直接支払いを実施します。

イ 高齢化の進行を踏まえ、高齢者へのサポート体制や集落間の連携等安定的な受皿をつくることにより、農業生産活動の維持を図っていきます。

  なお、本直接支払制度については、現行の予算措置を法律上の措置とすることについて、引き続き検討します。

ウ 意欲ある多様な農業者の育成・確保や生産性の向上等を推進するなどにより、中山間地域等における自律的かつ安定的な農業生産活動を促進します。

(3)農地・水保全管理支払ア 農地・農業用水等の資源や環境の良

好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみの効果の高い共同活動を支援します。

イ 地域共同による農地・農業用水等の保全管理に加え、老朽化が進む農業用用排水路・農道等の施設の長寿命化のための補修・更新等の取組を行う集落を直接支援します。

(4)鳥獣被害対策の推進ア 「鳥獣による農林水産業等に係る被

害の防止のための特別措置に関する法律」に基づき市町村が作成する被害防止計画の作成を推進します。

イ 市町村が作成する被害防止計画に基づく、鳥獣の捕獲体制の整備、箱わなの導入、広域的な防護柵の設置、被害防除技術の導入、緩衝帯の設置、捕獲

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Page 127: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

推進します。c 生活交通の存続が危機に瀕してい

る地域等において、地域の特性・実情に最適な移動手段が提供され、また、バリアフリー化やより制約の少ないシステムの導入等移動に当たっての様々な障害(バリア)の解消等が さ れ る よ う、 地 域 公 共 交 通 の 確保・維持・改善を支援します。

d 地域住民の日常生活に不可欠な交通サービスの維持・活性化、輸送の安定性の確保等のため、島しょ部等における港湾整備を推進します。

(ウ)衛生a 下水道、農業集落排水施設及び浄

化槽等について、市町村の意見を反映したうえで近年の人口減少等も踏まえ、都道府県が策定する「都道府県構想」を見直すとともに、地域の特性に応じた計画的・効率的な整備を推進します。

  また、下水道においては、既存施設について、適時・適切な修繕と更新により施設の長寿命化を進めるための「ストックマネジメント手法」の導入を推進します。

b 農村における汚水処理施設整備を効率的に推進するため、農業集落排水施設と下水道との連携及び農業集落排水施設と浄化槽との一体的な整備を実施します。

c 下水道や農業集落排水施設等複数の汚水処理施設が共同で利用できる施設の整備を図る汚水処理施設共同整 備 事 業(MICS) や 従 来 の 技 術 基準にとらわれず地域の実情に応じた低コスト、早期かつ機動的な整備が可能な新たな整備手法の導入を図る

「下水道クイックプロジェクト」等により、効率的な汚水処理施設の整備を推進します。

d 人口散在地域ほど経済的な汚水処

獣の地域資源としての利用等の取組を推進します。また、鳥獣の生息環境にも配慮した森林の整備・保全活動等を推進します。

ウ 地域における技術指導者の育成を図るため、普及指導員、市町村職員、農林漁業団体職員等を対象とする研修を実施します。

エ 野生鳥獣の種類や数を高精度で判別できるセンサーを用いた効率的な捕獲シ ス テ ム の 開 発 等 を 推 進 し ま す。 また、地域ブロック単位の連絡協議会の積極的な運営や、鳥獣被害対策のアドバイザーを登録・紹介する取組を推進します。

(5)快適で安全・安心な農村の暮らしの実現

ア 生活環境の整備(ア)農村における効率的・効果的な生

活環境の整備a 地域再生等の取組を支援する観点

から、地方公共団体が策定する「地域再生計画」に基づき、関係府省が連携して道路や汚水処理施設の整備を効率的・効果的に推進します。

b 農業の持続的な発展を図るとともに、地域の創造力を活かした個性的で魅力あるむらづくり等を推進するため、関係府省が連携しつつ、農業生産基盤と農村の集落基盤の一体的な整備を推進します。

c 農山漁村における定住や二地域居住を促進する観点から、関係府省が連携しつつ、計画的な生活環境の整備を推進します。

(イ)交通a 交通事故の防止、交通の円滑化を

確保するため、歩道の整備や交差点改良等を推進します。

b 生活の利便性向上や地域交流に必要な道路、都市まで安全かつ快適な移動を確保するための道路の整備を

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 128: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

理施設である浄化槽の整備を推進します。特に、地球の温暖化対策の促進を図るとともに、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を促進するため、転換に伴う単独処理浄化槽の撤去補助を使いやすくするとともに、低炭素社会対応型浄化槽(省エネルギータイプ)の整備へ助成します。

(エ)情報通信高度情報通信ネットワーク社会の

実現に向けて、河川、道路、港湾、下水道において公共施設管理の高度化を図るため、光ファイバ及びその収容空間を整備するとともに、民間事業者等のネットワーク整備のさらな る 円 滑 化 を 図 る た め、 施 設 管 理に支障のない範囲で国の管理する河川・道路管理用光ファイバやその収容空間を順次開放します。

(オ)住宅・宅地優良田園住宅による良質な住宅・

宅地供給を促進し、質の高い居住環境整備を推進します。

また、地方定住促進に資する地域優良賃貸住宅の供給を促進します。

(カ)文化「文化財保護法」に基づき、農村

に継承されてきた民俗文化財に関して、特に重要なものを重要有形民俗文化財や重要無形民俗文化財に指定するとともに、その修理・防災や伝承事業等に対する補助を行います。

また、重要有形民俗文化財以外の有形の民俗文化財に関しても、その文化財としての価値にかんがみ保存及び活用のための措置が特に必要とされるものについて登録有形民俗文化財に登録するとともに、保存のための用具の修理・新調、資料整備に対する補助を行います。

さらに、棚田や里山等の文化的景

観や歴史的集落等のうち、特に重要なものをそれぞれ重要文化的景観、重要伝統的建造物群保存地区として選定し、修理・防災等の保存及び活用に対して支援します。

(キ)公園都市計画区域の定めのない町村に

おいて、スポーツ、文化、地域交流活動の拠点となり、生活環境の改善を図る特定地区公園の整備を推進します。

イ 医療・福祉等のサービスの充実(ア)医療

「 第 11 次 へ き 地 保 健 医 療 計 画 」(23 ~ 27 年度)に基づき、へき地診療所等による住民への医療提供等農村を含めたへき地における医療の確保を推進します。

(イ)福祉介護・福祉サービスについて、地

域密着型サービス拠点等の整備等を推進します。

ウ 安全な生活の確保(ア)山腹崩壊、土石流等の山地災害等

を防止するため、復旧治山等の事業の実施を通じて地域住民の生命・財産 及 び 生 活 環 境 の 安 全 を 確 保 し ます。

(イ)山地災害危険地区における治山事業について、地域における避難体制の整備等との連携により、減災に向けた効果的な事業を実施します。

(ウ)自力避難の困難な障害者等災害時要援護者関連施設に隣接する山地災害危険地区等において治山事業を計画的に実施します。

(エ)床上浸水被害が頻発するなどの度重なる水害が発生し、生活に大きな支障がもたらされている地域において、被害の防止・軽減を目的として、治水事業を実施します。

(オ)近年死者を出すなど甚大な土砂災

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害が発生した地域の再度災害防止対策を重点的に推進します。

(カ)人命の保護を図るため、将来起こり得る大規模地震等に起因するがけ崩れ等により地域に甚大な被害を起こすおそれのある箇所において、施設整備を推進します。

(キ)病院、老人ホーム等の災害時要援護者関連施設を保全対象に含む危険箇 所 に か か る 砂 防 事 業 を 実 施 し ます。

(ク)地域の防災拠点等を保全する施設の整備や「土砂災害警戒区域等におけ る 土 砂 災 害 防 止 対 策 の 推 進 に 関する法律」(土砂災害防止法)に基づく警戒避難体制の整備を実施し、ハード・ソフト一体となった効率的な土砂災害対策を実施します。

(ケ)土砂災害防止法に基づく土地利用規制や、土砂災害警戒情報の提供等を実施し、ソフト対策の強化を推進します。

  また、大規模な土砂災害が急迫している状況において、市町村が適切に住民の避難指示の判断等を行えるよう、土砂災害防止法に基づき、国ま た は 都 道 府 県 が 緊 急 調 査 を 実 施し、被害が想定される区域・時期の情報を関係市町村へ通知するとともに一般に周知します。

(コ)農地災害等を防止するため、ハード整備に加え、防災情報を関係者が共有するシステムの構築や減災のための指針づくり等のソフト対策を推進し、地域住民の安全な生活の確保を図ります。

(サ)橋きょうりょう

梁の耐震対策、道路斜面や盛土等の防災対策、災害のおそれのある区間を回避する道路整備を推進します。

  また、冬期の道路ネットワークを確保するため、道路の除雪、防雪、凍雪害防止を推進します。

Ⅵ 食料・農業・農村に横断的に  関係する施策

1 技術・環境政策等の総合的な推進(1)革新的な技術開発の推進

様々な農政の課題に技術面で的確に対応するため、「農林水産研究基本計画」に基づき、以下の施策を推進します。

ア 食料供給力の強化を図る研究開発(ア)食用米と識別性のある超多収飼料

用米品種、飼料用米の調製・給与技術等の開発を推進します。

(イ)パン・中華めん用の小麦やなたね等の高品質品種、大豆、小麦等の湿害回避技術の開発を推進します。

(ウ)農作業負担を軽減する農業自動化システムや農作業アシストシステムの開発を推進します。

イ 新需要を創出する付加価値の高い農産物、食品、新素材、医薬品等の開発

(ア)農林水産物・食品の機能性成分が有する疾病予防機能の科学的根拠の獲得手法や機能性成分を多く含む品種の開発等を行います。

(イ)LED 等の人工光源や波長等の光質制御が可能な被覆資材等により、野菜の品質向上や花きの生育・開花及び品質をコントロールする技術の開発を推進します。

(ウ)遺伝子組換えカイコによる人工血管・軟骨再生素材等の医療用素材の動物での安全性・有効性の確認と抗体タンパク質等の検査用試薬の実用化を推進します。

(エ)完全閉鎖型植物工場を用いて、医薬品原料等の高付加価値物質を生産するための完全人工環境下での植物栽培及び高生産型組換え植物創製にかかる技術開発を実施します。

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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(2)研究開発から普及・産業化までの一貫支援

ア 研究成果を確実に普及・実用化につなげていくため、民間等の幅広い分野の人材、情報等を活用し、研究マネジメント機能のさらなる強化を推進します。

イ 研究段階に応じて人材、研究資金等を機動的かつ一体的に運用する視点に立って、農林水産業・食品産業等におけるイノベーションにつながる革新的な技術シーズを開発するための基礎研究及び開発された技術シーズを実用化に向けて発展させるための研究開発を推進します。

ウ 研究開発から産業化までを一貫して支 援 す る た め、 大 学、 民 間 企 業 等 の地域の関係者による技術開発から改良、開発実証試験までの取組を切れ目なく支援するとともに、公的研究機関の開発した新品種・新技術、民間企業における機能性農作物に関する研究結果や、地域特産物等の機能性を活かした新食品・新素材の事業化を推進します。

エ 地域の大学、試験場、企業等に対し、コーディネーターが産学官の連携を支援するとともに、事業化可能性調査、技術交流展示会、人材育成研修等を一体的に支援します。

オ 農業技術に関する近年の研究成果のうち、早急に生産現場への普及を推進する重要な技術を「農業新技術 2012」として選定し、関係機関相互の緊密な連携のもと、生産現場への普及推進に取り組みます 。

カ 産地においては、普及指導センターと大学、企業、試験研究機関等が連携しつつ、技術指導を核に総合的な支援を展開するなど、研究成果の普及・実用化体制の強化を推進します。

ウ 地球温暖化等環境問題に対応する技術の開発

(ア)農林水産分野における温暖化緩和技術として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明、温室効果ガスの排出削減技術、森林や農地土壌等の吸収機能向上技術の開発を推進します。

  また、有機資源の循環利用や微生物を利用した化学肥料や農薬の削減技 術、 養 分 利 用 効 率 の 高 い 施 肥 体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進します。

(イ)農林水産分野における温暖化適応技術として、精度の高い収量・品質予 測 モ デ ル 等 の 開 発 を 推 進 し、 気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した生産安定技術の開発を推進します。

  また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進します。

  さらに、野菜の新品種の開発を民間企業と試験研究機関等の共同開発等を通じて推進します。

(ウ)稲わら等作物の非食用部や木質バイオマスから、低コスト・高効率にバイオ燃料を生産する技術開発や、石油化学製品に代替するバイオマスマテリアルの製造技術開発等を推進します。

(エ)環境保全型農業施策等を効果的に推進するため、天敵等を対象とした生物多様性の指標とその評価手法の開発を推進します。

(オ)化学肥料や化学農薬の投入を減らすための技術開発、有機農業の推進に資する省資源型農業の技術体系の確立を推進します。

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(3)地球環境問題への貢献ア 地球温暖化対策への貢献(ア)農林水産分野における温室効果ガ

ス排出削減を推進するため、施設園芸において燃油削減に資する省エネ設備の導入や施肥の適正化を推進します。

(イ)農地の炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査を行います。

(ウ)温室効果ガスのさらなる排出削減のため、農林水産分野において、排出削減量を認証しクレジットとして取引する制度、排出削減効果の「見える化」等の新たな地球温暖化対策を推進します。

(エ)バイオマスの変換・利用施設等の整備等を支援し、農山漁村地域におけるバイオマス等の再生可能エネルギーの利用を推進します。

(オ)地球温暖化対策研究戦略に基づき、農林水産分野における地球温暖化防止技術・適応技術の開発等を推進します。

(カ)世界的な温室効果ガスの排出削減や気候変動による影響への適応を進めるため、国際的な研究・技術協力を積極的に実施します。

イ 循環型社会形成への貢献(ア)バイオマスの活用の推進に関する

施策についての基本的な方針、国が達成すべき目標等を定めた「バイオマス活用推進基本計画」(22 年 12月閣議決定)に基づき、ロードマップの策定及び同計画に基づく施策を推進します。

(イ)バイオマスの効率的な収集・変換等の技術の開発、システムの構築を進めることとし、以下の取組を実施します。

a 国産バイオ燃料の本格的な生産に

向け、原料供給から製造、流通まで一体となった取組のほか、食料・飼料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料の収集・運搬からバイオ燃料の製造・利用までの技術を確立する取組、バイオ燃料の本格普及に向けた取組を支援します。

b 農林漁業に由来するバイオマスのバイオ燃料向け利用の促進を図り、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を推進するため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律」に基づく「製造連携事業計画」により新設されたバイオ燃料製造設備について、固定資産税の軽減措置を実施します。

c 国産バイオマスエネルギーの生産コストを大幅に低減するため、バイオ燃料製造技術の開発を加速化するとともに、バイオ燃料製造時の副生成物の利用拡大に関する実証研究、バイオマスマテリアル製造技術の開発、バイオマス循環利用モデルの構築、藻類の利用技術の開発等を推進します。

d 官民連携により、バイオマスである汚水汚泥の利活用や、下水汚泥等に含まれるりんの回収を進め、下水道を核とした資源・エネルギーの循環等を推進します。

(ウ)国際機関等におけるバイオマスに関する技術移転、途上国における能力強化支援、バイオ燃料の持続性の基準・指標の策定等の国際的な議論に積極的に参画し、バイオマスの普及と持続可能な利用を促進します。また、東アジアにおけるバイオマスタウン構想の策定等を推進します。

ウ 生物多様性保全への貢献(ア)有機農業や冬期湛

たんすい

水管理等、生物多様性保全に効果の高い農業生産活動等を推進します。

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

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(イ)環境保全型農業の効果を示す生物種(昆虫等)を指標として明らかにして、農業現場で利用可能な簡便な評価手法を開発するとともに、様々な環境データから生物の生息可能性を定量的に把握・予測する評価手法の開発を推進します。

(ウ)水田魚道の設置等、生態系に配慮し た 水 田 や 水 路 等 の 整 備 技 術 の 開発・普及を推進します。

(エ)生物多様性保全面からみた農林水産業や農山漁村資源管理活動の経済的 評 価 に 関 す る 国 内 外 事 例 を 調 査し、日本の農林水産業の実情に適した評価手法を検討します。

  また、農業者等による生物多様性保全に資する活動を、民間企業等が支 援 す る た め の 仕 組 み を 構 築 し ます。

(オ)カルタヘナ議定書締約国会議議長国として、開発途上国がカルタヘナ議定書を実施するために必要となる能力開発を推進するため、開発途上国の能力開発のためのワークショップを実施します。

(カ)遺伝子組換え農作物に関する取組については、生物多様性に及ぼす影響についての科学的な評価、安全性未確認の遺伝子組換え農作物に対する水際検査、国内の生産状況等の調査を実施します。

(4)知的財産の保護・活用ア 技術開発の成果等の実用化を一層効

果的に実施していくことを目的に、研究者等を対象とした研修を開催するなど農林水産知的財産ネットワークの活動 を 充 実 し ま す。 さ ら に 技 術 移 転 機関(TLO)を活用して農林水産省所管の試験研究独立行政法人が保有する知的財産権の産業界への移転を促進します。

イ 「食と農林水産業の地域ブランド協

議会」の活用による地域ブランド化に取り組む主体とそれを支援する者との交流促進、農林水産物・食品の地域ブランド化のための知的財産制度関係支援活動、「地域ブランド化取組ガイドライン(仮称)」の効果検証等、地域ブランド施策を推進します。

ウ 地元の食材を核とした伝統料理や新た な 創 作 料 理 に つ い て、 食 材 の 生 産者、地方行政、料理人、ホテル・旅館等 の 関 係 者 が 連 携 し て、 全 国 的 な 広告・宣伝や観光客向けの情報発信を行うとともに、商標・意匠等の知的財産権の取得を目指す取組を支援し、農山漁村の活性化を図ります。

  また、技術・技能が卓越し、日本産食材の利用拡大等の農林水産施策に貢献してきた料理人に対する顕彰制度として 22 年度に創設された「料理マスターズ」を引き続き実施します。

エ 普及指導員等が現場で適切な相談対応を行えるよう、普及指導員等の知的財産に関する知識の向上を図ります。

オ 我が国の植物新品種を海外においても適切に保護するため、植物品種保護制度の整備が遅れている東アジア地域において、制度の共通の基盤づくりを目指し、国際的に調和のとれた制度整備・充実を進めるため「東アジア植物品種保護フォーラム」のもとで引き続き技術協力、人材育成等の協力活動を推進します。また、将来の東アジア地域における植物品種保護制度の共通化を視野に、そのモデルとなる EU の制度を調査します。

カ 我が国の地名、品種名等の中国等での商標出願・登録について、一元的に監視を実施する「農林水産知的財産保護コンソーシアム」の活動を充実・強化します。

キ 和牛の遺伝資源の保護・活用を図るため、精液の流通管理の強化、和牛の

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改 良・ 生 産 体 制 の 強 化 等 を 推 進 し ます。

ク 前年度に行った AI(アグリインフォマティクス)システムにおける知的財産としての管理手法等の検討結果を踏まえ、「アグリプラットフォームコンソーシアム」における AI システムの開発・実用化に向けた取組を支援します。

ケ 決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みについて検討します。

2 「農」を支える多様な連携軸の構築(1)「食」に関する将来ビジョンの推進

国民全体の参加を促すため、「「食」に関する将来ビジョン」の内容を周知するとともに、本ビジョンに基づく行動の実施状況や成果についての検証を行い、必要に応じて、見直しを実施します。(2)食と農の結び付きに関する情報発信

の強化と既存施策の重点化「農」を支える連携軸の基礎となる、農業・

農村の価値や役割、我が国の食文化、健全な食生活といった食と農の結び付きに関する様々な情報を消費者等に対してわかりやすく発信する取組を強化します。

また、米粉用米の生産拡大に対応した利用促進、国産農産物の消費拡大、農商工連携、都市と農村の交流等、複数の者の連携に着目した施策について、 情報発信の強化、コーディネーター等によるマッチングの充実、関係者間のネットワークの強化等を図り、連携軸として発展させます。(3)関係者のマッチング等の充実と人材

の確保連携軸を構築しようとする消費者、生産

者、事業者、NPO、大学、研究機関が適切な相手先を円滑に確保できるよう、知識・技術等に関するコーディネートや交流会の

開催、IT の活用等を通じて、関係者間のマッチング機会の拡充を進めます。

また、このようなコーディネーターや仲介機関の育成を推進します。その際、地方支分部局を含め、国の職員も連携のベースとなる人材ネットワークづくりや各種相談機会の拡充を通じ、連携軸の構築・強化に努めます。(4)連携軸の取組に関する国民理解の促

進と具体的行動の喚起消費者が農業者と農産物取引の事前契約

を行う農業である「地域支援型農業」(CSA)について、先導的な取組や成功例を広く発信します。

Ⅶ 団体の再編整備等に関する施策

(1)農業協同組合系統組織の再編整備に関する施策

国民に対する食料の安定的な供給や国内の農業生産の増大等の実現に向けて、農業協同組合の機能や役割が発揮できるよう効率的な再編整備を進めます。(2)農業委員会組織の体制強化に関する

施策農業委員会の業務の効率的かつ効果的な

実施、農業者に対するサービスの向上を図るため、農業者等からの農地の権利取得等及び農業経営の相談に対応する農地相談員の設置を支援するとともに、改正農地法の運用に関する農業委員等のための研修会の開催を支援します。また、農業委員会の活動の透明性の向上・実行性の確保を図るため、総会等の議事録を要約せずすべて公開することや、遊休農地の解消目標面積、認定農業者等への農地の集積目標面積等を記載した活動計画を策定することを指導し、その取組状況を 23 年度予算の配分に反映します。

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策

Page 134: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(2)効果的・効率的な施策の推進体制の整備

施策の具体的内容等が生産現場等に速やかに浸透するよう、関係者に対する周知・徹底、人材の育成や組織づくりを促進します。

2 国民視点に立った政策決定プロセスの実現

(1)国民の声の把握透明性を高める観点から、国民のニーズ

に即した情報公開、情報の受発信を推進します。また、幅広い国民の参画を得て施策を推進するため、国民との意見交換等を実施します。(2)科学的・客観的な分析

ア 施策の科学的・客観的な分析施策の立案から決定に至るまでの検

討過程において、できる限り客観的なデータに基づいた計量経済分析等の科学的な手法を幅広く導入したり、国民にわかりやすい指標を開発したりするな ど、 施 策 を 科 学 的・ 客 観 的 に 分 析し、その必要性や有効性を明らかにします。

イ 政策展開を支える統計調査の実施と利用の推進

食と農林漁業の再生実現に向けた重要施策の推進に必要な情報インフラを整備します。

(ア)戸別所得補償制度の実施を支える統計データを整備するため、米、小麦及び大豆生産費の標本数の拡充も含め、必要な生産費調査及び単収等を把握する調査を引き続き実施します。

(イ)農業・農村の6次産業化による農業 者 等 の 所 得 向 上 や 雇 用 確 保 の 状況、再生可能エネルギーの利用実態等の状況を把握するため、農業者等による6次産業化への種々の取組に関する総合調査を実施します。

(3)農業共済団体の組織体制強化に関する施策

農業共済団体が将来にわたって安定的な事業運営基盤を確保し、より一層の合理的で効率的な運営を行うよう、1県1組合化への移行を含めた組織体制強化の取組を指導します。(4)土地改良区の再編整備に関する施策

土地改良区の組織運営基盤の強化を図るため、広域的な統合整備構想の策定及び合併等を支援します。

Ⅷ 食料、農業及び農村に関する施  策を総合的かつ計画的に推進す  るために必要な事項

1 官民一体となった施策の総合的な推進(1)国、地方をはじめとする関係者の適

切な役割分担ア 施策の総合的な推進

食料自給率の向上に向けた取組をはじめ、政府一体となって実効性のある施策を推進します。

イ 農林水産分野の情報化と電子行政の実現

(ア)6次産業化の推進等農山漁村地域の活性化に向けた情報通信技術の活用を推進します。

(イ)国民の利便性・サービスの向上等を図るため、国民に広く利用されている行政手続のオンライン利用の拡大や業務・システムの最適化等を推進します。

ウ 効果的・効率的な技術・知識の普及指導

生産現場における様々な農政課題の解決を図るため、国と都道府県が協同して、高度な技術 ・ 知識をもつ普及指導員を設置し、普及指導員が農業者に直接接して行う技術 ・ 経営指導等を推進します。

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Page 135: [用語の解説] - maff.go.jp2)DID(人口集中地区)とは、原則として人口密度が4千人/ 以上の国勢調査基本単位区等が市 区町村内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が5千人以上を有する地区をいう。

(ウ)20 年度及び 21 年度から市場化テスト(包括的民間委託)を導入した統計調査を引き続き実施します。また、GIS(地理情報システム) を活用したメッシュ母集団情報に基づく標本調査のための運用体制を整備します。

(3)施策の進捗管理と政策評価の適切な活用

「食料・農業・農村基本計画」に記載された施策の進捗状況を取りまとめて公表します。

政策評価については、「食料・農業・農村基本計画」を踏まえ成果志向の目標設定を推進すること等により、政策・施策の効果、問題点等を踏まえて評価を行います。

また、租税特別措置等について、透明化及び適宜適切な見直しを図る観点から評価を実施します。

さらに、 行政評価第三者委員会を公開し、議事録等をホームページに掲載するなど情報の公開を進めます。

3 財政措置の効率的かつ重点的な運用厳しい財政事情のもとで限られた予算を

最大限有効に活用する観点から、既存の予算を見直したうえで大胆に予算の重点化を行い、財政措置を効率的に運用します。

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平成 23 年度 食料・農業・農村施策