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p.1 Lisa Massman Principal, HR Transformation and Strategy, KPMG, LLP Jackie Tischler Senior Vice President HR Operations & Performance Excellence, Baylor Scott & White Health Oracle HCM World 2016 講演レポート: 『異なる 2 つの組織を一つに オーナーシップが鍵を握る Baylor Scott & White HealthのHR変革』

『異なる2つの組織を一つに オーナーシップが鍵を握る …...鍵を握るのはオーナーシップ p.4 Jackie Tischler : 今、掻い摘んでお話したように、裏側の仕組みはかなり複雑なものですが、それを従業員に知られたくはありま

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Page 1: 『異なる2つの組織を一つに オーナーシップが鍵を握る …...鍵を握るのはオーナーシップ p.4 Jackie Tischler : 今、掻い摘んでお話したように、裏側の仕組みはかなり複雑なものですが、それを従業員に知られたくはありま

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Lisa MassmanPrincipal, HR Transformation and Strategy, KPMG, LLP

Jackie TischlerSenior Vice President HR Operations

& Performance Excellence, Baylor Scott & White Health

Oracle HCM World 2016 講演レポート:

『異なる2つの組織を一つに

オーナーシップが鍵を握る

Baylor Scott & White HealthのHR変革』

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(Jackie Tischler, Baylor Scott & White Health)Baylor Scott & White Health は、テキサス州で最大のヘルスケアシステムを運営する非営利組織です。2013 年 5 月 に、Baylor Scott と White Health が合併したことで誕生しました。私たちの事業は多岐にわたります。資産 97億ドル、売上げは約 5 億ドルに及び、日々数々の患者さんの人生に接しています。

新しい組織の HR 戦略を考えるにあたって、まず事業の目的に立ち返りました。私たちが目指すのは、最良の患者ケアを提供することです。それを実現する従業員に最良の従業員エクスペリエンスを与えなければいけません。そのためには、まず 2 社間にあるギャップを埋める必要があります。Baylorは、病院管理から始まった100 年の歴史を持つ組織です。彼らは、HR や IT など全ての機能をアウトソースしていました。

一方、テキサスを拠点とするWhite Health は、分散型のHR機能を内製していました。20台のベッドしかない病院から500台を超える病院まで、規模も地理も様々です。BaylorとWhite Health の文化を比べてみると、オペレーション、コミュニケーション、意思決定の仕方に至るまで全てが違っていました。この状況を踏まえて、今後の進め方について話し合った結果、私たちは一つのHRエンタープライズテクノロジープラットフォームを内製することで合意しました。

プロジェクトには様々なゴールが設定されましたが、一つは「従業員に正しい金額の給与を支払う」ことでした。当たり前ですが大事なことです。また、従業員のエクスペリエンスを向上することで彼らの仕事を楽にし、同時にビジネスゴールを後押しできるテクノロジーを採用したいと考えました。基本的な方向性で合意した後、細かな計画を練りはじめたのは 2014 年半ばです。当初 2016 年1月の稼働開始を目指していましたが、2015 年秋の時点でそれが現実的ではないと判断しました。現在は、導入パートナーである KPMG と共に 2017 年 1 月に向けて動いています。

HRとしてのプライオリティは、大きく4つあります。まず、2017年1月の稼働開始をスケジュール通りに進めること。次に、優れたリーダーを育成すること。Baylor Scott & White Health は優秀なマネージャーに恵まれていますが、その質に差があります。リーダーシップを底上げできれば、全ての従業員に良質なエクスペリエンスが届きます。また、データ分析のツールを取り入れることで離職率の低下を目指し、最高の患者ケアを施す人材を確保すること。最後に、離職率など業界 HR のベンチマークとなる主要な統計データを取りまとめ、それ運営や事業に活かしていくことです。

文化も仕組みも異なる組織を一つに

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私たちのDNAに流れる「ディスラプション」

今日は、私たちが「Project One」と呼ぶプロジェクトのテクノロジーの側面を中心にお話しします。Baylor Scottと White Health にはそれぞれに強みがあったため、それを活かしたソリューションを目指しました。また何より、従業員の貴重なリソースを最大限、患者ケアに充てたいと考えました。私たちは文字通り、人の命を救う現場にいます。それが私たちの仕事です。従業員には、コンピューターの前ではなく患者のもとにいてほしいのです。HR が採用するテクノロジー群の中に、それを可能にしてくれるツールが必要です。

デジタルなディスラプション(崩壊)は、以前から私たちの DNA に流れているものです。例えば、臨床現場。専門医が足りない地方の小さな病院には、その代わりとなって動けるロボットを配置しています。私たちの従業員は日々、患者ケアの限界に挑んでいます。そんな彼らに対して、HR として「この Web サイトは、スマートフォンでは使えません」だなんて口が裂けても言えません。患者の看護に忙しい従業員は、仕事をしやすくしてくれる変化を求めているのです。

例えば、コールセンターに電話した時に、一回目で必要な情報を把握できることです。何度も繰り返す行為なのですから、それは簡単であるべきです。Brita のウォーターフィルター本体を購入する時、Amazon なら一緒に交換式フィルターの購入も提案してくれます。同じような利便性を従業員に対して提供しなくてはいけません。彼らが初めてのケースで電話してきたのなら、経験があるコールセンターの人間が先回りして、彼らに必要になるであろう情報を伝えてあげられるべきです。時間の猶予がない患者ケアにおいて、私たちが彼らに期待するのと同じ迅速なエクスペリエンスが必要です。

オラクルと共に歩む道

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(Lisa Massman, KPMG)

私たちの取り組みについて簡単にお話したいと思います。一年半ほど前、Baylor Scott & White Health に一つのテクノロジープラットフォームの導入に必要なプロセスを見直しました。組織としてのゴールを達成し、また全く異なる二つの組織を一つにしなければいけません。このプロセスが進む間も、HR関連の様々なテクノロジーソリューションが運営されています。同時に、そこにはかなりの量のマニュアル仕事も残されています。

2017年1月までに、オラクルのテクノロジープラットフォーム上に標準化された共存型のソリューションを立ち上げます。コアには PeopleSoft を使い、同時に広範囲にわたってクラウドを導入します。また、組織全体にまたいでHR アナリティクスを導入することで、組織文化のギャップを埋めて、文化を共に育むことを後押しします。時間管理には、ヘルスケア専門のプロバイダーAPIを採用しています。

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鍵を握るのはオーナーシップ

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Jackie Tischler :

今、掻い摘んでお話したように、裏側の仕組みはかなり複雑なものですが、それを従業員に知られたくはありません。従業員の体験は、まるでワンストップショッピングのようにズムーズであるべきです。最近、先行してテキサス地域の従業員に対してポータルサイトをリリースしました。このポータルをクリックするだけで、どこでも必要な場所に行くことができます。デザイン面でも、一目で伝わるシンプルなアイコンを採用するなどして、従業員を念頭においたツール開発に取り組んでいます。

私たちは、まだまだ夢を見続けています。例えば、マネージャーの意思決定を後押しするために何ができるのか。「この従業員は成果を出しています。彼が最後にトレーニングを受けたのは半年前ですが、このクラスを薦めてみてはどうですか?」「この優秀な人材は、18ヶ月間同じ部門に止まっています。18ヶ月は一般的に離職率が高まる時期なので、今後の可能性について話し合ってみてはどうでしょう?」といった具合に、システムの力を借りることでマネージャーにプッシュで働きかけることが可能かもしれません。

私たちのジャーニーはまだまだ続きますが、オラクルのクライアントであることの面白さの一つは、同社もまた私たちと同じジャーニーを歩んでいることにあります。私たちは、同じ方向を向いて進んでいるのです。

プロジェクトの実現のために私たちが設けた運営方針についてお話します。まず、組織内の意思決定の構造にコミットすることです。これが最初の一歩です。特定の会議の参加すべき人間は誰なのか。その議論を踏まえて、最終的な意思決定を行うのは誰なのか。上層部に判断を仰ぐかどうかをどう判断するのか。明確な意思決定構造があることで、プロジェクトのモメンタムを維持することができます。全員が、次のステップを把握できている状態にいられるのです。

また、統合された一つの目標を掲げることも不可欠です。プロジェクト関係者全員が、同じゴールに向かって進んでいること。HR として、私たちにとって決してあってはならないことは、給与の支払いミスが発生することです。このようにして優先順位が明確になっていきます。新しい課題が浮上すれば、それを既存の優先順位に照らし合わせて、必要であればその順位が変更されます。

Project Oneのチームには、財務、給与支払い、福利厚生など様々な意思決定者が参加しています。Project Oneは、導入パートナーである KPMG のプロジェクトではなく、あくまで Baylor Scott & White Health のプロジェクトだからです。KPMG は、いつかは去ってしまいます。私たちの今日の意思決定を体現することになるのは、他ならぬ私たちなのです。プロジェクトの開始当初からこれを強調することで、ビジネスオーナーに強い責任感とオーナーシップが生まれています。

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何年とかかるプロセスを3ヶ月に短縮

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Lisa Massman :

最近、60~65人のHRリーダーを招集しました。全てのプロセスフローを見直し、過去3ヶ月に行った主要な意思決定を振り返るためです。そして、その内容を各ビジネスオーナーに発表してもらいました。ほんの1ヶ月前、このプレゼンについて伝えただけで緊張していた彼らが、素晴らしいプレゼンテーションを見せてくれました。プロセスを自分のものにして、慣れ親しんだ領域から踏み出したのです。今回のプロジェクトの成功要因の一つには、間違いなくオーナーシップがあると思います。

Project One では、KPMG Power to HR というアプローチをとりました。これは、オラクルのテクノロジープラットフォーム上にあらかじめ構築されたソリューションです。業界に特化したベストプラクティス、7つのHRタクソノミー、ターゲットオペレーティングモデルを用いています。これを使うことで、ビジネスオーナーが集まるや否や意思決定プロセスに突入できました。結果、全プロセスの 75~80% を網羅し、特に注力すべき 20~25% を特定することができました。また、チームの足並みも揃いました。真っさらなホワイトボードを使うアプローチでは何年もかかるプロセスを、わずか 3ヶ月間で実施することができたのです。こうしてプロセスを完全に網羅したことで、いよいよオラクルのテクノジープラットフォームで開発する際に上手くいくという確信を持つことができました。

最後に、プロジェクトのチームの構造について少しだけお話しします。Bayor Scott & White Health のプロジェクト組織は、KPMG がこれまでに見てきたクライアントのそれに似ているものでした。簡単に説明しますと、人材管理からラーニングに至るまで全部で12のワークストリーム(仕事の流れ)が存在します。そして、各ワークストリームの中にさらに 11 の役割が配置されています。この垂直構造一つ一つをプロジェクトマネージャーが確認していきます。同時に、全ての機能にまたがる水平構造にも注意を向ける必要があります。これはソリューション構造に影響する部分で、私たちのテクニカルチームや上層部などにも関係してくるからです。

プロジェクトを通して感じることは、Bayor Scott & White Health が強固なプロジェクト組織であることです。Bayor は、新組織に本気でコミットしています。プロジェクト組織の構造がしっかりしていることで、プロジェクトが円滑に進んでいます。今後も、各ビジネスオーナーに責任を持って取り組んでもらい、必要に応じて調整しながらプロジェクトの成功に向けて前進していきます。

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ミッションを念頭に、なぜ?と問い続けること

Jackie Tischler :

私たちのこれまでの経験から、皆さんに少しアドバイスをしたいと思います。まずは、資源について。私たちが意識して行っていることの一つに、開発と運営の切り分けがあります。誰が何をしているのか、また重なっている部分を把握することです。開発と運用を同じ人材リソースで行っていると、開発で発生したトラブルが結果として運営にも影響してしまうからです。それぞれに体制を整えましょう。

また、予想外の出来事が起こる可能性をあらかじめ計画に入れておくことです。多かれ少なかれ、予期せぬことは必ず起きます。とある機能をリリースする際、HR テクノロジーディレクターの提案で、外部に向けてシステムダウンの期間を一日長く告知したことがありました。上手くいくだろうからバッファはいらないだろうけれど念のため、と。この判断が功を奏しました。結局私たちにはその余分な一日が必要だったからです。でも、事態をあらかじめ見込んでいたことで、エンドユーザーにはあくまでシステムが予定通り復旧されたように見えました。些細な教訓かもしれませんが、忘れてはならない教訓です。

チームの強み、スケジュールなど、プロジェクト進行のあらゆる側面で現実的になってください。役割を全うできない人材を抜擢することをせず、また自社文化のパワーを見くびらないでください。文化に反抗せず、それを謳歌して共に歩みましょう。プロセスに否定的な人に議論に参加してもらうことも大切です。初期段階から彼らをエンゲージし、共同オーナーになってもらいましょう。同様に、早い段階から頻繁に顧客を巻き込むことで、顧客セントラルなシステムが可能になります。

最後に、これら全てのことを組織のミッションに結びつけることです。ここにいる皆さん全員が、人の命を救える素晴らしい機会に恵まれているわけではないでしょう。でも、全ての事業には存在理由があります。あなたは、その事業を前進させるために今日この場に参加しています。テクノロジーやそのソリューションが、私たちのミッションをどうサポートできるのかを考えましょう。私たちにとってのそれは、ケアテイカーを少しでも早く患者のもとに戻してあげることです。彼らはそのためにこの組織に参加したのです。

皆さんが、それぞれの答えやソリューションを見出そうとする時、「なぜ」と紐付けて考えることを忘れないでいてほしいと思います。

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