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第22回消防防災研究講演会資料 平成30年11月22日�
消防庁 消防研究センター
第22回消防防災研究講演会資料
平成30年11月22日
主催 消防庁 消防研究センター
第 22 回消防防災研究講演会
大規模物流倉庫火災
開催日 平成 30 年 11 月 22 日(木)13:15~16:00 会 場 ニッショーホール(日本消防会館内)
- プログラム -
13:15 【 開 会 】
13:15~13:20 開会の辞・趣旨説明 消防研究センター 塚目孝裕 ‥‥‥ 3
【セッション 1】 13:20~13:40 (1) 埼玉県三芳町大規模倉庫火災における活動概要
入間東部地区事務組合消防本部 長谷川信之 ‥‥‥ 5
13:40~14:00 (2) 埼玉県三芳町大規模倉庫火災における長官調査 消防研究センター 塚目孝裕 ‥‥‥ 29
14:00~14:20 (3) ダンボール箱から出火した倉庫火災の火災進展予測 消防研究センター 阿部伸之 ‥‥‥ 35
14:20~14:35 【 休 憩 】
【セッション 2】 14:35~14:55 (4) 埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた消防庁の取組
消防庁予防課 塩谷壮史 ‥‥‥ 49
14:55~15:15 (5) 埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた国土交通省の取組 国土交通省 住宅局 建築指導課 山口義敬 ‥‥‥ 61
15:15~15:35 (6) 物流倉庫における火災防止対策 アスクル株式会社 片山大一郎 ‥‥‥ 73
15:35~15:55 (7) ダンボールの形状による燃焼性状 消防研究センター 佐藤康博 ‥‥‥ 75
16:00 【 閉 会 】
大規模物流倉庫火災
(講演会趣旨)
消防庁消防研究センター 塚目孝裕
2017 年(平成 29 年)2 月 16 日、埼玉県三芳町の大規模物流倉庫において発生した火災は約
45,000m2 を焼損し、鎮火までに 13 日を要する大きな火災となった。
倉庫は従来ものを保管する場所であったのに対して、近年の生活様式の変化により、多種類の
商品を保管、仕分けし、小分け発送を行う物流の拠点へと変化したものが現れている。そのため
従来は倉庫内に多くは見られなかったコンベヤが縦横に走り、多くの人が常時内部で働くという
新しい形態となっている。このような中で起きたこの火災は、窓の少ない建物、内容物の多様さ
等から、長期の消火活動を余儀なくされた。
この火災については、消防法第 35 条 3 の 2 に基づき消防庁長官が自ら火災原因調査を行うこ
ととなり、消防研究センターからも多数の職員を投入し、原因調査業務に当たった。消防用設備
が規定に基づき設置されている建物で、なぜこのような大きな災害になったかを検証するため、
消防庁・国土交通省は「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関す
る検討会」を開催し、検討会においては各種の提言がなされた。
この講演会では、大規模物流倉庫の安全対策を考える契機となった 2017 年発生の大規模物流倉
庫火災について、消火対応に当たった管轄消防本部の活動状況、鎮火後に行われた原因調査活動、
調査によって判明した事実関係を基にした、再発防止に向けた行政機関の取り組み、さらに、物
流事業者、研究機関で実施された研究活動について講演を行う。
今後、我々の生活様式がより利便性を追求したものに変化していく中で、このような物流機能
を有した倉庫は数が増えていくことが予想される。このような倉庫が、利便性の反面、防火対策
に対して課題を有していることを改めて考え、今後の再発防止に役立てていただければ幸いであ
る。
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1-1-19
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6.85 8.13 5.97
40 2 60 2
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3m
A
B
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清聴
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埼玉県三芳町大規模倉庫火災における長官調査
消防庁消防研究センター 塚目孝裕
はじめに
2017 年(平成 29 年)2 月に発生した大規模物流倉庫の火災は、13 日に渡って燃え続け、消火
活動に困難を極めたと共に、鎮火後に行われた原因調査業務もその焼失面積の大きさから困難を
極めた。さらに、この火災は消防法第 35 条 3 の 2 に規定された消防庁長官自らが行う火災原因調
査(長官調査)となり、「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関す
る検討会」が設けられ、今後の防止対策について検討がなされた。ここでは、鎮圧後から開始し
た原因調査業務について、その内容と結果について報告する。
1. 覚知から鎮火まで
平成 29 年 2 月 16 日 9 時 14 分に、埼玉県三芳町内の倉庫で火災が発生していることを、管轄の
入間東部地区事務組合消防本部(以下、地元消防本部と略)が覚知した。地元消防本部を中心と
して、その他に県内応援隊、消防団の消火活動中、消防研究センターでは火災の状況等について
情報収集を実施した。
同年 2 月 22 日、地元消防本部により鎮圧が出され、同日消防法第 35 条 3 の 2 の規定に基づく
消防庁長官の火災原因調査(主体)が決定された。同年 2 月 23 日、原因調査を実施するにあたっ
ての事前調査を行うために鎮圧状態の現場を確認、地元消防本部との事前協議を行った。
さらに、同年 2 月 27 日、合同で調査に当たる埼玉県警察も含め、消防研究センター、地元消防
本部、埼玉県警察の 3 者で調査方針の協議を実施した。
平成 29 年 2 月 28 日、地元消防本部より鎮火が宣言され、同年 3 月 1 日より調査活動を開始す
ることが決定された。
2. 調査活動
事前調査により、調査すべき面積が極めて大きいことが判明したため、2 月 27 日の 3 者協議に
おいて以下に示す表 1 のように任務を分担し、各班が並行して調査活動を実施することとした。
表 1 任務分担 担当区分 消研 任務分担 入間東部消防 任部分担
火元班 2 名 全班総括班長(記録・写真)
4~6 名 記録・写真発掘員安全管理
区画 1 班 1 名 班長(記録・写真) 4~6 名 記録・写真表示員図面(計測)安全管理連絡要員
区画 2 班 1 名 班長(記録・写真) 4~6 名
設備班 2 名 班長(記録・写真)記録員
4~6 名 記録・写真安全管理
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各班には、埼玉県警の警察官が 4~6 名体制で、各班と共に行動し見分の実施に当たった。
各班の任務詳細は以下のとおりである。
・火元班
火元と考えられる 1 階破材室での状況記録、破材室内を数区画に区切り、各区画内の発掘、着
火源の検索作業。
・区画 1 班・2 班
各階の焼損状況記録。区画を形成する各シャッターについてそれらの稼働状況、及び開閉の確
認。防火扉等の確認・記録。
・設備班
設置消防設備の確認、及びそれらの稼働状況。電子施錠等室内設備の状況、各階のコンベヤ、
及びコンベヤ間渡し部分の動作確認等。
各班の作業進行状況に応じ、任務にあたる人数調整、作業内容の調整などを行い、見分は平成
29 年 3 月 1 日から同年 5 月 18 日までの間、19 日にわたり実施し、消防研究センターからは、延
べ 127 名を派遣した。その他の機関の従事延べ人数は表 2 に示すとおりである。
表 2 各機関の従事人数
機関名 従事延べ人数
入間東部消防 444
消防研究センター 132
消防庁 18
埼玉県警察 235
国土交通省 13
埼玉県(建築部局) 8
埼玉県(消防防災部局) 2
日本消防検定協会 2
見分を実施している期間中である平成 29 年 3 月 10 日に、消防庁、国土交通省が「埼玉県三芳
町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」を発足させ、今後の対策
に関しての検討が開始された。見分結果を検討会に提供できるよう、事務局と密な情報共有を図
りながら見分が進められた。
3. 調査から判明した事項
調査から判明した事項について、概略を記載する。詳細については、公表されている「埼玉県
三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書」*1)を参照され
たい。
(1) 出火原因
先着消防隊、関係者の供述等から、出火箇所は 1 階北西側破材室であると判断された。破材室
は、倉庫内での作業によって出された廃段ボールが集積されており、一日に数回、外部業者によ
り回収されていた。出火当日は、回収業者が回収作業に当たっており、破材室内に積み上げられ
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た組み立ててあるダンボール廃材を、クランプリフトによりパッカード車へ移送している際に出
火した。廃段ボールの上をクランプリフトで走行したために、排気管の高温部分にダンボールが
入り込み、高温となり着火したものと判断された。これは、発災現場のクランプリフト見分、及
び同型車での実験から確認された。
(2) 延焼拡大要因
1 階破材室は、四方がコンクリートで形成されており、1 階は破材室以外の焼損箇所はない。破
材室天井の一部には、2 階部分から廃段ボールを落とし込む開口部が存在しており、焼けはこの
開口部下部が最も強い。着火した段ボールの炎は、この開口部から 2 階部分へ燃え広がったもの
と判断された。この開口部の 2 階部分はハト小屋となっており、向かい合う東西の 2 方向が開放
されている。ハト小屋上部には火災検知器の設置があり、ハト小屋開放部にはシャッターが取り
付けられているが、シャッターは閉まっていなかった。ハト小屋周囲は、出荷商品の梱包作業場
所となっており、ダンボールや折り畳みコンテナ、プラスチック緩衝材があったと考えられるが、
燃焼残渣物がほとんど残っておらず燃え切ってしまっている。さらに、ハト小屋開口部付近のコ
ンクリート柱に強い火炎が当たった形跡が見られ、爆裂していた。また、ハト小屋付近の 1 階か
ら 2 階へ繋がるコンベヤから、消防隊が到着 8 分後に 2 階へ進入を試みているが、この時点で火
勢最盛期となっており、火炎と熱気のために進入不能と判断している。これらから、1 階破材室
から立ち上がった炎は、短時間のうちに 2 階に達し、周辺部分に延焼を始めていることが推測さ
れた。
ア 区画の形成
2 階ハト小屋付近は、防火シャッターで区画される構造となっているが、ハト小屋付近のみな
らず、2 階、3 階で多数の防火シャッター閉鎖障害が確認された。
各階の防火シャッター等の開閉状態は表 3 のとおりである。
表 3 各階の防火シャッター等開閉状態
階数 設備 開 半開 閉 合計
地上3 防火シャッター 24 4 24 52
防火扉 3 0 37 40
エレベーター 0 0 7 7
地上2 防火シャッター 26 31 24 81
防火扉 2 0 57 59
エレベーター 0 0 11 11
地上1 防火シャッター 77 0 10 87
防火扉 1 0 50 51
エレベーター 1 0 10 11
合計 134 35 230 399
表に示すように、シャッターの閉鎖障害は、全く閉まっていないもの、一部が閉じているが完
全に閉状態となっていない半開状態があり、半開状態はシャッター下部に物品が挟まっている状
態、コンベヤ渡し部分に引っかかり閉鎖していない状態が確認された。本来は、防火シャッター
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により区画が形成され、延焼が防止される構造となっているが、閉鎖障害により防火区画による
延焼阻止が機能しなかった。
イ 初期消火
事業所では、自衛消防隊を設置しており、出火確認とともに各人がそれぞれの任務にあたって
いる。消火器を用いた消火では、使用した本数と残本数の合計は設置計画上の本数と一致してい
ることが確認された。また、屋外消火栓が使用されていたが、ポンプ起動ボタンが押下されてい
ないことが確認され、屋上の補助用高架水槽に貯められていた分の水しか消火に使用されていな
いと推測された。
ウ 危険物貯蔵状況
敷地内には、危険物倉庫が設けられており、危険物は危険物倉庫に保管し、適時発災倉庫内に
規定量を移し替えることとなっていたが、効率化のため規定量以上の危険物が発災倉庫内に保管
されていたことが、入出荷記録から判明した。しかし、2 階、3 階部分は、危険物対象となる製品
がほとんど焼失してしまっており、発災前に発災倉庫内にどの程度の危険物が保管されていたか
は不明であった。
エ 活動障害
内部での衝撃音が複数回起きていることなどから、進入統制がされている。一部報道などで「爆
発」とされていたが、その後の調査で相当な重量がある吊り下げベルトコンベアの落下音、縦穴
区画を構成している ALC パネルの損傷による局部的な激しい燃焼があったものと推測された。
(3) 自動火災報知設備の作動状況
自動火災報知設備の受信機に印字された記録紙の内容から、各警戒区域の熱感知器が発報した
時刻、防火シャッター作動用煙感知器が発報した時刻、防火シャッター起動の時刻などを確認し
た。建物内は、配線図から 2 系統に分かれており、破材室の警戒区域の熱感知器が一番初めに作
動している。その後、延焼拡大したと考えられる区域の複数の熱感知器が作動しているが、一番
初めの熱感知器が作動した 3 分後から第 1 系統伝送線異常が検出されており、7 分後には伝送線
機能が消失していることが判明した。これは、建物内に 4 個設置されているうち、1 つの破材室
上部ハト小屋のアナログ式感知器が短絡し、第 1 系統が機能停止に陥ったものと考えられた。こ
のため、アナログ検知器を取り付けた模型を作成し、サンドバーナーで検知器、配線を加熱する
実験を行い、どのような条件で、どの程度の時間で短絡するかの確認実験を実施した。
4. 破材室ダンボール燃焼性状の実験
出火元である破材室に積み上げられていた組み立てたダンボールが着火してから、2 階への延
焼が極めて短時間に進んでいることから、ダンボールの燃焼速度が極めて速かったことが推測さ
れた。これは、2 階で作業を行っていた従業員の証言から、出火直後の発煙量が少なく、燃焼速
度が極めて速い可能性があった。そのため、組み立てたダンボールの燃焼実験から、実際の段ボ
ールの燃焼速度がどの程度であるか確認するための実験を行った。
5. おわりに
今回報告した大規模倉庫火災は、従来にないタイプの倉庫であり、延焼面積も極めて広いため、
調査活動も一般家屋や工場災害と異なる困難を伴った。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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この長官調査に関して、倉庫事業者、消防用設備業者等の多数の機関に、連日の立会と情報提
供に協力いただいたことを感謝する。特に現場見分及び鑑識見分に際し、共に活動を行った入間
東部地区事務組合消防本部、及び埼玉県警察のご尽力に感謝の意を表す。
参考
*1)消防庁:埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報
告書,平成 29 年 6 月
(上記の報告書は以下のサイトで閲覧可能)
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/miyoshimachi_souko_kasai/houkoku/houkokusyo
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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ダンボール箱から出火した倉庫火災の火災進展予測
火災調査への火災シミュレーションの活用
消防研究センター 阿部伸之
1. はじめに
2017 年 2 月 16 日に埼玉県三芳町で発生した倉庫火災は、発生から 12 日後に鎮火し、約 45,000m2
を焼損した。当該倉庫は、近年増加しているインターネットを活用した通信販売に対応した大規
模な物流倉庫であり、本火災は、社会的に影響が大きいことから、消防法第 35 条の 3 の 2 に基づ
く消防庁長官の火災原因の調査を消防研究センターが実施した(1)。
本火災は、建物 1 階にあるダンボールの破材が集積される破材室から出火し、初期消火を実施
した従業員 2 名が受傷、当時在館していた 421 名の従業員が避難した。火災調査の過程で、出火
室である 1 階破材室から 2 階床貫通部を経由し、2 階西側ハト小屋への延焼経路が存在すること
が推察されたが、その詳しい延焼メカニズムはわからなかった。そこで、出火室の可燃物である
ダンボール箱の燃焼実験データを入力条件とした Computational Fluid Dynamics(以下、CFD)に
よる火災シミュレーションを計算機を用いて実施し、その結果から延焼メカニズムを調べた。さ
らに、防火シャッターの閉鎖の有無を考慮した建物全体に伝播する煙について、CFD を用いた計
算機のよる煙伝播シミュレーションを実施した。本報告では、既報(2)に対する解説を含め、消防
研究センターで行った取り組みについて述べる。
2. 積み上げたダンボール箱の燃焼実験
ダンボール箱が積み上がった場合の燃焼性状を観察するとともに、火災シミュレーションの入
力データとなる発熱速度データを取得するために、ダンボールの燃焼実験を実施した。
2.1 実験条件
実験場所は、消防研究センター建築防火研究棟 1階のルームカロリメータ試験室である(図 1)。
実験に用いたルームカロリメータの区画(幅 2.36 m×奥行き 3.55 m×高さ 2.36 m(開口部:幅 0.76
m×高さ 1.95 m))の奥の一角に、ダンボール箱(幅 0.45 m×奥行き 0.33 m×高さ 0.22 m、厚さ 4~5
mm)を複数個積み上げる。各実験ケース(5 ケース)において使用したダンボールの個数と配置
の様子を図 2 に示す。無作為配置については、実態に合わせてダンボール箱の蓋は開いている。
着火位置は、積み上げたダンボール箱の突端部床面にあるダンボール箱の手掛穴下部とする。着
火方法は、多目的ライターによる接炎とする。
2.2 結果と考察
実験結果として得られた発熱速度を図 3 に示す。初期の火災成長は、発熱速度が立ち上がり始
める時刻を基点として、時刻 t 秒の発熱速度を Q.
=αt2と表した時、火災現場の状況を模擬したダ
ンボール箱 28個を無作為配置した場合で、火災成長率 α=0.53 kW/s2、最大発熱速度Q.
max=2 269 kW
である。ダンボール箱 10 個を無作為配置した場合も、28 個と同様の発熱速度の立ち上がりを示
す。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 1 ルームカロリメータ(左図:側面、右図:正面)
図 2 実験ケース(ダンボールの個数と配置の様子)〔各図中の黄点は着火位置〕
● ●
●
● ●
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一方、ダンボール箱 28 個でも整列配置した場合は、立ち上がりが無作為配置よりも緩やかにな
り、10 個、3 個でも同様の緩やかな立ち上がりとなる。また、全体の特徴として、発熱速度のピ
ークを越えると減衰する山型の分布となる。これは、ダンボール箱を構成する紙が燃えやすく、
また、ダンボール箱のかさ密度が低いため、体積の割には燃焼を継続するほどの紙の量がないた
めである。
3. 出火室近傍の火災シミュレーション
1 階破材室から 2 階西側ハト小屋への火災進展に注目し、2 階西側ハト小屋の周囲環境に与える
熱的影響について調べることを目的に、CFD を用いた火災シミュレーションを実施した。また、
これ以降の内容に東西南北の方位が度々出てくるが、文献(1)や(3)等の図面で確認されたい。
3.1 手法の概要
使用した計算ソフトウェアは、米国商務省国立標準技術研究所開発の Fire Dynamics Simulator
(以下、FDS)である。FDS は CFD を用いた火災シミュレータであり、例えば、煙の流動は熱気
流の運動であれば、4 つの支配方程式(質量保存式、運動量保存式、エネルギー保存式及び状態
方程式)を計算機で数値的に解けば、煙の運動が予測できる。これらの支配方程式は、微分方程
式で表されているため、計算機で取り扱うために、離散化という方法を使って代数方程式に変換
し、解を求める必要がある。代数方程式は、計算空間と呼ばれる計算対象となる三次元空間を、
計算格子と呼ばれる碁盤の目のように分割した各々の微小領域で取り扱われる。FDS では、直交
直線座標系において、空間微分に対して 2 次精度中心差分を用いた有限差分により離散化し、時
間積分については陽的 2 次精度予測子修正子法を用いて離散化する。
また、火災で生じる高温熱気流は圧縮性のある流れであるが、FDS では爆発のような高い密度
波の伝播を捉える必要がないため、低マッハ数流れとして低マッハ数近似が適用されている。こ
図 3 ダンボ-ル箱燃焼時の発熱速度
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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の近似により、爆発現象は再現不可能ではあるが、計算が高速となる。計算手法として、火災時
の熱気流のような乱流を取り扱うのに一般的になりつつある Large eddy simulation(以下、LES)
を用いて、計算を行う。この LES には、乱流モデルとして Deardorff モデルが採用されており、
本計算ではモデル定数 0.1(FDS の既定値)を使用する。その他の機能として、伝熱モデル(熱
伝導、対流熱伝達及び放射熱伝達)や燃焼モデルが FDS には実装されており、本計算でもそれら
を活用する。
3.2 計算条件
計算条件を表 1 に、計算空間を図 4 に示す。1 階破材室及び 2 階西側ハト小屋を含む防火区画
を計算空間とする。計算空間寸法は 24.16 m×51.81 m×16.13 m、計算格子数は 120×256×80=2
457 600 である。計算格子幅は 0.2 m である。計算時間は、着火から 600 秒までである。初期条件
は、標準的な雰囲気として風速 0 m/s、気温 20℃、圧力 1.01325×105 Pa とした。火源条件は、1
階破材室の一角(2 階床貫通部の直下)の床面に 4m×4m の火源を設定し、実験で得られた火災
成長率 0.53 kW/s2を与えた。境界条件は、防火区画と計算空間が同一のため、空間界面が大気開
放条件になる(地面を除く)。壁面の失熱の影響は少ないと考え、計算負荷の軽減から壁面等はす
べて 20℃(不活性条件)とした。
3.3 結果と考察
3.3.1 火災進展のメカニズム
図 5 は、2 階西側ハト小屋の 2 つある開口部から出現する噴出火炎(着火 420 秒後)の様子で
ある。噴出火炎の特徴は、西側ハト小屋の東面開口部からの噴出火炎に比べて、西面開口部から
のそれが大きいことである(図 5 (a))。また、西面開口部から噴出した火炎は柱に接炎している
(図 5 (b))。建物モデルをアウトライン表示にして、1 階破材室から 2 階西側ハト小屋に向かって
伸びる火炎の様子を見てみると(図 5 (c))、破材室の西側及び南側の壁面に沿うように火炎が伸
び、特に西側壁面に沿った火炎がそのまま延長線上の西側ハト小屋の西面開口部から噴出するこ
とから、大きな噴出火炎となっている。
表 1 計算条件
〔出火室近傍の火災シミュレーション〕
1 階 2 階
図 4 計算空間(平面図)
〔出火室近傍の火災シミュレーション〕
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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(a) 東面開口部よりも西面開口部から大きく火炎が噴出する様子
(b) 西面開口部から噴出する火炎が爆裂した柱に接炎する様子
(c) 1 階破材室の壁面に沿って 2 階ハト小屋へ上昇する火炎の様子
図 5 火災シミュレーションの結果(着火 420 秒後)
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 6 に延焼メカニズムを示す。2 階西側ハト小屋の西面開口部の直下に 1 階破材室の壁面があ
り、東面開口部の直下にはそれがないことから、壁面に火炎が沿って火災進展する所謂コアンダ
図 7 建物 2 階西側ハト小屋と爆裂したコンクリート柱の位置関係
図 6 延焼メカニズム
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効果により、本来 2 階西側ハト小屋の天井中央で上昇する熱気流が分岐し、天井流として西面及
び東面開口部から均等に火炎が噴出するところ、熱気流の分岐点が西面開口部寄りになる。した
がって、分岐点からの火炎の長さが同じであると仮定すると、分岐点から遠い東面開口部よりも
近い西面開口部からの方が、火炎高さの大きい火炎が噴出する。
火災現場では、図 5 (b)で示した柱は鉄筋コンクリート構造で一部爆裂していた。図 7 に 2 階西
側ハト小屋と、爆裂したコンクリート柱の位置関係を示す。柱はハト小屋西面開口部と約 1.7 m
の離隔距離があり、ハト小屋西面開口部に正対する柱の面を柱 A 面と呼ぶ。柱の他の面は、平面
図で見たときの時計回りの順に柱 B 面、C 面、D 面と呼ぶ。柱 C 面を例にとって、床から鉛直方
向に 1.5 m の柱面上を C1、さらに 1.5 m 毎上方に C2、C3、C4 とする位置で、熱流束データを取
得している。図 8 にその熱流束の経時変化を示す。どの面も低い位置より高い位置の方が、熱流
束は大きい。高い位置の方が火炎に近いことと、熱気層が天井から成層していることが影響して
いるものと考える。また、柱 A 面と B 面が、柱 C 面と D 面に比べて、熱流束が大きい。爆裂す
るために必要な熱流束がどの程度かは不明であるが、柱A面及びB面の受熱量は明らかに大きく、
現場で爆裂していた柱の面はまさに A 面及び B 面であったことと一致する。
図 8 コンクリート柱が受熱した各柱面の熱流束の経時変化
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 9 入力及び出力した発熱速度
(a) 1 階破材室出入り口付近
(b) 2 階東側ハト小屋
図 10 結果の確からしさ(火災現場の情報と数値シミュレーション結果の比較)
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
- 42 -
図 9 は入力及び出力した発熱速度である。入力した発熱速度は Q.
=0.53t2であり、放物線を描く。
出力した発熱速度は 480 秒以降に若干の低下が見られ、火災室の酸素が不足している傾向が見ら
れる。コンクリート柱の A 面及び B 面への熱流束が C 面及び D 面に比べて大きくなり始めると
きの発熱速度は、約 13,000 kW(13 MW)、西側ハト小屋の西面開口部から噴出火炎が出現し始め
るときの発熱速度は、約 30,000 kW(30 MW)である。
3.3.2 火災シミュレーション結果の確からしさ
ここでは、わずかながら火災現場で得られた情報と、火災シミュレーションの結果を比較する
ことにより、火災シミュレーション結果の確からしさを確認する。
図 10 (a)は、建物 1 階破材室出入り口付近での比較である。火災シミュレーション結果では、
壁面に沿った空気の流れを含め、破材室出入り口を経由して破材室内に新鮮空気が流入している。
一方、火災現場の情報から、壁面に沿う空気の流れが確認でき、破材室出入り口からわずかに流
出しただろう煙も拡散せず、壁面にハの字のすすの付着を見せている。これも、破材室出入り口
を経由して破材室内に新鮮空気が流入した結果である。加えて、破材室外側は煙に汚染されてい
ない。
図 10 (b)は、建物 2 階東側ハト小屋出入り口付近での比較である。火災シミュレーション結果
では、1 階から東側ハト小屋を経由して 2 階へ新鮮空気が流入している。実際の火災において、
比較的閉鎖された中でも燃焼が維持できたのは、この空気の流れが寄与したことも一因と考える。
一方、火災現場の情報から、東側ハト小屋の内部が煙による汚染や熱による焼損を受けているこ
とがないので、東側ハト小屋出入り口から新鮮空気が供給されていることが確認できる。
以上より、定性的ではあるが、主に空気の流れの視点から火災シミュレーション結果は火災現
場を再現しているものと考え、火災シミュレーションが一定の確からしさがあることを確認
することができた。
4. 建物全体への煙伝播シミュレーション
建物全体に拡散する煙の伝播性状を予測するとともに、防火シャッターが作動した場合の煙伝
播への影響について調べることを目的に、CFD を用いた煙伝播シミュレーションを実施した。こ
こで、煙伝播シミュレーションとは、煙伝播に注目して計算条件を設定した火災シミュレーショ
ンのことである。
4.1 計算条件
第 3 章の条件と異なる部分のみ記載する。
計算条件を表 2 に、計算空間を図 11 に示す。建物全体を計算空間とし、その寸法は 256.0 m
×128.0 m×24.0 m である。計算格子数は、640×320×60=12 288 000、計算格子幅は 0.4 m であ
る。計算時間は、着火から 1,200 秒までである。境界条件は、計算空間の界面を大気開放条件と
する(地面を除く)。建物内を煙が広範に伝播するため、壁面等の失熱を考慮し、内壁、外壁及び
地面はコンクリート(密度 2, 280.0 kg/m3、比熱 1.04 kJ/(kg・K)、熱伝導率 1.8 W/(m・K)、放射率 0.9)、
防火シャッター、オーバースライダー及び鉄骨はスチール(密度 7, 850.0 kg/m3、比熱 0.46 kJ/(kg・
K)、熱伝導率 45.8 kW/(m・K)、放射率 0.95)とした。ここで、オーバースライダーとは、開口部
の両袖壁から天井に沿って設置された 2 本のレールにより、スライドさせて開閉可能なシャッタ
ーのことである。本建物では 1 階及び 3 階の外壁に面した部分に使われている。すべてのケース
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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において、オーバースライダーは現場の開閉状況を維持し、計算途中で変化することはない。防
火シャッターの作動状況については、以下の 3 ケースのシミュレーションを実施する。
I. 防火シャッターを作動させない場合
II. 防火シャッターが完全に閉鎖する場合
III. 実際の閉鎖状況を再現して防火シャッターを閉鎖する場合
火源条件は、火災成長率 0.53 kW/s2とし、最大発熱速度は 40,000 kW(40 MW)とした。
図 11 計算空間〔出火室近傍の火災シミュレーション〕
表 2 計算条件〔建物全体への煙伝播シミュレーション〕
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
- 44 -
防火シャッターの動作は煙濃度の大きさの影響を受ける。その煙濃度に関わる火源からのすす
放出のパラメータであるすす生成率は、ダンボールをセルロースとして木材(赤樫や米松)の文
献値(4)を参考に 0.004 g/g とした。
図 12 建物内の煙流動の俯瞰図(条件Ⅰ:防火シャッターを作動させない場合)
※建物モデルを非表示にしているため、建物各階の煙流動が重ねて表示される。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
- 45 -
4.2 結果と考察
防火シャッターの作動状況別に結果について、考察していく。ここで、建物 2 階西側ハト小屋
からさらに延焼した際の可燃物の燃焼性状も、火源条件として考慮する必要性も少なからずある
ものの、可燃物の材質や配置等の詳細が不明であることから、建物 1 階破材室のみを火災室にし
ていることに留意いただきたい。
4.2.1 防火シャッターを作動させない場合
煙の伝播性状として防火区画単位で蓄煙しつつ、西側ハト小屋がある建物 2 階北側から南側に
煙伝播する様子が見られた(図 12)。2 階中央付近にある竪穴区画は、流路を閉塞することで煙流
動を妨げ、さらに 2 階中央にある防火区画の容積が周囲の防火区画よりも大きく、蓄煙に時間が
(a) 防火シャッターが完全に閉鎖する場合(条件Ⅱ)
(b) 実際の閉鎖状況を再現して閉鎖する場合(条件Ⅲ)
図 13 防火シャッターの作動時間(2 階)
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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かかることから、2 階中央の防火区画を伝播する煙流動よりも、2 階東西側の防火区画を伝播する
それの方が速い傾向がある。
4.2.2 防火シャッターが完全に閉鎖する場合
防火シャッター近傍の煙の減光係数が 15%/m に到達した時に、その防火シャッターが床ま
で完全に閉鎖する場合である。破材室で生成した煙は、2 階の西側ハト小屋を経由し、西側ハト
小屋のある防火区画に蓄煙する。2 階の防火シャッターが着火 105 秒後に閉鎖し始めて(図 13 (a))、
着火 269 秒後に 1 階の防火シャッターが閉鎖することで、防火シャッター完全閉鎖による区画形
成が完了し、その区画外の煙伝播を防ぐことができる。
4.2.3 実際の閉鎖状況を再現して防火シャッターを閉鎖する場合
防火シャッター近傍の煙の減光係数が 15%/m に到達した時に、その防火シャッターが半開
等の実際の閉鎖状況を再現して閉鎖する場合である。計算過程において建物 1 階の防火シャッ
ターが作動することはなかった(火災現場では作動している)。煙伝播に伴い、建物 2 階の防火シ
ャッターは作動するが、全開や半開の状態が続き建物 2 階北側から南側に向かう煙伝播を遮るこ
とはない。結果として、防火シャッターを作動させない場合と同様の煙伝播となり、全開や半開
の状態で防火シャッターの機能を果たさない。さらに建物 2 階の防火区画が区画形成できなかっ
たことから、建物 3 階にあるハト小屋を経由して建物 3 階に煙が伝播し、建物 3 階北側に煙伝播
する結果となる。
防火シャッターの作動予測時間と実際の作動時間について(図 13 (b)及び図 14)、火点に近い
図 14 2 階シャッター作動時間の比較(Ⅲ.実際の閉鎖状況を再現)
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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防火シャッターで 1~2 分早めの予測であり、その区画から離れるに従い予測時間と実際の時間の
差は広がる。実際には煙の減光係数が 15%/m に到達したさらに 60 秒経過後に防火シャッターが
作動するので、それを考慮すると実際の作動時間を良く予測できているとも言える。
いずれにしても、火点から離れるに従い予測時間と実際の時間の差が広がるのは、実際の火災
進展過程で破材室にあるダンボール以外の可燃物が別の場所で燃焼し始め、煙伝播シミュレーシ
ョンの火源条件が実際とは異なっていくことが原因であると考える。
5. まとめ
火災調査の一環として、1 階破材室から進展する火災の予測及びそこから伝播していく煙の性
状を調べることを目的に、2 つの課題を設定し CFD を用いた計算機のよる火災シミュレーション
を実施、予測結果を解析した。
ダンボール箱の燃焼実験では、28 個無作為配置したダンボール箱燃焼時の火災成長率が 0.53
kW/s2 と観察時に体感していた火災成長の速さを定量的に把握でき、このデータを入力条件にし
た火災シミュレーションの結果から、コアンダ効果による噴出火炎が延焼メカニズムとして機能
したことがわかった。また、火災現場でコンクリート柱が爆裂した面が、火災シミュレーション
で再現した噴出火炎の接炎であることが、強い加熱と爆裂面が一致することで説明できた。
今後、詳細な条件設定で、より定量的な検証を実施する考えである。
参考文献
(1) 小清水雄二: 埼玉県三芳町倉庫火災の概要、平成 29 年度火災学会講演討論会テキスト「大規
模物流倉庫の火災安全について考える」、日本火災学会、pp.1-9 (2018)
(2) 阿部伸之、塚目孝裕、小清水雄二、髙垣克樹、藤﨑草多、青野肇範、 長谷川巧、田村裕之、
松﨑崇史: ダンボール箱から出火した倉庫火災の火災進展予測、平成 30 年度日本火災学会研
究発表会概要集、日本火災学会、pp.220-221 (2018)
(3) 埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会: 埼玉県三
芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書 (2017. 6)
(4) Philip J. DiNenno, et al.: SFPE Handbook of Fire Protection Engineering, Fourth Edition, National Fire
Protection Association, pp.3-143 (2008)
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Tempe
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Time (min)
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物流倉庫における端材ダンボール防火対策研究
アスクル株式会社 ECR 本部 物流管理 片山大一郎
1. はじめに
平成 29 年 2 月 16 日に埼玉県三芳町で発生した倉庫火災では、大規模な倉庫の内部において延
焼が生じた結果、発生から鎮火に至るまでに約 12 日間という長時間を要した。今回の火災を教訓
に、大規模倉庫において類似の火災が再発することがないよう、火災の拡大防止のための対策の
充実を図ることは喫緊の課題である。この倉庫火災については、消防庁や国土交通省による「埼
玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策および消防活動のあり方に関する検討会報告書」におい
て、幾つかの提言が示されているところであるが、火災が初期に拡大し上階への延焼につながっ
た要因のひとつとして、物流倉庫等で不可避的に生じる使用済みダンボール端材が積み重なった
状態の箇所から出火し、急激に燃え広がったことが指摘されている。
そこで「圧縮ダンボールの燃焼性状に関する研究会」(代表:東京理科大学 関澤愛教授)を立
ち上げ、圧縮機を用いてダンボール端材を圧縮した場合に、それが一定の大きさの火源に対する
着火性や、いったん着火した後の延焼拡大性にどのように影響するかに着目し、その性状を観察
するための実験を実施し、検討を行った。
2. 弊社物流センターで端材ダンボールが発生する背景
弊社は、少人数オフィスのお客様に大規模事業所なみの購買サービスをご提供することを目的
として、1993 年に事業開始した。少人数オフィスのお客様にも最適な販売単位、価格で商品をご
提供するために、物流センターではメーカーダンボール箱で入荷した商品を個単位にばらして保
管し、個単位でピッキングして梱包し出荷している。上記の過程で、発生した端材ダンボールは
物流センター内の端材置場に集積され古紙回収業者によって回収される。
3. 端材ダンボールの管理方法について新たな取り組み
火災のあった ASKUL Logi PARK 首都圏では、商品が取り出されて端材となったダンボールは
端材コンベヤによって端材置場まで自動的に搬送されて組み立てた状態で集積されていたが、弊
社ではこの集積方法を改善することにより、延焼拡大リスクを低減できるのではないかと考えて
いた。同時期に導入を検討していた圧縮機によって端材ダンボールを圧縮すれば、燃えにくくな
ることは想像に難くないが、定量的に示すことができれば、他の事業者の防火対策にとっても有
益な情報になると考えて、東京理科大学、消防庁、消防研究センターをはじめとした多くの専門
家にご協力をいただき、研究を行った。
本研究の結果や考察は別の講演で発表されるが、弊社ではこの結果により、端材ダンボールを
圧縮することは、延焼拡大リスクの低減に有効であると理解し、2018 年 8 月時点で2つの弊社物
流センターに圧縮機を導入し、端材ダンボールの管理方法の改善を進めている。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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ダンボールの燃焼性状に関する実験的研究
消防研究センター 佐藤康博
1. はじめに
平成 29 年 2 月 16 日に埼玉県三芳町で発生した倉庫火災では、発生から鎮火に至るまでに約 12
日間を要した。火災が初期に拡大し、上階への延焼につながった要因のひとつは、使用済みダン
ボールが積み重なった状態から出火し、急激に燃え広がり短時間で大きな炎となり、初期消火で
きない状態となったことである(1)。
これを受けて、複数の機関によって構成された共同の研究体制を構築し、ダンボールの置かれ
方や形状が燃焼性状に与える影響を検証することを目的として実験を実施した(2),(3),(4)。
2. 実験方法
ダンボールは、図 1 に示すように、平積みダンボール、縦置きダンボール、組み立てダンボー
ル及び圧縮ダンボールの 4 種類で実験を実施した。
図 1 ダンボールの保管形状
平積みダンボール及び縦置きダンボールは、一度組み立ててから再度折りたたんで平らに戻し
て実験に使用した。縦置きダンボールは、金属製の支柱 2 本の間にダンボールを立てた。このと
きに、ダンボールの波目が縦線になる置き方をタテ目、横線になる置き方をヨコ目とする。
圧縮ダンボールは古紙圧縮機によりダンボールを圧縮して針金(なまし鉄線#16)で結束したも
のである。圧縮ダンボールは 20 cm 角、30 cm 角及び 40 cm 角のものを使用した。圧縮ダンボー
ル 20 cm 角はダンボール 3 個、30 cm 角は 10 個、40 cm 角は 24 個と同じ重量である。そのため、
平積みダンボール、縦置きダンボール、組み立てダンボールでは、ダンボールの数量を 3 個及び
10 個として実験を実施した。
以上の実験ケースを類型化すると表 1 になる。表 1 に示すそれぞれの実験ケースに対して、ル
ームカロリーメータ試験室(ISO 9705)を使用し、酸素濃度および二酸化炭素濃度を測定するこ
とで、酸素消費法により発熱速度を測定した。
助燃剤は、φ80 mm 円形火皿に n-ヘプタン 10 mL、または 316 mm 正方火皿に n-ヘプタン 3 L
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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を使用した。前者は約 1.6 kW、後者は約 110 kW の発熱速度である。予備実験では、φ80 mm 円
形火皿による燃焼では圧縮ダンボールにはほとんど着火しない状況であるが、316 mm 正方火皿
による燃焼では組み立てダンボールで非常に大きな火炎が発生した。そのため、発熱速度の測定
に当たって、保管形状の違いの比較にはφ80 mm 円形火皿を用い、圧縮ダンボールでの検討では
316 mm 正方火皿を用いることとした(2)。
表 1 実験ケース
3. 実験結果及び考察
3.1 ダンボールの保管形状による違い
3 個相当の重量について、ダンボールを燃焼させた場合について形状による発熱速度の違いを
調べた結果を図 2 に示す。平積みダンボールでは明瞭なピークが認められず、10~20 kW 程度の
発熱速度であった。縦置きダンボールはタテ目、ヨコ目で最大発熱速度に大きな違いはないが、
ピークが認められ、それぞれ約 110 kW、約 120 kW であった。組み立てダンボールは急激な発熱
速度の上昇が認められ、最大発熱速度は約 360 kW に達した。圧縮ダンボールは明瞭なピークが
認められず、助燃剤の燃焼が終了した後には 10 kW 以下の発熱速度を維持する。
これらのダンボールの形状の違いによる比較では、最大発熱速度は組み立てダンボール>縦置
きダンボール>平積みダンボール>圧縮ダンボールとなっているが、ダンボールの重量は等しい
ため、総発熱量は同じであり、最大発熱速度が低いほど長期間燃焼が継続する。これらの結果か
ら、発熱速度は空気との接触面積に相関があることが分かる。縦置きダンボールと平積みダンボ
ールでは、空気との接触面積は同じであるが、縦置きダンボールでは垂直に、平積みダンボール
では水平に、燃焼が進むため、発熱速度の違いがみられると考えられる。
種類 量 容器
1 3個 -2 10個 -3 3個 タテ目4 3個 ヨコ目5 10個 タテ目6 10個 ヨコ目7 3個 -8 10個 -9 20 cm角 針金なし10 20 cm角 針金なし11 20 cm角
12 30 cm角
13 40 cm角
その他の条件
縦置きダンボール
組み立てダンボール
圧縮ダンボール
針金あり
n-ヘプタン
10 mL
3 L 316 mm正方火皿
φ80 mm円形火皿
実験No. ダンボールの状態 数量/寸法助燃剤
平積みダンボール
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図 2 ダンボール 3 個の保管形状の違いによる発熱速度への影響
3.2 平積みダンボールの個数による違い
平積みダンボールを 3 個及び 10 個燃焼させた結果を図 3 に示す。最大発熱速度は、3 個の場合
では約 17 kW、10 個の場合では約 31 kW であり、ダンボール 10 個の方が 3 個よりも約 1.8 倍大
きかった。助燃剤が消炎した後(着火 3 分後)から着火 20 分までの時間平均発熱速度は、3 個の
場合では 8.0 kW、10 個の場合では 9.9 kW であり、1.2 倍程度であった。
図 3 平積みダンボールの個数の違いによる発熱速度への影響
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3.3 縦置きダンボールの個数による違い
縦置きダンボールをタテ目、ヨコ目についてそれぞれ 3 個及び 10 個燃焼させた結果を図 4 に示
す。縦置きダンボールの場合、タテ目、ヨコ目の違いはあまり認められず、ダンボールの個数に
応じて発熱速度の上昇が認められた。縦置きダンボール 10 個の最大発熱速度は、タテ目は約 330
kW で、ヨコ目は約 200 kW であった。タテ目の最大発熱速度が大きな値となっているが、ダンボ
ールが崩れたことによる影響と考えられる。ダンボールが崩れる前の発熱速度は約 240 kW で、
ヨコ目と比較してわずかに大きい程度であり、ダンボールが崩れた後に発熱速度が急激に増大し
た後に、すぐに減少している。一方、ヨコ目の場合は最大発熱速度を過ぎてもタテ目の場合と比
較して急激に発熱速度が低下することなく燃焼を継続した。
図 4 縦置きダンボールの個数の違いによる発熱速度への影響
3.4 組み立てダンボールの個数による違い
組み立てダンボールを 3 個及び 10 個燃焼させた結果を図 5 に示す。組み立てダンボール 10 個
の場合には、3 個の場合よりも発熱速度の立ち上がりが速かった。組み立てダンボール 10 個の場
合には、着火したダンボールの直上にダンボールがあるため、非常に速く発熱速度が上昇したと
考えられる。組み立てダンボール 10 個の発熱速度は、ダンボールが崩れ落ちた際に最大となり、
約 900 kW に達した。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 5 組み立てダンボールの個数の違いによる発熱速度への影響
3.5 圧縮ダンボールの寸法による違い
圧縮ダンボールを 20 cm 角、30 cm 角、40 cm 角について燃焼させた結果を図 6 に示す。
燃焼初期の 100 kW 程度の発熱速度は、助燃剤によるものである。圧縮ダンボールの寸法が大
きくなるにつれ、助燃剤の燃焼時間が長くなっている。ダンボールが火皿を閉塞する面積が大き
くなることで、燃焼速度が低下したためと考えられる。
助燃剤燃焼後の圧縮ダンボールの発熱速度は、圧縮ダンボールの寸法が大きいほど高い。この
ことは、寸法が大きくなることで、体積と表面積の増加による蓄熱能力及び取り込む酸素量の増
加によるものと考えられる。単位表面積あたり及び単位体積あたりの発熱速度は、20 cm 角が最
も小さく、30 cm 角と 40 cm 角は同程度であった。したがって、圧縮ダンボールの寸法が大きく
なると発熱速度は増加する傾向にあるが、単位表面積あたり及び単位体積あたりの発熱速度は、
一定値に収束する傾向にあることから、圧縮ダンボールの寸法が大きくなるにつれて、急激に発
熱速度が大きくなることは考えにくい。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 6 圧縮ダンボールの寸法の違いによる発熱速度への影響
3.6 圧縮ダンボールの助燃剤と針金の有無の違い
20 cm 角の圧縮ダンボールについて、針金で固定する場合としない場合について比較を行った
結果を図 7 に示す。どちらの条件においても、助燃剤の燃焼終了後に穏やかな有炎燃焼もしくは
無炎燃焼になる。圧縮ダンボールを針金で固定した場合は、固定しない場合よりも発熱速度が低
いことが分かった。このことは、針金で固定しない場合にはダンボールの表面積が増加し、通気
性が良くなり、有炎燃焼が継続しやすいためと考えられる。また、圧縮ダンボールを針金で固定
していた場合について、固定していた針金を切断し、ダンボールをばらすと(着火約 1,650 秒後)、
発熱速度は大きくなることが分かった。
図 7 助燃剤と針金の有無の違いによる発熱速度への影響
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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3.7 TG-DTA によるダンボールの燃焼挙動の考察
ダンボールの燃焼に関する化学的な知見を得ることを目的に、示差熱-熱重量同時測定装置
(TG-DTA)による分析を実施した結果を図 8 および図 9 に示す。
TG-DTA は、STA7200(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を使用した。約 5 mg の細かく刻
んだダンボールを試料として用いて、30 ℃から 600 ℃まで毎分 20 ℃で昇温させ、雰囲気ガスを
ガス流量毎分 200 mL で、空気及び窒素の 2 通りの条件で TG-DTA の測定を行った。空気中での
加熱は、空気と接触する圧縮ダンボール表面付近での燃焼を、窒素中での加熱は、空気が出入り
しにくい圧縮ダンボールの中心付近での燃焼を想定している。
TG-DTA での測定結果では、空気中、窒素中のいずれの場合にも 300 ℃付近で試料の重量が低
下し始める。示差熱曲線から空気中の場合に 350 ℃付近で急激な発熱が認められるが、窒素中で
は非常に弱い発熱にとどまっている。
ルームカロリーメータ試験室で実験した燃焼実験において、圧縮ダンボールを固定している針
金を切った際に、燃焼が盛んになる結果が見られている。圧縮ダンボールの針金を切る前後を、
それぞれ TG-DTA での雰囲気ガスが窒素と空気の条件に置き換えて考えることができる。圧縮ダ
ンボールの熱電対温度は 400 ℃程度であり、燃焼の前後でダンボールの燃焼の変化について
TG-DTA の結果から説明することができる。
図 8 空気中での TG-DTA によるダンボールの熱に対する挙動
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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図 9 窒素中での TG-DTA によるダンボールの熱に対する挙動
4. まとめ
ダンボールの保管形状の違いが燃焼性状に与える影響を検証するために、ルームカロリーメー
タを用いて、平積みダンボール、縦置きダンボール、組み立てダンボール、圧縮ダンボールの発
熱速度の経時変化を調べた。実験結果は以下のようにまとめることができる。
(1) 同一重量のダンボールの保管形状の違いを比較した場合、最大発熱速度は組み立てダンボー
ル>縦置きダンボール>平積みダンボール>圧縮ダンボールの順となった。
(2) 同一重量のダンボールでは総発熱量が同じため、発熱速度が低いほど長期間燃焼が継続する。
そのため、燃焼継続時間は、圧縮ダンボール>平積みダンボール>縦置きダンボール>組み立
てダンボールの順となる。
(3) ダンボールの保管形状の違いに対する発熱速度の傾向は、空気との接触面積、燃焼の進む方
向性が発熱速度を決める要因であることを示している。
(4) 圧縮ダンボールの寸法が大きくなると可燃物量は大きくなるため、発熱速度は大きくなる傾
向にあるが、単位表面積および単位体積あたりの発熱速度は一定値に収束するような傾向があ
ることから、圧縮ダンボールの寸法が大きくなるにつれて、急激に発熱速度が大きくなること
は考えにくい。
(5) 圧縮ダンボールでは、圧縮状態が崩れ、圧縮ダンボールの内部が空気に触れると有炎燃焼へ
の移行が見られた。圧縮ダンボールの発熱速度は他の保管形状と比較して高くないが、圧縮ダ
ンボールの内部がダンボールの熱分解温度まで加熱され、内部の蓄熱や穏やかな燃焼継続が認
められた。
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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5. 謝辞
本研究成果は、「ダンボールの燃焼性状に関する研究会」による共同研究により得られたもので
す。関係者の皆様に感謝の意を表します。
「ダンボールの燃焼性状に関する研究会」
東京理科大学 関澤愛(代表責任者)
消防庁消防研究センター 渡辺剛英、塚目孝裕、阿部伸之、
佐藤康博、長谷川巧、松﨑崇史
消防庁予防課 伊﨑広大
アスクル 池田和幸、片山大一郎、宮前寛
初田製作所 佐藤淳也、福田真弓
日本アビオニクス 佐藤研作
日本赤外線サーモグラフィ協会 高橋勲
6. 参考文献
1) 消防庁:埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策および消防活動のあり方に関する検討会報
告書、2017.6
2) 片山大一郎、池田和幸、宮前寛、塚目孝裕、阿部伸之、福田真弓、佐藤淳也、伊崎広大、関澤
愛:ダンボールの燃焼性状に関する実験的研究 その1 研究の目的及び実験の概要、平成 30
年度日本火災学会研究発表会概要集、222-223 (A-39)、2018
3) 福田真弓、佐藤淳也、片山大一郎、池田和幸、宮前寛、塚目孝裕、阿部伸之、伊崎広大、関澤
愛:ダンボールの燃焼性状に関する実験的研究 その2 圧縮ダンボールへの着火方法に関する
予備実験、平成 30 年度日本火災学会研究発表会概要集、224-225 (A-40)、2018
4) 塚目孝裕、阿部伸之、佐藤康博、長谷川巧、松﨑崇史、福田真弓、佐藤淳也、池田和幸、片山
大一郎、宮前寛、伊崎広大、関澤愛:ダンボールの燃焼性状に関する実験的研究 その3 ルー
ムカロリーメータによる発熱速度の測定、平成 30 年度日本火災学会研究発表会概要集、
226-227(A-41)、2018
第22回消防防災研究講演会資料(平成30年11月22日)
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第 22 回消防防災研究講演会資料 平成 30 年 11 月 22 日 発行
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東京都調布市深大寺東町 4-35-3
TEL 0422-44-8331 FAX 0422-42-7719
http://nrifd.fdma.go.jp/
表紙目次講演会趣旨(1) 埼玉県三芳町倉庫火災(2) 埼玉県三芳町大規模倉庫火災における長官調査(3) ダンボール箱から出火した倉庫火災の火災進展予測 火災調査への火災シミュレーションの活用(4) 埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた消防庁の取組(5) 埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた国土交通省の取組(6) 物流倉庫における端材ダンボール防火対策研究(7) ダンボールの燃焼性状に関する実験的研究奥付