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2 部:CTD の概要 2.5 臨床に関する概括評価 バイエル薬品株式会社

第2 部:CTD の概要...CAPD Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:持続的貯留による腹膜透析 CKD Chronic Kidney Disease 慢性腎臓病 CKD-MBD CKD- Mineral and

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  • 第 2部:CTDの概要

    2.5 臨床に関する概括評価

    バイエル薬品株式会社

  • 2.5 臨床に関する概括評価 の目次

    2.5 臨床に関する概括評価 1.......................................................

    2.5.1 製品開発の根拠 2............................................................

    2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 11..............................................

    2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 12................................................

    2.5.3.1 臨床薬理学的評価の対象とした試験 12..........................................

    2.5.3.2 薬物動態 13.................................................................

    2.5.3.3 薬理作用 15.................................................................

    2.5.4 有効性の概括評価 16........................................................

    2.5.5 安全性の概括評価 26........................................................

    2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 42........................................

    2.5.7 参考文献 49................................................................

    i

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    略語一覧

    ADL activities of daily living

    ALT alanine transferase (= GPT)

    ALP alkaline phosphatase:アルカリフォスファターゼ

    AST aspartate transferase (= GOT)

    BAP bone-derived ALP:骨型 ALP

    Ca Calcium:カルシウム

    CAPD Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:持続的貯留による腹膜透析

    CKD Chronic Kidney Disease 慢性腎臓病

    CKD-MBD CKD- Mineral and Bone Disorder:CKD に伴う骨ミネラル代謝異常

    CO crossover:クロスオーバー

    HD Hemodialysis:血液透析

    i-PTH intact-PTH :インタクト PTH

    ITT Intent-to-treat

    K/DOQI Kidney Disease Outcome Quality Initiative

    Kt/V 標準化透析量

    La Lanthanum:ランタン

    MedDRA Medical Dictionary for Regulatory Activities

    NTx cross-linked N-telopeptides of bone type I collagen

    P Phosphate:リン(酸)

    PCR Protein Catabolitic Rate:タンパク異化率

    PD Peritoneal Dialysis 腹膜透析

    PP Per protocol

    PTH Parathyroid hormone:副甲状腺ホルモン

    PTx Parathyroidectomy:副甲状腺摘除術

    Q1(3) 1st(3rd) quartile:第 1(第 3)4 分位

    QOL quality of life

    SHPT Secondary Hyperparathyroidism 二次性副甲状腺機能亢進症

    WHO-ART World Health Organization-adverse reaction terminology

    w-PTH whole-PTH

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    1

  • 2.5.1 製品開発の根拠

    (1) 慢性腎不全患者における高リン血症

    通常,成人は 1 日約 20 mg/kg 体重(1200 mg 程度)のリンを食事により摂取する。腸管内に分

    泌される消化液中にもリンは含まれるが(3 mg/kg),摂取されたリンの約 80%が腸管から吸収さ

    れ,便中には約 7 mg/kg のリンが排泄される。この摂取量と排泄量の差(13 mg/kg)が体内への

    吸収量であり,同量が腎臓から排泄される。腸管からのリン吸収量が増加し,血清リン濃度(血

    清 P 濃度)が上昇すると腎尿細管でのリン再吸収が抑制され,逆に低下すれば腎尿細管でのリン

    再吸収が増大し,体内のリン濃度の恒常性が維持される[1]。その結果,成人の血清 P 濃度は 3.0

    ~4.5 mg/dL に維持されている。

    慢性腎疾患(CKD: chronic kidney disease)患者では,腎機能低下によりリン排泄が徐々に低下

    するが,初期には代償的に副甲状腺ホルモン(PTH:parathyroid hormone)の分泌が亢進し,尿中

    へのリン排泄を増加させる。しかしながら,更に腎機能が低下するとリン排泄は障害され,血清

    P 濃度は上昇する[2, 3]。そして,腎機能が廃絶した透析患者では,吸収されたリンの除去は透

    析液への拡散に依存する。一般的に透析患者が摂取する平均的な食事中には,タンパク約 60 g/日,

    リンに換算すると約 1000 mg が含まれる。腸管からその約 60~70%が吸収されるため,週当たり

    約 4000~5000 mg のリンが吸収され,残りが便中に排泄される。血液透析による 1 回のリン除去

    量は約 1000 mg であり,週 3 回の透析により週当たり 3000 mg[4,5],腹膜透析では 1 日当た

    り 300~400 mg の除去量に過ぎないとされる[6]。したがって,通常の透析だけではリンの除去

    は不十分であり,透析患者の血清 P 濃度は 6.2~9.3 mg/dL となることも稀ではなく[7],わが国の

    透析患者の 32.4%は 6.0 mg/dL を超える血清 P 濃度を呈する [8]。

    図 2.5.1-1 に示すように,高リン血症(高 P 血症)は腎の活性型ビタミン D3[1,25(OH)2D3,カル

    シトリオール]の産生低下とあいまって血清カルシウム濃度(血清 Ca 濃度)を低下させ,これに

    より PTH 分泌が更に促進し,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT: secondary hyperparathyroidism)

    を発症させる。本病態では PTH 高値のため骨の代謝回転が上昇し,過剰な骨吸収により更に血中

    リン濃度を上昇させると同時に骨線維症,骨軟化症など,CKD に伴う骨ミネラル代謝異常

    (CKD-MBD)と称される合併症を引き起こす[9]。なお,高 P 血症は PTH の分泌や副甲状腺細胞

    増殖を直接促進させることも示されている[3, 10,11]。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    2

  • 図 2.5.1-1 骨-カルシウム-リン代謝調節機構における腎臓の役割

    (文献 9 より引用)

    透析患者の死因は,心不全が 25.8%,脳血管障害が 9.8%,心筋梗塞が 5.1%と動脈硬化に関連す

    る心·血管系疾患が 4 割以上を占めているが[8],その原因の一つとして異所性石灰化が注目され

    ている。石灰沈着は血管壁,結膜,心臓,肺,腎臓などの内臓や関節周囲などに認められるが[12,

    13],過剰なリン及びカルシウムがリン酸カルシウムを主体とする複合体としてこれら組織に沈着

    すると考えられ,透析患者にとって極めて重要な合併症である。したがって,CKD 患者における

    SHPT,CKD-MBD の発病·増悪を防止し,患者の ADL(activities of daily living)及び QOL(quality

    of life)を改善するためには,高 P 血症の予防及び治療と同時に,異所性石灰化を抑制することが

    重要である。

    CKD 患者,特に透析を受けている stage V の患者に対して食事指導(リンの摂取制限)が行わ

    れるが,リンはタンパク質に多く含まれるため,極端なリン摂取制限は栄養障害につながり,ひ

    いては患者の予後に影響するおそれがある[14,15]。また,社会活動を行う透析患者に対して厳

    しい食事制限を行うことは通常困難であり,リン吸着剤療法に頼らざるをえないのが現状である

    [3]。

    本邦において透析を受けている CKD 患者数は,2005 年末で 257,765 人に達し,現在も増加の一

    途を辿っている。そのうち 24.8%,すなわち約 6 万人もの患者が 10 年以上の長期透析療法により

    管理されている[8]。透析療法の進歩は,CKD 患者の延命,更には社会復帰を可能としたが,長

    期療法に伴い種々の透析合併症が発生し,患者の ADL や QOL を低下させている。前述のように,

    その中でも高 P 血症及び SHPT に関連した骨病変や動脈硬化性疾患の進展は,患者の社会活動や

    生命予後に悪影響を与える代表的な要因である[16,17]。前述の統計調査において,各年におけ

    る死亡に影響する因子が検討されているが,ここでも週初めの透析前の血清 P 濃度が死亡率に影

    響する重要な因子とされている[18]。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    3

  • (2) 高リン血症の治療の現状と問題点

    過去 20 年間にわたり,主にアルミニウム製剤及びカルシウム製剤が透析患者の高 P 血症治療に

    使用されてきた。水酸化アルミニウムはリン結合力が強い反面,長期使用によってアルミニウム

    関連骨疾患,認知症,筋障害,副甲状腺機能低下といった重篤な有害事象が発現することが明ら

    かになったため,欧米においては透析患者に対するその投与期間が制限され,本邦においては使

    用禁忌となった。その後,大部分の患者ではカルシウム製剤が長期間にわたり使用されている。

    しかしながら,有効なリン濃度コントロールを達成するために払われる代償として,高いカルシ

    ウム負荷による弊害が明らかになってきている。炭酸カルシウム投与時には,投与量の 20~30%

    の Ca が吸収されるが[19],ビタミン D 製剤併用時には腸管からの Ca 吸収が促進され,高カル

    シウム血症(高 Ca 血症)の頻度は更に増加する[20]。高 Ca 血症は,高 P 血症と同様,透析患

    者における死亡の独立した危険因子であることが示されており(図 2.5.1-2,図 2.5.1-3)[7,21,18],

    皮肉なことに,死亡の危険因子である高 P 血症をコントロールするために投与されたカルシウム

    製剤が,同じく独立した危険因子である高 Ca 血症を引き起こすこととなる。

    図 2.5.1-2 わが国の慢性透析療法の現況 2004 年-透析前血清 P 濃度-全死亡のリスク (文献 18 より引用)

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    4

  • 図 2.5.1-3 わが国の慢性透析療法の現況 2004 年-透析前血清 Ca 濃度-全死亡のリスク (文献 18 より引用)

    また,高いカルシウム負荷は PTH 分泌の過剰抑制の一因であることも指摘されている。その過

    剰抑制は,骨代謝回転によるカルシウム緩衝能力の低下により,更なる高 Ca 血症の原因になるほ

    か,無形成骨を引き起こし骨折の原因となるとも言われている[21, 22]が,現状では血清 P 濃度

    と血清 Ca 濃度をともにコントロールできている症例は 42%に過ぎない(表 2.5.1-1)[8]。

    表 2.5.1-1 わが国の慢性透析療法の現況 2005 年 -- 血清 Ca 濃度と血清 P 濃度の分布— (文献 8 より引用)

    血清 P 濃度( mg/dL) 合計

  • ン吸着薬である塩酸セベラマー(Renagel®)が開発され,本邦でも承認されている。塩酸セベラ

    マーではカルシウム負荷がないことからリン吸着剤として大きい期待を集めた。実際,カルシウ

    ム製剤から塩酸セベラマーに変更すると血清 Ca 濃度の上昇を来すことなく活性型ビタミン D 製

    剤の増量が可能となり,PTH の過剰抑制がなく動物実験では低代謝回転骨が改善することなども

    報告されている。しかしながら,高分子ポリマーである塩酸セベラマーのイオン吸着能は非特異

    的であり,脂溶性ビタミンや葉酸の吸収をも阻害する可能性があり,患者の血中ビタミン及び葉

    酸濃度に注意する必要がある[30]。さらに,リン酸と結合する際に放出される塩素によるアシド

    ーシスも危惧されており,定期的な重炭酸濃度の測定が勧められている[31, 32]。また,海外の

    臨床成績に比べ,日本人患者では便秘などの消化器系副作用の発現率が高頻度にみられ,投与を

    継続できないものも多い[33]。特に便秘のある患者への投与は腸閉塞や穿孔を生じるおそれがある

    ため注意が必要で,腸管閉塞患者に対しては禁忌とされている[33]。なお,そのリン吸着力は強

    力ではないため比較的高い投与量が必要であり,このことも服薬コンプライアンスを低下させる

    一因であると考えられる。

    このような現状から,強力なリン結合作用を有すると同時に,カルシウム負荷がなく,かつ塩

    酸セベラマーよりも副作用発現が少なく服薬しやすいリン吸着剤が望まれている。

    (3) 開発の経緯

    BAY 77-1931(炭酸ランタン水和物)は,英国シャイア社で開発された新規の非カルシウム性リ

    ン吸着剤である。ランタンは,リン酸との結合能が高く難溶性の化合物を形成する希土類金属の

    1元素である。ランタンを構成成分とする本薬は,リン酸との結合能が高く,in vitro 試験におい

    て生理学的 pH 範囲内で添加したリン酸との結合率は非常に高かった。リン酸と結合したリン酸

    ランタンは難溶であるため消化管から吸収されない。また,本剤はチュアブル錠であることより,

    水なしでも服用が可能であり,透析患者における飲水負荷軽減という点でも有用と考えられる。

    本剤の臨床開発は,シャイア社によって欧米で先行し,2004 年 3 月にはスウェーデンにて,2004

    年 10 月には米国にて承認され,既に米国及び欧州諸国で市販されている。本邦においては 19

    ~19 年にシャイア社により健康成人男子を対象とした第 I 相臨床試験(単回及び反復投与試験)

    が実施された。その後 20 年 月にバイエル薬品株式会社が開発及び製造販売権を取得し,20

    年より臨床開発を開始した。そして,第 II 相用量反応試験,第Ⅲ相二重盲検比較試験,腹膜透析

    患者での一般臨床試験及び長期投与試験を実施し,透析中の慢性腎不全患者の高リン血症に対す

    る本剤の臨床的有用性を確認し得たため,今回承認申請を行うこととした。

    本邦での臨床開発の経緯を図2.5.1-4に,また国内臨床試験及び国外臨床試験の一覧を表2.5.1-2

    及び表 2.5.1-3 にそれぞれ示した。

    なお,本資料中の本剤の投与量は,すべてランタン元素量として表示しており,特にことわら

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    6

  • ない限り,血清 P 及び Ca 濃度は,血液透析患者では週初めの透析前,また腹膜透析患者では来院

    時の測定値である。血清 Ca 濃度はアルブミン値で補正している。

    • バイエル薬品とシャイア社と

    • スウェーデンでの承認(04.03)

    • 米国での承認(04.10)

    *シャイア社が 株式会社を国内管理人として実施

    図 2.5.1-4 国内臨床開発の経緯

    第 I 相試験(単回投与試験)*~

    第 I 相試験(連続投与試験)*~

    第 II 相用量反応試験

    第 III 相二重盲検試験 ~

    長期投与試験~

    継続投与 ~

    腹膜透析患者を対象とした試験 ~

    骨生検試験 ~

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    7

    bjyyf長方形

  • 表 2.5.1-2 国内臨床試験一覧

    試験 区分 試験略名

    試験 デザイン 対象 用量・症例数

    用法・ 投与期間

    CTD No. (試験番号)

    単回経口投与試験 二重盲検 漸増

    健康成人 男子

    250,500,1000,2000mg 及び プラセボ :10 名 単回

    5.3.3.1.1 (108) 第 I 相

    試験 反復経口投与試験 二重盲検 健康成人

    男子 1000mg/日 :6 名 プラセボ :3 名

    1 日 3 回 5日間

    5.3.3.1.2 (109)

    単回経口投与試験 非盲検 健康成人 男子

    250,1000,2000mg/日:各群 8 名 無投薬:6 名 単回

    5.3.3.1.7 (12862) 薬物動

    態試験 反復経口投与試験 非盲検 健康成人

    男子 1000mg/日:9 名 無投薬:4 名

    1 日 3 回10 日間

    5.3.3.1.8 (12863)

    第 II相試験 用量反応試験

    二重盲検 群間比較

    血液透析患

    者 750,1500, 2250, 3000mg/日及び プラセボ : 156 例

    1 日 3 回 6週間

    5.3.5.1.1.1(11539)

    標準薬との比較試験 二重盲検 群間比較

    血液透析患

    者 La 群:750~2250mg/日 126 例 Ca 群:1500~4500mg/日 132 例

    1 日 3 回 8週間

    5.3.5.1.2.1(11877) 第 III 相

    試験 腹膜透析患者を対象とした試験 非盲検

    腹膜透析患

    者 750~2250mg/日,45 例 1 日 3 回 8週間

    5.3.5.2.2 (11878)

    長期投与試験 1 日 3 回 1年間

    5.3.5.2.1 (11551)

    継続投与試験 非盲検 血液透析患

    者 750~4500mg/日,145 例 (継続投与移行 63 例) 1日3回最

    長 2 年 5.3.5.2.1-2(11551)

    長期投

    与試験 骨生検試験 非盲検 透析患者 750~4500mg/日,14 例

    1 日 3 回 1年間*

    実施中 5.3.5.2.6 (11810)

    * コントロール良好な患者では継続投与を可能とし,3 年間の投与を行う

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    8

  • 表 2.5.1-3 国外臨床試験一覧

    試験 区分

    試験名 (実施国)

    試験 デザイン 対象 用量・症例数 用法・投与期間

    CTD No. (試験番号)

    初期忍容性試験 (英国) 二重盲検

    健康成人 男子

    52.4mg(カプセル): 10 例 プラセボ : 2 例 空腹時単回

    5.3.3.1.3R(101)

    初期忍容性試験 (英国)

    二重盲検 漸増

    健康成人 男子

    52.4,104.8,262.1,524mg(カプセル)及びプラセボ: 23 例 空腹時単回

    5.3.3.1.4R(104)

    食後投与時の忍容性試験 (英国)

    二重盲検 漸増

    健康成人 男子

    262.1,524,786,1310,2096,3145,4718mg/日: 14 例

    食後 1 日 1 回 15日間隔日+1 日 1 回 3 日間

    5.3.3.1.5R(105)

    投与時期の影響検討試験 (英国)

    非盲検 クロスオーバ

    ー(CO) 健康成人 3000mg/日: 各 36 例

    1 日 3 回 3 日間 食前,食事中,食

    5.3.3.1.6R(110)

    第Ⅰ相試験

    用量反応性検討試験 (英国)

    非盲検 群間比較 健康成人

    750,1500,3000,4500.6000mg/日:各群 9 例 塩酸セベラマー:7200mg/日:10例 プラセボ:10 例

    食後 1 日 3 回 7 日間

    5.3.3.1.9R(122)

    生物学的利用率の検討 (英国)

    非盲検 群間比較

    健康成人 男子

    1000mg : 8 例 塩化ランタン 120μg(iv): 8 例 プラセボ : 8 例

    食後単回 5.3.1.1.1R(117) BA* 試験 旧製剤と新製剤の同等性

    の検討 (英国)

    非盲検 健康成人 旧製剤 250mg 錠×4: 新製剤 1000mg 錠×1:各 52 例

    食後 1 日 3 回 3 日間+1 回

    5.3.1.2.1R(121)

    PK** 試験

    健康成人と透析中の慢性

    腎不全(CRF)患者の薬物動態の比較 (米国)

    非盲検

    健康成人 透析中の慢

    性腎不全

    (CRF)患者

    単回(1000mg)及び反復(3000mg/日): 健康成人 8 例,CRF 患者 10 例

    食後単回:2 週 間隔で 2 回 食後反復:1 日 3 回 11 日間

    5.3.3.2.1R(111)

    クエン酸との相互作用の

    検討 (英国)

    非盲検 CO 健康成人

    1000mg 単独,1000mg+オレンジジュース 200ml,1000mg+クエン酸カリウム 3g+クエン酸 0.5g: 各 25 例

    単回:同時投与 5.3.2.2.1R(112)

    ワルファリンとの相互作

    用の検討 (英国)

    非盲検 CO

    健康成人 男子

    ワルファリン 10mg 単独投与 及び本剤併用投与: 各 14 例

    1 回 1000mg4 回目投与 30 分後ワルファリン服用

    5.3.2.2.2R(113)

    ジゴキシンとの相互作用

    の検討 (英国)

    非盲検 CO

    健康成人 男子

    ジゴキシン 0.5mg 単独投与 及び本剤併用投与: 各 14 例

    1 回 1000mg4 回目投与 30 分後ジゴキシン服用

    5.3.2.2.3R(114)

    相互作用試験

    メトプロロールとの相互

    作用の検討 (英国)

    非盲検 CO

    健康成人 男子

    メトプロロール 100mg 単独投与及び本剤併用投与: 各 14 例

    1 回 1000mg4 回目投与 30 分後メトプロロール服

    5.3.2.2.4R(115)

    * BA: bioavailability(生物学的利用率) **PK: pharmacokinetics(薬物動態)

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    9

  • 表 2.5.1-3 国外臨床試験一覧(続き)

    試験 区分

    試験名 (実施国)

    試験 デザイン 対象 用量・症例数 用法・ 投与期間

    CTD No. (試験番号)

    用量調節後用量固定プ

    ラセボ対照試験 (英国)

    用量調節後

    二重盲検 群間比較

    腹膜透析患

    者 血液透析患

    用量調節期(375~2250mg/日)腹膜透析患者: 39 例,血液透析患者: 20 例 用量固定期:腹膜透析患者: 21例,血液透析患者: 15 例

    用量調節期: 1日 3 回 4 週間 用量固定二重盲

    検期:1 日 3 回 4週間

    5.3.5.1.1.2R (202)

    第Ⅱ相試験 用量反応試験

    (米国) 二重盲検 群間比較

    血液透析患

    者 145 例:225, 675, 1350, 2250mg/日およびプラセボ 6 週間

    5.3.5.1.1.3R (204)

    標準薬との比較試験 (英国ほか 3 カ国)

    非盲検 群間比較

    血液透析患

    登録 805 例,ITT 対象例数:767例 炭酸ランタン(750~3000 mg/日):510 例 炭酸カルシウム(1500~9000 mg/日):257 例

    観察期:1~3 週間 用量調節期:5週間 群間比較期:20週間

    5.3.5.1.2.3R (301)

    用量調節後用量固定プ

    ラセボ対照試験 (米国)

    二重盲検 群間比較

    血液透析患

    観察期:163 例 用量調節期:126 例 二重盲検期:93 例 375, 750, 1500, 2250, 3000 mg/日

    観察期:2~3 週間 用量調節期:6週間 二重盲検期:4週間

    5.3.5.1.1.4R (302)

    第Ⅲ相試験

    用量調節後用量固定プ

    ラセボ対照試験 (台湾)

    二重盲検 群間比較

    血液透析患

    観察期: 103 例 用量調節期:73 例 用量固定二重盲検期:61 例 375, 750, 1500, 2250, 3000 mg/日

    観察期:1~3 週間 用量調節期:4週間 二重盲検期:4週間

    5.3.5.1.1.5R (315)

    標準薬との比較試験 (米国)

    非盲検 群間比較

    血液透析患

    1359 例 炭酸ランタン(375~3000 mg/日):682 例 標準薬(前治療薬の最適量を投

    与,その後適宜増減あるいは他

    剤に変更):677 例

    観察期:1~3 週間 用量調節期:6週間 群間比較期:24ヵ月

    5.3.5.1.2.2(307)

    試験 301 の継続投与 (英国ほか 2 カ国)

    非盲検長期

    投与 血液透析患

    161 例 375, 750, 1500, 2250, 3000 mg/日

    24 ヵ月 5.3.5.2.3 R(301E)

    標準薬との比較試験 (英国ほか 11 カ国)

    非盲検 群間比較

    血液透析患

    98 例 炭酸ランタン(500~3750 mg/日):49 例 炭酸カルシウム(1500~9000 mg/日):49 例

    50 週間 5.3.5.1.2.4R (303)

    試験204及び302の継続投与 (米国)

    非盲検長期

    投与 血液透析患

    者 250~3000mg,77 例 1 年間 5.3.5.2.4 R(308)

    長期投与試験

    試験 301,303,307 及び308 の継続投与 (英国ほか 11 カ国)

    非盲検長期

    投与 血液透析患

    者 750~3000mg/日:93 例 2 年間(累積投薬期間:最長 6年)

    5.3.5.2.5R(309)

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    10

  • 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価

    本項では,国内臨床試験で使用したチュアブル錠の生物薬剤学的特性,すなわち,その溶出特

    性,投与タイミング及び生物学的同等性について検討した成績等を要約した。

    製剤

    国内第Ⅰ相試験は,ランタン 250 mg(炭酸ランタンとして 477 mg)を含有するチュアブル錠(旧

    製剤)を用いて実施した。その後,患者の服用性向上のために改良を加え,小型化したチュアブ

    ル錠(新製剤)を開発した。新製剤の組成は,有効成分のほか,デキストレート,軽質無水ケイ

    酸及びステアリン酸マグネシウムからなる。国内第Ⅱ相試験,第Ⅲ相試験および長期投与試験に

    は,その 250 mg,500 mg,750 mg 及び 1000 mg 錠を使用したが,本剤は炭酸ランタンの含量に関

    わらず,同じ打錠末を用いて,1 錠あたりの重量及び錠剤の大きさを変えることにより製造され

    ており,そのうち 250 mg 錠及び 500 mg 錠を申請処方とした。製剤設計及び製剤開発の詳細につ

    いては 2.3.P.2.2 に述べた。

    溶出特性

    本剤の溶出特性として,溶出試験において試験開始 20 分後の溶出率は 80 %以上であった。新

    旧製剤間(2.3.P.2.2)及び新製剤の含量違い製剤間(2.3.P.8.3, 図 2.3.P.8.3-2)の溶出挙動に違い

    は認められなかった。

    投与タイミングの検討

    国外において,健康成人を対象に本剤 1000 mg を食事中もしくは食後(食事終了 30 分後)に 1 日

    3 回 3 日間反復投与した時,尿中リン排泄量に大きな差は認められず(試験 110,5.3.3.1.6R),

    食事中と食後で同程度の効果が得られるものと考えられた。本試験の成績は 2.7.1.2(薬理作用)

    及び 2.7.2.3(薬物動態)に述べた。

    生物学的同等性

    国外において,本剤の生物学的同等性について含量の異なる新旧製剤を用いて検討した。健康

    成人を対象として,旧製剤の 250 mg 錠 4 錠又は新製剤の 1000 mg 錠 1 錠を毎食後に 1 日 3 回 3 日

    間反復投与した時,尿中リン排泄量はほぼ等しく,差の 90 %信頼区間が生物学的同等性の判定基

    準(対照薬剤の平均値±20 %)の範囲内にあったことから,新製剤の 1000 mg 錠 1 錠は旧製剤の

    250 mg 錠 4 錠と生物学的に同等であると結論された(試験 121,5.3.1.2.1R)。本試験の成績につ

    いては 2.7.1.2 で詳細に述べた。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    11

  • 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

    2.5.3.1 臨床薬理学的評価の対象とした試験

    本剤の臨床薬理学的検討として,国内においては,日本人健康成人男子を対象に第Ⅰ相試験(単

    回投与試験及び反復投与試験,それぞれ試験 108 (5.3.3.1.1)及び 109 (5.3.3.1.2))及び薬物動態試

    験(単回投与及び反復投与,それぞれ試験 12862 (5.3.3.1.7)及び 12863 (5.3.3.1.8))を実施した。

    国外においては,第Ⅰ相試験3試験(試験101 (5.3.3.1.3R),104 (5.3.3.1.4R)及び105 (5.3.3.1.5R),

    生物薬剤学的検討のための臨床薬理試験 2 試験(投与タイミングの検討:試験 110 (5.3.3.1.6R)

    及び生物学的同等性試験:試験 121 (5.3.1.2.1R)),絶対的バイオアベイラビリティ試験(試験 117

    (5.3.1.1.1R)),尿中リン排泄量を指標とした用量反応試験(試験 122 (5.3.3.1.9R),透析患者にお

    ける薬物動態試験(試験 111 (5.3.3.2.1R)),炭酸ランタンとクエン酸,ワルファリン,ジゴキシ

    ン及びメトプロロールとの相互作用試験 4 試験(試験 112 (5.3.2.2.1R),113 (5.3.2.2.2R),114

    (5.3.2.2.3R)及び 115 (5.3.2.2.4R))が実施された。

    表 2.5.3.1-1 臨床薬理学的評価の対象とした試験一覧表

    試験番号 (資料番号) 試験の名称 国内第Ⅰ相試験 108 (5.3.3.1.1) 日本人健康成人男子を対象とした第Ⅰ相臨床試験-単回投与試験- 109 (5.3.3.1.2) 日本人健康成人男子を対象とした第Ⅰ相臨床試験-反復投与試験- 国内薬物動態試験 12862 (5.3.3.1.7) 日本人健康成人男子を対象とした薬物動態試験-単回投与- 12863 (5.3.3.1.8) 日本人健康成人男子を対象とした薬物動態試験-反復投与- 国外第Ⅰ相試験 101 (5.3.3.1.3R) プラセボを対照とした無作為化二重盲検法による空腹時単回投与試験 104 (5.3.3.1.4R) プラセボを対照とした無作為化二重盲検用量漸増法による空腹時単回投与試験 105 (5.3.3.1.5R) プラセボを対照とした無作為化二重盲検用量漸増法による食後単回及び反復投与試験生物薬剤学的検討のための薬物動態試験 110 (5.3.3.1.6R) 健康成人を対象とした無作為化非盲検 3 期クロスオーバー法による食前,食事中もし

    くは食後投与時のリン結合能の比較 121 (5.3.1.2.1R) 健康成人を対象とし,尿中リン排泄量を指標とした無作為化非盲検クロスオーバー法

    による新旧製剤間の薬力学的生物学的同等性試験 絶対的バイオアベイラビリティ試験 117 (5.3.1.1.1R) 健康成人を対象とした無作為化非盲検群間比較法による本剤単回経口投与時及び塩化

    ランタン静脈内投与時における薬物動態の検討 尿中リン排泄量を指標とした用量反応試験 122 (5.3.1.1.9R) 健康成人において,尿中リン排泄量を指標とした用量反応関係,薬物動態,安全性及

    び忍容性の検討を目的としたオープン試験 透析患者における薬物動態 111 (5.3.3.2.1R) 透析患者及び健康成人を対象とした本剤単回投与時及び反復投与時における薬物動態

    の検討 薬物相互作用試験 112 (5.3.2.2.1R) 本剤単回投与時におけるランタンの体内への吸収に及ぼすクエン酸同時投与の影響 113 (5.3.2.2.2R) ワルファリンの薬物動態に及ぼす炭酸ランタンの影響の検討 114 (5.3.2.2.3R) ジゴキシンの薬物動態に及ぼす炭酸ランタンの影響の検討 115 (5.3.2.2.4R) メトプロロールの薬物動態に及ぼす炭酸ランタンの影響の検討

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    12

  • 2.5.3.2 薬物動態

    (1) 吸収(絶対的バイオアベイラビリティ)

    国外の検討で,健康成人における本剤 1000 mg 単回投与時の絶対的バイオアベイラビリティは

    0.002%未満であり,ランタンは体内にほとんど吸収されることなく,主に難溶性のリン酸ランタ

    ンとして糞便中に排泄されるものと考えられた(試験 117(5.3.1.1.1R))。

    (2) 血漿中濃度

    単回及び反復のいずれの投与時においても,投与量を考慮すると低い濃度が認められたのみで

    あり,本剤経口投与後において,ランタンはほとんど吸収されないことを反映した結果であった。

    また,本剤 250 ~ 2000 mg 用量範囲を単回投与もしくは 1 日 3 回反復投与したところ,AUC0-t及び Cmax は投与量に応じて増加したが,明らかに用量比を下回っており,本剤の投与量とランタ

    ンの曝露量との間に用量線形関係は認められなかった(試験 108(5.3.3.1.1),12862(5.3.3.1.7)

    及び 122(5.3.3.1.9R))。申請用量の範囲内である本剤 250 mg 及び 1000 mg 単回投与時並びに 1

    回 1000 mg 1 日 3 回反復投与時の Cmax 及び AUC は日本人(試験 12862(5.3.3.1.7)及び 12863

    (5.3.3.1.8))と外国人被験者(試験 121(5.3.1.2.1R),試験 117(5.3.1.1.1R),試験 122(5.3.3.1.9R)

    及び試験 111(5.3.3.2.1R))でほぼ等しかった。以上,日本人及び外国被験者のいずれにおいて

    も得られた血漿中ランタン濃度は同様に低いものであり,曝露量及び薬物動態に明らかな民族差

    はないものと考えた。

    (3) 排泄

    日本人及び外国人被験者のいずれにおいても本剤単回投与時の尿中ランタン排泄率は,投与量

    に関わらず投与量の0.0001%未満で極めて低く,血漿中濃度と同様にランタンはほとんど吸収さ

    れないことを反映した結果であった。塩化ランタンの静脈内投与時における薬物動態の検討によ

    り,ランタンは分布容積が約164 Lと大きく,全身クリアランスは3.3 L/hrであった。そのうち,腎

    クリアランスが占める割合は2%未満と低いことが示された(試験117(5.3.1.1.1R))。

    塩化ランタンの静脈内投与時にランタンの糞中への排泄を検討した結果,塩化ランタンの静脈

    内投与時においても,ランタンは尿中よりも糞中に多く排泄された(試験 117(5.3.1.1.1R))。国

    内薬物動態試験では経口投与時におけるランタンの糞中からの回収率を検討し,糞便検体数の少

    ない被験者では回収率にばらつきがみられたが,概ね回収率は高かった(試験 12862(5.3.3.1.7)

    及び 12863(5.3.3.1.8))。

    (4) 透析患者での検討

    国外で実施された透析患者における検討において,透析患者の AUC0-tn 及び Cmax は,対照群の

    健康成人と比較して,単回投与時で 2.8 倍及び 1.7 倍,反復投与時で 2.8 倍及び 2.5 倍高かった。

    また,反復投与による蓄積率には透析患者と健康成人で差は認められなかった。しかしながら,

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    13

  • 透析患者における血漿中ランタン濃度は,単回経口投与時の Cmax が非透析時で 0.30 ng/mL,透析

    時で 0.56 ng/mL,11 日間反復投与時でも 1.06 ng/mL と低いものであり(試験 111(5.3.3.2.1R)),

    前述の健康成人における血漿中ランタン濃度と大きな差はなく,透析患者に本剤を投与した時も

    ランタンはほとんど吸収されないと考えられた。

    透析患者における本剤 1000 mg 単回投与時の尿中ランタン排泄率は,非透析時において投与量

    の 0.000054 %,透析時において 0.0000034 %であり,1 回 1000 mg 1 日 3 回反復投与時では投与量

    の 0.0000055 %であった。健康成人の場合と同様に透析患者においても尿中ランタン排泄率は低

    かった。また,透析患者の透析液中にランタンはほとんど検出されなかった(試験 111

    (5.3.3.2.1R))。なお,上述したように,ランタンの腎クリアランスは全身クリアランスの 2 %未

    満と低いことが示されており,腎機能低下がランタンの排泄に影響を及ぼすことはないと考えら

    れる。

    国内第Ⅱ相試験(試験 11539(5.3.5.1.1.1))において,750 mg,1500 mg,2250 mg 及び 3000 mg / 日

    投与開始後 6 週目の血漿中ランタン濃度は,0.194~0.349 ng/mL であり,国内長期投与試験(試験

    11551(5.3.5.2.1))において,本剤投与開始後 52 週目まで経時的に透析開始直前の血漿中ランタ

    ン濃度を測定したところ,52 週目の血漿中ランタン濃度は平均で 0.387 ng/mL であった。国外で

    も同様の成績が得られており,国外長期投与試験(試験 301E(5.3.5.2.3R))における投与開始

    後 1年目における血漿中ランタン濃度は平均 0.54 ng/mLであり,この時の個別値は最高 5.25 ng/mL

    で,動物試験での静脈内投与試験において毒性が認められなかった濃度の 1/100 以下であること

    が示された(2.6.7.7.(8)及び 2.6.7.7.(9))。また,国内長期投与試験(試験 11551(5.3.5.2.1))で

    は,投与開始後 52 週目までの期間において投与期間に依存した血漿中ランタン濃度の上昇は認め

    られなかった。国外長期投与 3 試験(試験 302(5.3.5.1.1.4R),307(5.3.5.1.2.2)及び 308

    (5.3.5.2.4R))において,投与開始後 2 年目までの期間において投与期間に依存した血漿中ラン

    タン濃度の上昇は認められなかった。

    (5) 骨中濃度

    国外で実施された長期投与試験 3 試験(試験 301E (5.3.5.2.3R),303(5.3.5.1.2.4R)及び 307

    (5.3.5.1.2.2))において,本剤投与開始前,投与期間中及び投与期間終了後に骨生検を実施し,

    ランタンの長期投与に伴う骨への移行や骨からのクリアランスについて評価した。対照薬もしく

    は標準治療を受けている透析患者の骨試料の多くでランタン濃度が定量されたことから,透析患

    者は環境中のランタンに曝露されていることが示唆された。本剤投与群では,1 年間の投与期間

    中において投与開始前よりも比較的高い骨中ランタン濃度が検出されたものの,投与期間終了後

    の 2 年間で骨中からの緩徐な消失が認められた。

    54 ヵ月間にわたってランタンの投与を受けた透析患者の骨中ランタン濃度は 4246 µg/kg(中央

    値,範囲:1673~9792 µg/kg)であった。これは長期毒性試験及びがん原性試験において骨組織及

    び剖検結果が正常であった動物の骨中濃度の範囲内(中央値の範囲:3601~8147 µg/kg,最高

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    14

  • 値 : 13573 µg/kg)であった。また,透析患者の骨試料に本剤の骨毒性を示唆するような組織形態

    学的な異常所見は認められなかった。

    (6) 薬物相互作用

    本剤経口投与後,ランタンはほとんど体内に吸収されないためにその血漿中濃度が低いこと,

    ランタンは代謝を受けないこと,また,いずれのチトクロム P450 分子種に対する阻害や誘導をし

    ないことから,ランタンが併用薬剤の薬物動態に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。

    相互作用試験の結果,本剤とクエン酸,ワルファリン,ジゴキシン及びメトプロロールとの相

    互作用は認められなかった(試験 112(5.3.2.2.1R),113(5.3.2.2.2R),114(5.3.2.2.3R)及び

    115(5.3.2.2.4R))。

    しかしながら,本剤は金属含有製剤であることから,テトラサイクリン系抗生物質(テトラサ

    イクリン,ドキシサイクリン等)及びニューキノロン系抗菌剤(レボフロキサシン等)とは難溶性

    の複合体を形成し,腸管からの吸収を妨げることが考えられるので,これらの薬物については本

    剤服用後 2 時間以上あけて投与することが推奨される。

    2.5.3.3 薬理作用

    本剤は,食物に含まれるリン酸と結合して難溶性のリン酸ランタンを生成することにより,消

    化管からのリン吸収を阻害する。

    いずれの試験においても本剤投与後にはベースライン値と比較して尿中リン排泄量の減少が認

    められた(試験 109(5.3.3.1.2),110(5.3.3.1.6R),121(5.3.1.2.1R),122(5.3.3.1.9R)及び

    12863(5.3.3.1.8))。無投薬対照群では尿中リン排泄量に変化は認められなかったのに対し,実薬

    投与群では 250 mgから 2000 mgまでの用量範囲において投与量の増加に応じた尿中リン排泄量の

    減少が認められ,ベースラインからの変化量は 1 回 1500 mg 投与時に最大であった(試験 122

    (5.3.3.1.9R))。

    また,投与タイミングの検討において,本剤 1000 mg を食事中もしくは食後 30 分に 1 日 3 回 3

    日間反復経口投与したところ,食事中投与時と食後投与時で同程度の 1 日平均尿中リン排泄量が

    得られた(試験 110(5.3.3.1.6R))。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    15

  • 2.5.4 有効性の概括評価

    2.5.4.1 申請効能・効果における有効性評価のための試験

    国内において血液透析患者を対象として実施した用量反応試験(試験 11539),比較試験(試験

    11877),腹膜透析患者を対象とした一般臨床試験(試験 11878),長期投与試験(試験 11551)及

    び骨生検試験(試験 11810)の成績を評価資料とした。また,国内長期投与試験の成績に加え,

    国外で実施された長期投与試験(試験 307)の成績も評価資料として提出した。

    有効性の評価資料とした各試験の概略及び各試験の有効性結果の概略を表 2.5.4-1 に示す。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    16

  • 表 2.5.4-1 臨床的有効性検討試験の要約

    国内試験

    第 II 相用量反応試験(試験 11539)

    第 III 相比較試験 (試験 11877)

    長期投与試験 (試験 11551)

    腹膜透析患者を対象

    とした試験 (試験 11878)

    骨生検試験 (試験 11810)

    国外長期投与試験 (試験 307)

    試験デザイ

    二重盲検 無作為化 プラセボ対照 並行群間比較法

    二重盲検 無作為化 実薬対照 並行群間比較法

    非盲検 非対照 用量増減法

    非盲検 非対照 用量増減法

    非盲検 非対照 用量漸増法

    非盲検 無作為化 標準療法対照 並行群間比較法

    選択基準

    週 3 回の血液透析を 3ヵ月以上受けている

    CKD 患者のうち,観察期 の 血 清 P 濃 度 が5.6mg/dL 以 上 ,10.0mg/dL 未満,血清Ca 濃度が 8.0mg/dL 以上 11.0mg/dL 未満のもの。

    週 3 回の血液透析を 3 ヵ月以上受けている CKD患者のうち,観察期の血

    清 P 濃度が 5.6mg/dL 以上,11.0mg/dL 未満,血清Ca濃度が7.0mg/dL以上 11.0mg/dL 未満のもの。

    ① 第 II相用量反応試験終了時に長期投与

    試験への移行が可

    能と判断された患

    者,及び ② 当該試験と同様の基

    準を満たす新規の患

    腹膜透析を 3 ヵ月以上受けているCKD患者のうち,観察期の血清 P濃度が 5.0mg/dL を超え,11.0mg/dL 未満,血清 Ca 濃度が 7.0mg/dL以上 11.0mg/dL 未満のもの。

    血液透析または腹膜

    透 析 を 受 け て い る

    CKD 患者のうち,観察期の血清 P 濃度が5.6 mg/dL 以上,血清Ca 濃度が 7.5 mg/dL以上のもの。

    週 3 回の血液透析を 2 ヵ月以上受けている CKD患者のうち,血清 P 濃度が 6.0mg/dL 以上でリン吸着剤による治療が必要

    なもの

    試験目的 有効性 安全性 薬物動態

    有効性 安全性

    有効性 安全性 薬物動態

    有効性 安全性

    骨中ランタン濃度 有効性 安全性

    安全性 有効性 薬物動態

    有効性解析

    対象症例数

    142 例 258 例 (本剤投与群:126 例 炭酸カルシウム投与

    群:132 例)

    143 例 (継続投与移行 63 例)

    41 例 14 例 1338 例 (本剤 668 例,標準療法 670 例) 認知試験サブグループ: 360 例(本剤 179 例,標準療法 181 例) 骨生検サブグループ : 211 例(本剤 108 例,標準療法 103 例)

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    17

  • 表 2.5.4-1 臨床的有効性検討試験の要約(続き)

    国内試験

    第 II 相用量反応試験 (試験 11539)

    第 III 相比較試験 (試験 11877)

    長期投与試験 (試験 11551)

    腹膜透析患者を対

    象とした試験 (試験 11878)

    骨生検試験 (試験 11810)

    国外長期投与試験 (試験 307)

    治験薬,比較

    対照薬,投与

    量,投与方法

    本剤 1 回 250 mg, 500 mg, 750 mg, 1000 mg の 1 日 3回の 4 用量,もしくはプラセボを毎食直後に投与し

    た。

    第 I薬より投与を開始し,血清 P 濃度及び忍容性を考慮し,2 週毎に治験薬の増量/減量あるいは同一用量での継続を行っ

    た。 1)第 I 薬 本剤投与群: 750mg/日炭 酸 カ ル シ ウ ム 群 :

    1500mg/日 2)第 II 薬 本剤投与群:1500mg/日炭 酸 カ ル シ ウ ム 群 :

    3000mg/日 3)第 III 薬 本剤投与群:2250mg/日炭 酸 カ ル シ ウ ム 群 :

    4500mg/日

    750mg/日より開始し,血清 P 濃度及び忍容性を勘案し,750mg/日~4500mg/日の範囲で用量を調節(1回の増減量は 750mg/日)した。1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    750mg/日より開始し,血清 P 濃度及び忍容性を勘案し,

    750mg/ 日 ~2250mg/日の範囲で用量を 2 週毎に調節(1 回の増減量は750mg/日)した。1日 3 回,毎食直後に投与した。

    750 mg/日より開始し,血清 P 濃度,及び忍容性を勘案し,1回の増減量を 750 mg/日として,750 mg/日~4500 mg/日の範囲で用量調節し

    た。1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    本剤1日375mg, 750 mg, 1500 mg, 2250 mg もしくは 3000 mg を食直後に投与した。750 mg/日もしくは 1500 mg/日を開始用量とし血清 P 濃度を5.9mg/dL 以下とすることを目安に週単位で調節

    した。用量の増減は一度

    に 2 段階を超えて行わないこととした。 標準療法 前治療薬を最適量で投与

    した。その後血清 P 濃度などにより用量の増減,

    他薬への変更を可能とし

    た。

    投与期間

    観察期 3 週間 治療期 6 週間

    観察期 2 週間 治療期 8 週間

    第 II 相用量反応試験の投与期間を含めて計 52 週間 新規例の場合は,観察期 3週間+治療期 52 週間 (合計 3 年まで延長可能)

    観察期 2 週間 治療期 8 週間

    観察期 3 週間 治療期 1 年間 (合計 3 年まで延長可能)

    観察期 1-3 週間 用量調節期 6 週間 継続投与期 24 ヵ月

    血清 P 濃度低下量

    (LS-mean)

    750mg/日群:-1.35 mg/dL1500mg/日群:-2.55 mg/dL2250mg/日群:-3.03 mg/dL3000mg/日群:-3.12 mg/dLプラセボ群:+0.13 mg/dL

    本剤投与群:-2.58 mg/dL 炭酸カルシウム群 :-2.82 mg/dL

    -2.45 mg/dL (継続投与移行例 :-2.32 mg/dL)

    -1.62 mg/dL -3.66 mg/dL 本剤投与群:-2.0 mg/dL 標準療法群: -2.0 mg/dL

    終了時の 血清 P 濃度

    750mg/日群:6.57 mg/dL1500mg/日群:5.55 mg/dL2250mg/日群:4.91 mg/dL3000mg/日群:4.87 mg/dLプラセボ群:8.26 mg/dL

    本剤投与群:5.78 mg/dL 炭酸カルシウム群 :5.54 mg/dL

    5.57 mg/dL (継続投与移行例 :5.53 mg/dL)

    5.54 mg/dL 5.62 mg/dL 本剤投与群: 6.17 mg/dL 標準療法群: 6.05 mg/dL

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    18

  • 2.5.4.2 患者集団

    いずれの試験においても,CKD の原疾患,性別は不問とし,年齢 20 歳以上とした。ただし,

    初期の第 II 相用量反応試験では 75 歳までを対象とした。本剤投与開始前には観察期を設け,試験

    開始前に使用していたリン吸着剤の投与を中止し,観察期中の血清 P 濃度が 5.5 mg/dL(腹膜透析

    患者での一般臨床試験では 5.0 mg/dL)を超えるものを選択した。また,被験者の安全を考慮し,

    観察期の血清 P 濃度が 11.0 mg/dL 未満,血清 Ca 濃度が 7.0 mg/dL 以上 11.0 mg/dL 未満,及び i-PTH

    が 1000 pg/mL 未満のものを対象とした。ただし,初期の第 II 相用量反応試験では血清 P 濃度は

    10.0 mg/dL 未満,血清 Ca 濃度は 8.0 mg/dL 以上 11.0 mg/dL 未満のもの,骨生検試験では血清 Ca

    濃度は 7.5 mg/dL 以上のものとした。

    2.5.4.3 治験デザイン

    第 II 相用量反応試験(試験 11539)

    血液透析中の CKD 患者を対象とし,3 週間の観察期終了後,二重盲検群間比較法により本剤 1

    日 750 mg,1500 mg,2250 mg,3000 mg 及びプラセボのいずれかを 6 週間投与した。有効性の主

    要評価項目は,血清 P 濃度の変化量(二重盲検治療期終了時-観察期終了時)とした。なお,本

    試験開始時には日本独自のガイドラインがなかったため,治験実施計画書の治療目標は K/DOQI

    ガイドラインに基づいており,試験終了後に日本透析医学会より公表されたガイドラインの目標

    値(3.5 - 6.0 mg/dL)への達成率も事後的に解析することとした。

    第 III 相比較試験(試験 11877)

    血液透析中の CKD 患者を対象とし,2 週間の観察期終了後,二重盲検群間比較法により本剤の

    血清 P 及び Ca 濃度に対する影響を沈降炭酸カルシウムのそれらと比較した。本剤の投与は 1 日

    750 mg から開始し,血清 P 濃度及び忍容性を勘案して 1500 mg,2250 mg へと 2 週間間隔で増量

    可能とした。一方,炭酸カルシウムの用量は 1 日 1500 mg から開始し,3000 mg,4500 mg へと同

    様に漸増可能とした。

    有効性の主要評価項目は,血清 P 濃度の変化量(二重盲検治療期終了時-観察期終了時)及び

    二重盲検治療期における高 Ca 血症(10.5 mg/dL 以上)の発現の有無とした。

    本試験においても血清 P 濃度の治療目標値への達成度合いを評価したが,上記試験と同様,日

    本透析医学会のガイドラインに示された治療目標への達成度合いについても解析することとし,

    開鍵前に解析計画書に追加した。

    腹膜透析患者を対象とした一般臨床試験(試験 11878)

    血液透析患者及び腹膜透析患者における高 P 血症に本質的な差はないと考えられるが,国内臨

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    19

  • 床試験では血液透析患者を対象としてきたため,別途腹膜透析患者のみを対象とした一般臨床試

    験を実施した。

    本試験では,CAPD 施行中の CKD 患者を対象とし,2 週間の観察期の後,本剤を 8 週間投与し

    血清 P 及び Ca 濃度に対する影響を評価した。CAPD 患者では腎機能が残存し,血清 P 濃度が比較

    的低く保たれている場合もあるため,観察期終了時の血清 P 濃度が 5.0 mg/dL を超えるものを対

    象とした。

    本剤の投与は 1 日 750 mg から開始し,血清 P 濃度及び忍容性を勘案して 1500 mg,更に 2250 mg

    へと 2 週間間隔で増量可能とした。

    有効性の主要評価項目は,血清 P 濃度の変化量(治療期終了時-観察期終了時)とした。なお,

    血液透析患者での成績と比較するため,それら試験と同じ血清 P 濃度の選択基準及び治療目標値

    を用いた評価も実施した。

    長期投与試験(試験 11551)

    上記第 II 相用量反応試験の対象患者のうち,同意が得られたものは本剤の長期投与試験に移行

    することを可能とした。移行後は,本剤 1 日 750 mg の用量から投与を開始し,忍容性及び血清 P

    濃度を勘案し,4500 mg を上限に増減単位を 1 日 750 mg として週単位で用量を調整することとし

    た。また,用量反応試験と同じ選択基準に合致する新規患者も本長期投与試験に参加可能とした。

    有効性の主要評価項目は,血清 P 濃度の変化量(長期投与終了時-観察期終了時)とした。本

    試験では 1 年間投与終了後,更に 2 年間継続し,合計 3 年間の投与を可能としている。52 週間の

    投与を完了した 95 例のうち、63 例が継続投与期に移行した。2 年間の投与を終了したものは 47

    例であった。

    なお,本試験においては 20 年 月に投薬を終了しており,成績が得られ次第,提出する予定

    である。

    骨生検試験(試験 11810)

    高 P 血症治療が必要な透析患者を対象として,本剤投与時の骨組織中ランタン濃度を,骨生検

    により検討した。また,副次的評価項目として骨形態計測学的パラメータを評価した。

    3 週間の観察期間終了後, 750 mg/日より投与開始し,血清 P 濃度,有害事象の発現等を勘案し,

    1 回の増減量を 750 mg/日として,750 mg/日~4500 mg/日の範囲で用量調節を行った。9 例が 1 年

    間の治療を完了し,可能な症例は更に 2 年間継続し,合計 3 年間の本剤の投与を行うこととした。

    2.5.4.4 解析結果

    (1) 血液透析患者における有効性

    用量反応試験では,本剤投与後の血清 P 濃度はいずれの用量群においてもプラセボ群に比し有

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    20

  • 意な低値を示し,その低下効果は用量依存的であった。投与 6 週後までの血清 P 濃度の治療目標

    累積達成率は,750 mg/日群 50%,1500 mg/日群 68%,2250 mg/日群 82%,3000 mg/日群 69%であり,

    プラセボ群に比しいずれの用量群でも有意に高かった。また,日本透析医学会のガイドラインに

    基づいて事後的に評価した累積達成率は,750 mg/日群 61%,1500 mg/日群 76%,2250 mg/日群 90%,

    3000 mg/日群 75%であり,1500 mg/日の用量で十分な効果を発揮するものと考えられた。

    第 III 相比較試験は,炭酸カルシウム 4500mg/日までの用量を対照として,本剤 2250 mg/日まで

    の漸増用量の効果を検討した。図 2.5.4-1 に両群の血清 P 濃度の推移を示す。投与 8 週後の本剤投

    与群の血清 P 濃度変化量は-2.58 mg/dL,炭酸カルシウム群では-2.82 mg/dL であり,本剤の非劣性

    が証明された。8 週後までの治療目標値累積達成率も,本剤投与群 75%,炭酸カルシウム群 82%

    とほぼ同等であり,本剤は,炭酸カルシウムと同様,血清 P 濃度を良好にコントロールできた。

    一方,血清 Ca 濃度は,炭酸カルシウム群では経時的に上昇したのに対し,本剤投与群ではほぼ変

    化なく推移した(図 2.5.4-2)。そして高 Ca 血症の発現率は,本剤投与群 5.7%,炭酸カルシウム

    群 30.0%と有意差を認めた。以上より,本剤は透析患者の予後を決定する重要な因子である血清

    P 濃度と血清 Ca 濃度をともに良好にコントロールできるリン吸着剤であると考えられる。

    また,本剤の血清 P 濃度低下効果は長期に服用しても変化はなかった。図 2.5.4-3,2.5.4-4 に

    長期投与試験における漸増期以降の血清 P 濃度の推移(それぞれ 1 年投与成績,継続投与移行例

    における投与開始 2 年後までの成績)を示す。用量調節がほぼ終了したと考えられる 10 週後時点

    から長期投与後まで投与量に増加傾向はなく,1 年間の投与期間を通じて血清 P 濃度はほぼ目標

    値に維持されている。また,継続投与移行例においても同様に血清 P 濃度は目標値内に維持され

    た。したがって,長期に服薬しても本剤の血清 P 濃度低下効果は減弱せず,長期コントロールが

    可能であることが示された。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    21

  • 血清

    P濃

    度 (mg/dL)

    (週)

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    3.5

    5.5

    -2 0 2 4 6 8

    12

    -1 1 3 5 7

    二重盲検治療期観察期

    炭酸ランタン群(n=126) 炭酸カルシウム群(n=132)

    Mean±SD

    図 2.5.4-1 比較試験における血清 P 濃度の推移

    補正

    血清

    Ca濃

    度 (mg/dL)

    (週)

    8

    9

    10

    11

    8.4

    9.5

    二重盲検治療期観察期

    -2 0 2 4 6 8-1 1 3 5 7

    炭酸ランタン群(n=126) 炭酸カルシウム群(n=132)

    Mean±SD

    図 2.5.4-2 比較試験における血清 Ca 濃度の推移

    例数 La 126 125 124 120 118 117 114 113 126

    Ca 132 131 129 126 124 120 117 115 132

    例数 La 126 125 124 120 118 117 114 113 126

    Ca 132 131 129 126 124 120 117 113 132

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    22

  • 0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    血清

    P濃

    度 (mg/dL)

    (週)

    n=143,Mean±SD

    0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48

    3.5

    5.5

    図 2.5.4-3 長期投与試験における血清 P 濃度の推移 (1 年投与成績)

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    1 2 3 4 5 6 10 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 88 92 96 100 104

    (週)

    血清

    P濃

    度(m

    g/dL

    )

    図 2.5.4-4 長期投与試験における血清 P 濃度の推移

    n=63, Mean±SD

    例数

    63 62 61 62 61 58 50 51 46 40

    (継続投与移行例における投与開始 2 年後までの成績)

    また,非盲検,無作為化,標準療法対照法により本剤または標準薬を 2 年間投与した米国での

    例数

    143 142 126 122 107 109 107 100 95 95 91

    継続投与期

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    23

  • 長期投与試験においても,用量調節期の後 2 年間の治療期間を通じて,血清 P 濃度は標準療法群

    と同様に維持されており,本剤を長期に服薬しても血清 P 濃度低下効果は減弱せず,良好なコン

    トロールが可能であると考えられた(図 2.5.4-5)。

    3.5

    4

    4.5

    5

    5.5

    6

    6.5

    7

    7.5

    8

    8.5

    9

    9.5

    10

    W7 W14 W26 W52 M14 M16 M18 M20 M22 M24

    Week/Month No.

    Seru

    m P

    hosp

    horu

    s Leve

    ls (

    mg/

    dL)

    Lanthanum Standard Therapy

    n=561 n=511 n=416 n=319 n=282 n=259 n= 239 n=215 n=201 n=196

    n=622 n=597 n=533 n=449 n=423 n=393 n=375 n=349 n=324 n=319

    図 2.5.4-5 国外長期投与試験における血清 P 濃度の推移 mean±SD

    (2) 腹膜透析患者における有効性

    図 2.5.4-6に腹膜透析患者を対象とした本剤 8週間投与の一般臨床試験における血清 P濃度の推

    移を示す。本試験での投与終了時の血清 P 濃度は 5.54 mg/dL,投与前からの変化量は-1.62 mg/dL,

    であった。本試験では本剤の投与量が他の試験に比べ低く,本試験のみに用いた治療目標血清 P

    濃度の目標値(3.5 - 5.0 mg/dL)への達成率が 53%とやや低かったが,血液透析患者を対象とした

    他のすべての試験で用いた目標値(3.5 - 5.5 mg/dL)の累積達成率は 75 %であり,血液透析患者で

    の成績と差はなく,本剤の有効性は両患者集団で同等であることが示された。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    24

  • 血清

    P濃

    度 (mg/dL)

    (週)n=38~41,Mean±SD

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    3.5

    5.5

    -2 0 2 4 6 8

    治療期観察期

    図 2.5.4-6 腹膜透析患者を対象とした一般臨床試験における血清 P 濃度の推移

    例数 41 39 39 38 38

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    25

  • 2.5.5 安全性の概括評価

    国内で実施した試験は 5 試験の安全性を評価した。また,特に長期投与時の安全性評価のため,

    米国で実施された長期投与試験(試験 307)を評価資料として提出した。その他の国外臨床試験

    は参考資料として添付した。

    安全性の評価に用いた 6 試験の試験方法及び安全性成績の要約を表 2.5.5-1 に示す。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    26

  • 表 2.5.5-1 安全性の評価に用いた試験の試験方法及び安全性成績の要約

    国内試験(試験番号) 国外試験(試験番号)

    第 II 相用量反応試験(11539)

    N=156

    第 III 相比較試験 (11877)

    N=258

    長期投与試験 (11551)

    N=145 (継続投与移行 N=63)

    腹膜透析患者を対象

    とした試験 (11878)

    N=45

    骨生検試験 (11810)

    N=14

    長期投与試験 (307) N=1359

    試験デザイン

    二重盲検 無作為化 プラセボ対照 並行群間比較法

    二重盲検 無作為化 炭酸カルシウム対照 並行群間比較法

    非盲検 非対照 用量漸増法

    非盲検 非対照 用量漸増法

    非盲検 非対照 用量漸増法

    非盲検 無作為化 標準療法対照 並行群間比較法

    選択基準

    週 3 回の HD を 3 ヵ月以上受けている CKD 患者のうち,観察期の血清 P 濃度が5.6mg/dL 以上,10.0mg/dL未満 ,血 清 Ca 濃度 が8.0mg/dL以上11.0mg/dL未満のもの。

    週 3 回の HD を 3 ヵ月以上受けている CKD 患者のうち,観察期の血清 P濃度が 5.6mg/dL 以上,11.0mg/dL 未満,血清Ca 濃度が 7.0mg/dL 以上 11.0mg/dL 未満のもの。

    ① 第 II 相用量反応試験終了時に長期試験へ

    の移行が可能と判断

    された患者,及び ② 当該試験と同じ基準

    を満たす新規の患者

    CAPD を 3 ヵ月以上受けている CKD 患者のうち,観察期の血清 P濃度が 5.1mg/dL 以上,11.0mg/dL 未満,血清Ca 濃度が 7.0mg/dL 以上 11.0mg/dL 未満のもの。

    HD または CAPD を受けている CKD 患者のうち,観察期の血清 P 濃度が 5.6 mg/dL 以上,血清 Ca 濃度が 7.5 mg/dL 以上のもの。

    週 3 回の HD を 2 ヵ月以上受けているCKD患者のうち,血清 P 濃度が6.0mg/dL 以上でリン吸着剤による治療が必要なも

    投与期間 観察期 3 週間 +6 週間

    観察期 2 週間 +8 週間

    観察期 3 週間 +52 週間(合計 3 年まで延長可能)

    観察期 2 週間 +8 週間

    観察期 3 週間 +1 年間 (合計 3 年まで延長可能)

    観察期:1-3 週間 用量調節期:6 週間 継続投与期:24 ヵ月

    年齢 20~75 歳 20 歳以上 20~75 歳 20 歳以上 20 歳以上 12 歳以上

    投与量, 投与方法

    750 mg/日,1500 mg/日,2250 mg/日,3000 mg/日の 4 用量,またはプラセボを二重盲検法に

    より 1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    二重盲検法により,本剤 750 mg/日(第 I 薬)~2250 mg/日(第 III 薬),または炭酸カルシウム 1500 mg/日(第 I 薬)~4500 mg/日(第 III 薬)を漸増法により投与した。血清P濃度及び忍容性を考慮し,2週毎に用量を調節した。 1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    750 mg/日より開始し,血清 P濃度及び忍容性を勘案し,

    750 mg/日~4500 mg/日の範囲で用量を調節した(1 回の増減量は 750 mg/日)。 1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    750 mg/日より開始し,血清 P 濃度及び忍容性を勘案し,750 mg/日~2250 mg/日の範囲で用量を調節した(1 回の増減量は750 mg/日)。1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    750 mg/日より開始し,血清 P濃度,及び忍容性を勘案し,1回の増減量を 750 mg/日として,750 mg/日~4500 mg/日の範囲で用量調節した。1 日 3 回,毎食直後に投与した。

    試験薬 1 日用量 375mg, 750 mg, 1500 mg, 2250 mg もしくは 3000 mg を食直後に投与した。750 mg/日もしくは 1500 mg/日を開始用量とし血清 P濃度を 5.9mg/dL 以下とすることを目安に週単位で調節し

    た。用量の増減は一度に 2 段階を超えて行わないこととし

    た。 標準療法 前治療薬を最適量で投与し

    た。その後血清 P 濃度などにより用量の増減,他薬への変

    更を可能とした。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    27

  • 表 2.5.5-1 安全性の評価に用いた試験の試験方法及び安全性成績の要約(続き)

    国内試験(試験番号) 国外試験(試験番号)

    第 II 相用量反応試験(11539)

    第 III 相比較試験 (11877)

    長期投与試験 (用量反応試験投与期

    を除く) (11551)

    腹膜透析患者を対象と

    した試験 (11878)

    骨生検試験 (11810)

    N=14

    長期投与試験 (307)

    有害事象 発現率 (例数)

    750 mg/日群 80.6%(25)1500 mg/日群 71.4% (20)2250 mg/日群 75.8% (25)3000 mg/日群 90.3% (28)プラセボ群 69.7% (23)

    本剤投与群 77.8% (98) 炭 酸 カ ル シ ウ ム 群76.5%(101)

    99.3% (144) (継続投与移行例 :96.8% (61))

    77.8% (35) 100% (14) 本剤投与群 95.0% (648) 標準療法群 97.3% (659

    副作用 発現率 (例数)

    750 mg/日群 9.7% (3) 1500 mg/日群 28.6% (8) 2250 mg/日群 45.5% (15)3000 mg/日群 58.1% (18)プラセボ群 27.3% (9)

    本剤投与群 23.0%(29) 炭 酸 カ ル シ ウ ム 群24.2%(32)

    55.9% (81) (継続投与移行例 :34.9% (22))

    15.6% (7) 64.3% (9 ) 本剤投与群 22.3% (152) 標準療法群 13.0% (88)

    嘔吐発現率

    (因果関係を

    問わない)

    (例数)

    750 mg/日群 9.7% (3) 1500 mg/日群 7.1% (2) 2250 mg/日群 24.2% (8) 3000 mg/日群 41.9% (13)プラセボ群 0%

    本剤投与群 12.7%(16) 炭 酸 カ ル シ ウ ム 群3.0%(4)

    35.2% (51) (継続投与移行例 : 27.0% (17))

    4.4% (2) 42.9% (6) 本剤投与群 27.0% (184) 標準療法群 30.1% (204)

    重篤な有害事

    象発現率 (例数)

    750 mg/日群 3.2% (1) 1500 mg/日群 7.1% (2) 2250 mg/日群 6.1% (2) 3000 mg/日群 6.5% (2) プラセボ群 6.1% (2)

    本剤投与群 2.4%(3) 炭 酸 カ ル シ ウ ム 群3.8%(5)

    22.1% (32) (継続投与移行例 :15.9% (10))

    6.7% (3) 28.6% (4) 本剤投与群 58.1% (396) 標準療法群 73.0% (494)

    死亡に至った 有害事象 (例数)

    750 mg/日群 0% 1500 mg/日群 0% 2250 mg/日群 0% 3000 mg/日群 3.2% (1) プラセボ群 0%

    本剤投与群 0% 炭酸カルシウム群 0%

    0.7% (1) (継続投与移行例 :0%)

    0% 0% 本剤投与群 8.1% (55) 標準療法群 17.0% (115)

    投与中止に至

    った有害事象 (例数)

    750 mg/日群 0% 1500 mg/日群 3.6% (1) 2250 mg/日群 18.21% (6)3000 mg/日群 35.5% (11)プラセボ群 6.1%(2)

    本剤投与群 3.2%(4) 炭酸カルシウム群 4.5%(6)

    24.8% (36) (継続投与移行例 :9.5% (6))

    6.7%(3) 14.3% (2 ) 本剤投与群 14.4% (98) 標準療法群 4.3% (29)

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    28

  • 2.5.5.1 同種・同効品に見られる特徴的有害事象

    現在国内で使用されている非カルシウム性のリン吸着剤は塩酸セベラマーのみである。塩酸セ

    ベラマーは非吸収性のポリカチオン性ポリマーであり,消化管内で部分的に陽性荷電状態となり,

    食物から遊離した陰性荷電のリン酸イオンと消化管内でイオンあるいは水素結合し,リン酸の体

    内への吸収を抑制する。しかしそのイオン吸着能は非特異的であり,脂溶性ビタミンや葉酸の吸

    収を阻害し,その欠乏症を招く危険性がある。そのため血中ビタミン及び葉酸濃度を慎重にモニ

    ターする必要がある。また,過 Cl 血症性アシドーシスをおこす可能性があり,定期的に血清 Cl

    濃度及び血中重炭酸濃度を測定する必要がある。

    塩酸セベラマーは,消化管内で水分を吸収して膨潤するため,日本人患者では便秘などの消化

    器系有害事象が高頻度にみられ,腸閉塞や腸管穿孔などの重篤な合併症も報告されている[1]。

    その添付文書では「慎重投与」あるいは「禁忌」として注意を喚起している。[2]

    2.5.5.2 毒性試験から得られた情報に関する考察

    主な臓器及び機能に対する本薬の影響に関する非臨床試験成績を以下に要約する。詳細は 2.4

    及び 2.6.6 に記載した。

    胃腸管に対する影響

    ラット及びマウスにおける反復経口投与毒性試験及びがん原性試験において,腺胃での病理組

    織学的変化の発生頻度が,投与期間及び用量依存的に上昇した。ラットにおける主な所見は,腺

    胃の粘膜下炎症,限局性鉱質沈着,小窩上皮過形成及び境界縁過形成等であった。マウスでの主

    な所見は,境界縁扁平上皮過形成,胃粘膜及び粘膜下の炎症,腺胃過形成,小肉芽腫及び鉱質沈

    着等であり,一部の動物では腺胃腺腫が認められた。しかしながら,これらはげっ歯類でみられ

    る胃内環境変化に伴う適応性の変化であると考えられた。イヌの反復投与毒性試験では投薬に関

    連した胃腸管の病変は認められなかった。イヌの反復経口投与試験において,摂餌前に本薬を投

    与した用量漸増及び 14 日間経口投与試験で嘔吐が散発的にみられたが,摂餌後に投薬した 4 週間

    以上の反復経口投与毒性試験では,投薬による嘔吐の増加はほとんど認められなかった

    (2.4.4.2.(5).2))。

    肝臓に対する影響

    塩化ランタンを用いたイヌの 4週間反復静脈内投与毒性試験において,1 mg/kgで肝酵素(ALT,

    AST,ALP)の上昇とともに肝臓に軽度の慢性炎症が認められた。肝臓に対する塩化ランタン静

    脈内投与時の無影響量は 0.05 mg/kg であり,その血漿中ランタン濃度は,Cmax 556~579 ng/mL,

    AUC0-24 1802~2768 ng・h/mL であった。げっ歯類の塩化ランタン単回静脈内投与毒性試験におい

    ても,極めて高い全身曝露量で肝毒性が認められたが,炭酸ランタンを経口投与したラット及び

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    29

  • イヌでの単回及び反復投与毒性試験では,肝臓に対する毒性は認められなかった。以上のように,

    肝臓はランタンの毒性の標的器官であると考えられるが,その毒性は,臨床では生じる可能性の

    ない極めて高い曝露量でのみ認められた(2.4.4.2.(5).3))。

    骨に対する影響

    本薬の反復投与毒性試験及び生殖発生毒性試験(発育途中の動物での骨形成への影響を含む)

    において,正常動物の骨に毒性的な変化は認められなかった。一方,慢性腎不全モデルである 5/6

    腎摘出ラットにおいて,本薬を 12 週間経口投与すると,骨軟化症を示唆する骨形成の低下(石灰

    化障害)が認められた。しかしながら,これは本薬の骨に対する直接的な影響ではなく,本薬の

    過度の薬理作用に基づくリンの枯渇に伴う変化であることが示された。この結論は,骨軟化症の

    発生と血漿中または骨中のランタン濃度との相関性が低かったこと,他のリン吸着剤である塩酸

    セベラマーでも同様に石灰化障害が誘発されたこと,並びに本薬を投与した慢性腎不全ラットに,

    リン酸塩を皮下投与すると,石灰化障害がみられなくなることから裏付けられた。したがって,

    毒性試験においてランタンの骨に対する直接的な毒性はないと考えられる(2.4.4.2.(5).1))。

    脳・中枢神経系に対する影響

    安全性薬理試験において,本薬は中枢神経系に何ら影響を及ぼさなかった。またマウス,ラッ

    ト及びイヌの反復経口投与毒性試験において,中枢への影響を示唆する行動の変化は認められな

    かった。イヌの 52 週間反復経口投与試験においても,26 週及び 52 週目に神経学的検査を実施し,

    またマウスのがん原性試験において,62 週目に Irwin の多次元観察を行ったが,何ら影響は認め

    られなかった。脳内ランタン濃度は極めて低いことも勘案すると,本薬が中枢神経系に影響を及

    ぼす可能性は低いと考えられる(2.4.2.3)。

    以上のように,本薬投与後ランタンがごく微量ながら体内に吸収され骨に移行することが示さ

    れたため,国外臨床試験では骨生検により骨中ランタン濃度及び骨形態計測パラメータを評価し

    た。国内でも少数例の患者ではあるが,骨生検試験を実施し,ランタンの骨中濃度及び骨形態計

    測パラメータの変化が,国外臨床試験の成績と差がないかを確認することとした。

    2.5.5.3 患者集団

    各試験の評価対象例数は,国内で実施した血液透析(HD)患者を対象とした第 II 相用量反応試

    験(試験 11539),第 III 相比較試験(試験 11877),長期投与試験(試験 11551),骨生検試験(試

    験 11810)で合計 437 例(うち本剤投与は 272 例),腹膜透析(PD)患者のみを対象とした一般

    臨床試験(試験 11878),骨生検試験(試験 11810)で合計 47 例,また,国外における HD 患者

    を対象とした長期投与試験(試験 307)で 1359 例 (うち本剤投与は 682 例)であった。これら被験

    者の患者背景は,わが国の慢性透析医療を受ける患者の背景とほぼ一致していた(2.7.4.1 参照)。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    30

  • なお,国内の臨床試験では,以下の患者を対象に含めなかった。これらの患者集団に対する本

    剤の安全性は確立していない。

    ・未成年者(年齢 20 歳未満)

    ・妊娠中及び授乳中の女性並びに妊娠している可能性のある女性

    ・重度の肝機能障害を有する者(AST もしくは ALT が正常値上限の 3 倍以上の者,肝硬変を有

    するもの)

    ・明らかな消化器疾患を有する患者(活動性の消化性潰瘍,クローン病,潰瘍性大腸炎,悪性腫

    瘍など)

    ・低 Ca 血症(

  • 3 例が軽快,2 例は不変,継続投与 1 年目の 4 例では不変であった。いずれの症例も低 Ca 血症は

    合併していなかったが,副甲状腺のカルシウムセットポイントがずれている症例ではわずかなカ

    ルシウム不足から SHPT を惹起もしくは悪化させる可能性があり[3],カルシウムを含有しない

    本剤投与による可能性も考えられる。

    鉄欠乏性貧血を含む軽度の貧血が,長期投与試験 1 年目 9 例,継続投与 1 年目の 1 例に認めら

    れたが,その発現頻度に用量反応性は認められなかった。いずれの症例も何らかの治療を受け投

    薬継続中に回復している。

    血中 ALP 上昇は,1 年目の 4 例,継続投与 1 年目の 1 例に認められが,いずれも軽度と判断さ

    れた。全症例で AST 及び ALT に変化は認めず i-PTH の上昇及び BAP の上昇を伴っており,骨回

    転上昇による BAP の上昇を反映するものと考えられた。

    低 Ca 血症については,当初,本剤がカルシウムを含まないためにその発現の可能性が考えられ

    たが,実際には,用量反応試験のプラセボ群,あるいは比較試験の炭酸カルシウム群と比較して

    も,本剤の低 Ca 血症の発現率は高くない。むしろ,比較試験においては,炭酸カルシウム群の

    5.2%が投薬期間中に血清 Ca 濃度が 8.4mg/dL 未満となったのに対し,本剤投与群では 2.8%と少な

    かった。

    骨生検試験では,14 例中 9 例(64%)に副作用が認められたが,その多くは消化器症状であり,

    主なものは悪心 5 例(36%),嘔吐 4 例(29%),胃不快感 2 例(14%)であった。また,その程

    度は 7 例が軽度,2 例が中等度と判定され,高度のものはなかった。

    2.5.5.4.2 重篤な有害事象及び死亡例

    国内臨床試験中に本剤投与群で発生した重篤な有害事象(死亡例は除く)は 52 例(15.0%)の

    計 71 件であった。その主なものはシャント・グラフト関連 7 件,狭心症 4 件であり,心血管系の

    事象(14 件)が全重篤有害事象の 19.7%,感染性の事象(7 件)が 9.9%を占めた。これら有害事

    象の発現頻度には用量反応性を認めず,プラセボ群や対照薬群と比較して本剤投与群で特に頻度

    が高いものはなかった。また,時間的経過などから因果関係が否定できないと判断されたものは

    9 例であった(症例の詳細は表 2.7.4.2-14 に記載した)。

    死亡例は,第Ⅱ相用量反応試験の 1 例(消化管出血)及び長期投与試験の 1 例(心筋梗塞)の

    計 2 例であった。いずれも,本剤との因果関係は否定されている。(表 2.7.4.2-9)

    2.5.5.4.3 用法・用量及び投与期間と有害事象との関係

    用法

    国外の第 I 相試験(試験 104)において,本剤を空腹時単回投与したところ,悪心・嘔吐が高頻

    度で発現し,治験責任医師の判断で以降の投薬を中止したという経緯があるため,第 I 相試験を

    含む国内臨床試験では,いずれも食直後投与とした。その結果,固定用量での高用量投与時を除

    き,それら発現率は許容できる範囲であった。

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    32

  • 用量

    固定用量での二重盲検群間比較試験である第 II 相用量反応試験では,嘔吐の発現率は 750 mg/

    日群 9.7%(3/31 例),1500 mg/日群 7.1%(2/28 例),2250 mg/日群 24.2%(8/33 例),3000 mg/日

    群 41.9%(13/31 例)と明らかな用量相関が認められ,特に 3000mg/日群では,有害事象により投

    与を中止したものは 12 例(39%)と多く,2250 mg/日以上の固定用量は好ましくないと考えられ

    た。一方,本試験に引き続いて実施した長期投与試験では,750 mg/日から漸増法で用量を調整し,

    漸増開始から 8 週間で 3000 mg/日まで増量された被験者も 34 例(23.4%)存在したが,漸増開始

    後 8 週間の嘔吐の発現率は 11.1 %と低かった。第 III 相比較試験では本剤を 750 mg/日から 2250

    mg/日まで漸増することとしたが,本剤を試験終了時 2250mg まで増量した症例が 46%あったにも

    かかわらず,嘔吐の発現率は 12.7 %(16/126 例)であり,嘔吐のため試験を中止した被験者も 2

    例(1.6%)と忍容性の改善を認めた。同じく漸増投与法を用いた腹膜透析患者を対象とした試験

    でも嘔吐の発現率は 4.4 %(2/45 例)と低く,嘔吐のため試験を中止した被験者もいなかった。

    その他の有害事象の発現率には用量反応性は認められなかった。

    以上のように,本剤は投与開始時から高用量を用いた場合,嘔吐の発現率が高いが,低用量(750

    mg/日)から開始し,血清 P 濃度と忍容性を確認しながら増量することにより消化器系の副作用は

    低減できると考えられた。

    投与期間

    投与期間が長くなるにつれて有害事象の発生頻度が上昇する傾向は認められなかった。悪心·嘔

    吐については投与初期に比較的多く認められる傾向があった(2.7.4.2)。

    2.5.5.4.4 部分集団における有害事象

    性別,年齢,体重,投与前血清 P 濃度,軽度肝疾患合併の有無,ビタミン D 製剤併用の有無別

    に有害事象の発現率を検討した。女性,低体重の患者層で嘔吐の発現率がやや高くなる傾向があ

    ったほかは,有害事象が高頻度に発生したり特異な有害事象が出現したりする兆候は認められな

    かった。

    2.5.5.4.5 安全性成績における試験間の類似性と相違

    試験間で発現傾向が異なる有害事象は悪心·嘔吐のみであった。

    第 II 相用量反応試験のプラセボ群では嘔吐を全く認めなかったのに対し,750 mg/日群 9.7%,

    1500 mg/日群 7.1%,2250 mg/日群 24.2%,3000 mg/日群では 41.9%と,その発現頻度には用量相

    関性を認めた。一方,第 III 相比較試験及び腹膜透析患者を対象とした試験では,2250 mg/日まで

    投与された例もそれぞれ 58 例(46.0%),10 例(22.2%)あったにもかかわらず,嘔吐の発現率

    はそれぞれ 12.7%,4.4%と低かった。これは,いずれの試験においても 750 mg/日から用量を漸

    2.5 臨床に関する概括評価

    ホスレノール

    33

  • 増したことによるものと考えられる。

    その他の有害事象については,試験間で発現傾向が異なるものはなかった。

    2.5.5.4.6 特に考慮すべき安全性事項

    嘔吐

    透析患者ではインスリンを使用している糖尿病患者が多く,嘔吐が原因で低血糖を起こす可能

    性も考えられる。また透析患者は通常多剤を併用しており,本剤以外の併用薬の効果も嘔吐によ

    り減弱することも考えられる。臨床試験では,嘔吐が原因で重篤な有害事象を引き起こしたと考

    えられる症例,あるいは併用薬の効果が減弱したという症例の報告はなかったが,空腹時投与を

    避け,食直後に服薬すること,低用量から開始し血清 P 濃度をみて漸増し過量投与を避けること

    により嘔吐の発現をある程度抑えることが可能であると考えられるため,市販後は,このような

    リスクと投与方法に関する注意を周知徹底する必要がある。なお,食事が不規則な患者では,リ

    ン摂取量に見合う本剤の投与量を各食後に分割して服用することも重要であろう。

    体組織·骨への移行

    非臨床試験において,本薬投与後わずかに吸収されたランタンは低濃度ながら骨を含む体組織

    に移行することが示されており,国外臨床試験においても骨へのランタンの移行が認められてい

    る。しかしながら,非臨床試験においてランタンの骨への直接的な影響は認められず

    (2.4.4.2.(5).1),また国外臨床試験にて 5 年までの投与で組織学的,臨床的に問題となる所見が

    ないことが確認されている。わが国においても 2 年までの長期投与試験を含む全臨床試験におい

    てランタンが骨に有害な影響を及ぼしてい