8
-5- 2 「特別の教科 道徳」の評価 「第3章 特別の教科 道徳」の第3の4において、次のように示されています。 道徳科で養う道徳性は、児童生徒が将来いかに人間としてよりよく生きるか、いかに諸問題に適切に 対応するかといった個人の問題に関わるものです。どれだけ道徳的価値を理解したかなどの基準を設定 することは適切ではありません。 評価は、児童生徒にとっては、自らの成長を実感し意欲の向上につなげていくものです。教師にとっ ては、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長に対する共感的な理解を基に、自らの指導を評価し、指 導方法の改善に努めるために、指導の目標や計画、指導方法の改善・充実につなぐ資料となるものです。 道徳科の目標をもう一度確認してみましょう。 教師は道徳科においてもこうした点を踏まえ、それぞれの授業における指導のねらいとの関わりにお いて、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を様々な方法で捉えて、個々の児童生徒の成長を 促すとともに、それによって自らの指導を評価し、改善に努めることが大切です。 「児童の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要があ る。ただし、数値などによる評価は行わないものとする」 『学習指導要領』「第3章 特別の教科 道徳」 第1章総則の第1の2に示す道徳教育の目標に基づき、よりよく生きるための基盤となる道徳性を 養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多 角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、 心情、実践意欲と態度を育てる。 道徳科の目標 道徳科のねらいは、 「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと」です。 ただし、道徳性は評価しま せん。 内面的資質を評価す ることは困難だからです。 道徳科の授業における児童 の学習状況や道徳性に係る成 長の様子を評価します。 指導と評価の一体化 自らの成長を実感し 意欲の向上につなげていくもの 子どもにとって 指導の目標や計画、指導方法の改善・ 充実に取り組むための資料となるもの 教師にとって 1 道徳科の評価の意義 2 道徳科の評価の在り方

1 2 「特別の教科 道徳」の評価 - Kusatsu · 道徳科の評価については、「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)【概要】」で、次

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

2 「特別の教科 道徳」の評価

 「第3章 特別の教科 道徳」の第3の4において、次のように示されています。

 道徳科で養う道徳性は、児童生徒が将来いかに人間としてよりよく生きるか、いかに諸問題に適切に

対応するかといった個人の問題に関わるものです。どれだけ道徳的価値を理解したかなどの基準を設定

することは適切ではありません。

 評価は、児童生徒にとっては、自らの成長を実感し意欲の向上につなげていくものです。教師にとっ

ては、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長に対する共感的な理解を基に、自らの指導を評価し、指

導方法の改善に努めるために、指導の目標や計画、指導方法の改善・充実につなぐ資料となるものです。

 道徳科の目標をもう一度確認してみましょう。

 教師は道徳科においてもこうした点を踏まえ、それぞれの授業における指導のねらいとの関わりにお

いて、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を様々な方法で捉えて、個々の児童生徒の成長を

促すとともに、それによって自らの指導を評価し、改善に努めることが大切です。

 「児童の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要があ

る。ただし、数値などによる評価は行わないものとする」

『学習指導要領』「第3章 特別の教科 道徳」

 第1章総則の第1の2に示す道徳教育の目標に基づき、よりよく生きるための基盤となる道徳性を

養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多

角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、

心情、実践意欲と態度を育てる。

道徳科の目標

 道徳科のねらいは、「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと」です。

 ただし、道徳性は評価しま

せん。 内面的資質を評価す

ることは困難だからです。

 道徳科の授業における児童

の学習状況や道徳性に係る成

長の様子を評価します。

指導と評価の一体化

自らの成長を実感

意欲の向上につな

げていくもの

子どもにとって

指導の目標や計画、指導方法の改善・充実に取り組むための資料となるもの

教師にとって

1 道徳科の評価の意義

2 道徳科の評価の在り方

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 道徳科の評価については、「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)【概要】」で、次

のように整理されています。

 個々の内容項目を短期間で見取るのではなく、授業を積み重ねていく中で、その子どもの特徴的な成

長を見取ることが大切です。

 時間的な大くくりという意味と、学習や内容項目全体の大くくりの2つの意味があります。

 年間や学期を通じて学習を重ねていく中で、読み物教材の登場人物に共感したり、自分なりに考えを

深めた内容を書くようになったりすることや、既習の内容と関連付けて考えている場面に着目したりす

るなど、1単位時間の授業だけでなく、児童生徒が一定の期間を経て、多面的・多角的な見方へと発展

していたり、道徳的価値の理解が深まったりしていることを見取っていくことが大切です。

 道徳性が育ったかどうかを目標に準拠した評価で見取ることはできません。また、相対評価で見取る

こともできません。

 児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子をどのように見取り記述するかは、学校の実態や児童

生徒の実態に応じて、教師の明確な意図の下、学習指導過程や指導方法の工夫と併せて適切に考える必

要があります。

■数値による評価ではなく、記述式であること。

■個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価を行うこと。

■ 個々の児童生徒との比較による評価ではなく、児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、

励ます個人内評価として行うこと。

■ 学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分自

身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること。

■道徳科の学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を一定のまとまりの中で見取ること。

■調査書に記載せず、入学者選抜の合否判定に活用することのないようにする必要があること。

大くくりなまとまりを踏まえた評価は、どのようにするのですか?

個人内評価にするために気を付けることはありますか?

 学習状況を時間的に並べて、進歩の状況を認め

るとき、「○○なりました。」

 個人の目標に向けた学習状況ごとに横並びにして、突

出したところをよさと認めるとき、「○○でした。」

縦断的 横断的

ここを見取っていく

ねらいとする

道徳性

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 記録していた学習状況をもとに記述することが大切です。教材名等を入れた具体的な記述も考えられ

ます。また、教師や他の児童生徒の発言に聞き入ったり、考えを深めようとしたりしている姿に着目す

るなど、発言や記述ではない形で表出する児童生徒の姿に着目することも重要です。

児童生徒の学習状況をどのように見取ればよいのですか?

 児童生徒の学習状況をどのように通知表に記述すればよいのですか?

学習

道徳性(内面的資質)

道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度

道徳的諸価値の

理解

自己の

(人間としての)

生き方についての

考えを深める

を基に

多面的・多角的に考える

自己を見つめる

道徳科「命の大切さについて考える」の

授業では、命はかけがえのないものであ

ることに気付きました。また、友達の発

言を聞き、「命のつながり」についても

考えを広げることができました。

正直・明朗について考える道徳科

の授業の最後に、自分が教材の登

場人物と似た経験をした時、勇気

をもって謝ったことを発表し、み

んなに拍手をされていました。

家族愛について考える学習では、

母親の思いやりに気付いた主人公

の気持ちを考え、家族の愛情に感

謝し、自分のことは自分でしよう

とする考えを発表できました。

わたしは、みんなの考えに納得でき

ません。大切な出番を奪われたのに、

相手がちょっとがんばったくらいで

は、簡単に許せないからです。

大劇場へ行って夢をかなえたいとい

う気持ちもあるけど男の子との約束

を守らなければならない気持ちが強

いと思います。ぼくも手品師なら、

男の子が喜ぶ笑顔を見たいです。

○○さんの考えはなるほどと思いま

した。2つの考えを比べたとき、ど

ちらもあると思うけれど、ぼくは自

分のことを反省したら、やっぱり許

そうと思います。

● 道徳的価値の実現することの

難しさを自分のこととして捉

え、考えようとしている学習

状況にある子のワークシート

の記述例

● 自分と違う立場や感じ方、考

え方を理解しようとしている

学習状況にある子のワーク

シートの記述例

● 読み物教材の登場人物を自分

に置き換えて考え、自分なり

にイメージして理解しようと

している学習状況にある子の

ワークシートの記述例

● 読み物教材の登場人物を自分に置

き換えて考え、自分なりに具体的

にイメージして理解しようとして

いる。

● 現在の自分自身を振り返り、自ら

の行動や考えを見直している。

● 道徳的な問題に対して自己の取り

得る行動を他者と議論する中で、

道徳的価値の理解を更に深めてい

る。

● 道徳的価値の実現することの難し

さを自分のこととして捉え、考え

ようとしている。

● 道徳的価値に関わる問題に対する

判断の根拠やそのときの心情を

様々な視点から捉え考えようとし

ている。

● 自分と違う立場や感じ方、考え方

を理解しようとしている。

● 複数の道徳的価値の対立が生じる

場面において取り得る行動を多面

的・多角的に考えようとしてい

る。

学習状況を把握する

ポイント1

 児童生徒が、道徳的価値

の理解を自分自身との関わ

りの中でどう深めているか

を見取る。

学習状況を把握する

ポイント2

 児童生徒が、一面的な見

方から多面的・多角的な見

方へと発展させているかを

見取る。

学習状況を把握する

ポイント3

学習状況を把握したら、計画的・意図的に記録しておく。

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 学習を積み重ねる中で、この子どもにとっての顕著

な学びや成長が見られたことを評価します。学習活動

において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発

展しているか、道徳的価値の理解を自分自身との関わ

りの中で深めているかといった点を具体的に記述して

いくことが大切です。

 この記述は、教育活動全体を通して行う道徳教育の

評価であり、道徳科の評価ではありません。

 この記述では、学びの深まりがわかりません。どの

ような学習の成長があったのかもわかりません。

 この記述では、どのような学びがあったのかわかり

ません。

 児童生徒の学習状況や学びの成長を大くくりとして

とらえて評価します。

…登場人物の生き方について自分と

比較しながら、自分ももっとよくな

りたいという思いを言葉で表現する

ことができました。

4月の

学習状況

11月の

学習状況

…主人公に共感しながら、自分だっ

たらどうするかを考え、よりよい生

き方について、明確にしようとする

前向きな考えを発表しました。

 道徳性の諸様相である道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度のそれぞれについて区切り、学習状況

を分析的に捉える観点別評価に基づいて見取ろうとすることは、児童生徒の人格そのものに働きかけ、

道徳性を養うことを目標とする道徳科の評価としては妥当ではありません。

学習状況を分析的に捉える観点別評価を通じて見取ってもよいのですか?

 道徳性に係る成長とは、道徳科の学習状況の成長と考えられます。道徳科の学習状況を積み上げた結

果としての成長の様子です。道徳科の学習状況に成長が見られれば、道徳性の成長につながっていくと

いう推論に立つものです。

児童生徒の道徳性に係る成長の様子をどのように評価すればよいのですか?

 道徳科の内容項目は、道徳科の指導の内容を構成するものですが、内容項目について単に知識として

観念的に理解させるだけの指導や、価値の押し付けになるような指導であってはいけません。内容項目

に含まれる道徳的諸価値の理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方に

ついての考えを深める学習を通して、「道徳性を養う」ことが道徳科の目標です。このため、道徳科の学

習状況の評価に当たっては、道徳科の学習活動に着目し、年間や学期といった一定の時間的なまとまり

の中で、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を把握する必要があります。

内容項目をどのように理解したのかを評価するのですか?

「本当の親切とは何か」を考えた学習では、

何かをしてあげることや手伝うことが親切だ

と話していた○○さんでしたが、学習を重ね

る中で、そっと見守ることも親切であると

気付くことができました。

道徳科の時間に学んだ善悪の判断について的

確に判断し行動しています。

たくさん、手を挙げて発表することができて

いました。

ワークシートにしっかり書いていました。

教材について考える中で、みんなで考えを深

め、自分との関わりで多面的・多角的な見方

をすることができました。

教材「はりきりいちねんせい」の話合いでは、

休み時間によいと思ったことができたときの

すがすがしい気持ちを思い出しみんなの前で

発表しました。小さなことでも進んで行おう

という気持ちを持つことができました。

自分とは違う考え方に触れ、多面的・多角的

に物事を考えるよさに気付いていました。教

材「ロレンゾの友達」では、「そんな風に考

えもしなかったので、見方が広がった」と発

言しました。

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 「学習指導要領の一部改正に伴う小学校、中学校及び特別支援学校・小学部・中学部における児童生徒

の学習評価及び指導要録の改善等について」通知された様式例です。ただし、平成32年の新小学校学習

指導要領全面実施までの間は、様式2の「総合所見及び指導上参考となる諸事項」の欄に、道徳科であ

ることがわかるようにして記載してもよいことになっています。

 法令上の規定はなく、各学校が独自に行っているものです。国として様式の例示等は示されません。

指導要録の様式に対応した内容を通知する形が多くなっています。

 道徳科の評価は、「一方的な見方から多面的・多角的な見方へと発展させているか」「道徳的価値の理

解を自分自身との関わりのなかで深めているか」といった大くくりな視点で、児童生徒への発言やノー

トへの記述、質問紙等から学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に見取り、とくに顕著な状況を

記述することが求められます。したがって、通年での成長を見通し、最終の学期だけの評価をするので

はなく、年間にわたって、児童生徒の道徳科における学習状況や、内面的な成長がどのように見られた

のかを記述することが大切です。「観点別評価は妥当ではない」ため、ある態度についてだけ取り出して

評価したり、特定の内容項目だけについて評価したりするのではなく、活動全体を通して、子どもの変

化を見取る必要があります。大くくりで捉えると、表記も抽象的になってしまうことも多いので、保護

者が見る通知表には具体的な表記が望ましいといえます。

 また、道徳科における学習状況や道徳性に係る成長の様子をどのように見取り、記述するかについて

は、指導方法の工夫と併せて学校内で共通理解を図る必要があります。

指導要録や通知票の記述はどうするのですか?

 道徳科の評価は、評価結果の差による判定が求められる入学者選抜とはなじまないもの

です。このため、道徳科の評価は調査書には記載せず、入学者選抜の合否判定に活用する

ことのないようにする必要があります。

指導要録について

通知表について

 この記述では、一部の態度だけ取り出

して評価しているので不十分です。

 この記述だけでは、一部の学習状況を

取り出して評価しているので不十分です。

話合いを通して、ねらいとする道徳的価値について自分自身の

課題を見つめ、自分ももっとよくなりたいという思いや願いを

言葉で表現しました。道徳科の学習を通して、普段の自分の行

動を見つめ直し、肯定的に自分のよさをとらえることができる

ようになっています。

思ったことを実際に行動に移すことの難しさについて、いつも

自分の体験と重ねて考え、それを克服しようと努力することの

大切さについて発表していました。

道徳科の学習では、主体的に自分の問題として話し合うことが

でき、自分と友だちの考え方や感じ方の違いに気付き、自分の

価値観を広げたり深めたりしていました。

「はしの上のおおかみ」の役割

演技では、おおかみになりきっ

て演じることで、友だちにやさ

しく接することの大切さを感

じ、積極的に表現しました。

積極的に友だちと話し合ってい

ました。

行動の記録各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間、その他学校生活全体にわたって認められる児童生徒の行動

道徳科の授業における評価・週1時間(35時間)

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

評価の具体的な方法

評価の方法

 道徳科における学習状況や道徳性に係る成長の様子を把握するに当たっては、児童生徒が学習活動を

通じて多面的・多角的な見方へ発展させていることや、道徳的価値の理解を自分との関わりで深めてい

ることを見取るための様々な工夫が必要です。

 評価は、記録物や役割演技等における演技自体を評価するのではなく、学習過程を通じていかに道徳

的価値の理解を深めようとしていたか、自分との関わりで考えたかなどの成長の様子を見取るためのも

のであることに留意が必要です。

評価の方法 評価の内容

ポートフォリオ評価  1年間書きためた道徳や感想文、作文、ワークシートなどの蓄積物(ポートフォリオ)から、

児童生徒一人一人の学習状況や道徳の成長の様子を見取る。

パフォーマンス評価  一定の課題を設定し、学習の結果、その課題解決に対してどのような状況に至ったかを評価

する。問題解決的な学習に有効である。また、解決にどの程度達成できているかを判断する指

標は、ルーブリックと呼ばれる。

[ルーブリック]

 課題を解決していると考えられる状態を最終段階にあるとし、そこに至るまでの道筋を数段階に分け

て設定する。学習後の児童生徒の実態が、課題に対しそれぞれどういう段階にあるかがルーブリックか

ら選択できるので、「達成度評価」の側面もある。ただし、課題解決の方法・経緯やあり方が道徳の場

合は児童生徒の個性・環境によって異なるため、各教科の評価とは異質なものであり、発表や発言など

の学習態度や方法などで活用できる。

エピソード評価  児童生徒の行動や発言の様子を日常的に見取った特記事項を教師のノートにエピソードとし

て記録し蓄積した結果を分析して評価する。児童生徒の一人一人の長所が見えやすくなる。

チームによる評価  道徳科の評価は、担任が行うが、信頼性を高めるには、複数の人で見取っていくことも必要

になる。児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子をより多面的・多角的に把握すること

ができ、評価の改善の観点からも有効である。いろいろな場面の児童生徒の情報を交換して、

担任が集約し評価に役立てることも必要である。指導のねらいに即して、校長や教頭などの参

加や、他の教師と協力的に授業を行うと、管理職をはじめ、複数の教師が一つのクラスの授業

を参観することが可能となり、学級担任は、普段の授業とは違う角度から児童生徒の新たな一

面を発見することができる。

3 評価をするための方策

 児童生徒の道徳性に係る様子のエピソードを集約する目的で使用する。児童生徒ごとのページの作成や、見取った場面ごとに区分のある紙面にすれば、一人一人の傾向を見出しやすく、その背景の分析にも役立つ。これらをエピソードとして蓄積することで、個々の児童生徒のよさと課題が見え、児童生徒の努力や成長を励ます材料となる。

 授業中の児童生徒の発言や活動から学習状況や道徳性に係る成長の様子を評価することができる。具体的には、授業に対する取組の様子やグループやクラス全体での話合いにおける発言内容から評価していく。「一方的な見方から、多面的・多角的な見方へと展開している」「道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているか」などについて分析していく。 また、授業中の学習活動を評価する方法として、発言、挙手、ノート、ワークシートへの記入の状況、役割演技等の動作化を伴う表現活動への参加の意欲、ペア・グループ・クラス全体での話合いの態度や意欲なども学習状況を把握する項目として考える。

エピソード記録 授業記録

A児B児C児D児E児

縦列に児童生徒名、横列に道

徳科の時間などのエピソード

を記録していく。

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 評価の妥当性や信頼性を確保するために、チームで評価し、複数で個々の児童生徒の成長を見取ることも大切である。評価に対して共通認識を持つ機会となり、評価活動を学校として組織的・計画的に行うことにつながる。また、チームによる授業づくりは、教師の授業力を向上させるだけでなく、評価力を高めることにつながる。

 同じ学習者の立場である子ども同士が道徳科で学んだことの内容や状況、価値等についての互いの表現物等から感じられることをもとに評価しようとする活動である。自分とは違う見方や考え方と触れる機会となる。同じ学習者の立場の友達から評価が得られるが、教師による子ども同士の信頼関係への配慮が必要である。

 子ども自身が、自らの学習活動を振り返る活動である。道徳科の授業における学習の姿や、評価する時点における自らの変容や、自己の中に得た価値等について振り返る。教師の評価との違いは、授業改善に生かすことができる。 継続的に取り組むことで、子どもの評価力が高まる。

児童生徒の自己評価は…

児童生徒の相互評価は…

教師による評価は…

 毎時間の授業の振り返りや学期末などにおい

て、ICT機器を効果的に活用することもできる。

例えば、タブレットPCに毎時間の振り返りを入力

し、個々の記録の変容を見取ることができる。

 一定のテーマで、児童生徒の意識調査や、考え

方の傾向の分析をするために、選択式回答と記述

式回答の両方を備えたアンケートを機に応じて行

う。選択式回答は統計的な処理(全体に占める割

合を求める)に向き、記述式回答は集団的な傾向

と児童生徒個々に固有の意識を見取ることができ

る。

 発言に消極的な児童生徒、自分の思いや考えを適切に表現できない児童生徒に有効である。授業後にタイムリーに行うことが大切である。

 道徳科の授業において、教材の内容や登場人物に自我関与させる目的での利用を中心とし、年間のポートフォリオとして、「道徳ノート」とともに活用したい。 議論を活発にし、思考を深める中心発問場面に加え、自分との関わりから考えて記述する内容を吟味する。教材の特徴に応じて問いかけを変えるとともに、絵や手紙、吹き出しに書かせるなど、多様な工夫をする。

 児童生徒にとって、一年間の自身の成長の軌跡が見える。年間通して利用できるものである。・ 自己評価の欄を設け、授業に対する印象や自分

自身の取り組み状況(意欲の側面)が記録として残るようにする。

・ 授業を通して、児童生徒が考えたことや学んだこと、心に残ったことなどを記述する。友達の発言から影響を受けたことや自分の考えが変わったこと、新しく発見したことなどに関する内容を記述させることが望ましい。

・ 家庭に持ち帰り話し合ったことなどを書いてもらうなど、相互評価としても有効に活用できる。

 道徳科のワークシートや事前・事後学習、各教科等の道徳教育に関する学習をファイルに蓄積することで、児童生徒が、道徳的な見方や考え方の学びを継続的に見取ることができる。

授業後の振り返りの例

学期末や1年間の振り返りの例

アンケートや振り返り 聞き取りやインタビュー

ワークシート

道徳ノート

道徳ファイル

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資料 

通知表の記述文例

「わたしならこう評価する」

道徳科の実施に向けた

授業づくり

道徳科の評価

「特別の教科 

道徳」とは

 道徳科の評価を推進するに当たっては、組織的・計画的な取組の蓄積と定着が、道徳科の評価の妥当

性、信頼性等の担保につながります。

 例えば、学年ごとに評価のために集める資料や評価方法等を明確にしておくことや、評価結果につい

て教師間で検討し評価の進め方などについて共通理解を図ること、評価に関する実践事例を蓄積し共有

することなどが重要です。校長および道徳教育推進教師のリーダーシップの下、学校として組織的・計

画的に取り組むことが必要です。校務分掌の道徳部会や学年会あるいは校内研修会等で、道徳科の指導

記録を分析し検討するなどして、指導の改善に生かすとともに、日常的に授業を交流し合い、全教師の

共通理解のもとに評価を行いましょう。

 例えば、他者との社会的関係の形成に困難がある児童生徒の場合であれば、相手の気持ちを想像する

ことが苦手で字義通りの解釈をしてしまうことがあることや、暗黙のルールや一般的な常識が理解でき

ないことがあることなど困難さの状況を十分に理解することが大切です。その上で、例えば、他者の心

情を理解するために役割を交代して動作化や劇化をしたり、ルールを明文化したりするなど、学習過程

において想定される困難さに対する指導上の工夫が必要です。

 評価を行うに当たっても、困難さの状況ごとの配慮を踏まえることが必要です。前述のような配慮を

伴った指導を行った結果として、相手の意見を取り入れつつ自分の考えを深めているかなど、児童が多

面的・多角的な見方へ発展させたり、道徳的価値を自分のこととして捉えたりしているかといったこと

を丁寧に見取る必要があります。

 校長や教頭などの授業参加や、他の教師との協力的な指導、保護者や地域の人々、各分野の専門家等

の授業参加などに際して、学級担任以外からの児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子について

意見や所感を得るなど、児童生徒を多面的・多角的に評価したり、教師自身の評価に関わる力量を高め

たりすることも大切です。

 これらの児童生徒の多くは、外国での生活や異文化に触れてきた経験などを通して、我が国の社会と

は異なる言語や生活習慣、行動様式を身に付けていると考えられます。また、日本語の理解が不十分な

ために、他の児童生徒と意見を伝え合うことなどが難しかったりすることも考えられます。それぞれの

児童生徒の置かれている状況に配慮した指導を行いつつ、その結果として、児童生徒が多面的・多角的

な見方へと発展させたり、道徳的価値を自分のこととして捉えたりしているかといったことを、丁寧に

見取ることが求められます。その際、日本語を使って十分に表現することが困難な児童生徒については、

発言や記述以外の形で見られる様々な姿に着目するなど、より配慮した対応が求められます。

評価は個々の教師が個人として行うのではなく、学校として組織的・計画的に行う

ことが大切です。具体的にどのようなことがありますか。

児童生徒を多面的・多角的に評価したり、教師自身の評価に関わる力量を高めたり

するために、どのようなことができますか。

発達障害等のある児童生徒に対する指導や評価を行う上で、必要な配慮とはどんな

ことですか。

外国につながる児童生徒について、一人一人の児童生徒の状況に応じて、どのよう

に配慮すればよいですか。

4 評価のための体制づくり

5  発達障害等のある児童生徒や海外から帰国した児童生徒、日本語習

得に困難のある児童生徒等に対する配慮