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日言語文化研究会論集 2009 年第 5 号 【特定課題研究報告】 学習者が話せるようになる授業への改善の試み ―ペルー日系人協会日本語・語学センターの初級を例に― 要旨 項目積み上げ式の授業が行てい筆者の所属機関の初級段階においては、(1)学習目 標が意識したものになっていないこと、(2)意味重視した動取 入ていないこと、(3)従の授業構成が習得に結びつきにくいことといった問題点が見 。研究では、この問題点に対して(1)意識した学習目標 設定すこと、(2)意味重視した動取入こと、(3)第二言語の習得過程に配 慮した新しい授業構成採用すことといった改善案作成した。具体的に(1)と(2)は 、(3)では談話の学習と Focus on Form の考え方採用した。6 日間の実習授 業行った結果、授業の前後で学習者の発話、特に談話の構成に向上が見、実習の授業 が学習者と教師の双方か肯定的に受け止めたことか、改善案に一定の成果と実現可 能性があことが明かになった。 〔〕項目積み上げ式、学習目標、Focus on Form、、授業の構成 1. 研究背景 1.1 所属機関の概要及び問題意識 「日秘文化会」は 1967 年に日系人協会(APJ)にって設立さて以、 において、日文化及機関であと同に日系人社会の中心となった。日秘文化会では 設立か、日語のが開か、継承語としての日語教育が盛に行てきた。 70 年代は、学習者の殆どが、語母語とす日系3 世で構成さていたが、70 年代 後半か80 年代にかけて、日語母語話者に対す国語教育に近い意識か、国語として の日語教育へとった。90 年代以降、現在まで主にと直接折 衷した教授に教育が行てい。 現在、日系人協会の日語語学(以下、文化会。日系人社会で く知てい呼び名)に在籍す学習者は非日系人が圧倒的にい。文化会には、年 齢層、日語にって様々なが設けていて、「児童」「集中」 「通」「土日成人」「会話」などのうながあ。学習者の年 齢層も児童か成人まで様々であ。また、初級か上級までの幅広いの学習者が日 語学でい。こまで主教として使用さた教科は、日の国語の教科か、 『日語初歩』、『新日語の基礎』、と遷してきた。今は『みなの日語』が使用さて

学習者が話せるようになる授業への改善の ...jlc/jlc/ronshu/2009/Jose.pdf · ―ペルー日系人協会日本語・語学センターの初級を例に― メプヤケンデメ,ビコン゚ルダッア

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日本言語文化研究会論集 2009 年第 5号 【特定課題研究報告】

学習者が話せるようになる授業への改善の試み

―ペルー日系人協会日本語・語学センターの初級を例に―

ラミレス・ハラ,ホセ・アントニオ

要旨

項目積み上げ式の授業が行われている筆者の所属機関の初級段階においては、(1)学習目

標がコミュニケーションを意識したものになっていないこと、(2)意味を重視した活動を取

り入れていないこと、(3)従来の授業構成が習得に結びつきにくいことといった問題点が見

られる。本研究では、これらの問題点に対して(1)コミュニケーションを意識した学習目標

を設定すること、(2)意味を重視した活動を取り入れること、(3)第二言語の習得過程に配

慮した新しい授業構成を採用することといった改善案を作成した。具体的に(1)と(2)は

ロールプレイ、(3)では談話の学習と Focus on Form の考え方を採用した。6 日間の実習授

業を行った結果、授業の前後で学習者の発話、特に談話の構成に向上が見られ、実習の授業

が学習者と教師の双方から肯定的に受け止められたことから、改善案に一定の成果と実現可

能性があることが明らかになった。

〔キーワード〕項目積み上げ式、学習目標、Focus on Form、ロールプレイ、授業の構成

1. 研究背景

1.1 所属機関の概要及び問題意識

「日秘文化会館」は1967年にペルー日系人協会(APJ)によって設立されて以来、ペルー

において、日本文化普及機関であると同時に日系人社会の中心となった。日秘文化会館では

設立時から、日本語のコースが開かれ、継承語としての日本語教育が盛んに行われてきた。

70年代は、学習者の殆どが、スペイン語を母語とする日系3世で構成されていたが、70年代

後半から80年代にかけて、日本語母語話者に対する国語教育に近い意識から、外国語として

の日本語教育へと変わった。90年代以降、現在まで主にオーディオリンガル法と直接法を折

衷した教授法による教育が行われている。

現在、ペルー日系人協会の日本語・語学センター(以下、文化会館。ペルー日系人社会で

よく知られている呼び名)に在籍する学習者は非日系人が圧倒的に多い。文化会館には、年

齢層、日本語レベルによって様々なコースが設けられていて、「児童コース」「集中コース」

「普通コース」「土曜日成人コース」「会話クラブ」などのようなコースがある。学習者の年

齢層も児童から成人まで様々である。また、初級から上級までの幅広いレベルの学習者が日

本語を学んでいる。これまで主教材として使用された教科書は、日本の国語の教科書から、

『日本語初歩』、『新日本語の基礎』、と変遷してきた。今は『みんなの日本語』が使用されて

いる。文化会館はペルーにおいて日系人学校を除き、最も規模が大きい日本語教育機関であ

り、学習者数は毎月平均約500名、在籍している教師数は約40名となっている。

本課題研究では、文化会館の「集中コース」の初級レベルを研究対象とする。理由は次の

3点である。①筆者が主に担当しているコースで、問題意識を強く感じているコースである。

②最も多くの学習者が在学しており、中心的なコースとみなされている。③「集中コース」

で使用されているシラバス及び教案は他のコースでも使用しているため、他のコースへの影

響力が大きい。

「集中コース」の初級レベルの学習期間は、18学期となっており、1学期は4週間、毎日

月曜日から金曜日まで1コマ90分の授業で構成されている。『みんなの日本語』の1課を6

コマかけて教えることとなっており、1学期で3課ずつ進めていく。『みんなの日本語』の『本

冊』『文法解説』で提出されている文型・新出語彙をどの順番、どの方法、どの練習で教える

かは、『教え方の手引き』を参考に、文化会館で作成された教案にまとめられている。教案作

成の主な狙いは、文化会館に属している数十人もの日本語教師が日々の授業を計画・実践す

る際に、同一の内容を同一の順番、方法で教えることを可能にするためである。

教案の導入以来、所属機関の教師は、日本語でのインターアクションの場や日常生活の場

において、既習の学習項目を運用できるようになることを学習者に期待している。しかし、

実際には授業中『みんなの日本語』の「練習 C」や「会話ビデオ」の練習で学習者が学習項

目を運用していても、後日、同じ項目を含めた質問、指示、会話の場面を与えると、学習者

は十分に理解や使用が出来ない。このような場面に何度も遭遇することを通して、筆者は、

学習者が習ったことを十分に使えるようになっていないという問題点に気づいた。特に、文

法知識を中心的に評価する各学期の期末試験に合格しても、『みんなの日本語Ⅱ』を終わって

も、どれだけその内容が使えるようになっているのか疑問に思うようになった。

1.2 現状分析

上記の問題意識を明確にするために、学習者のニーズや現在使われている教案に対する教

師の評価及び授業の現状を把握するための調査を行った。調査の概要及びその結果は下記の

とおりである。

(A) 学習者を対象としたアンケート調査

回答者は、「集中コース」の初級レベルでの様々な段階で日本語を勉強している日本語学習

者64名である。日本語の授業時間内に担任教師が学習者にアンケート用紙を配り、スペイン

語で書かれた24の質問項目に対しスペイン語で回答してもらった。

アンケートの結果から、学習者が主に次の学習目的を持っていることがわかった。①日本

での就職(出稼ぎ)、②日本での留学(研修・奨学金制度を利用)、③日本文化を知る(アニ

メ・若者文化・伝統的な文化を含む)。また、学習者は会話能力を身に付けることを目標にし

ているということもわかった。

(B) 教師を対象としたアンケート調査

回答者は「集中コース」で教えている日本語教師13名である(日本人もペルー人も含まれ

る)。「集中コース」の様々なレベルで教えている教師にアンケート用紙を配り、日本語で書

かれた30の質問項目に対し日本語で回答してもらった。

アンケートの結果から、教師は、現在取り入れている教案が文法中心になっており、この

教案で教えた学習者があまり話せるようになっていないという認識を持っていることがわか

った。

(C) 教案の分析

文化会館の教案は1.1で説明したものを指すが、その教案を分析した結果、次のような問

題点が明らかになった。

学習目標は、実際のコミュニケーションを意識したものになっていない。教案の流れと構

成が、どんな段階を経て学習目標に到達するか、明確に述べられていない。

教案で提案されている練習は、文法重視のものが殆どである。様々な練習の目的・方法や

期待できる効果が明確に述べられていない。また、応用練習と言える活動が見られない。こ

こで、「応用練習」が指すものは、実際のコミュニケーションにできるだけ近い場面や状況を

設定し、その中で学習した文型を使う練習である。また、扱う場面や役割、課題が現実のも

のに近いという点と、活動の過程で、学習者が目的を持ってコミュニケーションを行い、伝

える内容と表現を自分で考え、学習者が自分の力でコミュニケーションを達成できる練習で

ある(阿部・中村 2007: 37)。

(D) 授業ビデオ分析

2008年8月に筆者が『みんなの日本語』の39課の教案に基づいて行った授業を録画した。

そのビデオを観察した結果、次のような問題点が明らかになった。授業は、言語形式を学習

するための学習内容と教室活動が中心となっている。学習者がその日の学習項目をコミュニ

ケーションの場で応用できる練習は見られない。学習者がその日の学習内容が使えるように

なったかどうかを見るための活動を取り入れていない。学習者は、声に出して、リピートや

代入練習を行っているが、意味を考えなくてもできる活動になっている。教師が新出学習項

目を導入した後、文法的な説明に移り、次いで、文型や談話の形の入れ替え練習などを行う

授業の流れになっているが、意味を重視した活動がないこと、学習者が主体的に学ぶことが

少ないといったことから、このような授業構成は習得に結びつきにくいと考えられる。

(A)~(D)の分析の結果から、このコースの全体的な問題として以下の3点が浮かび上

がった。

(1)学習目標がコミュニケーションを意識したものになっていないこと

(2)意味を重視した活動を取り入れていないこと

(3)授業の構成が習得に結びつきにくいこと

2. 研究の目的

本研究の目的は、現状分析で見られた3つの問題点を解決し、学習者が日本語が話せるよ

うになるための授業の方法を提案することである。学習者が会話能力を身に付けたいと考え

ているものの、現在の授業のもとでは、話せるようにならないという問題点を解決し、学習

者が話せるようになるための授業の改善案を作成することである。

本研究では、学習者が話せるようになることを次のように考える。話せるようになるとは、

「学習者が意思伝達の目的を持ちながら、特定の状況・場面、人間関係のもとで、暗記した

発話ではなく、自ら思考したことや言いたいことをまとまった談話の形で発話できること」

である。

木田・小玉・長坂(2007: 5-11)によると、話す行為には目的があり、話し手と聞き手の

コミュニケーションには、情報差、選択権、反応という要素があるとされている。

話せるようになることはコミュニケーション能力と密接な関係にある。その点に関して、

岡崎・岡崎(2001: 82)は次のように述べている。

意味のある会話のできる力は、文法についての知識だけで構成されているのではない。

他に、適切な状況で適切なことが言える力、会話を切り出したり会話に入ったり会話を

終わらせたり、あるいは一貫性を持って話が展開できる力、また、自分の言いたいこと

を効果的に伝えたり、また上手に伝えられない場合には適当なストラテジーを使って切

り抜けたりする力なども文法知識に勝るとも劣らないくらい重要である。

また、Communicative Competence(伝達能力)に関して、Canale(1983: 6-14)は4つの

要素として、文法能力(grammatical competence)、社会言語能力(socio-linguistic

competence)、談話能力(discourse competence)、伝達方略能力(strategic competence)

を挙げている。

1.2 で述べた現状分析から、本研究では、以下の 3 点を軸に授業の改善案を作成し、実習

授業を行うことを通して、その成果とコースへの導入可能性を検討する。

(1)コミュニケーションを意識した学習目標を設定する。

(2)意味を重視した活動を取り入れる。

(3)第二言語の習得過程に配慮した新しい授業構成を採用する。

3. 話せるようになるための授業への改善案

1.2で述べた問題点(1)学習目標がコミュニケーションを意識したものになっていないこ

と、(2)意味を重視した活動を取り入れていないこと、(3)授業構成は習得に結びつきにく

いことといった点を踏まえて、下記の改善案を作成する。

3.1 コミュニケーションを意識した学習目標

1.2 の現状分析では、従来の学習目標が、その課の言語形式が使えるようになることを目

標としていて、実際のコミュニケーションを意識したものになっていないという問題点を指

摘した。

文化会館では、日本語コースが開講されてから現在に至るまで、学習者のニーズ調査を行

ったことがなく、現在では『みんなの日本語 教え方の手引き』(2001)が提案している学習

目標をそのまま教案に採用している。例えば、39 課を例に取り上げると、「ある事柄によっ

て生じた感情または事態を『~て/で』を用いてその原因とともに表現することができる。

出来事を原因(自然災害、事故など)とともに描写することができる。『~ので』を用いて、

丁寧に理由を述べたり、弁解したり、事情を説明したりすることができる」となっている。

この課の学習項目は、理由の「~て(動詞)、~」、「~くて(い形容詞)、~/~で(な形容

詞)、~」、「~で(名詞)、~」、「~ので、~」である。教案ではそれらの項目を5日間に配

分して、それぞれの日に、学習項目を教えることを目標にしている。上記の39課の学習項目

として書かれていることには、意思伝達の目的、状況・場面、人間関係などが配慮されてい

ないことがわかる。例えば、「出来事を原因とともに描写することができる」と記述されてい

るが、誰がどんな場面でその言語行動を行うか述べられていない。また、「『ので』を使って、

丁寧に理由を述べたり、弁解したり、事情を説明したり…」とあるが、どんな場面でその言

語行動が行われるか明確に述べられていない。

また、その学習目標は必ずしも学習者のニーズを反映しているとは限らない。従って、教

案の学習目標を見直し、学習者のニーズに配慮した学習目標を設定する必要がある。久保田

(2006: 16)では、「学習者のレディネスやニーズを知ることは、適切な学習内容、適切な教

授法を決めるうえで重要な要素となっていく。そして、それだけではなく、学習者の日本語

教育への『動機』や『学習意欲』がどこにあるのか、どうすればもっと引き出せるのかを知

る重要な手がかりともなる」と述べている。

文化会館の学習者のニーズは、1.2 で述べたように、現状分析として行った学習者対象の

アンケート調査で、日本での就職(出稼ぎ)、日本での留学という順であること、また、学習

者は、会話能力を身に付けることを目標にしていることがわかった。

初級段階で、具体的な学習目標を考える際には、文法知識を実際のコミュニケーションで

の使用に結びつけるような目標が必要となる。その点に関しては、久保田(2006: 31)が「で

きれば学習する文型、語彙、漢字の種類と数など知識面の目標だけではなく、それらの知識

を使ってコミュニケーション活動、言語行動として設定」することの大切さを説明している。

そこで、本研究では『みんなの日本語』39課の学習項目を取り上げて、学習者のニーズに

配慮したコミュニケーションを意識した学習目標を設定することにする。39課を取り上げる

理由は、1.2の現状分析で行ったビデオ分析の内容が39課だったからである。この課の学習

目標は、学習項目の機能を元に、日本での就職や留学を目的としている学習者が経験する可

能性のある場面で、行うであろう言語行動を 5 日間に配分して設定した。具体的には、1 日

目は「理由を言って謝ることができるようになる」、2日目は「理由を言って断ることができ

るようになる」、3日目は「事情を説明して、依頼ができるようになる」などのように設定し

た(5日間全ての学習目標は4章の表3を参照)。

3.2 意味重視の活動の導入

同じく1.2現状分析で述べたように問題点の一つとして、教案に基づいた従来の授業は、

言語形式中心の授業形態となっていることがある。従来の授業は表1のような構成になって

いる。

表1. 従来の授業の構成

活動活動活動活動のののの流流流流れれれれ 内容内容内容内容

1.復習 前回の授業で習ったことを使って教師が質問し、学習者が答える。

① 場面の中で新出の文型を紹介する。 2.文型の導入

② 日本語かスペイン語による文法の説明を通して新出文型の意味・使い方の

確認をする。

3.文単位の基本練習 絵、文字、口頭の指示をキューとし、変換・代入練習をする(練習A、練習B)。

4.談話単位の基本練習 談話を聞かせる。一部を代入練習した後、その部分を自由に考えさせる(練習C)。

①活動集からアクティビティ・ゲームを取り入れる。 5.展開

②その課のまとめとしてビデオ、聴解、標準問題集からの問題を行う。

6.漢字の学習 毎日最後の10分~15分、漢字の学習時間として割り当てられる。

*表内の1~4までは、1文型の学習の流れだが、必ずしも1コマで行うことではなく、時には1コマ以上かか

ったり、1コマかからなかったりする場合もある。5.はその課のまとめとなっている。

表1を見ると、学習者の参加の形態は、リピートしたり、暗記したものを発話したり、と

いうように受身的である。「4.談話単位の基本練習」では、『みんなの日本語』の練習Cを行

い、その方法の一つとして、談話のモデルのもとで代入練習を行った後、一部の内容を自由

に考えるように教師が指示することがあるが、学習者の発話を引き出すためには、教師が必

死になって介入しなければならないことが多い。このような言語形式中心の授業構成なので、

いきなり学習者に創造的な発話を求めることに無理があると思われる。学習者の受身的な参

加と言語形式中心の授業では、学習者が話したい、或いは話そうという意欲が育たないので

はないだろうか。これが、学習者が話せるようにならない主な原因だと考えている。

表1の2~5の間に、文を書かせる作業を取り入れる教師がいる。また、表1の「5.展開」

の段階で、ゲーム的なアクティビティを行っている。これは意味内容を考える練習だが、2

章で説明した伝達の目的、話し手と聞き手のコミュニケーション上の情報差、選択権、反応

という要素が殆ど見られない。この3要素のうちのどれかがあっても、そのような練習は構

成の一番最後の活動として位置付けられているため、時間の関係で省略されることも稀では

ない。

従来の授業のような構成は、項目積み上げ式と言われるが、小山(2002:Ⅵ)はこの項目積

み上げ式の授業の問題に関して、基本的な文法や語彙は既に学習したのにいざ話したり書い

たりするとなると、なかなかうまく使いこなせない、つまり、知識と運用能力のギャップと

いう問題点を指摘している。その原因として、項目積み上げ式の授業では、自然な思考の流

れとは異なる方向、つまり、「表現形式から伝達内容へ」という思考の流れをとっているから

だと説明している。即ち、授業で重視すべきなのは実際のコミュニケーション場面で求めら

れる思考の流れであり、「伝達内容から表現形式へ」という授業の形態にしなければ、知識と

運用能力のギャップが埋められないということである。この「伝達内容から」という考え方

が本研究での意味重視につながるものになる。

そこで、本研究では「意味を重視した活動の導入」として、ロールプレイ(以下、RP)を取

り入れる。RPを採用した理由は、学習者が発話する際、表現形式より伝達内容を先行して処

理する活動だからである。また、「話せるようになりたい」という学習者のニーズに合った活

動であると考えたためである。RPに期待できる効果として、自分の役割と状況に応じて会話

を始め、相手とやり取りし、会話を終えるために必要な談話能力を育成すること、話す相手

や場面に合わせてコミュニケーションのとり方を調整するという社会言語能力を養うことが

木田・小玉・長坂(2007: 63)で挙げられている。

3.3 第二言語の習得過程に配慮した新しい授業構成

1.2の従来の授業の問題点を踏まえて、本研究では第二言語習得研究の成果を参考にして、

新しい授業構成を提案する。

第二言語習得研究では様々な理論やモデルが検討されているが(小柳 2004:144-146)、一

般的に、次のような過程で習得が起こると考えられている。学習者は、意味あるコンテクス

トの中でインプットを受けた際、未知の言語形式に注意を向けることがある。未知の言語形

式に気づいて、理解されたインプットのみがインテイクされる。学習者は、自らの中間言語

と目標言語を比べながら仮説検証をしていき、正しいと確認された仮説は文法知識として中

間言語の中に統合される。また、必要に応じて既存の中間言語の文法知識を修正し、再構築

する。伝達場面における言語産出をアウトプットというが、誤った文法知識が形成されてい

た場合は、相手からフィードバックを得て、誤った知識が修正されることがある。このよう

なプロセスを繰り返すことで習得が進む。

本研究では、第二言語の習得過程に配慮するとは、上記のような過程を学習の場で再現、

促進することだと考える。具体的には、新しい授業の構成を考える中で、第二言語習得研究

の中のFocus on Form(以下、FonF)の考え方を採用する。

FonFとは、意味のある伝達活動を通して、適宜言語形式に注意を向けるように、教師もし

くは教材によって操作する指導テクニックである(小柳2004: 121-139)。FonFでは、言語形

式を考える前に意味活動を行うことや学習者に言語形式について気づきや発見の機会を与え

ることを重視しており、これらを反映させて、表2のような新しい授業構成を考案した。

表2. 第二言語の習得に配慮した新しい授業の構成

活動活動活動活動 内容内容内容内容

1.学習目標の提示 授業の学習目標を紹介する。学習意欲を促がす。

2.ロールプレイ1 授業の学習目標を取り入れたRPを行う。形式より内容を先行して処理させる。

また、これまで、習った日本語の知識を活性化させ、まだ不足していることを

意識させる。

3.モデル会話の聴解 ① RP1の内容に沿ったモデル会話を聞かせ、全体の意味の確認を行う。

②新出の言語形式に焦点を当てて聞かせる。

4.文法規則の意識化 新出の言語形式を既習の知識と照合し、その働きや規則を学習者に意識・発見

させる。

5.パターン練習 文字や絵をキューにして、その日の学習項目を使った例文の変換・代入練習を

行う。前半は形、後半は意味も含めて処理しながら、発話させる。

6.談話の学習 ①モデル会話を発話ごとに切り取った紙を与え、もとの会話を再生させる。

②モデル会話を聞かせ、①で完成したものと比較し、同じようにできたかどう

か確認させる。

③文字化した会話を見せ、細かくそれぞれの発話の働きについて考えさせる。

7.ロールプレイ2 ①学習目標を取り入れたRPを行う。RP1と同じものもあれば、違った要素が入

ったRPもある。

②RP後に必ず学習者と教師でフィードバックを行う。誤用がある場合、まず学

習者に気づかせ、もう一回の発話の機会を与える。自分で直せない場合、他の

学習者が直す。どちらも出来ない場合、教師が正解(例)を与える。

表2の中で特にFonFの考え方と関係が深い活動について、以下にまとめる。

(1)2つのロールプレイ:RPは、意味を先行して処理する活動である。

山内(2005: 132-138)は、表現や文法などの言語形式を教える前に、学習者にタスク(RP)

を与え、言語的挫折を起こす「タスク先行型ロールプレイ」を提唱している。

本研究では、言語形式以前に意味活動に従事するタスクをデザインするというFonFの考え

方を取り入れて、授業開始時に RP を行い、さらに言語形式を学習した後で、同様の目的の

RPを再度行うことにした。実際のコミュニケーションの場において、まず、伝えたいと思う

事柄があって、次いで、それを表現するために適切な言語形式を選択するというプロセスが

知識と運用能力のギャップを埋めるとされているからである。また、学習者が自分でやって

みること、そして、その結果、「自分に欠けているものは何か」、「どうすればもっとよくなる

か」といった点に自分で気づくことが重要である (小山2002: Ⅷ)。

RP2 は、上記の理由に加えて、その日の学習目標をどれだけ出来るようになったかを確認

するための活動でもある。そして、学習者が自分のアウトプットをもう一度振り返る機会を

与える。ロールプレイをした後、必ず、学習者と教師でフィードバックを行い、学習者がRP2

で発話したものを自分達で、振り返り、モニターする。

(2)モデル会話の聴解:FonFの気づきや発見の機会を与えるために、RP1で学習者が発話し

たものと、同じタスクのモデル会話を聞かせる。自然なコミュニケーションの場の中に、そ

の日の学習項目に気づきの機会を与える活動である。

(3)談話の学習:会話の流れの中でそれぞれの発話の機能を考える作業を通して、学習者が

「観察する」「発見する」というFonFの考え方を授業の中に取り入れる。

なお、RP1とRP2の比較によって、(1)~(3)を中心とした新しい授業構成の効果を見る。

4. 実習授業の概要

3章で考案した改善案の効果及びコースへの導入の実現可能性を検討するために、2009年

4月に実習授業を行った。その概要を以下に述べる。

4.1 実習授業の対象者

1.1 で述べたように、文化会館の中心的なコースである「集中コース」の初級レベルの学

習者を本研究の対象とする。対象になったクラスは、実習のための特別なクラスではなく、

第14学期(「集中コース」の14ヶ月目に当たるレベルで、『みんなの日本語 初級Ⅱ』の38

課~40課を学習する学期)を受講している学習者である。

クラス編成は5名で、男性が4名、女性が1名である。中学生が2名と社会人が3名で構

成され、平均年齢は19歳である。4名は最初から文化会館で学習してきたが、1名は、編入

生である。日本語学習目的は、就職(2人)や留学(2人)となっている(もう1人は不明)。

4.2 実習授業の内容

実習授業の内容は、1.2のビデオ分析で行った内容と同じ39課である。その理由は改善案

を取り入れることで、従来の授業と実習授業の学習目標や授業構成がどう変化したかを比較

するためである。

授業時間は現在使用中の教案で1課に当てられているコマ数の6コマ(1コマは90分)と

した。但し、6 日目はまとめと復習を行うことになっているので、今回の実習も同じように

内容を割り当てた。5日間の授業は、3.1で述べたように、5日間それぞれ、コミュニケーシ

ョンを意識した学習目標を立てた(表3)。

表3. 実習授業の学習目標及び学習項目

学習目標学習目標学習目標学習目標 学習項目学習項目学習項目学習項目

1日目 理由を言って、謝ることができるようになる。 理由の「~て」(動詞)

2日目 理由を言って、断ることができるようになる。 理由の「~くて(い形容詞)、

~/~で(な形容詞)、~」

3日目 事情を説明して、依頼ができるようになる。 「ので」

4日目 聞いたニュース、噂を話題にし、その感想が

述べられるようになる。

理由の「~で(名詞)、~」;

理由の「~て」(動詞);「ので」

5日目 事情を説明して、許可を求めることができるようになる。 「ので」

上記の学習目標の達成を実現するために3.2及び3.3で述べた意味を重視した活動を取り

入れた新しい授業構成のもとで、実習を行った。

4.3 実習授業で使用した教材

教科書は例文や会話のモデルを考える上で参考にしたが、実習で設定した学習目標に合っ

ていない例文や練習は使用しなかった。不足していると思った例文や練習は筆者が作成した

ものを母語話者と相談した上で取り入れた。また、従来の教案でこの課に当てられた新出語

彙はすべてカバーした。また、学習目標に沿った文を書くための宿題用タスクシートも作成

した。

以下の表4に例として1日目に使用した教材を示し、その一部を添付資料1に記載した。

表4. 1日の授業構成に沿って使用した教材の一覧

授業授業授業授業のののの活動活動活動活動のののの構成構成構成構成 使用使用使用使用したしたしたした教材教材教材教材

1.学習目標の提示 口頭またはPPTで提示

2.ロールプレイ1 ロールカード(添付資料1:1-1参照)

3.モデル会話の聴解

①学習目標のもとにスクリプトを作成し、母語話者に録音を依頼したもの

(添付資料1:1-2参照)

②言語形式への気づきを促すために、「聞いて書きましょう」の用紙を

用意した(資料1:1-3参照)

4.文法規則の意識化 PPTによる例文の提示(添付資料1:1-4参照)

5.パターン練習 文字や絵をキューにしたものをPPTにより与える(添付資料1:1-5参照)

6.談話の学習 ①会話を発話ごとに切った紙

②モデル会話のスクリプトを作成し、録音を母語話者に依頼したもの

(添付資料1:1-6参照)

③会話の流れを意識化させるために、スクリプトをPTTで提示する

(添付資料1:1-6)。

7.ロールプレイ2 ロールカード(添付資料1:1-7参照)

4.4 収集データ

(1)授業ビデオ:6日間(90分×6回)の実習授業をすべて録画したものである。

(2)学習者を対象としたアンケート:実習授業の5日後に学習者全員を対象としたアンケ

ートを実施した。担当教師の許可を得て、授業時間の最後の15分間で、16の質問項目がス

ペイン語で書かれたアンケート用紙を配り、スペイン語で記入後、回収した。

(3) 教師を対象としたアンケート: 実習授業の11日後に「集中コース」を教えている教師

を中心に集まってもらい、実習授業の説明をしてから、授業を収録したDVDの主要な部分を

見せた。このDVDは、実習授業で改善案として取り入れた活動のポイント(RP1、モデル会話

の聴解、文法の意識化、パターン練習、談話の学習、RP2)をピックアップしたものが1時間

程度にまとめられている。時間の関係で、その場でアンケートの記入が出来なかったが、後

で電子メールで回収した。日本語で書かれた16の質問項目に対して日本語で回答をしてもら

った。回答者は14名だった。

5. 実習授業の結果とデータ分析

改善案の効果を測るため、また、授業の改善案として実現可能かどうかを検討するために

下記のように実習授業で収集したデータを分析することにする。

5.1 実習授業のロールプレイの比較

RP1 と RP2 の比較によって、意味を重視した活動を取り入れた新しい授業構成の効果を見

ることが出来ると考えた。

具体的には、2つのRPの比較をすることで、授業を受ける前と受けた後で、学習者の発話

においてどんな変化があったかが明確になるのではないかと思ったからである。今回は、2

回のRPのデータを(1)タスクの達成、(2)発話の量、(3)談話の構成、(4)学習項目の使

用といった側面から分析を行う。

(1)タスクの達成

RP のタスクの達成は、次の 2 点を基準として見る。 ①学習目標の基本的な機能の表現が

見られるか否か。②理由或いは状況の説明が見られるか否か。

表5は、5日間の授業のRP1及びRP2について、①と②の基準から結果をまとめたもので

ある。「○」は①または②の基準を満たしたという意味である。1-1、1-2 などは、それぞれ

の日の目標に合わせた異なる設定の RP である(「RP の比較」の他の表も同様である)。クラ

スの出席人数や時間の余裕が日によって異なったので、行ったRPの数も違っている。また、

ここでのタスクの達成はそれぞれの授業の学習項目の使用の有無は問わない。

上記の2つの基準に基づいて評価した結果、5日間の授業においてRP1とRP2の全てのタ

スクは達成されたと言える。この結果から、分かったことは授業を受ける前のRP1でも、あ

る程度のタスクの達成が見られることである。その理由は、学習者はそれぞれの学習目標の

機能を既に『みんなの日本語』の38課までに学んでいたからである。具体的には「謝る表現」

はコースの入門、「誘いを断る」は第9課、「依頼する」は第26課、「情報の有無を確かめる」

は第38課、「許可を求める」は第15課で取り上げられている。また、理由の説明として「~

から」は第9課、「~んです」は第26課、「~てしまった」は29課で学習項目として学習し

ているので、RP1でも、何らかの形の達成が見られたのではないかと考えられる。

表5. RPにおけるタスクの達成に関する分析結果(5日間のRP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2 達成度達成度達成度達成度をををを見見見見るるるる基準基準基準基準

1-1 1-2 1-3 1-4 2-1 2-2 2-3 2-3 2-5

①謝る表現 ○ ○ ○ ○ 1日目

②事情の説明 ○ ○ ○ ○

①誘い ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2日目

②誘いに応じられない理由の説明 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

①事情の説明 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 3日目

②依頼 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

①災害のニュースについて、情報の

有無を確認する ○ ○ ○ ○

4日目 ②その結果・原因の理由について述

べる ○ ○ ○ ○

①事情の説明 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 5日目

②許可を求める ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

(2)発話の量

発話の量を決める単位は、一人の話し手が話し始めてから次の話し手が始めるまでを指す

「ターン」とする。5 日間にわたって行われた各談話のターンの数及びその平均を表 6 で示

すが、5日間のRP1のターンの平均値が3.6であるのに対して、RP2の平均値が5.4となって

おり、RP2のほうがターンが多い。それぞれの日のRPのターンの回数を見てみると、4日目

のRPを除いて、すべての場合、RP1よりRP2のほうが多いことがわかる。RP2でターンが多

くなった理由として、学習者がRP1で行った会話をもとに、授業で談話の構成に自ら気づき、

談話を作ったり展開したりできるようになったからではないかと考えられる。

表6. RPにおけるターンの数に関する分析結果(5日間のRP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2

1-1 1-2 1-3 1-4 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5

1日目 2 3 5 5

2日目 3 3 2 3 5 4 6 6

3日目 3 3 3 7 5 6

4日目 5 5 4 4

5日目 6 5 5 8 6 6 5 5

平均 3.6 5.4

4 日目のRP1と RP2を比較すると、他の日と異なり、ターンが減少している。しかし、タ

ーンの長さを文節数で見てみると、RP1 の場合はターンの平均が 4 文節であるのに対して、

RP2の場合は4.6文節となり、RP2のターンのほうがやや長いことがわかる。また、ターンの

回数が減っている一つの理由として、4 日目の学習目標は、実験授業の他の学習目標と比べ

て難しかったので、学習者の負担が他の日に比べて大きかったのではないかと考えられる。

さらに4日目のRP2では、RP1と同じ指示だったRPの内容に対して学習者がRP1より難しい

内容にチャレンジしたため、内容に集中し、ターンの数が減っているのではないかと考えら

れる。

(3) 談話の構成

例として1日目の談話の構成の分析を以下に記述する。

まず、1 日目の「理由を言って謝ることができるようになる」という学習目標に沿って、

RP1 を行った。使う表現及びその構成は事前に先生や友達に聞いたり、本を見たりしないよ

うに指示した。使用したロールカードは添付資料1:1-1に記載した。

ロールカードに基づいて学習者が行った会話を文字化したものを以下の表7に示し、RPで

現れた談話の機能を分析する。

表7.1日目のRP1(1-1)の際に行われた会話の一例とその発話機能の出現

会話会話会話会話のののの文字化文字化文字化文字化 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

A:すみません。

車が来なかったんです。

B:じゃ、いいです。

①謝る表現

②事情の説明をする

③事情を聞いて、謝罪を受け入れる

このように談話にその言語行動にふさわしい機能があるかどうかを見て、「談話の構成」を

評価していく。

授業では、その学習目標から自然に出てくる学習項目やふさわしい談話の構成を、様々な

段階でモデル会話を聞かせたり、その流れを考えさせたりして、授業の最後に改めてRPを行

うようにした(RP2)。例として1日目のRP2の前に使ったモデル会話のスクリプト及び、そ

の談話で学習者に気づかせた機能を添付資料1:1-6に記載した。

表 8で示すように、RP2の 2-1で発話した談話を文字化して、モデル会話で学習した機能

が現れているかを見て、RPの「談話の構成」を評価した。また、1日目のすべての会話を分

析した結果を表 9 にまとめる。5 日間の談話の構成は日によって違う機能で成り立っている

が、それぞれの機能を「談話の構成」に示した。評価は「○」「△」「×」の三段階で、その

基準としては、その発話に求められている機能が、「○」はある、「△」はあるが、不十分か

正確さが欠けている、「×」はないというものである。2日目~5日目までのすべての談話を

分析した結果は、添付資料2を参照されたい。

表8. 1日目のRP2(2-1)の際に行われた会話の一例とその発話機能の出現

会話会話会話会話のののの文字化文字化文字化文字化 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

A:昨日パーティーに行けなくて、悪いね

B:どうしたんですか。

A:実は試験があって、行けなかったんです。

B:仕方がないですね。

A:本当にすみません。

①謝る理由 ②謝る表現

③事情の説明を求める

④事情の説明をする

⑤事情を聞いて、謝罪を受け入れる

⑥締めくくりの謝り

表9. RPにおける発話機能の出現に関する分析結果(1日目のRP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

1-1 1-2 2-1 2-2

謝る理由:A × × ○ ○

謝る表現:A ○ ○ ○ ○

事情の説明を求める:B × ○ ○ ○

事情の説明をする:A ○ ○ ○ ○

謝罪を聞いて受け入れる:B ○ ○ ○ ○

謝る側に注意をする:B × ○ × ×

締めくくりの謝り:A × × ○ ○

合計値(A/B) 3(2/1) 5(2/3) 6(4/2) 6(4/2)

表9及び添付資料2(2-1~2-4)を細かく見ていくと、4日目を除いて、全てRP2の談話の

ほうが、適切で、高度な構成になっていることがわかる。この変化はコミュニケーションを

意識した学習目標の中で、意味を重視した活動であるRPを取り入れること及び、学習者がそ

の学習目標に合ったモデル会話を聞いたり、その談話の構成を考えたりする機会を与える新

しい授業構成を取り入れたことの効果ではないかと考えられる。なお、4 日目だけ談話の向

上が見られないのは、上記の5-1の(2)で述べたような理由が考えられる。

さらに、1 日の授業を通しての変化ではなく、実習授業の全日程を通しての変化として、

以下のようなことが観察された。

学習者が実習の初日のRP2の指示に基づいて行った談話と実習の5日目のRP2で行った談

話の内容に興味深い変化が観察された。5 日目の RP2 の談話分析をしてみると、その日に学

習した談話を超えて談話が展開していったことがわかる。表10は、5日目の発話の学習で使

った会話のスクリプト及びその会話内に現れる機能を示した表である。

表10.5日目の「談話学習」で使用したモデル会話と発話の機能

会話会話会話会話ののののスクリプトスクリプトスクリプトスクリプト 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

A:課長、すみません。

今ちょっとよろしいですか。

B:いいですよ。なんですか。

A:実は、あした、ビザを取りに

行かなければならないので、

午後から休んでもいいですか。

B:いいですよ。

あしたの午後ですね。

わかりました。

A:すみません。

①相手の状況を確かめる

②発言の許可を与える・用件を聞く

③自ら事情の説明をする

④許可を求める

⑤許可の提供・拒否

⑥許可の内容を確認する

⑦感謝・謝る表現

AはBに許可を求め、BはAの状況を聞いて許可を与えるかどうか判断するというのが、RP

の内容である。学習者にはAまたはBの役割とともに、人間関係を与えた。表11は「母親と

子ども」のRPの文字化である。

表8の1日目のRP2と表10・表11の5日目のRP2を比較すると、学習者がロールカード

の提供している場面や人間関係を解釈し、どの言語形式を選択しなければならないかよりも、

このような場面で母親なら何を言うべきか、子どもなら何をどう言うかということを考えな

がら、自分の背景知識を生かし、学んだ談話以上の展開を考えて発話するようになったこと

がわかる。5日目のRP2の他のペアの会話にも(添付資料2-4のR-2及びR-5を参照)、この

ような発話上の積極性が見られる。

以上述べたことから、コミュニケーションを意識した学習目標の中で、意味を重視した活

動であるRPを取り入れること及び、第二言語の習得過程に配慮した新しい授業構成を取り入

れることには成果が見られ、適切で高度な談話及び、積極的な発話の育成において、有意義

だったと考えられる。

会話会話会話会話のののの文字化文字化文字化文字化 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

A:すみません、お母さん。

今晩は友達の誕生日パーティーがあるので、

宿題はあしたをやってもいいですか。

B:あしたですか。

それはちょっと・・・大切なことを

まず、してください。

A:でも、宿題は来週までので、お願いします。

あした、やってもいいですか。

B:まず、宿題をしたら、行けます。

A:わかりました。

①相手の状況を確かめる

②自ら事情の説明をする

③許可を求める

④求められた許可の内容を確認する

⑤許可の拒否

⑥許可の提供の条件を交渉する

⑦交渉の拒否、最終結論

⑧最終結論に対する納得の表現

表11.5日目のRP2(2-3)の際に行われた会話の一例とその発話機能の出現

(4)学習項目の使用

表13に、それぞれの日の学習項目を使用したかどうかをまとめた。学習項目が使われた場

合は「○」、使われなかった場合「×」とした。この表を見ると、RP1で殆ど使われなかった

学習項目がRP2では使われるようになったことがわかる。

表13.RPにおける学習項目の使用に関する分析結果(5日間のRP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2 学習項目学習項目学習項目学習項目

1-1 1-2 1-3 1-3 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5

理由「~て」+謝る × × ○ ○ 1日目

理由「~て」+結果 × × ○ ○

2日目 断る理由「~て」 × × × × ○ ○ ○ ○

3日目 事情の説明+「ので」+依頼 × × ○ × ○ ○ ○

出来事+「で」+その結果 × × × ○

聴いた瞬間+「~て」+感想・感情 × × × ○

4日目

原因+「ので」+結果 × × × ○

5日目 事情の説明+「ので」+許可 × × ○ × × ○ × ○ ○

(1)~(4)の分析から、授業開始時のRP1と比べて、授業終了時のRP2では、学習者は、

複雑で、高度な談話を展開することができるようになったことがわかる。

RP1 と RP2 を比較した結果から、コミュニケーションを意識した学習目標を設定すること

で、その日に学習者に求めるコミュニケーション行動が明確になり、様々な活動・練習を進

めるのに学習目標が大きな役割を果たしたと言える。また、学習目標の達成に向けて、新し

い授業構成(モデル会話の聴解、談話を意識した活動)を取り入れたため、RP2 での学習項

目の使用や談話の量的・質的な発展があったのではないかと考えられる。というのは、従来

の授業構成(導入、基本練習、練習 C)の下に行った 1.2 の授業ビデオ分析では、自由な発

話の段階で、学習項目はほとんど使われなかったが、実習授業ではRP2での発話において、

かなり使えるようになったからである。この結果は、FonFの考え方を取り入れた授業構成で

学んだ学習者が言語形式とその意味・働きを理解した上で、学習項目が使えるようなったこ

とを示しているのではないかと考えられる。また、RP2 の発話には新しい授業構成の「談話

の学習」で意識化されたそれぞれの機能が反映されていることから、その活動が効果的だっ

たと解釈できる。

しかし、FonFの「観察」「気づき」「発見」という第二言語の習得過程への配慮が、実習授

業での効果とどう結びついたか、この限られたデータからは明言できない。

5.2 学習者を対象としたアンケート

実習授業の5日後に学習者5人全員を対象としたアンケートを行った。アンケートの質問

項目と集計の結果の詳細は添付資料3とした。

学習者は全員、5日間の授業全体の学習目標とそれらの達成度が適切だったと答えている。

そして、実習授業の全体的な印象として5人とも面白かったという選択肢を選んでいる。ま

た、全員が自分のRPでの発話に対して、「日本語で十分に話せた」「満足感を覚えた」と書い

ている。

様々な活動の中で一番よかったと思うものを尋ねると、5人中4人がRPと答えた。その他、

「モデル会話の聴解」、「自分でいろいろ考えたこと」というコメントもあった(複数回答)。

このアンケートでとても興味深いところは、RP に対して「難しかった」「チャレンジになっ

た」「緊張した」と答えた3人は、この6日間で一番良かった活動がRPだとしていることで

ある。その他に、一番役に立った活動として、RPを挙げた人が2人、一番面白かった活動と

して、RP1とRP2を選んだ人がそれぞれ2人ずついた。

学習者の回答から言えることは、学習者には今回の授業の改善案に対してほとんど抵抗感

がなく、むしろ、今後取り入れてほしいと考えているということである。また、RPのような

意味重視の活動を取り入れることに対して、「チャレンジになった」「難しかった」「緊張した」

と感じているにもかかわらず、授業で一番よかった活動だと認め、RP2に対して、「日本語で

十分に話せた」、「満足感を覚えた」という感想を書いている。従って、学習者にとって、こ

の実習で改善案として導入された意味重視の活動及び第二言語の習得過程に配慮した授業構

成は受け入れられたと考えられる。

5.3教師を対象としたアンケート

このアンケートの質問項目と集計結果の詳細は、添付資料4とした。

回答した教師は14名で、全員が5日間の学習目標が適切だったと答えた。また、このよう

な授業構成を取り入れることは、学習者の話す能力を高めるのに効果的だと思った教師は13

名いる。その理由として、今回の実習授業で行った活動は、「学習者が受身的に参加するので

はなく、学習者の興味・関心を引き出し、学習者の主体性・自発性を促がしているから」、「分

からないことや疑問に思ったことに、まず『気づく』ことから始めているから」、また、「学

習者に発話の機会を与えるから」、といった回答があった。

「実習授業で配慮された点を日々の授業に取り入れることで、学習者の日本語運用能力に

つながる、つまり、学習者が話せるようになると思うか」という質問に対しては、「はい」と

答えた教師が13名いた一方で、1名は「いいえ」と答えた。

様々なコメントの中で、意味を重視した活動の導入や習得過程に配慮した授業構成に対す

る教師たちの肯定的な評価が見られた。RP1 に対して、「最初に会話をさせることによって、

学習者が自分の言えない部分を意識し、興味を覚える」、モデル会話の聴解に対して「生き生

きした会話を聞くことで語彙や文型の習得が可能になる」、言語形式や談話構成への意識化に

対して「自分で意識させることによって話す能力が高められる」、「気づくことの大切さがわ

かった」、談話の練習に対して、「日本語を教える際に日本語らしい会話を教えることも大切

だ」、RP2に対して、「よく発話していたことが印象的だった」、「RPでは丸暗記ではなく『自

分の日本語』を話す機会が与えられる」などのコメントが見られる。

授業の改善案に対して、さらに修正や改善が必要だというコメントもあった。「会話をする

際に相槌や顔を見て話すこと、声の調整・動きなどといった点も配慮して指導したほうが良

い」、「基本練習・効率的な口頭練習にもう少し時間をかけたほうが誤用を防ぐのに役立ち、

また、もっと話せるようになる」、「RPだけではなく、別のコミュニカティブな活動も取り入

れるといい」、「場面、話す相手による学習者の常体、敬体の使い方に意識するべき」などで

ある。

以上から言えることは、文化会館の教師から、この実習授業で提案されている活動と第二

言語の習得過程に配慮した新しい授業構成は有意義で効果的だったと肯定的に受け止められ

ていることである。

6. まとめと今後の課題

6.1 研究の成果

本研究の目的は、1.2の現状分析から浮かび上がった従来の授業の3つの問題点(1)コミ

ュニケーションを意識した学習目標がないこと、(2)意味を重視した活動を取り入れていな

いこと、(3)授業の構成が習得に結びつきにくいことを解決するために、改善案を作成し、

実習授業を通して、その成果及びコースへの導入の可能性を検討することである。以下、2

章で提案した3つの改善案をもとに、その成果についてまとめる。

(1)コミュニケーションを意識した学習目標の設定

RPの比較の結果からは、コミュニケーションを意識した学習目標を設定することによって、

学習者に求めるコミュニケーション行動が明確になり、その目標達成に向けてRPを始めとす

る様々な活動や練習を取り入れたことから、学習者のRP2での発話の向上に大きな役割を果

たしたことがわかった。また、学習目標を設定することは、その他の改善案の効果と実現可

能性と深く関係するのではないかと考えられる。

(2)意味を重視した活動の導入

RPの比較の結果から、場面や人間関係に配慮した活動であるRPを導入することは、「伝達

内容から表現形式へ」という思考のもとで、学習者が学習項目や談話の構成を意識し、さら

に高度で、積極的な発話を育成するにあたって、効果的な活動であったと言える。そして、

学習者アンケートの結果では、RPのような意味重視の活動は、「日本語で十分に話せた」「満

足感を覚える」活動であると認められ、効果的な活動であると同時に、コースに取り入れる

ことを学習者は肯定的に受け止めていると解釈できる。さらに、教師アンケートの結果では、

RP は学習者の話す能力を高めるのに、効果的だと全員が認め、「最初に会話をさせることに

よって、学習者が自分の言えない部分を意識する」「最終的に、RP は丸暗記ではなく『自分

の日本語』を話す機会が与えられる」といったコメントから、2つのRPは効果的で実現可能

と認められていると解釈できる。

(3)第二言語の習得過程に配慮した新しい授業構成

RPを比較した結果から、学習目標の達成に向けて取り入れた新しい授業構成(モデル会話

の聴解、談話の学習など)が、RP2 での学習項目の使用や談話の量的・質的な発展につなが

った一番の理由ではないかと考えられる。つまり、学習者が学習項目とその意味・働きを一

致させて使えるようなったこと、及び談話学習で意識化した談話の機能がRP2での発話に見

られたことは、新しい授業構成の効果の反映だと思われる。また、学習者アンケートの結果

から、この改善案の効果及び実現可能性が浮かび上がった。具体的に「とてもダイナミック

な授業だった」「最初から最後まで考えないといけないのはとてもよかった」「授業時間はと

ても短く感じた」というコメントがあり、学習者には授業の改善案に対して殆ど抵抗感がな

いこと、むしろ、今後とも取り入れてほしいと5人中4人が答えている。さらに、教師のア

ンケートの結果では、「生き生きした会話を聞くことで語彙や文型の習得が可能になる」、「自

分で意識させることによって話す能力が高められる」、「気づくことの大切さがわかった」、「日

本語を教える上で、自然な会話を教えることも大切だ」、というようなコメントがあり、新し

い授業構成は、有意義で効果的だったと肯定的に受け止められている。

上記の結果から、実習授業の期間には限界があったが、本研究の改善案は、有意義で、あ

る程度効果的だったと言えるだろう。

6.2 今後の課題

3.1で述べたように、本研究の実習では『みんなの日本語』の39課を取り上げた。この課の学習

項目は、初めて学ぶものだったが、コミュニケーションの機能としては既習の内容であった。従っ

て、学習項目もコミュニケーションの機能の表現も初めて学ぶ課に対しても、今回の成果が同様に

見られるかどうか試み、その効果を見ることを今後の課題とする。5.3 の結果に見られたコメントを

見ると、今後、本研究の改善案を支えている根本的な考え方を文化会館の教師とさらに共有する

必要があると思う。また、『みんなの日本語』で教えることを前提に、本研究の改善案を文化会館の

教案に正式に取り入れることは様々な教材の作成作業が伴うので、役割分担という観点からも、実

現可能性を検討する必要がある。最後に、コミュニケーション能力の育成を重視した本研究の改

善案をとり入れる場合、筆記試験で文法能力を測る従来の評価方法から、会話能力を測る評価の

仕方に変えることも検討する必要があると思われる。

参考文献

(1) 岡崎眸・岡崎敏雄(2001)『日本語教育における学習の分析とデザイン 言語習得の

視点から見た日本語教育』凡人社

(2) 久保田美子(2006)『国際交流基金日本語教授法シリーズ 第1巻 日本語教師の役割

/コースデザイン』ひつじ書房

(3) 木田真理・小玉安恵・長坂水晶(2007)『国際交流基金日本語教授法シリーズ 第 6

巻 話すことを教える』ひつじ書房

(4) 阿部洋子・中村雅子(2007)『国際交流基金日本語教授法シリーズ 第9巻 初級を教

える』ひつじ書房

(5) 小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネット

ワーク

(6) 小山悟(2002)『J.Bridge ジェイ・ブリッジ』凡人社

(7) スリーエーネットワーク(1998)『みんなの日本語 初級Ⅱ 本冊』スリーエーネット

ワーク

(8) ――――(2001)『みんなの日本語 初級Ⅱ 教え方の手引き』スリーエーネット

ワーク

(9)山内博之(2005)『OPIの教え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために―』

スリーエーネットワーク

(10)Canale, Michael (1983) From communicative competence to communicative language

pedagogy. Applied Linguistics,4, 2-27.

添付資料1 実習授業で使用した教材の例(1日目)

1-1 「ロールプレイ 1」のロールカード(1-1)

A:友達(B さん)と会う約束をしたが、約束時間に 15 分遅れてしまいました。謝ってください。

その理由を説明してください(理由は自分で考えなさい)。

*あやまる:pedir disculpas *理由:razón, causa

B:友達の A さんと会う約束をしました。約束の時間から 15 分待ちましたが、やっと友達が

来ました。遅れた理由を聞いてください。

*やっと:al fin, por fin *理由:razón, causa

1-2 「モデル会話の聴解」のスクリプト 会話1

A:遅れてごめんね。

B:どうしたの?

A:実は、道がすごく込んでいて・・・

本当にごめん。

B:そうだったんだ。

会話 2

A:先生、今朝の授業に出られなくて、

すみません。

B:どうしたんですか。

A:実は急に体の具合が悪くなって・・・

本当にすみませんでした

A:そうですか。もう いいんですか。

1-3 「聞いて書きましょう」タスクシート (使い方:モデル会話を 2回目の再生のとき、聞きながら穴埋めをするよう指示を与えた)

会話会話会話会話をををを聞聞聞聞いていていていて、、、、 にににに書書書書きなさいきなさいきなさいきなさい。。。。

会話会話会話会話 1111

A: ごめんね。

B:どうしたの?

A:実は、道がすごく ・・・本当にごめん。

B:そうだったんだ。

会話会話会話会話 2222

A:先生、今朝の授業に 、すみません。

実は急に体の具合が ・・・本当にすみませんでした。

B:そうですか。もう、いいんですか。

1-4 「文法規則の意識化」の例文(PPT) (使い方:左側の文を一つずつ提示し、「て形」の働きは何かを問いかけた。皆の意見を聞いた後、

正解の部分を見せ、合っているかどうか確認させた。)

問いかけ:

1.ご飯を食べて、しゅくだいをします。

2.冷たいミルクを飲んで、おなかが

いたくなりました。

3.はしを使って、ご飯を食べます。

4.あついとき、窓を開けて、寝ます。

正解例:

1.ご飯を食べて、しゅくだいをします。

(動作の継起)secuencia de acciones

2.冷たいミルクを飲んで、おなかが

いたくなりました。

(理由・原因)razón, causa

3.はしを使って、ご飯を食べます。

(手段)medio, instrumento

4.あついとき、窓を開けて、寝ます。

(付属状況) estado en que se hace la acción

principal

1-5 「パターン練習」で使った例文の一部(PPT) (使い方:PPT を通して「遅れました」「すみません」をキューとして与え、変換練習を行った。

学習者が発話してから、「→」の後の部分を見せ、自分たちの発話と対照させた。)

失敗や過失を言って、あやまる練習!!

1. 遅れました・すみません → 遅れて、すみません。

2.しゅくだいを忘れました・すみません→ しゅくだいを忘れて、すみません。

3. 本を汚しました・すみません → 本を汚して、すみません。

4. きのうはやく帰りました・すみません→ きのう はやく帰って、すみません。

事情の説明!! 1)そうだんがあります・電話をしました → じつは そうだんがあって、電話をしたんです。

2)じこがありました、バスが遅れてました → じつは じこがあって、バスが遅れたんです。

3) 急いで、家を出ました・本を忘れました→ じつは 急いで、家を出て、本を忘れたんです。

4)道がこんでいました・車がうごきませんでした → じつは 道がこんでいて、車が

動かなかったんです

1-6 1 日目の「談話学習」で使用したモデル会話と発話の機能 モデルモデルモデルモデル会話会話会話会話 発話発話発話発話のののの機能機能機能機能

A:課長、遅れてすみません。

B:どうしたんですか。

A:実は、事故があって、

すごく道が込んでいたんです。

申し訳ありません。

B:それは大変でしたね。

さあ、会議を始めましょう。

①謝る理由 ②謝る表現

③事情の説明を求める

④事情の説明をする

⑤締めくくりの謝り

⑥謝罪を受け入れる

1-7 「ロールプレイ 2」のロールカード(2-1) A:昨日友達の誕生日パーティーでした。大学の友達に誘われたが、

急に行けなくなりました。今、大学でその友達に会いました。

謝ってください。

B:昨日はあなたの誕生日パーティーでした。大学の友達の A さんを

誘いましたが、来てくれませんでした。今、大学でその友達に会いました。

添付資料 2 RP の「談話の構成」の分析結果

2-1 RP における発話機能の出現に関する分析結果(2日目の RP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2

発話発話発話発話のののの機能機能機能機能 1111----1111 1111----2222 1111----3333 1111----4444 2222----1111 2222----2222 2222----3333 2222----4444

前置き:A ○ ○ × × ○ ○ × ×

相手を誘う・勧誘する:A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

誘いを受けられないサインを送る:B × × × × ○ ○ ○ ○

断る事情の説明:B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

残念を述べる:A × ○ × ○ ○ ○ ○ ○

謝る表現:B ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○

関係の維持の表現:A × × × × ○ ○ ○ ○

合計値(A/B) 4(2/2) 5(3/2) 3(1/2) 3(2/1) 7(4/3) 7(4/3) 6(3/3) 6(3/3)

2-2 RP における発話機能の出現に関する分析結果(3日目の RP) RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2

発話発話発話発話構成構成構成構成 1111----1111 1111----2222 1111----3333 1111----4444 2222----1111 2222----2222 2222----3333

前置き:A ○ ○ × × × × ○

事情の説明:A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

依頼をする:A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

依頼されたことに対する確認:B × × × × ○ ○ ○

依頼に対する対応:B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

感謝表現:A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×

依頼への対応の詳細を聞く:A × × × × ○ × ×

依頼への対応の詳細を説明する:B × × × × ○ × ×

終わりの依頼表現:A × × × × × ○ ○

合計値(A/B) 5(3/2) 5(3/2) 4(2/2) 4(3/1) 7(4/3) 6(4/2) 6(4/2)

2-3 RP における発話機能の出現に関する分析結果(4日目の RP)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2

2222----1111 発話発話発話発話構成構成構成構成

1111----1111 1111----2222 FB 前 FB 後

2222----2222

災害のニュース:原因・結果を述べる:A × × × × ○

情報の有無の確認をする:A △ ○ △ ○ ○

その瞬間の気持ち・感想を述べる:B ○ △ ○ ○ ○

ニュースの詳細を聞く:A/B A: ○ × × × ×

ニュースの結果・原因の詳細を説明する:A/B A: ○ A: ○ A: △ A: ○ A: ○

ニュースの結果に対するコメント:A/B B: △ × × × ×

合計値(A/B) 4(2.5/1.5) 2.5(2/0.5) 2(1/1) 3(2/1) 4(3/1)

2-4 RP における発話機能の出現に関する分析結果(5日目の RP)

添付資料 3 実習授業についての学習者へのアンケート ( )の中は回答者の数

回答者(5)

A. A. A. A. 回答者回答者回答者回答者のののの背景情報背景情報背景情報背景情報

1. 平均年齢:19 歳

2. 日本語を学習している理由:就職(2) 留学(2) 日系人だから(1)

3. 日本語を生かしたいこと:仕事 (2) 留学 (2) 無回答(1)

4. この機関で今までどのくらい日本語を習ったか。平均値:13.4 ヶ月

B. B. B. B. 授業授業授業授業のののの活動活動活動活動にににに対対対対するするするする質問項目質問項目質問項目質問項目

1)39 課で習ったことは役に立ったか、あるいはこれから役に立つと思うか。

a.必ず役に立つ b.役に立つ c.あまり役に立たない d.全然役に立たない

1. 理由を言って、あやまる :a(4) b(1) c(0) d(0)

2.理由を言って、ことわる :a(3) b(2) c(0) d(0)

3.事態を説明して、たのむ :a(4) b(2) c(0) d(0)

4.噂・ニュースを伝える。感想を述べる :a(4) b(1) c(0) d(0)

5.許可を求める :a(4) b(1) c(0) d(0)

2)全部の活動についての先生の説明はどうだったか。

a.とてもわかりやすい(1) b.わかりやすい(4) c. わかりにくい(0) d. とてもわかりにくい(0)

RP1RP1RP1RP1 RP2RP2RP2RP2 発話発話発話発話構成構成構成構成

1111----1111 1111----2222 1111----3333 2222----1111 2222----2222 2222----3333 2222----4444 2222----5555

相手の状況を確かめる:A × × × △ ○ △ ○ ○

用件を聞く・発言の許可を与える:B × × × ○ ○ × ○ ○

自分が自ら事情の説明をする:A × × × × ○ ○ ○ ○

許可を求める:A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

求められた許可の理由或いはその詳細を聞く:B ○ ○ ○ ○ ○ × × ○

求められた事情・詳細の説明をする:A ○ ○ ○ ○ ○ × × ○

求められた許可の内容を確認する:B × × × × × ○ × ×

許可の提供・拒否:B × ○ ○ ○ ○ × ○ ○

許可の提供の条件付けを述べる:B × × × × × ○ × ×

許可の提供の条件を交渉する:A × × × × × ○ × ×

許可の提供・拒否の最終結論:B × × × × × ○ × ×

最終結論に対する納得の表現:A × × × × × ○ × ×

許可をもとめた相手に対して同情を示す:B ○ × × × × × × ×

感謝・謝る表現:A × ○ ○ × × × ○ ×

依頼するときの慣用句表現:A × × × × × × ○ ×

合計 4

(2/2)

5

(2/3)

5

(2/3)

5.5

(2.5/3)

7

(4/3)

7.5

(4.5/3)

7

(5/

2)

7

(4/3)

3)授業の様々な活動に積極的に参加したか。

a. 強くそう思う(1) b.そう思う(3) c.あまりそう思わない(1) d.そう思わない(0)

4)全体的に十分に日本語で話せたか。

a. 強くそう思う(2) b.そう思う(3) c.あまりそう思わない(0) d.全然そう思わない(0)

5)毎日の授業で一番最後に日本語で行ったロールプレイの出来具合はどうだったか。

a.必ず役に立つ b.役に立つ c.あまり役に立たない d.全然役に立たない

1 理由を言って、あやまる :a(3) b(2) c(0) d(0)

2.理由を言って、ことわる :a(3) b(2) c(0) d(0)

3.事態を説明して、たのむ :a(4) b(1) c(0) d(0)

4.噂・ニュースを伝える。感想を述べる:a(3) b(2) c(0) d(0)

5.許可を求める :a(2) b(3) c(0) d(0)

6)授業の一番最後に行ったロールプレイをしたとき、自分の言いたいことが言えたか。

a. 強くそう思う(4) b.そう思う(1) c.あまりそう思わない(0) d.全然そう思わない(0)

7)授業の一番最後に日本語でロールプレイを行って、満足感があったか。

a. 非常にあった(4) b. あった(1) c.あまりなかった(0) d.全然なかった(0)

8)6 日間で受けた授業は全体的にどうだったか。

a. とても楽しかった(1) b. 楽しかった(4) c.あまり楽しくなかった(0) d.全然楽しくなかった(0)

9)この 6日間の授業で先生は何を重視して授業を行ったか。(複数回答)

a. 会話(5) b. 文法知識(2) c. パターン練習(1) d.漢字(0) e. 聴解(1)

10)この6日間の授業で一番よかったのはどれか(複数回答)

a.先生の説明(0) b. モデル会話の聴解(2) c. ロールプレイ(自分達が発表した会話) (4)

d. 自分達でいろいろ考えたこと(1) e. パワーポイントの使用(1) f.その他(0)

11)この6日間の授業で行った練習・活動で、下記のものに当てはまるものはどれか。

a)一番難しかった練習・活動:RP1(2) 文法を考える(2) 会の構成を考える(1)

b)一番易しかった練習・活動:基本練習(2) RP1、モデル会話の聴解、会話の構成を考える(各 1)

c)一番面白かった練習・活動:RP1、RP2(各 2) 会話について考える(1)

d)一番チャレンジーになった練習・活動:RP1(2) 文法を考える、RP2、会話の訂正(各 1)

e)一番やってよかった練習・活動:RP2(2) その日の学習目標の説明、モデル会話の聴解、

文法を考える(各 1)

f)一番やらなくてもいい練習・活動:その日の学習目標の説明、基本練習(各 1)

g)一番役に立った練習・活動:RP2(2) 文法を考える、基本練習、会話の構成を考える(各 1)

h)一番緊張した練習・活動:RP2(3) 文法を考える、基本練習(各 1)

i)一番良くできた練習・活動:基本練習(2) 文法を考える、会話の構成について考える、RP2(各 2)

j)一番良くできなかった練習・活動:RP2(4) 会話について考える(1)

12)今までこのような授業を受けたことがあるか。 はい(0) いいえ(5)

13)6日間の授業で困ったことがあるか。あった場合、簡単に説明してください。

ある(2) ない(0) 無回答(3)(以下、A~Eで回答者を示す)

A. ビデオカメラのせいで緊張した

B. 知らない漢字・語彙があったこと

14)この実験授業でもっとやって欲しかったものはなにか。(自由記述)

A. 新出語彙のリピート

B. 文法と語彙の学習

15)これからも同じような授業を受けたいと思うか。はい(4) いいえ(0) 無回答(1)

16)自由なコメント:

(A~Eは回答者を示す)。

肯定的なコメント 否定的なコメントや改善案

RPRPRPRP についてについてについてについて

A:RP1 と RP2 はとてもよかった

D:RP はとても面白かった

授業授業授業授業のののの全体的全体的全体的全体的なななな内容内容内容内容・・・・流流流流れれれれ・・・・方法方法方法方法についてについてについてについて

A:授業時間はとても短く感じた

B:授業の内容はとても興味深かった

C:様々な活動に配慮されたことがよかった:

文法、トピック、聴解、読解、文字学習、宿題

D:授業は興味深くて、面白かった

D:こんな授業ははじめての体験したがよかった

C:とてもダイナミックな授業だった

C:最初から最後まで考えないといけないのは

とてもよかった

D:先生の説明はとてもよかった

授業授業授業授業のののの内容内容内容内容・・・・方法方法方法方法についてについてについてについて::::

C:ビデオを通して日本事情の紹介がある

といい

E:伝統的な教授法のほうが面白いと思う。

E:PPT を使わなくてもよかった

添付資料 4 実習授業についての教師へのアンケート ( )の中は回答者の数

回答者(14)

1) 実験授業でやろうとしていること(現在の教案の改善)が伝わったか。

はい(12) いいえ(0) 無回答(2)

2)学習目標は学習者にとって適切だと思うか。

a.かなり b.普通 c.普通 d.あまり

1. 理由を言って、あやまる :a(13) b(1) c(0) d(0)

2.理由を言って、ことわる :a(13) b(1) c(0) d(0)

3.事態を説明して、たのむ :a(12) b(2) c(0) d(0)

4.噂・ニュースを伝える。感想を述べる :a(9) b(5) c(0) d(0)

5.許可を求める :a(9) b(5) c(0) d(0)

3)学習目標は達成されたと思うか。

a.かなり b.普通 c.普通 d.あまり ()

1. 理由を言って、あやまる :a(0) b(9) c(5) d(0)

2.理由を言って、ことわる :a(1) b(8) c(5) d(0)

3.事態を説明して、たのむ :a(1) b(7) c(6) d(0)

4.噂・ニュースを伝える。感想を述べる :a(0) b(2) c(9) d(0)

5.許可を求める :a(1) b(2) c(11) d(0)

4)学習者は自分のことばで RP2 で会話をしていたか。 はい(11) いいえ(3)

自由な記述 (A~Nは回答者を示す。以下同じ)。

肯定的なコメント

なし

否定的なコメント

授業授業授業授業のののの進進進進めめめめ方方方方::::

F: 話してはいたが、この授業の進め方でなくても、この程度は話せるようになる気がした。

RP2 の前の口頭練習の方法をもう少し見直すべきだ。

誤用誤用誤用誤用にににに関関関関することすることすることすること::::

I: 会話はよく出来たが、文法的な間違いが見られた。

SSSS のののの発話発話発話発話にににに関関関関することすることすることすること::::

J: S の語彙数が少ないこと、既習文型がよく定着していないこと等が原因か、2~3 往復の

会話がやっとという感じがした。

ビデオビデオビデオビデオ観察観察観察観察にににに関関関関することすることすることすること::::

K: DVD では Sの発話(発音、イントネーション)が聞き取りにくかった

L: S の声がよく聞こえなかったので、Sの発音、イントネーション等を聞けず、字幕を読んで

理解できた

M: S の会話音声が聞き取れにくく、イントネーション、発音は分からなかった。

5) このような授業で学習者の話す能力を高めることができると思うか。なぜそう思うか。

はい(13) いいえ(1)

肯定的なコメント

B:RP を取り入れることによって、必然的に話さなければならないから

C:今のやり方に比べて、Sがただある会話の入れ替え練習や丸暗記ではなく「自分の日本語」を

なんとか使おうとする機会が与えられるから。

実際のコミュニケーションのように、ちょっとした文法の間違いがあっても、あまりとらわれ

なくても、言いたいことが言えるかどうか重視されるから。

D:S に話す機会を与えて、自分に足りない語彙・文型を理解するようにすることによって、話す能力

の向上ができると思うから。

E:Sに最初から十分に話す機会を与えて、新出語彙・文型を自分で意識させるようにすることに

よって、話す能力を高めることが出来ると思うから。意味重視活動を取り入れる。

F:項目4とは逆説的だが、既習項目を使って最初に会話をさせることによって、Sが自分の

言えない部分を意識し、興味を覚えるから。その後の新出学習項目を勉強した後の理解度及び

達成度を S自身が確認できるから。考えさせる活動も今までの教案より多く含まれるから。

G:分からないこと、疑問に思ったこと、知りたいと思ったことに、まず「気づく」ことから

始めているから。

H:S が既に習ったもの、知識を使って言わせることで、会話力を高めることが出来ると思うから。

またこの実験授業の仕方で会話能力が高まった様子が見られると思うから。

I: 実験授業で Sが自分達の能力でコミュニケーションができたから。

K:練習を行えばできるだろう。

L: 練習を行えば、できると思う。

M:練習を十分にすれば出来るようになると思う。

N:今まで習った日本語を思い出して自分が考えていることを日本語で伝えることが出来るように

なるから。

否定的なコメント

J:発話の頻度は高くなると思うが、既習の語彙・文型を聞いて出来る限り意図を伝える練習も

並行して進めなければ目標達成は難しい

6) 実験授業で配慮された点を「毎日コース」「普通コース」の初級及び日々の授業に取り入れること

で、学習者の日本語運用能力つまり、学習者が話せるようになることにつながると思うか。

はい(13) いいえ(1)

7) 全体的に良かった点や改善した方が良い点についてご記入ください。

良かった点

A:S皆が話せたこと

C:授業の流れが良かった。最初に会話をさせたことでまだ足りないところがあることを意識させる

のはいいと思う。

F:授業の進め方はいいと思った。

H:文型を学んで文をつくる授業と頭を使って文を作る授業の違い、差が分かりやすかった。

I:RP はとても良かったが S がその経験があまりないので、初級の最初の段階から取り入れるといい。

J:少人数のクラスで学習者の言語能力が均一で全体がバランスよく取れている。

N:生徒達が自分達で考えた日本語で話すことが出来たのがとてもよかった。

改善すべき点

A:もっと相槌が打てるようにすること

B:S の間ではレベルによって違いがあるので、その点も配慮すべきだと思う。

C:RP2 に入る前に文法の間違いを減らすために、基本練習にはもう少し時間をかけた方がいいかも

しれない。

D:RP では「悪い地震」「そうですね」など相応しくないと思われる表現があったが、教師は何も

注意・訂正していなかったようだ

B:RP をして話す練習を行うのは非常に大切だが、別のコミュニカティブなアクティビティも使えば

いいのではないかと思う。

F:文法的な確認の時間では Tの話す時間が少し長いような感じがした。この進め方に加え、初級

後半の学習者のための効率的な口頭練習の方法があったら、学習者はもっと話せるようになると

感じた。「話す」こと重点を置いたクラスであるのなら、場面、話す相手による学習者の常体、敬

体の使い方が気になったので、それも意識するべきだと思った。

G:「授業」は流れが一番大切だと思う。その点、この DVD は細切れになっているので、具体的に意

見を書くのはちょっと難しい。

K:学習者の音声が聞き取りにくかった。会話の場合は互いに顔を見てするべきだと思う。

L:学習者がお互いの顔を見て会話したほうがいい。

M:RP1でも学習者同士が顔を見て話したほうがよかった。学習者の音声が聞き取りにくかった。

N:もう少し場面の雰囲気が必要だったし、全員で間違いを直したほうが勉強になるんじゃないかと

思う。

J:会話の際に、表情や動きも指導するべきだと思う。

8) 実験授業前と実験授業後に発表者と教師の皆さんと集まって発表した内容及び、この実験授業の

ポイントを収録した DVD で、どんな印象を持ちましたか。(ご自由にご記入ください)

肯定的なコメント

N:DVD はとても良かった。このようにして自分の授業をビデオにとり、観察することにより、普段

気づかないところを客観的に見ることが出来るので、大変参考になった。

I:学習者がよく発話したことが印象的だった。

F:私も「考えさせる」授業を意識して教案を作っているので、とても興味が沸いた。

B:とても生き生きした会話を聞くことで語彙や文型の習得が可能になることだという印象を受けた。

D:日本語を教えるというのは語彙と文法だけで不十分で、自然な会話の流れも教えるのが

大切だという印象を受けた。

C:今回担当したクラスにレベルの差がなく、積極的に話そうとしていたが、そうでないクラスはこ

の教授法で行けるかと疑問に思った。しかし、コースの最初から(コースの始まり)から「自分で考

えて、話す力」を少しずつ育てていけば、いい結果が出るに違いない。Sが話せるようになるのに1

つの解決策としていいと思う。

否定的なコメント

K:実験授業前はどのような授業をしたのか分からないので比較しにくい。

J:話す力の向上にのみ視点が行っているようだが、理解力の向上に沿うよう授業を進めることも大

切じゃないでしょうか。表現力の中の話す力を理解力と並行して育てるにはテキストを母体として

場面とともに文型や語彙表現で使用させることだと思う。そのためには読解教材・視覚教材、それ

に作文とを関連付けた授業の形態をとり、それによって話す力を総合的に開発することが大切だと

思う。

B:実際にクラスに入って授業の全体の流れを見学しなかった。