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日本言語文化研究会論集 2019 年第 15 号 【寄稿論文】 通訳訓練法と日本語教育への応用 新崎 隆子 要旨 本稿は翻訳および通訳を用いた言語教育アプローチにより、通訳の訓練法を非母語話者に 対する日本語教育に応用する可能性を論じるものである。日本の英語教育においては伝統的 に文法・訳読式の授業が行われているが、それが英語教育を非効率的なものにしているとい う批判があり、文部科学省は高等学校の授業を英語で行うことを基本とするとした新しい学 習指針を定めた。しかし、大学では、通訳を学ぶことにより学生の言語能力及び国際コミュ ニケーションに関わる認識とスキルが向上するとの理解に基づき、外国語教育に通訳を取り 入れるところが増えている。非母語話者のための日本語の授業においても、通訳を教えるこ とにより同様の効果を上げることができるのではないだろうか。本稿では、様々な通訳訓練 法を検討し、非母語話者への日本語教育に活用する方法を提案する。 〔キーワード〕TILT、文法・訳読式、複言語主義、仲介、通訳訓練法 1. はじめに 本稿は、外国語教育における翻訳や通訳の役割に注目した TILT(Translation and Interpretation in Language Teaching)の視点から、日本語教育に通訳訓練法を応用する可 能性を論じる。日本では明治時代以来使われてきた「文法・訳読式」の教授法が、コミュニ ケーションに使える英語の習得に不適切であるという考えが強まり、英語を教える際にはで きるだけ日本語を排除することが推奨されるようになった。これに応えて、文部科学省は 2008 年の高等学校新学習指導要領で「英語の授業は英語で行うことを基本とする」と規定し た。 その一方で「コミュニケーションに使える英語」を実現する指導法として1980 年以降全国 の多くの大学で通訳訓練が始まった。また日本学術会議は大学における外国語教育の意義に ついて「『訳す』という実践は自らの言語と文化を省察しながら異なる文化を体験し複眼的思 考を獲得すること」という立場を公表した(鳥飼 2014)。 何故「訳す」ことを排除した教育が推奨される傍らで、「訳す」ことを指導の中心とする通 訳訓練が広がっているのだろうか。それは通訳の体験が言語能力を向上させるだけでなく、 異文化コミュニケーションにおける様々な問題への気づきを促し、学習意欲を掻き立てると いう認識が広がったためであろう。本稿では外国語の教育における翻訳や通訳の役割を考え、 通訳訓練の効果に関する先行研究を手掛かりに、日本語教育への応用の意義と可能性につい て論じる。

通訳訓練法と日本語教育への応用 - GRIPSjlc/jlc/ronshu/2019/5RyukoShinzaki.pdf義(plurilingualism)は一つ以上の言語を使い、異文化間のやり取りに参加する力と定義さ

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日本言語文化研究会論集 2019年第 15号 【寄稿論文】

通訳訓練法と日本語教育への応用

新崎 隆子

要旨

本稿は翻訳および通訳を用いた言語教育アプローチにより、通訳の訓練法を非母語話者に

対する日本語教育に応用する可能性を論じるものである。日本の英語教育においては伝統的

に文法・訳読式の授業が行われているが、それが英語教育を非効率的なものにしているとい

う批判があり、文部科学省は高等学校の授業を英語で行うことを基本とするとした新しい学

習指針を定めた。しかし、大学では、通訳を学ぶことにより学生の言語能力及び国際コミュ

ニケーションに関わる認識とスキルが向上するとの理解に基づき、外国語教育に通訳を取り

入れるところが増えている。非母語話者のための日本語の授業においても、通訳を教えるこ

とにより同様の効果を上げることができるのではないだろうか。本稿では、様々な通訳訓練

法を検討し、非母語話者への日本語教育に活用する方法を提案する。

〔キーワード〕TILT、文法・訳読式、複言語主義、仲介、通訳訓練法

1. はじめに

本稿は、外国語教育における翻訳や通訳の役割に注目した TILT(Translation and

Interpretation in Language Teaching)の視点から、日本語教育に通訳訓練法を応用する可

能性を論じる。日本では明治時代以来使われてきた「文法・訳読式」の教授法が、コミュニ

ケーションに使える英語の習得に不適切であるという考えが強まり、英語を教える際にはで

きるだけ日本語を排除することが推奨されるようになった。これに応えて、文部科学省は

2008年の高等学校新学習指導要領で「英語の授業は英語で行うことを基本とする」と規定し

た。

その一方で「コミュニケーションに使える英語」を実現する指導法として 1980年以降全国

の多くの大学で通訳訓練が始まった。また日本学術会議は大学における外国語教育の意義に

ついて「『訳す』という実践は自らの言語と文化を省察しながら異なる文化を体験し複眼的思

考を獲得すること」という立場を公表した(鳥飼 2014)。

何故「訳す」ことを排除した教育が推奨される傍らで、「訳す」ことを指導の中心とする通

訳訓練が広がっているのだろうか。それは通訳の体験が言語能力を向上させるだけでなく、

異文化コミュニケーションにおける様々な問題への気づきを促し、学習意欲を掻き立てると

いう認識が広がったためであろう。本稿では外国語の教育における翻訳や通訳の役割を考え、

通訳訓練の効果に関する先行研究を手掛かりに、日本語教育への応用の意義と可能性につい

て論じる。

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2. 外国語教育における「翻訳」の弊害

外国語教育や第二言語習得論の分野では、翻訳は語学教育の方法論として望ましくないと

位置づけられている。言語の形式ではなく意味に焦点を当て、メッセージを伝達することを

重視するコミュニカティブ・アプローチにおいては、母語の使用は外国語を習得するプロセ

スにおいて弊害となるため、授業で翻訳を使うことは良くないとされてきた(Carreres

2006; クック 2012; 染谷・河原・山本 2013)。その批判の矛先が向けられたのは文法・訳

読法による授業である(染谷・河原・山本 2013)。外国では言語の形式に焦点を当てた GT-M

(Grammar Translation Method) が学習者にコンテクストを無視した不自然な翻訳を強いると

批判された(Carreres 2006)。

英語教育における翻訳の意義を論じた文献(染谷・河原・山本 2013; 染谷 2010)では

“Grammar Translation Method”に「文法・訳読法」という訳語が当てられ、両者が同一の

もののように扱われているが、GT-Mと日本における文法・訳読法には違いがある。両者とも、

文法項目ごとに課を配列した教本を用いて文法を教える点は同じだが、文法規則の説明の後

の翻訳練習で、GT-Mが意味的なつながりのない短文を用いるのに対し、日本の文法・訳読法

では読み物の翻訳練習をさせた(平賀 2008: 75)。意味を軽視する GT-Mの最大の欠点を、

文法・訳読式教授法はテキストの読解を通して意味を重視させることにより克服したと言え

るだろう(平賀 2008: 92-93)。

すなわち、本来の文法・訳読式教授法は GT-Mと異なり、コンテクストを踏まえた翻訳をさ

せるものであったのだが、日本のいわゆる旧態依然とした英語の授業はそのような翻訳から

離れ、GT-Mのように「訳すこと」を語彙や構文の形式的な理解確認の手段として用い、学習

者に不自然な翻訳をさせることになった。それが文法・訳読式授業だと誤解され、翻訳をさ

せる授業は外国語習得にマイナスであるとの批判を招いてしまったのである(染谷・河原・

山本 2013)。

さらに、外国語を聞いたり読んだりしたときに、いちいち母語に訳さないと理解できない

のでは非常に時間がかかり、コミュニケーションの場面で使える外国語を身につける上で大

変効率が悪いという批判も起こった(白井 2008: 134)。それでも母語に訳させる授業が無

くならないのは大学の入学試験で測られる英語能力が読み書き文法中心であるためだと言わ

れた(Carreres 2006; 白井 2008)。このように、外国語を形式的に理解するために母語に

訳すことが「翻訳」であると誤解され、実践的な外国語能力を育成する上で弊害になるとさ

れてきたのだが、本来、翻訳は表層的な記号変換(transcoding)ではなく、文化や状況のコ

ンテクストに基づいたメッセージの理解を重要視するものである(染谷・河原・山本 2013)。

また翻訳が適切に使われた場合に、それが効果的な言語学習の弊害になるという証拠を示す

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実証研究は報告されていない(Cummins 2005 )。

第二言語習得論によれば外国語を習得するためにはメッセージを理解するインプットが必

要条件である。Input 仮説 (Krashen 1982)では理解可能なインプットを十分に与えること

により話す能力が自然に身につくとされ(白井 2008)、 母語を排除するイマージョン法が

推奨された。日本でも英語の授業は母語を使わずに英語で教えることが文部科学省によって

推奨されているが、これでは授業の内容を学習者が良く理解できずに自信を失い、授業の内

容は浅く、英語をことばとして分析する機会を奪うなどの弊害が指摘されている(鳥飼

2018)。例えば、母語が使えない授業では学習者の理解の程度を判定する方法は外国語の質問

に外国語で答えさせるなどに限定される。これでは外国語の発話能力がある学習者の方が良

く理解したと評価されるのは避けられず、読解能力やリスニング能力そのものの把握が難し

い。翻訳を文法規則を説明するための形式的な「訳」と混同し、明確な証拠もないのに教育

の場から排除するのは大変もったいない。このような状況は日本だけでなく世界的に共通し

て見られるため、21世紀に入って外国語教育に翻訳や通訳を取り入れる TILT (Translation

and Interpretation in Language Teaching)の動きが広がってきた(染谷・河原・山本 2013)。

3. TILT(Translation and Interpretation in Language Teaching)

翻訳や通訳は外国語の学習においてどのような効果を上げるのだろうか。Cummins (2005)

は「言語間相互依存仮説」(The Interdependence Hypothesis)を提唱し、学習者の母語を使

うことは、言語に共通の基底言語能力(Common Underlying Proficiency)を強め、概念理解

やメタ認識、メタ言語方略の転移を促すことによって両方の言語能力が高まると主張した。

さらに、訳すことが教育目的にかなうことを示す経験的証拠を示し、目標言語からの大量の

インプットが必要なことは否定しないが、学習者の母語は学習の強力な力になると述べてい

る。また、クックは訳すという営みは言語の両方及びその関係性に関する知識・理解が必要

であり、二つの言語の相互作用によって意味を生み出す活動であるとした(クック 2012:

177)。

このように二つの言語を対比して教えるべきだという考えを後押ししたのが欧州の複言語

主義に基づいた CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)である。これは欧州評議会(Council of

Europe)が 2001年に発表した外国語能力の共通参照枠で、多言語多文化社会である EUの教

育、特に言語教育の専門家のための共通の指針である。これは複言語・複文化主義、すなわ

ち複数の言語や文化を比較・対比させ、相互作用させながら豊かな複文化能力が育てられる

という概念に基づいている。新しい言語との対照は、すでに学んだ言語に新しい光を当てさ

せ、好奇心を刺激し、さらに言語接触に対する積極的な姿勢をもたらすからである(ガジョ

2012)。

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多言語主義 (multilingualism)が多数の言語が共存する状態を指すのに対し、複言語主

義(plurilingualism)は一つ以上の言語を使い、異文化間のやり取りに参加する力と定義さ

れ(柳瀬 2007)、言語的・文化的相互作用を通じて新たなコミュニケーション能力を育てる

ことを目指すものである(鳥飼 2018)。

この共通枠では言語活動に必要な能力として「受容能力」「産出能力」「相互作用能力」に

加えて「仲介能力」が挙げられている。「仲介能力」(mediation)とは異言語・異文化間のコ

ミュニケーションを仲介するための通訳(oral mediation:同時通訳、逐次通訳、インフォ

ーマルな通訳)と翻訳(written mediation: 契約文書などの正確な翻訳、文学作品の翻訳、

要約、書き換え)の能力と説明されている(North & Piccardo 2016: 5)。また、翻訳や通訳

は異言語・文化の共通点や差異に対する気づきを促される経験でもある。通訳や翻訳の学習

を続けるうちに、母語と外国語の表現やコミュニケーションスタイルの違いに気づき、ただ

ことばを置き換えるのではなく、理解した内容を自分のことばで相手にも分かるように伝え

ることであるということを実感するようになる(中村 2014)。

日本では CEFRを英語教育に応用した CEFR-J1のガイドブックが刊行されたが、その評価基

準に仲介活動としての通訳や翻訳は記述されておらず、異文化間の仲介能力も重要視されて

いない。日本の英語教育においては伝統的な単一言語主義(monolingualism)が相変わらず

主流のようである。

4. 外国語学習における通訳実習の効果

染谷(2010)は大学における通訳翻訳教育の意義は「ことばへの意識」や「異文化への意

識」を含む本質的なメタ言語能力を養成することにあると述べている。また、Hill(1979)

は逐次通訳の訓練は二つの言語に関する知識の強化、二か国語間のアイディアの迅速な転置、

幅広い一般的知識の獲得、対象言語の使用国及びその文化に対する深い洞察力、議論のメイ

ンポイントを把握する分析力を養い、上級レベルの外国語学習に役立つとした。また

Takimoto & Hashimoto(2010) は翻訳や通訳は外国語の学習者に文化の違いを探求すること

を通じて、二つの言語に対するより深い理解を促進する目を見張るような(eye-opening)学

習経験であると述べている。二つの言語の関係を深く認識することはもとより、分析的、批

判的思考や問題解決能力も鍛えられるとし、さらに Kramsch(2009: 248)が提案している言

語、思考、文化の関係を見る方法としての “Third Culture”という視点から見るならば、

通訳は二つの言語の精神を持ちつつ、その二つの境界を越えようとする第三の立場を経験で

きる。

二つの言語の境界に立つという経験は文書を訳す翻訳と音声言語を訳す通訳に共通するが、

翻訳が読み手に対する一方向のメッセージの伝達であるのに対し、通訳の場面では複数のコ

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ミュニケーション参加者の間で相互的な作用が起こることが多い(新崎 2010)。そのため言

語を含む文化的コンテクストだけでなく、参加者の人間関係を含めた状況のコンテクストを

把握することが求められる。言語能力だけでなく、異文化適応や対人コミュニケーション、

さらに問題解決能力も必要とされることから、実践的な外国語の運用能力を高める上でより

効果が期待できる。

4.1 英語教育のための通訳訓練法の応用

日本の外国語教育の中で最も多く行われている英語教育において通訳訓練はどのように

実施されているだろうか。応用される通訳訓練法としては、シャドーイング(染谷 1996)、

順送りの情報処理(篠塚 2010)など多くの研究が発表されており、リプロダクションとシ

ャドーイングを統合した指導法も工夫されている(飯塚 2009)。

新崎(2005)は、英語母語話者の講師によるリスニング授業で好成績を修めたにもかかわ

らず、通訳の授業ではリスニング能力の不足から成績不振に陥る学習者が少なからず見られ

ることに注目した。その大半が聞き取った内容について講師の質問に正しく答えられる能力

はあるが、質問や回答の選択肢など外部の手掛かりを使わずに、自分の記憶に基づいて内容

を再生する能力が不十分であった。そこで、聞き取った内容を他者に説明するという能動的

タスクを与え英語によるアウトプットを組み合わせた方法を工夫し、大学生向けの特別授業

で実施したところ、受講生 53人の 94パーセントが英語の学習に役立つと答えたと報告して

いる。

この方法を看護学生のための英語の授業に応用した杉田(2007)はスピーキング力向上に

効果があったと報告している。その後、この学習法の Android アプリケーションが開発され、

一般的な英語学習支援ツールとして提供されている(仲谷・室田 2012)。

4.2 日本語教育への通訳訓練法の応用

高見澤(2004)は日本語教育において日本語だけを用いる直接法を批判し、目標言語だけ

で処理できる活動は挨拶などの日常会話までであり、複雑な問題は母語により考える必要が

あるとして、中・上級者には翻訳や通訳の能力が必要であると述べている。長坂(2010)は

通訳や通訳者の養成に携わることが期待されている非母語話者日本語教師のために通訳訓練

法を応用した授業を行った事例を報告している。学習者は、内容を理解するための事前準備

をした上で、日本語テキストを読む、または音声で聞きながらメモを取り、最後はメモを見

ながら記憶を頼りに内容を他の受講生の前で口頭での要約や再生をする。これは基本的には

新崎(2005)や杉田(2007)の方法に倣っているが、受講生を二つのグループに分けて異な

る文章を読ませ、メモ取り、再表現、内容の確認などをさせる「ジグソーリーディング」や

聞いた内容を次々と伝える「伝言ゲーム」、テキストを読んだ者が仲間に内容を伝えるスピー

ドをグループで競わせる「小鳥のディクテーション」など、様々なタスクを与え学習者の動

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機付けを高める工夫がされている。

以上は、日本語母語話者が指導した例だが、スルタナリエワ(2018)は日本語非母語話者

が指導した事例を報告している。キルギスのビシケク大学における日本語とロシア語間の通

訳授業の改善を目的として行われた授業では、受講生の日本語のスキルを高めるために新崎

(2005)を基に、リスニング、メモ取り、原発言の再話から成る指導法が用いられた。再話

の前に語彙や表現の確認を行い、原発言のシャドーイングをした後に原発言の再話をさせる

方法を取り入れている。日本語母語話者である日本語教師 2人と指導にあたった非母語話者

の教師の 3人による評価によると、日本語発話について「語彙・文法」「談話構成」「流暢さ」

の点で改善が見られ、学習者の日本語発話が質的に向上した。また学習者へのアンケート調

査では日本語学習と通訳スキルトレーニングの両方でとても役に立ったとの回答が多く、学

習意欲が向上したことが示唆された。授業の最後にはロシア語への通訳練習が行われたが、

その結果や日本語学習における直接的な効果の評価はされていない。

5. 日本語非母語話者を対象とした通訳実践

英語教育や日本語教育に応用されている通訳訓練法は外国語の学習において効果があるこ

とが報告されているが、それらは、主として基礎的なスキルを高めるための訓練であって、

通訳することが外国語学習にどの程度の効果があるかについての実践報告は少ない。

宮元(2014)は地方自治体が主催する「JET プログラム 2」に参加する日本語非母語話者

142人(英語 91人、中国語 36人、韓国語 15人)に対し通訳訓練を行った。この研修は、JET

プログラムの参加者が従事する国際交流員(CIR)の業務の一つに「通訳・翻訳」があり、そ

のスキルを向上させたいと望む任用団体が非常に多いことから実施された。参加者は日本語

能力試験 2級程度の日本語力を有していた。授業では母語である英語、中国語、または韓国

語と日本語間の逐次通訳演習を実施しているが、指導の原則は日本語の理解力や表現力を高

めること(通訳訓練を通じた日本語力のブラッシュアップ)におかれている。通訳の基礎訓

練とされるシャドーイングなどは行っていない。この訓練に対する受講生の満足度は大変高

く、参加者の中には後に CIRの活動として通訳関連業務に携わった人たちもいた。同時に「基

本的には日本語話者への通訳訓練と同じだが、より英語母語話者に特異的な指導法があるか」

「日本語の教師ではない講師が日本語表現の手直しを、効果的に説得力を持って行えている

かどうか」が今後の課題に挙げられている。

筆者が 2018年に行った日本語教育指導者養成プログラムの特別講義「通訳訓練法と日本語

教育への応用」では、政策研究大学院大学の 2人の留学生を対象に通訳訓練を実施した。受

講生はいずれも自国ですでに大学教員として日本語を教えており、所属大学からの許可また

は推薦により一年間日本に留学している。いずれも帰国後は、日本語教師を続け、母国では

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指導的立場で活躍することが期待されている。

まずシャドーイング訓練では、アメリカの対イラン戦略に関する、およそ 370 文字の NHK

ニュース原稿を筆者がゆっくりと朗読し、シャドーイングしてもらった。受講生はおおむね

遅れることなく適切な発音でついていくことが出来たが、「ポンペイオ国務長官」「ウラン濃

縮」「イスラム教シーア派組織ヒズボラ」などの固有名詞や専門用語は聞き取りや再生が難し

いようだった。日本語学習の教材としてニュースをあまり使っていないと聞いたが、帰国し

た後に通訳や翻訳を依頼される可能性があることを考えると、時事問題についての背景知識

や語彙及び表現を学ぶ必要があると思われた。

続いて、日本語学習の中・上級者向けのテキスト3から選んだ 240 文字程度の「身の上相

談の記事」を筆者が朗読した。受講生にはメモを取りながら聞き、朗読が終わるとメモを見

ながら内容を日本語でまとめるように促した。スルタナリエワ(2018)とは異なり、語彙や

表現の事前情報は全く与えなかったが、日本の文化的なコンテクストを把握し、語彙や文法、

談話構成、流暢さにおいて、かなりレベルの高い再話ができた。

最後にそれぞれの母語と日本語間の逐次通訳をしてもらった。日本語の母語話者である教

師が非母語話者に対して逐次通訳の指導をする際に問題になるのは、教師が受講生の母語を

理解できない場合である。外国語から日本語への通訳では日本語の指導ができ、日本語から

外国語への通訳では受講生の通訳の仕方を観察することで日本語の聞き取りがスムーズに行

えているかどうかは評価できる。しかし、いずれの場合でも内容を正しく通訳しているかを

教師が評価するのは難しい。そのため対訳のある教材を入手することが肝要である。

特別講義では、母語がアラビア語の受講生には、日本語字幕付きのエジプト人のインタビ

ュー映像を使用した。もう一人は母語がキルギス語で公用語のロシア語も堪能であることか

ら、日本語への逐次通訳が付いたロシア人の講演映像を使用した。これにより、外国語から

日本語への通訳については、受講生の日本語だけでなく通訳の正確さもある程度評価するこ

とができた。日本語の発話素材については、キルギス共和国全権大使の日本語によるビデオ

メッセージと日本アラブ協会の会長挨拶の日本語原稿を用いたが、これらについては対訳を

入手することができなかったため、日本語の聞き取りやメモ取りの指導に留まり、通訳の正

確さまでは評価できなかった。

教師の語学力や教材選定の限界はあったが、聞き取りと解釈力、記憶力、談話構成能力、

さらに人前で発表する能力が問われる通訳は、発話に対する深い理解や注意深い言葉の選択、

明瞭な発音が促され、学習意欲を刺激したようであった。今回は時間の制約から実施できな

かったが、日本語とそれぞれの母語を比べ、語彙や表現の文化的な違いについて議論をする

機会を与えれば、日本語のみならず母語に対するより深い理解を促し、基底言語能力を強化

できるだろう。

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6. 結論:日本語教育における通訳の意義と課題

日本語教育に通訳を取り入れる意義は二つある。一つは、二つの言語を対照させることで、

言語の類似性と相違の背景にある一般的な原理や傾向性を教えることにより、日本語教育の

効果が期待できることである(井上 2002; 熊谷 2002)。これは対照言語学研究の促進にも

つながると思われる。さらに、文化的な価値観やコミュニケーションスタイルに対する認識

を深め、異文化間コミュニケーションに対する意識を高めることが期待される。

もう一つは、通訳の技術を習得することが、将来のキャリア・デザインに役立つことであ

る。通訳は日系企業が外国人人材に期待される職務の一つであり(野元 2007)、観光産業

における日本語ガイドの需要も多い(ラクトマナナ 2017)ことを考えれば、日本語習得の

プロセスで通訳を学ぶことは仕事の上で有用であるだけでなく、コミュニティや個人の日常

生活などあらゆる場面で異文化・異言語間のコミュニケーションを助け、社会貢献に役立つ

だろう。

一方で、日本語教師が母語の異なる複数の学習者に通訳訓練を行うための課題もある。最

大の問題は教師が学習者の母語を必ずしも使えないことである。そのため教材の準備には工

夫が要る。

日本語教育への効果がより期待できる外国語から日本語への通訳については、インターネ

ットで公開される日本語の字幕や通訳がついた動画が増えてきていることから、今後適切な

教材を入手できる可能性が高まると期待される。日本語から外国語への通訳では指導の焦点

は日本語の聞き取りと意味の理解に置かれるので、教師が外国語へのモデル通訳を行う必要

はないだろう。大使館のホームページなど外国語と日本語の対訳のある資料が入手できれば、

母語に通訳させた後でモデル訳を提供し、学習者自身に評価をさせた上で、誤解したり解釈

が難しかったりした個所について日本語の指導をすることができる。また、同じ母語の受講

生が複数いれば正確さの相互評価をすることも可能である。

通訳訓練の参加者はコミュニケーションを仲介する役割を与えられることにより、話者の

意図を正確に理解し、聞き手に伝わるような訳出を心がけるようになる。また自分の通訳に

対して直ちにフィードバックが返ってくることは非常に刺激的で、学習の意欲が高まるであ

ろう。通訳および通訳訓練法がこれからの日本語教育に積極的に導入されることを期待する。

1.CEFR-J 新しい日本の英語教育のための汎用枠

<http://www.cefr-j.org/download.html>2019年 2月 11日参照

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2.JET プログラムは、「語学指導等を行う外国青年招致事業」(The Japan Exchange and

Teaching Programme)の略称で、地方自治体が総務省、外務省、文部科学省及び一般財団

法人自治体国際化協会(CLAIR)の協力の下に実施されている。

<http://jetprogramme.org/ja/languagecourses/> 2019年 2月 11日参照

3.三浦昭・岡まゆみ(1998)『中・上級者のための速読の日本語』The Japan Times、105-109.

参考文献

(1)飯塚秀樹(2009)「通訳訓練法による英語力向上の優位性と語学指導への応用-最新の

SLA研究の視座を交えて-」『通訳翻訳研究』第 9号、107-122.

(2)井上優(2002)「言語の対照研究」の役割と意義」国立国語研究所編『日本語と外国語

の対照研究X-対照研究と日本語教育』くろしお出版、3-20.

(3)ガジョ, L.(2012)「講演記録-複言語主義、その社会的課題と教育上のリソース」(西

山教行(訳))『言語政策』第 8号、53-61. 原題:Gajo, L.(2012) Plurilinguisme :

enjeux sociaux et ressources educatives.

(4)クック,G.(2012)『英語教育と「訳」の効用』(斉藤兆史・北和丈 訳)研究社

【原著: Cook G.(2010). Translation in Language Teaching. Oxford University Press.】

(5)熊谷智子(2002)「「対照研究」と「言語教育」をつなぐために」国立国語研究所編『日

本語と外国語の対照研究X-対照研究と日本語教育』くろしお出版、21-34.

(6)篠塚勝正(2010)「英語教授法としての通訳訓練法と文法読訳法の差異 認知言語学見

地から」『成城英文学』第 34号、17-37.

<https://seijo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=

repository_view_main_ _item_detail&item_id=858&item_no=1&page_id=13&block_id=

17>2019年 2月 10日参照

(7)白井恭弘(2008)『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』岩波新書

(8)新崎隆子(2005)「英日逐次通訳プロセスを応用した英語学習」『通訳研究』第 5号、

183-201.

(9)新崎隆子(2010)「通訳のコミュニケーション調整仮説-英日逐次通訳の事例から」青

山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻 2010年度博士論

(10)杉田由仁(2007)「DLS英語学習法(Dynamic Listening and Speaking Method)を応

用したトレーニングによるスピーキング指導の効果」『山梨県立大学看護学部紀要』第 9

巻、55-65. <https://ci.nii.ac.jp/naid/110006406704>2019年 2月 10日参照

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(11)スルタナリエワ アセーリ(2018)「中級学習者を対象にした通訳授業の改善-まとま

った話をする能力養成を目指して-」『日本言語文化研究会論集』第 14号、39-63.

(12)染谷泰正(1996)「通訳訓練手法とその一般語学学習への応用」『通訳理論研究』11、

7-44.

(13)染谷泰正(2010)「大学における翻訳教育の位置づけとその目標」『外国語教育研究』

第 3号、73-103.

(14)染谷泰正・河原清志・山本成代(2013)「英語教育における翻訳 (TILT: Translation

and Interpreting in Language Teaching) の意義と位置づけ-CERF による新たな英語

力の定義に関連して」『語学教育エキスポ 2013 (プロシーディングス)』、27-3.

<http://www.someya-net.com/kamakuranet/publications.html>2019年 2月 6日参照

(15)高見澤孟(2004)『新・はじめての日本語教育 2』アスク出版

(16)鳥飼玖美子(2014)「日本における通訳教育の変遷」『通訳教育論集』、89-95.

(17)鳥飼玖美子(2018)『英語教育の危機』ちくま新書

(18)長坂水晶(2010)「通訳養成に携わる非母語話者日本語教師のための教授法授業-通訳

訓練法を扱った実践-」『国際交流基金日本語教育紀要』第 6号、57-75.

(19)仲谷佳恵・室田真男(2012)「DLS(Dynamic Listening and Speaking Method)英語学習

を元にした: スピーキング練習支援システムの開発 Development English Speaking

Practice System : Based on Dynamic Listening and Speaking Method」『電子情報通信

学会技術研究報告』、2012 -11-10、ET教育工学 112(300)、43-48.

(20)中村幸子(2014)「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)と通訳翻訳教育の接点-言語教

育観を中心に-」『通訳教育論集』、63-72. 通訳教育指導法プロジェクト

(21)野元千寿子(2007)「日系企業が現地社員に求める「ビジネス日本語」の実態」『ポリ

グロシア』第 13巻、69-83.

(22)平賀優子(2008)「日本英語教授法史における Ollendorff の教授法の位置づけ」『日

本英語教育史研究』第 23巻、75-100.

<https://www.jstage.jst.go.jp/article/hisetjournal1986/23/0/23_75/_article/

-char/ja>2019年 2月 14日参照

(23)宮元友之(2014)「日本語非母語話者への通訳訓練-JETプログラム通訳集合研修の実

践例」『第 2回通訳教育指導法研究プロジェクト研究会』2014年 6月 29日発表

(24)柳瀬陽介(2007)「複言語主義 (plurilingualism) 批評の試み」『中国地区英語教育

学会研究紀要』37、61-70.

<http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00033694>2019年 2月 14日参照

(25)ラクトマナナ スルフニアイナ(2017)「JF日本語教育スタンダードを活用した観光

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ガイド育成のための日本語教科書開発-マダガスカル アンタナナリボ大学日本語コー

スの実践」国際交流基金『日本語教育通信 日本語教育レポート』第 34回

<https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/tsushin/report/201706.html>

2019年 2月 11日参照

(26)Carreres, A. (2006, D). Strange bedfellows: Translation and language teaching.

The teaching of translation into L2 in modern languages degrees: Uses and

limitations. In Sixth Symposium on Translation, Terminology and Interpretation in

Cuba and Canada. Canadian Translators, Terminologists and Interpreters Council.

<http://www.cttic.org/publications_06Symposium.asp>2019年 2月 6日参照

(27)Cummins, J. (2005). Teaching for Cross-Language Transfer in Dual Language

Education: Possibilities and Pitfalls. TESOL Symposium on Dual Language

Education: Teaching and Learning Two Languages in the EFL Setting

<https://ja.scribd.com/document/175028926/Teaching-for-Cross-Language-

Transfer-in-Dual-Language-Education>2019年2月 8日参照

(28)Hill, J. K. (1979). Consecutive Interpreting in Advanced Language Work. META,

Volume 24, 442-450.

(29)Kramsch, C. (2009). Third culture and language education. In V. Cook & L.Wei

(Eds.),Contemporary applied linguistics,233-254. London: Continuum.

<http://lrc.cornell.edu/events/past/2008-2009/papers08/third.pdf>2019年 2月

9日参照

(30) Krashen, S.D. (2000). Principles and Practice in 2nd Language Acquisition. The

Internet Edition. University of Southern California. (Original work published in

1982. NY: Pergamon).

<http://www.sdkrashen.com/content/books/principles_and_practice.pdf>2013年 8

月 11日参照

(31)North, B. & Piccardo, E. (2016). Developing illustrative descriptors of aspects

of mediation for the Common European Framework of Reference (CEFR).Common European

Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment.Council of

Europe.

<https://www.coe.int/en/web/common-european-framework-reference-languages/

documents>2019年 2月8日参照

(32)Takimoto, M. & H. Hashimoto. (2010). An “Eye-Opening” Learning Experience:

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Language Learning through Interpreting and Translation. Electronic Journal of

Foreign Language Teaching. Volume.7, No.1. 86-95.

特別講義で使用したオンライン映像

(1)第 4回キルギス共和国夏季日本語教育セミナー1日目ワークショップⅡ(2016年 8月

19日)で使用されたオクジャヴァ、ブラト・シャルヴォヴィチ(Окуджава, Булат

Шалвович)氏の講演映像(1989年 10月 26日ヤクルトホールで行われたロシアの吟遊

詩人オクジャヴァ、ブラト・シャルヴォヴィチ氏の公演の際に行われた講演の映像)

<https://www.youtube.com/watch?v=xpaMbgNMZhc&t=3430s>2018年 6月 3日参照

(2)2013年 12月 20日、大相撲の大砂嵐関が東京外国語大学・アラビア語専攻で特別授業

を行い、アラビア語で学生と質疑応答(2014/02/15 に公開)

<https://www.youtube.com/watch?v=2usd4gMWOcI>2018年 6月 8日参照

(3)モロドガジエフ・リベリク キルギス共和国特命全権大使のビデオメッセージ

<https://www.youtube.com/watch?v=BksQWB54-b8>2018年 6月 8日参照

(4)森川佳三 日本アラブ協会会長挨拶

<japanarab.jp/about.html>2018年 6月 8日参照

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Interpretation training methods and their application

to Japanese language education for non-native speakers

SHINZAKI Ryuko

Abstract

This paper discusses the possibility of applying interpretation training methods to Japanese language

education for non-native learners using the Translation and Interpretation in Language Teaching approach, which

focuses on the role of translation and interpretation in foreign language education. As the traditional grammar

translation method has been blamed for the ineffectiveness of English language education in Japan, the Ministry of

Education issued new study guidelines that restrict the use of Japanese in language classes. However, the use of

interpretation has become more popular for university foreign language training based on a belief that these

methods can help students improve their linguistic competence and deepen their intercultural communication skills

and awareness. Therefore, this paper reviews several different interpretation training methods and proposes a way

to employ them to Japanese language education for non-native speakers.

【Keywords】TILT, grammar translation method, plurilingualism, mediation, interpreting training method