22
公共図書館 健康・医療情報サービスへの要望: がん患者のインタビュー調査から 第33回医学情報サービス研究大会 三輪眞木子 1) 田村俊作 2) 池谷のぞみ 2) 須賀千絵 2) 八巻知香子 3) 高山智子 3) 越塚美加 4) 1) 放送大学 2) 慶應義塾大学 3) 国立がん研究センター 4) 学習院女子大学

長崎 公共図書館・医療情報サービスへの要望

Embed Size (px)

Citation preview

公共図書館

健康・医療情報サービスへの要望:

がん患者のインタビュー調査から

第33回医学情報サービス研究大会

三輪眞木子1)

田村俊作2)

池谷のぞみ2)

須賀千絵2)

八巻知香子3)

高山智子3)

越塚美加4)

1) 放送大学2) 慶應義塾大学3) 国立がん研究センター4) 学習院女子大学

アウトライン

•目的•方法•要望•制約

2

目的

•がん患者・家族の医療情報探索プロセスにおける公共図書館の利用状況と公共図書館

サービスへの要望を明らかにする。

•公共図書館の医療情報サービスの今後の展開に向けた要望を提示する。

目的・方法・要望・制約

3

方法

アンケート調査(2014年10月~11月)(インタビュー調査協力者を募集)

インタビュー調査(2014年12月~2015年2月)(対面6名・電話13名)⇒有効18名

内容分析4

目的・方法・要望・制約

方法:アンケート調査

•対象:がん対策情報センター患者・市民パネルメンバー100名

•目的:インタビュー調査協力者の募集•内容

• がん治療プロセスにおける公共図書館利用• がん治療プロセスで利用した情報源• インタビュー調査への協力の可否

•方法:調査票を電子メールに添付⇒回答者数27名中19名がインタビュー調査に協力

5

目的・方法・要望・制約

方法:インタビュー調査

•対象:がん患者18名・家族1名•目的:がん治療における情報探索プロセス中の公共書館利用の有無・利用内容・要望を把握

• インタビュー方法:対面6名・電話13名⇒有効回答18名

•分析方法:書き起こし・内容分析(絶えざる比較法)•要望の導出:プロジェクトメンバーによる協議

6

目的・方法・要望・制約

方法:インタビュー調査項目

• がんと判明した時期と診断を受けるまでの経緯• がんと診断される前のがん情報に関する知識• がんと診断されてからの病気に関する情報探索方法•情報探索における情報ニーズと利用情報源•診断時点とインタビュー時のがん知識の変化• Web情報の信頼性の判断基準•公共図書館健康・医療情報サービスへの要望•他の患者への情報探索方法のアドバイス⇒公共図書館を利用しなかった=7 利用した=11

7

目的・方法・要望・制約

要望1:患者を含む非来館者への広報

公共図書館を利用しなかった回答者の多くは、図書館のPR不足

を指摘⇒患者がよく利用するWebサイトや地域の医療機関を通じ

た図書館の医療情報サービスの広報が望まれている。

医師から話をしてもらうというのは大きいと思います。・・・冊子みたいなものを作って、それを渡すと。そこには図書館にこんなものがあるというのも書いてあるし、・・・初診でがん患者に会った先生は必ずそれを渡さなければいけないというように(P01m)患者が集まる場所(病院、相談窓口、インターネット都道府県がんサイト、テレビ・ラジオなど)で公立図書館にもがん情報提供サービスがあることを知らせてください。公立図書館内のがん情報サービスを強化し、インターネットサイトにもサービスの内容を掲載してください。(P11f)8

目的・方法・要望・制約

要望2:選書基準の明確化

公共図書館は利用者が信頼して来る場所なので、患者を

惑わす根拠の乏しい医療書籍を提供すべきではない⇒選書

基準を明確化して図書の購入・寄贈・リクエストに対応して

ほしい。

図書館って・・・たぶん結構みんな信頼して来ると思うのです。・・・「がんが治った!!」という話の流れで、ある医療機関を勧めるような体験記をまとめた書籍も、通常の闘病記と並べて置いてあるが、如何なものかと・・・その基準って図書館はどうやって決めているのかなって、ちょっと思いました。 (p04f)9

目的・方法・要望・制約

要望3:新しい医療書を揃え古い医療書を

除籍

公共図書館の医療書籍が古いため、最新の根拠に基づく医療情

報を得られないことが課題である。

一番古いのは10年ぐらい前の出版で、最近でも2013年・・・がんや

医療の関係というのは、とにかくどんどんどんどん進んでるじゃない

ですか、・・・(P12m)

・・・発行、出版されたのが古くて、今風の情報はないんですね。それで、図書館の本はちょっと古いなということが分かりました。・・・がん全般に関することとか、がん治療に関することっていうのはやっぱり、新しい情報を入れてもらいたいなあと思います。(P16m)10

目的・方法・要望・制約

要望4:パンフレット類を揃える

公共図書館には最新パンフレット類が整備されていないため、地

域の行政機関とも連携をとり、情報を得て配備し利用者に提供し

てほしい。

医療機関が発行するパンフレット類は、あまり置いていないように思います。地方都市の図書館ほど、それらを充実してほしいと思います。(P07m)公共図書館というのは、パンフレットはないですよね。・・・あるってわかっていれば、本屋に行くより先に図書館に行きますね。そこに行けば置いてあったというのが大事かなと。(P17f)

11

目的・方法・要望・制約

要望5:希少がん情報へのアクセス提供

希少がん情報は入手しにくい⇒図書館ネットワークを通じて

アクセス可能にしてほしい。

希少がんについての情報がもっとあってよいと思う。どうしても、罹患する頻度が高ければその病気について多くの本が揃えられるのは仕方がないが、患者数が少なければこそ、図書館で書籍を揃えていただきたい。(P04f)主要ながんに偏った蔵書になっているきらいがある。「がん」について網羅した図書館があればよい。(P10m)

12

目的・方法・要望・制約

要望6:電子版医療書籍の増加

入院患者による公共図書館の書籍利用を可能にし、希少がん等

の入手しにくい情報の検索性を高める⇒電子版医療書籍を増や

してほしい。

やはり検索性の問題です・・・該当するタイトルの本かなということであれば、いったん手に取って中をぱっぱっぱと見て探していくということになりますので、すごく手間がかかるわけです。入院中には図書館を訪れることは出来ないので・・・図書館の蔵書を電子化して、電子書籍として貸し出されるシステムがあれば・・・ (P10m)13

目的・方法・要望・制約

要望7:利用者が探しやすい排架

公共図書館を使い慣れていない利用者が自分で本を探せるよう

に、排架方法を工夫する。

医療(490番台)にならべられており、「がん」に特化して排架していないので、探すのに時間がかかる。・・・予防に関するものとか、ここをもめば良くなるよとか、老齢の方たちが多いので、歩けばいいよとか、どっちかというとそういった本が多いですよね。だからやっぱり本当にがんというものを見たい、知りたいというときは、どうしたらいいかなというのは感じます。(P08f)・・・目標的な治療とか、ガイドラインとか、そういうのを調べようというときは、「どこにあるの?」みたいなものは感じます。(P08f) 14

目的・方法・要望・制約

要望8:図書館員が介入しない貸出と返却

図書館員に「がん患者」であることを知られたくない患者は対面を

必要としない貸出・返却サービスの提供を望んでいる。

・・・[一般の]書店では、女性だから乳がんとか子宮がんとか買いにくい・・・たぶん男性でもやっぱり前立腺がんとか精巣腫瘍の人とかも借りづらいと思うし、まずがんというので借りづらいのかなというのはすごく感じます。・・・ネット予約はできるけど、カウンターに取りに行かなきゃいけないというのがやっぱり結構敷居が高くて。・・・私がそのカウンターにいたら「あ、この人こういう本を借りるんだ」って思っちゃうよな、という思いがあって・・・ (P03f)15

目的・方法・要望・制約

要望9:患者の情報ニーズを予測した

ナビゲーション

告知直後に医療情報を探す患者・家族の気づきを促すナビゲー

ションを提供してほしい。

・・・病気にかかった人の抱える課題(当人だけでなく、家族、ライフスタイル、未来、子供等)について手に取れるような情報を集めてほしい。(P14m)患者の立場でいえば・・・病気のことしか考えられないので、医療のところに・・・高額医療費のこととか、障害年金だったり、保険だったりという本が・・・置いてあれば、「自分は治療するにあたって、これから[お金]が必要なんだ」と、それをどうしようというのを、逆に、図書館で本を探すときに、気付ける(P15f) 16

目的・方法・要望・制約

要望10:利用者へのヘルスリテラシー教育

最新医療情報を報告する学術論文を含むインターネット上の医

療情報へのアクセス支援⇒公共図書館に医療情報データベー

スを整備するとともに、医療情報の探し方・評価法を教えてほしい。

情報を調べるための情報とか・・・情報にたどり着く前の情報と、あとはその情報をどういう風に自分が扱ったらいいかという情報が、意外とないんですよ。・・・リテラシーの一つとして、・・・公共的なところからもうちょっとこう頑張って発信してもらえると、利用もしやすいし、利用の仕方もわかるし、・・・上級者の人じゃない人たちでも、お年寄りも、・・・利用しやすくなるのかなというのはありますね。(P15f)17

目的・方法・要望・制約

要望11:地域図書館ネットワーク拡張によ

る小規模図書館利用者のアクセス改善

地域の小規模公共図書館には医療専門書籍が殆どない⇒国立

国会図書館資料へのアクセスを可能にして都道府県レベルの図

書館ネットワークを充実してほしい。

国立図書館にある書籍についても地域の図書館で検索・閲覧・コピーの取り寄せなどができるようなシステムができたら・・と思います。(P02f)自分の住んでいるところの図書室とかも行ったんですが、全くそれらしき本もなく。・・・体験記のようなものは置いているんですが、あとは『家庭の医学』程度なんですよね...[都会の図書館に]借りに行った後、レンタルCDのように郵送で返せるとかっていうシステムが有ったら、大変便利かなって、ちょっと思うんですよね。(P17f)

18

目的・方法・要望・制約

要望12:病院図書室等との連携

病院図書室との連携により、公共図書館でパンフレット等の最新

情報を提供してほしい。

病院の図書室とのリンクみたいなのができるといいんじゃないかと思うんですね。病院の図書室には、本というのより、どちらかというとパンフレットなんかも結構おいていますよね。公共図書館というのは、パンフレットはないですよね。・・・あるってわかっていれば、本屋に行くより先に図書館に行きますね。そこに行けば置いてあったというのが大事かなと。患者になったときに、普段行っていたけど、あったよねというのでもう一回行くみたいなのがありますね。(P17f)19

目的・方法・要望・制約

制約

•調査結果は、自分の病気について情報を得たうえで治療に関して能動的な意思決定を下すことを望む

がん患者の意見に基づくものであり、受動的意思決定

を望む患者には適用できない。

• がん以外の病気の患者には適用できない。• インタビュー対象は18名と少数で、ランダム化や量的な比較は行っていないため、調査結果を適用できる範

囲は限られている。

20

目的・方法・要望・制約

謝辞

アンケート調査・インタビュー調査に協力してくださった

国立がん研究センターがん対策情報センターの患者・

市民パネルの皆様に感謝します。

本研究は、以下の研究助成を受けて実施しました。

•日本学術振興会科学研究費「アクション・リサーチによる公共図書館課題解決サービスのデザイン研究班」

代表:田村俊作

•日本学術振興会科学研究費「市民の健康支援のための価値互酬型サービスを支える知識共同体の構築」

代表:池谷のぞみ

21

ご清聴ありがとうございました!