1
第5章 資源特性値の推定
「水産資源学」 北海道大学水産学部
准教授 松石 隆
2
5.1 資源特性値とは
漁獲対象資源量を決定する要因 加入
加入年齢 加入量
成長 成長曲線のパラメータ
自然死亡 自然死亡係数
漁獲死亡 漁獲死亡係数 漁獲開始年齢
3
5.2 tr, tc, tλの推定
加入年齢tr :産卵場→生育場を回遊して漁場に来る年齢。種によっておよそ決まっている
漁獲開始年齢tc:加入後、漁獲を開始する年齢。漁具によって決まる
ナイフエッジ型を仮定するが、実際には幅を持つ
4
漁獲開始体長の推定
5
5.3 生残率、全減少係数の推定
生残率、全減少係数を具体的に推定する方法
( )
( )Z
Z
eZFE
MFZNNZ
eNNNNS
−
−
−=
+=−==
=
1
ln 1212
12
6
5.3.1 年級群の減少過程
漁獲物の年齢組成 年級群を追う ある年で見る
横軸に年齢、縦軸に対数を取った個体数の指数を取ると、その傾きがZとなる
7
5.3.2 漁獲物の年齢組成
若齢では加入・漁獲開始が不完全のため若齢のデータは用いない
資源・漁獲が非平衡の場合も注意が必要
8
5.4 FとMの分離
もし漁獲努力量fが異なる
期間が有れば、qとMを推定できる。
MqfMFZ +=+=
9
自然死亡係数について
自然死亡:漁業以外の原因による死亡
実際にはその要因は様々 病気 被食 餌不足 環境の影響 他種との競合 (移出・密漁) (放流死亡)
具体的な推定は困難な場合が多い 標識放流 飼育 漁獲対象となっていない資
源の資源量推定 経験式
感度解析によって結果への影響を評価して使用
10
5.5 コホート解析(VPA)
年齢別漁獲尾数を使って資源尾数を推定する方法
スタンダードな資源評価手法 国際会議 TACの計算
理論的発展がされている チューニングVPA 統合型VPA SVPA
11
VPAの基本的な考え方
ある池に1月に1歳魚を多数放流した。 そのままにしておくと,1年間で1/4に減少 毎年6月に漁獲し以下の尾数が漁獲された 1歳の時 100 2歳の時 300 3歳の時 200
もともと何尾放流されたのか
12
1歳魚放流 ? 尾
1歳魚の漁獲 100尾
2歳魚の漁獲 300尾
3歳魚の漁獲 200尾
13
解答1
とにかく600尾漁獲されたのだから 少なくとも600尾は放流された
14
解答2
解答1では,自然死亡を考慮していない 3歳魚が200尾獲れた→3歳時に6月には200尾いた 1年の生残率が1/4ということは半年で半分が死ぬ 3歳の1月には400尾,2歳の6月漁獲後には倍の800尾
居たはず 2歳の漁獲前には800+300で1100尾いたはず
15
2歳魚の漁獲 300尾
3歳魚の漁獲 200尾
6月 少なくとも
200
1月 少なくとも
400
生残率1/2
7月 少なくとも
800
6月 少なくとも
1100
生残率1/2
16
(つづき)
2歳の漁獲前には800+300で1100尾いたはず 2歳の正月には倍の2200尾 1歳の漁獲直後には倍の4400尾 1歳の漁獲尾数は100尾だったので,1歳の漁獲直前には4500尾
1歳の正月には少なくとも倍の9000尾
17
1歳魚放流 9000尾
1歳魚の漁獲 100尾
2歳魚の漁獲 300尾
6月 少なくとも
1100
1月 少なくとも
2200
6月 少なくとも
4400 少なくとも
4500
7月
18
解答3
解答2では3歳魚の生き残りを考慮していない 3歳の12月に100尾生き残っていると仮定する
19
1歳魚放流 15400尾
1歳魚の漁獲 100尾
2歳魚の漁獲 300尾
3歳魚の漁獲 200尾
3歳魚の生残 100尾
100x
2+20
0=40
0
400x
4+30
0=19
00
1900
x4+1
00=7
700
7700
x2=1
5400
20
VPAの計算(Popeの近似式)
21
VPAの特徴
漁獲圧が大きいほど推定値は信頼できる
過去の若齢ほど推定値は信頼できる
自然死亡係数Mを変えると絶対値は変わるがトレンドは変わらない
22
計算手順
23
漁獲方程式
eq. 1
最終年齢A(8歳以上のすべての年齢の魚が入っていると仮定)での資源尾数は
eq. 2
自然死亡係数
漁獲以外の要因での瞬間死亡率 M=0.25
漁獲方程式
( )( ) taMFta
tata NeMF
FC ta ,
,
,,
,1 +−−+
=
( )tA
tAtAtA F
MFCN
,
,,,
+=
24
Popeの近似式
同一年級群の資源尾数は
eq. 4 によって計算。
2/,1,1,
Mta
Mtata eCeNN += ++
25
VPAの計算(Popeの近似式)
26
最近年の漁獲死亡係数
漁獲死亡係数とC, Nの関係(近似式) eq. 5
MNNF tatata −= ++ )/ln( 1,1,,
27
ターミナルFの決め方
ある程度高齢になり、生息場所や体長に変化がなくなるとすれば、同じ年の高齢魚に対して、Fが同じになると考えても良い。
この仮定によって、近年、最高齢のFを与えれば、近年のコホート以外の資源量推定が可能
tAtA FF ,1, −=
28
N 年
年齢
1994 1995 1996 1997 1998
1
2
3
4
5
6+ given
29
近年のコホートの計算
漁具や努力量が大きく変わらなければ、年齢別Fは、年によって大きく変わらないはず
過去のFの平均値を仮定する ( )3,12,11,1,1 3
1−−−−−−− ++= TaTaTaTa FFFF
30
N 年
年齢
1994 1995 1996 1997 1998
1
2
3
4
5
6+
31
最終年、最高年齢のFについて
最終年についても が成り立つようにFA,Yを探索する。
完成
( )3,12,11,1,1, 31
−−−−−−− ++== TATATATATA FFFFF
( )2,1, TATA FFSS −−=
32
まとめ
資源特性値とは、漁獲対象資源量を決定する要因 加入、成長、漁獲、自然死亡
年齢組成から全減少係数を求める コホート解析で加入量を求める コホート解析の考え方 コホート解析の仮定
33
単語帳
knife edge cod end selection ogive total mortality natural mortality fishing mortality catch curve
cohort virtual population
第5章 資源特性値の推定5.1 資源特性値とは5.2 tr, tc, tλの推定漁獲開始体長の推定�5.3 生残率、全減少係数の推定5.3.1 年級群の減少過程5.3.2 漁獲物の年齢組成5.4 FとMの分離自然死亡係数について5.5 コホート解析(VPA)VPAの基本的な考え方スライド番号 12解答1解答2スライド番号 15(つづき)スライド番号 17解答3スライド番号 19VPAの計算(Popeの近似式)VPAの特徴計算手順漁獲方程式Popeの近似式VPAの計算(Popeの近似式)最近年の漁獲死亡係数ターミナルFの決め方スライド番号 28近年のコホートの計算スライド番号 30最終年、最高年齢のFについてまとめ単語帳