The City of Artistic Miracles The Essence of the Catalonian Modern Art from the Modernisme to the Avant-garde カタルーニャ近代美術の精華 フランセスク マスリエラ 1882 年の冬1882 年|油彩 カンヴァス|カタルーニャ美術館 © Museu Nacional dArt de Catalunya, Barcelona (2019) ジュアン リモーナ| 読書1891 年|油彩 カンヴァス|カタルーニャ美術館 © Museu Nacional dArt de Catalunya, Barcelona (2019)

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The City of Artistic MiraclesThe Essence of the Catalonian Modern Art from the Modernisme to the Avant-garde

カタルーニャ近代美術の精華

右:フランセスク・マスリエラ《1882 年の冬》1882年|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

左:ジュアン・リモーナ|《読書》1891年|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

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会期中のイベント ※最新の情報はHPをご覧ください。

[企画展示室内での催し]  会場:姫路市立美術館企画展示室、参加費:無料※ただし本展覧会の観覧券(半券でも可)が必要です。

ギャラリー・トーク当館学芸員による解説。展覧会の魅力をダイジェストでお伝えします。7月13日[土]、8月17日[土] 各回14:00–(約30分程度)

こどもギャラリーツアー 8月10日[土]、8月17日[土] 「カタルーニャ語での絵本の読みきかせ」11:00から約90分(受付は11:00まで) 集合場所:美術館1 階 ホール集合先着20名(付き添いは含まない) ※対象年齢:5 歳以上 

「音楽のまち・ひめじ」関連事業 

ギャラリーコンサート カタルーニャのギター音楽7月7日[日]、28日[日] 14:00–15:00奏者:渡辺悠也 氏

[講演会]会場:姫路市立美術館2F講堂定員80名(先着)、参加費:無料

オープニング記念講演

「奇蹟の芸術都市バルセロナを語る」6月29日[土] 14:00–16:30|開場13:30レクチャー:木下亮 氏(本展監修・ 昭和女子大学教授)ゲスト:ビクトル・ウガルテ・ファレロス 氏(インスティトゥト・セルバンテス東京 館長) ※逐次通訳付

講演会1

「カタルーニャ賛歌 芸術の都バルセロナ」7月20日[土]14:00–15:30|開場13:30講師:山脇一夫 氏(美術評論家)

講演会2

「愛と文化のカタルーニャの祝祭:サンジョルディ」8月10日[土] 14:00–15:30|開場13:30講師:モンセ・マリ 氏(関西カタルーニャセンター 会長)

[展覧会名] 奇蹟の芸術都市 バルセロナ展        カタルーニャ近代美術の精華[会  期] 2019 年6月29 日[土]– 9月1日[日][開館時間] 10:00–17:00(入場は16:30まで)[休 館 日] 月曜日(ただし7/15、8/12は開館)、7/16[火]、8/13[火][会  場] 姫路市立美術館 企画展示室

[出品点数] 約150点[料  金] 一般1200(900)円|大学・高校生600(400)円 中学・小学生200(100)円         ※( )内は前売り、20人以上の団体料金 

       ※同展入場券で常設展示室もご覧いただけます。[主  催] 姫路市立美術館、神戸新聞社[特別協力] カタルーニャ美術館、カウ・ファラット美術館[協  力] 日本航空、関西カタルーニャセンター[協  賛] マリエラ クラソンズジャパン、株式会社ライブアートブックス[後  援] スペイン大使館、カタルーニャ州政府、 カタルーニャ州政府貿易投資事務所、在バルセロナ日本総領事館、 インスティトゥト・セルバンテス東京、日本・カタルーニャ友好親善協会、 サンテレビ、ラジオ関西[助  成] ラモン・リュイ財団、シッジャス文化財団[企画協力] キュレイターズ

[プレスお問い合わせ] 《お問い合わせ・記事原稿送付先》 「奇蹟の芸術都市 バルセロナ展」 広報事務局(TMオフィス内)〒541-0046 大阪市中央区平野町4-7-7 平野町イシカワビル TEL: 06-6231-4426 FAX: 06-6231-4440 E-mail: [email protected]担当:馬場、岩下

[美術館ホームページ] http://www.city.himeji.lg.jp/art.html

Information

兵庫県姫路市本町68-25|68-25 Honmachi, Himeji, Hyōgo TEL 079-222-2288[アクセス]JR・山陽電車姫路駅より、神姫バス7または8番乗り場から[3、4、5、61、62、64、81、82、84、86番]乗車約8分、「姫山公園南・医療センター・美術館前」下車すぐ。姫路駅より徒歩約20分。*美術館には駐車場がありませんので近隣の駐車場(有料)をご利用ください。

《建設中のサグラダ・ファミリア》1906年photo © Arxiu Fotogràfic de Barcelona

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展覧会のみどころ&ポイント

出品作品約150点! カタルーニャではぐくまれた「近代性」とはなにか。6つの章からその魅力を探ります 「バルセロナ、そしてカタルーニャにとっての「近代性」というものは新しく突然発生したものではありません。19世紀中頃から20世紀の80年間にかけてバルセロナを中心に育まれた芸術こそ、まさにそのアイデンティティの特徴を雄弁に物語る期間です」とカタルーニャ美術館館長、ぺぺ・セラ氏は語ります。本展ではその魅力を余すことなく、6章(1章:

都市の拡張とバルセロナ万博、第2章:コスモポリスの光と影、第3章:パリへの憧憬とムダルニ

ズマ、第4章:四匹の猫、第5章:ノウサンティズマ―地中海へのまなざし、第6章:前衛美術の

勃興、そして内戦へ)に分けて展観。スペイン屈指の美術館であるカタルーニャ美術館、カウ・ファラット美術館の所蔵作品を中心に国内外の名品約150点をご紹介します。

当館は西日本で唯一の開催会場。市立美術館のレンガ造りの建物は、ガウディが建造に着手したカザ・ミラ(通称:ラ・パドレラ)と同時代を生き抜いてきました。 当館の建物は、1905–1945年終戦の年まで、旧陸軍第10師団の兵器庫・被服庫でしたが、戦後は 1947–80年、姫路市役所に転用 されました。市役所移転後、1983年より現在まで、市立美術館として活用され、戦後民主主義の象徴的存在となっています。当館の西館が建設された1905年は建築家ドゥメナク・イ・ムンタネーがカタルーニャ音楽堂の建設に着手し(1905年–1908年)、その翌年には世界的建築家のガウディがカザ・ミラの建設に着手した時期(1906年–1910年)にあたります。20世紀初頭に生み出されたカタルーニャの芸術を同時代の日本で生み出された建築空間でお楽しみいただく貴重な機会となります。異なる東西の都市で生み出された近代芸術の精華を、多くの皆様に伝え考える機会となれば幸いです。

約400頁にもおよぶ迫力の展覧会カタログ!カタルニア文化の研究資料として価値のある専門書となっています。 スペイン美術史研究の旗手木下亮氏(昭和女子大学教授)監修による展覧会カタログ。ピカソ研究の第一人者であるアドゥアル・バジェス氏(カタルーニャ美術館)はじめ日西両国の気鋭の研究者による最新の研究論文を掲載しています。内容のみならず、ビジュアルも充実したカタログを販売。現在のバルセロナの街の息吹を感じさせるムデルニズマ時代の建設物から建築途中のサクラダ・ファミリア(カタルーニャ図書館蔵)の写真まで現在と過去のバルセロナの街並みの雰囲気を濃厚に伝える仕上がりとなっています。縦 27.5× 横 21.0 × 厚 2.5 cm 重 さ:900 g 製作年:2019年|発行:神戸新聞社|頁数:392 頁|図版:164点|価 格 3,000円(税込)

20 世紀美術の巨星、芸術家ピカソ、ミロ、ダリ誕生の背景に迫る。 世界的建築家として名を馳せたガウディをはじめ、20世紀初頭のバルセロナはピカソ、ホアキン・トレース=ガルシアのような画家たちが芸術を学び、キャリアの起点とした都市でした。また、ミロ、ダリといった国際的前衛作家が生まれ育った地でもありました。本展では、「青の時代」以前の若きピカソが生みだした作品やダリ、ミロの初個展の際に出品された油彩画など、20世紀を代表する巨匠たちの初期作品を紹介します。

多彩な関連イベント 展覧会を多角的な視点から捉える機会として、様 な々分野から専門家をお招きした講演会やコンサート各種イベント11件の開催を予定しています。イベントの詳細に関してはプレスリリースの「会期中のイベント」をご覧ください。最新の情報は当館のホームページでもご案内いたします。

フランセスク・マスリエラ《1882年の冬》1882年|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

開催主旨

平素は、姫路市立美術館の運営につきまして格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。姫路市立美術館ではこの度、「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」を開催いたします。スペイン、カタルーニャ自治州の州都であり、地中海に面した港湾都市であるバルセロナ。同市は古代に遡る豊かな歴史と、19世紀に産業革命を経験し、経済・文化面で飛躍を見せた先進性とをあわせ持つ世界有数の国際都市です。本展ではその魅力の源泉を探るべく、バルセロナの近代化を促進させた都市計画の誕生(1859年)からスペイン内戦(1936–39年)に至るまで、約80年間に生み出された芸術文化を辿ります。世界遺産サグラダ・ファミリアの設計者アントニ・ガウディをはじめとした偉大な建築家たちの仕事はもとより、ラモン・カザス、サンティアゴ・ルシニョル、パブロ・ピカソ、ジョアン・ミロ、サルバドール・ダリら、カタルーニャが育んだ巨匠たちの作品を多数展示します。絵画を中心に彫刻・家具・宝飾品・図面など多様なジャンルの作品約150点を6章に分けてご紹介する本展は、当時のカタルーニャに花咲き誇った芸術の精華をご紹介致します。綺羅星のごとく並ぶ美術界きってのスターたちの共演をお楽しみください。

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第1章:都市の拡張とバルセロナ万博 カタルーニャの州都バルセロナは、19世紀中頃以降、産業革命に伴う旧市街の市壁取り壊しにより市域を拡張させ、近代都市として大きく発展しました。展覧会の冒頭を飾る本章では、現在のバルセロナの礎を築いたイルダフォンス・サルダーによる都市計画(1859年)やバルセロナが国際都市として本格的なデビューを果たした1888年の万国博覧会など、近代化する街の様相を絵画・彫刻作品のみならず多彩な資料を交えながらご紹介します。

左:アウゼビ・アルナウ《バルセロナ》|1897年|ブロンズ・砂岩(ムンジュイック産)|カタルーニャ美術館 © Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)右:G. L. ルイス《1888 年バルセロナ万博のポスター》|1888年|クロマトグラフ・リトグラフ・紙|カタルーニャ図書館|© Biblioteca de Catalunya

第2章:コスモポリスの光と影|Light and Shadow of Cosmopolis 近代カタルーニャを代表する建築家ドゥメナク・イ・タネー、アントニ・ガウディ、プッチ・イ・カダファルク。彼らはバルセロナのグラシア通りに面した一区画(通称「不和の街区」)にて、互いの美を競い合うかのようにそれぞれの建築を手がけました。本章では、これら三建築家に関連する作品とともに、多数の宝飾品や家具・調度類が並びます。バルセロナに住んだブルジョワたちの華やかな暮らしぶりの一端をご覧ください。

左:アントニ・ガウディ(デザイン)、カザス・イ・バルデス工房《カザ・バッリョーの組椅子》 |1904–06年頃|トネリコ材 カタルーニャ美術館(サグラダ・ファミリア建築委員会から寄託)|© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família右:ルマー・リベラ《夜会のあとで》|1894年頃|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館|© Museu Nacional d'Art de Catalunya, Barcelona (2019)

第3章:パリへの憧憬とムダルニズマ|Modernisme: Admiration for Paris ピカソらの先人である画家ラモン・カザスとサンティアゴ・ルシニョル。同時代のパリにおける美術動向を吸収しつつ、自らのアイデンティティに基づく新たな芸術表現を探求したカタルーニャの芸術家たちのリーダー格でした。本章では、世紀末のカタルーニャ芸術界において重要な役割を果たした彼らの多彩な活動をご紹介します。

左:サンティアゴ・ルシニョル《モルヒネ中毒の女》|1894年|油彩・カンヴァス|カウ・ファラット美術館右:ジュゼップ・リモーナ《初聖体拝領》|1897年|多彩色ストゥッコ|カタルーニャ美術館|© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

 

第4章:「四匹の猫」|Els 4 Gats 1897年、カザスやルシニョルらは、バルセロナ旧市街にカフェ・レストラン「四匹の猫」を開きます。パリ・モンマルトルのカフェ「黒い猫」に倣い、そこでは様 な々展覧会、影絵芝居、人形劇などが催され、独自の芸術雑誌も刊行されました。本章では「四匹の猫」に集った当代きっての芸術家たちの作品に加え、1899 年に常連となり、翌年にこの店で初の個展を開いた若かりしパブロ・ピカソの仕事をご紹介します。

左:ラモン・カザス《影絵芝居のポスター》|1897年|リトグラフ・紙|マルク・マルティ・コレクション|© Marc Marti Collection右:リカル・カナルス《化粧》|1903年|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館|© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

 

第5章:ノウサンティズマ―地中海へのまなざしNoucentisme: Gaze to the Mediterranean カタルーニャにおけるナショナリズムに根源を持ち、ローカルかつ地中海文明に根差した芸術表現を追求したノウサンティズマ。それはパリからの影響を積極的に受け入れたムダルニズマ芸術を批判的に継承する新たな芸術動向でした。本章には、このノウサンティズマを代表する作家たちの作品が並びます。カタルーニャ固有の土地性に対するまなざしは、時を経て、1929年のバルセロナ国際博覧会へと結びつきました。ピカソらの先人である画家ラモン・カザスとサンティアゴ・ルシニョル。同時代のパリにおける美術動向を吸収しつつ、自らのアイデンティティに基づく新たな芸術表現を探求したカタルーニャの芸術家たちのリーダー格でした。本章では、世紀末のカタルーニャ芸術界において重要な役割を果たした彼らの多彩な活動をご紹介します。

左:ラモン・カザス《アウジェニ・ドルスの肖像》|1906 –07年頃|鉛筆・木炭・紙|カタルーニャ美術館 © Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)右:シャビエ・ヌゲース、フランセスク・ケー《レストラン「カン・クリャレタス」のタイル壁画(サルダーナ)》|1923年|施釉タイル|バルセロナ・デザイン美術館 © Design Museum of Barcelona

第6章:前衛美術の勃興、そして内戦へ Rise of Avant-garde and to Spanish Civil War 本展を締めくくるこの章では、カタルーニャに前衛芸術が流入した1910 年代からスペイン内戦期までの芸術動向を辿ります。キュビスムやシュルレアリスムに影響を受けた若きジュアン・ミロとサルバドール・ダリの仕事をはじめ、新たな都市空間の実現に力を注いだ新鋭の建築家たち、さらにカタルーニャの芸術文化の活性化を目指した芸術愛好家たちの活動をご紹介し、内戦によって一旦は断たれてしまう彼らの夢をご覧ください。

左:パブロ・ピカソ《泣く女》|1937年|エッチング・アクアティント・ドライポイント・紙|ソフィア王妃芸術センター © 2019 - Succession Pablo Picasso - BCF( JAPAN)|© Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia右:ジュアン・ミロ《赤い扇》|1916年|油彩・厚紙|株式会社フジ・メディア・ホールディングス  © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2019 C2670

展覧会の構成

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リュイス・マスリエラ《女性の横顔のペンダント》 1908年頃|金・ダイアモンド・真珠・エナメル(プリカジュール、バスタイユ)|カタルーニャ美術館(バゲス・マスリエラ・コレクションから長期寄託)|© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

リュイス・マスリエラは当代バルセロナ有数の芸術家一族に生を受けた宝石職人です。既に父のジュゼップ、叔父のフランセスクは同地で名声を確立していたものの、彼はそれを国際的に発展させていきました。ジュネーヴやパリで宝飾デザインの研鑽を積み、その後、独特な半透明色の七宝表現である「バルセロナ七宝」を達成、国際的な評価を高めました。彼の作品はブルジョワジーや上流階級から次 と々買い求められ、その豪奢な生活に華を添えたのです。植物文様・ニンフ・蜻蛉といった要素が目立つ点はアール・ヌーヴォーの造形表現からの強い影響を窺わせます。

アウゼビ・アルナウ《バルセロナ》1897年|ブロンズ・砂岩(ムンジュイック産)|カタルーニャ美術館© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

静かに視線を下げ、荘重な雰囲気の女性の胸像が載る本作は、バルセロナの擬人像として制作されたもの。そこには自らの文化と経済に確固たる自信を持ち始めた当時のバルセロナの人々の姿が投影されています。冠から垂れるチェーンのような形状の帯は、カタルーニャ州、バルセロナ県、バルセロナ市、そしてサン・ジョルディ(カタルーニャの守護聖人)の紋章をあしらった四つの盾形のパーツで構成され、台座はムンジュイックの丘で取れた砂岩で出来ています。作者のアルナウは、「1888 年バルセロナ万博」のカフェ・レストラン館の装飾に携わって以来多くの建築家たちとのコラボレーションを行ったムダルニズマ建築の装飾彫刻を数多く手掛けた当時を代表する彫刻家。万博当時のバルセロナ市長リウス・イ・タウレットの功績を顕彰する記念碑を建立するため建築家プッチ・イ・カダファルクが考案した案の一部が単独の石膏像として作品化され、本作はその石膏像を基に1906 年にブロンズ化されたものです。

ルマー・リベラ《夜会のあとで》 1894年頃|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館 © Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

19世紀後半、華やかな生活を送るバルセロナの上流階級やブルジョワジーたちは、彼らの美的価値観を直接反映する絵画を好みました。彼らが理想とした豪奢かつ壮麗で心地よい生活を表象する作品が望まれ、鮮麗な衣裳を纏う女性や舞踏会の帰路、都市生活の一場面など、同時代の富裕層の暮らしぶりに取材した作品の需要が高まっていたのです。この文脈において優れた作品を残した画家としては、ルマー・リベラやマスリエラ兄弟の名が挙げられます。《夜会のあとで》は先述の典型的な主題設定にちなんでいるといえるでしょう。上品なドレスに身を包む女性像のみならず、彼女らの生活を彩る高価な家具調度類や美術品も描かれています。当時好まれた、富裕層を取り巻く文化的環境も射程に含む絵画世界が展開されています。

ジュアン・リモーナ《読書》1891年|油彩・カンヴァス|カタルーニャ美術館© Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona (2019)

兄ジュアンと弟ジュゼップによるリモーナ兄弟は、カトリックの信仰に基づく芸術団体「サン・リュック美術協会」設立の中心的な役割を果たした人物です。画家のジュアンは象徴主義的な油彩画や、ムンサラット修道院礼拝堂の壁画などを手掛けました。《読書》では、白いヴェールを被った女性が窓辺に佇み、イコンを手に聖書を読む姿が描かれています。

作品解説