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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識 Table of Contents. 不水溶性切削油との差異について 不水溶性と水溶性の違いについて 潤滑性能について 冷却性能について さび止め性能について 劣化性について 作業性について 経済性について 使用時は非危険物(消防法)! 水溶性切削油剤の形態について エマルジョンについて ソルブルについて ケミカルソリューションについて 水溶性切削油剤の JIS 分類について ◆水溶性切削油剤の JIS 分類 水溶性切削油剤を構成する成分について ◆水溶性切削油の構成成分 水溶性切削油剤使用上の注意について 水溶性切削油の希釈方法 Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識

Table of Contents.

不水溶性切削油との差異について ◆ 不水溶性と水溶性の違いについて ◆ 潤滑性能について ◆ 冷却性能について ◆ さび止め性能について ◆ 劣化性について ◆ 作業性について ◆ 経済性について ◆ 使用時は非危険物(消防法)!

水溶性切削油剤の形態について ◆ エマルジョンについて ◆ ソルブルについて ◆ ケミカルソリューションについて

水溶性切削油剤の JIS 分類について ◆水溶性切削油剤の JIS 分類

水溶性切削油剤を構成する成分について ◆水溶性切削油の構成成分

水溶性切削油剤使用上の注意について ◆ 水溶性切削油の希釈方法 ◆ 廃 液 処 理

Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識

不水溶性切削油との差異について

水溶性切削油の説明に入って行くにあたり、最初に不水溶性の切削油と比較した差異について 触れていきたいと思います。

不水溶性と水溶性の違いについて

全体的なそれぞれの性能特性を相対比較により示したものがこの一覧表になります。 詳細については、それぞれの項目毎に触れていきたいと思います。

○ △ × ◎ 耐劣化 性 能

◎ ○ △ ◎ さび止め 性 能

◎ ○ △ × 冷却性能

× △ ○ ◎ 潤滑性能

水溶性 ソリューション

水溶性 ソルブル

水溶性 エマルジョン

不水溶性 切 削 油

潤滑性能について

流体潤滑に関しましては、不水溶性に比較して 水溶性は同等若しくは劣性となります。 このため、水溶性油剤を使用する場合は、機械 の摺動面の潤滑性維持・機械の保守には留意 する必要があります。 また、境界及び超境界潤滑は、油性剤や極圧剤

などの含有成分により決まる為、極度の重切削 加工を除いて一般的には同等であると云われ ています。

Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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冷却性能について

水溶性加工油剤の不水溶性に対する最大のアドバンテージとなる性質で圧倒的に水溶性油剤の 方が優れています。 下の表に水と油の比熱と熱伝導率を示してあります。 比熱を比較しますと水は油の倍になっています。 一方、水の熱伝導率は、油の熱伝導率の約5倍となっております。 以上のことから、水は油より冷却性が大きいことが分かります。

水 油

比熱(cal/℃/g) 常温 1.0 0.4 ~ 0.5

熱伝導率 cal/cm/sec/℃ 常温 1.4×10-3 0.3×10-3

水溶性の場合 不水溶性の場合

さび止め性能について

水溶性油剤の場合、約 5~100 倍程度の水に希釈して使用する為、当然不水溶性油剤に比較 して劣ると云わざるを得ません。 適切な使用濃度の設定、次工程との時間差、さび止め処理などと管理に留意する必要があります。

錆錆

油 水

Knowledg

e --- 金属加工

油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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劣化性について

切り粉、異物の混入による液汚れの排除に関しましては、不水溶性油剤・水溶性油剤共に同様で 必要となりますが、水溶性の場合は更にバクテリアにより腐敗劣化を起こします。 機械潤滑油や切り粉の混入によりバクテリアの繁殖は促進されますので充分な留意が必要と なります。

オイルスキマー

Air(バブリング)

切り粉

作業性について

作業性に関しましては、水溶性油剤の方が不水溶性油剤に比較して優れていると云えるかも知れま

せん。特に発煙は殆ど無く又飛散した液も床面の汚染や作業服の汚染をもたらす事も殆どありませ ん。しかしながら使用者の皮膚に対する影響の部分に関しては、一概に論じる事は困難ですが一般

的に水溶性油剤に於いてひどく発生する場合が多く見受けられます。何れにしろ、作業終了後の充

分な洗浄と保護クリームなどによるスキンケアにより抑制する事が大切です。

発 煙 不

水溶性の 場 合

手荒い

手荒れ対策

水溶性の 場 合

Knowledge --- 金属加工油

護クリームの

使 用

の基礎知識[水溶性切削油剤]

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経済性について

希釈して使うため、使用時の油剤コストが安い。 不水溶性切削油の場合、200Lタンクに対して、200L(1D/M)投入しなければなりませんが、 水溶性切削油の場合、水道水を180~193L入れ、7~20Lの原液を投入すれば良い事に なります。

水 180~193L

水溶性の場合

原液 7~20L 200L タンク

不水溶性の場合 200L ドラム×1

200L タンク

使用時は非危険物(消防法)!

前項に於いても触れましたが、水溶性切削油は水により希釈して使うため、使用時の油剤は 不燃性であり消防法の適用を受けない非危険物となります。 不水溶性切削油や他の不水溶性油剤に於いて度々問題となる消防法(貯蔵数量など)の危険物 適用を受けず、工場の無人化や 24 時間操業などに適しています。 しかし、エマルジョンやソルブルの一部製品の原液には引火点を有する製品もあり貯蔵時に 消防法の適用を受けますのでご注意下さい。

水溶性原液

水 180~193L

水溶性の場合

原液 7~20L 不燃性

引火点が無く 消防法の適用 を受けない。 (非危険物)

不水溶性の場合

可燃性

引火点を有し 消防法の適用

を受ける。

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水溶性切削油剤の形態について

このページでは、水溶性加工油剤に於いて最も特徴的である水での希釈時の形態 (エマルジョン・ソルブル・ケミカルソリューション)の違いや特徴について触れていきたいと思います。

エマルジョンについて

特水

油剤外観写真 希釈形態図(模式図)

水の分子 界面活性剤の分子

油の分子

油 相

徴 に希釈した時の外観:乳白色 に希釈した時の油の粒子径は 2~ 5µm 潤滑性は一般に良い 防錆性は 良~悪 耐腐敗性は、劣る事が多い 廃液処理は容易

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ソルブルについて

特水

油剤外観写真

水の分子界面活性剤の分子

油の分子

希釈形態図(模式図)

水溶性添加剤 の分子溶解物質の分子

油 相

徴 に希釈した時の外観:透明~半透明 に希釈した時の油の粒子径は 0.2~0.001µm潤滑性は 良~悪 防錆性は一般に良い 耐腐敗性 良~悪 洗浄性は良い 廃液処理性 良~悪 泡立ちは 少~多 作業性が良い

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ケミカルソリューションについて

特水

油剤外観写真 希釈形態図(模式図)

水の分子 溶解物質の分子

徴 に希釈した時の外観:透明 に希釈した時の溶解物質の粒子径は 0.001µm 以下

潤滑性は劣る 防錆性は良い 耐腐敗性は良い 泡立ちは少ない 冷却性は良い

廃液処理性は悪い

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水溶性切削油剤を構成する成分について

こ 思

のページでは、水溶性切削油がどの様な成分で構成されているのかに触れていきたいと

います。

水溶性切削油の構成成分

その他の添加剤 ◆ 消 泡 剤 ◆ キレート剤 ◆ 着 色 剤 ◆ 香 料 など

防 腐 剤 ◆ フェノール系 ◆ ホルムアルデヒド供与体 など

非鉄金属防食剤 ◆ 窒素化合物 ◆ 硫黄・窒素化合物 ◆ その他化合物

極圧添加剤 ◆ 硫黄系 ◆ りん系 ◆ 有機金属化合物など

さび止め剤 ◆ 有 機 系 ◆ 無 機 系 など

界面活性剤 ◆ アニオン系 ◆ ノニオン系 など

基油(基剤) 及び油性剤

◆ 鉱物油 ◆ 合成油 ◆ 水(水道水 or 軟化水)

◆ 油脂類 ◆ エステル類 など

カップリング剤 ◆アルコール類 など

水溶性切削油

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固体固体

基 油 (Base oil) 基油は、「天然の成分である鉱物油」と 「化学的に合成された合成油」に分ける 事が出来ます。 「鉱物油」には、パラフィン系・ナフテン系 などがあり、「合成油」にはポリオレフィン ・ジエステル類・ヒンダードエステル類 などがあります。 役割としては、その名の通り油剤のベース として各種添加剤をつなぐ媒体としての役割 を果たします。 また、ソルブルやケミカルソリューションの場合は、 水(水道水や軟化水)も基剤として使用されます。 油 性 剤 水溶性切削油の場合は、油性剤も基剤的な扱いで使用します。 油性剤には油脂やエステル類などがあり、多くの油性剤は長い炭化水素鎖の末端に極性基を有 する化学構造を持っています。 この極性基を有する添加剤分子が金属表面に吸着配列して緻密な吸着膜を形成します。 油性剤は、比較的軽加重領域の流体潤滑と境界潤滑が混合する潤滑領域で降下を発揮します。

基油の働き ・油剤の根幹 ・各種添加剤を媒体として結びつける

基油の働き

溶 解

添 加

各種添加剤

水水 溶溶 性性

切切 削削 油油 基 油

or 水

油性剤の構造 油性剤の構造

極性基 極性基 分子構造 分子構造 分子

極性基

液体液体

油性剤の作用 油性剤の作用 吸着膜を形成

→ 潤 滑

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界面活性剤 水と油は仲違いを している人間関係 の様にそのままで は決してお互いに 溶け合う事はありま せん。 しかし、ここに適切 な界面活性剤を添 加してやる事で両者 はお互いに綺麗に 溶け合います。 つまり界面活性剤 は、お互いにそのま までは溶け合わない 両者の間で仲介役 を受け持ちお互い を溶け合う様にする 存在であると云う事が できます。

界面活性剤

界面活性剤の役割とは? 対 立

界面活性剤あり

界面活性剤なし

分散 溶解 溶解

分散

界面活性剤添加 界面活性剤添加

++ 油油水水

攪攪 拌拌

分 離 分 離攪攪 拌拌

++ 油油 水水

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では、どの様な仕組 みで界面活性剤は 両者を仲介している のかに触れていきた いと思います。 界面活性剤には、 水に溶けやすい部分 (親水基)と水に溶け 難い部分(親油基)と が存在しています。 例えば水の中に油の 粒がある場合には、 図の様に親油基は油 の方へ親水基は水の 方へ向いて綺麗に並 び油粒子の表面を 親水基が覆ってしまう ので油粒子は安定に水の中に分散します。 また、反対に油の中に水が分散する場合も親水基と親油基の向きが逆になるだけで同様に安定を 得る事が出来ます。 この様に界面活性剤は、水と油の境界面である界面に吸着配列する事により「乳化」「洗浄」「分散」 「浸透」「湿潤」「起泡」などの働きをします。 さて、界面活性剤には非常に多くの品種が存在しますが一般的な分類の仕方としては、図に示した 4種類に分類する事が出来ます。 まず、水に溶かしたときに電離して電荷をもつ原子又は原子団であるイオンとなるイオン性界面活性 剤と、イオンにならない非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)に大きく分類されます。 イオン性界面活性剤は、さらに、イオンの種類により、陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチ

オン)界面活性剤および両性界面活性剤に分類されます。 主に水溶性切削油には、アニオンとノニオン界面活性剤などが使用されています。

5. 湿潤

6. 起泡

4. 浸透

2. 洗浄

3. 分散

1. 乳化

水の中に油が 存在する場合

水 水 油

油の中に水が 存在する場合

油 油水

界面活性剤

親水基 親油基

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さび止め剤 水溶性切削油が使用時に水で希釈して 使用する以上、鉄鋼材料のさびの原因と なる「酸素」及び「水」との接触は避ける事 が出来ません。 この様な使用環境下に於いては、 「さび止め剤」は欠かす事の出来ない成分 であると云えるでしょう。 錆止め剤の代表的な成分としては、 「カルボン酸系の有機インヒビター」 と「有機アミン」があげられます。 「有機アミン」は水溶性切削 油のpH をアルカリ性に保つアル カリ成分として、または、カルボン 酸の中和物として広く利用されて います。

R-COONH2

(R-COO)2NH

(R-COO)3N

R-NH2

R2-NHR3-N

+R-COOH

有機アミン カルボン酸塩

R2-NH 第2アミン R-NH2 第1アミン

R3-N 第3アミン

R-COO-Me(or アミン)

さび止め剤 : 不可欠

水溶性切削油

大気:酸素

鉄鋼

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硫黄

20

塩素

15

硫黄

塩素

切り粉の流れる

すくい面は、

高温高圧で

500℃を超える。

→→極極圧圧剤剤必必要要

すくい面

切り粉

極 圧 剤 (Extreme Pressure Lubricant) 極圧剤は別名 Extreme Pressure の約で EP 剤とも呼ばれ一般的には硫黄・リンなどの化合物があります。 実際の金属加工では、工具逃げ面と加工物の摩擦は温度圧力共に条件が緩和な為、油性剤の効果があるが、 切りくずの流れるすくい面の摩擦は高温高圧に晒され温度は 500℃を超える場合が殆どである為、鉄系金属の 重切削では極圧添加剤は不可欠となります。 極圧添加剤は、加工温度が上昇するに伴い分解して工具及び切りくずと反応して塩素化合物は塩化鉄に硫黄化合

物は硫化鉄となり固体潤滑膜を形成します。この固体潤滑膜が優れた潤滑効果を示し、構成刃先の生成を抑制し、

仕上げ荒さを向上させ、工具寿命を延長させるのです。 これら固体潤滑膜は、それぞれの融点を超えると効果を失います。よって、それぞれの極圧添加剤毎に有効な 温度レンジがあり、それぞれ補い合って優れた加工能力を発揮しているのです。 尚、現在では塩素系極圧剤は燃焼時のダイオキシン発生の恐れがある為、使用されない傾向となってきています。

20

化合物

0~900℃

効果発揮

体潤滑膜:硫

化合物

0~400℃

効果発揮

体潤滑膜:塩

化合物

化合物

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0

極圧

金 属

(被削物や

被削材

温 度

40000

化鉄

化鉄

工具)

逃げ面

[ ℃ ]

1000800600

--- 550~1200 リン酸鉄

0.2 260~650 塩化鉄

0.5 1150~ 1200

硫化鉄

1 1500 鉄

剪断力 融点 ℃

Ester Cl+P+S+FattyFatty Ester Sulfur Phosphorus Chlorine Mineral oil Standard

金金属属表表面面とと反反応応ししてて 個個体体潤潤滑滑膜膜をを形形成成

反応温度 反応温度

工などに る温度上昇

金 属 (被削物や工具)

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防 腐 剤 水溶性加工油剤を使用していく上で液の腐敗問題は、避けて通る事の出来ない問題となります。 ここでは防腐剤の効果について触れる前に水溶性切削油剤に於ける腐敗について簡単に触れたい と思います。 まず、水溶性油剤の腐敗の初期段階としては、酸素を好む好気性菌や黴類・酵母類などが発生し 油剤成分を資化し糖や蛋白質・酢酸などの有機酸を排出します。この時に同時にスライムなどの 浮遊物を排出する場合もあります。 この時点で液色は変化し、pH の低下も起こり液としての性能は徐々に失われていきます。 次にこの排出物を資材として酸素を嫌う嫌気性菌が活動を開始します。 嫌気性菌は、これらの物質を資化し乳酸などの有機酸を排出します。 この時点まで来ますと液のpH は大幅に低下し、それに伴い防錆性は大幅に低下します。 また、加工性に関しても大幅に低減しており加工不良など起こします。 更に腐敗が進行しますと嫌気性菌の一つである硫酸還元菌が増加し、油剤中に含有される硫黄から

黒いスラッジである硫化鉄や温泉臭を放つ硫化水素生成します。 ここまできますと液の性能は、ほぼ失われており防錆性・加工性共に新油時とは比較にならない程の 低下をしめします。 この腐敗現象を発生する菌を殺菌する事により抑制する添加剤が「防腐剤」になります。

黒いスラッジ

温泉臭

FeS

H2S

硫酸還元菌資 化

資 化

有機酸(乳酸など)

排 出 嫌気性細菌

資 化

糖・蛋白質・有機酸(酢酸など)

排 出

排 出

スライム

好気性細菌 酵母 ・ 黴

資 化

油剤成分

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防腐剤と皮膚刺激 殺菌力大 ≒ 皮膚刺激大 手荒れ発生原因 防腐剤(殺菌剤)の使用用途 ①油剤の殺菌力強化 ②耐腐敗用の追加添加 ③更油時のフラッシング (殺菌)

皮膚刺激

添加量

「防腐剤」は、菌を殺菌する効果のある添加剤ですから基本的に人間に対しても良い成分ではあり ません。しかし、現在では刺激性を抑えたものもあり人に対する皮膚刺激性についても考慮したも のが使用されてきています。それでも効果の高いものや添加量が増える事により皮膚刺激性も比例 して増えるものです。よって防腐剤を極力使用しない若しくは使用しても補助的にのみするべく現 在の水溶性切削油は組成開発段階より腐りにくい油剤を目指したものが出てきています。 また、防腐剤の用途としては、油剤用の添加剤や追添用の殺菌剤のみでなく更油時のフラッシング などにも使用されています。

Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識

水溶性切削油剤の JIS 分類について このページでは、水溶性切削油の JIS 分類について触れていきたいと思います。

不水溶性と水溶性の違いについて

A測

AAさ

12 外

溶性切削油には大きく分けて A1 種、A2 種、A3 種の 3 つに分かれます。 1 種の特徴は、希釈した時の外観が牛乳のように乳白色を呈します。 定項目は、乳化安定性試験があります。 験方法としては、100mL のメスシリンダーに水道水或いは硬水で 10 倍に希釈した液を 100mL 入れ 置し、24 時間後の油層とクリーム層を測定します。 化の安定性が悪い油剤ですと、サラダドレッシングのように上層に油の層、下層に水の層に分かれて まいます。 揮発分にも規定があり(80%以上)ます。 揮発分とは、原液を規定のシャーレに採取し 2 時間、105℃の恒温層にて水分を蒸発させ残量の割合

求めます。 2 種の特徴は、30 倍希釈した液の外観が半透明ないし透明。表面張力が 40 未満となっています。

3 種の特徴は、30 倍希釈した液の外観が透明。表面張力が 40 以上となっています。 らに、それぞれの種別の中に 1 号、2 号と分類があり、金属腐食試験の材質で分けてあります。 属腐食試験では、試験管に試験片を入れ、希釈液で半浸漬させ、48 時間、室温で静置させ、変色の

合いを評価します。 号とは、金属腐食試験で鋼板が変色しないこと。 号とは、金属腐食試験でアルミニウム板と銅板が変色しないこととなっています。

観 写 真

A1 種 : エマルジョン型

A2 種 : ソルブル型

A3 種 : ケミカルソリューション型

水溶性切削油

A2 種 A3 種 A1 種

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JIS 分類規格表

乳化安定度 mL(室温、24h)

水 硬水 種

表 面 張 力

mN/m

pH

油層 クリーム

層 油層

クリーム

不 揮 発 分

質量

%

%

泡立ち 試験 mL

(24±2℃)

金属腐食 (室温,48h)

1 号

8.5 以上 10.5 未満

変色がないこと

(鋼板) A1

種 2 号

乳白色

----- 8.0 以上

10.5 未満

こ ん 跡

2.5以下

2.5以下

2.5以下

80 以上 変色がないこと

(アルミニウム板 及び銅板)

1 号

8.5 以上 10.5 未満

変色がないこと

(鋼板) A2

種 2 号

半透明

ないし透明

40 未満

8.0 以上 10.5 未満

変色がないこと

(アルミニウム板 及び銅板)

1 号

8.5 以上 10.5 未満

変色がないこと

(鋼板) A3

種 2 号

透明

40 以上

8.0 以上 10.5 未満

--- 30 以上

5以

1 以下

変色がないこと

(アルミニウム板 及び銅板)

12

考 . A1 種~A3 種のいずれも塩素系極圧添加剤を使用しない。 . 不揮発分及び全硫黄分は原液における性状を規定し、それ以外の項目は室温 20~30℃に おいて A1 種は基準希釈倍率 10 倍の水溶液、A2 種及び A3 種は 30 倍の水溶液の性状を規定

したものである。

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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識

水溶性切削油の使用上の注意 こ

のページでは、水溶性切削油の使用上の注意事項について触れていきたいと思います。

水溶性切削油の希釈方法

溶性油剤の希釈液作成方法について触れたいと思います。 溶性油剤は水に希釈して使用するので所定の希釈倍率の決定及び的確な希釈液の作成が 常に重要になります。 常希釈液の作成時は所定量の水を張り込んだ後に原液を攪拌しながら添加し希釈していきます。

れは先に油剤を入れてしまうとタンクの側壁や底部に付着してしまいきちんとした濃度の希釈液が

られない場合があるからです。

× ○

Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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- Knowledge - 金属加工油の基礎知識

廃 液 処 理

溶性油剤の方が水に希釈して使用するので廃液の処理に関しては軽んじられやすいですが、 常に重要になります。 を捨てる場合にはどの様に処理すればよいのでしょうか。水溶性即ち成分の大部分は水なのです

ら、そのまま下水や河川に流してしまっても良いかというと違います。 のまま流してしまいますと周辺水域の汚染など様々の問題を引き起こします。 うならない為には、適切な処理を行った後に放流する必要があります。 は、廃水処理とはどの様な処理なのでしょうか?一般的なものとしては PAC などの薬品による凝集沈殿処理 活性汚泥による生物化学的処理 PAC 処理後、活性汚泥処理 産業廃棄物業者へ委託 どがあります。 れらの処理を適切に組み合わせて定められた排水基準を満たす様にする処理を廃水処理と云い

す。

COD:Chemical Oxygen Demand (化学的酸素要求量) BOD:Biochemical Oxygen Demand (生物化学的酸素要求量)

この処理により、廃液の COD,BOD を 排水(放流)基準値以下にする。

◆ PAC などの薬品による凝集沈殿処理 ◆ 活性汚泥による生物化学的処理 ◆ PAC 処理後、活性汚泥処理 ◆ 産業廃棄物業者へ委託

Knowledge --- 金属加工油の基礎知識[水溶性切削油剤]

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に水溶性切削油のタイプ毎の一般的な処理方法を紹介します。 マルジョン 1.酸によるエマルジョンの分解 2.無機凝集剤(PAC など)を添加後に加圧浮上処理 3.加圧浮上処理(油分除去) 4.活性汚泥処理 5.活性炭処理 ルブル 1.無機凝集剤(PAC など)を添加後に加圧浮上処理 2.処理水を希釈し活性汚泥処理 3.活性炭処理 ミカルソリューション 1.廃液の希釈

エマルジョンタイプ ソルブルタイプ

ソリューションタイプ

1.無機凝集剤(PAC など)を 添加後に加圧浮上処理

2.処理水を希釈し 活性汚泥処理 3.活性炭処理

1.酸によるエマルジョンの分解 2.無機凝集剤(PAC など)を添加 3.加圧浮上処理(油分除去) 4.活性汚泥処理 5.活性炭処理

1.廃液の希釈 2.活性汚泥処理

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