6
-32- 髙 橋 宏 行 *1 井 上 俊 之 *1 佐 藤 信 夫 *1 Hiroyuki TAKAHASHI Toshiyuki INOUE Nobuo SATO 齋 藤   誠 *2 小 野 元 久 *3 Makoto SAITOU Motohisa ONO CAE による電子部品のはんだ接続設計条件の研究 Research of the Solder Junction Condition of a Surface Mounted Device for CAE In our company, CAE is used for the evaluation of the solder connection reliability for electronic components. This research investigates the merits in using CAE and with the implementation of quality engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result of our investigations, the optimum conditions for achieving a high degree of reproducibility were established. Many observations were reached from investigation into combinations difficult to reproduce with actual products, and we have reached the stage where it may be possible to replicate CAE results in experiments with such products. Additionally, observations were reached on the merits of application in practical operations by the use of CAE combined with quality engineering theory. Key Words: CAE, Solder, Electronic components 1.研究の背景 車に搭載されるエンジンコントロールユ ニット(以下,E C U)は,エンジンルームの過 酷な環境にさらされるため,電子部品とプリ ント配線板(以下,PCB)をつなぐはんだ接続 部には高い信頼性が要求される.一方,市場 競争力の維持のためには ECU の高機能化,小 型・軽量化,廉価といった要求にもこたえてい かなければならない.そのため高い信頼性が 求められている ECU においても,実績のな い新規電子部品を採用していく必要がある. 採用評価時の開発コストや開発リードタイム の削減に有効な手段として,Computer Aided Engineering (以下,CAE)を用いている. CAE を用いるメリット (1) として,設計パラ メータの変動や内乱を扱った実験が可能,現 実には再現困難な組み合わせの検討が可能と 認識してきた.しかしその使い方は開発初期 論文 段階や製造条件の決定においても絶対値を吟 味してから実験するというステップであって, メリットを十分に生かせず多くの時間を必要 としており,改善が求められている. 2.研究対象と目的 本研究の対象部品は,ICのBGA(Ball Grid Array)パッケージである.BGA は,Si チッ プを覆うように樹脂封止された部分の下に電 極が格子上に並んでおり,その電極と PCB が少量のはんだによって接続される.車載用 の IC としてよく用いられている QFP(Quad FlatPackage)に比べ熱膨張・収縮差による応 力をはんだ接続部が直接受けることになるた め,信頼性確保のために様々な施策が必要に なる. そこで本研究では,CAE と品質工学 (2) 組み合わせることで,ECU の新規 BGA パッ *1 生産本部 生産技術六部  *2 ピタゴラス  *3 宮城教育大学 ※ 2014年6月25日受付,品質工学会の許諾を得て,第21回品質工学会研究発表会論文集 pp.290-293 より加筆修正して転載

Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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Page 1: Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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CAEによる電子部品のはんだ接続設計条件の研究

髙 橋 宏 行*1 井 上 俊 之*1 佐 藤 信 夫*1

Hiroyuki TAKAHASHI Toshiyuki INOUE Nobuo SATO

齋 藤   誠*2 小 野 元 久*3

Makoto SAITOU Motohisa ONO

CAE による電子部品のはんだ接続設計条件の研究※

Research of the Solder Junction Condition of a Surface Mounted Device for CAE

In our company, CAE is used for the evaluation of the solder connection reliability for electronic components. This research investigates the merits in using CAE and with the implementation of quality engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result of our investigations, the optimum conditions for achieving a high degree of reproducibility were established. Many observations were reached from investigation into combinations difficult to reproduce with actual products, and we have reached the stage where it may be possible to replicate CAE results in experiments with such products. Additionally, observations were reached on the merits of application in practical operations by the use of CAE combined with quality engineering theory.

Key Words: CAE, Solder, Electronic components

1.研究の背景

車に搭載されるエンジンコントロールユニット(以下,ECU)は,エンジンルームの過酷な環境にさらされるため,電子部品とプリント配線板(以下,PCB)をつなぐはんだ接続部には高い信頼性が要求される.一方,市場競争力の維持のためにはECUの高機能化,小型・軽量化,廉価といった要求にもこたえていかなければならない.そのため高い信頼性が求められている ECU においても,実績のない新規電子部品を採用していく必要がある.採用評価時の開発コストや開発リードタイムの削減に有効な手段として,ComputerAidedEngineering(以下,CAE)を用いている.CAEを用いるメリット(1)として,設計パラ

メータの変動や内乱を扱った実験が可能,現実には再現困難な組み合わせの検討が可能と認識してきた.しかしその使い方は開発初期

論文

段階や製造条件の決定においても絶対値を吟味してから実験するというステップであって,メリットを十分に生かせず多くの時間を必要としており,改善が求められている.

2.研究対象と目的

本研究の対象部品は,ICの BGA(Ball GridArray)パッケージである.BGA は,Si チップを覆うように樹脂封止された部分の下に電極が格子上に並んでおり,その電極と PCBが少量のはんだによって接続される.車載用の IC としてよく用いられている QFP(QuadFlat Package)に比べ熱膨張・収縮差による応力をはんだ接続部が直接受けることになるため,信頼性確保のために様々な施策が必要になる.そこで本研究では,CAE と品質工学(2)を

組み合わせることで,ECU の新規 BGA パッ

*1生産本部生産技術六部  *2ピタゴラス  *3宮城教育大学

※2014年6月25日受付,品質工学会の許諾を得て,第21回品質工学会研究発表会論文集 pp.290-293 より加筆修正して転載

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ケーヒン技報 Vol.3 (2014)

BGA

PCB

Stress is generated inthe solder

Expansion and contraction

Expansion and contraction Several hundred points

Solder Solder Solder

ケージに対するはんだ接続設計条件の効率的な評価手法を構築し,実務へ適用するメリットを明らかにすることを目的とした.なお,筆者らは生産技術部門に所属しているが,全体最適の観点が必要と考え,部門の責任区分を超えて ECU 全体の設計条件を扱うことにした.

3.パラメータ設計のための実験計画

3.1. 理想状態と計測特性一般に,ECUにおいて機械的強度が弱い部

分は,はんだ接続部である.ECU は市場での温度変化により熱膨張・収縮が発生する.構成部品の膨張係数差に起因する応力がはんだ接続部に作用し,破断に至ることがある.BGAと PCB がはんだ接続されている断面図をFig.1 に示す.各接続部に発生する応力を見積もるために,

CAE を用いて相当応力を計測することにした.相当応力を低下出来れば接続部に発生するクラックが抑制されるという考え方である.また BGA のはんだ接続部は数百点にのぼるが,そのすべてにおいて信頼性を満足することが要求される.よってすべての接続部において相当応力がゼロになることが理想状態となるが,相当応力はゼロにはならず必ずある値をとる.さらにパラメータ設計の2段階設計の考え方を活用し相当応力のばらつき,平均値を別々に検討するために,望目特性の SN比を用いることにした(3).

3.2. 誤差因子(1)はんだ接続部位置BGAにはんだが整列している様子の一部を

Fig. 2 に示す.マスがはんだ接続部を表している.なお,評価における理想はすべての接続部

を扱うことであるが,実験の効率化の観点から扱う対象を限定した.その際,Fig. 2 の塗り潰し箇所のように応力集中箇所を連続的に選定し,BGA全体の姿を模式的に表せるように留意した.(2)BGA仕様要求される製品の機能から BGA 種類が選

定される.しかし,部品供給メーカーごとに,構造,材質,サイズ等が異なるため,ユーザーの立場から誤差因子と考えた.そこで,BGAを構成している各要素の条件(Si チップのサイズなど)を調合し,相当応力の平均値が小さくなる組み合わせを N1,平均値が大きくなる組み合わせを N2 とした.調合することで,既製品よりも厳しい仮想 BGA にてパラメータ設計を行うことが可能となる.

3.3. 制御因子過去の経験から,はんだ接続信頼性に影響

すると思われる要因を選定しL18(21×37)直交

表に割り付けた.その要因と水準をTable1 に示す.

3.4. CAE 解析条件設定直交表の指示に従ってモデルを作成した.

モデルの数は,18(内側直交表)× 2(仮想

Fig. 1 Schematic of solder connection state Fig. 2 Schematic of connection of the solder

Page 3: Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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CAEによる電子部品のはんだ接続設計条件の研究

ABCDEFGH

1a

SmallLow

Smallaaa

No measure

2b

MiddleMiddleMiddle

bbb

measure1

3-

LargeHighLarge

ccc

measure2

levelFactors

parts position 1Connection structure1Connection structure2Connection structure3

parts position 2Component parts

Constituent materialsAdditional measures

BGA の N1,N2)の 36 モデルである.CAE の解析は線形解析で,メッシュサイズは弊社で通常使用されている値の4倍程度粗いサイズに設定した.また,モデル化する ECUの構成部品も必要最低限とした.この設定は,要因効果の傾向が合っていればよいと考えたうえで,できるだけ実験を効率化させる目的のためである.

4.実験結果

4.1. 計算結果以上の内容から,CAE を用い 36回の計算

を行った.線形解析で粗いメッシュサイズを用いたため,1回の計算はこれまでの 1/10以下の短時間で終了した.Table 2 に得られた測定データの一部と計算結果を示す.以下に,直交表 L18(2

1×37)の 1行目の SN比計算過程を示す.ここに,SN比は望目特性のSN比である.

= 159140.12 ( f = 81)

= 44.92 + ··· + 38.22 + ··· + 99.92 + ··· + 34.42

= y211 + ··· + y2

kk' ただしk: 調合BGA k': 接続部位置ST

ただしn: 誤差因子のデータ数

=

= 115361.44 ( f = 1)

Sm

= (y11 + ··· + ykk')2

n

(44.9 + ··· + 38.2 + ··· + 99.9 + ··· + 34.4)2

81

Se = ST − Sm = 159140.12 − 115361.44

= 43778.68 ( f = 80)

= Se

f = 547.233Ve =

43778.68

80

η

= 4.1 (db)

= 10 log Ve

1 (Sm − Ve)n

= 10 log 547.233

(115361.44 − 547.233)181

S = 10 log

= 10 log

1 (Sm − Ve)n

(115361.44 − 547.233) = 31.5 (db)181

4.2. 要因効果図と最適条件の選定SN 比の効果図を Fig. 3,感度の効果図を

Fig. 4 に示す.なお,本実験では感度は相当応力の平均値を示すため,値が小さいほうが望ましいことになる.要因効果図から,SN比の良い水準を中心に

最適条件をA2B1C1D3E1F1G3H2 と決定した.なお,比較条件はA1B3C2D2E1F3G1H1 である.

4.3. 確認実験得られた最適条件と比較条件から利得の推

Table 1 Factors and standards of control factor Table 2 Measurement data and calculation result

CompoundingBGA

Position of theconnecting

portionB1 · · · B52 B1 · · · B29 η (db) S (db)

39.1 · · · 26.3 61.1 · · · 36.7 8.5 30.856.7 · · · 28.6 98.7 · · · 40.2 5.2 32.460.2 · · · 30.1 131.6 · · · 41.0 4.1 32.261.3 · · · 27.1 196.4 · · · 49.6 0.7 34.330.1 · · · 30.1 41.4 · · · 36.6 13.4 30.054.7 · · · 28.5 127.7 · · · 51.2 3.8 33.247.7 · · · 33.2 87.8 · · · 39.2 9.1 31.140.1 · · · 25.0 79.6 · · · 50.6 4.3 32.079.3 · · · 28.7 130.4 · · · 47.6 6.7 32.044.0 · · · 26.9 94.5 · · · 40.7 4.4 31.341.5 · · · 24.5 86.4 · · · 36.9 8.1 30.236.3 · · · 28.1 50.4 · · · 34.9 12.5 29.858.0 · · · 29.4 101.7 · · · 40.7 7.0 31.348.3 · · · 24.7 178.5 · · · 49.0 1.4 33.347.1 · · · 29.7 70.9 · · · 48.5 9.3 31.943.2 · · · 26.5 112.8 · · · 38.7 6.4 30.648.1 · · · 32.9 114.9 · · · 40.8 5.9 31.218

121314151617

Maximum equivalent stressin additional heat conditions (MPa) Nominal is best

responseN1 N2

11

L18

· · · · · ·44.9 38.2 99.9 34.4 4.1 31.512345678910

Page 4: Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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ケーヒン技報 Vol.3 (2014)

partsposition 1

Componentparts

The conditionobtained from theactual experiment

results

The order obtainedfrom the

conventionalmethod (CAE)

EstimationS/N ratio

(db)

Estimationsensitivity

(db)

The orderobtained from

this study

Condition① b c 2 2 4.5 32.4 2

Condition② b b 1 1 6.5 31.3 1

Condition③ a c 3 3 3.6 33.1 3

Estimation Confirmation Estimation ConfirmationOptimum condition

Comparison conditionGain

14.51.1

13.4

13.41.9

11.5

28.933.7-4.8

31.034.1-3.1

S/N ratio (db) Sensitivity (db)

定を行い,最適,比較条件のモデル化による確認実験結果と比較した.その結果をTable3 に示す.SN比,感度とも利得の差が 2 db 弱であり,

良好な再現性が確認できた.この結果から,最適条件を採用すれば各接続部の相当応力のばらつきが分散比で約1/14 に,相当応力の平均値が約1/2 になることがわかる.また,効果をわかりやすくするため,各接続部の相当応力値を図示して比較した.比較条件をFig. 5,最適条件をFig.6 に示す.Fig. 5 から,比較条件では相当応力のばら

つきが大きいことがわかる.一方,Fig. 6 より最適条件を採用すれば相当応力のばらつきが大きく低減することがわかる.

4.4. 現物実験との比較弊社で実施された現物実験結果と本実験結

果の比較を Table 4 に示す.なお,現物実験は本研究とは無関係に行われたものであり,Table 1 の制御因子の中で部品位置1と構成部材のみを取り上げたものとなっている.3条件のみの実験であるため,本研究結果

が現物でも再現していると断定するのは早計である.しかし,現物実験で得られた良い条件,さらに従来CAEの結果と本研究結果で得られた序列が一致しており,線形解析,単純モデル,粗いメッシュでの実験でも実務に適用できる見通しが得られたと考える.

4.5. 実験結果に対する考察Fig. 5 から,SN比が小さい比較条件には応

力集中点が存在していることがわかる.例え

Fig. 6 Equivalent stress of optimum condition

Fig. 5 Equivalent stress of comparison condition

Table 4 Comparison with the actual experimentTable 3 The estimate gain and the confirming gain

Optimum condition:

Comparison condition:

partsposition1

a b a b c a b c a b c

No

mea

sure

mea

sure

1m

easu

re2

Smal

lM

iddl

eL

arge

Smal

lM

iddl

eL

arge

Low

Mid

dle

Hig

h

Connectionstructure1

Connectionstructure2

Connectionstructure3

Componentparts

Constituentmaterials

Additionalmeasures

partsposition2

FEDC GA B H

S (d

b)

33.0

31.0

29.0

35.0

27.0

Fig. 4 Response graph of Sensitivity (S)

N1 BGA model

Equ

ival

ent s

tres

s (M

Pa)

Position of the connecting portion

N2 BGA model200

150

100

50

250

0

Equ

ival

ent s

tres

s (M

Pa)

N1 BGA model

Position of the connecting portion

N2 BGA model200

150

100

50

250

0

η (d

b)

Optimum condition:Comparison condition:

partsposition1

a b a b c a b c a b c

No

mea

sure

mea

sure

1m

easu

re2

Smal

lM

iddl

eL

arge

Smal

lM

iddl

eL

arge

Low

Mid

dle

Hig

h

Connectionstructure1

Connectionstructure2

Connectionstructure3

Componentparts

Constituentmaterials

Additionalmeasures

partsposition2

FEDC GA B H

8.0

6.0

4.0

10.0

2.0

Fig. 3 Response graph of S/N ratio (η)

Page 5: Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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CAEによる電子部品のはんだ接続設計条件の研究

感度が小さい条件であっても,応力集中点が存在することは長期的に見れば信頼性に不利に働くと考えられる.従来の方法では感度のみに着目していたため,このような知見が明らかではなかった.Fig. 3,Fig. 4 の要因効果図をみると,構成部材Fは SN比,感度ともに大きく寄与する要因であり,水準 a を選択することにより比較条件よりも大幅に改善できることがわかった.

5.成 果

CAEと品質工学を組み合わせた評価手法を構築し実務への適用を検討した結果,以下に示す成果が得られた.(1)実務への適用見通しと CAE 解析の効

率化線形解析,単純モデル,粗いメッシュを用い

たCAE解析であっても,従来CAE,現物実験で得られた良い条件の序列と一致していることがわかった.さらに解析時間を従来の 1/10以下と大幅に短縮することができた.また,短い時間で多数の解析を実施できたことから,従来の実験と比べて豊富な技術情報を得ることができた.(2)部門間の情報共有ECUの全体最適化の観点から開発,生産技

術部門両方の要因を取り上げて実験を行えば,開発初期段階で早期に重点取り組み項目の共有ができ,新製品立ち上げの更なる効率化が期待できることがわかった.(3)CAEを用いることによる先行評価新規電子部品をモデル化し誤差因子として

取り上げれば,まだ製品として形になっていない新規形状の部品であっても先行評価が可能となり,更なる設計のフロントローディングを実現できることがわかった.(4)実験間誤差がないことによる方向性の明

確化ECUの現物実験では様々な要因が複雑に絡

み合い,これまでの実験では再現性を確保するのが困難であった.しかしCAEを用いることによって意図的に変化させる要因以外は完全に固定することができる.その実験間誤差がない,という利点を生かせば,設計の方向性を明確に示せる可能性がある.

6.おわりに

設計初期段階のCAE実験においては,正確な絶対値よりも大枠で要因効果を把握し,確かな方向性を得ることが重要であり,その立場において,CAEと品質工学の組み合わせは大変有効であることが確認できた.本研究では絶対値の正確性を吟味することなく,現物にも適用可能な設計条件を見いだすことができた.無論正確な絶対値を求める取り組みも重要であるが,双方の用途を明確に意識して使い分けることで,より合理的なはんだ接続条件の設計が可能となると考える.また今後の課題は,今回取り上げきれなかった要因の取り込みや現物実験への再現性を踏み込んで検討する必要があることである.部門間で協力して本研究を実務に適用できるよう推進していきたい.

謝 辞

品質工学の考え方についてのご教授とアドバイスをいただいた東北品質工学研究会の皆様に,この場を借りて深く感謝申し上げる.なお,本研究は宮城県の産学連携プロジェクト・KC みやぎにおける研究会活動として行われたものである.ここに記してお礼申し上げる.

参考文献

(1)吉野睦・仁科健:シミュレーションとSQC,日本規格協会,p11-14(2009)

(2)田口玄一・矢野宏:コンピューターによる情報設計の技術開発,日本規格協会,

Page 6: Research of the Solder Junction Condition of a …...engineering theory, improved efficiency of experiments using CAE and the application of CAE in practical operations. As a result

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ケーヒン技報 Vol.3 (2014)

業務の効率化が求められる昨今,CAE や品質工学は必須の技術であると感じている.CAEは,現物を使わずに実験が行えることにより考え方次第で様々な目的に活用できる.また品質工学は,評価の学問と言われるように SN 比やパラメータ設計をはじめとした実験,評価に対する考え方が明確に示されており,業務の様々な場面で活用できる.ただし両方とも,値を入れれば答えが出るような単純なツールではない.時々の目的に応じて使い方を工夫することが必要である.共通に感じることは CAE,品質工学とも対象とするモノや技術に対する深い理解が必要ということである.そこが難しくもやりがいがあるところである.CAEや品質工学を用いて悪戦苦闘するうちに,技術力を高めてくれると感じている.今後も楽しみながら CAE,品質工学に対する理解を深め,自分なりの活用の仕方を模索していきたい.(髙橋,井上,佐藤)

著 者

佐 藤 信 夫髙 橋 宏 行 井 上 俊 之

齋 藤  誠 小 野 元 久

p16-21(2004)(3)田口玄一・矢野宏:コンピューターによ

る情報設計の技術開発,日本規格協会,p114(2004)