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システムマネジメント 2007 – 1 / 28 「システムマネジメント」(実験計画法編) 大学 大学院 2007

「システムマネジメント」 実験計画法編stlab.ssi.ist.hokudai.ac.jp/yuhyama/lecture/OLD/sysman/sysman.pdf · 実験計画法の歴史 はじめに • はじめに

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システムマネジメント 2007 年前期 – 1 / 28

「システムマネジメント」(実験計画法編)

北海道大学大学院情報科学研究科  山下 裕

2007年前期

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はじめに

はじめに•はじめに•実験計画法の歴史例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 2 / 28

今週と次週の 2回で、「実験計画法」(Design of Experiments)について学ぶ。

• 効率のよい実験方法をデザインし、結果を適切に解析することを目的とする。

• つまり、少ない実験回数でどのようにデータを取ればよいか、という話。

• 数学の装いをしているが、最後の最後はちっとも数学的な説明になっていない学問なので、  「このような実験計画が良いと結論付けられる」と考えると間違いで、逆に  「このような実験計画をすれば結果的に良いことがわかる」と見なければならない。

• 「理論」と呼べる程のものかどうかは怪しい。でも、実学的には役には立つ。

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実験計画法の歴史

はじめに•はじめに•実験計画法の歴史例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 3 / 28

• 1920年代に、R. A.フィッシャー (Sir Ronald Aylmer Fisher)が、農学試験においてはじめた。(実験計画法の始まり)

• 1950年、G.M.コックスとW.コクランによる標準的教科書の出版。和訳はあるが、おそらく絶版。

• 以後、広く応用される。• タグチ・メソッドの登場。田口玄一による方法。直交表を使いやすくして、品質工学へ応用。田口玄一の唱える品質工学の中には、マハラノビス=タグチ法というものもあるが、別系統と考えたほうが良い。

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例題によるラテン方格法の解説

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 4 / 28

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はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 5 / 28

作物の品種の違いが収量に与える影響を計りたい

• 品種 A, B, Cについて調べたい。• また、肥料の量による影響を調べたい。• 肥料が多い・中・少ないの 3とおりを考える。施肥量を連続的に変化させると、実験数がむやみに増えるので、パラメータをブロック化して考える。

• 畑は 3箇所 (a, b, c)使う。畑の違いによる影響を分散したい。そのため、反復ごとに畑の順番をランダムに変えることにより場所の影響を無作為化して減らす。

バラツキの影響を除くために、「ブロック化し要因を一定にする局所管理化」と「無作為化」を併用して、「反復」する

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例 (続き)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 6 / 28

• 因子数は、品種 (A, B, C)、施肥量 (多,中,少)、畑 (a, b, c)で、それぞれ 3水準。

• すべての場合を網羅するには、33 = 27回の実験が必要。• 「各々の因子の違いが収穫量に対し線形で効いている」と仮定できるならば、実験の回数を 9回に減らすことが可能。

施肥量多 中 少

品 A a b cB b c a

種 C c a b

• 上記のとり方はラテン方格法という。• この授業ではラテン方格法を一般化した直交配列法まで取り扱う。

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ラテン方格 (Latin Squares)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 7 / 28

「ラテン方格」は「ラテン方陣」ともいう。

⎡⎣1 2 3

2 3 13 1 2

⎤⎦

⎡⎢⎢⎣

a b d cb c a dc d b ad a c b

⎤⎥⎥⎦

ラテン方格: n行 n列の表に n個の異なる記号を、各記号が各行および各列に 1回だけ現れるように並べたもの。

• 数学的には、半群の積表。• n× nラテン方格の各マスを 3つ組 (r, c, s)(rは行, cは列, sは記号)で表現 (直交配列表現)すると、 n2 組の 3つ組が得られる。左の例の場合:  {(1,1,1),(1,2,2),(1,3,3),(2,1,2),(2,2,3),(2,3,1),(3,1,3),(3,2,1),(3,3,2)}◦ (r, c, s)の形の n2 組の 3文字組◦ (r, c), (r, s), (c, s)の対がそれぞれ全て異なる。

行、列、および記号は似た役割を持つことがわかる。

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ラテン方格と直交配列表現

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 8 / 28

同じ実験計画を 2つの表現で表す。

ラテン方格による表現

施肥量多 中 少

品 A a b cB b c a

種 C c a b

直交配列表現

No. 品種 施肥量 畑1 多 a2 A 中 b3 少 c4 多 b5 B 中 c6 少 a7 多 c8 C 中 a9 少 b

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例の考察

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 9 / 28

9回の実験: 

yAL = m + pA + qL + ra, yAM = m + pA + qM + rb

yAS = m + pA + qS + rc yBL = m + pB + qL + rb

yBM = m + pB + qM + rc yBS = m + pB + qS + ra

yCL = m + pC + qL + rc yCM = m + pC + qM + ra

yCS = m + pC + qS + rb 

• y∗は収穫量, mは平均, p∗は品種の主効果, q∗は施肥量の主効果,r∗ は畑の違いの主効果。

• pA + pB + pC = 0, qL + qM + qS = 0, ra + rb + rc = 0

平均および主効果を実験結果から求める計算式: 

m = (yAL + yAM + yAS + yBL + yBM + yBS

+ yCL + yCM + yCS)/9pA = (yAL + yAM + yAS)/3 − m, qL = (yAL + yBL + yCL)/3 − m 

• pB , pC , qM , qS に関しても上の式と同様。• 他の因子の効果は平均化され消えてしまう。

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例の考察 (2)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 10 / 28

なぜ他の効果が消えてしまうのか?: pA を求める例で考えよう。

• (A, L), (A, M), (A, S)の組は一回づつ現れる。• (A, a), (A, b), (A, c)の組も一回づつ現れる。

  ⇒ 3回の実験結果を足すと平均化される。

全ての組が同じ回数なので、足すと他の因子の効果が消える。yAS +yAL +yAS = 3(m+pA)+(qL + qM + qS)+(ra + rb + rc)

  = 0      = 0    

[注意] pA + pB + pC = 0, qL + qM + qS = 0, ra + rb + rc = 0が本質的というわけでなく、これらの式が主効果の定義になっているだけである。qL + qM + qS �= 0, ra + rb + rc �= 0でも、 

m = (yAL + yAM + yAS + yBL + yBM + yBS

+ yCL + yCM + yCS)/9pA = (yAL + yAM + yAS)/3 − m

で、pA が計算できることが確認できる。この場合はmとmは異なる。本来の「平均」はmの方である。

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例の考察 (3)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 11 / 28

各因子の効果の線形和なら、より簡単な方法がある。たとえば、同じ畑だけを使って、(A, L, a), (B, L, a), (C, L, a),(A, M, a), (A, S, a)の 5つだけで原理的には p∗, q∗ がわかる。   ⇒ COST(Changing One Separate factor at a Time)アプローチ

しかし、

• 別な畑を同時に使えば、実験が短期間で終わる。• 畑 aの場合の平均しか得られない。• この方法は、たとえば pA を出すのに 3つのデータを使う方法であるが、ラテン方格法では 9つのデータ全てを用いる。よって、「大数の法則」より、COSTアプローチはラテン方格法より3倍の分散を持ってしまうことがわかる。

大数の法則: 1回で分散 S をもつ試行を N 回繰り返して、平均値をとると、その平均値の分散は S/N になる。

• 交互作用がある場合、それを平均化する効果が期待できない。(後述)

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問題設定

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 12 / 28

• 因子 (factor): 検討対象とする要因。前の例では、品種・施肥量・畑の違いの 3つである。

• 多因子実験 (multi factor experiment): 複数の因子について同時に調べる実験。これに対し、1つの因子だけに着目し行う実験を 1因子実験という。

• 水準 (level): 各因子に設定する段階。前の例では、品種に対してA・B・C、施肥量に対して多・中・少が水準である。

• 主効果 (main effect): 各因子の直接的効果 (の平均)• 交互作用 (相互作用, interaction): 複数の因子が互いに独立 (単純な和で表される)でなく、ある条件の重なりによって特異な結果が得られるとき、その作用。前の例では交互作用が無い場合を考えているが、たとえば、特定の品種には施肥量を少なくした方がかえって良い場合などが、交互作用がある例である。

• 交絡 (confund): 2つ以上の因子の影響が区別できないこと。

実験計画法では、各因子に有限の水準を持たせた多因子実験にて、少ない実験回数で、信頼性の良いデータをとるにはどのように取ればよいか、を考える。

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交互作用がある場合

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 13 / 28

先に挙げた例で、品種と施肥量の間に交互作用がある場合にも、ラテン方格法は有効である。

9回の実験: 

yAL = m + zAL + ra, yAM = m + zAM + rb

yAS = m + zAS + rc yBL = m + zBL + rb

yBM = m + zBM + rc yBS = m + zBS + ra

yCL = m + zCL + rc yCM = m + zCM + ra

yCS = m + zCS + rb 

• zAL + zAM + · · · + zCS = 0, ra + rb + rc = 0となるように、mを定義。

• たとえば、品種 Aの主効果は pA = (zAL + zAM + zAS)/3,施肥量「多」の主効果は qL = (zAL + zBL + zCL)/3で定義される。

• たとえば、施肥量「多」に固定したときの品種 Aの効果のことを「単一効果」という。この場合は、(2zAL − zBL − zCL)/3である。施肥料を変えた 3通りの品種 Aの単一効果を平均すれば主効果 pA になる。

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交互作用がある場合 (続き)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説•例•ラテン方格•ラテン方格と直交配列表現•例の考察•問題設定•交互作用がある場合2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 14 / 28

交互作用がある場合も、同じ計算式が成り立つ。

平均および主効果を実験結果から求める計算式: 

m = (yAL + yAM + yAS + yBL + yBM + yBS

+ yCL + yCM + yCS)/9pA = (yAL + yAM + yAS)/3 − m, qL = (yAL + yBL + yCL)/3 − m,

. . .

• この場合、単一効果は 9回の実験ではわからない。• また、「畑の違い」の主効果もわからない。これは、「畑の違い」の主効果と品種・施肥量間の交互作用が交絡しているからである。

• 「畑の違い」との間でも交互作用がある場合、つまりどの因子の影響も加法的に効くわけではない場合は、27通り実験しなくてはならない。

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2水準の例と直交性

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性• 2 水準の例•行列表現直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 15 / 28

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2水準の例

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性• 2 水準の例•行列表現直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 16 / 28

直交性を説明しやすいように、2水準の例を示す。

因子数 3(a, b, cの 3因子)でそれぞれ ±1の 2水準の例:

No. a b c1 +1 +12

+1 −1 −13 +1 −14

−1 −1 +1

• 因子 aの列: (+1, +1,−1,−1)T

• 因子 bの列: (+1,−1, +1,−1)T

• 因子 cの列: (+1,−1,−1, +1)T

• オフセット (=全ての実験に均等に作用する)の列:(+1, +1, +1, +1)T

の 4つは直交 (=内積がゼロ)していて、各列のベクトルの大きさは 2。

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行列表現

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性• 2 水準の例•行列表現直交表を用いる方法

システムマネジメント 2007 年前期 – 17 / 28

y = kaa + kbb + kcc + m × 1

の ka, kb, kc, mを求める問題。⎛⎜⎜⎝

y1

y2

y3

y4

⎞⎟⎟⎠ =

⎡⎢⎢⎣

+1 +1 +1 +1+1 −1 −1 +1−1 +1 −1 +1−1 −1 +1 +1

⎤⎥⎥⎦

⎛⎜⎜⎝

ka

kb

kc

m

⎞⎟⎟⎠ = Kx

K/2は直交行列。つまり、(K/2)−1 = (K/2)T であるから、K−1 = KT /4。よって、⎛

⎜⎜⎝ka

kb

kc

m

⎞⎟⎟⎠ =

14

⎡⎢⎢⎣

+1 +1 −1 −1+1 −1 +1 −1+1 −1 −1 +1+1 +1 +1 +1

⎤⎥⎥⎦

⎛⎜⎜⎝

y1

y2

y3

y4

⎞⎟⎟⎠

直交性の利点: 元の列/4と実験データ列の内積で主効果・平均が得られる。また、ka, kb, kc, mを求めるのに全ての実験データを均等に使っていて、ばらつきを平均化する効果が大きい。

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直交表を用いる方法

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 18 / 28

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ラテン方格と直交配列 (再掲)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 19 / 28

以下の 2つは、同じ実験計画を表現したものであった。

ラテン方格による表現

施肥量多 中 少

品 A a b cB b c a

種 C c a b

直交配列表現

No. 品種 施肥量 畑1 多 a2 A 中 b3 少 c4 多 b5 B 中 c6 少 a7 多 c8 C 中 a9 少 b

右の直交配列表現のテンプレート =直交配列表

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3水準以上の直交性 (1)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 20 / 28

2水準のときは、±1で考えれば数学的直交性と概念が一致した。3水準以上のときは、どう考えればよいのだろうか?例えば 3水準 (因子 1に対して (a, b, c),因子 2: (A, B, C))のとき、2つのベクトル (のようなもの)  (a, a, a, b, b, b, c, c, c)T  と  (A, B, C, A, B, C, A, B, C)T

を考えよう。主効果の和が、pa + pb + pc = 0, qA + qB + qC = 0であることを考えると、本当の数学的な表現は、

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝

y1

y2

y3

y4

y5

y6

y7

y8

y9

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠

=

⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝

mmmmmmmmm

⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠

+

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

1 01 01 00 10 10 1−1 −1−1 −1−1 −1

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦

(pa

pb

)+

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

1 00 1−1 −11 00 1−1 −11 00 1−1 −1

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦

(qA

qB

)+ · · ·

である。

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3水準以上の直交性 (2)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 21 / 28

列ベクトル aと bの内積は aT b。よって、この場合の係数行列 (赤い行列Xp と緑の行列Xq)の内積のようなものもXT

p Xq と定義しよう。

直交性は、この係数行列の「内積のようなもの」がゼロ行列になっていること。

数学的には、「各列によって張られる 2つの線形空間が直交している」ということができる。

この例では 2 × 2のゼロ行列なので直交している。

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3水準以上の直交性 (3)

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 22 / 28

Xp, Xq はmのベクトルとも直交しないといけないので、a, b, c, A,B, C は同数でなくてはならない。さらに、

A B C

a

[1 00 0

] [0 01 0

] [−1 0−1 0

]

b

[0 10 0

] [0 00 1

] [0 −10 −1

]

c

[−1 −10 0

] [0 0−1 −1

] [1 11 1

]

この関係からできる直交関係を表す方程式、および実験総数の式をまとめると、9本の連立一次方程式が得られ、その解によれば「全ての組み合わせが同数でなくてはならない」ことがわかる。

2 つの係数行列 Xp, Xq が直交し、さらにこれらが平均値の係数ベクトル (1, . . . , 1)T とも直交することと、すべての組み合わせ(a, A),. . . ,(a, C),(b, A),. . .が同じ回数現れることは同値である。

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2水準直交配列表の例

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 23 / 28

L8(27)直交配列表 · · · 8実験・2水準・7因子

L8(27)直交配列表# 1 2 3 4 5 6 7

1 1 1 1 1 1 1 12 1 1 1 2 2 2 23 1 2 2 1 1 2 24 1 2 2 2 2 1 15 2 1 2 1 2 1 26 2 1 2 2 1 2 17 2 2 1 1 2 2 18 2 2 1 2 1 1 2

• 各行が 1回の実験• 各列が因子• “1”と “2”が各水準を表す。

L8(27)直交配列の積表2 3 4 5 6 7

1 3 2 5 4 7 62 1 6 7 4 53 7 6 5 44 1 2 35 3 26 1

直交配列表の列同士の積がどの列に相当するか

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直交配列表とは

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 24 / 28

直交配列表とは、• 2つの列が直交• 各列が (1, . . . , 1)T と直交• 2つの異なる列に対して、各成分の “積”からなる列が、表内の別な列として現れる。

を満たすものである。

最初の 2条件は「任意の 2つの列を取ったとき、全ての水準の組み合わせが同数あること」と言い換えることができる。

L4(23), L8(27), L16(215), L32(231),. . .L9(34), L18(21 × 37), L27(313),. . .などの直交配列表がある。

“積”について2水準の積は “1”と “2”を ±1に置き換えて考える。3水準以上の場合の積に関しては、後で述べる。

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直交配列表を用いた実験計画

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 25 / 28

L8(27)直交配列表を例にとって説明する。

• 各因子に交互作用が無いと仮定できるのであれば、全ての列に因子を割り振ることができる。例の場合、8実験で 7因子まで許容できる。

• 全ての因子に交互作用が関係しているのであれば、3(= log2 8)因子まで取り扱うことができる。つまり、全ての場合を実験しているにすぎない。

• 2因子間の交互作用は、その因子を割り付けた列同士の積の列に現れる。3水準以上あるいは 3因子間以上の場合は、複数回の積も考える。交互作用のある場合、交互作用の列には他の因子を割り付けてはいけない。

• どうしても、交互作用の列に他の因子を割り付けざるを得ない場合は、その加えた因子の主効果はわからない。この場合は「最初の 2因子の交互作用」と「加えた因子の主効果」が交絡してしまう。

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直交配列表を用いた実験計画例

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 26 / 28

L8(27)直交配列表の例で説明する。

# 1 2 3 4 5 6 7

1 1 1 1 1 1 1 12 1 1 1 2 2 2 23 1 2 2 1 1 2 24 1 2 2 2 2 1 15 2 1 2 1 2 1 26 2 1 2 2 1 2 17 2 2 1 1 2 2 18 2 2 1 2 1 1 2

A B AB C D E F

因子は A,B,C,D,E,Fの 4つだが、A, B間には交互作用がある。A, Bを第 1, 2列に割り付けると、それらの交互作用は第 3列に現れる。残りの因子を 4, 5, 6, 7列に割り当てることができる。

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3水準以上の積

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 27 / 28

2水準の場合の積の列の例では、±1の数学的意味よりむしろ、「−1の場合は相手の符号を変える」という組み合わせの意味で捉えるべき。

k水準の場合は、複素数で考えて、

si = exp(

2(i − 1)πj

k

), i = 1, . . . , k

の掛け算で考えると良い。

1,. . . ,kの表記に戻って考えると、

a × b − 1 = (a − 1) + (b − 1) mod k

つまり、巡回群の足し算。この場合、群になっている。

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3水準の相互作用

はじめに

例題によるラテン方格法の解説

2 水準の例と直交性

直交表を用いる方法•ラテン方格と直交配列(再掲)

• 3 水準以上の直交性• 2 水準直交配列表の例•直交配列表とは•直交配列表を用いた実験計画•直交配列表を用いた実験計画例• 3 水準以上の積• 3 水準の相互作用

システムマネジメント 2007 年前期 – 28 / 28

L9(34)を例にとって、3水準の場合の相互作用について説明する。

L9(34)直交配列表# 1 2 3 4

1 1 1 1 12 1 2 2 23 1 3 3 34 2 1 2 35 2 2 3 16 2 3 1 27 3 1 3 28 3 2 1 39 3 3 2 1

L9(34)直交配列の交互作用2 3 4

1 3 2 24 4 3

2 1 14 3

3 12

• 列 1と列 2の積は列 3。さらに、列 3と列 1の積は列 4。• つまり、列 1, 2の交互作用は列 3と 4に現れる。• k水準の場合は、2因子間の交互作用は k − 1列になる。