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1 高高高高高高高高高高 高高高高高高高 LHC 高高 2006 年 12 年 21 年 年年年年年 年年年年年年年年年年年年年(KEK) 年年年年年 年年年年年年年 B No.12

高エネルギー物理実験  ヒッグス粒子と LHC 計画

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東京理科大 物理学特別講義 B No.12. 高エネルギー物理実験  ヒッグス粒子と LHC 計画. 2006 年 12 月 21 日 近藤敬比古 高エネルギー加速器研究機構(KEK). 素粒子物理学 物質の根源を研究する学問分野。 最近の加速器技術の急速な発展により、次々と新しい発見がなされた。素粒子物理学関係のノーベル物理学賞はかなり多い 。. 大きさ. 研究に必要な加速エネルギー. 加速器の例 KEK 12GeV 陽子シンクロトロン ( 1975 年 11 月完成~ 2006 年 3 月停止). 素粒子物理実験 - PowerPoint PPT Presentation

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1

高エネルギー物理実験

 ヒッグス粒子と LHC 計画

2006 年 12 月 21 日

近藤敬比古 高エネルギー加速器研究機構(KEK)

東京理科大 物理学特別講義 B No.12

2

素粒子物理学

物質の根源を研究する学問分野。

最近の加速器技術の急速な発展により、次々と新しい発見がなされた。素粒子物理学関係のノーベル物理学賞はかなり多い。

大き

研究

に必

要な

加速

エネ

ルギ

3

加速器の例

KEK 12GeV 陽子シンクロトロン

( 1975 年 11 月完成~ 2006 年 3 月停止)

素粒子物理実験

加速ビームを使って陽子の内部構造を研究したり新しい粒子を生成して研究する。

E = mc2

   ビームエネルギーが高いほど   重い粒子を生成できる。     

4

高エネルギー素粒子実験のための加速器

エネルギーフロンティアー加速器 最高の衝突エネルギーを実現して新粒子を発見する。 LEP@CERN( 1989-2000) Tevatron@Fermilab (1986-2009) SSC@USA(途中で建設中止) LHC@CERN( 2007より運転開始)

インテンシティフロンティアー加速器 素粒子を大量に生成して素粒子の精密測定を行う。 Bファクトリー: KEK-B@KEK( 1998-) PEP-II @SLAC( 1998-2008)→ bクォークの CP非対称性の発見

J-PARC@東海村( 2008-.....)

今回の講義項目

5

加速

器の

エネ

ルギ

2000 年1950 年

LHC

陽子の質量

6

周長 27km の LEPトンネル(地下深度~ 100m )を再利用して、 LHC加速器を 2007 年に完成させて、重心系エネルギー 14 TeV の陽子・陽子衝突を実現する。

参考:山の手線の周長は約 32km

LHC (Large Hadron Collider)

7

LHC ( Large Hadron Collider )計画

Large=大きい 加速器リングの周長が 27キロメートル(山の手線: 32km) ビームエネルギーが7 TeV(7兆電子ボルト)

現在の最高エネルギーは Tevatron(米国 Fermilab)で1 TeV

Hadron=ハドロン 陽子・中性子・ π中間子など強い相互作用をする粒子群の総称で、 L

HCの場合は陽子と重イオンのビームであることを示している。

Collider=コライダー(衝突型加速器)

8

・7 TeV に加速された陽子をリングを一周させるためには、磁場を使って陽子を曲げる。

・電磁気学よりローレンツ力 :  速度 v の電荷 e を持った荷電粒子が電場 E と磁場 B から受ける力 F は

であることより、光速の運動量 p の粒子が曲げられる曲率半径 は

で与えられる。 [   ] は単位を示す。陽子ビームのエネルギー 7000 GeV と LHC 加速器マグネットの強さ B = 8.36 Tesla を代入して

よって周長 =2πρ=17.5 km が得られる。他に四重極電磁石や実験室など色々な設備が付くスペースが必要なので、実際には 27 kmになる

     

Why so large ?

Tesla 0.3

GeV/c m

B

p

BEF ve

m 279136.83.0

7000

9

・発見をめざしているヒッグス粒子の質量は 200 GeV/c2 付近にありそうである。

Large 高いエネルギーがなぜ必要か? (1)

素粒子の名前 記号 質量(重さ) m

光  photon/gamma γ  0

ニュートリノ neutrino νe  3 eV/c2 以下

電子 electron e- 0.55 MeV/c2

陽子 proton p 938.3 MeV/c2

中性子 neutron n 939.6 MeV/c2

Z ボゾン Z boson Z 91.2 GeV/c2

ヒッグス Higgs H 114 ~ 1000 GeV/c2

トップクォーク top t 173.2 GeV/c2

NoteM=106

G=109

T=1012

未発見

問題:陽子の質量をアボガドロ数( NA=6×1023 mol-1 )を使って計算せよ。

10

問題:陽子の質量をアボガドロ数( NA=6×1023 mol-1 )を使って計算せよ。

・ 水素原子は陽子1個と電子1個からなる。  ・ 水素の1 mol はほぼ1グラムである(より正確には 1.008 g) 。  ・ 水素の重さの殆どは陽子の重さであるとすると、

   ここでグラムとエネルギー単位の電子ボルト( eV )の換算には次の式を使った 

g10177.0m/s103

VoltCoulomb 106.1][eV/c 1 32

28

192

22 MeV/ceV/c

g/mol

g/molg/mol

93810177.0

1066.1

1066.110022.6

11

32

24

2423

AVp N

m

1 電子ボルト( eV )は電荷 e を持つ電子が1ボルトの電位差で得るエネルギー量E=mc2 (Einstein の質量公

式) 例 :Si の bandgap Eg=1.1eV

11

Large 高いエネルギーがなぜ必要か? ( 2 )・ヒッグス粒子の予想される質量範囲は 114 ~ 1000 GeV/c2 である(後述)。

・陽子はクォークとグルーオンからなるので、それらが運ぶエネルギーは親の陽子のエネルギーのほぼ数分の1以下であるから     新粒子発生に使えるエネルギー  ~   全体の10%程度となる。従って、陽子ビームのエネルギーは     Ep = 1000 GeV / 10% ~ 10 TeV

程度でなくてはならない。 EA

EB

陽子の中のクオークとグルーオン分布 陽子・陽子の衝突による素粒子反応

12

Hadron : なぜビームは陽子なのか? (1)

・ 加速器の種類:加速器ビームには安定した荷電粒子( e-, e+, p, pbar )を使うので 4種類のタイプがある。

e -e

[1] 電子・陽電子衝突型・ B ファクトリー( KEK, SLAC ) , LEP ( CERN), ILC (国際リニアーコライダー)

・電子と陽電子が衝突消滅して100 % のエネルギーが粒子生成エネルギーに使用できる。

・電子は曲げると放射光( synchrotron radiation )を出して エネルギーを失うので、 100GeV 以上のリング型加速器 は不可能 (次ページ)。

・ビームを曲げないで一気に加速するリニアーコライダーが 2010 年代の加速器計画として、技術開発中と設計が進んでいる。

13

・放射光の放出:一般に半径 で回る質量 m 、エネルギー E の粒子は、 1周りで

のエネルギーを放射光放出で失う. LEP のパラメーター = 4.3 km, E = 100 GeV を入れると、

と、電子が1ターンに 2 % もエネルギーを失う.を補うためには超伝導 RF 空洞が 580m も必要になる。 LEP がリング型のe+e- 衝突加速器の限界である。

・陽子の質量は電子の質量の 1840 倍なので、 放射光エネルギー損失は電子の 1013 分の 1 なので、高いエネルギーまで簡単に加速できる。

Hadron : なぜビームは陽子なのか? (2)

GeV 07.2

00051.0

100

m43003

2fmMeV197137

12 4

0

U

4

0 3

2

m

EhcU

                         

14

  

e p

pp

pp

[2] (陽)電子・陽子衝突型

・ HERA加速器(ドイツの DESY) 28 + 920 GeV・陽子中のクオークやグルーオンの分布を調べるのに最適・新粒子生成には不向き

[3] 陽子・反陽子衝突型

・テバトロン(米国のフェルミラボ) 980 + 980 GeV・反陽子と陽子を同じビームリングの中でまわすことが出来るので、1つの加速器リングでよい。・反陽子の大量生成が難かしいので高いルミノシティ(輝度)を達成できない。[4] 陽子・陽子衝突型

・ LHC ( CERN) 7,000 + 7,000 GeV   (建設中)・陽子を2つのビームパイプの中で反対方向にまわす。・高いルミノシティ(輝度)を達成できるので、ヒッグス粒子生成などの稀に起こる現象を研究できる。・新粒子生成などに利用可能なエネルギーは数分の1程度。

p

Hadron : なぜビームは陽子なのか?  (3)

15

Collider : 衝突型が最高エネルギーを実現する

colliding beam , 陽子・陽子衝突fixed target, 標的=水素

・新粒子の生成に必要なエネルギーは重心系エネルギー  ECM  である。

p1 p2

E EE

p1 p2

)0 ,0 ,,(1 PEp

)0 ,0 ,0 ,( 22 cmp p

GeV 7.13

)2(

)(

22

222221

cmcmE

PcmEppE

pp

pCM

)0 ,0 ,,(1 PEp

)0 ,0 , ,(2 PEp

GeV 200

2)( 221

EppECM

(ここで mp=0.938 GeV/c2, E=100 GeV とした。)

15 倍の違い!

4 元ベクトル

16

中間まとめ

Large Hadron Collider

最高エネルギーを達成するため トンネルは出来るだけ大きく    磁場は最大にとる。

 陽子ビームを使うことで最高エネルギーを実現できる

衝突型で最高エネルギーを実現できる

→  金と時間がかかる!

17

LHC 計画の目的

1 . 標準模型が予言するヒッグス粒子を発見し、その性質を研究する。

2.標準模型を越える物理法則を探求する:  

    例:超対称性粒子の発見      余剰次元理論の検証      クォークの内部構造

18

標準模型( Standard Model )

エネルギー領域

    1 eV~1,000,000,000,000 eV

で厳密に自然を記述する唯一の非常に強力な素粒子理論 !!

   

19

標準模型と実験の一致の例:  e+ + e- → クオーク

実線は標準模型による計算

20

アップ チャーム トップ

ダウン ストレンジ ボトム

電子ニュートリノ ニュートリノ ニュートリノ

電子 ミューオン タウ

クォ |ク

レプトン

e

e

第1世代 第2世代 第3世代

W+

W Z

Wボゾン Zボゾン

光子

グルーオン

g強い相互作用

電磁相互作用

弱い相互作用

物 質 粒 子 力を伝える粒子

ヒッグス粒子

補助場に伴う粒子 (未発見)

u

d

c

s b

t

-

標準模型の世界

21

電子(レプトン)q = - 1e

水素原子

陽子:3つのクォーク からできている

u

u

dg

+

e

光子を交換することによって引力が生じている (電磁相互作用)

グルーオン g を交換することによってクォーク間に引力が生じている(強い相互作用)

22

ゲージ粒子を交換することによって力が伝わる!

相互作用 (力)

1935 年 湯川秀樹:中間子を交換することによって陽子が結びつき原子核を作ることが出来る。

p+

p+

n

n

23

アップ チャーム トップ

ダウン ストレンジ ボトム

電子ニュートリノ ニュートリノ ニュートリノ

電子 ミューオン タウ

クォ |ク

レプトン

e

e

第1世代 第2世代 第3世代

W+

W Z

Wボゾン Zボゾン

光子

グルーオン

g強い相互作用

電磁相互作用

弱い相互作用

物 質 粒 子 力を伝える粒子

ヒッグス粒子

補助場に伴う粒子 (未発見)

u

d

c

s b

t

-

しかしこれで全てではなかった。

標準模型の世界

24

自然界には4種類の力が存在する

中性子

e

W

udd

udu陽子

例:崩壊n→p+e-+n

25

自然界には4種類の力が存在する

中性子

e

W

udd

udu陽子

例:崩壊n→p+e-+n

疑問点(1) なぜ弱い力を伝える粒子(W,Z)のみ質量があるのか?    Mg = M = 0, MW ~ MZ ~ 80-90 GeV (100 Mp)(2) なぜ強い力は短距離しか届かないのか?

26

疑問点(1)なぜ弱い力を伝える粒子( W,Z )のみ質量があるのか?

(2)なぜ強い力は短距離しか届かないのか?

Quantum Color Dynamics           (QCD  量子色力学 )

   

電弱理論( Glashow Weinberg Salam 理論)    ・1960 年  S. Glashow,

1967 年  S. Weinberg, A. Salam

・ヒッグス場を導入して SU(2)L×U(1) の自発的対称性の破れを作って電磁力と弱い力を統一した。

・1970 年後半多くの実験で確認される 

・1979 年 ノーベル物理学賞受賞・1983 年 W, Z 粒子が発見された。・まだヒッグス粒子が見つかってな

い。 

・1970 年前半  D. Gross, F. Wilczek, D. Politzer が提案

・クォークは3種のカラー荷電を持ちグルーオンを交換する。

・SU(3)C

・クオークは単独に存在しない。・  1979年 グルーオンの発見・2004 年 ノーベル物理学賞受賞 

27

ヒッグス場はなぜ必要か?

・運動方程式はゲージ対称性を持つことによりくりこみ可能( renormalizable )になり計算上の発散を回避できる。

・しかし粒子が質量を持つと運動方程式のゲージ対称性が破れてしまう。

・ 基礎方程式はゲージ対称だが、現実世界はその対称性を破っているとすればいいー>自発的対称性の破れ

Peter Higgs (英)

ゲージ対称性

波動関数の位相を任意の場所で任意に変えても運動方

程式が変わらない。

朝永・Feynman ・Schwinger,1965 ノーベル物理学賞

この矛盾の解決法

ヒッグス先生はゲージ理論では自発的対称性が破れても質量 =0の南部・ゴールドストーンボゾンが発生しないことを証明した。

28

運動方程式は対称であるにも関わらず、現実の物理状態はその対称性を破っている場合のこと:

自発的対称性の破れ

例:磁性体

・運動方程式は回転対称で特別の方向を選ばない。

・キューリー温度 Tc以上では個々の原子の磁化の方向はバラバラである。

・キューリー温度 Tc以下では磁化の方向が揃うので、回転対称性が破れている。しかし、どの方向が選ばれるかは spontaneous(自然発生的)である。

この方角が自然発生的に選ばれた!

29

スカラーのヒッグス場 が存在するとし、そのポテンシャルエネルギーが

で与えられたとする。 m2 が負ならば最小エネルギー状態(=真空)では が存在する。

422

4

1

2

1)( V

真空

真空

ヒッグス場の導入

GeV 2462

1

FGv

    真空期待値

宇宙の温度が高いとき 宇宙が冷えたとき

30

真空は、スカラー場で満ちているとする。

W/Z ボゾンやクォーク・レプトンは、ヒッグス場との相互作用のため、運動にブレーキがかかり、それが質量だとみなすことができる。光などはヒッグス場と結びつかないとすればよい。

ヒッグス場の存在による質量(重さ)の創生の世俗的説明

31

ヒッグス粒子とその性質(1) ヒッグス場があれば、最低1種類のヒッグス粒子が存在しなくてはならない。

ヒッグス粒子の質量:

 しかしヒッグス場の self couplingλがわからないのでヒッグス粒子の質量は予言できない。

ヒッグス場とフェルミ粒子( quark, lepton )の結合定数はその質量に

  比例する。

GeV 3482v Hm

246GeV

m

v

m ff

32

標準ヒッグス粒子の質量の範囲Tribiality Bound: λのくりこみ群方程式から λが発散または負にならない領域が求まる。図の横軸Λは標準モデルが破綻するエネルギースケール。大統一( 1015 GeV )まで標準モデルが正しいとすると、   130 < mH < 180 GeV

と予言される。ヒッグス粒子はかなり軽いらしい。

T. Hambye and K. Riesselmann, PR D55(1997)7225 よ

33

ヒッグス粒子の直接・間接探索

輻射補正項の中に mH が入っているので実験データを fitすると、 mH の許される範囲が推定できる。  横軸: SM higgs mass  縦軸: 2=2-2

min

黒い線がすべてのデータを使ったときの結果。青バンドは理論の誤差。黄色は直接ヒッグス探査による除外区域。

http://lepewwg.web.cern.ch/LEPEWWG/plots/winter2006/

LEP での直接観測で見つからなかった範囲

114 GeV

34

アップ チャーム トップ

ダウン ストレンジ ボトム

電子ニュートリノ ニュートリノ ニュートリノ

電子 ミューオン タウ

クォ |ク

レプトン

e

e

第1世代 第2世代 第3世代

W+

W Z

Wボゾン Zボゾン

光子

グルーオン

g強い相互作用

電磁相互作用

弱い相互作用

物 質 粒 子 力を伝える粒子

ヒッグス粒子

補助場に伴う粒子 (未発見)

u

d

c

s b

t

-

ヒッグス粒子が発見されれば標準模型が完結する !

35

1980 年代からの合言葉

最後の粒子 : ヒッグス粒子を探そう!

・ エネルギーを約 1,000 GeVまでカバーすること。

・ 電子・陽電子( e+e- )コライダー:技術的困難さあり。

・ 陽子・(反)陽子( pp )コライダー:   技術的に可能。イベントが汚い。    SSC 計画(米国)、 LHC 計画( CERN)

36

巨大計画競争:  SSC (米国) vs LHC (欧州)

1982 年から米国内で検討開始。 1984 年 DOE が SSC設計のため

の CDG を LBL 研究所内に設置。 1987 年レーガン大統領が SSC建設をテキサス州に決定。

1989 年テキサス州に SSC 研究所が設立され、周長 82km の加速器トンネル工事などが開始された。

日本チームは SDC 実験に参加。 1993 年 10 月 SSC の建設中止が議会で決定された。

1987 年:ルビア将来計画委員会がLHC を次期計画として選択。

1990-4 年:実験装置の検討。 SSC計画の研究者らもかなり参加。

1994 年: LHC の2段階建設を決定。 1995.5.10 :日本による第1次

LHC建設協力 (50億円 ) が発表された。 1996 年 1 月: ATLAS, CMS の承認。 1996 年 12 月: 2005 年完成を決定。 2003 年: 2007 年完成に変更。 2007 年:加速器完成予定。

S S C 計画 L H C 計画E=20+20 TeV, L=1033cm-2s-1

周長 87km, ~ 5千億→ 1兆円

E = 7+7 TeV, L=1034cm-2s-1

周長 27km, LEP トンネル再利用

SSC難民

37

World Wide Web の誕生地!!CERN計算機部門の Tim Berners-Lee氏は、世界中に散らばっている実験チームのメンバーの研究者間で、瞬時に同じ情報をアクセスするにはどうしたらよいか悩んだ末、 1990 年も年の暮れ近くにWeb の発明に至った。最初のWeb に使われた NeXTStep というパソコンは CERNに陳列されている。

CERN  (Conseil Europeen pour la Recherche Nucl

eaire ) ・欧州合同の高エネルギー物理学研究所・加盟国 20 カ国が国民総生産に比例して出資・年間予算 900億円・ 1954 年設立・職員数 2500人・利用者数 全世界から 6千人・加速器: PS (28GeV), ISR, SPS (450GeV), LEP (215GeV)  LHC(14,000GeV)・ノーベル物理学賞:3

ジュネーブ

CERN

38

CERN創立 50周年記念式典2004 年 10 月 19日(火)

@CERN

スペイン国王シラク フランス大統領

など日本から森山元文部科学大臣が出席

シラク大統領と森山元大臣

ルビア、シャルパックらノーベル物理学賞受賞者

森山元大臣の現場視察はありがたい

39

CERN創立 50周年記念オープンデイ  2004 年 10 月 16日 日本ブース

40

27 km ring used fore+e- LEP machine

LHC TunnelLHC Tunnel

41

(1)建設費LHC 加速器と土木工事      2950

億円 実験装置 (factor ×1.5込み )    1683億円  

ATLAS 529 MCHF     CMS 518 MCHFALICE 125 MCHFLHCb 75 MCHF

CERN人件費( LHC 分)   886億円             総 計       ~  5500億円

(2)運転経費  CERNの経費(計算機含む)      225億円 /

年 外が出す実験運転経費( 4 実験を含む )    40億

円 /年総 計        ~  265億円

/年

LHC 計画の予算規模

42

LHC 加速器の主要性能

主リング周長 26.6 km

陽子ビームエネルギー 7.0 TeV (7×1012eV)

ルミノシティ 1034 cm-2s-1

バンチ間隔 25 nsec (40 MHz)

バンチ当りの陽子数 1011

ビームエミッタンス 3.75×10-6 m rad

二口径双極電磁石 1232台

双極電磁石長と磁場 14.2 m, 8.36 Tesl

a

衝突点でのビーム半径 16 m

バンチ衝突当りの陽子衝突 19

43

LHC 加速器の主要性能

主リング周長 26.6 km陽子ビームエネルギー 7.0 TeV (7×1012eV)ルミノシティ 1034 cm-2s-1

バンチ間隔 衝突頻度 f 25 nsec、 40 MHz バンチ当りの陽子数  NB 1011

ビームエミッタンス 3.75×10-6 m mrad超伝導ダイポール電磁石 1232台ダイポール電磁石長 磁場 14.2 m, 8.36 Tesla衝突点でのビーム半径 16 m バンチ衝突当りの陽子衝突 19

Luminosity の概算

1234

2

2116210

m164

1010404

scmNf

LYX

B

44

Main Dipole 断面図:2つのダイポール磁場とビームパイプを一つのヨークとクライオスタットの中に入れる 2-in-1 型。 Cold-mass 部分は超流動ヘリウムを使って 1.9 K まで冷やす。

570 Cold-mass   1.9K

thermal shield, 50K

194

CERN で組み立て中の超伝導ダイポール

45LHC Main Dipole の超伝導コイル部

Strand inner, outer filament 数: 8900, 6500本filament 径 : 7 , 6 mCu/NiTi: 1.65 , 1.95Diameter: 1.065, 0.825 mm

strand 数 : 28(inner), 36(outer) Rutherford type Cable

bore

半径

28

mm

inner layer

outer layer

15.1 mm (both)

11850A @7T

mm

46

LHCマグネットの生産・検査・据付

1232台の超伝導ダイポールマグネットは、 CERN が技術開発し、欧州の3企業に技術移転して量産を行っている。 2006 年 10 月まで全台数が納入される。全数 CERN で冷却・励磁検査を受け殆どが合格した。

2006 年 12 月までに 1000台のマグネットが地下トンネルに据え付けられた。

47

超伝導ダイポールマグネットの生産・検査・据付の経過

2007 年の LHC 加速器の完成に向けて順調にマグネットの生産や据付が進んでいる。

48

LHC のビーム衝突点 Low- 挿挿挿挿挿挿挿挿挿挿挿挿挿

KEK が設計、東芝が製造   磁場勾配 = 215 T/m   長さ  5 m 、口径 70 mm2005 年に 18台の生産と検査を完了した。

コイルの断面図

超伝導ケーブルを巻く作業(東芝京浜工場)

コイルを検査するために垂直型クライオスタットに入れる( KEK )

49

ビーム衝突点では、陽子ビームを 10ミクロンの太さに絞りこむ。このためにレンズの役割をする超伝導4極マグネットが必要で日本と米国とが設計・製造した。

Fermilab製KEK製ビーム衝突点

50

CERN には加速器が多くあり LHC への入射ビームをつくる

7 TeV

450 GeV

27 GeV

51

LHC 計画の近未来予定2006年 6月の理事会で承認されたスケジュール:

2006年 10月:最後の LHCマグネットが納入される。2006年 12月:超伝導マグネットのテストは終了する。2007年 3月: LHCマグネットのトンネル内据付完了。2007年 8月:加速器リングを閉鎖する。2007年 11-12月:入射エネルギー 450GeVで運転し、900GeVの衝突を実現する。実験装置の試運転を行う。

2008年冬:ビームシャットダウン(約3ヶ月)。この間に加速器と実験装置の最終調整を行う。

2008年春: ECM=14TeVでの物理実験を開始する。 2008年中に最初の物理結果を出す。

52

LHC計画 ビデオ上映

19分

53直径  25 m, 長さ  46 m, 重さ 7000 ton, 建設費  500億円+α  

54

地下実験室で建設中のアトラス実験装置   2005 年 11 月(超伝導ソレノイド+中央カロリメターを中心に移動する直前)

55

アトラス 国際共同実験

アトラス実験の国際チームは、34ヵ国から 151 の大学・研究所が参加し、研究者数が約1500名からなるグループで構成される。

1994 年にグループを発足し1996 年から約 12 年をかけて装置の設計・建設を行なってきている。

Albany, Alberta, NIKHEF Amsterdam, Ankara, LAPP Annecy, Argonne NL, Arizona, UT Arlington, Athens, NTU Athens, Baku, IFAE Barcelona, Belgrade, Bergen, Berkeley LBL and UC, Bern, Birmingham, Bonn, Boston, Brandeis, Bratislava/SAS Kosice,

Brookhaven NL, Bucharest, Cambridge, Carleton/CRPP, Casablanca/Rabat, CERN, Chinese Cluster, Chicago, Clermont-Ferrand, Columbia, NBI Copenhagen, Cosenza, INP Cracow, FPNT Cracow, Dortmund, JINR Dubna, Duke, Frascati, Freiburg, Geneva, Genoa,

Glasgow, LPSC Grenoble, Technion Haifa, Hampton, Harvard, Heidelberg, Hiroshima, Hiroshima IT, Indiana, Innsbruck, Iowa SU, Irvine UC, Istanbul Bogazici, KEK, Kobe, Kyoto, Kyoto UE, Lancaster, Lecce, Lisbon LIP, Liverpool, Ljubljana,

QMW London, RHBNC London, UC London, Lund, UA Madrid, Mainz, Manchester, Mannheim, CPPM Marseille, MIT, Melbourne, Michigan, Michigan SU, Milano, Minsk NAS, Minsk NCPHEP, Montreal, FIAN Moscow, ITEP Moscow, MEPhI Moscow, MSU Moscow, Munich LMU, MPI Munich, Nagasaki IAS, Naples, Naruto UE, New Mexico, Nijmegen, Northern Illinois,

BINP Novosibirsk, Ohio SU, Okayama, Oklahoma, LAL Orsay, Osaka, Oslo, Oxford, Paris VI and VII, Pavia, Pennsylvania, Pisa, Pittsburgh, CAS Prague, CU Prague, TU Prague, IHEP Protvino, Ritsumeikan, UFRJ Rio de Janeiro, Rochester, Rome I, Rome II, Rome

III, Rutherford Appleton Laboratory, DAPNIA Saclay, Santa Cruz UC, Sheffield, Shinshu, Siegen, Simon Fraser Burnaby, Southern Methodist Dallas, NPI Petersburg, Stockholm, KTH Stockholm, Stony Brook, Sydney, AS Taipei, Tbilisi, Tel Aviv,

Thessaloniki, Tokyo ICEPP, Tokyo MU, Toronto, TRIUMF, Tsukuba, Tufts, Udine, Uppsala, Urbana UI, Valencia, UBC Vancouver, Victoria, Washington, Weizmann Rehovot, Wisconsin, Wuppertal, Yale, Yerevan

56

国 直接建設費 MCHF 研究機関数 メンバー数1 アメリカ合衆国 80.74 (17 %) 33 232 (18 %)

2 CERN 60.50 (13 %) 1 137 (10 %)

3 フランス 52.76 (11 %) 7 90 (6.9 %)

4 イタリア 45.09 (9.6 %) 12 141 (11 %)

5 ドイツ 40.00 (8.5 %) 10 109 (8.3 %)

6 イギリス 34.11 (7.3 %) 12 105 (8.0 %)

7 日本 32.18 (7.0 %) 15 61 (4.7 %)

8 ロシア 26.12 (5.6 %) 8 102 (7.8 %)

9 スイス 18.51 (4.0 %) 2 14 (1.1 %)

10 カナダ 15.08 (3.2 %) 7 40 (3.1 %)

34 合   計 468.41 (100%) 149 1,306 (100 %)

アトラス実験の国別財政分担・参加機関・研究者数(トップ10)

註:直接建設費=装置の製造コストで開発・試験・ offline 計算機・人件費などは含まない。数値は建設 MoU(1998 年 ) による。この他に建設費のオーバーコスト分が 14% 要求されている。              

57アトラス実験装置の中央部断面図

58

アトラス液体アルゴン EM カロリメター

第一段目の η : π/γ角度分解能 50mrad/SqrtE

σ/E=10%/SQRT(E)

Fine: 0.025*0.025

59

コイル部完成@東芝京浜工場( 1999 年)励磁成功( 2000 年 12 月)@東芝

CERNに到着( 2001 年 9月)

Maiani所長・ Jenni らとLAr クライオスタットへ据付 (2004 年 2月)

アトラスの中心部に磁場を形成するための超伝導ソレノイドは KEK が設計し東芝が製造した。

アトラス建設日本の分担(1) 

60

 

2004 年 7月 5日 CERN 地上試験成功後、地下実験室へ

アトラス超伝導ソレノイド

2005 年 11月アトラス測定器に設置

2006年 8月最終位置での冷却励磁試験に成功

61

アトラス建設:日本の分担(2)

端部ミューオントリガーチェンバーの建設

μ トリガー用ワイヤーチェンバー: 1200台を 4 年間で製造

カーボン塗布

エポキシ接着

自動ワイヤー巻き作業

ハンダ付

検査作業 KEK より神戸大への輸送

62

TGCチェンバーの検査ステーション

CERNへの海上輸送はエアコン付きコンテナに入れて行なわれた。

チェンバー毎に検出効率の分布をとる

アトラス建設:日本の分担(2)TGCチェンバーの神戸大での宇宙線テスト

63

アトラス建設:日本の分担(2)CERNでの TGCチェンバー据付作業

TGCチェンバーの検査・調整

2006.7 地下実験場の据付開始

2005.7 より地上でのチェンバー据付作業開始

64

アトラス建設:日本の分担( 2 )

アンプデスクリ回路( 32万ch)

4 種類のカスタム IC の設計・製造・検査は困難を極めた。

アトラス建設:日本の分担( 3 )

チェンバー上に最終設置されたトリガー回路

μ トリガー用の読み出し回路システムは日本が全て設計し製造している。

ミューオン飛跡検出器に用いられる高精度の時間差測定のためのカスタムICは、KEKの研究者のアイデアを生かしたのも(特許)。 300 psの精度で時間を測定する。40万チャンネル分を製造した。

時間差測定用チップ

65

アトラスシリコン半導体検出器(日本も分担)

Specifications:Strip pitch : 80 mStereo angle : 40 mrreadout channels ; 1536 ch~ 5000 wire bondings Assembly accuracy < 5 m

Parts: 4 Si sensor (浜松ホトニクス )12 ABCD chips (DMill, 仏 )TPG thermal conductor (米 )Flexible hybrid circuit (日本 )

Fablication:Total: 2600 modules980 in 日本 (best yield > 95%)他 英国・米国・北欧耐放射線性が必要: 10 年間で 3x1014n/cm2

66

日本が設計・製造したロボットで2200台のモジュールをマウント

( Oxford 大)

アトラス実験:シリコン半導体検出器システムの組み立て         

2005 ~ 2006 シリンダー組み合わせ作業

2006.5 地上で宇宙線を観測

67

CMS ( Compact Muon Spectrometer )実験

MUON BARRELDrift TubeChambers ( DT )

Resistive PlateChambers ( RPC )

SUPERCONDUCTINGCOIL

IRON YOKE

Silicon MicrostripsPixels

TRACKER

Cathode Strip Chambers (CSC )

Resistive Plate Chambers (RPC)

MUONENDCAPS

Total weight : 12,500 tOverall diameter : 15 mOverall length : 21.6 mMagnetic field : 4 Tesla

CALORIMETERSECAL

Scintillating PbWO4 crystals

HCAL

Plastic scintillator/brasssandwich

68

測定器内の反応が異なるので粒子を判別できる!

粒子測定の概要 ( LHC 計画 CMS 実験の場合)

μ+,μ- :物質を突き抜けるγ, e :電磁カロリメター内でシャワーを起す

π, K, p, n :ハドロンカロリメター内でシャワーを起こす

ハドロンカロリメター

電磁カロリメター

シリコン半導体飛跡検出器

ミューオン検出器

荷電粒子 :飛跡を残す

超伝導ソレノイド

69

CMSの電磁カロリメター( PbWO4 クリスタル)

70

LHC で発生する現象

p p → H → Z Z → μ+ μ- μ+ μ- (yellow tracks).

71

pp interaction でのいろいろな生成断面積 L=103 4 cm-2s-1 での rate

Total rate: 109 Hz

b quark: ~107 Hz

W boson: 2000 Hz

>0.7TeV jet: 1 Hz

150GeV higgs: 0.3 Hz

S/N

~10

-10

nb (nano-barn) =10-33cm2 重心系のエネルギー

72

LHC の 4 実験で 1 年間に蓄積されるデータを全部CDROMに焼いたとすると図のようになる。 ATLASだけで年間 5PB( ペタバイト =1015バイト ) に及ぶ。 raw data size 1.6 MB event rate 200 Hz ESD size 500 kB AOD size 100 kB

LHCデータ解析とグリッド

実験で取れたデータを世界に分散する計算機センターに送り処理する。

グリッド:認証をもらった人は世界に分散したCPU資源を使い計算することが出来る。

73

Speakers age distribution

02468

101214

Age (years)

Ent

ries

/ 2

year

s

441 registered participants

5th ATLAS Physics WSRome 6-11 June 2005

グループ内の物理ワークショップ

発表者の年齢分布

74

LHC での標準ヒッグス粒子の生成

挿挿挿挿挿

(pb

)

t

H

t

t

P

g

g

P

q'

W or Z

H

q'''

W or Z

q q''P

P

H

P

P

t

t

g

gt

t

q'

H

W or Zq

P

P

W or Z

グルーオン融合Vector Boson 融合

tt付随生成

W/Z 付随生成

4種類の生成法が存在する

標準ヒッグス粒子の質量 (GeV)

グルーオン融合

Vector Boson 融合

75

標準ヒッグス粒子の崩壊比( Branching Ratios )

Excluded by LEP

標準ヒッグス粒子の質量 (GeV)

76

生成過程 崩壊過程    有効な領域とその効能

グルーオン融合

  H →γγ 110-140GeV Mass 測定

H → ZZ → 4 l 140-1000 GeV 発見・ Mass, spin, coupling 測定

H → WW 130-170 GeV 発見

Vector Boson融合

H → ττ 110-140GeV 発見・ Mass, coupling 測定

H → WW 130-200GeV 発見・ W coupling 測定

H → γγ 110-140GeV発見 ? (fake の研究中)・Mass 測定

H → bb 110-140GeV Ybの測定( Trigger研究中 )

ttH

H → bb 110-130GeV

Ytの測定H → ττ 110-130GeV

H → WW 130-180GeV

WH H → WW 140-170GeV 発見・ W coupling 測定

標準ヒッグス粒子の研究で有力なチャンネルのまとめ

77

シミュレーションによるヒッグス粒子の探索例 

120 GeV のヒッグス粒子

78

Simulationによる標準ヒッグス粒子Hの発見可能性アトラス実験:積分ルミノシティで 30 fb-1   (初期の約 2 年分)

ヒッグス粒子の質量

100GeV 1000GeV300GeV

8通りの H の崩壊モードが使える

黒線がいろいろなモードを組合わせた判定ライン

5 以上ならば発見が確実である。

最初の1 -2 年で発見できる!

79

超対称性 (Supersymmetry, SUSY)超対称性:フェルミ粒子(スピン 1/2 )とボーズ粒子(スピン 0,1 )を入れ換える対称性

さらに未発見の世界へ挑戦が可能になる!

ここで  L= left-handed 成分 , R= right-handed 成分 , s = spin

80

超対称性 (SUSY) 粒子が 1 TeV 付近にあると

( low energy supersymmetry)

①  3 つの結合定数が~ 1016GeV で一点に交わる →大統一できる。

② ヒッグス粒子の質量の不安定性(微調整問題)の解決になる。

③ 最も軽い超対称性粒子 (LSP) は、暗黒物質の有力候補である。

しかし

④ 問題は、超対称性粒子はこれまで見つかっていないこと。

81

走る結合定数  running coupling constants

作用の強さを示す結合定数は、不確定性原理のため図のようなバーチャルな高次のループ効果を含むため、反応エネルギー( q2 )と共に変化する。 → 結合変数 quark

gluo

n

q = 反応エネルギーの目安q0 = 基準点の qnf = 6 ( クォークの種類数)

20

2203

2032

3

ln33212

1qq

nq

qq

f

例: 強い相互作用( QCD, 量子色力学)の強さを表す結合定数は右図を計算すると

強い相互作用の場合はエネルギーが高くなるほど力が弱くなる。q (GeV)

トリスタンLEP

① 大統一について

82

3つの相互作用( SU3×SU2×U1) の結合定数 3, 2, 1 を

高いエネルギーへ外挿すると、 1 TeV 付近に SUSY 粒子群が存在すれば、 1025 eV 付近で一点に交わることがわかった。

LHC で到達できる部分

U. Amaldi et al.,Physics Letter260 (1991) 447

観測値3力の大統

一が可能であ

る .SUSY-GUT

① 大統一について

83

Higgs粒子の質量の量子補正の問題

スカラー粒子はフェルミ粒子のループによる質量補正を受ける。ここで cutoff は新しい物理が出てくるエネルギー。  

...../ln6216 cutoff

22cutoff2

2

2 fff

H mmm

もっとも大きい補正は top quark の場合で f   ~  1である。新しい物理が大統一のエネルギースケールまで存在しないとすると、   

HH mm GeV 10 GeV 10 1515cutoff

質量の量子補正が質量自身よりはるかに大きくなってしまう  !!!

                        微調整問題(自然さ問題) と呼ぶ。

(注) quark などの fermion はこの質量補正は~ ln(cutoff) なので問題ない。

これが問題の源

H

f

-fH f f-

H

② 微調整問題

84

(下から眺めて)新しい素粒子物理が始まるエネルギーは

② 微調整問題の解決法

1 TeV より遥かに高いエネルギー

cutoff = 1016 GeV (大統一理論)

ならば、質量補正の第1項

をキャンセルするメカニズムが必要。  →  Low energy SUSYモデル

1 TeV のすぐ上のエネルギー      cutoff = 1~10 TeV

ならば微調整はそもそも必要ない。

→   余剰次元理論リトルヒッグス理論テクニカラー理論ヒッグスレス

   

2cutoff2

2

216

f

85

ブレーン( 3 次元空間)

バルク

gqq e

e

Gr重力子だけがバルク空間へ自由に伝播できる

標準模型の力や粒子はすべてブレーン内に閉じ込められている

余剰次元理論

86

超対称性粒子が1 TeV付近にあれば大きな量子補正項が完全にキャンセルできる。

H f

H

S

-S|H|2 |S|2

...../ln6216 cutoff

22cutoff2

2

2 fff

H mmm

スカラー粒子ループによる質量補正

...../ln216 cutoff

22cutoff2

2 SSS

H mmm

......... 8

1 2cutoff

2

22 fSHm

超対称性があれば、 1 つのフェルミ粒子に対して2つのスカラー粒子が導入され、

なので、この項がゼロにできる(高次も含めて)。  不自然さは

2

fS 超対称性が完全なら

フェルミ粒子ループによる質量補正

②微調整問題

87

③ 暗黒物質

超対称性理論では、 R パリティ保存を仮定している。

通常の粒子は RP = +1 、 SUSY粒子は RP = -1 なので、

①  SUSY粒子はペアーで生成されなければならない。  ②  SUSY粒子が崩壊して最も軽い SUSY粒子    ( LSP, lightest supersymmetric particle) が残る。  ③  LSP は電荷を持たず中性である              

か、またはその混合状態(ニュートラリーノ )。この結果

(1)  LSP 粒子は暗黒物質に適した性質を持っている。(2)  LSP 粒子は測定器から抜け出る→横エネルギー損失

NASA WMAP 銀河の回転速度

SLBpR 231

B = バリオン数、L = レプトン数、S = スピン値

00 ~ ,

~ , ~ , ~ Hh

01

~(LSP)

g~

g~

u

u

q

qg

通常の粒子( RP=+1 ) SUSY 粒子( RP= ー 1 )

01

~

p

p

88

LHC での SUSY 粒子発生のイベントシミュレーション

CMS

2つのニュートラリーノが発生し、それらは測定器では捕まえられないで逃げてしまう。

消失した横エネルギー量 (GeV)

横エネルギー ET が大きく見えなくなる。

89

④ 超対称性の破れの導入

SUSY粒子はまだ発見されていない -> 質量をつくり、

結合定数は元もまま残すには、超対称性は自発的に破

れているとする。モデルとしていくつかある:① MSSM (Minimal Super-symmetric Standard Model ) :標準模型に必要最小限の超対称性を取り入れて拡張した理論それでも 124 個のフリーパラメーターが存在する。

②  mSUGRA (Minimal Super Gravity) 超対称性の破れが隠れた領域にある粒子群のみで起こり、MSSM粒子とは重力を介してのみ相互作用する。パラメーターが5つになる

③  GMSB (Gauge-Mediated Symmetry Breaking):見える領域とはメッセンジャー粒子を介して関係する。LSP は通常グラビティーノで孤立ガンマー線が見える。

MSSM( 見える領域)

SUSY 破れの原因( 見えない領域)

重 力or

メッセンジャー粒子

,,,, 2120 BAmm

90

mSUGRAモデル

LHC 実験による到達領域図

1~2年の実験で1 TeVまでの領域

をほぼ探索できる。

1ヶ月

1年

1年@1034

91

BigBang 現在

磁力

電気力

弱い力

強い力

地上重力

天体重力重力

QCD

弱い相互作用

QED電磁力電弱理論

大統一理論

92

BigBang 現在

磁力

電気力

弱い力

強い力

地上重力

天体重力重力

QCD

弱い相互作用

QED電磁力電弱理論

大統一理論

理解できた領域

ヒッグス粒子

SUSY 粒子

SUSY 理論必要

93ここが約6ヶ月遅れ!

94

標準模型は正確に自然を記述するが、その模型の根幹にあるヒッグス場とヒッグス粒子が実験で確認されていない。ヒッグス粒子は 114 ~ 1000 GeV の質量範囲にあるはずである。

CERNで全世界の国の協力で LHC の建設が 2008 年春の実験開始を目指して進んでいる。 LHC は周長 27km の大型の陽子・陽子コライダーで、ビームを曲げるために超伝導マグネットを使う。

14TeV の陽子・陽子衝突現象を測定する大型実験装置アトラスとCMS が急ピッチで建設中である。日本はアトラスに参加している。

ヒッグス粒子が 1 ~ 2 年程度の LHC 運転で発見できる。超対称性粒子や余剰次元など標準模型を越える物理を探索することが可能になる。

まとめ

95

今は素粒子物理学の

革命前夜

まとめ(過激版)

96休日にはスイスアルプスにも行ける!