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日本語・日本文化教育部門 FD 活動の報告 …………………………………………………………… 尾崎 明人 60 ●第52期(2005年4月期)日本語研修コース ………………………… 鹿島  央 62 ●第53期(2005年10月期)日本語研修コース ………………………… 鹿島  央 64 ●第24期 日本語・日本文化研修コース(2004年10月~2005年9月) …………………………………………………………………………… 籾山 洋介 66 ●全学向け日本語プログラム2005年度 ………………………………… 李  澤熊 69 ●学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉………………………… 村上 京子 74 ●短期留学生日本語プログラム 平成17(2005)年度 …………………尾崎 明人 84 ●第6期 日韓理工系学部予備教育コース ……………………………… 村上 京子 88 ●(資料)平成17(2005)年度・各コースの担当者 …………………………………… 90

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日本語・日本文化教育部門●FD活動の報告 ……………………………………………………………尾崎 明人 60●第52期(2005年4月期)日本語研修コース …………………………鹿島  央 62●第53期(2005年10月期)日本語研修コース …………………………鹿島  央 64●第24期 日本語・日本文化研修コース(2004年10月~2005年9月)  ……………………………………………………………………………籾山 洋介 66●全学向け日本語プログラム2005年度 …………………………………李  澤熊 69●学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉 …………………………村上 京子 74●短期留学生日本語プログラム 平成17(2005)年度 …………………尾崎 明人 84●第6期 日韓理工系学部予備教育コース ………………………………村上 京子 88●(資料)平成17(2005)年度・各コースの担当者 ……………………………………90

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-6 0-

 日本語日本文化教育部門は平成14年に FD 班を設

け,教員全員で FD 活動に取り組んできた。平成16年

には,留学生センターの委員会として FD 委員会を設

置し,教員個々の授業改善,教授技術の向上をめざし

ている。

 平成17年度は FD 委員会を3回開催した他,教員が

自由に話し合う場として FD 懇談会を2回開いた。懇

談会では実践報告をもとに話し合う機会も設けた。ま

た,昨年同様,FD 報告書を作成した。

⑴ FD懇談会

 2回開催した FD 懇談会で出された意見,論点の一

部を以下に列記する。

・ FD 活動は,教師としての資質・能力を高めること

が目的であるから,各自が目標を設定し,それに向

けた努力とその成果を自己評価し,さらに工夫を

重ねていくというものである。したがって,FD 活

動は教員個々の仕事である。だが,一方において,

FD 活動はセンターの教育研究活動の一部であり,

外部評価の項目にも含まれる事柄であるから,セン

ターとしての FD 活動を記録に残し,センターとし

ての自己評価を行わねばならない。

・ センターとしての FD 活動にはさまざまな方法が考

えられる。教員一人一人が FD 報告を書くだけでな

く,FD 活動に関する懇談会,勉強会,講演会など

を計画的に実施すれば,それはセンターの FD 活動

であり,自己評価の対象になる。

・ 授業改善のための課題を設定する場合,すでにその

ような課題に取り組んだ事例があるかもしれない。

授業の工夫についても先例があり得る。したがって,

課題解決に必要な情報や事例を集め,教員が情報を

共有することもセンターとして考えるべき課題であ

る。

・ これまでの FD 報告は,教え方(教授法)に着目し

たものが多いが,教える内容の改善を目指す取り組

みも FD 活動に含めて考えていい。また,教材開発

の過程で学ぶことも多いので,教材開発を FD の視

点から見ることもできる。

 このような意見が出される一方,より本質的な議論

も行われた。「学生が満足すれば,いい授業と言える

のか」「いい授業とはどのような授業か」という議論

である。「FD 活動は学生の学習成果に結びついてい

かなければ,意味がない」,「授業が楽しいというだけ

では不十分。何らかの成果がなければならない。さら

に勉強を続けよう,もっと高いレベルを目指そうと学

生が思うような授業はいい授業だ」,「学習成果とは何

か。単に日本語の能力が伸びたということだけではな

く,学習能力を高めること,自律的な学習ができるよ

うになることが大事だ」などの意見が出された。この

議論は,学習の成果をどのように測るかという次の問

題ともつながっている。

 FD 懇談会は,何らかの結論を出すための場ではな

く,お互いが日ごろ感じていること,考えていること

を話し合う場である。このような話し合いの時間を共

有することで FD 活動に対する共通理解が生み出され

ていると考えられる。

⑵ 実践報告

 第2回 FD 懇談会で村上教授から配付資料をもとに

「Can-do-statements」を利用した授業実践の報告が

あった。概略は以下の通りである。

 学部の日本語科目では,授業開始前と終了後に「何

ができるか,できないか」を尋ねるアンケートを行

い,受講生に自己評価を求めている。この「Can-do-

statements」を利用することで,学生は学習すべき事

項を自覚し,自分の進歩や学習の進め方について考え

る手がかりを得ることができるし,教師の側は,学習

者の自己評価を参考にしながら行動面から授業目標を

立て,その目標に照らした授業を行うことができる。

学生の回答は他のテストなどと相関がかなり高く,授

業のやり方や問題点を学生たちと話し合うにはいい材

料になる,とのことであった。

 この報告に対して,この方法ではコース開始前と

コース終了後に具体的な言語コミュニケーション行動

FD活動の報告

尾   崎   明   人

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日本語・日本文化教育部門

-6 1-

に焦点を当てた自己評価が行われるので,従来の漠然

としたコース評価に比べると,アンケートの結果を授

業の内容や方法に生かせるのではないか,「Can-do-

statements」を作ることがコースを考える出発点にな

る,などの肯定的な意見が多かったが,一方では,コー

スによって「Can-do-statements」とそれに沿った

コースを作ることがむずかしい場合もあるという意見

があった。

 また,村上教授がこのような実践を行っていること

自体を知らなかったので,みんなが何をやっているか

情報交換をもっとするといいという意見も出された。

⑶ FD報告書

 平成17年度も前年に引き続き,全教員が個人または

グループで FD 報告書を作成した。

 その内容は多岐にわたるが,その一部を紹介する。

・ 「会話練習の実践報告―日本人にインタビューする

―」,「会話授業における録音とその生かし方」など,

会話の授業に関するもの

・ 「SJ302読解授業改善の試み」,「全学向日本語講座初

級 I クラスの読解授業」など,読解の授業に関する

もの

・ 「全学向日本語講座上級聴解クラス」,「上級作文 I

クラスの授業での試み」など,聴解,作文の授業に

関するもの

・ 「ドリル授業の試み」,「初級における漢字ワークシー

ト作成の試み」,「できるだけ学習者を主体とした文

法クラスの試み」,「SJ101の数字導入」,「フィード

バックシート導入の効果」,「ボランティア参加型授

業」など,授業方法に関するもの

・ 「大量の漢字導入を期待された法学部専門日本語入

門コース」,「初級クラスでの携帯メール文の試み」

など,授業内容に関するもの

・ 学部日本語科目や専門入門講義に関する学生からの

授業評価に関するもの

 これらの FD 報告24編を一つにまとめて,44頁から

なる FD 報告書を作成し,教員全員に配布した。

⑷ 総括

 国立大学法人化を一つの契機として日本語教育プロ

グラムの大幅な見直しが行われ,本年度から新しい日

本語教育プログラムが始まった。この教育改革に備え

て,昨年度から読解教材,漢字教材などの作成作業が

始まり,今年度も授業と並行して教材作成に多くの時

間をとられた。こうした中で内容のある FD 報告を書

くことは教員にとって大きな負担であった。

 本学の日本語教育プログラムは20名を越える非常勤

講師に支えられている。その非常勤講師が全員 FD 報

告を書くこと自体,他の教育機関ではあまり見られな

いことであろう。留学生センターではこれまで日本語

教員が一体となって FD 活動を進めてきたのである。

しかし,予算の削減にともないクラスの規模が大きく

なっていること,プログラム改変にともない新たな作

業が増えていることなど,教育環境が大きく変わりつ

つある。こうした中で,FD 活動を形骸化させること

なく,今後も全員で FD 活動に取り組んでいくには,

コース運営のあり方や教育条件の改善にも目を向ける

必要があるだろう。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-6 2-

 2005年度4月から日本語教育プログラム全体の大幅

な見直しが実施に移されたことに伴い,日本語研修

コースもクラス数の削減を行い,運営にあたった。

 日本語研修コースでの今回からの大きな変更点は,

各留学生のニーズ,すなわち研究との時間配分を考え,

1週間の日本語学習にどの程度の時間を費やすかを留

学生自身が選択できる余地ができたことである。しか

しながら,初級で来日した留学生のほとんどは,日本

語研修コースを受講している。

 センター内での各日本語コースの名称が変更され

たことにより,日本語研修コースも,EJ(Special

program for Elementary Japanese)コースともよぶ

ようになったが,学習期間にあわせた6ケ月コースと

いう名称も使われている。

1.研修生

A.大使館推薦(研究留学生)

 文部科学省より配置された大使館推薦の国費研究留

学生は,22ヶ国29名で,進学先は名古屋大学25名,滋

賀大学,愛知工業大学,名古屋市立大学,中部大学が

それぞれ1名であった。今回,29名のうち11名は全

学向けの日本語講座を受講した。内訳は,IJ111(全

学集中日本語初級前半)2名,IJ112(全学集中日本

語初級後半)4名,IJ211(全学集中日本語中級前半)

2名,IJ212(全学集中日本語中級後半)2名,SJ202

(全学標準日本語中級後半)1名であった。

B.学内公募(大学推薦国費留学生)

 学内で研究をする様々な留学生にとっては,今年度

からの日本語プログラムの拡充により選択できる日本

語コースが増えたために,日本語研修コースへの応募

は大学推薦の国費留学生だけに限定した。このことは

前年度2月に開催されたセンター協議会でも報告し,

全学的にも周知をした。

 全学への公募の結果,今回は応募はなかった。

 以上のように,第52期は研究留学生29名,うち18名

が日本語研修コース,残り11名は全学向け日本語講座

を受講した。

2.クラス編成

 授業は,当初2クラス編成とし,専任教官1名,非

常勤講師8名の計9名が担当した。前年度までは5ク

ラス編成であり,留学生のレベルにも細かく対応でき

ていたが,今期の18名の未習者の中には,全くの初級

ではなく多少の学習を行っているものもあり,2クラ

スの編成では進度にかなりのばらつきが生じ,週15コ

マという集中度の高いコースの特殊性もあり,対応が

難しい面が出てきた。そこで,急遽この事態に対応す

るために,午後の1コマについては,クラス数を3ク

ラスとし,会話などの運用能力を高めるための授業に

あてた。

3.時間割と日程

 授業は月曜日から金曜日まで,午前8時45分から午

後2時30分まで90分授業を3コマ行った。これまで火

曜日を除く毎日午後4時15分まで行っていた個人的な

質問,会話練習などによる個別に問題を抱える学習者

への対応はすべて実施できない状況となった。

 コースの日程は以下の通りである。

 4月12日㈫ 開講式,4月13日㈬ 授業開始,夏季

休業7月25日~8月31日,9月1日㈭ 授業再開,9

月13日㈫ 修了式。夏季休業中,希望者は全学向け夏

季集中日本語講座(7月25日~8月9日)を受講した。

4.カリキュラム

 カリキュラムは,これまでのように⑴主教材 A

Course in Modern Japanese [Revised Edition],

Vols.1&2(名古屋大学日本語教育研究グループ編)を

中心とする授業,⑵その他の活動(ホームビジット,

自分に関連する事柄について話す,書く活動など)

第52期(2005年4月期)日本語研修コース

鹿 島   央

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日本語・日本文化教育部門

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⑶専門について話す,の3つで構成した。以下に,概

要について報告する。

⑴ 教科書を中心とする授業(1~14週)

 夏休み前に主教材である A Course in Modern

Japanese, Vols.1&2 が終了するようなカリキュラム

を編成した点は,これまでと同じである。

 ・ドリル(各課の文法練習)

 ・Dialogue(会話)

  各課のはじめに発音練習を行った。

 ・Discourse Practice & Activity 

 会話の運用練習として各課の Discourse Practice に

もとづいて口頭練習を行った。

 ・Aural Comprehension 

 ・Reading Comprehension

⑵ その他の活動

 ・話す練習

   まとまりのある話をする練習として,先期と同じ

テーマ(「たのしかったこと」「趣味について」「国

の観光地」「国との違いについて」)について原稿

を書いてから話す活動を行った。また,日本人ゲ

ストにインタビューする活動も2度行った。

 ・書く練習

   話す練習での原稿作成を書く練習として行なっ

た。

 ・Pronunciation Practice

   日本語の発音システムを7回にわたり導入する

「SoundSystem」というクラスと,会話の時間に

行う「Sound Practice」という発音練習の時間を

  設定した。

 ・ホームビジットプログラム

   ホームビジットプログラムも例年のように第13週

目の土,日に実施した。教科書の80%程度が終了

した時点での訪問であり,実際に日本語がどの程

度使えるのかを実地に体験するいい機会になって

いる。同時に日本人の日常を知る貴重な経験にも

なり,学生にはおおむね好評な活動である。訪問

の前には,教室活動として電話のシミュレーショ

ンや実際に訪問する家庭に電話することも行って

いる。訪問した翌週にはクラスで体験をレポート

し,その後訪問家庭へのお礼状も学生自身が書い

ている。

⑶ 「専門について話す」(第15週)

 個別指導を行った後,各留学生の専門領域について

発表した。発表は207講義室で行った。

5.まとめと問題点

 今年度から日本語研修コースも,全学日本語プログ

ラムの拡充・改善に伴いクラス数を2クラスとし運営

にあたった。しかしながら,これまでの5クラス体制

では対応ができていた留学生,すなわち全くの未習者

ではないが,初級前半終了程度の留学生には全学の日

本語プログラムに参加してもらわざるを得ない状況と

なった。国費研究留学生の来日当初の日本語力は,こ

れまでも時期により様々であったが,初級前半から中

半にかけての留学生も多くなり,本来ならば日本語研

修コースでの研修を通して,日本語力のレベルアップ

が期待される留学生も,研修コース2クラス体制では

対応できないことが分かった。さらに上述したように

全くの未習者の中にも多少の既習者がいる場合,長期

的な集中度の高いコースでは,習得度に時間の経過と

ともに明らかな差が生じ,きめの細かい対応が難しく

なることもクラス数が少ないことにより経験できた。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-6 4-

 日本語プログラムの拡充後2期目を迎え,全学日本

語各コースの需要などにも配慮し,全体的なコース運

営を行っている。日本語研修コースでは前期の反省を

ふまえ,初級前半程度の留学生にも対応できるように

3クラス体制で運営することとした。

1.研修生    

A.大使館推薦(研究留学生,教員研修生)

 文部科学省より配置された大使館推薦の国費留学生

は,11ヶ国20名で,うち6名は日韓理工系学部予備教

育生である。残り14名のうち,7名は教員研修生で,

残りの7名が研究留学生であった。進学先は名古屋大

学12名,愛知教育大学2名であった。今回,名古屋大

学進学者のうち1名(メキシコ:国際開発研究科)は,

初級後半レベルであったが,研究活動のため全学向け

日本語講座を受講した。

B.学内公募(国費留学生)

 今期も法学研究科から国費特別コース5名(このう

ち4名は日本語未習者,1名は中級後半レベル)お

よび JICE(日本国際協力センター)支援無償留学生

(JDS)8名(このうち2名は初級前半レベル,残り

の6名は初中級レベル)の中から日本語研修コースに

は初級相当の6名を受け入れた。残りの7名について

は全学日本語プログラムの集中日本語コースを受講

し,午後の1コマについては JICE(日本国際協力セ

ンター)の資金協力を得て読解を中心とした特別クラ

スを設定した。他に学内からは工学研究科1名(バン

グラデシュ),教育発達科学研究科1名(インドネシア)

の合計2名受講申し込みがあり,面接の結果受講を認

めた。

 以上のように,第53期日本語研修コースは国費大使

館推薦留学生13名,学内推薦留学生8名の合計21名で

あった。

2.クラス編成

 授業は,3クラス編成とし,専任教官2名(1名は

6月新規着任者),非常勤講師10名の計12名が担当し

た。

3.時間割と日程

 時間割は52期と同様である。

 コースの日程は以下の通りである。

 10月11日㈫ 開講式,10月12日㈬ 授業開始,冬季

休業12月23日㈮~1月9日㈪,1月10日㈫ 授業再開,

3月2日㈭ 修了式。春季休業中,希望者は全学向け

春季集中日本語講座(2月13日㈪~2月28日㈫)を受

講した。

 4.カリキュラム

 未習クラスのカリキュラムは52期の内容とほぼ同じ

であったので省略する。

 多少学習をしてきた学習者も,最初の1週間は特別

クラスとして授業を行ったが,2週目以降は未習者と

同じカリキュラムとした。

 Web-CMJ のクラスでは,3クラス全員で行い,あ

わせて質問も受け付けるクラスとした。

5.まとめと問題点

⑴  前年度と同じく国費研究留学生の配置が10月期に

ついては少なくなっているが,法学研究科の国費留

学生および JICE(日本国際協力センター)支援無

償留学生の受け入れがあるためクラス数の削減は難

しい状況である。ただJICE(日本国際協力センター)

の予算削減もあり,法学研究科で受け入れる初中級

レベル以上の留学生には以前のようなきめの細かい

対応はできなくなった。実際には,初中級レベル以

上の学生には,午後に毎日1コマだけの補習授業を

第53期(2005年10月期)日本語研修コース

鹿 島   央

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日本語・日本文化教育部門

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おこなった。以下に付記として授業内容について記

載しておく。

⑵  今回研究留学生はすべて国際開発研究科の留学生

であったが,指導教員の日本語授業への理解により,

すべての留学生が欠席もなく熱心に学習に専念でき

たことは有り難いことであった。

付記: 法学研究科留学生に対する特別日本語コースに

ついて

 今期法学研究科の受け入れた13名のうち,6名につ

いては上記日本語研修コースでの研修であったが,残

りの7名については午前中全学集中日本語コース,午

後1コマは日本語研修コース担当講師による特別授業

を行ったため,その授業内容については,本稿で記録

としてとどめることとする。

1.受講生

 初中級程度の修了生は,法学研究科 JDS の学生6

人で,本国で350時間程度,7月に来日後120時間程度

の日本語学習を行っている。他の1名はすでに5年程

度の学習歴があり,中級後半以上の力はあるが今回の

特別プログラムに参加した。したがって,7名の日本

語運用能力には少なからず差があることは分かってい

たが,読解力を伸ばすことを目的にカリキュラムデザ

インを行った。

2.時間割と日程

 2005年10月13日㈭から2006年1月31日㈫までの64日

間とし,冬季休業期間などは日本語研修コースと同じ

とした。時間は,毎日13時から14時半までの1コマで

ある。

3.カリキュラム

 このクラスの目標は,以下のように設定した。

・ 専門課程での教育に入る前段階として,日本に関す

る基礎的な知識を,読解,発表,作文,総合的な演

習を通して養成する。

学習内容

読解: VTR なども使用し,現代の日本社会について

学ぶ

   10の素材の精読と,漢字310の学習

 ・日本の自然

 ・女性研究者は板挟み

 ・日本の人口構成

 ・日本の歴史

 ・日本の政治

 ・日本の会社組織

 ・就職活動

 ・フリーター

 ・日本の憲法

 ・ロボット

演習:テーマを設定し,日本事情について学ぶ

 ・日本の地理 日本人の持つ地理的な常識の紹介

 ・外国人労働者 日本社会への理解を深める

 ・公害問題  

 ・裁判員制度 新制度の紹介

インタビュー活動

 インタビューにより情報を集め,資料を作成し口頭

発表を行う活動である。テーマは,名古屋大学の学生

の生活に関するものと,自分の専門に関係のある分野

について1回ずつ行った。自分の専門に関する分野で

は,司法試験を2これから受験する学生へのインタ

ビュー,法律事務所で弁護士として活動している方へ

のインタビュー,および名古屋地方裁判所でのインタ

ビューを行った。

総合演習:インタビュー活動と発表

 今回は,名古屋市役所,名古屋地方裁判所,弁護士

事務所を訪問し,1時間程度のインタビューを行った。

まとめ

 今期から圧倒的に時間数が少なくなり,読解を中心

としたカリキュラムとしたが,レベル差が大きく学習

者にとっては必ずしもいい学習環境ではなかったにも

拘わらず,非常にまじめに授業に取り組んでいた。午

前に全学の日本語コースを受講し,午後に1コマの特

別クラス編成であったが,この形態が日本語研修後の

専門教育課程での運用にどのような影響を与えている

のか気になるところである。レビューをする必要を感

じる。今後法学研究科とも連絡をとり,さらに充実し

たカリキュラムとしていきたい。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

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 まず,今期は,2004年10月に「日本語・日本文化研

修コース」としてスタートしたが,2005年4月に,日

本語プログラム全体の改編にともない,コース名が変

更になり,「上級日本語特別コース」となった。実質

的な変更点の一つとして,「3クラス体制」から「2

クラス体制」になった。

 さて,今期のコースは,「上級レベルの日本語能力

の習得(話す・聞く・読む・書くのすべてにわたって)」

「日本に関する基礎的理解」「各自の専門分野の基礎的

な研究方法の習得と実践」の3つを目標として行われ

た。

 学習者は13カ国,21名(中国:4名,インド:3名,

ベトナム:2名,ウクライナ:2名,ポーランド:2

名,インドネシア:1名,タイ:1名,イタリア:1

名,ウズベキスタン:1名,ブルガリア:1名,ルー

マニア:1名,ブラジル:1名,韓国:1名)であり,

10名の教員が指導に当たった。

 以下,主要なプログラムおよびアンケートの結果に

ついて概説する。

⑴ 教科書による日本語学習(10月~4月)

 『現代日本語コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級

Ⅱ』『現代日本語コース中級Ⅰ 聴解ワークシート』『現

代日本語コース中級Ⅱ 聴解ワークシート』(いずれ

も名古屋大学日本語教育研究グループ編,名古屋大学

出版会)を教科書として日本語学習を行った。補助教

材として,「プリテスト(予習のチェック)」「プリテ

スト:補足(連語など)」「復習クイズ」「読解シート」「文

法補足説明」を使用した。また,3課ごとにテスト(筆

記テストおよび話すテスト)を実施した。話すテスト

については,録音に基づき個別指導も行った。

⑵ 入門講義・特殊講義(10月~7月)

 日本に関する基礎知識を身に付けること,研究レ

ポートのための基礎知識および基本的な研究方法を習

得することを狙いとして,10月~1月(前期)および

4月~7月(後期)の期間,それぞれ4つの分野の入

門講義を12回(各90分)行った。前期は,「日本文化

論Ⅰ」「国際関係論Ⅰ」「日本語学Ⅰ」「言語学Ⅰ」で

あり,後期は,「日本文化論Ⅱ」「国際関係論Ⅱ」「日

本語学Ⅱ」「言語学Ⅱ」であった。なお,学生は,前

期は4科目のうち2科目以上を選択,後期は4科目の

うち1科目以上を選択することとした。また,前期は,

短期留学生との合同授業であり,後期は,入門講義が

全学留学生が受講できるものとなった。

 また,特殊講義(必修)として「日本語情報技術」(90

分×15回)および「音声学」(90分×5回)を行った。

⑶  作文(研究レポートのための基礎訓練)(1月~

4月)

 研究レポート作成に必須の基礎知識を体系的に身に

付けることを狙いとして,「書き言葉と話し言葉の基

本的な違い」「文末表現の諸相」「図やグラフの説明の

仕方」「引用の仕方」「要約の仕方」などについて学習

した。

⑷ 発展読解(10月~4月)

 発展読解として,新聞などの生教材の読解,本の読

解(エッセイ・小説など,教員が用意したものの中か

ら,学習者が興味のあるものを選択),特別読解(学

生が自分で読解の素材を用意し,学生主体で行う授業)

などを行った。

⑸ スピーチ(10月~7月)

 自国の紹介をはじめとする様々なトピックについ

て,学生がスピーチを行った(1人,1回,10分程度)。

また,スピーチの録音に基づき個別指導を行った。

⑹ 研究レポート(1月~7月)

 学生各自がテーマを決め,教員の個別指導のもとで

第24期 日本語・日本文化研修コース[上級日本語特別コース]

(2004年10月~2005年9月)

籾 山 洋 介

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日本語・日本文化教育部門

-6 7-

研究レポートを作成した。分量は A 4,15~25枚程

度である。研究成果は『2004~2005年度日本語・日本

文化研修コース 研究レポート集』(421ページ)とし

て発行した。また,中間発表会(5月,発表:12分/

質疑応答:8分),最終発表会(7月,発表:20分/

質疑応答:5分)を実施した。なお,最終発表会は,

学生からの強い要望を受けて,発表時間を例年の約2

倍とした。研究レポートの題目は以下の通りである。

1.アナンド・ワンゲ(インド)「尊敬語について―『お

/ご~になる』の制約を中心に―」

2.カウシク・ディーピカ(インド)「『童話伝統批判』

と現代児童文学の出発」

3.カワレ アミット(インド)「仲間たち」

4.金 暁帆(中国)「『うたかた』をステップとして

よしもとばななを鳥瞰する」

5.三分一エルネスト篤(ブラジル)「『羊』解釈をめ

ぐる冒険:村上春樹『羊をめぐる冒険』における

『羊』」

6.シェル・カロリーナ(ポーランド)「『蜻蛉日記』

における道綱母の感情・態度の変化とその原因」

7.譚 向偉(中国)「日中貿易関係―日中貿易関係

は競合なのか補完なのか―」

8.チャン キム ウェ ティエン(ベトナム)「着物:

移り変わるモードの中で」

9.チャン ティ フオン タオ(ベトナム)「主語

に付く『は』及び『が』の省略の条件」

10.チラベニア アンナ 麻理子(イタリア)「コン

ビニへ行こう!―コンビニの人気の理由―」

11.バイソフ ファルハド(ウズベキスタン)「『こと』

の用法」

12.バルニコバ・ヤナ(ブルガリア)「日本人の海外

旅行―ブルガリアが日本人に好まれる旅行先にな

るための戦略―」

13.ブコヴスカ・アリツィア(ポーランド)「井上通

女『東海紀行』における間テクスト性」

14.ヘルニア・ルキー・アングラエニ(インドネシア)

「歌詞中の英語の使われ方―2004年にリリースされ

た J - POP 分析―」

15.ボイチェンコ レーナ(ウクライナ)「日本語字

幕の文体論:日本語の台詞との比較を通して」

16.ボグダノワ・アンナ(ウクライナ)「漫画におけ

る飲食行為のオノマトペ」

17.ヤン ソル(韓国)「韓国における指示詞の教育

方法の提案」

18.ラリター・クナピンヤー(タイ)「お見合いは生

き残れるか」

19.栗 睿(中国)「共感覚のオノマトペの考察」

20.劉 静(中国)「日本における高齢者の雇用問題」

21.ロショガ・クリスティナ(ルーマニア)「子供と

デジタルデバイス:大人たちは何をするべきか」

⑺ 総合演習(5月~7月)

 日本事情・日本文化に対する理解を深めることと上

級レベルの総合的な日本語力を養成することを狙いと

して,新聞や雑誌の記事やテレビ番組などの生教材を

用いて,総合演習を行った。テーマは「万博について

考える」「ことばで伝える,ことばで遊ぶ」「日本人と

スポーツ:心技体の世界」の3つである。各テーマの

実施期間は1~2週間である。また,今期は,学習成

果を,総合演習報告書『「万博」について考える』(85

ページ)としてまとめ,刊行した。

⑻ その他

 以上に加えて,独話練習,討論会(ディベート),

ことばのクラス(ゲームなどを通して日本語力を高め

るプログラム),定期的な漢字テストなども行った。

さらに,本学の学部生向けに開講されている教養科目

の1つである「留学生と日本:異文化を通した日本理

解」にも参加した。

⑼ アンケート

 2005年7月に,学習者に対して,コースの内容など

に関するかなり詳細なアンケートを行った。以下,「全

体としてコースの内容に満足していますか」という質

問のみについて,アンケート結果を紹介する。

満足度 満足していない 満足している評価 0 1 2 3

回答者 0人 2人 8人 10人

⑽ 今後に向けて

 最後に,必修課題である研究レポート作成というプ

ログラムの今後のあり方,見直すべき点について簡単

に述べる。まず,これまで,将来研究者を目指すといっ

た明確な動機を持ち,熱心に研究レポートに取り組む

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-6 8-

学生にとっては,このプログラムは極めて有益なもの

であった。このような留学生の場合,研究レポート作

成の開始時には日本語力が不十分であっても,意欲的

に研究に取り組み続けることによって,日本語の総合

的な能力を飛躍的に向上させることも珍しくない。中

には,研究レポートで取り組みはじめたテーマを大学

院でも一貫して続け,博士号を取得した者もいる。

 一方で,ほぼ毎年,研究意欲が低く,取り組みが熱

心とは言えない者も若干名いる。このような学生の中

には,そもそも勤勉さに欠けるという性質の持ち主と

思われる者もいたが,将来,研究する,研究者になる

という可能性がまったくないため,研究レポートに取

り組む動機付けが低いという場合もある。

 以上のような状況を踏まえて,今後どのようにすべ

きか,どのような可能性があるかについて少しばかり

考えてみる。まず,学生が取り組む課題を,研究レポー

トに限定しないということが考えられる。例えば,エッ

セイ,紀行文・旅行記,インタビューなどに基づく報

告文,創作(小説,詩,和歌,俳句)などでもよいと

するというものである。ただし,このようなジャンル

に対する指導は,研究レポート以上に容易でない可能

性もある。また,もしエッセイなどが,研究レポート

に比べて,かかる労力が格段に少ないというようなこ

とになれば,同じ日本語・日本文化研修生として学ぶ

人の中に不公平感が生れる可能性がないとは言えない

だろう。今後さらに検討を続けていきたい。

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日本語・日本文化教育部門

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 全学向日本語プログラムは,名古屋大学に在籍する

留学生(大学院生,研究生など),客員研究員,外国

人教師などを対象に,日常生活や大学での研究生活に

必要とされる日本語運用能力の養成を目指して開講さ

れている。

 現在,名古屋大学では1200名を越える留学生を受け

入れており,留学生センターではそれぞれの多様な

ニーズに応えられるよう,今までも日本語プログラム

の改善,拡充に努めてきた。しかし,国際交流のさら

なる進展に伴い,今後日本語教育へのニーズはさらに

多様化するものと予想される。

 そこで留学生センターでは,まず既存の日本語プロ

グラムを見直し,効率を図るとともに,全学留学生を

対象とする全学向日本語講座の拡充計画を立案し,実

施した。

 以下,主な変更点について概説する。

1.2005年度の概要

1 )本学と海外の学術機関との学術交流締結件数が

年々増え,学生交流も活発となり,毎年留学生数も

着実に増加してきている。短期留学プログラムで受

け入れた留学生は,従来1日1コマの「短期留学生

日本語コース(NUPACE)」を受講し,自国の大学

で単位を取得してきた。しかし,この学生の中には

日本語学習にさらに時間をかけ,高いレベルに到達

したいと希望するものもいた。また,これまでは短

期留学生日本語講座(NUPACE)は3レベルしか

なかった。

   また一方,各学部・研究科等に所属する大学院

生・研究生,研究員,外国人教員は,1週間に4~

3コマ開講される「全学向け日本語講座」を受講し

てきた。毎期多くの登録者がいるが,クラス数が十

分でないため,クラス人数が多くなることもしばし

ばあった。

   このように従来は,留学生の受け入れの種類に

よって日本語コースが決まっていたため柔軟に対応

するのが困難な場合があった。今年度から,この点

を改善するため,「短期留学生日本語コース」と「全

学向け日本語講座」をあわせ,1日2コマ日本語を

勉強する「集中コース」4レベルと1日1コマの「標

準コース」8レベル(中上級レベル新設)を提供し,

学習者のレベルや希望に合わせて選択ができるよう

にした。

集中コース 標準コース対象者 日本語研修生(希

望者),短期留学生,各研究科大学院生・研究生

短期留学生,各 研 究 科 大 学 院生・研究生,研究員,外国人教員

1週当たり時間数

20時間(1日2コマ,週5日間)

10時間(1日1コマ,週5日間)

レベル数 4レベル(初級~中級)

8レベル(初級~上級)

2 ) オ ン ラ イ ン 日 本 語 コ ー ス(Online Japanese

Course) 

   日本語の授業に出席することが時間の関係など

で難しい留学生のために,Web 上で教材を配布し,

学習者からの解答に対しフィードバックを返すとい

うものである。受講者は学内 LAN で日本語入力可

能なものに限る。登録者にはパスワードを発行する

ので,詳しくは留学生センターホームページを参照

してほしい。

3)漢字コース(Kanji)

   なかなか一人では勉強が進まない,ついくじけて

しまいそうになる漢字学習を少しでも支援するのが

目的である。初級・中級といったレベルに関わらず,

誰でも受講することができる。漢字100字,300字,

1000字の3レベルを設ける。

4 )入門講義 (Introductory Lectures in Japanese

Studies)

   日本文化論,国際関係論,言語学など専門分野を

やさしく解説する入門講義形式で授業を行い,日本

語運用能力を高め,日本を理解するのを助ける。講

全学向け日本語プログラム2005年度

李   澤 熊

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-7 0-

義はすべて日本語で行っているため,日本語能力試

験2級程度の日本語力を備えていることが条件とな

る。

5 )例年と同様,初級Ⅱ以上を希望する受講者を対象

にクラス分けテストを実施し,日本語能力レベルに

応じたクラス編成をした。なお,今年度からはクラ

ス分けテストの会場を2つ設け,上級レベルを希望

する者については,別途にテストを実施している。

6 )各クラスにおいて,出席および成績の管理を行

い,授業修了時に出席率および成績から合格者を発

表し,合格者は次期進級する際クラス分けテストを

免除している。再履修者についても同様である。た

だし,上級Ⅰ,Ⅱにおける再履修者は定員を超える

申し込みがあった場合,受講を制限することにして

いる。

7 )全学向日本語プログラムは,基本的には単位取得

をする授業ではないが,短期交換留学生に関しては,

別途に単位認定基準を設け,単位認定を行った。

8 )昨年度に引き続き,FD 活動の一環として学生に

よるコース評価をレベル・科目別に行った。

2.期間と内容

1)前期/後期全学向日本語プログラム

 前期開講期間: 2004年4月14日㈭

~7月15日㈮12週間

 後期開講期間: 2004年10月17日㈪

~2005年1月27日㈮12週間

 開講クラスと内容:コース科目 レベル・クラス数 目 標 教 材

標準コース(standard)

初級ⅠSJ1012クラス

日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話しことばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数800語)

A Course in Modern Japanese,

[Revised edition] Vol.1

初級ⅡSJ1022クラス

初級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,さらに基礎日本語の知識を与えるとともに日常生活に必要な話しことばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数1000語)

A Course in Modern Japanese,

[Revised edition] Vol.2

初中級SJ200

初級Ⅰ,Ⅱで学んだ文法事項の運用練習を行うとともに,中級レベルで必要となる漢字力,読解力を含め,日本語運用能力の基礎を固める。(漢字100字,単語数800語)

留学生センター開発教材

中級ⅠSJ2012クラス

初中級修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,4技能全般の運用能力を高める。(漢字150字,単語数1200語)

『現代日本語コース中級 I』

中級ⅡSJ2022クラス

中級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,大学での勉学に必要な日本語能力の基礎を固める。(漢字150字,単語数1200語)

『現代日本語コース中級Ⅱ』

中上級SJ300

中級Ⅰ,Ⅱで学んだ学習項目を実際の場面で使えるよう運用練習を行い,上級レベルの日本語学習の基礎を固める。(漢字200字,単語数1000語)

留学生センター開発教材

上級ⅠSJ3012クラス

中上級修了程度の学生を対象に,大学での研究や勉学に必要な口頭表現,文章表現の能力を養う。(漢字200字,単語数1500語)

留学生センター開発教材

上級ⅡSJ3022クラス

上級 I 修了または日本語能力試験1級程度の日本語能力を有する学生を対象に,大学での研究に必要な口頭表現,文章表現の高度な能力を養う。(漢字200字,単語数1500語)

留学生センター開発教材

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日本語・日本文化教育部門

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2)夏季集中講座

 開講期間:2004年7月25日㈪~8月9日㈫12日間

 開講クラスと内容:

   開講レベルは,初級Ⅰ,初級Ⅱ,初中級,中級Ⅰ(2

クラス),中級Ⅱ(2クラス),中上級,上級Ⅰの7

レベル・9クラスであった。今年度も,木浦大学か

ら15名の参加があった。クラス配置は,初級Ⅱ4名,

中級6名,中級Ⅱ4名,中上級1名であった。

   初級,初中級,中上級の使用教材,授業内容は前

期と同じであった。中級Ⅰ,Ⅱの教材は市販の『文

化中級日本語Ⅰ,Ⅱ』を使用した。上級Ⅰでは市販

の『上級で学ぶ日本語』(研究社)と生教材を使って,

口頭表現,文章表現の能力を養うことを目指した。

集中コース(intensive)

初級ⅠIJ111

日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話しことばの運用能力を育てる。(漢字300字,単語数1800語)

A Course in Modern Japanese,

[Revised edition] Vols.1&2

初級ⅡIJ112

標準コース初級Ⅰ修了程度の学生を対象に,日本語文法の基礎を固め,日常生活だけでなく勉学に必要な基礎的日本語運用能力を養う。(漢字250字,単語数1800語)

A Course in Modern Japanese,

Vos.2 および作成教材

中級ⅠIJ2112クラス

集中コース初級Ⅰまたは標準コース初級Ⅱ修了程度の学生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,4技能全般の運用能力を高める。(漢字250字,単語数2000語)

『現代日本語コース中級 I』および留学生センター作成教材

中級ⅡIJ212

集中コース初級Ⅱまたは標準コース初中級修了程度の学生を対象に,4技能全般の運用能力を高め,研究に必要な日本語能力の基礎を固める。(漢字300字,単語数2400語)

『現代日本語コース中級 I・Ⅱ』

漢字コース(kanji)

漢字ⅠKj100

漢字の基礎から始めたい学生を対象に,日本語能力試験4級の漢字約100字を習得する。

『漢字マスター Vol.1 4級漢字100』

漢字ⅡKj300

漢字100字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試験3級程度の漢字300字を習得する。

『漢字マスター Vol.2 3級漢字300』

漢字ⅢKj1000

漢字300字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試験2級程度の漢字1000字を目標に学習する。

『漢字マスター Vol.3 2級漢字1000』

入門講義(introductory)

次の専門分野を日本語でやさしく解説する講義形式の授業である。日本語運用能力を高めるとともに,日本理解を助ける科目である。標準コース中上級レベル以上の日本語能力が受講資格である。国際関係論Ⅰ・ⅡIR200

グローバリゼーションをキーワードとして,いくつかの認識方法を手がかりに,現代国際環境の変容を見る。

講読文献などは授業中に適宜指示する。

日本文化論Ⅰ・ⅡJC200

日本の社会や文化の特徴をより深く理解するために,韓国を比較の対象として取りあげ,東アジアにおける「近代」(西洋文明との出会い)の意味を考える。

講読文献などは授業中に適宜指示する。

言語学Ⅰ・ⅡGL200

言語学の一分野である意味論(認知意味論を含む)について学ぶ。特に,現代日本語を素材として,類義表現・多義表現などの分析方法を身につけることを目指す。

講読文献などは授業中に適宜指示する。

日本語学Ⅰ・ⅡJL200

主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ,整理・検討することによって,文法の基本的知識を身に付けることを目標とする。

講読文献などは授業中に適宜指示する。

オンライン・日本語コース(online)

中 上 級 読 解 作 文OL300オ ン ラ イ ン 漢 字OLkj

中級レベルを修了した学習者を対象に,400字~600字程度の文章の理解とその文章の要約や関連作文を課し,文章表現能力を養う。初中上級レベルの学習を修了した学習者を対象とした漢字のクラスを開講している。毎週1回オフィースアワーを開設する。

WebCTVista 版日本語教材

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

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3)春季集中講座

 開講期間:2005年2月13日㈪~2月28日㈫12日間

 開講クラスと内容:

   開講レベルは,初級Ⅰ,初級Ⅱ(2クラス),初

中級(2クラス),中級Ⅰ,中級Ⅱ(2クラス),中

上級,上級Ⅰの7レベル・10クラスであった。使用

教材,授業内容は夏季の授業に準ずる。

3.受講生数

1)標準コース前 期 後 期

登録者数 修了者数 登録者数 修了者数初級Ⅰ(2クラス) 32 26 初級Ⅰ(2クラス) 41 33初級Ⅱ(2クラス) 41 35 初級Ⅱ(2クラス) 27 19初中級 23 17 初中級 25 15中級Ⅰ(2クラス) 46 36 中級Ⅰ(2クラス) 44 25中級Ⅱ(2クラス) 49 40 中級Ⅱ(2クラス) 40 27中上級 25 16 中上級 15 12上級Ⅰ(2クラス) 36 25 上級Ⅰ(2クラス) 28 14上級Ⅱ(2クラス) 26 15 上級Ⅱ(2クラス) 29 13

計 278 210 計 249 158

2)集中コース前 期 後 期

登録者数 修了者数 登録者数 修了者数初級Ⅰ 10 10 初級Ⅰ(2クラス) 28 28初級Ⅱ 10 10 初級Ⅱ 21 16中級Ⅰ(2クラス) 17 17 中級Ⅰ 16 14中級Ⅱ 17 15 中級Ⅱ 18 15

計 54 52 計 83 73

3)夏季・春季コース夏 季 春 季

登録者数 修了者数 登録者数 修了者数初級Ⅰ 9 7 初級Ⅰ 19 12初級Ⅱ 25 24 初級Ⅱ(2クラス)* 21 17初中級 21 13 初中級(2クラス) 43 30中級Ⅰ(2クラス) 28 19 中級Ⅰ 22 17中級Ⅱ(2クラス) 21 14 中級Ⅱ(2クラス) 21 16中上級 13 10 中上級 19 12上級Ⅰ 18 11 上級Ⅰ 13 9

計 135 98 計 158 113

[注]* 1クラス(初級Ⅱ a)は,日本語研修生(6ヶ月)が継続して学習が行えるように設定したクラスである。

日本語研究コースで既に学んだ初級Ⅱの内容を復習できるようにシラバスが作られている。教鞭をとった

のは,大学院国際言語文化研究科日本語文化専攻の鷲見幸美助教授の指導を受けた同専攻の院生であった。

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日本語・日本文化教育部門

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4.学生によるコース評価

 昨年度と同様に授業改善と教授能力の向上を図るた

めに,前期と後期に受講者を対象に,コース内容に関

するアンケートを実施した。回答者数は前期と後期,

それぞれ139名(短期交換留学生を含む)と80名である。

アンケートの内容はレベルによって異なるが,各レベ

ルに共通して尋ねた質問のうち3つの項目について学

生の回答を報告する。

質問1:(授業環境)クラスの人数は適当でしたか。

質問2:勉強したことがよく理解できたと思いますか。

前期(短期交換留学生を含む)Q 1 Q 2 合計

そう思う 97 61 58.3%どちらかといえば「はい」 17 47 23.6%どちらとも言えない 6 23 10.7%どちらかといえば「いいえ」 5 3 3%そう思わない 12 0 4.4%回答者合計 137 134 100%

後期(全学向け留学生のみ)Q 1 Q 2 合計

そう思う 55 34 57.8%どちらかといえば「はい」 11 29 26%どちらとも言えない 5 7 7.8%どちらかといえば「いいえ」 4 4 5.2%そう思わない 5 0 3.2%回答者合計 80 74 100%

 以上の結果から分かるように,全般的に良好な評価

結果が得られた。ただ,今年度からは「短期交換留学

生コース」と「全学向け日本語コース」を合わせた形

でコースを運営したためいくつか問題点も出てきた。

例えば,単位取得を目的とする「短期留学生」と単位

取得を目的としない全学向け留学生が同じクラスに

なったため,受講者の出入りが激しく,クラスの雰囲

気を乱すような場合もあった。今後,このようなニー

ズの違う学生たちに対して,どうように対応していけ

ばいいか,さらに工夫が必要であろう。

質問3: 日本語の授業について意見やアドバイスが

あったら書いてください。

 この質問には様々な回答があったが,全般的に寛大

な評価が多かった。しかし,中には以下のような要望

も出ており,今後さらなるプログラムの改善に努める

必要があると感じた。

・ 教科書に古い内容が多いので,新しいのに改訂して

ほしい。

・ 自分の専門の授業と重ならないように時間割を組ん

でほしい(工夫してほしい)。

・日本の歴史や文化などにも触れてほしい。

・ 学生の出入りが激しいので(欠席,遅刻),集中で

きない。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

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 2005年度言語文化〈日本語〉の科目及び受講者数は以下の通りであった。

前期期 対象 内容 時間 担当者 学習者数

1期(1年前期)

文系 文章表現 月3限 秋山 7口頭表現 木3限 西田 7

理系 文章表現 火2限 村上 4口頭表現 木2限 魚住 4

工学(国) 口頭表現 月2限 西田 9文章表現 水2限 魚住 9

工学(私) 文章表現 月2限 村上 8口頭表現 水2限 鷲見 8

2期(1年後期)

文系 文章表現 木3限 村上 7口頭表現 金2限 秋山 7

理系 文章表現 火2限 村上 4口頭表現 木2限 魚住 4

工学(国) 口頭表現 月2限 西田 10文章表現 水1限 魚住 9

工学(私) 文章表現 月2限 秋山 8口頭表現 水1限 鷲見 8

3期(2年前期) 文系 文章表現 火1限 鹿島 124期(2年後期) 文系 文章表現 木1限 浮葉 12

クラス

 文系:文学部・教育学部・法学部・経済学部・情報文化学部社会システム情報学科

 理系:医学部・理学部・農学部・情報文化学部自然情報学科

 工学(国):工学部(国費留学生・政府派遣留学生)

 工学(私):工学部(私費留学生・日韓理工系学部生)

授業報告

1年前期文系クラス:文章表現(担当:秋山 豊)

授業のねらい:読む力,書く力の練習。脱国家的な

地球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ

る。テーマについての理解を深める過程で読む練習,

書く練習をする。最終目標は,共通テーマに精通す

ることである。

授業の内容と活動:

◎共通テーマ:格差と成果主義

テーマの理解言語技能の重点的練習

巨 視 微 視 産 出 受 容123

戦後日本社会の富裕層・戦前・戦後:高度成長時代・バブル崩壊後

読む 精読 書く:要旨を短文で

読む

学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉

村 上 京 子

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日本語・日本文化教育部門

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4567

現代日本社会の格差・「一億総中流」社会の終焉・雇用形態の変化・「機会不平等社会」と「階層社会」

読む 精読 書く:要旨・意見を短文で

読む

89101112

成果主義・多国籍企業(中国企業)の例・成果主義の功罪:事例1・成果主義の功罪:事例2・揺らぐ成果主義

聞く/読む 速読:大意/選択/マッチング

書く/話す:賛否両論を文章で

聞く/読む

131415

(まとめ:レポート作成をめざして) - - 書く/話す:レポート構成の検討及び校正

グルーピングなどを考え,発表した。もう1つは,

それぞれ自分の視聴したい映画についてインター

ネットなどで調べ,クラスメートに発表しておもし

ろさを伝えるという課題を与え,授業日程の最後に

クラスメートにもっとも支持された映画を視聴し

た。

理系クラス:文章表現(担当:村上京子)

授業のねらい:大学生活で必要な基本的な日本語運用

能力のうち特に文章表現能力を磨くことを目指す。

文章理解および論理的な文章を書くことを学習す

る。

授業の内容と活動:

・依頼のメールの書き方:本の貸し出し,アポイント

をとる,提出期限の延期など

・資料を読み,意見を言う,要点をまとめて書く

・説明の文章の書き方:コミュニケーション・ギャッ

プのあるタスクでお互いの文章表現について検討

し,改善を話し合う

・レポートの書き方:論文で使われる表現と話し言葉

の違い,定義の仕方,引用の仕方,要約文の書き方,

レポートの構成など

・レポートの作成と発表

・15回の授業を通して,書き言葉表現に慣れるために

「クリティカル進化論」という話し言葉で書かれた

文章を書き言葉に直すことと,できるだけ多くの文

章を読むことをめざして,授業以外に小説等を読ん

で日誌につける課題を与えた。

評価:授業への参加度,タスクシート,レポート,試験

工夫・反省:できるだけ学習者主導で学習活動を構成

し,学習者自身が自分の問題に気づき,今後レポー

ト等を作成する際に自らモニターできる能力をつけ

評価:授業への参加度,タスクシート,レポート

教室活動での留意点:

①  一つのテーマについて理解を深めることのみを目

的とする。

②  理解のための相互交渉への積極的な参加をお互い

に心掛ける。

③  授業に積極的に参加し,随時の課題をこなしてい

けば,レポートの作成につながるように工夫する。

文系クラス:口頭表現(担当:西田瑞生)

授業のねらい:大学という環境において日本語の使用

能力を高める,特に,大学で日本語ネイティブと同

じクラスで講義を聞くための基礎的な力をつけるた

めに,ノートの取り方と内容を短くまとめて理解す

る方法を学ぶ。また,日常生活にいてもわかりやす

い説明ができるような能力を養う。

授業内容:

・講義のテープや社会問題などの解説のテープを聞い

て,ノートを構造的にとる練習をした。

・ノートをとるためのポイントとして「キーワードを

聞き取る」「記号を使う」「短く書く」「箇条書き」「ナ

ンバリング」「ラベリング」などを扱った。

・わかりやすいノートの取り方と話し方の練習(グルー

ピングや順序だった説明など)の一環として,料理

店のメニューや交通案内などをグループに分かれて

考え,作成した。

・また,口頭表現と文章表現の違いに注目できるよう,

目上の人にお願いをするさいに,口頭でお願いする

文章と e-mail でお願いする文章を作り,比較した。

・まとめとして2つの発表を行った。1つは,店で会

計の時にもらうレシートがどのような内容を含んで

いるのかについて,いくつかのグループに分かれ,

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-7 6-

るように心がけた。クラス人数が少なかったため,

ペアの組み合わせや活動が固定しがちであったた

め,クイズやゲーム,コミュニケーション・ギャッ

プのあるタスクを工夫した。1週間の教室外の活動

を日誌につけて提出させたが,4名のうち2名は数

冊の本を読みそのあらすじを書いてきたが,2名は

大学での課題が精一杯でその課題図書について書く

のがやっとであった。多読を目的にしていたが,学

習者の個人差を考えると,全員に課すことは困難で

あることがわかった。

理系クラス:口頭表現(担当:魚住友子)

授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の

うち,特に口頭能力を強化する。高度な聴解能力お

よび情報をまとめて伝達する能力,コミュニケー

ション能力の向上をめ ざす。ポイントを整理して

論理的に考えを述べる能力を養う。

授業内容:

 視聴覚材料を用いて情報を取り伝達する練習や,

ノートテーキング,ディスカッション,ポイントを整

理して話す練習,口頭発表などを行う。

⑴ ビデオの視聴とディスカッション

   ニュース,教育番組,ドラマなどのビデオを見て,

内容を理解し,情報を取る練習,聞き取った内容を

まとめて伝える練習をする。また,ビデオの内容や

関連する内容について,自分の考えをまとめディス

カッションを行う。意見の述べ方・表現などについ

ても学ぶ。

⑵ ノートテーキング

   講義を聞くための練習として,ノートテーキング

の仕方を学ぶ。名詞止めの練習も行う。

⑶ ポイントを整理して話す練習

   情報,意見を論理的で分かりやすく伝えるために,

列挙,原因理由,比較対照などの文について,表現・

構成を学び,ポイントを整理した話し方を練習する。

発表し,相互批評を行う。

⑷ 口頭発表

 ・ 毎回1人が自分でテーマを決めて発表。ポイント

を整理して話すことを課題とし,相互批評を行う。

発表者は,発表原稿を提出する。フィードバック

後,発表内容をテープに吹き込み直し提出する。

他の学生は,メモをもとに発表内容の簡単な要約

とそれについての意見を提出する。

 ・レジュメの書き方も学ぶ。

⑸ その他・ ・会話練習

   大学生活で直面するさまざまな問題への対処の表

現について意見交換し,練習する。

評価:期末試験(筆記,会話,及び口頭発表),小テスト,

発表・宿題・課題などの平常点,授業への参加態度,

出席状況

工夫・反省:ポイントを整理して話すということが,

なかなか身に付かない学生もいたが,他の人の発表

を聞いたり,相互批評をすることで,大半の学生は

力をつけていったと思う。しかし,各自が選んだ毎

回の口頭発表の内容が,あまり深みのあるものに

なっていなかったのが少し残念である。

工学系国費クラス:文章表現(担当:魚住友子)

授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の

うち,特に文章表現能力を強化する。読解能力やレ

ポートを書くために必要な論理的な文章を書くため

の基礎力を養成する。日本社会・日本文化・科学技

術に関する問題を扱った資料等を読んだり,それに

対する自分の考えをまとめる練習を通して,他の授

業などで役に立つ文章表現能力の向上をはかる。

授業内容:

 資料の読解とともに,要約,意見,ポイントを整理

して書く作文練習等を中心に行う。

⑴ 資料の読解

   資料(新聞,日本語教材 etc.)を全員で読んで

内容を理解し(ワークシート使用),意見交換を行う。

その後,要約および意見を書く。

⑵ 論理的文章を書くための基礎技術

 ・文体,原稿用紙の書き方,句読点の打ち方の練習

 ・要約練習

 ・ポイントを整理して書く練習

⑶ 新聞記事の発表(多読・レポートへの試みとして)

   インターネットで各自興味のある新聞記事を探

し,ネット上の読解支援システムを利用して読み,

要約と意見を発表する。また,レジュメの書き方も

学ぶ。

⑷ その他

   講義理解,大学生活のための基礎知識として,以

下も行う。

 ・板書文字の読み方

 ・インターネットの読解支援システムの紹介

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日本語・日本文化教育部門

-7 7-

評価:レポート(授業で扱ったテーマに関連して各自

好きな記事1本を読み,要約・意見を書く)とその

発表(レポート内容の発表,レジュメ提出),小テ

スト,宿題・課題などの平常点,授業への参加態度,

出席状況

工夫・反省:授業や発表した作文などの相互批評を通

じて,ポイントを整理することに少しずつ慣れたの

ではないかと思う。非漢字圏の学生にとっては生の

新聞記事を自力で読むことは大変なため,今年度も

前年度同様,インターネットの読解支援システムの

利用を奨励し,負担軽減を図った。作文などの間違

い訂正については,教師が指摘し学生が自己訂正す

る方式をとるものは一部に限り,前年度より学生の

負担軽減を図った。しかし,力の弱い学生の中には,

なお,負担感を感じる者もいたようである。

工学系国費クラス:口頭表現(担当:西田瑞生)

授業のねらい:大学という環境において日本語の使用

能力を高める,特に,大学で日本語ネイティブと同

じクラスで講義を聞くための基礎的な力をつけるた

めに,ノートの取り方と内容を短くまとめて理解す

る方法を学ぶ。

授業内容:

・講義のテープや社会問題などの解説のテープを聞い

て,ノートを構造的にとる練習をした。

・ノートをとるためのポイントとして「キーワードを

聞き取る」「記号を使う」「短く書く」「箇条書き」「ナ

ンバリング」「ラベリング」などを扱った。

・わかりやすいノートの取り方と話し方の練習(グ

ルーピングや順序だった説明など)の一環として,

料理店のメニューや交通案内などをグループに分か

れて考え,作成した。

・また,口頭表現と文章表現の違いに注目できるよう,

目上の人にお願いをするさいに,口頭でお願いする

文章と e-mail でお願いする文章を作り,比較した。

・各自自由な題でスピーチを行ったが,その原稿の

作成は,T.A. にチェックしてもらうこととし,そ

のお願いを授業で学んだ e-mail の書き方に沿って,

各自 e-mail を作成した。スピーチ原稿だけでなく

e-mail の書き方に関しても T.A. から指導があっ

た。

・まとめとして2つの発表を行った。1つは,店で会

計の時にもらうレシートがどのような内容を含んで

いるのかについて,いくつかのグループに分かれ,

グルーピングなどを考え,発表した。もう1つは,

それぞれ自分の視聴したい映画についてインター

ネットなどで調べ,クラスメートに発表しておもし

ろさを伝えるという課題を与え,授業日程の最後に

クラスメートにもっとも支持された映画を視聴し

た。

工学系私費・日韓クラス:文章表現(担当:村上京子)

授業のねらい:大学生活で必要な基本的な日本語運用

能力のうち特に文章表現能力を磨くことを目指す。

文章理解および論理的な文章を書くことを学習す

る。

授業の内容と活動:

・依頼のメールの書き方:本の貸し出し,アポイント

をとる,提出期限の延期など

・資料を読み,意見を言う,要点をまとめて書く

・説明の文章の書き方:コミュニケーション・ギャッ

プのあるタスクでお互いの文章表現について検討

し,改善を話し合う

・レポートの書き方:論文で使われる表現と話し言葉

の違い,定義の仕方,引用の仕方,要約文の書き方,

レポートの構成など

・レポートの作成と発表

・15回の授業を通して,書き言葉表現に慣れるために

「クリティカル進化論」という話し言葉で書かれた

文章を書き言葉に直す課題を与えた。

評価:授業への参加度,タスクシート,レポート,試

工夫・反省:できるだけ学習者主導で学習活動を構成

し,学習者自身が自分の問題に気づき,今後レポー

ト等を作成する際に自らモニターできる能力をつけ

るように心がけた。作文に関してはピア・レスポン

ス方式でおたがいに書いたものを読みあって検討・

改善を行ったり,読解ではコミュニケーション・

ギャップをつくり,質問しあい,要点をまとめたり

する工夫をした。

工学系私費・日韓クラス:口頭表現(担当:鷲見幸美)

授業のねらい:口頭運用能力,及び,聞き取り能力の

向上を目指す。

授業内容:

・「依頼する・引き受ける・断る」というテーマでロー

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-7 8-

ルプレイ:談話構成,相手や場面によるスタイルの

違いを焦点化させた。

・ゲストに自分の大学生活について話してもらった。

その体験談を基に,スピーカーへの質問を発展させ

る形で,自分たちの不安・問題について話し合った。

・テレビ教養番組の録画を視聴し,ノートをとる練習,

聞いた内容をまとめる練習をした。

・インタビュー活動:準備としては,多くの日本人に

質問してみたいことを挙げ,インタビューができそ

うなテーマを考えた。2つのグループに分かれ,イ

ンタビューテーマを決定した。インタビューに備え,

テーマに関する自分の知識を増やすための予備調査

をし,グループで質問項目を作って,ロールプレイ

により,インタビューの練習を行った。

 発表の方法や質疑応答の方法も学習した。複数の日

本人にインタビューをした後,録音したものをグ

ループで互いに聞き合い,評価し合った。インタ

ビュー結果のまとめと考察を発表し,質疑応答を行

い,自己評価した。

・ブックレブユー:TA による発表モデルを聞き,ブッ

クレビューの方法を学習する。各自が自分の選んだ

本を紹介し,質疑応答を行う。互いに発表を評価し

合う。発表をもとに,内容について感じたことを話

し合う。

評価:出席,授業内外の課題への取り組み,口頭発表

によって評価した。

工夫・反省:

・限られた授業時間を補うため,授業外の意識的日本

語使用の量を増やすような活動を取り入れた。

 モティベーションを高めること,自己修正力を養う

ことを目的とし,自らの日本語使用を客観視し,問

題意識を持たせるような活動を取り入れた。

 モティベーションを高めるため,学生の意思・個性

を尊重するように努めた。教師主導になることを極

力避け,発表モデルの提示やグループ活動の際に必

要となる軌道修正等には,ティーチングアシスタン

トを活用した。

・グループ内に欠席者がいることによって,授業時間

内には作業が進まず,授業時間外にグループで集ま

らざるを得ないということがあった。また,負担が

特定の個人に偏ってしまうということが見受けられ

た。

・インタビューの録音,グループ発表・個人発表の録

画を生かすことができなかった。

・当初ブックレビューの対象を「日本語で書かれた本」

としていたが,学生からの要望で母語で書かれた本

や母国で上映された映画を認めることとした。「目

標言語で読む量を増やす」という目的が達成できず,

否定的に捉えていたが,「内容重視の真のコミュニ

ケーションとなった」という意味ではよかった。作

品の選択理由や感想に,学生の内面を垣間みること

ができ,日頃いかに「形式」にとらわれた授業をし

ているかに気づかされた。学生が「自己表現」でき

る授業をしたいと改めて感じている。

1年後期文系クラス:文章表現(担当:秋山 豊)

授業のねらい:読む力,書く力の練習。脱国家的な地

球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ

る。テーマについての理解を深める過程で読む力,

書く力練習をする。最終目標は,共通テーマに精通

することである。

授業の内容と活動:

◎共通テーマ:グローバリゼーション

テーマの理解言語技能の重点的養成

巨 視 微 視  産 出 受 容123

ジハードとマックワールド・情報化の進展と社会変動・市場原理の拡大・市民の形骸化

読む 精読 書く:要旨を短文で

読む

45

グローバル・キャピタル・多国籍企業の市場戦略・多国籍企業と国家

聞く/読む 大意/選択 書く:要旨・意見を短文で

聞く

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日本語・日本文化教育部門

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評価:授業への参加度,タスクシート,レポート

教室活動での留意点:

①  一つのテーマについて理解を深めることのみを目

的とする。

②  理解のための相互交渉への積極的な参加をお互い

に心掛ける。

③  授業に積極的に参加し,随時の課題をこなしてい

けば,レポートの作成につながるように工夫する。

文系クラス:口頭表現(担当:村上京子)

授業のねらい:日本語運用能力のうち特に口頭表現能

力を磨くことを目指す。口頭発表,ディスカッショ

ン,ディベートなどを通して,論理的に意見を述べ

ることを学習する。

授業の内容と活動:

・ロールプレイによる口頭表現練習:現実に遭遇する

であろう場面を設定し,ロールプレイを行い,録音・

録画資料をつかって表現を検討しあった。

・事実と意見の言い方・反論の仕方

・グループディスカッション

・ディベート:録画した資料と各自の評価表に基づき,

検討会を数回行った。

・独話・提言:意見をまとめ,発表した。お互いの発

表に仕方を検討した。

・ポートフォリオ作成・提出

評価:授業への参加度,タスクシート,ポートフォリ

オ,試験

工夫・反省:学習者が日常使っている口頭表現を意識

化し,より的確に論理的に表現していくために必要

なことを取り上げ,ディスカッションを通して自ら

改善していくことを目指した。すでにかなり自信を

もっている学習者もいたが,録画し見直すことで,

気づきも多かったようで,非常に積極的に授業に参

加していた。授業以外の時間帯も使って指導を希望

した学習者にはフィードバックなどを行った。

 

理系クラス:文章表現(担当:村上京子)

授業のねらい:前期に引き続き,文章理解および論理

的な文章を書くことを学習する。また,語彙・表現

を広げ,的確に自分の考えや気持ちを伝えられる工

夫をすることを目指した。

授業の内容と活動:

・身の回りの語彙の収集:身体部位が含まれる語彙や

オノマトペなど,日頃よく耳にするがわからない語

彙が多いというので,ゲームやクイズ形式で語彙の

増強を図った。

・資料講読:資料を読み,討論。要点をまとめて意見

を書く。

・レポートの作成と発表:ピア・レスポンス方式で授

業を行い,自分のレポートを改善し,提出。

評価:授業への参加度,タスクシート,レポート,試

工夫・反省:できるだけ学習者主導で学習活動を構成

し,学習者自身が自分の問題に気づき,今後レポー

ト等を作成する際に自らモニターできる能力をつけ

るように心がけた。クラス人数が少なかったため,

ペアの組み合わせや活動が固定しがちであったた

め,クイズやゲーム,コミュニケーション・ギャッ

プのあるタスクを工夫した。

理系クラス:口頭表現(担当:魚住友子)

授業のねらい:日本語(口頭表現)1での学習を踏ま

え,大学の勉学に必要な日本語運用能力のうち,さ

らに,口頭表現能力,聴解能力の強化を目指す。特

67

グローバリゼーションへの懸念・「画一化」への不安・「勝ち組」「負け組」論・painstaking と risktaking

読む 速読:大意/選択/マッチング

書く/話す:賛否両論を文章で

読む

891011

各国事情・負の相互依存・「社会の絆」の脆弱性・問われる欲望の時代

読む 速読:大意/選択/マッチング

話す/書く:自国事情を報告

読む/聞く

12131415

(まとめ:レポート作成をめざして) - - 話す:レポート構成などを検討

聞く

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-8 0-

に,情報をまとめて 伝達する能力,ディスカッショ

ン能力の向上を目指す。ビデオなどの視聴を通じて

日本社会への理解を広げるとともに,スピーチ,討

論の方法などについても学ぶ。

授業内容:

 前期に引き続き,ビデオの視聴とディスカッション,

ポイントを整理した話し方と口頭発表を中心に授業を

行う。また,見たい映画について話し合い,最後に映

画の視聴を行う。

⑴ ビデオの視聴とディスカッション

   前期よりは長めの科学・ドキュメンタリー・教育

番組等のビデオを見て,情報を正確に聞き取る練習,

情報をまとめて伝える練習を行う。また,ビデオの

内容,それに関連する内容について,自分の考えを

まとめ話し合う。

⑵ ポイントを整理して話す練習

   前期に引き続き,情報,意見を論理的で分かりや

すく伝えるために,方法説明の仕方,提言・提案の

仕方などについて,表現・構成を学び,ポイントを

整理した話し方を練習する。発表し,相互批評を行

う。その他,論点を整理して行う討論,ディベート

などの仕方も学び,練習する。

⑶ 口頭発表

   毎回1人がディスカッションにつながるテーマを

選び,調べて発表。ポイントを整理して話すことを

課題とする。レジュメも提出する。その後,質疑応

答・討論,相互批評を行う。発表者は,フィードバッ

ク後,発表原稿を訂正し提出する。他の学生は,発

表内容の簡単な要約とそれについての意見を提出す

る。

評価:期末試験(口頭発表:授業に関連のあるテーマ

で,自国の問題点を述べ,解決策を提案する),小

テスト,発表・宿題・課題などの平常点,授業への

参加態度,出席状況

工夫・反省:前期に比べ,学生の話すスピードや明確

さが大きく向上したと思う。討論やディベートなど

でその力が発揮されていた。前期になかなか身に付

かなかった学生にも向上の様子がうかがえた。

工学系国費クラス:文章表現(担当:魚住友子)

授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の

うち,特に文章表現能力を強化する。文章表現1で

の学習を踏まえて,さらに高度な読解能力やレポー

トなどを書くために必要な論理的な文章を書くため

の基礎力を養成する。多くの資料を自分の力で読め

ることを目指し,それに対する自分の考えをまとめ

る練習を通して,他の授業などで役に立つ文章表現

能力の向上をはかる。また,レポートが書けるよう

になるために,レポート作成の基礎的な書き方を学

ぶ。

授業内容:

 主に,新聞読解および発表,レポートの書き方およ

びそれに関連する技術について学び,レポートの作成

を行う。

⑴ 新聞読解および発表(インターネット利用)

   各自,インターネットで興味のある新聞記事を探

し,ネット上の読解支援システムを利用して読み,

分かりやすくポイントを整理して内容と意見を発表

する。レジュメも提出する。その後,質疑応答・討

論,相互批評を行う。発表者は関連情報も調べ,討

論に備える。また,フィードバック後,発表内容を

レポート形式にして提出する。その他の学生も同じ

記事を読み,発表後,記事または発表内容を要約引

用し意見を書いて提出する。

⑵ レポートの書き方および関連技術

 ・図表の説明の仕方

    説明の仕方・表現について学び,図表の説明文

を書いて,発表する。

 ・引用の仕方・参考文献の書き方

 ・レポートの書き方

    レポートの書き方の基礎的なポイントを学び

(構成,資料の探し方,アウトラインの作成,見

出しのつけ方,表現・見本読み他),各自好きな

テーマでレポートを作成し発表する。テーマ・目

的,アウトラインも発表し,相互批評を行う。

評価:レポート(テーマ・材料は各自好きなものを選

択)とその発表(レポート内容の発表,レジュメ提

出),小テスト,宿題・課題などの平常点,授業へ

の参加態度,出席状況

工夫・反省:各種の発表や相互批評を通じて,互いに

学び合う点が多々あったのではないかと思う。学生

により積極性に差が見られたが,積極的に取り組ん

でいた学生には,向上の跡がうかがえた。

工学系国費クラス:口頭表現(担当:西田瑞生)

授業のねらい:前期にひきつづき,他の人に対して話

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日本語・日本文化教育部門

-8 1-

す能力を高める。1つは,自分の専門について,話

し合ったり,説明したりする能力を高めることであ

り,もう1つは,日常生活などおける語用論的にわ

かりやすい話し方を学ぶことである。

授業内容:

・ 「問い合わせをする」「道の案内をする」「宣伝をする」

などの様々な場面に関して,適切ではない会話を聞

き,どこが適切でないかを話し合い,よりよい会話

(話し方)を考えるという練習をした。

・ また,伝えたい内容を簡潔に話す練習として,前期

と同じ内容について,どのように短くすることがで

きるかについて考えた。

・ 専門的な内容に関しては,数回の個人面接を行った

後,ハンドアウトを作り,発表する練習をした。

・ 専門的な内容の発表に関しても,わかりにくかった

り魅力的でなかったりする発表を聞き,その理由を

話し合い,よりよい発表を心がける練習をした。

・ 発表のとき気をつけるポイントとして,前期にもと

りあげたナンバリングとラベリングや,難しい単語

の説明の仕方,身近な話題との関係などを挙げた。

工学系私費・日韓クラス:文章表現(担当:秋山 豊)

授業のねらい:読む力,書く力の練習。脱国家的な地

球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ

る。テーマについての理解を深める過程で読む練習,

書く練習をする。最終目標は,共通テーマに精通す

ることである。

評価:授業への参加度,タスクシート,レポート

教室活動での留意点:

①  一つのテーマについて理解を深めることのみを目

的とする。

②  理解のための相互交渉への積極的な参加をお互い

に心掛ける。

③  授業に積極的に参加し,随時の課題をこなしてい

けば,レポートの作成につながるように工夫する。

授業の内容と活動:

◎共通テーマ:格差と成果主義

テーマの理解言語技能の重点的練習

巨 視 微 視 産 出 受 容123

戦後日本社会の富裕層・戦前・戦後:高度成長時代・バブル崩壊後

読む 精読 書く:要旨を短文で

読む

4567

現代日本社会の格差・「一億総中流」社会の終焉・雇用形態の変化・「機会不平等社会」と「階層社会」

読む 精読 書く:要旨・意見を短文で

読む

89101112

成果主義・多国籍企業(中国企業)の例・成果主義の功罪:事例1・成果主義の功罪:事例2・揺らぐ成果主義

聞く/読む 速読:大意/選択/マッチング

書く/話す:賛否両論を文章で

聞く/読む

131415

(まとめ:レポート作成をめざして)                

- - 書く/話す:レポート構成の検討及び校正

工学系私費・日韓クラス:口頭表現(担当:鷲見幸美)

授業のねらい:アカデミックな場面で必要とされる高

度な口頭運用能力の向上を目指す。

授業内容:

・ ディスカッションを行った。(録画):司会・書記・

討論者の役割を明確にした上で,それぞれの役割を

交替で務める。毎週,次回のテーマを話し合いで選

び出し,それぞれがディスカッションのための準備

をしてくる。次の週に,録画ビデオの一部を見なが

ら,うまくいった点・いかなかった点・その原因・

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-8 2-

授業内容:

 以下を授業の柱とした。

⑴  慣用句,特定の言い回しに関するクイズを毎回5

⑵  日常的なメールの作成:指導教官に相談の予約を

する,友達の伝言を伝える等毎回5分程度で書く課

⑶  現代日本社会の問題点について,新聞,雑誌など

の資料を読むことで内容把握をする。トピックは「友

食」「孤独力」「怒ること」「自給率」「随筆」

⑷  書くための技術的な方法を確認:句読点,引用,

書き言葉,論文で使うことば,要約など

 共通のテーマとして,「食糧問題」をとりあげ,記

事を読み,それぞれの意見をまとめ,最終レポートと

した。

参考資料:新聞,雑誌などの記事

浜田麻里等(1998)『論文ワークブック』くろしお

出版

小林康夫,船曳建夫編(1994)『知の技法』東大出

河野桐子他(2003)『語彙力ぐんぐん1日10分』スリー

エーネットワーク

評価:毎回の授業内での書く作業の課題,参加度によ

る。

反省点:学生が興味をもてる共通の話題で全員が書い

て,意見を述べるようにもっていこうとした。しか

しながら,レベル差が大きくそれほど多くの資料が

読めずに終わった。基本的な書く技術については練

習できたが,それ以上の発展が望めなかった。学生

の一部には遅刻・欠席が多く,2年次を2時限目に

するほうが効率的ではないかと思う。

2年後期文系クラス:文章表現(担当:浮葉 正親)

授業のねらい:2年前期で学んだ日本語(文章表現)

をふまえ,より高度な読解力・文章表現力の向上を

めざす。さまざまなテーマを扱った文献の正確な読

み取りと,それを通じて日本社会の諸相に関する理

解を深める。レポート及び論文の書き方をきめ細か

く学習する。

授業内容:

 下記の4つのテーマに即した読解用教材とそれと関

連するビデオ教材を使い,学習者の関心を喚起した後,

改善法を話し合う。

・ディベート(録画)を行った。

評価:出席,授業内外の課題への取り組み,ディスカッ

ション,ディベートによって評価した。

工夫・反省:

・学生の発話量を増やすこと,自己修正力を養うこと

を目的とし,ディスカッションの実践と振り返りを

繰り返した。しかし,教師が時間を気にするあまり,

教師側から問題点を提示することが多くなってしま

い,目的を果たすことができなかった。また,ディ

ベートは,一年の総括とも言える活動であったにも

かかわらず,フィードバックが非常に表面的なもの

となってしまった。フィードバックのあり方は,大

きな課題である。

・学生が興味を持って,積極的にディスカッションに

参加することができるように,学生にテーマを選ん

でもらったが,ディスカッションには不向きなテー

マもあった。

・同じ活動を繰り返すことにより,上達を実感しても

らうことができると考えていたが,長く続けすぎた

ために,学生が活動に飽きてきてしまい,逆効果だっ

たように思う。司会と書記の分担を最初に決めてし

まったために,途中で止めることができなくなって

しまったが,思い切って途中で軌道修正をすべきで

あった。

・ディスカッションやディベートというものは,母語

であっても好き嫌い,得手不得手のあるものである。

また,受講者の中には文法力・語彙力の不足が原因

で,他者に意味を伝えることに困難を感じている者

もいた。学習者のバラエティを考慮して,教室活動

にもバラエティを持たせるべきであった。

2年前期文系クラス:文章表現(担当:鹿島 央)

授業のねらい:昨年同期の授業と同じく,大学の勉学

に必要な日本語運用能力のうち,特に文章表現能力

を強化することが目的である。日本社会・日本文化

に関する問題を扱った文献等を読んだり,それに対

する自分の考えをまとめる練習を通して,高度な読

解能力やレポートなどを書く力を養成する。最終的

には学術的な文章表現の技術と能力の向上をはか

る。

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日本語・日本文化教育部門

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参考文献を提示し,以下の4つのテーマから1つを選

んでレポートを作成するように指示した。各テーマの

読解文献と参考文献は以下の通りである。

⑴ オタク文化について

 (読) 「『オタク文化』に興味がありますか?」朝日

新聞2005年10月8日

 (参)岡田斗司夫『オタク学入門』太田出版

⑵ 韓流ブームについて

 (読)小倉紀蔵『韓国ドラマ,愛の方程式』

 (参) 毛利嘉孝編『日式韓流―『冬のソナタ』と日

韓大衆文化の現在』せりか書房

⑶ 占いやスピリチュアル・ブームについて

 (読) 「今どき信じる者はどのように救われているの

か」『週刊 SPA』2005年2月1日号

 (参)鈴木敦史『占いの力』洋泉社

⑷ フリーターやニートの増加について

 (読) 二神能基「ニートの若者と定年退職組で『も

うひとつの日本』が創れる」『日本の論点

2006』文芸春秋社

 (参)工藤啓『ニート支援マニュアル』PHP

 その後,戸田山和久『論文の教室』PHP から,論

文とは何か,アウトラインの作成法,パラグラフ・ラ

イティングという考え方の3箇所を取りあげ,練習問

題を解きながら論文作成に必要な技法を学んだ。

工夫・反省:前半の4つのテーマに関する学習に思い

のほか時間を取られ,論文作成法に十分な時間を割

けなかった。アウトラインや序文については何回か

添削することができ,学習者の理解度や習熟度を知

ることができたが,それ以外の部分についてはあま

り指導できなかったのが反省点である。各テーマの

読解にあてる時間を少なくするか,あるいは一つの

共通テーマを設定するかして,次年度には論文作成

に重点をおきたい。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

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1.プログラムの概要

 今年度から短期交換留学生のみを対象として開設さ

れていた短期日本語コースが廃止され,全学向日本語

講座に統合された。この改革に伴い,これまでは週5

コマのコースしかなかったものが,週10コマの集中

コースも受講できることとなり,短期留学生のコース

選択の幅が大きく広がることとなった。

⑴ 開講期間

 春学期:2005年4月14日㈭~2005年7月15日㈮

 秋学期:2005年10月17日㈪~2006年1月20日㈮

⑵ 開講クラス

 集中(IJ)コースは,IJ111,IJ112,IJ211,IJ212

の4レベル,標準(SJ)コースは SJ101,SJ102,

SJ200,SJ201,SJ202,SJ300,SJ301,SJ302の8レベ

ルで開講した。なお,漢字アラカルトなど単位認定を

行わない科目も開講されたが,この報告では集中コー

ス,標準コースについて報告する。

⑶ 開講時間数

 集中コース:12週間,週5コマ,合計60コマ(90時間)

 標準コース: 12週間,週10コマ,合計120コマ(180時間)

⑷ 受講者数

 表1は集中コース,表2は標準コースの受講者数お

よび成績である。

 

表1 平成17年度集中コース受講者数および最終成績 (単位:人)

レ ベ ル IJ111 IJ112 IJ211 IJ212 合計学 期 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋

中 国 1 6 2 2 3 8韓 国 3 2 1 3 5 4タ イ 1 1ウ ズ ベ キ ス タ ン 1 1ポ ー ラ ン ド 1 1 1 1フ ラ ン ス 1 1 1 1 2イ ギ リ ス 2 1 1 1 3ド イ ツ 1 1ベ ル ギ ー 1 1 1 1ア メ リ カ 4 1 1 1 1 2 4 6オ ー ス ト ラ リ ア 1 1合   計 2 15 4 6 7 2 4 5 17 28成 績 A * 4 1 2 7成 績 A 1 9 4 1 5 1 1 11 11成 績 B 2 1 1 1 3 2 4 6成 績 C 2 1 1 1 3不 合 格 0 0聴 講 1 1 1 1

短期留学生日本語プログラム 平成17(2005)年度

尾 崎 明 人

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日本語・日本文化教育部門

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2.プログラムの内容

⑴ プレースメントテスト

 短期留学生のみを対象に筆記テストと面接によりク

ラス分けを行った。上級レベル受講者には全学対象の

プレースメントテストを受けるように指導した。コー

ス開始後もクラス変更の希望に対しては本人と相談の

上で納得の得られるように対応した。

⑵ コースの概要

 初級,中級段階では以下の教科書を主教材として使

用した。

・ A COURSE IN MODERN JAPANESE , Vol.1,  Revised edition,名古屋大学出版会

・ A COURSE IN MODERN JAPANESE, VOL.2,  Revised edition,名古屋大学出版会

・『現代日本語コース中級 I』名古屋大学出版会

・『現代日本語コース中級 I』名古屋大学出版会

 また,センターで開発した初中級のための会話,読

解,漢字などの教材を使用した。上級では新聞,雑誌,

テレビなど,生の素材を利用した教材を作成,使用し

た。

 授業内容は,初級段階では①音声,②文字(平仮名,

片仮名,漢字),③文法練習,④ディクテーション,

⑤会話,⑥コミュニケーション活動,⑦聴解,⑧読解,

⑨プロジェクトワークなどの授業を行った。中上級で

は,言語技能を中心に①会話・用法練習,②談話・文

法練習,③聞く練習,④読む練習,⑤作文,⑥スピー

チなどの授業を行った。

 コース内容の詳細は,全学向日本語講座の報告を参

照されたい。

⑶ その他の活動

 春学期終了時と12月にパーティーを行った。日本語

授業の一環として「パーティーの計画をたてる」とい

うテーマで勉強していた初級後半レベルの学生たちが

幹事役としてパーティーの準備と当日の進行役を務め

た。

3.試験と成績評価

 シラバスに明記されている評価項目と配点は各クラ

スとも以下の通りである。

表2 平成17年度標準コース受講者数および最終成績 (単位:人)

レベル SJ101 SJ102 SJ200 SJ201 SJ202 SJ300 SJ301 SJ302 合計学期 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋

中 国 2 2 1 1 2 1 6 3韓 国 1 1 1 3 1 3 4 6タ イ 1 1インドネシア 1 1 1 1 3 1ウズベキスタン 1 1ポ ー ラ ン ド 1 1 1 1フ ラ ン ス 2 1 1 1 4 1イ ギ リ ス 2 1 1 1 2 3ド イ ツ 1 1ス エ ー デ ン 2 2ア メ リ カ 3 2 1 5 11オーストラリア 1 1合   計 5 6 8 2 2 1 5 0 9 3 1 2 3 1 1 3 34 18成 績 A * 2 1 1 3 7成 績 A 5 1 3 2 1 7 2 1 3 1 20 6成 績 B 2 2 1 1 4 2成 績 C 2 2不 合 格 1 1聴 講 3 1 1 3 1 1 8 2

(注:前期は80点以上が A であったが,後期から評価段階が変更になり90点以上は A*,80~89点は A をつけることになった。)

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

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 評価項目と配点:

  Attendance 10%

  Homework 10%

  Quiz (Kanji) 10%

  Oral Test (mid-term) 10%

  Oral Test (fi nal) 20%

  Written Test (mid-term) 10%

  Written Test (fi nal) 20%

  Class Performance 10%

  Total 100%

 成績は,表1と2に示したとおりである。受講者97

名中聴講学生12名を除いた85名の成績は,A*または

A が62名(73%),B が16名(19%),C が6名(7%),

不合格は1名(1%)だった。

 以上の結果と昨年度の成績(A が83%,B が13%,

C が4%)を比べると,A が1割ほど減っている。特

に集中コースでは,聴講を除く43名中 A と A*が合わ

せて29名(67%)とかなり低い比率になっている。集

中コースは今年度から開講されたものであり,来年度

以降もこのような傾向が続くのかどうか注意する必要

がある。

4.学生の授業アンケート

 今年度から開始された集中コースで受講者数が多

かった IJ111の秋学期(受講者15名,アンケート回答

者10名)を取り上げ,主な項目について以下に報告す

る。

表3 IJ111の授業アンケート結果 (単位:人)

そう思う どちらかと言えばそう思う

どちらとも言えない

どちらかと言えばそう思わない そう思わない

問1.授業時間は適当か 9 1問2.クラスの人数は適当か 6 2 2問3. クラスの雰囲気はよかっ

たか 6 4

問4.コースの進度は適当か 3 6 1問5.教材は役に立ったか 4 4 1 1問6.テストは適当だったか 7 2 1問7. 勉強したことがよく理

解できたか 2 4 4

問8.授業内容は役に立ったか 5 5

 問1の「授業時間数」については適当であったと考

えられる。否定的に回答した1名は毎日4‒ 5時間が

適当だと回答していた。問2の「クラスの人数」につ

いて否定的な回答はなかった。問3の「クラスの雰囲

気」に関してはほぼ満足のいく結果が得られた。問4

の「コースの進度」と問7の「理解度」には関連があ

ると思われる。数人の学生がコースの終盤では授業内

容が盛りだくさんで負担が大きかったと述べている。

特に既習者からはコース前半のスピードを上げて,後

半はじっくり勉強できるようにするといいとの感想が

出されていた。問5の「教材」について否定的に答え

た学生はアメリカで使用していた教科書のほうがよ

かったとコメントしていた。問6の「テスト」と問8

の「有用性」については特に問題はなかったと思われ

る。

 個別の学習活動に関しては,ゲストと話す活動と口

頭発表の授業は7名の学生が「そう思う」と答えてお

り満足度が高かった。一方,会話と読解の授業につい

ては「どちらとも言えない」がそれぞれ4名,否定的

な回答がそれぞれ1名と2名で,満足度は相対的に低

かった。

5.コースの総括と今後の課題

 今年度から短期日本語コースが廃止されたため,単

位を必要とする短期学生と単位を必要としない全学の

学生が机を並べることになったが,a と b の2クラス

が設けられたコースでは短期交換学生をできるだけ同

じクラスに集めるように配慮した。また,出席や宿題

提出状況に注意し,短期学生の学習状況を把握するよ

う努めた。昨年度までと比べると,コース運営が煩雑

になったことは否めないが,コースの管理について特

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日本語・日本文化教育部門

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に混乱はなかった。

 今年度から開講した集中コースにどの程度の学生が

登録するかに注目していた。結果は以下の通りであっ

た。

 春学期:集中コース17名/標準コース34名

 秋学期:集中コース28名/標準コース18名

 春と秋では明らかに登録状況が異なっている。秋学

期の IJ111は15名と目立って学生が多い。これは,本

国で多少日本語を学んだ学生が復習をかねて IJ111に

登録し,集中的に初級日本語を終わらせようとしてい

たためである。今後もこのような傾向が続くのであれ

ば,日本語プログラム全体のコース編成を検討する必

要がある。

 非常勤予算の削減によってクラスの規模が大きくな

ることが予想される。短期学生の日本語ニーズに応え,

これまで同様のきめ細かな指導を続けることも困難に

なるだろう。そのような状況の中でこれまでに得てい

る高い評価を維持するためにはカリキュラムのさらな

る改善が求められる。会話クラスなど少人数でなけれ

ば教育効果があげにくい授業については,学内外の人

的リソースを活用し少人数のグループ学習なども取り

入れることが考えられる。来年度以降の検討課題であ

る。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-8 8-

 第6期日韓理工系学部予備教育コースは,平成17年

10月7日から18年3月2日までの6か月(実質20週)

間,6名の学生を対象に開講された。このコースは,

工学部入学後,勉学や生活に支障のないように,日本

語運用および専門基礎能力を養成するために行われる

もので,日本語に関しては,日常生活に必要な会話練

習のほか,科学読み物を読む,レポートを書く,講義

形式のまとまりのある話を聴く等の練習が行われる。

また,全学教養科目「留学生と日本―異文化をとおし

ての日本理解―」や「日本事情」の授業を通じての異

文化理解教育も含まれる。専門基礎教育に関しては,

数学・物理・化学の各科目について,入学後工学部の

講義を無理なく受講できるように,専門用語の習得お

よび工学部1年生の現行のテキストを用いて学部の授

業を予習することを主眼に行われる。このほか,工学

表1.科目別時間数および担当者、内容

科目 コマ数 総時間数 担当 内容日本語 13 420 留学生センター教員・謝金講師 会話練習・聴解・文法・作文

専門科目 3 108 工学部教員・謝金講師 物理・数学・化学日本事情 1 36 留学生センター教員・謝金講師 ビデオ・新聞等

全学教養科目 1 30 留学生センター教員 日本人学生との合同クラス専門英語 1 30 工学部教員 NUPACE 工学部授業

部で短期留学プログラムのために英語で開講されてい

る講義等を受講し,英語で専門分野の講義を聞く科目

も受講できるようになっている。

日程(20週)

 10月7日㈮ 日本語診断テスト

 10月11日㈫ 開講式 

 10月12日㈬ 授業開始

 10月26日㈬ バス旅行

 12月27日㈫~1月9日㈪ 冬休み期間

 2月3日㈮ 工学部入試のため休講

 2月28日㈫ レポート発表会

 3月2日㈭ 閉講式

時間割

8:45‒10:151限

10:30‒12:002限

13:00‒14:303限

14:45‒16:154限

月 作文 教養科目 専門科目数学 会話・語彙

火 文法 会話・練習 専門科目物理 会話・語彙

水 会話・練習NUPACE専門科目

聴解 課外活動

木 読解 聴解 専門科目化学 漢字・語彙

金 日本事情 会話・練習 OL漢字 OL 読解・作文

教室:教養教育棟セミナー室6番

第6期 日韓理工系学部予備教育コース

村 上 京 子

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日本語・日本文化教育部門

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基本テキスト

会話: 「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ」名古屋大学出

版会

聴解: 「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ 聴解ワークシー

ト」名古屋大学出版会

読解: 「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」ア

ルク

作文: 「留学生のための理論的な文章の書き方」スリー

エーネットワーク

漢字: 「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者のた

めの漢字と語彙」The Japan Times

 この他,e-learning と個別指導を組み込んだ「オン

ライン漢字コース」と「オンライン読解・作文コース」

の受講を課した。

 コースの開始に先立ち行われた日本語診断テストで

は,6名の受講生には多少の日本語能力の差があるも

のの,特に問題になる学生はいなかった。そのため当

初の計画通り授業を進めていき,6回の定期試験とコー

ス終了時に修了試験を行った。試験の結果はいずれも

到達目標に達しており,欠席や遅刻等で問題となる

ケースはなく,安心して学部生として送り出せる成績

を修めた。

 学生が終了時に作成したレポートのタイトルは,

「ロット」「発明家 レオナルド・ダ・ヴィンチ」「電

話の仕組み」「ハイブリッド車」「言語の統合は可能か」

「乱数」であった。2月28日の発表会には日本語教員

のほか,工学部教員・TA や先輩学生の参加があった。

 コース終了時に行ったコース評価の結果は,いずれ

の授業科目もよい評価を得ており,学習者にとって

有益なコースであったというコメントをもらってい

る。例年に比べコースの終了時期が早まったため,旅

行等に行きたい,日本人と接触できる時間がもっとほ

しかったという毎年聞かれる意見は今年は特になかっ

た。しかし,6人の同じ国の出身者だけではなく,他

の国からの学習者と一緒に授業をもっと受けたかった

という意見は複数あった。クラスの編成については,

今後検討していきたい。

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名古屋大学留学生センター紀要 第4号

-9 0-

1.日本語研修コース

 〈4月期:第52期〉 

鹿   島       央

神   田   紀   子

魚   住   友   子

大   羽   か お り

須   沢   千 恵 子

高   橋   伸   子

坪   田   雅   子

服   部       淳

安   井   澄   江

 〈10月期:第53期〉

鹿   島       央

佐   藤   弘   毅

神   田   紀   子

魚   住   友   子

大   羽   か お り

加   藤   理   恵

久   野   伊 津 子

須   沢   千 恵 子

高   橋   伸   子

坪   田   雅   子

服   部       淳

安   井   澄   江

2.日本語・日本文化研修コース

 〈2004年10月~2005年9月:

第23期〉

籾   山   洋   介

浮   葉   正   親

伊 豆 原   英   子

佐 々 木   八 寿 子

中   川   康   子

西   田   瑞   生

向   井   淑   子

3.教養科目「留学生と日本-異

文化を通しての日本理解

浮   葉   正   親

松   浦   ま ち 子

田   中   京   子

堀   江   未   来

高   木   ひ と み

4.全学向け日本語コース

 〈前期〉

李       澤   熊

尾   崎   明   人

浮   葉   正   親

石   崎   俊   子

村   上   京   子

籾   山   洋   介

秋   山       豊

石   川   公   子

加   藤   理   恵

久   野   伊 津 子

佐 々 木   八 寿 子

宗   林   由   佳

高   橋   伸   子

高   安   葉   子

嶽       逸   子

椿       由 起 子

坪   田   雅   子

土   肥   治   美

西   田   瑞   生

三   輪   柾   子

安   井   澄   江

神   田   紀   子

魚   住   友   子

大   羽   か お り

須   沢   千 恵 子

服   部       淳

松   木   玲   子

 〈後期〉

李       澤   熊

尾   崎   明   人

浮   葉   正   親

石   崎   俊   子

籾   山   洋   介

鹿   島       央

秋   山       豊

石   川   公   子

加   藤   理   恵

久   野   伊 津 子

佐 々 木   八 寿 子

宗   林   由   佳

高   橋   伸   子

高   安   葉   子

嶽       逸   子

椿       由 起 子

坪   田   雅   子

土   肥   治   美

西   田   瑞   生

三   輪   柾   子

安   井   澄   江

魚   住   友   子

大   羽   か お り

須   沢   千 恵 子

服   部       淳

松   木   玲   子

 〈夏季集中〉

李       澤   熊

佐   藤   弘   毅

秋   山       豊

石   川   公   子

佐 々 木   八 寿 子

宗   林   由   佳

高   安   葉   子

嶽       逸   子

椿       由 起 子

坪   田   雅   子

土   肥   治   美

中   川   康   子

西   田   瑞   生

向   井   淑   子

安   井   澄   江

三   輪   柾   子

[日本語・日本文化教育部門資料]

平成17(2005)年度・各コースの担当者

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日本語・日本文化教育部門

-9 1-

服   部       淳

加   藤   理   恵

久   野   伊 津 子

 〈春季集中〉

李       澤   熊

浮   葉   正   親

秋   山       豊

石   川   公   子

佐 々 木   八 寿 子

宗   林   由   佳

高   安   葉   子

嶽       逸   子

椿       由 起 子

坪   田   雅   子

土   肥   治   美

中   川   康   子

西   田   瑞   生

向   井   淑   子

安   井   澄   江

三   輪   柾   子

服   部       淳

加   藤   理   恵

久   野   伊 津 子

5.学部留学生を対象とする言

語文化科目〈日本語〉

 〈前期〉

村   上   京   子

鹿   島       央

秋   山       豊

魚   住   友   子

鷲   見   幸   美

西   田   瑞   生

 〈後期〉

村   上   京   子

浮   葉   正   親

秋   山       豊

魚   住   友   子

鷲   見   幸   美

西   田   瑞   生

6.日韓理工系学部留学生日本

語プログラム

 〈2005年10月~2006年3月〉

村   上   京   子

李       澤   熊

三   谷   閑   子

八   木   健 太 郎

田   口   香 奈 恵

寺   島   圭   子

李       善   姫