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川崎市商業振興ビジョン 平成 21 年 3 月 川 崎 市

川崎市商業振興ビジョン - Kawasaki...川崎市商業振興ビジョン 目 次 序 章 商業振興ビジョンの策定にあたって 1.背景 -商業を取り巻く環境変化-

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川崎市商業振興ビジョン

平成 21 年 3 月

川 崎 市

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は じ め に

川崎市では、平成 13 年度に「地域商業振興ビジョ

ン」を策定し、これまで各種の商業振興施策を展開

してきましたが、7年が経過し、社会経済情勢や商

業を取り巻く環境などが大きく変化してきています。

このような状況を踏まえて、市内商業の一層の振興

を図るため、新たに「川崎市商業振興ビジョン」を

策定しました。

本ビジョンでは、商店街、個店、消費者へのアンケート調査や商業統計等各

種統計資料を基に、市内商業の状況を把握し、学識経験者や商業者等で構成す

る「川崎市地域商業振興ビジョン検討委員会」で分析・検討を行い、商店街の

組織力や個店の強化、商業ネットワークの構築、及び付加価値の高い商業への

転換など、6つの商業振興の方向性を定めております。

また、施策の基本的な視点として、これまでの商店街支援に加えて、新たに、

「商業集積エリアの活性化」、「地域課題解決による新たな商店街活性化」及び

「魅力あふれる個店の創出」の3点を位置付けております。

今後は、本ビジョンに基づき、商業集積エリアの活性化や個店の魅力創出を図

る「エリアプロデュース事業」など「リーディングプロジェクト」を実施する

とともに、既存の商業振興事業の再構築を図り、商業者の方々の創意工夫を積

極的に支援することにより、本市商業の活性化につなげてまいりたいと存じま

す。

後になりましたが、本ビジョンの策定にあたり、専修大学関根教授や「ビジ

ョン検討委員会」委員の皆様のご尽力と、多くの商業者の方々、NPO 関係者な

どのご協力を賜りましたことに改めて感謝を申し上げます。

平成21年3月

川崎市長 阿 部 孝 夫

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川崎市商業振興ビジョン

目 次

序 章 商業振興ビジョンの策定にあたって

1.背景 -商業を取り巻く環境変化- <3頁>

(1)高齢化等の進展 …3 (2)ライフスタイルの多様化 …4 (3)環境問題の意識化 …4 (4)安全・安心ニーズの高まり …5 (5)国際化の進展 …5 (6)地域間商業競争の高まり …6

2.ビジョン策定の新たな視点 <7頁>

(1)地域を一体的に捉えた「商業集積エリア」の振興 …7 (2)商業振興のベースとなる「個店」単位での取り組み支援 …7 (3)地域課題の解決を通じた商業振興 …7 (4)多様なネットワークの構築・活用 …8

第Ⅰ章 川崎商業の状況

1.川崎商業の動向等 <11 頁>

(1)地域商業の概況 …11 (2)個店・商店街の現状 …12 (3)商業者の取り組み意識等 …14

2.社会経済環境の変化に伴う商業の状況等 <17 頁>

(1)高齢化等の進展 …17 (2)ライフスタイルの多様化 …18 (3)環境問題の意識化 …20 (4)安全・安心ニーズの高まり …21 (5)国際化の進展 …22 (6)地域間商業競争の高まり …23

3.川崎商業の動向・社会経済環境の変化に伴う商業の状況等のまとめ <26 頁>

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第Ⅱ章 商業振興の基本的な考え方

1.商業振興の方向性 <29 頁>

2.施策の基本的な視点 <30 頁>

3.三つの施策の基本的な視点の考え方 <31 頁> (1)商業集積エリアの活性化 …31 (2)地域の課題解決による新たな商店街活性化 …32 (3)魅力あふれる個店の創出 …34

第Ⅲ章 商業振興施策の展開

1.商業振興の取り組み <39 頁> (1)商業街組織力や個店の強化 …39 (2)商業ネットワークの構築 …42 (3)基本的な商業課題への対応 …43 (4)地域と連携する商業の確立 …45 (5)付加価値の高い商業への転換 …48 (6)まちづくりと連動した商業振興 …50

第Ⅳ章 商業振興ビジョンの推進

ビジョン推進の構成図 <55 頁>

ビジョン推進の体系図 <56 頁>

1.リーディングプロジェクト <57 頁> (1)先導的なモデル事業の実施、検証・波及への取り組み …57 (2)リーディングプロジェクト …57

2.商業集積エリア別ビジョンの推進 <58 頁>

(1)商業集積エリアの類型 …58 (2)商業集積エリアの創出 …59 (3)エリアごとの商業振興の方向性 …61

3.既存事業の再構築 <66 頁> (1)主な既存事業 …66 (2)再構築の方向性 …66 (3)見直しの手順 …67

4.ビジョン推進に向けて <68 頁> (1)アクションプランの作成 …68 (2)各種施策の総合化による推進 …68 (3)推進体制の強化・充実 …68 (4)事業の評価 …68

資料編

川崎商業のデータ等 <71 頁> 参考資料

(1)委員会名簿 …113 (2)審議経過 …113

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序 章

商業振興ビジョンの策定にあたって

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序 章.商業振興ビジョンの策定にあたって

1.背景 -商業を取り巻く環境変化-

川崎市では、平成 13 年度に地域商業振興ビジョンを策定して以降、生活コア商業支援事業をはじめ

とする各種施策を実施してきたが、7年が経過し、社会情勢、商業を取り巻く環境、商業・商店街への

要求や果たすべき役割なども大きく変化してきている。このような状況に対応し、市内商業の一層の振

興と新実行計画の着実な推進を通して、今後の施策の指針となる川崎市商業振興ビジョンを策定した。

策定にあたり、以下のような商業や都市をめぐる諸情勢や地域特性に着目し、今後の計画づくりや施

策展開に必要となる視点を整理した。

なお、策定にあたって、川崎市地域商業振興ビジョン検討委員会(以下「検討委員会」という)を設

置して検討を行ってきた。基本的な要件は次のとおり。

①検討委員会の構成

学識経験者、商業者、消費者等各分野の代表 17 人で構成した。

②検討委員会の役割

商店街、個店、消費者へのアンケート調査の実施内容を検討するとともに、商業統計等各種統計資

料を使用して川崎商業の状況を把握し、商業振興の方向性等を検討した。

③ビジョンの策定期間等

商業を取り巻く状況からビジョンが想定する期間は、平成 21 年 4 月から概ね 10 年間としたが、社

会経済環境の変化等により見直しができるものとする。また、策定後は本ビジョンに基づく、効果

的かつ効率的な施策の展開を行う。

(1)高齢化等の進展

• 2005 年 10 月1日現在のわが国の総人口(国勢調査)は、前年(2004 年)の推計人口を下回り、

戦後初めて「人口減少社会」に突入した。ただし神奈川県の推計によると県全体の人口ピークは

2019 年と遅く、特に川崎・横浜地域圏のピークは 2025 年とされ、いましばらくは人口増加傾向

が続く見通しである。 • 平成17年国勢調査による川崎市の65歳以上の老年人口割合は14.6%と大都市の中で割合が も

低く、生産年齢人口割合が も高いというように、若く働き盛りの世代が多いのが川崎の人口特

性である。 • ただし老年人口割合が年少人口割合を上回り、特に平成 12 年国勢調査より0~4歳の層が減少

していることから、比較的遅いにしても川崎でも着実に少子・高齢化は進行している。地域によ

っては人口減少・少子高齢化が急速に進行することも見込まれ、また、高齢化率は小さくても高

齢者数(ボリューム)は多く、商業のあり方も高齢者市場に対応した取り組みを考えていくこと

とした。

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(2)ライフスタイルの多様化

• 人々のライフスタイルはさらなる多様化の様相を見せ、様々な選択肢の中から自らの意思で「選

べる豊かさ」を享受する価値観が浸透。どれだけ「良い時間を過ごせるか」といった時間消費が

より重視されるといわれている。 • 時間の遣い方も変化・多様化しており、社会生活基本調査(平成 13 年・18 年)によると、神奈

川県では深夜の時間帯に「身の回りの用事」や「趣味・娯楽」・「休養・くつろぎ」に費やす人の

割合が増加している。また、男性は夜8時頃・9時頃に買物する人が増加し、女性は夜8時台の

買物が減少するものの、9時台で増加しているなど、夜型生活の浸透なども見られる。 • ライフスタイルの変化等に伴う消費者ニーズは、多様化と共に高度化・複雑化し、今後はより一

層、様々な価値観の共存する社会となっていく。消費者側で選択の自由度が高まっていくなか、

商業のマーケティングも変化。大量生産・大量消費の時代に適したマス(集団、大衆)向けの事

業戦略が見直され、成長期を終えた市場においていかに顧客の心を捉えるかが模索されている。 • そのような変化にも呼応して新しい複合型商業施設の建設や業態開発、流通業界再編の動きなど

が活発化しており、今後の商業は、市場が細分化していく傾向やめまぐるしい業界動向などにも

対応する。 • また、川崎は京浜工業地帯の中核として製造業を中心に日本の産業を支えてきたが、近年は産業

構造の変化が進み、高次の研究開発、情報サービスなど、立地機能も多様化してきている。それ

に伴い就業人口も変化し、多様な働き方が見られるようになっていることから、商業もそのよう

な就業構造や就業者のライフスタイルの変化にも適切に対応する。

(3)環境問題の意識化

• 京都議定書の発効、愛・地球博、洞爺湖サミットの開催など国際的な情報発信の機会もあって、

地球規模の環境問題への関心が高まっており、それに対応した取り組みの重要性の認識等が浸透

している。また近年はヒートアイランド現象、局地的集中豪雨の発生など異常気象が多発するな

かで地球温暖化の進行が実感されるようになっている。 • 我が国の「循環型社会元年」と位置づけられる平成 12 年度以降、循環型社会形成推進基本法や

関連法が整備され、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の概念が普及してきており、循

環型社会の形成に向けた取り組みが活発化してきている。 • 地球環境や生態系などに配慮したエコ思想が広まっていくなかで関連市場が定着し、経済産業省

では約 48 兆円(平成 13)の市場規模が約 67 兆円(平成 22 年)に拡大すると予測。ものづくり

の分野では、ハイブリッドカー、土に返る素材、身体と地球に優しい繊維素材など、エコ関連の

取り組みが早くよりスタートしている。 • 平成 17 年からはクールビズ運動が始まり、当時の小泉首相が沖縄シャツ「かりゆしウェア」を

着用するなど、ファッションと環境対策が連動し、環境問題への関心と意識的な行動はより人々

の身近なこととなっている。人気ショップの買物袋や人気ブランドのトートバッグがエコバッグ

として利用されたり、ノベルティとしてエコバッグが配布されたりするなど、消費者も事業者も

ファッション性や遊び心を楽しみ、エコバッグ、MY 箸、エコドライブなどの環境対策が「スタ

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イル」として確立されつつあるなか、ビジネスと環境対策の両立によってライフスタイルを提案

していく姿勢が商業にも強く求められている。

(4)安全・安心ニーズの高まり

• 犯罪など暮らしの安全を脅かすような出来事は、IT 化の進展等に伴って複雑化していったり、“オ

レオレ詐欺”に代表されるような詐欺・搾取は、特に高齢者の独り暮らし世帯などを中心に巧緻

化していったりしており、また、子どもから高齢者まで様々な被害者を生み出すような凶悪犯罪

のニュースが連日立て続けに報道されたりと、生活上の不安が高まるなか、防犯グッズや警備会

社への加入など、自己防衛のニーズも高まりを見せている。 • また食の面では、産地偽装や賞味期限改ざん、健康不安な食品添加物の混入、商品管理のずさん

さなど、様々な不正・不祥事などにより、消費者の不安感・不信感が高まっている。 • 平成 15 年の農水省「牛肉のトレーサビリティ」導入を契機に、食品トレーサビリティの取り組

みが進み、食の安心を求める消費者意識や健康ニーズ、「スロー」をキーワードとした質的欲求

の拡大等を背景に、産直システムの導入等が活発化している。 • 地域活性化の面からも、「生産」と「消費」の場を接近させる取り組みが重要視され、地域ブラ

ンド構築が活発化。地域団体商標登録制度の導入により「地域名+商品名」での商標登録が可能

となり、地場産品のブランド化(流通のコントロール)、新たな目玉製品の開発などが各地で進

められるようになった。特に B 級グルメとも呼ばれる富士宮やきそば、宇都宮餃子等の成功に触

発され、地域資源に着目し、地場産品の高付加価値化や活用が進められている。 • 大量生産・大量消費の旧来型価値観から脱却し、経済の効率的な域内循環を実現する地産地消な

どは、地域資源を「安心」と結びついたビジネスとして活用でき、また持続可能な地域社会の形

成に寄与する取り組みであり、その推進に向けては、産地と消費者との結節点に位置する商業の

役割が大きい。 (5)国際化の進展

• 人・物・金・情報などがボーダレスに往来する、産業・経済のグローバル化が進み、川崎におい

ても多様な文化やライフスタイルの共存するコミュニティが形成されている。 • また、法人や工場の海外移転なども進んでおり、企業・人材・資金・知財などの獲得に向けた地

域間競争も国際化している。さらに、ネット通販や個人輸入などが盛んとなり、国内未発売品等

も消費者が手軽に入手できるようになっている。 • 羽田空港は 2010 年 10 月を目処に新しい滑走路を整備予定であり、国際線増強・海外ネットワー

ク強化などによって、観光客の大幅増加が見込まれることから、川崎市・神奈川県・横浜市の3

者が共同で神奈川口構想を提言しており、羽田空港再拡張・国際化によって交流拡大のチャンス

が訪れる。 • そのため、今後の商業・商店街は、川崎市全体の国際競争力の強化も視野に、新たな国際的観光

需要にも対応していくこと、民間レベルの国際交流を一層活発化させていく。

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(6)地域間商業競争の高まり

• ライフスタイルや価値観の多様化等を背景に、多様な生き方や行動が選択可能な社会・時代とな

り、買物をはじめ、「職」や「住」・「遊」なども様々な選択肢から“自由に選べる”環境が形成

されている。そのため必然的に“選ばれる”側同士での競争が激化しており、特に需要も供給も

多彩な大都市では、地域が選ばれ、競争に“生き残る”ための条件が厳しくなっている。 • 昭和 40 年代頃から都市郊外のスプロール化の進行や郊外型ショッピングセンターの立地が目立

ち始め、大手スーパーなどが隆盛となるなかで、中小個店は厳しい環境に置かれてきたが、昭和

49 年に大店法(大規模小売店舗法)が制定され、規制緩和等はあったものの、平成 12 年に大店

立地法(大規模小売店舗立地法)が新たに制定されるまで、中小個店とその集合体である商店街

は、公的な機能発揮を期待されるなかで、政策的に保護され続けてきたと言える。だが、大店立

地法の施行以来、商業の自由競争が進み、駅前の一等地や自動車アクセスの優れた郊外に大型シ

ョッピングモール等が進出するなど、商業の世界での競争は激しさを増してきた。 • しかしながら、大型店等のシェア拡大による既存商店街等のシャッター通り化や、絶えない競争

による地域の疲弊などの弊害が生じ、地域そのものの競争力の低下が懸念されるようになる。特

に川崎の場合は、南北に細長い市域形態を持ち、横浜や東京といった魅力ある商業集積地に囲ま

れた立地条件にあるだけに、競争環境は熾烈さを極めている。まちも店も競争優位性を高めるこ

とが必要とされており、前述のような地域の資源を活かした付加価値創出・地域ブランド化など

の取り組みが重要になるとともに、マス(集団、大衆)を対象とした場合のマーケティングの困

難さ、非効率性などを勘案すれば、高齢者のまちとして知られる巣鴨のように、顧客対象を絞っ

て特化していくなどの独自の工夫が必要となる。 • そのような地域間競争等を背景に、地域は一層の個性化が必要とされ、地域の個性を活かした新

たなまちづくり(まちの運営)の動きが目立つようになってきた。そのなかでは行政と住民、企

業、NPO 等の多様な主体が対等な権利と責務を持って地域社会の経営の担い手となる地域マネ

ジメントの必要性が高まり、一方では量の充実を追求した都市化社会が終わり、成熟した都市型

社会に移行するなか、都心空洞化による都市問題の発生など「成長時代」の反省を踏まえた新た

なまちづくりの思想(コンパクトシティ等)が盛んに論じられるようになってきた。 • コンパクトでにぎわいのあるまちづくりに向けて、店舗・住宅・職場・学校・公園など多様な都

市機能の集約・集積する複合機能コミュニティの形成や、都市機能運営の効率化等が課題となり、

『地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるため、住民・事業主・地権者等によ

る主体的な取り組み』の一つとしてエリアマネジメントの考え方が取り入れられ始めている。 • また、住民、地域団体、NPO、企業、自治体など、地域経営の担い手は多様化し、その参画形

態の一つとして、地域における生活に身近な課題を地域自ら解決するためのコミュニティビジネ

ス等への期待も高まっており、生活者に身近な存在である地域商業の機能としても対応を図る。

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2.ビジョン策定の新たな視点

前述の川崎商業を取り巻く環境を踏まえて、今回の商業振興ビジョンの策定において新たな視点と

考えられるのは以下の4点であり、今後の商業振興策の展開にあたって新たに付け加えられる視点と

これまで以上に強化・充実を図っていく視点を整理した。

(1)地域を一体的に捉えた「商業集積エリア」の振興

• これまでの商業振興施策は、主に商店街単位で実施されることが中心であったが、近隣の商店街

や地域など、必ずしも横の連携がうまくいっていたとは言えないこともあって、個々の商店街に

対する振興策が地域としては非効率的に実施されたり、広域的な連携を要する取り組みが具体化

しにくかったりするという状況も生じていた。 • そのため今回の策定にあたっては、従来の「商店街」はもとより、複数の商店街や近隣地域を一

体的に捉えた「商業集積エリア」を対象とした施策実施により効果的な連携の取り組みを促進す

ることとして、『商業集積エリアごとの振興』を重要な視点として加えている。

(2)商業振興のベースとなる「個店」単位での取り組み支援

• 従来の商店街を対象とした施策の実施においては、商店街構成員の間での温度差や経営力の格差

などによっては十分な合意形成を得にくかったり、成果が挙がりにくかったりする状況もあった

と考えられる。 • また、消費を取り巻く環境が成熟した社会へと移り変わっていくなか、そのような変化に地域商

業が対応していくために、また商店街等が大型店との差別化を図っていくためにも、個性ある個

店が必要であり、サービス業とも連携した魅力ある個店経営が求められるところである。 • そのため、商店街構成メンバーである「個店」の振興を促進することで商業集積全体の力の底上

げを図ることを狙いとして今回新たに『個店の振興』を重要な視点として加えている。

(3)地域課題の解決を通じた商業振興

• 地域の商店街は、地元の生活者が集う場所であり、その暮らしの基本を支える機能を有している。

これまでにも地域社会を守る役割を果たしてきた商店街の停滞は、地域社会の弱体化、コミュニ

ティの崩壊を招きかねず、一方で生活者の商店街離れが進めば、その存在意義が失われ、空洞化

が進んでいくことが懸念される。そのため、“多様なネットワーク”のひとつとしても商業と地

域との連携が不可欠であり、商業振興と地域振興の両面を実現することが大切である。 • このような考え方は、これまでのビジョンにおいても“生活コア商業”という位置づけがなされ

ていた。地域との連携を図り、地域の必要性・ニーズに合った機能を商業が中心となって提供し

ていくことで地域のまちづくりと活性化を促進しようというものである。ただし、この考えのな

かで展開されてきた従来の取り組みは“地域貢献”までの域を脱せず、その結果が商業振興にフ

ィードバックされるところまで具体的に描いたものにはなっていなかったと言える。

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• 商業(商店街)が地域を守るという考え方は不変のことではあるが、それが持続可能なものとな

っていくためには、地域にとっての利益と商業にとっての利益の双方が実現でき、共助しながら

地域を運営していく視点が極めて重要なこととなる。そこで今後の商業振興策は、地域課題を解

決するための商店街の取り組みを積極的に支援していくなかで、その成果として地域の生活者が

商店街を信頼し、頼り、安心して利用していくような関係性の構築までを目指した展開を促進す

る。

(4)多様なネットワークの構築・活用

• 消費の価値観の多様化など社会情勢のめまぐるしい変化や、活性化に向けた課題解決が複雑化・

困難化している状況下にあって、それらに対応していくためには商業(個店・商店街等)自らの

努力だけでは不十分であり、商業者同士や他の主体との効果的なネットワークが不可欠なものと

なっている。 • これまでのビジョンにおいても“他者との連携”はうたっていたものの、それを具体化させる施

策が不足していたことから、単発的なソフト事業、一過性のイベントなどにとどまり、十分な連

携成果が得られたとは言い難い状況であった。 • “他者との連携”は個店レベル・商店街レベル・地域(商業集積エリア)レベルのいずれの取り

組みにおいても重要な概念であり、今回のビジョン策定にあたっては、同業種・異業種、他産業、

NPO 等の活動団体、大学等の地域資源などとの連携を『商業ネットワーク』と位置づけて商業

振興の方向性のひとつとして重要視している。これらの多様な連携の具体化によって、新たな商

品・サービス等の開発や高付加価値化を促進し、地域商業の機能強化、個性化、優位性の確立な

どを図る。

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第Ⅰ章

川崎商業の状況

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第Ⅰ章.川崎商業の状況

1.川崎商業の動向等

川崎の商業は、幸区を除いて全般的に事業所数が減少傾向にあるものの、年間商品販売額は増加。なかでも小

売業では、「婦人・子供服」・「医薬品・化粧品」・「他に分類されない小売業」などの増加傾向が大きい。近年は

ラゾーナ川崎プラザなど再開発によって商業集積が強化され、まちとしての商業立地性や話題性が高まってきて

いるところもある。

一方、区別や商業集積(商店街)別など地域によって好調・不調の感じられ方が異なり、立地条件による事業

上の不利なども見られるが、商業者(個店)の高い変革意向・経営改善意識や地域貢献意識などを基に、地域独

自の資源を活かした商業振興と共に、個店の魅力向上を促進し、後継者問題や事業(機能)の継続性、商店会等

の組織力強化などを図っていくことが必要である。

(1)地域商業の概況(商業統計より)

①全市的傾向

■減少し続ける小売業の事業所数。年間商品販売額は増加

• 平成 19 年の川崎の商業は、卸売業・小売業ともに事業所数が平成 16 年より 10%以上減少しており、

特に小売業は昭和 63 年以降、減少の一途をたどっている。従業者数は、卸売業が前回比 12.5%増で

あるのに対し、小売業は減少に転じている。 • 年間商品販売額は、卸売業が 30%増、小売業が 2.5%増と、ともに増加している。

■その他の各種商品や婦人・子供服小売業の伸びが大きい

• 平成 14 年から平成 19 年にかけて、事業所数・従業員数・年間商品販売額・売場面積の4項目とも

増加しているのは、小売業では「その他の各種商品」・「婦人・子供服」・「各種食料品」・「医薬品・化

粧品」・「他に分類されない小売業」である。

②販売効率

■大都市のなかで、川崎小売業の販売効率は中~低位

• 18 大都市の販売効率を比較して川崎商業を見ると、卸売業は1事業所当たりの販売額で5位、従業

者1人当たりの販売額で8位だが、小売業はそれぞれ8位と 11 位につけている。 • 平成 16 年から 19 年にかけて、市内小売業の1事業所当たりの販売額は、「農耕用品」・「他に分類さ

れない小売業」・「機械器具」・「靴・履物」・「男子服」・「その他の織物・衣服・身の回り品」などが増

加。従業者1人当たりの販売額は、「農耕用品」・「機械器具」・「婦人・子供服」・「靴・履物」・「燃料」・

「他に分類されない小売業」・「医薬品・化粧品」などが増加している。

③区別の状況

■平成 16 年から 19 年にかけて、小売業は幸区で増加傾向にある

• 幸区の小売業は、売場面積が 60%増加したのをはじめ、年間商品販売額・従業者数・事業所数の

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各項目で増加しており、平成 18 年9月に 280 以上のテナントを揃えてオープンしたラゾーナ川

崎プラザの影響が大きいと見られる。 • トンプソン指標によると、川崎区の小売競争力(1.50)は東京都区部や横浜市の購買力と比較し

ても強さを発揮しているが、その他の区は市外への購買流出がある。

川崎区 卸・小売ともに年間商品販売額が増加し、特に「鉱物・金属材料卸売業」、「機械器具小売業」などで増加し

ている。小売業全体で306店舗が減少(-13.4%)し、特に「その他の飲食料品小売業」で94店舗減少している。

幸 区 卸の事業所数以外は増加。特に卸従業者が5千人強の増加で、「自動車卸売業」の従業者数・年間商

品販売額の増加が大きい。小売事業所数は市内で唯一増加し、「婦人・子供服」で 49 店舗の増加、「菓

子・パン」で 36 店舗の増加となっている。

中原区 卸・小売ともに減少傾向。小売業全体で 249 店舗が減少しており、「その他の飲食料品」35 店舗減、「書

籍・文房具」25 店舗減、「菓子・パン」20 店舗の減などとなっている

高津区 卸の年間商品販売額が増加しているが、それ以外は軒並み減少傾向。小売業全体で 168 店舗減少など全

般的に縮小傾向の中、「婦人・子供服」や「男子服」、「自転車」、「農耕用品」などの小売業が増加傾向。

宮前区 卸の年間商品販売額(特に「食料・飲料卸売業」、「他に分類されない卸売業」など)、小売の売場面積

(「医薬品・化粧品」、「その他の織物・衣服等」など)が増加している。

多摩区 卸売業の年間商品販売額 45%、従業者数 14%増加。「農畜産物・水産物」、「一般機械器具」などで増

加傾向にある。小売業は事業所数・年間商品販売額に低迷が見られ、小売業全体で96店舗の減少、特に

「書籍・文房具」が 21 店舗減少などしている。

麻生区 小売業の売場面積が 10%増加している。増加量では「他に分類されない小売業」、増加率では「靴・履

物」が大幅に増加している。

(2)個店・商店街の現状

①商店街の現況(平成 20 年度・商店街調査より)

■64%の商店街が近況を「不調」とするが、高密度の商業集積ほど好調感がある

• 地域商店街の業種構成は「飲食」と「サービス」とが 48%を占め、概ね半数程度は物販以外の機

能も立地している。その商店街の 近の景況は、「非常に好調」が1%にも満たず、「まあまあ好

調」も6%程度にとどまる。全般的に「全く不調」(39%)、「やや不調」(25%)と不調感がうか

がえる。 • なかでも大師地区では 91%、田島地区では 88%、日吉地区では 86%の商店街が不調とし、いっそ

うの厳しさが感じられる。また、景況が「好調」や「どちらでもない」という商店街は、店舗密

度の高いところが多く、また広域的に集客する商店街ほど「不調」の割合が減少する。 • 「不調」の商店街では、新しい課題に対応した活動ができていなかったり、諸活動の成果が出て

いなかったりして、今後数年間のビジョン・方向性を描くことができない様子である。

■「景気の影響」を受けやすく、「個店のやる気」がなければ活性化しにくい

• 外部環境からの商店街の課題は、①景気の影響、②住民の消費意欲、③価値観の変化・多様化、

④人口の変化の順に挙げられている。「不調」な商店街は「景気の影響」をより強く感じ、「好調」

な商店街では「住民の消費意欲」が1番の課題とされている。 • 内部環境からの問題点は、①個店のやる気・意識、②取り組むための人材、③業種構成・バラン

スなどが指摘され、「不調」な商店街では特に「個店のやる気・意識」が強く問題視されている。

「好調」な商店街では、第一に「取り組むための人材」、次いで「商店会組織の機能」が問題と

され、活性化に向けて人材や組織の強化といった実際的な課題を抱えている。

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■強みやチャンスにもなり得る「人口の変化」・「個店のやる気」、「再開発等の計画」

• 商店街の活性化に向けた外部環境のチャンスとしては、「人口の変化」や「商店街や近隣等での

再開発等の計画」などが認識され、商店街の好調・不調を問わず好機と捉えられやすい。 • 「不調」な商店街ではチャンスが「特にない」との悲観的な見方も強いが、「大型店等の立地」

も挙げられ、単に競争相手としてだけではなく、良い方向に活かせる機会と見る傾向がある。 • 内部環境の強みは、「個店のやる気・意識」、「商店街等の一体感」を認識しているところが多い。

「不調」の商店街では「特にない」が一番目に来るが、好調・不調を問わず、商店街にとって「個

店のやる気・意識」が大きな財産になっている様子である。 • また、「好調」の商店街は「商店街としての一体感」や「市街地環境(ハード面)」といったまち

の優位性を持ち、その上で「イベント等のソフト事業」が功を奏しているといった状況がある。

■まちの集客力向上のため、“集客の核”としての交通施設や大型店等の活用が求められる

• 商店街活性化を表す定量的な指標としては「商店街の来街者数」を適当とするところが も多く、

まちの集客力向上が期待されている。次いで「個店あたり来店者数」として実際の購買客増加が

目標となり得る様子である。 • 「好調」な商店街は 73%が「鉄道・バスなど交通施設」を、55%が「大型店」を“集客の核”

として認識している。「不調」な商店街でも 20%前後ずつはこれらの存在を認めているが、その

集客効果を活かしきれていない懸念がある。

②個店経営の現況

■47%の個店に不調感。単店舗運営よりネットワークを有する個店に「好調」の兆し

• 個店の 近の景況感では、「非常に好調」は全体の3%程度に過ぎず、「まあまあ好調」と合わせ

ると「好調」な個店が 26%。一方、「不調」(「やや不調」+「全く不調」)な個店は 47%に上る。 • 業種別では、飲食・サービスより「買回品・耐久品」、「食料品」、「日用品・ 寄品」など物販店

に不調傾向がうかがえる。商業地別では大師周辺や夢見ヶ崎周辺の個店に不調感が多く、大師地

区や日吉地区の商店街と同様の認識である。 • 運営形態別にはチェーン形態等の方が「好調」の割合が高く、ネットワーク・連携・意思統一の

図られた経営が功を奏している様子である。また、比較的新しく出店したようなテナント店舗、

十名以上の規模で展開する店舗などにおいて、より好調感が表れている。

■「マーケティング」や「ライフスタイル提案」などの心がけによるプラス効果

• 経営面で何らかの心がけをしている個店は「好調」の割合が高く、「マーケティング手法を導入

している」個店の 41%、「ライフスタイルの提案・発信を心がけている」個店の 37%が「好調」

としている。客層、価値観の変化等に適切に対応した経営が効果を挙げていると見られる。 • また「地域住民の特性・ニーズを踏まえた個店経営」について、推進意向を持つ個店が 64%存在

しており、地域密着型経営が重視されている。

■経営上の問題点は「人手不足」や「消費控え」に加えて“まちの問題”がある

• 全体の 40%が「人手・人材不足」(「好調」の個店は 51%)、次いで 32%が外的要因である「消

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費者の消費控え」(「不調」の個店は 43%で も多い)、そして「まちの集客不足」(23%)や「ま

ちの魅力不足」(21%)といった“まちの問題”が指摘されている。

■小規模で長年営業してきた個店には「一代限り」の意向がある

• 全体の 37%は「後継者問題」を問題視しておらず、「継承させたいが適当な後継者がいない」と

の回答は4%のみだが、「一店舗のみ運営」の個店や「三名以内」の小規模な個店、「営業 11 年

以上」といった個店には、「自分一代限りと思っている(継承しなくてもよい)」との意向が多い。

■今後の見通しとして「好調」(順調)と「不調」(非順調)の二極化が進む懸念

• 今後の個店経営は 35%が「順調に進む」、54%が「順調に進まない」との見通しであり、現在の

経営状況(好調・不調)の格差の拡大が懸念される。 • 「好調」の個店は順調に進む見込みである一方、「不調」の個店の 80%は厳しい経営状況から脱

却できないと考えている。また、「今後数年間のビジョンや方向性が見えている」のは、「好調」

の個店の 72%に対し、「不調」の個店は 31%にとどまる。

■全体の6割弱の個店において、商売の変革意向がある

• 「現状問題無い。変革の必要はない」との考えは全体で 12%程度であり、多くの個店に変革意向

がある。「現状で問題無いが、変革していきたい」が 43%、「現状で問題が有る。変革していきた

い」が 15%であり、なかでも「不調」の個店の 52%が「変革していきたい」との考えを持つ。 • また、現在「不調」の個店でも 44%は「現在の機能(業種)は将来的に維持すべき」との見方を

示しており、商業集積や地域における必要性などから機能継承が求められている。

(3)商業者の取り組み意識等

①生活者・個店・商店街の考え方の類似と相違(平成 20 年度・個店調査、消費者調査、商店街調査より)

■近年の新商業施設の中には、生活者の購買行動に影響を与えているものも存在する

• 近年、地域の生活者(消費者)が“買物場所に変化が生じた”新たな商業施設は、全体では「ラ

ゾーナ川崎プラザ」・「通信販売・共同購入」・「ららぽーと横浜」の順に多い。特にラゾーナは幸

区(71%)や川崎区(63%)のほか、中原区(38%)や高津区(23%)にまで影響している。 • 商業者側(個店)の認識も全体的にほぼ同様だが、川崎区・幸区では「コストコ」、中原区では

「トレッサ横浜」、高津区では「たまプラーザテラス」、麻生区では「ららぽーと横浜」や「コス

トコ」などが、商業者の考える以上に生活者に支持されており、これらの商業施設が地域の生活

者の買物価値観などに影響を及ぼし、“より新しいもの”・“より充実したサービス”などを求め

る気持ちを高めていると考えられる。

■商店街の店舗を利用する理由は「行きやすさ」が圧倒的第一位

• 生活者が商店街で も利用する店は「食品スーパー等」(51%)や「総合スーパー」(30%)が大

半を占め、その理由は「行きやすい」が 69%、次いで「品揃えやメニューが充実」(31%)、「ポ

イントを貯めている」(31%)、「安心感(品・メニュー等)」(22%)となっている。

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• 個店が自ら顧客に支持されている理由として考えているのは「安心感(品・メニュー等)」(48%)、

「来店しやすさ」(38%)で、これらは消費者側の感覚とも近い。商業者側(個店)が“売り”

としている「顧客の感性とマッチ」や「相談や世間話ができる」といった点は、少なくともスー

パー等の利用が多い消費者側の回答には見られず、商店街の専門店ならではの強みと考えられる。

■魅力的な商店街は、「地域(のニーズ)に合い、安心・安全、個性的である」こと

• 魅力的なまちとして、消費者・個店とも、「地域のニーズに合った商売・サービスの充実」と「安

心・安全などの徹底的な追求」を重要視している。また、「個性的な店舗や品揃え」、「地域に合

った生活スタイルの提案」、「地域生活に役立つ情報の提供・発信」なども共通認識されている。 • 個店側が考えるより消費者側で重要視されているのは、「安売り・特売などの徹底」、「職人技や

プロの目利きなど技術を生かしたサービス」、「環境問題などへの率先した取り組み」などである。

■商店街の役割は「生活利便性を高め、高齢者等の暮らしを支え、安全を守る」こと

• 地域における商店街の役割は、消費者・商店街とも概ね類似して考えており、「地域の生活利便

性を高めること」や「防犯などの点で地域の暮らしの安全を守ること」、「高齢者などの生活を支

える場になること」(51%)は、消費者側の回答では第四位だが、36%が同様の認識を持つ。

②個店の取り組み意識等(平成 20 年度・個店調査より)

■72%の個店が「現在の経営の改善・強化」の推進意向を持つ

• 個店の 38%は「現在の経営の方向性に則って改善・強化等を図ること」を「推進したい」とし、

「推進を考えたい」と合わせて 72%が改善意向を持っている。「現状で問題ない(変革の必要な

し)」という個店も 52%、「変革は困難」という個店も 45%が経営改善を考えたい様子である。

■経営面で直接的なメリットの見込まれる取り組み、特に個店の魅力づくりなどに推進意向

• 今後の自店の発展に向けて、75%が「個性や特徴ある個店として魅力を創出すること」、64%が

「地域住民の特性・ニーズを踏まえた個店経営」、47%が「環境問題・少子高齢化等の社会的課

題に対応していくこと」に推進意向を示すなど、地域に密着した取り組みに関心がある。 • 他者との連携は、「顧客層が共通するような同業種・異業種と連携を図っていくこと」のように

経営に効果を及ぼし得る戦略的な連携には 38%が推進意向を持つが、「商業以外の産業・機能(学

校等)との連携を図ること」や「市民団体や NPO などと協力し合うこと」は、具体的な取り組

み内容や効果などをイメージしにくいこともあってか、推進を考えにくい様子である。 • また、「既存の商店会組織をベースとしてまちの力を強化・発揮すること」(40%)や「組織形態

にこだわらず、共同事業や協働のまちづくりを進めること」(37%)など、自らが立地するまち

づくりへの関心・参加意向が高い。

■「商品・サービスの充実」の面で個性化・差別化を図ること

• 消費者調査でも「個性的な店舗や品揃え」が重要とされているように、「個性や特徴ある個店と

して魅力を創出すること」は、商店街の発展に不可欠である。 • 店舗の個性化・差別化は、「商品・サービスの充実」が 55%で も重要視され、次いで「顧客と

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のコミュニケーション」(28%)、「商品・サービスの高付加価値化」(27%)、「顧客サービスの充

実」(25%)などが挙げられている。

■同業種・異業種事業者、学校(小中高校・大学)、高齢者関連団体などとの連携

• 「商業以外の産業・機能との連携」は考えにくいとされたが、その意向の有無にかかわらず「同

業種事業者」は連携を考えたい相手としている。 • 「商業以外の産業・機能との連携」に前向きな個店は、「学校(小・中・高校)」(11%)や「異

業種事業者」(8%)、「大学・専門学校・研究機関」(8%)、「高齢者関連団体」(8%)などを

相手先とし、意向のない個店でも「異業種事業者」(13%)、「高齢者関連団体」(7%)や「製造・

生産者(ものづくり、農業など)」(6%)などとの連携に関心を示している。 • 同業種事業者との連携は「勉強会・交流会」(35%)や「顧客共有・顧客サービス」(32%)、異

業種事業者との連携は「顧客共有・顧客サービス」(40%)、小中学校との連携は「地域貢献イベ

ント」(40%)や「情報発信(広報・宣伝・メディア活用等)」、大学等との連携は「人材登用・

活用」(36%)、高齢者関連団体との連携は「地域貢献イベント」(40%)や「顧客共有・顧客サ

ービス」(30%)などが挙げられている。

③商業集積の魅力化・機能強化に向けて(平成 20 年度・個店調査、消費者調査、商店街調査より)

■地域住民の来街を促進し、買物客のにぎわいを創出することが求められている

• 個店はまち(商業集積)が①「地域住民の来街促進」(43%)、②「買物客のにぎわい創出」(35%)、

③「歩きやすさ確保」(27%)、④「景観・雰囲気改善」(24%)などを図ることで、自店の経営

に好影響があると考えている。なかでも大師周辺では「地域住民の来街促進」が 51%と高く、足

元商圏からの顧客発掘が期待されている。 • 地区別の特徴として、川崎駅東口周辺では「景観・雰囲気改善」(29%)や「クリーンアップ」(28%)、

「まちイメージのブランド化」(26%)、川崎駅西口周辺では「認知度の向上」(33%)を必要と

している。溝口駅周辺では「歩きやすさ確保」(29%)や「駐輪場の充実」(28%)などが上位で、

元住吉駅周辺でも「駐輪場の充実」が 44%と、歩行者と自転車等の共存が求められている。新百

合丘駅周辺では「駐車場の充実」(33%)のほか、「認知度の向上」(29%)や「まちイメージの

ブランド化」(27%)といったソフト戦略を求めている。夢見ヶ崎周辺や大師周辺では「駐車場

の充実」(25%)など自動車アクセス性の向上を求める声が強い。大師周辺では「景観・雰囲気

の改善」(31%)、「観光機能の強化」(22%)や「高齢者支援」(20%)などが課題とされている。

■地域商店街では、食品類を中心とした業種の改善・充実等が求められている

• 生活者が身近な商店街を利用しない理由(利用する上で不満足な点)は、①「品揃えが少ない」

(34%)、②「店舗数が少ない」(28%)、③「欲しい業種がない」(19%)である。また、商店街

が考える“内部環境の課題”としても、「業種構成・バランス」や「店舗(業種・機能)の充実」

が上位に挙げられ、商店街の機能改善が大きな課題と認識されている。 • 改善・充実を図るべき業種は、消費者・個店・商店街のいずれの調査でも第一位が「生鮮食品」

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である。消費者調査では「生鮮食品」(68%)に次いで「惣菜・弁当・加工食品」(43%)、「パン・

菓子類」(39%)、「喫茶・飲食」(39%)の順。商店街側の回答も同様の品目が上位に挙げられ、

食品・飲食関係の業種充実の必要性が共通認識されている。

■組織運営の充実を図り、商店街の魅力を創り出していくことが必要

• 商店街では、「若手人材の育成、組織運営への登用」や「個性や特徴のある商店街としての魅力

を創出」、「地域住民の特性・ニーズを踏まえた個店経営を促進」などが重要とされ、組織的に取

り組むべきとする個店と、実施意向のある商店街とが多く、共通認識化された課題である。 • 個店自身が他者と連携する考えは、「市民団体や NPO などとの相互協力」(21%)、「商業以外の

産業・機能(学校等)との連携」(28%)など3割に満たないが、これらは商店街等の組織的な

取り組みとして考えるべきとの意向がある。 • 商店街において「廃業等に際し、その事業や業種機能の継承を促進」すること(個店の 43%)、

「商店街に必要な新たな業種の立地を促進」すること(個店の 61%)など、自らが立地するまち

の機能の改善・維持を図るべきとの意向が強いが、商店街側ではそれぞれ 20%、31%程度にと

どまり、これらを組織的な取り組みとして考えるにはハードルが高い様子がうかがえる。

■商店街同士の連携や個店による他者との連携は、「地域貢献」からがスタートしやすい

• まち(商業集積)の魅力化・機能充実等に向けて、商店街が近隣の商店会等との連携の必要性を

感じている取り組みは、①「地域貢献、交流」(37%)、②「販促イベント・プロモーション」(16%)、

③「売り出しセール」及び「買物回遊の促進」(各 15%)などである。 • また、個店が他者との協力を考えていけることは、第一位が商店街の回答と同様に「地域貢献、

交流」で 32%、次いで「顧客共有・顧客サービス」(24%)のような経営直結の取り組み、「環

境美化・清掃」(24%)といったまちのアメニティ、「販促イベント・プロモーション」(24%)

や「情報発信(広報・宣伝・メディア活用)」(23%)といったまちのブランド化・PR 面での取

り組みが挙げられている。

2.社会経済環境の変化に伴う商業の状況等

(1)高齢化等の進展

川崎は人口増加率が高く、今後も増加傾向はしばらく続く見込みだが、地域によっては人口減少・少子高齢化

が表れ、それに伴う課題も生じていることから、地域商業としても地域の実情に応じた適切な対応を図ることが

必要である。特に人口が高密度に集積し、住宅・商業が近接して立地する川崎は、高齢者や育児世代などにとっ

ても住みよい環境であることから、地域の特性などを踏まえ、その生活を支える商店街の存在が重要である。

①地域によって異なる人口減少・高齢化

• 全国的には少子・高齢化、人口減少社会であるが、川崎は今後も人口増加が続くと予想され、若

い世代が多いなど、地方都市に比べて恵まれた環境にある。しかしながら、市内でも地域によっ

ては人口減少や高齢化が進んでいるところも存在する。今後も高齢化は確実に進展することから、

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後背地等での人口動向に留意し、地域の実情に応じたきめ細かな対応を図っていく必要がある。 • 地域の人口が減少している商店街では、新たな機能の付加などによって潜在顧客を掘り起こし、

地元の商店街利用率を高めたり、新しい需要を自ら創出したりすることなどが必要となる。場合

によっては対象顧客層を見直し、機能・役割など商店街のあり方を再検討することも必要となる。

②少子化を踏まえたビジネスの視点

• 少子化の原因のひとつとされる晩婚化・晩産化が進んでいるなか、川崎市では婚姻率が 22 年連

続、出生率が 17 年連続して大都市の中で も高い状況(平成 18 年時点)にあるものの、少子化

の進展も確実であり、そういったトレンドを商業(ビジネス)に取り込んだ視点が必要となる。 • 20 代後半~30 代を中心とする夫の育児時間の増加(平成 17 年版国民生活白書)、男性の育児休

暇の取得の促進、NPO による「子育てパパ力検定」など、父親の育児参加機会や関心が高まっ

ているのも、少子化社会のひとつの動きとして捉えられる。 • 子どものいる世帯では「子ども中心に外出先を決める」ことや、自分のためより「子どものため

の消費」の方が多いといった傾向がある。特に主婦を中心とする集客を図るためには、子育て層

のニーズ・ウォンツを満たし、快適・便利に過ごせる環境づくりや店づくりを行う必要がある。

③高齢化への対応

• 地域の生活者は商店街の「高齢化対応」への期待が大きく、特に年配層を中心に商店街が「高齢

者などの生活を支える場になること」を地域での役割として求めている。また、高齢化社会にお

ける商店街の重要性が認識され、消費者調査でも非常に多くの人が「商店街は高齢化社会におい

て不可欠だと思う」との考えを示している。 • 「育児世代対応」や「高齢者世代対応」に取り組む個店はあまり多くはないが、生活者の期待の大

きさなどから、より多くの個店で積極的な「高齢者世代対応」などが必要と考えられる。 • 高齢化対応などは関係団体等と連携して進めることが効果的だが、個店・商店街とも「商業以外の

産業・機能との連携」をあまり考えていない様子であり、課題の重要性を認識した上で、組織的な

取り組みとして「高齢者関連団体」等との連携を図っていくことが求められる。

(2)ライフスタイルの多様化

川崎は、市民の入れ替わりがあることや、様々な産業立地による通勤・就業人口が多いことなど、多様な人々

によって高度化・複雑化した価値観のマーケットが形成されている。また、東京・横浜と隣接する立地条件や東

京を中心に形成される鉄道等の交通網などによって、生活者の購買行動も多様である。そのような市場特性や競

合の存在などを踏まえて、川崎の商業は地域の魅力を高め、活かしながら、個店の魅力とまち(商業集積)の魅

力を高めていくことが必要である。

生活者の地元購買率は高まりつつあるが、品目や地域によっては機会損失があったり、新たな商業集積や購買

ツールなどで購買行動がより変化・多様化したりもしている。地域の生活者の意向や行動特性を十分踏まえ、付

加価値の高い個店経営を促進するとともに、商店街の品揃え・店舗数の充実、業種不足の解消など、“したい買

物”が“できる環境”をつくり、強化していく必要がある。

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①地域の「ひと」に着目した経営

• 川崎市では年間 10 万人単位での市民の入れ替わりが起きているという特性があり、現在商売の

対象としている個人が、数年後には同じような客層でもまったく異なる個人であるということも

あり得る。個人のライフスタイルや価値観の変化・多様化と同様に、川崎は「人」自体に多様性

のあるマーケットであることを留意する必要がある。 • 川崎の昼夜間人口比率、通勤・通学者の流出超過によって低下し続けている(平成 17 年国勢調

査で 87.1)が、川崎区は昼間人口が夜間人口を上回っており、また平成 17 年には昼間人口の増

加率が夜間人口の増加率を上回っている区も多い。個店調査では、「勤め人」を主な顧客層とす

る個店が 55%で、昼間人口を意識した経営も多いと考えられる。このような昼間人口が大きなマ

ーケットを形成している地域もあり、昼間人口・ビジネス需要も視野に入れた商売・商店街運営

が重要となるところもある。

②生活者の価値観、買物の仕方

• 消費者調査では、「家庭」、「健康」、「食」、「国産」、「余暇」などが生活の中で関心のあるテーマ

として挙がっている。男性の場合は年配層を中心に「地域、コミュニティ」の回答も上位に入り、

女性は 50 歳以上の層で「文化・芸術」の回答割合が高く、65 歳未満の各層で「美容・ケア・フ

ァッション」や「環境・エコ、ロハス」などに関心が高い様子である。このようなテーマを切り

口として商業と生活者との接点を深めていくことも重要と考えられる。 • 「何かの用事で外出した際に、ついでに買物や飲食をする」、「帰り道で近所の店に立ち寄る」と

いった傾向が女性に多く見られ、また男性・女性ともに「いくつかを比較して買うことが多い」

というように、“ついで買い”や“比較購買”の特徴がある。生活者の行動特性を踏まえてビジ

ネスチャンスを拡げていくためには、「店の魅力」と「まちの魅力」の双方を向上させることが

不可欠であり、関心のあるテーマに基づいた店づくり、個店同士の連携によるまちとしての魅力

の充実、“比較購買”を可能とする買物回遊性の高いまちづくりなどが重要となる。

③買物場所の特徴・変化

• 平成 20 年度・消費者調査の結果を平成 16 年度の購買スタイル実態調査と比較すると、市内での

商業施設の充実等もあって幸区を中心に地元購買率は高まっているが、主に北部の区では買回品

などでの市外流出割合が高めの状況も見られている。 川崎区ではいずれも7割以上が市内購買

市内で購入する割合は、生鮮食品:94%、衣料品・服飾品:79%、贈答品・プレゼント:75%、外食(夕食):78%、理

美容:79%

幸区では市内購買率が向上

衣料品・服飾品:77%、贈答品・プレゼント品:66%、夕食(外食):72%など、平成 16 年度調査に比べて市内購買

率が 10 ポイント以上増加

中原区では買回品の市内購買率が5割を下回る

生鮮食品(85%)をはじめ夕食(外食)や理美容は市内が利用されるが、衣料品・服飾品は 47%、贈答品・プレゼン

ト品が 38%で、これらは東京・横浜への出向割合が高め

高津区では贈答品の市内購買率が5割を下回る

贈答品・プレゼント品の市内購買率が 45%であるほかは各品目で5割を超える。市外流出は東京の割合が高い

宮前区では市内で購入する割合が低い

物販では生鮮食品の市内購買率が 67%で も高い。いずれも横浜への流出割合が高く、衣料品・服飾品や贈答

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品・プレゼント品は東京の選択も

多摩区では贈答品の市内購買率が5割を下回る

贈答品・プレゼント品の市内購買率が 49%であるほかは各品目で5割を超え、高津区と同様の傾向が見られる。

市外流出は横浜より東京が多い

麻生区では市内購買率が向上

いずれの品目も平成 16 年度調査より市内購買率が高まっており、生鮮食品で 82%、衣料品・服飾品や外食(夕

食)で5割を超える。贈答品・プレゼント品をはじめ、東京方面への出向割合が高め

④地域商店街の利用状況

• 生活者が身近な商店街を利用する割合は、全体として「よく利用する」と「ときどき利用する」

を合わせて7割である。中原区では特に利用率が高く、「よく利用する」が 73%にのぼり、「とき

どき利用する」と合わせて 90%となっている。また、「大型店と商店街は買う物や状況で使い分

ける」といった傾向も見られ、サービスや食品購入などで商店街を利用することがあるなど、両

者の共存・棲み分けがなされている状況も感じられる。 • 身近な商店街を利用する理由としては、「行きやすい」が も多く、そのほか、「地元を大切にし

たい」、「ポイントを貯めている」、「お気に入りの店がある」ことなどが挙げられている。 • 商店街を利用しない理由には、「品揃えが少ない」、「店舗数が少ない」、「欲しい業種がない」、な

どの指摘があり、自分たちの“したい買物ができない”といった不足感が生じている。また、「割

高感がある」ことや「センスが合わない」といった商品価値の弱さなども指摘され、全く利用し

ない層からは「商店街の雰囲気が悪い」と商店街に馴染めず敬遠する意見も挙げられている。

⑤インターネットなど情報ツールの活用

• 川崎市民の間では、この5年程度の間にインターネット通販の利用が増加しており、全体の 22%が増加としている。多摩区では 30%、宮前区では 29%が5年前より増加したと回答。また、カ

タログ通販・TV ショッピングの増加は全体では 13%程度だが、高津区では 24%である。 • 特にインターネットを中心とした情報ツールは、このような買物手段としてだけではなく、生活

全般に係る情報の窓口となっている。平成 16 年度の調査では、男性の 30%が買物情報・タウン

情報などでのパソコンのインターネットを利用するとされ、その後の普及やサイト・コンテンツ

の充実を考えれば、その割合は確実に大きくなっていると思われる。 • 女性の 63%がチラシを参考にして買物することがあるとし、同じく 54%がタウン誌、51%がク

チコミから情報を得ている。折り込みチラシや情報誌などの紙媒体もいまだ効果を発揮している

と考えられるが、特に女性消費者を中心としたクチコミ媒体は強く、これにインターネットが介

在することで、情報ネットワークは格段に広がっているものと想定される。

(3)環境問題の意識化

環境を意識したライフスタイルが浸透しつつあるなか、生活者は商店街等に“率先した取り組み”を期待して

おり、環境対策に前向きな個店・商店街も存在する。多摩川や生田緑地といった豊かな自然環境と共生する川崎

では、環境問題への取り組みをより加速させ、持続可能な都市づくりを強化することが重要である。そのため地

域商業は自ら“率先した取り組み”を心がけるとともに、ビジネスとしての可能性も視野に入れて消費・購買行

動を通じた環境対策を促進したり、環境問題への意識づけを強めたりしていくことが必要である。

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①環境対策とビジネスの両立

• 「かわさき市民アンケート調査」(川崎市総務局)によると、市民の 91%が「地球温暖化の進行」

を実感し、81%が「地球温暖化防止」について意識しているほど、環境問題は市民の身近な問題

として定着している。地球温暖化防止のために日常生活では、家庭内での配慮のほか、「できる

だけ徒歩、自転車、公共交通機関を使って移動するようにしている」、「マイバッグ等を持参し、

レジ袋の削減に努めている」などの心がけもなされている。 • 市では「川崎市地球温暖化対策地域推進計画」を策定し、市民、事業者、学校、行政による「か

わさき地球温暖化対策推進協議会」を組織化して温暖化対策に取り組んでいる。温暖化防止は「環

境」と「経済」、すなわち環境対策とビジネスの両立が重要となる。

②地域商店街における環境問題への率先した取り組み

• ファッション性とビジネス性の双方を兼ね備えた形でエコバッグの普及なども進んでいるが、市

内では平成7年から元住吉のブレーメン通り商店街で買物袋持参運動が始まっており、マイバッ

グの持参やレジ袋の辞退などは、市民の間でも浸透した行動となっている。 • 「かわさき市民アンケート調査」では「ポイント等の優遇を受けられる場合にはマイバッグを持

参する」という回答も得られており、ポイント優遇等の仕組みによって、環境対策と商店街利用

促進とを合わせて進めるなど、環境をキーワードとしたビジネスチャンスも広がってくる。 • 川崎商業の個店も「環境問題等の社会的課題への対応」に前向きなところが多く、現状で「環境

問題・エコ対策に取り組んでいる」個店が 48%、今後の推進意向を持つ個店も 47%である。ま

た商店街における「環境問題などへの率先した取り組み」は、商業者の想像以上に、消費者から

の期待が高い様子であり、家庭や学校と連携して地球温暖化防止に向けた啓発・教育の場を担う

ことも、商店街の役割として重要と考えられる。

(4)安全・安心ニーズの高まり

暮らしの「安全・安心」が重視されるなか、商店街に対する期待も高まっている。安全性の高い大都市として

の川崎の優位性を伸ばしていくために、地域の防犯・防災などの面での商店街の機能発揮が求められ、また都市

型農業の盛んな地域特性を踏まえて、「食」の面での安心を提供する地域商業のあり方が重要になる。そのため、

直売所や関係団体等との連携によって回遊性を創出したり、食文化の創造にも資する付加価値の高い商品・サー

ビスを開発したりするなど、生活者のニーズに応え、魅力ある商店街づくりを促進することが必要である。

①暮らしの安全を守る商店街

• 川崎市は交通事故発生件数、交通事故死傷者数が大都市のなかで も少ない、刑法犯認知件数が

3番目に少ないなど、安全性の高い大都市であるとの特徴を持っている。そのなかで商店街は生

活者との日常的な接点として、暮らしの安全を提供しながら商売を展開することが重要である。 • 商店街は自ら地域を守るという意識が高く、「防犯などの点で地域の暮らしの安全を守ること」

を役割と自認(51%)しており、消費者側も 36%がその役割を期待している。また「平日の夜

間は遠回りでも商店街など明るくにぎやかな道を通りたい」という意向を持つ人が 68%(特に女

性は 81%)あり、「平日の夜間(19~23 時頃)」に買物する人も多い(22%)ことなどから、夜

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間のにぎわい創出、安全の提供などは、商機にもつながり得るものと考えられる。 • また、人口密度が高く、昼間人口も多い川崎では、日ごろから防災拠点性を高めたり、災害発生

時には減災への取り組みや、帰宅困難者に対応を図ったりするなどの、防災面から見た商店街の

役割の発揮も期待される。特に「商品やサービスを通じて日常の安心感を与えること」が役割で

あると考える消費者が 46%にのぼることも踏まえ、商店街側における重要性の認識をいっそう高

めることが必要である。

②「食の安心」と結び付いた事業展開

• 「食品購入の際、安全・安心・健康などを気にする」人が 73%いたり、年齢層が高まるにつれて

スローフード、スローライフ的な志向が高まったりしており、特に食の安全・安心の観点からは、

経済的な効果の波及などにも期待して、地産地消の取り組みを活発化していくことが期待される。 • 川崎市は野菜・果実・花卉など付加価値の高い農産物を生産する都市型農業も盛んであり、特に

「なし」の生産は県内2位で、多摩川梨として農産物ブランドを確立している。また、農家と市

民のふれあい・交流の場として、川崎市や農家の設置する市民農園・体験型農園が開設され、農

業体験の講習会、農業イベント等が開催されている。 • 生活者の 75%が「川崎の農産物」を認知し、61%の人が地場農産品に「安全・安心」を感じて

いるのも大きな特徴である。麻生区黒川の大型農産物直売所「ファーマーズマーケット・セレサ

モス」も人気(オープン4ヶ月でレジ通過者数 10 万人突破)で、「国産・日本製」に関心のある

人は4割強にのぼり、また、若い世代を中心に「食生活・グルメ」や「環境・エコ、ロハス」、

女性層を中心に「健康増進」や「アンチエイジング」といったキーワードに関心が見られるなど、

「食」や「国産」への関心の高まりをビジネスチャンスと捉えた展開が期待される。 • 地域農業等とタイアップした商業振興策は、都市づくりや消費生活の充実化等の面で相乗効果が

期待されるものの、連携相手として“製造・生産者(ものづくり、農業など)”を選択する割合

は個店5%、商店街8%程度にとどまっており、商店街と地域資源の連携によって生活者(消費

者)の関心テーマを捉えた商売の展開を促進することが必要と考えられる。 • 都市化の進展、市街化の圧力等による農地・都市型農業の減少が懸念されるが、防災・緑地・公

園等としての都市機能維持のためにも、貴重な地域資源としての適切な活用を通じた保全を図る

ことが重要であり、商店街振興とも結び付いた取り組みが期待される。

(5)国際化の進展

川崎には世界的な企業が立地しており、また多様な観光魅力を備えた神奈川には多くの外国人が訪れる。羽田

空港の再拡張・国際化によって世界とのつながりが一層深まり、訪日外客の増加が見込まれるなか、神奈川口を

介した川崎の国際的な交流の拡大も大きく期待されるところである。また川崎には歴史・文化・イベント・映像

産業・スポーツ・音楽など、多様な外国人のニーズにも応え得る地域資源を有している。

グローバル化していく社会において、川崎の魅力を高め、都市としての存在感を高めていくためには、これら

の地域特性を活かし、都市のブランドを構築していくことが重要であり、資源を活かして集客を促進したり、商

店街自体が観光魅力を発揮したりすること、また、外国人や観光客など多様な交流人口に対応をした商業を考え

ていくことが必要である。

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①交流の拡大と都市づくり

• 「訪日外客実態調査」(JNTO)によると平成 18 年度の訪日外客数は、都道府県別では東京・大

阪・京都に次いで神奈川県が第4位である。訪日外客のうち目的が「観光のみ」の人が全体の 43%、

また観光客の訪日動機は「ショッピング」が第1位(35%)、第2位が「伝統文化、歴史的施設」

(32%)で、訪問地別では新宿・大阪市・京都市・銀座・渋谷など、都市の繁華街も上位にラン

クされている。川崎には、神社仏閣、歴史、文化、ショッピング、国内 大級といわれるカワサ

キハロウィン等の話題性など、これらの外国人観光客にも対応し得るシーズが潜在・顕在してい

ることから、こういった訪日外客を誘引する可能性も高く存していると言える。 • 川崎市では平成 16 年よりシティセールスを強化しており、世界に向けて川崎の存在感をアピー

ルするためには、高質な都市機能を備えた都市づくり、認知度の向上と都市イメージの確立、都

市・地域のブランド価値の構築等が重要となる。また、交流人口 1800 万人(50%増)を目指し

て「かわさき観光振興プラン」が策定され、観光振興に努めているところである。 • 川崎が都市観光地としてのポジションを高めていく上でも、観光の楽しみのひとつとして、地域

に根ざした食文化の創造が不可欠と考えられ、地場の食材の活用、地域の特色を活かした調理法、

ご当地グルメ開発、グルメスポット創出等を通じて、農業・農産物の高付加価値化と活用、重要

な観光資源としての「食」を育んでいくことが必要である。 • 特に、市民の間では「川崎市のおみやげ」が“ない”と評されており、そのテーマとしてふさわ

しいものに、「川崎大師」、「農産物(多摩川梨、禅寺丸柿、宮前メロン等)」、「多摩川」、「サッカ

ー(川崎フロンターレ)」、「岡本太郎」、「緑地(生田、等々力)」の順に挙げられている。

②多様な文化が共存するコミュニティ

• 平成 20 年の川崎市の外国人登録人口は 31,555 人で5年前より 21%増加しており、実数では川

崎区役所管内が も多く、増加率も高い(増加率は向丘地区、川崎区役所管内、麻生区役所管内

の順)。このような多様な文化やライフスタイルが共存するコミュニティを形成している川崎で

の国際化の一層の進展を背景として、商店街等における外国人対応の充実が求められる。

(6)地域間商業競争の高まり

地域間での商業競争が熾烈さを増すなか、まちづくりの視点を持った商業振興が求められ、市内では川崎駅周

辺や小杉駅周辺において組織的・機動的なまちづくりが進んでいる。今後はこういった地域マネジメントの動き

を活かしながら、また、豊富な人的資源や意識の高い商業者の熱意なども活用して、地域と一体となってまちや

商店街の魅力を高め、持続可能な地域社会を形成していくこととなる。そのためには地域の多様な主体が参画し、

連携しあって地域の課題を解決する力を強めることが重要であり、その担い手として既存の商店会などが主体的

な役割を果たすことも期待されることから、組織力を一層強化していくことが必要である。

①エリアマネジメントの取り組み

• 様々な商業地・商業施設等がひしめき合う首都圏の一角にある川崎では、地域間での商業競争が

いっそう熾烈なものとなっていることから、商業振興も今一度まちづくりの視点から見つめ直し、

地域の個性・特性を踏まえ、組織的・機動的に活動できる仕組みを整えて、より効率的な取り組

みを展開することが重要となる。

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• すでに川崎市内では川崎駅周辺におけるタウンマネジメント機関(TMO)や、NPO法人小杉駅

周辺エリアマネジメントなどが組織化され、再開発などによる都市拠点性の高まりと連動して活

動を繰り広げているところである。

②持続可能な地域社会を支える商店街づくり

• 地域商業の競争力を高めるためには、そのベースとして、立地する地域との関係性を強化してい

くことが重要となる。その意味から、「地域の生活を支える事業経営を心がけている」個店が多

いこと、「地域住民の特性やニーズを踏まえた個店経営」が重要視され、今後の推進意向を持つ

個店が多いことなど、商業者の意識の高さをうかがうことができる。 • 今後の商店街・商業振興の取り組みにおいては、川崎の特徴であるボリュームゾーン(働き盛り

の世代及び団塊の世代)などの外部人材も積極的に活用して(商店街づくりや地域社会のなかに

取り込んで)いく視点が重要である。 • 特に川崎区・幸区・麻生区では「団塊の世代」の割合が高く、彼らの持つ経験・技術・ノウハウ

等をまちづくりに活かして、地域の魅力化、コミュニティの充実を図っていくことが期待される。

男性(50 歳以上の層)や 65 歳以上の女性は、日常生活の上でも「地域、コミュニティ」への関

心が高いことから、「心の豊かさ」を求める人々に夢のあるセカンドライフ(新たな活躍の場)

を地域として提供していくことも重要である。 • 働き盛りの若い世代は就業等のため余暇時間を取りにくく、「団塊の世代」等はこれまでの“会

社勤め”から生活が一変する人々であることから、地域社会での取り込み・活用のためには、“地

域に入る”(地域への帰属意識を持つ、地縁コミュニティに溶け込む、ヨコ社会に馴染む等)た

めの「きかっけ」づくりも課題となり、その第一歩に商店街が関与していくことが望まれる。

③まちの魅力化

• 地域商業にとって、まちの条件が良いほど個店経営にも好調感が見られ、また生活者の間では「魅

力ある商店街は住環境の価値を高める」、「商店街がないと不便になって困る」、「商店街はより良

い地域生活を送る上で不可欠」との考えが持たれている。地域やまちは商業振興にも豊かな地域

生活にも必要な存立基盤であり、双方にメリットをもたらす魅力あるまちづくりが必要となる。

④地域の力を強化するコミュニティビジネス

• 身の回りにおいて解決すべき地域課題としては「保健・医療・福祉」、「子育て支援」、「環境」、「地

域安全活動」などが存在しているが、市場や行政では解決できない地域の課題を計画的・安定的

に解決し、ビジネスとしての活動利益をコミュニティに還元(地域活性化の循環を創出)する「コ

ミュニティビジネス」に期待がかかる。 • コミュニティビジネスの活動の舞台として商店街の資源(遊休施設等)の活用を考えていくこと

で、商店街側にもコミュニティビジネス側にも互いにメリットのある関係を構築できる可能性が

あるが、商店街調査では「コミュニティビジネス等の立地を促進」することや「市民団体や NPOなどとの相互協力」について、商店街として取り組みの重要性はさほど感じられていない。しか

しながら、「商店街は地域の防犯・安全に貢献している」という生活者の評価、また「もっと生

活支援機能が充実すると良い」という意向、新たなビジネスや商業振興が雇用創出、起業創出な

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どの課題にも対応する点なども踏まえて、今後の商店街の機能やあり方を検討する必要がある。

⑤地域運営主体のひとつとしての商店会

• 商業振興や地域まちづくりを進める上で重要となるエリアマネジメントなどの考え方は、組織的

活動を活発化させるという点で、既存の商店会などにも主体的役割が期待される。 • 現在の商店会の活動の柱は「親睦・交流」が中心(47%)で、3割は「地域との交流の促進」に

も注力しているが、「あまり目立った活動はない」といった意見もある。組織を担う人材面で問

題が生じており、商店街内部における高齢化の進行(「個店の高齢化」66%、「役員の高齢化等」

54%)などが組織的活動の円滑な運営・活動を阻害していると見られる。 • また、課題は見えていても、具体的対策を講じられなかったり、活動が形骸化したりしているな

ど低迷している様子もあり、活性化に向けた取り組みに対して「中心メンバー以外は熱心ではな

い」が 41%、「全体的に意欲が低い」が 31%といった状況からも、取り組みに対する温度差を解

消し、組織力を強化していくことが課題となる。

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3.川崎商業の動向・社会経済環境の変化に伴う商業の状況等のまとめ

川崎商業の状況から商業振興の“機会”や“強み”、対応を図るべき課題は、次のように整理され

る。

機会・強み

川 崎 商 業 の

動向等

区別、集積別の地域資源を活かした商業活性化

立地条件等による不調感を解消する、魅力ある高密度

な集積の形成、住民の来街・核を活かした回遊の促

進、個店の強化、事業連携

業種構成の見直しと、個店の魅力アップ、事業(機能)

の維持、後継者問題の解決、商店街の分野特化や個

性化等の促進

商店会等の組織力低下に対応した人材の育成・登用、

多様な主体との連携構築

年間商品販売額の増加、幸区における商業の拡大

婦人・子供服、各種商品、医薬品・化粧品、その他小売

業の増加傾向

再開発等による集積強化・立地向上(都市基盤整備、

高い話題性等)

個店の変革意向が強い

生活者(消費者)側の意向に近い考えを持つ商業者も

多い(まちづくり、商店街のあり方等)

「地域貢献」などに関する高い意識

課 題

人口減少、高齢化など、地域ごとの特性・特徴を踏まえ

た適切な対応による商業振興策の実行

近い将来に迫る少子高齢化社会への備え、高齢者等

の生活を支える商店街の形成

社会的なトレンドを踏まえたビジネスによる育児世代対

応や高齢者世代対応等の一層の促進

人口増加率が高く、今後もしばらく増加傾向が継続

若く、働き盛りの世代が多い人口構成

人口密度が高く、住商機能がコンパクトにまとまってい

る(“歩いて暮らせるまち”)

高齢社会における商店街の役割・必要性等が住民間で

認識されている

高度化・複雑化する価値観や購買行動など市場特性や

競合を踏まえた、優位性の確立、店と街の魅力の向上

“したい買物”が“できる環境”の形成(品揃え、店舗数、

業種不足等の解消)、付加価値の高い事業経営による

魅力強化

情報ツールの多様化への対応

市民の入れ替わりもある多彩な人口構成、様々な産業

立地による通勤・就業等の昼間人口(マーケットの多様

性)

比較購買の傾向、高まりつつある地元購買率

地域商店街の利用(大型店と使い分ける傾向)

リアルとバーチャル(出向と通販利用の増加)

ファッション・スタイルと連動した環境対策による消費者

の行動意欲の刺激、個店の意識化と商店街全体として

の機会の活用・効果的取り組みの促進

買物時の普及・啓発、教育の場など商店街への期待

環境を意識したライフスタイルの浸透、環境対策に前向

きな個店・商店街の存在、「率先した取り組み」を期待す

る住民意向などビジネスチャンスの拡大

○多摩川・生田緑地など豊かな自然と共生する都市空間

地域資源としての「農」を活用した付加価値の高い事業

展開(直売所等と連携した回遊性や食文化の創造等)

食生活の充実、地域の防犯など日常的に安全・安心を

提供する商売、災害等にも備える商店街づくり

「安全・安心」に対する地域商店街への高い期待

地元の「農」や「国産」などへの市民ニーズの高まり

安全性の高い大都市としての暮らしやすさ(生活の場と

しての優位性)

グローバル社会における都市の存在感の発揮に向け

たシティセールスとの連動、産業・研究、芸術・文化、ホ

ームタウンスポーツ等を活かした都市ブランドの構築

地域資源を活かした集客促進、商店街の新たな観光資

源化、観光客・外国人対応等による交流人口の拡大

外国人の増加、多様な文化の共存する地域社会

訪日外客の神奈川訪問、羽田空港再拡張・国際化、世

界的企業の拠点など、交流グローバル化への期待

多様な外国人ニーズにも応え得るシーズの存在(歴

史、文化、イベント、映像、スポーツ、音楽等)

エリアマネジメントの取り組みの進捗(かわさきTMO、小

杉駅周辺のNPOなど)

個店における“地域生活を支える意識”の高さ

人材(第2次ベビーブーム世代や団塊の世代)、大学

(学生)、NPOなどの豊富な人的資源

分析の 視点

多様な主体との連携による地域の課題解決、雇用創

出、起業促進、人材活躍の場の提供など持続可能な地

域社会の形成

街や店の高付加価値化、マネジメント手法によるブラン

ド力強化、人材面での課題解消による担い手としての

商店街組織力の強化

社会経済環境の変化に伴う商業の状況等

高 齢 化 の

進展

ライフスタ

イ ル の 多

様化

環 境 問 題

の意識化

安全・安心

ニ ー ズ の

高まり

国 際 化 の

進展

地 域 間 商

業 競 争 の

高まり