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地方創生とSDGs-ニセコ町の“自ら考え、行動する”自治創生の現場から-
環境省大臣官房環境計画課
課長補佐 金井 信宏技術士(環境部門)
ニセコ町 地方創生コンシェルジュ
平 成 3 0 年 2 月 1 3 日UNCRD一般公開セミナー「 地 域 で 進 め る S D G s 」
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報告者の基本スタンス
派遣者は、地方創生のスキルやノウハウを地
域に残すための支援に重点化すべきである
まちづくりの主体は市民。「まちづくりは行政が
やるもの」という固定観念から脱却する
地方創生のスキルやノウハウを、行政だけに限
らず、市民に受け止めてもらう
地域への誇りや愛着を持った市民を発掘・育
成し、輪を広げることが、地域の自立につなが
る
出所:「未来につなげる地方創生」
(日経BP社)(p.34)
「町民主体による自治創生の実践」
(北海道ニセコ町)
【地方創生人材支援制度】(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、内閣府地方創生推進室)
地方創生に積極的に取り組む市町村(原則人口5万人以下)に対し、意欲と能力のある国家
公務員や大学研究者、民間人材を、市町村長の補佐役として派遣する。
【人口】 (2015年国勢調査)
・総人口: 4,958人※ うち外国人住民143人
※ 2.8%増加(2010年比)
※ 道内で人口増加した8市町(増加率順):
東神楽町、東川町、ニセコ町、千歳市、札幌市、幕別町、帯広市、恵庭市
・世帯: 2,274世帯・高齢化率: 27.2%【産業】
・基幹産業: 農業、観光業・特産品: じゃがいも、米、乳製品等・観光客数: 167万人(2016年度)
・外国人延宿泊数: 20万人泊(2016年度)
【まちづくり】
・全国初「まちづくり基本条例」(町民主体のまちづくり)・環境モデル都市・ニセコルール(パウダースノー)、ニセコ観光圏
ニセコ
札幌
新千歳空港
倶知安
小樽
新千歳空港 ⇔ ニセコ車で約2時間 約100kmJRで平常時約3時間30分(札幌・小樽乗換)
札幌市 ⇔ ニセコ車で約2時間15分 約105km (中山峠経由)JRで平常時2時間30分(直通)
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北海道ニセコ町
● スキー場外へ出るときはゲートから→ 総数11か所(5スキー場で)
● ゲートの開閉と安全啓発→ 雪崩の危険があるときはゲートを封鎖
(“ニセコなだれ情報”、各スキー場の情報により
各スキー場が開閉を判断)
→ 安全啓発
(コミュニケーションによる情報提供、
雪崩情報の掲示、ビーコンチェッカーの配置等)
ルールの運用
【ニセコアンヌプリ地区なだれ事故防止対策協議会】
倶知安町、ニセコ町、日本ハーモニーリゾート(株)、
(株)東急リゾートサービス、ニセコビレッジ、
ニセコアンヌプリ国際スキー場、
ニセコモイワスキーリゾート、ニセコ雪崩調査所
【ニセコスキー場安全利用対策連絡協議会】
(関係機関と安全情報を共有(年1回開催))
左記協議会参加団体、警察、北海道、蘭越町、
後志森林管理署(国有林)、消防、自衛隊
推進体制
ニセコルール “ロープをくぐってはならない” 世界有数のパウダースノーを満喫しようとする利用者の自由と安全のため、スキー場のロープやゲートの開閉に関して定められた “ニセコルール”こそ、パウダースノーを求める国内外の観光客を呼び寄せ、ニセコエリアを世界的なスキーリゾートに成長させた原動力。
“ニセコルール”は、利用者の自由を尊重し、地域はその安全に重大な関心を持つ。地域関係者が連携してその英知を結集し、十数年にわたって主体的に運営し続けている。
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【地下水保全条例】地下水の大量取水を規制し、
地下水の枯渇・地盤沈下等を防止※罰則(罰金)規定あり
【水道水源保護条例】水道水源保護地域内への建物等の設置を規制
※罰則(懲役又は罰金)規定あり
【景観条例】要件(高さ・面積・用途等)を満たす開発事業を行おうとする事業者は、
町との事前協議が必要
【準都市計画】建ぺい率・容積率等の規定の他、
建築物の形態意匠や高さ等に制限あり
特定用途制限地域では建てられない用途の建築物・工作物あり
“環境創造都市ニセコ”
ニセコエリアの経済(観光・農業)の基盤である豊かな自然環境が失われないよう、ニセコ町は、危機感を持って、罰則まで規定した実効的な景観・環境保全と開発規制の仕組みを整備。
厳しい景観保全・開発規制の仕組みで乱開発を規制し、町の環境保全の考え方に共感した投資を呼び込み、活かすことが、ニセコ町の価値を高め、豊かな自然環境を未来につなぐ。
ニセコ町の景観・環境保全と開発規制の考え方
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さまざまな地域の課題や解決策を
話し合う場・仕組みをつくる
住民自身により公共を担う
町民の主体的な活動が始まる
テーマごとの
住民活動が連携する
まちづくりの担い手を
町内外から確保する
地域の課題を解決する
ソーシャルビジネスが生まれ、定着する
「ニセコ町まちづくり基本条例」が定めている
“情報共有”と“住民参加”がさらに進む
住民自治活動と行政の連携「住民みんながまちを考え、活動する」地域社会
【ソーシャルビジネス】地域社会の課題解決に向けて、住民、NPO、企業など、様々な主体が協力しながら、ビジネスの手法を活用して取り組むこと。
活動するほど
身銭を切ってしまう 活動を続けるための
人材が足りない
地域金融機関等の
プロがバックアップ
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ニセコ町は、国の地方創生を、まちづくり基本条例に基づき実践してきた“住民自治活動と行政の連携”(=行政に頼らない)と同一と捉えている。
域外から稼ぐ【地域資源の活用】
域内循環の強化【地元企業の育成】
親世代の確保【社会増+自然増】
出生率の向上【自然増】
地方創生は「人口減少の抑制」だけの戦略ではない。人口減少とともに域内の需要が縮小するため、「需要の創出」との両輪から、地域経営として考えていく必要がある。
「人口減少の抑制」と「需要の創出」を進めるには、すでに行政だけでは限界を迎えている。地域のために実際に企画・実践できる地域人材(=地域の主体性)こそが、地方創生の原動力。
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需要の創出
人口減少の抑制
地域の主体性
住民自治【まちづくりへの住民参加】
産官学金労言士【関係機関との相乗効果】
金:金融機関 言:言論界労:労働団体 士:士業
地域経済分析に基づく客観性・戦略性
これからの地域づくり -“自治創生”の歯車-
“5つのP”の一つに「連帯」(パートナーシップ)
ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう
“誰一人取り残さない”
SDGsのアプローチには、地方創生の思想が包含されている。
ゴールとターゲットは、不可分かつ統合的
分野横断的なアプローチ
経済、社会、環境の統合による相乗効果
持続可能な開発(将来の世代の欲求を満たしつ
つ、現在の世代の欲求も満足させる開発)
ゴール11:住み続けられるまちづくりを 等
住民自治(自律、当事者意識)
産官学金労言士(多様なステークホルダー)
官民協働
事業推進主体の形成(行政任せの限界)
地域間連携(自治体を跨がる相乗効果)
一億総活躍社会
働き方改革
“まち・ひと・しごと創生”
地方創生推進交付金(政策間連携)
消滅可能性都市(福祉、インフラ等の維持)
人口減少社会の克服
定義は「地方の平均所得を上げること」
地域の自立
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SDGs地方創生
For Discussion
バックキャスティング
人口ビジョン(将来人口推計・地域への影響・将
来目標等)
あるべき地域の将来像の議論・共有
地域における第五次環境基本計画※の考え方の実践-環境政策を通して、地域を元気に-
地域には、再生可能エネルギー等に活用可能な自然資本等、
豊かな地域資源を持つ強みがある。
地域こそ、環境政策を通して、環境面の課題だけでなく、経済
・社会的課題を同時に解決する“実践の場”。
自然資本等の地域資源をどのように有効利用し、地域課題の
解決につなげるかがカギ。
SDGsの考え方も活用しながら、地域関係者とのパートナーシッ
プを構築することが重要。
地域レベルで顕在化・深刻化している課題は、様々な政策分野を
横断した複合性を有する場合が多く、バランスのとれた解決に腐心。
課題
強み
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※第五次環境基本計画の検討状況は、中央環境審議会総合政策部会の配付資料を参照http://www.env.go.jp/council/02policy/yoshi02.html
■地方自治体の取組の方向性
1つの環境政策で複数の側面の利益を生み出す“マルチベネフィット”の考え方を、まちづくりの計画(総合計画やまち・ひと・しごと創生法に基づく地方版総合戦略等)に導入する。
多種多様な「地域循環共生圏」※の形成に取り組む。
※都市と農産漁村の各域内やその間での自然的・経済的ネットワークにより、地域資源を補完しあう自立・分散型の社会の仕組み
SDGsは、地域課題の同時解決やマルチベネフィットの政策アイデアを見出すのみならず、持続可能な地域社会の姿(=あるべき将来像)を描き、あらゆるステークホルダーの参画(パートナーシップ)を促すツールとして活用する。
■地域課題の複合化
● 人口減少社会への対応(地方創生)
● 福祉、教育・子育て環境の維持・向上
● 自然環境の保全と持続可能な利用
● 平均所得・労働生産性の向上
● 地場産業の活性化
● 社会インフラの老朽化対策
● 域外への資金流出防止(財・サービスの域内調達等)
● まちの機能のコンパクト化
● 拡大する自然災害への対応
● 人材確保 等
環境政策による同時解決の実践例
(宮城県東松島市)
地域新電力を設立し、太陽光発電による電力を、災害公営住宅、病院、公共施設に供給。
再生可能エネルギー導入による低炭素化と同時に、防災(レジリエンス)を強化し、雇用を創出。事業収益は復興支援事業にも還元。
スマート防災エコタウン
第五次環境基本計画における“環境政策による同時解決”等の考え方については、地域の実践例から地域レベルのアプローチに落とし込む方法を学び、地域レベルの実践を全国的に積み重ねていくことこそ重要。
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For Discussion地域における第五次環境基本計画の考え方の実践(イメージ)
例:地域における地球温暖化対策の意義
○ 地球温暖化対策の推進に当たっては、経済活性化、雇用創出、地域が抱える問題の解決にもつながるよう、地域資源、技術革新、創意工夫をいかし、環境、経済、社会の統合的な向上に資するような施策の推進を図ることとしています。
○ 区域施策編の策定に当たっても温室効果ガスの排出抑制等だけでなく、区域の特徴や区域の目指す将来像を前提として、地球温暖化対策と同時に追求しうる便益「コベネフィット」をも含めて評価・検討を行い、地域における地球温暖化対策を意義づけていくことが重要です。
基本的な考え方
低炭素型の都市・地域づくりの推進
気候変動に対する適応策の推進
(防災・減災を含む)
再生可能エネルギーの
導入拡大及び省エネルギーの推進
魅力あふれる区域の実現
●日常生活のリスク低減・高断熱住宅によるヒートショックの防止・地域内エネルギー自給率の向上
●地方公共団体の財政力向上・コンパクトシティ化によるインフラ維持コストの削減、行政効率の向上
●生活の質の向上・健康福祉・高断熱住宅による健康・快適性の向上
●地域環境の改善・豊かな水と緑のある憩いの空間の確保・自然を活かした街の魅力の向上・緑地や廃熱利用によるヒートアイランド現象の緩和、熱中症の予防・公共交通機関利用に伴う自動車交通量減少による大気環境の改善
●地域環境の保全・生物多様性の保全・良好な景観の保全
●日常生活のリスク低減・災害時の避難場所(緑地)の確保・洪水やゲリラ豪雨への対応・再生可能エネルギー等による非常用電源の確保
●地域経済への波及・地域の資源を活用した再生可能エネルギー利用による地域内経済循環の促進
●生活の質の向上・健康福祉・公共交通の充実及び維持による移動時間の短縮、移動機会の増加・コンパクトシティ化(歩いて暮らせるまちづくり)による健康の増進
●地域経済への波及・光熱費に係る域外支出削減・公共交通利用による地域経済への波及効果・コンパクトシティ化による中心市街地の活性化及び不動産価値の向上
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小規模自治体は、人口減少や高齢化等の地域課題が、都市部よりも早く顕
在化・深刻化してきた、課題先進地。
一方、再生可能エネルギーをはじめとした豊かな地域資源を持つ強みがある。地
域資源をどのように有効利用し、地域課題の解決につなげるかがカギ。
小規模自治体は、環境政策を通した課題解決の先進地となるポテンシャルがあ
るとも捉えられる。地域レベルで環境政策を通して地域課題を克服する方法を見
出せば、 “小規模自治体から学ぶ”のが地域づくりのトレンドになり、 “国>大都
市>農山漁村”のヒエラルキーは逆向きになる。
国の制度は、地域レベルの積み重ねの後からついてくる。地域レベルの多様なニ
ーズや実践のボトムアップには、真に地域課題の解決につながり、国全体を動かす
力がある。(※現状に風穴を開けられるコーディネーターの存在がカギ)
国を変えるには、地域から。
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For Discussion