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- 基礎編 -
AMED研究者のための教育プログラム
医学系研究におけるCOI管理のあり方・進め方
本教材は日本医療開発機構(AMED)研究公正高度 化モデル開発支援事業で作成したものです
ver2.1
1
はじめに
従前より、医学研究を実施する研究者は、研究の信頼性確保、研究対象者を保護するために、自らの利益相反への適切な対応が求められて参りました。また、2017年3月に成立した臨床研究法では、利益相反管理が義務化されたことで、医学研究に取り組む研究者には、これまで以上に利益相反への適切な対応が求められている状況にあります。本研究では、医学研究に取り組む研究者が、利益相反管理についての正しい知識、理解を得るためのe-learning教材を作成致しました。本編はその中の「基礎編 公的研究費を用いた医学系研究におけるCOI管理のあり方・進め方」を、紹介しています。この教材が、我が国の医学研究者の利益相反管理を行う際一助になりましたら幸いです。
2017年1月~2019年3月
日本医療開発機構 研究公正高度化モデル開発支援事業
研究開発課題名 『利益相反管理に関する理解と知識の充実を目指した教育プログラムの開発と普及』
研究代表者 国立大学法人 東京医科歯科大学 教授 飯田香緒里
2
はじめに
• 本教材は、二部構成です。各章の最後にクイズがあります。• クイズは正解しないと次に進むことができません。• 全ての学習が完了したら、修了証が発行されます。
学習内容が表示され、画面右側に解説が表示されます。音声を聞きながら学習を進めてください。
1 2 3
45
本教材の構成
学習の方法 ‐学習ページ‐
① 音声を進めたり戻したりすることができます。② 音声ボリュームをコントロールすることができます。③ 早い音声で聞くことができます。④ 解説の文字のサイズを変更することができます。⑤ 表示されているページの学習が完了したら、【次へ進む】
をクリックして進んでください。前のページに戻ることもできます。
※本教材の対応方法はあくまで一例であり、場面に応じて所属機関の委員会指示に従って対応して下さい。
正解しないと次の問題に進むことができません
正解しないと次の問題に進むことができません
第1章の学習COIとは?
第1章クイズ3問
第2章の学習COI管理とは?
第2章クイズ3問
修了証発行
標準学習時間
(速聞き)
15分(13分)
5分(4分)
15分(13分)
8分(7分)
3
第2章のクイズ
はじめに
第1章のクイズ
1
2
① 設問を読んで正しい選択肢を選んでください。② 「解答」バーをクリックしてください。③ 正誤判定が表示されます。④ 間違った場合は、「再解答」バーをクリックしてください。⑤ 正解したら、「次へ進む」で進んでください。
• 第2章のクイズには、設問ページの前に状況説明のページ、後に解説ページがある設問もあります。
• 解説ページへは設問に正解しないと進むことができません。
3
4
5
学習の方法 ‐クイズページ‐
4
はじめに
① 発行ページで大学名、氏名を入力してください。② 発行ボタンを押してください。③ 修了証が表示されるので、印刷するなどしてお持ちください。
修了証の発行
全ての学習が終了すると、修了証を発行することができます。
修了証発行
修了証を発行します。氏名を以下に入力してください。
修了証発行
1
2
氏名
大学
3
5
- 基礎編 -
第1章 COIとは?
AMED研究者のための教育プログラム
-基礎編-公的研究費を用いた医学系研究における
COI管理のあり方・進め方
6
本教材の目的
近年の研究形態
ベンチャー起業産学連携
想定されるリスク
研究の公平性研究対象者の利益
企業等からの経済的利益
企業等との間に発生するCOI(Conflict of Interest/利益相反)への適切な対応
医学系研究者に求められること
医学系研究の近年の潮流
※本教材における『企業等』には、民間企業および財団法人など、公的機関を除くあらゆる機関が含まれます。 7
第1章の目次
第1章 COI (利益相反) とは?
COIとは?
COIに対する指摘
COIへの対応
まとめ
確認クイズ
8
COI(Conflict of Interest)利益相反
COIとは? (1/5) - 一般的なCOIの定義
外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断(公の利益)が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。
定 義
9
委託先選定の公正性確保が必要
あなた(研究代表者)
AMED厚労省 等
研究資金
抗体作成の委託先 企業A
ケース 2
あなたと企業Aの関係企業Aの役員 あなた(企業Aの役員)
COIとは? (2/5) - 公的研究プロジェクトを想定したケーススタディ
■公的研究資金を用いたゲノム研究において、抗体作成を企業等に再委託するケース
研究資金の配分を受理スムーズに研究開始
あなた(研究代表者)
AMED厚労省 等
研究資金
抗体作成の委託先企業A
ケース 1
あなたと企業Aの関係経済的利益関係なし
10
研究資金の配分を受理スムーズに研究開始
あなた(研究代表者)
AMED厚労省 等
研究資金
抗体作成の委託先企業A
ケース 1
あなたと企業Aの関係経済的利益関係なし
COIとは? (3/5) - 公的研究プロジェクトを想定したケーススタディ
■公的研究資金を用いたゲノム研究において、抗体作成を企業等に再委託するケース
第三者
研究者は研究の推進のために
企業Aを選んでいるな
企業Aは抗体作成の実績(技術力)が
あるから、企業Aに委託しよう 研究活動の推進
公の利益=
11
委託先選定の公正性確保が必要
あなた(研究代表者)
AMED厚労省 等
研究資金
抗体作成の委託先 企業A
ケース 2
あなたと企業Aの関係企業Aの役員 あなた(企業Aの役員)
■公的研究資金を用いたゲノム研究において、抗体作成を企業等に再委託するケース
公の利益と私的な利益との間にCOI(利益相反)が発生⇒委託先選定の公正性を確保するために「適切なCOI管理」が必要
第三者
研究者は企業Aの役員を務めているから、企業Aの業績を上げるために、抗体作成を企業Aに委託
したのだろうか?
企業Aは抗体作成の実績(技術力)が
あるから、企業Aに委託しよう
公の利益
私的な利益
COIとは? (4/5) - 公的研究プロジェクトを想定したケーススタディ
12
COIとは? (5/5) - アカデミア研究者にとってのCOI状態の定義
研究者と企業等との間に経済的利益関係がある状況において、社会や第三者から、研究開発活動の成果である公的な利益(公正かつ適正な判断)が損なわれているように「見られている」または「見られる可能性がある」状態。
アカデミアの研究者にとってのCOI状態
定 義
公の利益
民間の/私的な利益
第三者
この研究者はどっちを向いて研究しているん
だろう
公の利益が損なわれては
いないだろうか
13
COIに対する指摘 (1/4) - COI状態は悪いことなのか?
なぜならば
医学系研究において、産学連携活動は不可欠(例:新薬や医療機器などの臨床開発)
産学連携の現場では、COI状態は「構造的に」発生
COI自体を避けることは、医学系研究の進展を大きく阻害してしまう惧れがあります
COI自体は悪いことではないPOINT
COIを理解する上でのポイント1
14
COIに対する指摘 (1/4) - COI状態は悪いことなのか?
COI状態を放置すると研究の信頼性・客観性や研究対象者の利益の保護が損なわれる可能性がある。
POINT
COIを理解する上でのポイント2
なぜならば
(企業等や研究者個人の利益を重視するあまり・・・)
• 研究の結果やデータ等を、過大評価し、報告・発表する可能性• ネガティブな結果や有害事象等を、過小に評価する、又は時期を遅らせて発表する可能性• 臨床研究において、研究対象者の利益・安全が軽んじられる可能性・・・など
COI状態を放置することは、研究者/研究活動に対して「潜在的なバイアス」をもたらす
15
COIに対する指摘 (2/4) - COI状態が一因となって発生した過去の問題事例
COI状態が引き金となって、実際に公的な利益が損なわれた事例
公的な利益が損なわれているように見えてしまう「疑念」への未対処が問題となった事例
さらに詳しく見る
臨床研究に対して研究費を提供していた製薬企業が、研究データの恣意的な操作を行った結果、研究の客観性・公正性が損なわれ、研究活動そのものに対する社会からの信頼を揺るがしました。
ディオバン事例(日本、2012年~)
さらに詳しく見る
研究者自身や大学の経済的利益を優先させることで研究対象者の利益(安全性)が担保されていない臨床研究が遂行された結果、不幸にも人命が失われました。
ゲルシンガー事件(米国、1999年)
さらに詳しく見る
実際に研究の客観性・公正性や研究対象者の利益が損なわれたわけではないものの、損なわれているのではないかと国民が疑義を抱くような「外観」があるにも関わらず、何ら対処していなかったことが問題となりました。
厚生労働省研究班問題
(日本、2007年)
研究においてCOI状態が発生することは、悪いことではありません。これを放置するのではなく、適切に対応しましょう。
「事例から定められたCOI管理に関する制度指針の全体像」を見る
16
参考)COI管理に関する制度指針の全体像(1/3)
研究者の皆さんは所属されている研究機関のみならず、厚生労働省やAMEDといった公的研究資金の配分組織、研究成果を発表する場である学術組織、さらには数多くの企業等と関わりを持ち、研究活動をしています。
COI管理を考えるにあたって、まず研究者の皆さんが置かれている環境を俯瞰してみましょう。
基本的には、これらの組織のそれぞれが、研究者や研究プロジェクトにおけるCOI状態を把握するとともに、適切な管理を行うことを求められているのです。
研究者
研究資金
研究者を取り巻く様々な組織
厚生労働省AMED
研究資金配分機関
日本学術会議日本医学会その他学会、等
学術組織
大学研究機関病院
所属研究機関
製薬企業医療機器企業、等
企業等
研究の場研究対象者研究資金
学会活動等 共同研究研究者主導研究等
17
参考)COI管理に関する制度指針の全体像(2/3)実際に、医学系研究に関わる各組織が、COI状態が引き金となる問題を未然に防ぐため、COI管理に関する制度指針(ガイドライン)等を公開しています。様々な制度指針が様々な組織から出されていますが、各組織のCOI管理の目的が異なることから、このような形態となっています。
【COI管理に関する制度指針の例】
「研究資金を配分する立場」からのCOI管理
厚生労働科学研究費やAMED研究資金に基づく研究の公正性、信頼性を確保するため、COIを適正に管理することを目的としています。 厚生労働省/「厚生労働科学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針」 AMED/「研究活動における利益相反の管理に関する規則」
「研究機関の立場」からのCOI管理
大学や研究機関、病院における研究の公正性、信頼性を確保するため、COIを適正に管理することを目的としています。 一般社団法人全国医学部長病院長会議/「医系大学・研究機関・病院のCOIマネージメン
トガイドライン」 各大学・研究機関・病院/COI管理指針
「学術組織の立場」からのCOI管理
専門学会、学術集会または医学雑誌における研究成果の公表の公正性、信頼性を確保するため、COIを適正に管理することを目的としています。 日本医学会/「日本医学会 COI管理ガイドライン」 その他学会等/COI管理指針
「企業の立場」から研究機関等との関係の透明性・信頼性を確保するための指針
製薬企業等の活動における研究機関等との関係の透明性を確保し、生じ得るCOIを適正に管理することを目的としています。 日本製薬工業協会/「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」 日本製薬工業協会/「医療用医薬品等を用いた研究者主導臨床研究の支援に関する指針」
企業の活動における医療機関等との関係の透明性及び信頼性を確保し、医療機器産業が、医学・医療工学をはじめとするライフサイエンスの発展に寄与していること及び企業活動は高い倫理性を担保した上で行われていることについて広く理解を得ることを目的としています。 日本医療機器産業連合会/「医療機器業界における医療機関等との透明性ガイドライン」
18
参考)COI管理に関する制度指針の全体像(3/3)
さらに人を対象とする臨床研究については、別途制度指針が定められています。これらの制度指針には、臨床研究における研究対象者の権利保護等と並んで、COIに関する管理の強化を求める内容が記載されています。
【人を対象とする臨床研究において別途定められている制度指針の例】
人を対象とする臨床研究を適切に推進するための指針
人を対象とする臨床研究において、COIを適正に管理し、研究対象者の利益の保護を確保することを目的としています。
世界医学会/「ヘルシンキ宣言」文部科学省・厚生労働省/「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」一般社団法人全国医学部長病院長会議/「研究者主導臨床試験の実施にかかる
ガイドライン」日本学術会議/「臨床研究にかかる利益相反(COI)マネージメントの意義と
透明性確保について」
臨床研究法
2017年4月には「臨床研究法」が成立し、COI管理の強化が進められています。
製薬企業等から資金提供を受けて実施する臨床研究等を「特定臨床研究」と定義し、特定臨床研究を実施する研究機関等に対して、第三者委員会による研究計画の審査及び厚生労働大臣への報告等が義務付けられます。
製薬企業等に対しては、資金提供を行う際の契約締結と、資金提供の情報等の公表が義務付けられます。
19
参考)COI年表
2013「日本医学会 医学研究利益相反マネジメントに関するガイドライン」改訂
2013「日本学術会議 臨床研究に係る利益相反マネジメントの意義と透明性確保について」
2000「ヘルシンキ宣言」(COI 追加)
2003「臨床研究の倫理指針」(COI追加2008)
2008「厚生労働科学研究におけるCOIの管理に関する指針」
2006「臨床研究COIポリシー策定ガイドライン」
2011「製薬協:企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」2011-2012「医学研究COIマネジメント検討班」
(文科省大学等産学官連携自立化促進PG)
2013「全国医学部長・病院長会議COIガイドライン策」発表
2014「国立大学附属病院長会議企業等からの資金提供状況の公表に関するGL」策定予定
2014「製薬協:製薬企業による臨床研究支援の在り方に関する基本的考え方」
2017「臨床研究法」成立
2002「文部科学省利益相反ワーキンググループ報告書」
2016「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」
1990s
2000s
2010s
Stage ⅠCOIインフラ整備
Stage Ⅱ透明性強化
Stage Ⅲマネジメント強化
2017
2007 タミフル研究班問題発生
2004 大学発ベンチャーとCOIに関する報道
2013 ディオバン市販後大規模臨床研究問題発覚
1999 ゲルシンガー事件発生
20
COIに対する指摘(3/4) - 研究活動に対するバイアスに繋がりやすい経済的利益
所属研究機関における活動に伴う、企業等からの経済的利益の形態
企業等
所属研究機関における活動
カネ(受託研究費、奨学寄附金等)
モノ・技術(研究対象の薬剤・機器等)
ヒト(企業からの研究生受入等)
サービス・役務(研究業務補助等)
産学連携活動の一環として…
企業等からの経済的利益 研究へのバイアスがかかるリスク
研究成果の信頼性・公正性が損なわれる
との懸念
研究データ改ざん・不正利用
等の懸念
21
研究者個人としての活動に伴う、企業等からの経済的利益の形態
企業等
研究者個人としての活動
謝金等
企業の株式、新株予約権、出資金
兼業先からの給与報酬
特許・著作権使用に伴うロイヤリティ
研究者の専門的知見へのアクセス等の対価として・・・
企業等からの経済的利益 研究へのバイアスがかかるリスク
研究成果の信頼性・公正性が損なわれる
との懸念
研究データ改ざん・不正利用
等の懸念
COIに対する指摘(4/4) - 研究活動に対するバイアスに繋がりやすい経済的利益
さらに詳しく見る
22
COIへの対応
「研究の信頼性・公正性」「研究対象者の利益の保護」
所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス COI状態の対外的な開示
COI管理1 研究者がCOI状態を適切に申告 研究機関によるチェック及び
アドバイスの実施 アドバイスに基づく適切な対応
学会発表や論文投稿、(臨床研究の場合)研究対象者へのインフォームドコンセントに際して、COI状態を適切に開示
2
研究者自身が高い研究倫理感を持ち、公の利益を強く意識して研究する。研究上のCOI状態を認識した場合、「避ける」のではなく、主体的に「管理する」。
POINT
23
第1章のまとめ
「企業等との経済的利益関係によって、研究開発活動における公正かつ適正な判断が損なわれているのではないか」と第三者から「見られている」または「見られる可能性がある」状態
定 義
COI状態:
産学連携活動等による経済的利益を得る以上、不可避的に発生するものであり、悪いことではない。
バイアス発生が指摘される状況にある。研究者に求められること:
主体的にCOI自体を「管理する」 。公的な利益を優先している姿勢を示す。
それでは第1章の内容を、クイズでおさらいしましょう!
24
第1章 クイズ
25
第1章 クイズ 1
COIとは何か?
アカデミアの研究者にとってのCOI状態の定義として、正しいものはどれでしょうか?
① 研究者と企業等との間の経済的利益関係により、研究活動における公正かつ適正な判断が、実際に損なわれている状態
② 研究者と企業等との間の経済的利益関係により、研究活動における公正かつ適正な判断が、損なわれているように「見られている」または「見られる可能性がある」状態
③ 1.及び2.の両方
解答
26
第1章 クイズ 2
COI状態の潜在的な問題点
COI状態に対する認識として、正しいものはどれでしょうか?
① COI状態は、研究活動に対するバイアスリスクをもたらす可能性があるため、回避しなければならない
② COI状態は、研究活動を進める上で当然に発生するため、無視すれば良い③ COI状態は、研究活動を進める上で当然に発生するが、一方で研究活動に対するバイアスを
もたらす可能性があるため、適切に管理しなければならない
解答
27
第1章 クイズ 3
COI管理という考え方
COI管理の構成要素は、次のどれでしょうか?
① 研究者によるCOI状態の申告、及び研究機関におけるチェック・モニタリングから成る「所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス」
② 学会発表や論文投稿、臨床研究の場合には研究対象者に対するインフォームドコンセントから成る「COI状態の対外的な開示」
③ 1.及び2.の両方
解答
28
第1章 クイズ 1
COIとは何か?
企業等との産学連携活動において、その成果に対してバイアスをもたらし得る経済的利益はどれでしょうか?
① 所属研究機関(研究室)が、当該企業等から産学連携活動の一環としてカネ・ヒト・モノ・技術・サービス/役務を受け入れている
② 研究者個人が、当該企業等から報酬・謝金・特許、著作権使用に伴うロイヤリティ・株式等を受領している
③ 1.及び2.の両方
解答
29
第1章 クイズ 2
COI状態の潜在的な問題点
COI状態に対する認識として、正しいものはどれでしょうか?
① COI状態は、産学連携活動において不可避的に発生するものであり、悪いことではない② COI状態は、研究活動に潜在的なバイアスをもたらし、結果として「研究の信頼性・客観
性」や「研究対象者の利益の保護」が損なわれる可能性がある③ 1.及び2.の両方
解答
30
第1章 クイズ 3
COI管理という考え方
COI管理に対する認識として、正しいものはどれでしょうか?
① COI状態は、所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセスに適切に対応すれば、対外的に開示する必要は無い
② COI状態は、各研究者による自己責任のもと、学会発表や論文投稿、臨床研究の場合は研究対象者へのインフォームドコンセントにおいて、対外的に開示するだけで良い
③ COI状態は、所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス、対外的な開示、またはその双方により、適切に管理する必要がある
解答
31
第1章、お疲れ様でした
第1章、お疲れ様でした。
32
- 基礎編 -
第2章 COI管理とは?
AMED研究者のための教育プログラム
-基礎編-公的研究費を用いた医学系研究における
COI管理のあり方・進め方
33
第2章の目次
第2章 COI (利益相反) 管理とは?
COIマネジメントの流れCOI申告指導、管理措置に対する対応COI開示COI管理において研究者に求められることまとめ確認クイズ
34
COIマネジメントプロセスの流れ
COI管理
所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス
研究者がCOI状態を適切に申告 研究機関によるチェック及びアドバイスの実施
1
COI開示
学会発表や論文投稿、(臨床研究の場合)研究対象者へのインフォームドコンセントに際して、COI状態を適切に開示
2
35
COIマネジメントの流れ① (1/2)
「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメント「研究者個人」に対するCOIマネジメント
所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス
本教材の対象
臨床研究編教材の対象
所属機関における活動についての信頼性を確保するための
マネジメント(定期・随時COI申告等)研究者:原則年1回申告
所属研究機関:助言・指導
研究資金配分機関との契約に基づく研究の信頼性を
確保するためのマネジメント
人を対象とする臨床研究の信頼性を
確保するためのマネジメント
AMED研究及び厚生労働科学研究が対象
36
必要に応じて、研究機関の長から研究者への指導・管理措置実施。(研究機関によっては、権限委譲を受けたCOI委員会が実施)
③ヒアリング・アドバイス
報告
研究者 研究機関の長
研究機関
審査、及び指導、管理措置の検討。
②マネジメントCOI委員会
申告
①COI自己申告書
の提出
④ ②③に基づくCOIの対応
COIマネジメントの流れ① (2/2)- COIマネジメントプロセスの全体像
■AMED/厚生労働科学研究プロジェクトに関するCOI管理プロセスの全体像
AMEDや厚労省の科研費を受給する場合には、COIマネジメントの状況を報告する義務があります。
報告
AMED
公的研究プロジェクトに関するCOIマネジメントは、研究者による「申告」 → 所属研究機関による「マネジメント」研究者による「マネジメント・ヒアリング・アドバイス」の流れで進む、「研究者と所属研究機関との協働作業」です。
POINT
37
公的研究プロジェクトに関連した、企業等の第三者との経済的利益関係が対象(省庁関係等の行政機関やアカデミア組織からの謝金については申告不要)
COI申告の対象範囲
研究者が申告すべき内容を明らかにするためのステップ
申告基準に該当する内容を申告
該当項目が無い場合もその旨を申告
関連する企業等の有無Step1
※配偶者、一親等の親族とは、妻・親・子を含む
企業等
カネ モノ
経済的利益の有無Step2
ヒト、サービス、役務
企業等の社員
※本教材における『企業等』には、民間企業および財団法人など、公的機関を除くあらゆる機関が含まれます。
COIマネジメントの流れ②:COI申告(1/4) -全体像
38
COIマネジメントの流れ②:COI申告(2/4)step1:自己申告
Step1
※実際に申告を行う際には、所属研究機関が設定する基準に従って対応してください。出所:東京医科歯科大学「開示チェックシート」
チェックポイント詳細:
企業等から受け入れた研究費・寄附金等を使用するか?研究に使用する薬剤、機器、機材、試料、物品、施設等を無償またはディスカウントのもと受領するか?役務を無償またはディスカウントのもとで受領するか?本研究に、企業等の在籍者が参加し、その一部を担当するか?
関連する企業等の有無 研究に関連する企業等があるかをcheck!Step1
企業の社員
当該研究は:企業等が製造・販売する製品を対象?企業等からカネ・モノ・役務・ヒトを受け入れる?
39
COIマネジメントの流れ②:COI申告 (3/4) step2:自己申告
Step1 研究に関係のある企業等と申告者自身の個人的経済的利益Step2
※実際に申告を行う際には、所属研究機関が設定する基準に従って対応してください。
研究者個人への経済的利益申告者本人または家族(申告者と生計を同じにする配偶者およびその一親等の親族=親/子)が、当該企業との間に年間合計100万円以上の個人的な利益関係を持つか?申告者本人または家族が当該企業の役員等に就任しているか?申告者本人または家族が当該企業の株式を保有(公開株式:5%以上、未公開株:1株以上、新株予約権:1個以上)、または出資を行っているか?その他、当該企業と利益関係があるか?
出所:東京医科歯科大学「開示チェックシート」
実際のCOI自己申告書のイメージは、こちら をご確認ください。
所属研究機関への経済的利益当該企業からの研究費・寄附金の総額が、年間200万円を超えるか?申告者は、当該企業が提供する寄附講座等に所属しているか?
さらに詳しく見る
※「研究に関係のある企業等」とは、当該企業が設立した財団やNPO法人を含みます。
大学によっては、大学内のCOI委員会への報告は、一定の報告対象基準を設定し、当該基準を超える経済的利益のみ報告を求めているところもあります。(AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則 第5条3項)
40
COIマネジメントの流れ②:COI申告(4/4)申告の流れ
AMEDの場合、契約形態によっても対応方法に少し違いがあります。研究分担者も個別にAMEDと契約をしている場合の対応方法は、こちら をご確認ください。
Step 1‐1(研究代表者)
研究代表者
COI申告
審査・指導・管理措置A大学COI委員会
Step 1‐2 (研究分担者)
研究分担者
COI申告
審査・指導・管理措置
B大学COI委員会
C大学COI委員会
申告はプロジェクト契約締結前に実施所属研究機関への申告→公的機関に報告
POINT
•研究分担者からCOI状態の報告※を受ける
•研究全体のCOIをとりまとめる
Step 2
研究代表者※報告すべき内容は、COIの有無と種類です。収入金額等個人情報を含まないよう配慮してください。具体的には、こちらをご参照ください。
報告
所属機関の事務局を通して公的機関に報告
Step 3
AMED厚労省 等
報告
審査の結果、COI発生の懸念がないと判断された案件については承認となりますが、案件によっては指導管理措置が必要となります。
さらに詳しく見る
41
Step 1‐1(研究代表者)
研究代表者
COI申告
審査・指導・管理措置A大学COI委員会
Step 1‐2 (研究分担者)
COI申告
審査・指導・管理措置 研究分担者
AMEDと直接契約
B大学COI委員会
C大学COI委員会
参考)具体的な申告の流れ(研究分担者も個別にAMEDと契約をしている場合)
所属機関の事務局を通して公的機関に
報告
Step 2
AMED厚労省 等
参考)具体的な申告の流れ(研究分担者も個別にAMEDと契約をしている場合)
報 告
報 告
プロジェクトに係るCOI状態について、(研究代表者を介さずに)研究分担者
から直接、AMEDに報告
審査の結果、COI発生の懸念がないと判断された案件については承認となりますが、案件によっては指導管理措置が必要となります。42
COIマネジメントの流れ③:アドバイス(指導管理措置)の例
5) 研究者から独立した評価者によるモニタリング
モニタリング
例:研究者自身が役員を務め、株式を保有するベンチャー企業に対し、公的研究費を用いた研究において研究の一部を業務委託をする場合
具体的な例は、こちらをご確認ください。
1) 経済的利益関係について、契約を締結する
2) 経済的利益形態の変更等
カネ モノ
例:公的研究費を用いた研究で機器開発の研究を実施していたが、研究費の不足分に研究対象の機器を製造・販売している企業等からの寄附金をあてる場合
具体的な例は、こちらをご確認ください。
ヒト、サービス、役務
3) 研究計画を修正する
4) 研究者の役割変更
例:公的資金を用いて実施する研究について、研究内容と関係のある企業等の研究者が大学に社会人大学院生として所属していて、当該研究に参加する場合
体制
XXリーダー
XX XX XX×
計画
具体的な例は、こちらをご確認ください。具体的な例は、こちらをご確認ください。
例:ベンチャー企業の代表取締役を務めている研究者が、そのベンチャー企業と共同研究を実施する場合
43
参考)アドバイス等がなされる場面と対応(1/4)
経済的利益関係について、契約を締結する
対象機器の製造販売している企業からの寄附金を使用することは、「寄附金をもらっているから良い結果だけを選択するのではないか」と疑われてしまうことが考えられる。
そこで、研究の公正性を確保するためには、研究対象機器等を製造販売する企業からの研究資金の提供については、契約の締結が要請される。
アドバイス例:
カネ モノヒト、サービス、
役務
公的研究費を用いた研究で機器開発の研究を実施していたが、研究費の不足分に研究対象の機器を製造・販売している企業等からの寄附金をあてる。
AMED厚労省 等
研究資金
寄附金
企業Y
研究対象の機器を製造・販売
教授
A大学機器開発の研究を実施
44
参考)アドバイス等がなされる場面と対応(2/4)
経済的利益形態の変更等
代表取締役を務めているベンチャー企業と共同研究を実施することは、「自身が代表取締役を務めるベンチャーの利益を上げるために、良い結果だけを選択するのではないか」と疑われてしまうことが考えられる。
そこで、研究の公正性を確保するためには、ベンチャー企業での立場を技術アドバイザーに変更することが要請される。
アドバイス例:
カネヒト、サービス、
役務
モノ
公的資金を用いて実施する研究の一部を、自らが代表取締役を務めているベンチャー企業と共同研究で実施をする。
ベンチャー企業
研究に参画(研究室主宰)
共同研究
取締役就任AMED
厚労省 等
研究資金
教授
A大学
45
参考)アドバイス等がなされる場面と対応(3/4)
研究計画を修正する / 研究者の役割変更
学生であっても企業の身分を持つ人材が、研究に参加することは、「企業等の業績を上げるために良い成果をだすように研究結果を操作しているのではないか」、と疑われてしまうことが考えられる。
そこで、このような事例では、研究の公正性を確保するために、当該研究者には研究参加を控えてもらう、または研究での役割を限定することが要請される。
アドバイス例:
体制
XXリーダー
XX XX XX×
計画
公的資金を用いて実施する研究について、研究内容と関係のある企業等の研究者が大学に社会人大学院生として所属していて、当該研究に参加する。
企業等
研究内容と関係のある企業等
企業所属の社会人学生
研究を実施
共同研究
社員AMED厚労省 等
研究資金教授
A大学
研究に参加
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参考)アドバイス等がなされる場面と対応(4/4)
研究者から独立した評価者によるモニタリング
委託内容は当該ベンチャー企業にしかできない業務であることは自身及び所属機関にて確認済みだが、自身あるいは所属機関による確認だけでは、「自身が出資したベンチャーの利益を上げるために、業務委託したのではないか」とみられる可能性がある。
そこで、研究の公正性を確保するためには、研究者から独立した評価者によるモニタリングを受けることが要請される。
モニタリング
アドバイス例:
研究者自身が役員を務め、株式を保有するベンチャー企業に対し、公的研究費を用いた研究において研究の一部を業務委託をする。
ベンチャー企業
研究に参画(研究室主宰)
研究の一部を業務委託
設立・取締役就任・株式保有AMED
厚労省 等
研究資金
教授
A大学
47
COIマネジメントプロセスの流れ
COI管理
所属研究機関におけるCOIマネジメントプロセス
研究者がCOI状態を適切に申告 研究機関によるチェック及びアドバイスの実施
1
COI状態の対外的な開示
学会発表や論文投稿、(臨床研究の場合)研究対象者へのインフォームドコンセントに際して、COI状態を適切に開示
2
48
COI開示
【開示における一般的な指針】
開示範囲学会発表または論文投稿が対象とする研究に係るCOI状態のみを開示する
その他の研究に係る/研究者個人に係るCOI状態を開示する必要はない
一般的な開示項目
一般的に、以下に該当する項目を開示す
出所:日本医学会「COI管理ガイドライン」
研究の公平性・信頼性の確保実際に開示を行う際には、所属学会等が定める個別の基準に従って対応してください。
研究発表者本人だけでなく
共同発表者のCOIも開示が必要
研究費・助成金などの総額 奨学(奨励)寄附金などの総額 企業などが提供する寄附講座 旅費、贈答品などの受領
報酬額株式の利益特許使用料講演料原稿料
49
COI開示【開示イメージ】
出所:日本医学会「COI管理ガイドライン」
研究の公平性・信頼性の確保実際に開示を行う際には、所属学会等が定める個別の基準に従って対応してください。
発表者名:東京一郎、京都次郎、大阪三郎、◎福岡四郎(◎代表者)演題発表内容に関連し、発表者らに開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
COI開示発表者名:東京一郎、京都次郎、大阪三郎、◎福岡四郎(◎代表者)
該当する項目が無い場合の開示例
COI開示発表者名:東京一郎、京都次郎、大阪三郎、◎福岡四郎(◎代表者)
演題発表内容に関連し、筆頭および共同発表者が開示すべきCOI関係にある企業などとして、
①顧問:②株保有・利益:③特許使用料:④講演料:⑤原稿料:
(開示例)発表者全員、過去3年間を一括して講演料:A製薬、B製薬原稿料:C製薬奨学寄附金:B製薬、D製薬
↑開示すべき内容が過去3年間にある項目のみ記載
一般的な開示例
⑥受託研究・共同研究費:⑦奨学寄附金:⑧寄附講座所属:⑨贈答品などの報酬:
50
COI管理において研究者に求められること
研究者が徹底すべきは、所属研究機関への「申告」と外部への「開示」!
POINT
研究機関(大学、国研等)
COIマネジメントプロセスへの参加・指導等への対応
学会・学術誌・研究対象者等
申告 開示
研究者
51
第2章のまとめ
研究者に求められること:
COI状態の「申告」と「開示」
それでは第2章の内容を、クイズでおさらいしましょう!
COIマネジメントプロセス:
研究者の「申告」から始まるCOI委員会からの指導には適切に対応学会発表や論文投稿、臨床研究においては研究対象者に対して、COI状態の「開示」が必要
52
第2章 クイズ
53
第2章 クイズ 1
AMED研究費を獲得している研究者は、AMEDに対してCOIに関する報告をすることが求められていますが、当該報告について正しいものを選んでください。
① 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあり、機関の長より指導又は管理措置を受けなかった場合、報告する必要がある
② 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあってもCOI委員会で承認を経ていれば、報告しなくて良い
③ 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがある場合も各機関の定める一定の基準を超えるCOIがない場合でも、報告する必要がある
54
第2章 クイズ 1
機関の長から指導又は管理措置がなかった場合も、報告対象基準を超えるCOIがある場合には、AMEDに報告する必要があります。つまり、「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則」では、各機関の利益相反管理規定にて設定されている一定の基準(報告対象基準)を超える経済的利益関係の利益相反委員会等への報告、利益相反委員会等の審査、利益相反委員会等による指導又は管理措置実施の有無等について、機関の長から各年度の契約終了後、AMEDが定める期日までに、AMEDの定める様式により報告することが定められています。
答え ①AMED研究費を獲得している研究者は、AMEDに対してCOIに関する報告をすることが求められていますが、当該報告について正しいものを選んでください。
① 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあり、機関の長より指導又は管理措置を受けなかった場合、報告する必要がある
② 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあってもCOI委員会で承認を経ていれば、報告しなくて良い
③ 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがある場合も各機関の定める一定の基準を超えるCOIがない場合でも、報告する必要がある
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第2章 クイズ 2
厚生労働科学研究費及びAMED研究費を獲得している研究者が、当該研究に関するCOI管理として求められる対応について、間違っているものを選んでください。
① 実施する公的研究に企業が資金や物品を提供している場合、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
② 実施する公的研究が特定企業の製品と関係する場合、当該企業から個人的利益を獲得している場合には、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
③ 実施する公的研究とは関係ない企業から獲得している個人的利益がある場合には、COI委員会に申告しなければならない。
56
第2章 クイズ 2
答え ③厚生労働科学研究費及びAMED研究費を獲得している研究者が、当該研究に関するCOI管理として求められる対応について、間違っているものを選んでください。
① 実施する公的研究に企業が資金や物品を提供している場合、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
② 実施する公的研究が特定企業の製品と関係する場合、当該企業から個人的利益を獲得している場合には、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
③ 実施する公的研究とは関係ない企業から獲得している個人的利益がある場合には、COI委員会に申告しなければならない。
実施する公的研究と関係のない経済的な利益関係についてはCOI委員会へ申告する必要はありません。理由:厚生労働科学研究費では、「公的研究である厚生労働科学研究」の公正性、信頼性を確保するために、利害関係が想定される企業等とのかかわり(利益相反)について適正に対応することが求められています。AMED研究費では「国費を原資として研究機関等に配分する研究資金等を使用した研究開発」において、当該研究に携わる研究者と利害関係が想定される企業等とのかかわり(利益相反)について透明性を確保し適正に管理すること、が求められています。
※「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(I)」、「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則(第1条)」参照
57
第2章 クイズ 3
C大学
B製薬会社
AMED厚労省 等
研究資金
c教授
研究の実態
A製薬会社
(1)原稿執筆料(年間120万円)
(2)共同研究(別テーマ/年間250万円)
(3)大学院生の受入(当該研究に参加する)
(4)受託研究費(年間500万円)
A製薬会社所属の大学院生z
c教授の所属機関の管理基準は以下とします。企業・団体からの収入(個人収入):年間の合計金額が同一組織から100万円を超える場合産学連携活動にかかる受入れ額:年間の合計受入れ額が同一組織から200万円を超える場合
アルツハイマー病のモデルマウスの開発
※アルツハイマー病のモデルマウスに関連する事業を行っていない
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第2章 クイズ 3
A製薬会社と共同で実施するアルツハイマー病のモデルマウスの開発に関する研究を厚労科研又はAMED研究費を用いて実施する場面において、以下のような利益関係が存在する場合、COI管理対象として間違っているものを選んでください。
① A社から取得した原稿執筆料(年間受入金額120万円)② A社との共同研究費(年間受入金額250万円)③ A社から受け入れている大学院生(当該研究に参加)④ B社から取得している受託研究費(年間受入金額500万円)
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第2章 クイズ 3
答え ④COI管理が求められるのは、本研究プロジェクト(A製薬会社と共同で実施するアルツハイマー病のモデルマウスの開発に関する研究)に関係する企業との経済的利益関係です。この場合はA社が該当しますので、A社からの年間120万円の原稿執筆料、年間250万円の共同研究費の受入れについては、COI管理の対象です。次に、大学院生の受入について、当該大学院生は、A社との本研究プロジェクトに参加することから、学生の立場を利用して本研究プロジェクトの結果にバイアスを生じさせる可能性が考えられるため、COI管理が必要です。B社は、本研究プロジェクトとは関係がないので、B社との関係についてはCOI管理の対象外です。
C大学
B製薬会社
AMED厚労省 等
研究資金
c教授
研究の実態
A製薬会社
(1)原稿執筆料(年間120万円)
(2)共同研究(別テーマ/年間250万円)
(3)大学院生の受入(当該研究に参加する)
(4)受託研究費(年間500万円)
A製薬会社所属の大学院生z
※「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(I、IV3)」、「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則(第1条、Q26、27)」参照
アルツハイマー病のモデルマウスの開発
※アルツハイマー病のモデルマウスに関連する事業を行っていない
※COI管理の対象となるかどうかの金額の基準については、各機関のルールを確認ください。ここでは、「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則」に沿って例を示しています。 60
第2章 クイズ 1
AMED研究費を獲得している研究者は、AMEDに対してCOIに関する報告をすることが求められていますが、当該報告について間違っているものを選んでください。
① 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがない場合には報告しなくてよい② 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあってもCOI委員会で承認を経ていれば、報告
しなくて良い③ 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがある場合、COI委員会の承認を経たとしても、
報告しなければならない
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第2章 クイズ 1
COI委員会で承認を得ていても、AMED へ の 報 告 は 必 要 で す 。AMEDでは、各機関の利益相反管理規定にて設定されている一定の基準を超える経済的利益関係の利益相反委員会等への報告、利益相反委員会等の審査、利益相反委員会等による指導又は管理措置実施の有無等について、機関の長から各年度の契約終了後、機構が定める期日までに、機構の定める様式により報告しなければなりません。
答え ②AMED研究費を獲得している研究者は、AMEDに対してCOIに関する報告をすることが求められていますが、当該報告について間違っているものを選んでください。
① 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがない場合には報告しなくてよい
② 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがあってもCOI委員会で承認を経ていれば、報告しなくて良い
③ 各機関の定める一定の基準を超えるCOIがある場合、COI委員会の承認を経たとしても、報告しなければならない
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第2章 クイズ 2
厚生労働科学研究費及びAMED研究費を獲得している研究者が、当該研究に関するCOI管理として求められる対応について、正しいものを選んでください。
① 実施する公的研究とは関係がないが、現在企業から獲得している研究費がある場合には、COI委員会へCOIとして申告しなければならない。
② 実施する公的研究とは関係ない企業から獲得している個人的利益がある場合には、COI委員会に申告しなければならない。
③ 実施する公的研究が特定企業の製品と関係する場合、当該企業から一定の基準を超える個人的利益を獲得している場合には、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
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第2章 クイズ 2
厚生労働科学研究費では、「公的研究である厚生労働科学研究」の公正性、信頼性を確保するために、利害関係が想定される企業等とのかかわり(利益相反)について適正に対応する必要があること、AMEDでは「国費を原資として研究機関等に配分する研究資金等を使用した研究開発」において、当該研究に携わる研究者と利害関係が想定される企業等とのかかわり(利益相反)について透明性を確保し適正に管理すること、がそれぞれ求められています。よって、実施する公的研究が特定企業の製品と関係する場合、当該企業との一定の基準を超える経済的な利益関係についてCOI委員会へ申告する必要があります。
答え ③厚生労働科学研究費及びAMED研究費を獲得している研究者が、当該研究に関するCOI管理として求められる対応について、正しいものを選んでください。
① 実施する公的研究とは関係がないが、現在企業から獲得している研究費がある場合には、COI委員会へCOIとして申告しなければならない。
② 実施する公的研究とは関係ない企業から獲得している個人的利益がある場合には、COI委員会に申告しなければならない。
③ 実施する公的研究が特定企業の製品と関係する場合、当該企業から一定の基準を超える個人的利益を獲得している場合には、COI委員会へCOIとして申告する必要がある。
※「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(I)」、「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則(第1条)」参照
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第2章 クイズ 3
c教授の所属機関の管理基準は以下とします。企業・団体からの収入(個人収入):年間の合計金額が同一組織から100万円を超える場合産学連携活動にかかる受入れ額:年間の合計受入れ額が同一組織から200万円を超える場合
D大学
NPO法人C
AMED厚労省 等
研究資金
d教授
研究の実態
A製薬会社
(1)原稿執筆料(年間150万円)
(2)奨学寄附金(年間250万円)
(3)奨学寄附金(年間500万円)
財団法人B(A製薬会社が設立)
関係企業
アルツハイマー病のモデルマウスの開発
※アルツハイマー病のモデルマウスに関連する事業を行っていない
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第2章 クイズ 3
A製薬会社と共同で実施するアルツハイマー病のモデルマウスの開発に関する研究を厚労科研又はAMED研究費を用いて実施する場面において、以下のような利益関係が存在する場合、COI管理対象とならないものを選んでください。
① A社から取得した原稿執筆料(年間受入金額が150万円)② A社が設立した財団法人Bから取得した奨学寄附金(年間受入金額が250万円)③ NPO法人Cから取得した奨学寄附金(年間受入金額が500万円)
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第2章 クイズ 3
COI管理が求められるのは、本研究プロジェクト(A製薬会社と共同で実施するアルツハイマー病のモデルマウスの開発に関する研究)に関係する企業との経済的利益関係です。この場合はA社はもちろんですが、A社が設立した財団法人であるB社についても、A社と深い関係にあると社会からみられる可能性があり、本研究プロジェクトに関係する企業に該当します。よって、A社からの年間150万円の原稿執筆料、財団Bからの年間250万円の奨学寄附金について、COI管理の対象となります。 NPO法人C社は、本研究プロジェクトとは関係がないので、C社との関係についてはCOI管理の対象外です。
答え ③
D大学
NPO法人C
AMED厚労省 等
研究資金
d教授
研究の実態
A製薬会社
(1)原稿執筆料(年間150万円)
(2)奨学寄附金(年間250万円)
(3)奨学寄附金(年間500万円)
財団法人B(A製薬会社が設立)
関係企業
アルツハイマー病のモデルマウスの開発
※アルツハイマー病のモデルマウスに関連する事業を行っていない
※「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(I、IV3)」、「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則(第1条、Q26、27)」参照※COI管理の対象となるかどうかの金額の基準については、各機関のルールを確認ください。ここでは、「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」「AMED研究活動における利益相反の管理に関する規則」に沿って例を示しています。 67
お疲れ様でした
お疲れ様でした。
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【日本医療研究開発機構(AMED)研究公正高度化モデル開発支援事業】研究開発課題名:『利益相反管理に関する理解と知識の充実を目指した教育プログラムの開発と普及』研究代表者:国立大学法人東京医科歯科大学 教授 飯田香緒里
国立大学法人東京医科歯科大学医療イノベーション推進センター 教授 小池 竜司生命倫理研究センター 講師 江花 有亮産学連携研究センター 川澄 みゆり、上野 由恵
Corporate Directions, Inc.(米倉 淳一郎、杉本 宗優)EY新日本有限責任監査法人(江戸川 泰路、小寺 雅也)
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