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塗抹検査とは 採取した検体の一部を直接スライドグラス上に塗抹標本を作製し、 無染または染色して、顕微鏡で菌の有無を調べる検査
検査材料の品質が悪いと、感染病巣の状態を反映 したものとはならず、適切な診断や治療に直結しない
D017 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査 蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡、暗視野装置等を 使用 するもの 61点 注: 集菌塗抹法を行った場合には、集菌塗抹法 加算として、32点を所定点数に加算する。
検体の保存
検体は採取直後の新鮮なものを使用する
検査までに時間がかかる場合の保存
・冷蔵保存(4℃)
髄液を除く、ほとんどの検体が対象
尿、便、喀痰、膿汁、胸水、腹水、人工異物など
・ふ卵器内での保存
淋菌や髄膜炎菌を疑う検体
髄液、尿、膣分泌物、尿道分泌物、咽頭など
検体到着時標本 冷蔵24時間後 冷蔵48時間後
グラム染色 (喀痰)
(破壊) (破壊)
採血直後 保存4時間後 保存8時間後 保存12時間後
冷蔵保存
検体保存の影響(好中球の変化)
ギムザ染色 (血液)
検体到着時標本 冷蔵24時間後 冷蔵48時間後 Corynebacterium spp.の増殖?
細菌数の変化:増加 (喀痰)
粘液物質および染色性の変化 (喀痰)
冷蔵24時間後 (粘液物質が染まらない)
検体到着時標本 冷蔵48時間後 (粘液物質が染まらない)
検体の品質評価 (喀痰)
Miller&Jonesの分類
検査に適した喀痰かどうかを肉眼的に観察し 品質管理を行う
分類 略 性状
唾液様検体 M1 唾液、完全な粘液性痰
粘液性痰 M2 粘液性痰の中に膿性痰が少量含まれる
膿性P1痰 P1 膿性痰で膿性部分が1/3以下
膿性P2痰 P2 膿性痰で膿性部分が1/3~2/3
膿性P3痰 P3 膿性痰で膿性部分が2/3以上 M1 P3
白金線(耳)の取り扱い(操作)
1. 白金線を用いる操作
① 集落から塗抹標本を作製する際の釣菌
②分離培地からの集落の釣菌
③各種確認培地への菌の接種
④平板培地の分画部分への純培養
2. 白金耳を用いる操作
①分離培養のための画線塗抹
②液体材料の平板培地への接種
③液体培地からの塗抹標本の作製
④純培養菌の大量採取
同学院微生物検査基本技術講習会テキストより抜粋
白金線(耳)の取り扱い (火炎滅菌)
1) 白金線(耳)を立てて持ち、ニクロム線部分を
バーナーの内炎にいれる
2) ニクロム線部分をそのまま外炎まで引き上げ、
赤くなるまで十分に焼く(火炎滅菌)
3) 柄の部分を火で軽く熱したのち、白金線(耳)を
バーナーから離し冷却する
4) 使用後も白金線(耳)は必ず火炎滅菌を行う
同学院微生物検査基本技術講習会テキストより抜粋
ガス調整ネジ
空気調整ネジ
コック ここを閉めると火が消える
バーナー筒
300℃
500℃
1800℃
1500℃
内炎
外炎
白金線(耳)の冷却方法
1) 空中で振ってさます
・物にはふれないよう注意
2) 滅菌水にいれてさます
3) 分離培地の集落のない部分で冷ます
・選択培地は使用しない
・空中で少し冷まし、余熱を培地で冷却
同学院微生物検査基本技術講習会テキスト改変
塗抹標本作製方法 検体の性状により量を加減し、膿性の強い材料は薄く、透明な材料は厚く塗抹する。塗抹した標本は自然乾燥させた後、固定する。
患者検体 塗抹方法
髄液 白金耳にて1滴滴下し、広げずにそのまま乾燥。 透明な場合には、さらに1滴追加し乾燥させる。
尿 白金耳にて1滴滴下し、広げずにそのまま乾燥。
喀痰 膿性部分を釣り上げ、スライドガラスに薄く引きのばす。
気管洗浄液 大腸洗浄液
遠心後、沈査をスライドガラスに薄く塗抹する。
穿刺液・関節液・胆汁など
白金耳にて1白金耳とり、スライドガラスに薄く塗抹する。
組織 滅菌ピンセットでつまみ、軽くスタンプする。組織が大きい場合には滅菌された外科用はさみなどで切り、割面を軽くスタンプする。
スワブでとられた検体 培地入りのスワブは基本鏡検しないが、必要に応じてスワブ全体をスライドガラスに塗抹する。
CV カテーテルの塗抹標本作製
a. 滅菌したはさみでCVカテーテルを小さく切る。 b. 少量の滅菌生理食塩水を加えて十分にミキシングして カテーテルの内容物を出す。 c.スライドガラスに塗布後メタノールで固定し、グラム染色を 行い 鏡検する。
a b
方法 手順 利点 欠点
Maki 法 カテーテル先端をピンセットでつまみ、培地上で転がして付着させる
操作が簡便 ・グラム染色には不向き
・カテーテル内腔の菌を 検出できない
Cleri 法 液体培地2~10mLにカテーテル先端を入れ、滅菌注射器でカテーテル内腔を刺入口から3回洗浄する
定量培養が可能
・操作が煩雑
・コンタミネーションの機会が多い
Brun-Buisson 法 カテーテル先端を液体培地または滅菌生理食塩水1mLでボルテックスミキサーで1分撹拌する
定量培養が可能
・操作が煩雑
改良Brun-Buisson 法 (細断法)
下記参照
カテーテル内腔の菌を浮遊させやすい
・定量培養ができない
・細断によるコンタミネーションの機会が増える
MEDICAL TECHNOLOGY 2016.Vol.44 No5 P460 引用
塗抹標本の固定 メタノール固定
・生体細胞の核などの内部構造が観察しやすい。
患者検体の標本の固定に適している
方法:
ガスバーナーの炎の中にスライド
グラスの塗抹面を上にしてゆっくり
3回程度通過させる
・加熱しすぎると、菌体の変形, 破壊, 収縮などが起こる ・エアロゾル発生の危険性が高い ・標本は滅菌されていない
火炎固定 菌そのものの標本の固定に適している
方法:
標本にメタノールを満載し約1分程度
たったら捨てて水洗せずに乾かす
グラム染色とは
• グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって紫色や赤色に染め分け、球菌か桿菌かの分類を行う方法。
•名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・クリスチャン・ヨアヒム・グラムによって発明されたことから。
グラム染色の利点 経済的メリット
・不必要な培養検査を省略
・適切な検査法の選択
・有効で安価な抗菌薬の選択
・迅速な適正治療による治療(入院)期間の短縮
迅速な感染症診断と病態把握に有用
不適切な治療による耐性菌出現を予防
・適正なempiric therapy選択に活用
治療効果判定に活用
細菌感染以外の情報を得られることがある
グラム染色の欠点
グラム染色の限界
・菌数が少ないと検出できない
検出限界:≧105/mL
・難染色の細菌がある
・特異性が低い
培養結果と異なることがある
薬剤感受性がわからない
鏡検の解釈に熟練を要する
グラム染色の種類
グラム陽性菌の染色 1%シュウ酸アンモニウム・クリスタル紫液
1%クリスタル紫液 5%炭酸水素ナトリウム液
シュウ酸アンモニウム加ビクトリア青液
グラム陽性菌の媒染 ヨウ素・ヨウ化カリウム液 水酸化ナトリウム加ヨウ素液 20%ピクリン酸・エタノール 分別 95%エタノールまたは
エタノール・アセトン混合液 エタノール・アセトン混合液
後染色 サフラニン液 パイフェル液 サフラニン液またはパイフェル液
利点・欠点 細胞の染まりがよいがエタノール単独では分別に時間がかかる
グラム陽性菌の染色で 1ステップ操作が多い
1ステップ操作が少ないが、標本にムラができやすい
ハッカー変法 バーミー法 フェイバーG法
臨床微生物検査ハンドブック第5版 改訂
染色液
方法
グラム染色手順
1. メタノール固定 約1分
2. クリスタル紫* 約1分
水洗 3. ルゴール(固定) 約1分
水洗 4. エタノール**(脱色) 約30秒
水洗 5. サフラニンまたは パイフェル*** 約30秒
水洗
1. メタノール固定 約1分
2. ビクトリア青 約30秒
水洗 3. ピクリン酸・エタノール 約30秒
水洗 4. サフラニン 約30秒
水洗
ハッカーの変法(バーミー法) フェイバー法
**:粘性の高い検体はアセトン・アルコール
*:バーミー法は重炭酸ナトリウム含有
***:パイフェル液はチールの石炭酸フクシン液を5~10 倍 に希釈したもの。染色性の弱い菌(カンビロバクターや レジオネラなど)に適している
グラム染色標本の観察法
喀痰 好中球多数 (x100) 喀痰 肺炎球菌 (x1000)
鏡検法 1. 接眼レンズ10倍X対物レンズ10倍(x100)で全体を鏡検し、白血球の有無を確認する。 2. 白血球の多い部分を表示したままで、イマージョンオイルを載せ、
対物レンズを100倍(x1000)に替えて、観察する。
検体の品質評価 (喀痰) Gecklerの分類
喀痰の顕微鏡による品質管理
検査に適した喀痰かどうか塗抹標本を100倍で観察する
グループ 好中球 扁平上皮細胞
1 <10 >25 2 10~25 >25 3 >25 >25 4 >25 10~25 5 >25 <10 6 <25 <25
・G1とG2は不適切検体 ・G6は経気管吸引法と好中球減少患者の 場合には適用
G1
G5
喀痰の洗浄法
(1)喀痰から膿性部分と予測される部分を生食10 mL入りスピッツに移す。 (2)振とうして, 残った膿性部分を次の生食10 ml入りスピッツに移す。 (3)これを繰り返し, “生食の濁りがなくなったら”残った膿性部分を塗抹, 培養する。
観察要素と細菌数および表記法 観察要素 1) 喀痰、尿の場合は検査に適した検体か否かの識別(扁平上皮細胞の数) 2) 細菌感染か否かの識別(好中球の有無、多・少、リンパ球の有無、多・少) 3) その他の細胞の識別(マクロファージ、繊毛細胞、異形細胞など) 4) 存在する細菌の識別 5) 好中球に貪食されている細菌の識別 6) 起因微生物の推定
表示 視野
1+ <1/視野
2+ 1~9/視野
3+ 10~25/視野
4+ >25/視野
表示 視野
1+ <1/視野
2+ 1~5/視野
3+ 6~30/視野
4+ >30/視野
グラム染色標本の細胞の量的表示(100倍にて鏡検)
グラム染色標本の細菌の 量的表示(1000倍にて鏡検)
*≧10~40/視野 観察して判定 *≧20~40/視野 観察して判定
臨床微生物検査ハンドブック第5版から引用
爪や皮膚鱗屑を取る 検体をスライドガラスにのせ、 KOH液をのせる ※KOH・パーカーインク法だと 見やすくなる
カバーグラスをかけて観察する。 ※ホットプレートやアルコールランプなどで 温めると角質が溶けて真菌要素が 見やすくなる。
1) 弱拡大(x100)で、コンデンサーおよび絞りを下げて 疑わしい場所をさがす。 2) 強拡大(x200やx400)でピントをずらしながら、 菌要素か確認する。 節状のくびれはあるが、菌糸の太さはほぼ均一である。 境界は鮮明で、ねじれて見えることはない。
【観察法】
足皮膚のKOHパーカーインキ染色
(Trichophyton rubrum)
x400
KOH直接鏡検法(皮膚隣屑)