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1
MTシステムの諸問題と改良手法
早稲田大学 創造理工学部 経営システム工学科
永田 靖
1/84印のページは配布資料に追記・修正しています.
異常判定予 測
MTシステム
MT法 MTA法 その他
RT法 T法
タグチ流 多変量解析法
タグチメソッド(品質工学)の主要な柱のひとつ
田口玄一博士が開発
全体的な解説:品質工学会(2007),立林・手島・長谷川(2008)
本稿:MT法,MTA法,RT法,T法の性質・注意点を述べ,改良手法を示す.報告者らの研究を中心に紹介.
その他:TS法,マルチ法,誤圧など
2/84
3
1.はじめに
MT法・・・マハラノビス・タグチ法
No. 良・不良 x1 x2 ・・・ xp
1 良 x11 x12 ・・・ x1p
2 良 x21 x22 ・・・ x2p
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
n 良 xn1 xn2 ・・・ xnp
1 不良 y11 y12 ・・・ y1p
2 不良 y21 y22 ・・・ y2p
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
m 不良 ym1 ym2 ・・・ ymp
表1.1 データの形式 1. データの形式は判別分析
2. 良品は1つの群をなす
3. 不良品は1つの群をなさない
(例)自動販売機の貨幣認識
正貨は1つの群
偽造貨幣はいろいろなタイプ
判別分析ではなく,MT法
3/84
4
MT法(マハラノビス・タグチ法)のステップ
1. 良品で1つの群(母集団)を想定する(単位空間と呼ぶ)
2. 単位空間のデータからマハラノビスの距離を算出する
3. 不良品のデータを2で算出したマハラノビスの距離に代入して,変数を選択する
4. 良・不良を判定するためのデータをマハラノビスの距離に代入して判定する
4/84
5
MT法 vs 判別分析・管理図
MT法 判別分析 多変量管理図
良品で1つの群(母集団)を想定する(単位空間と呼ぶ)
2群を想定 正常群を想定
単位空間のデータからマハラノビスの距離を算出する
2群のデータから算出
MT法と同じ
不良品のデータより変数選択 2群のデータから変数選択
通常,変数選択しない
予測する(判定する) 判別する 判定する
5/84
6
・統計学を学んだ者にとっては,MT法の原型は統計学の枠組みにおける自然な発想という印象.
・統計学と一線を画していた人々へMTシステムが急速に普及していったことにも興味がある(観察研究の必要性,田口博士の影響力,手法の簡便さ).
・一方,MT法に関連して田口博士が追加していった新たなアイディアや考え方(総じて,MTシステムと呼ぶ)には興味がある.
・MTシステムが普及している現在,その方法論の妥当性を検討しておきたい.
6/84
2. MT法
2.1 MT法と判別分析
判別分析・・・2つの群を想定する.
MT法・・・1つの群(単位空間)を想定する.
田口先生のMT法の着想のきっかけ:
良品群・不良品群といっても,良品群は1つの群をなすが,不良品群は群をなすとは考えにくいなら,MT法を用いる.
「幸福な家庭は互いにすべて似かよったものであり,不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」 (トルストイ『アンナ・カレーニナ』)
MTシステム
MT法 MTA法 その他
RT法 T法
7/84
8
判別分析の考え方
母集団[2]
母集団[1]
),( 1 N
),( 2
N
第1母集団 [1]
第2母集団 [2]
)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ
21
22]2[
11
12]1[
xxD
xxDT
T
)ˆˆ(21 2]2[2]1[ DDz
線形判別関数
は第1母集団
は第2母集団
xzxz
00
8/84
9
単位空間
×
マハラノビスの距離
MT法判別分析
母集団1
母集団2×
×
MT法が有効なデータパターン
不良のデータ
図2.1
図2.2 9/84
10
2.2 MT法における予測バイアスの問題
(宮川・永田(2003))
),(,...,, 21 Nxxx n ~
),...,2,1()ˆ(ˆ)ˆ(ˆ 112 nizRzxxD iTii
Tii
)()( 12 xxD T
)(22 pD ~
p 次元正規分布
pDVpDE 2)(,)( 22
:棄却限界値pap 2
真値
10/84
1ˆ
ˆ1ˆ
2*
22*
i
ii
D
Dp
D
『単位空間』の名称由来
11
n p E(D02) bias
100100100100100100
103050709095
11.544.6
105.2252.51136.33198.3
1.514.655.2
182.51046.33103.3
)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ0
10
20
xxD T
),(0
Nx ~
2)1()ˆ( 2
0
pn
npDE
pDEpn )ˆ( 20なら
表2.1
推定量
n>>pでないなら,バイアス調整が必要
11/84
12
3. MTA法(マハラノビス・タグチ・アジョイント法)
(田口(2002))
1
1 1 2 2 ... 0,p p i
Rn p
a x a x a x a
多重共線性: が存在しない
(1)サンプル数より変数の個数が多い( )
(2)変数間に線形関係がある
( 少なくとも2つの 0)
zRz
xxDT
T
1
12 )ˆ(ˆ)ˆ(ˆ
MTシステム
MT法 MTA法 その他
RT法 T法
12/84
13
zRz
xxDT
T
1
12 )ˆ(ˆ)ˆ(ˆ
R-1 を R の余因子行列で置き換える
zRzD TA
~ˆ 2
の行列要素が:余因子行列
の余因子をと表すとき,行列の行列式を
次の列を取り除いた行,第から第余因子:行列
ji
ijijijji
ij
RjiR
rRpjiR
),(~)()1(
)1(
13/84
12/32/12/312/3
2/12/31
)1.3(
R
例
03 321 zzz
単位空間では
)20|| RrankRR (の逆行列は存在しない
41)1(
41
12/32/31
1111
1111 R
43)1(
43
12/32/12/3
2112
2121 R
3.1 MTA法の特徴 (宮川(2003),宮川・永田(2003))
14/84
15
131333
131
41~R
2321
2 )3(41~ˆ zzzzRzD T
A
ない.なら判定の尺度になら単位空間外で★
.なら判定の尺度になる単位空間外で★
単位空間では
0ˆ0ˆ
0ˆ
2
2
2
A
A
A
D
D
D
03 321 zzz
単位空間では
15/84
16
次の単位行列)は( pIIRRR pp||~
11 ||~ RRRR が存在するなら
zRzRzRzD TTA
12 ||~ˆ
一方,
16/84
17
115.05.0115.05.05.05.0115.05.011
3.2
R
)(例
0,0 4321 zzzz単位空間では
)20|| RrankRR (の逆行列は存在しない
0)1(0115.0115.05.05.01
1111
1111 R
0)1(0115.0115.05.05.01
2112
2121 R
17/84
18
0~ˆ 2 zRzD TA
.MTA法は機能しない
つと)(線形)関係が成り立(変数間に2つ以上の
ちるとのランクが2つ以上落
0~ˆ0~ 2 zRzDR
R
TA
0000000000000000
~R
18/84
19
212
1
ˆ||||~ˆ DRzRzRzRzD
RTT
A
が存在するとき:(1)
まとめ) MTA法の本質(
能しない.となってMTA法は機 常に,
ちるとき:のランクが2つ以上落(3)
0ˆ 2 AD
R
は無効 ・・・ ②単位空間外:
は有効 ・・・ ①単位空間外:
単位空間内:
線形関係式単位空間での変数間の
ちるとき:のランクが1つだけ落(2)
22
22
2
22
ˆ0ˆ
ˆ0ˆ0ˆ
)(ˆ
AA
AA
A
A
DD
DD
D
aD
R
19/84
田口博士:
「分散がゼロの変数に着目しなさい.」
「単位空間外で変動するなら有効な変数」
20
3.2 MTA法の改良手法 (宮川・永田(2003))
Tppp
TT wwwwwwR ...222111
スペクトル分解:
有ベクトルに対応する長さ1の固
:固有値
ii
p
w
:
...21
Tpp
p
TT wwwwwwR
R
1...11
222
111
1
1
が存在するなら
20/84
21
が線形関係式の係数の固有ベクトル
が1つ成立 変数間に線形関係式
)ちる(のランクが1つだけ落
pp
p
w
R
0
T
T
T
w
w
w
51,
53,
51,0
21,0,
21,
21
103,
102,
103,
25
33
22
11
12/32/1
2/312/32/12/31
)3.3(
R
例
03 321 zzz
単位空間では
21/84
22
が線形関係式の係数の固有ベクトル
個成立が 変数間に線形関係式
)個落ちる(のランクが
pqq
pqq
qp
qpR
,...,,)(
0...)(
21
21
115.05.0115.05.05.05.0115.05.011
3.4
R
)(例
0,0 4321 zzzz単位空間では
T
T
T
T
w
w
w
w
21
,2
1,0,0,0
0,0,2
1,
21
,0
5.0,5.0,5.0,5.0,1
5.0,5.0,5.0,5.0,3
44
33
22
11
22/84
23
削除するTppp
Tqqq
Tqqq
T
pqq
pqq
wwwwwwwwR
cccc
......
0...
...,,,
111111
21
21
とみなす.
を設定閾値
222
21
2)2(
2)1(
...ˆ
ˆ
pT
qT
qT
T
wzwzwzD
zRzD
第2種の距離の2乗:
第1種の距離の2乗:
Tqq
q
T wwwwR
1...1
111
23/84
24
2
1,0,2
1
21
02
1
12
103,
102,
103
103
102103
52
TT wwwwR 222
111
113.33.5)(
に基づいて例例
zRzD T 2
)1(
28322232432
223228
251
24/84
25
2321
23
2)2( )3(
51)( zzzwzD T
)3(5
1
51
53
51
,, 3213213 zzzzzzwz T
03 321 zzz
単位空間では
25/84
26
TT wwwwR 222
111
113.43.6)(
に基づいて例例
115.05.0115.05.0
5.05.0115.05.011
31
5.0,5.0,5.0,5.0
5.05.0
5.05.0
115.0,5.0,5.0,5.0
5.05.05.05.0
31
zRzD T 2
)1( 26/84
27
243
221
24
23
2)2( )(
21)(
21)()( zzzzwzwzD TT
)(2
1
212
100
,,,
)(2
1
00
212
1
,,,
4343214
2143213
zzzzzzwz
zzzzzzwz
T
T
0,0 4321 zzzz単位空間では
27/84
28
=要点=
・MTA法では情報の一部しか使用しておらず,しかもMTA法では判別能力を有しない場合もある.
・MTA法は多重共線性の問題を部分的に解決.
・多重共線性を構成する変数とそれ以外の変数に基づいて2種類の距離を作成することにより,MT法が抱える多重共線性の問題を解決できる.
(補足)固有値の小さな部分の対処の方法については,いろいろなアイディアが提出されている.
28/84
29
4. RT法(Recognition Taguchi法)
→ 画素データのような「2値データ」だけでなく,「連続量ないしは多値離散量と呼ぶ」に対しても適用できる.
・MT法の中では一番新しい手法
・RT法では,パラメータ設計と同様の簡便な計算だけ.
・標準SN比の考え方を応用して信号のない場合を取り扱う.・・・独特のアイディアに満ちた方法.
MTシステム
MT法 MTA法 その他
RT法 T法
29/84
30
「連続量や多値離散量のデータ」にRT法:
・注意が必要.
・RT法で用いられている距離には望ましくない性質
本章では,そのような性質について議論
改良する方法を提示
30/84
31
4.1 RT法の概要 (田口(2006a))
No. x1 x2 … xp L ST Ve Y1 Y2 D2
1 x11 x12 … x1p
2 x21 x22 … x2p・
・
・
・
・
・
・
・
・… ・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
n xn1 xn2 … xnk
平均
表4.1 初期データの形式と統計量
p
jjmr
1
2
ppj
p
jj xmxmxmxmL 11221111
11 ...
1,/ 1
121
1
21111
k
SVrLxSSS e
e
p
jjTe
rLY /1111
121 eVY
m1 m2 … mpm1 m2 … mp
x11 x12 … x1p L1 ST1 Ve1 Y11 Y21
L2 ST2 Ve2 Y21 Y22
Ln STn Ven Yn1 Yn2
31/84
32
No. x1 x2 … xp L ST Ve Y1 Y2 D2
1 x11 x12 … x1p L1 ST1 Ve1 Y11 Y21
2 x21 x22 … x2p L2 ST2 Ve2 Y21 Y22・
・
・
・
・
・
・
・
・… ・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
n xn1 xn2 … xnp Ln STn Ven Yn1 Yn2
平均 m1 m2 … mp
表4.1 初期データの形式と統計量
1
)(
11
211
1111
n
YY
nSV
n
ii
1
)(
11
222
2222
n
YY
nSV
n
ii
1
))((
11
221112
12
n
YYYY
nS
V
n
iii
])())((2)()[2/1( 22211221112
21122
2 YYVYYYYVYYVD iiiii
RT法で用いられている
マハラノビスの距離
D21
D22
D2n
32/84
33
x1 x2 … xp L ST Ve Y1 Y2 D2
新 x1 x2 … xp L ST Ve Y1 Y2
新たなデータの採取と統計量の計算
した値を使う:初期データより計算2112221121
22211221112
21122
2
,,,,,,...,,
])())((2)()[2/1(
YYVVVmmm
YYVYYYYVYYVD
p
RT法で用いられている
マハラノビスの距離
初期データより定めた閾値と比較して異常かどうか判定
D2
33/84
34
4.2 RT法の適用上の注意 (永田・土居(2009))-変数の単位の問題-
一番初期に提案されたMTシステムでは
・マハラノビスの距離では各変数間の単位が異なってもよい
・マハラノビスの距離は変数の単位に依存しない量
),...,2,1()ˆ(ˆ)ˆ(ˆ 112 nizRzxxD iTii
Tii
)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ0
10
20
xxD T
34/84
35
・変数間で単位が異なると,r や L などの計算において単位が異なるものを加える → 加え合わさった量の意味が不明
p
jjmr
1
2ppj
p
jj xmxmxmxmL 11221111
11 ...
1,/ 1
121
1
21111
k
SVrLxSSS ee
p
jjTe
RT法の適用では:
・全ての変数(項目)の単位が揃っている,または,無次元数
・田口:「p個の項目 x1, x2, …, xp が全て同一次元のデータ(たとえば画素のデータ,時系列のデータなど)であるとき」
・田口(2006a,b)では文字認識問題を意図してRT法が提案
・単位の問題に配慮せずに適用されている事例が散見
35/84
36
全ての項目の単位が揃っていても,揃っていなくても・・・大久保・永田(2012)は次を示した.
・他の項目よりも非常に大きな絶対値をとる項目があれば,その項目により判定結果がほぼ決まる.
・他の項目に比べ微小な値しかとらない項目は,判定結果にほとんど寄与しない.
36/84
37
4.3 統計量の意味と基本的性質 (永田・土居(2009))
it
r ≠ 0(少なくとも1つの m j はゼロではない)を仮定しているもし, r = 0 (m1 = m2 =…= mp =0)なら,Yi1 は定義できない
i
ippii
Tipiii
tm
tmtmtm
xxxx
),...,,(
),...,,(
2211
21
Tpmmmm ),...,,( 21
Tptttt ),...,,( 21
1x
m2m
1m
2x
ix
p =2 の場合
p
jjmr
1
2
0
t
単位空間のn 個の点を次のように表す
rLY i /111
37/84
38
rtmY iT
i /11
))1/((
/)(
2
2
kSVY
rtmttS
eieii
iT
iT
iei
1/1
)/1(1111
11
rtm
rtmn
Yn
Y
T
iT
n
i
n
ii
iT
iei
iT
i
ttS
tmY
011
01
2
1
i
i
YY
)(0 mxt ii
it
1x
m2m
1m
2x
ix
単位空間
])())(1(2)1()[2/1( 2221122112
2122
2 YYVYYYVYVD iiiii
0])[2/1( 2211
2 YVDi中心位置でのマハラノビスの距離が0でない
0
t
38/84
iが抜けていました
39
4.4 RT法で用いるマハラノビスの距離の性質(永田・土居(2009))
])())(1(2)1()[2/1( 2221122112
2122
2 YYVYYYVYVD iiiii
・項目数p,各項目の従う確率分布,各項目間の相関関係を設定
・200組(n=200)の乱数を発生
・200個の Di2 (i=1,2,…,200)の値を求める
・各データに対して平均ベクトルからのユークリッド距離の2乗を求め,(dEi
2,Di2) (i=1,2,…,200)の散布図を考察対象
2222
211
2
)(...)()()()(
pipii
iT
iEi
mxmxmxmxmxd
39/84
40
(例4.1) 2項目(p=2),x1~U(1,2),x2~U(4,5),独立
(dEi2,Di
2)の散布図図4.1 RT法のマハラノビスの距離のプロット(p=2,一様分布,独立)
it
1x
m2m
1m
2x
ix
単位空間
)()(2 mxmxd iT
iEi
])(
))(1(2)1()[2/1(
22211
22112
2122
2
YYV
YYYVYVD
i
ii
ii
40/84
41
(例4.2) 2項目(p=2),x1~N(1,12),x2~N(2,12),独立
図4.2 RT法のマハラノビスの距離のプロット(p=2,正規分布,独立)
)()(2 mxmxd iT
iEi
(dEi2,Di
2)の散布図
])(
))(1(2
)1()[2/1(
22211
22112
2122
2
YYV
YYYV
YVD
i
ii
ii
)()(2 mxmxd iT
iEi
1/8441/84
42
(例4.3) 2項目(p=2),x1~N(1,12),x2~N(2,12),相関あり
図4.3 RT法のマハラノビスの距離のプロット(p=2,正規分布,相関=0.5)
(dEi2,Di
2)の散布図
])(
))(1(2
)1()[2/1(
22211
22112
2122
2
YYV
YYYV
YVD
i
ii
ii
)()(2 mxmxd iT
iEi
it
1x
m2m
1m
2x
ix
単位空間
42/84
43
(例4.4) 5項目(p=5),x1~U(1,2),x2~U(2,3),x3~U(3,4),x4~U(4,5), x5~U(5,6) ,独立
図4.4 RT法のマハラノビスの距離のプロット(p=5,一様分布,独立)
(dEi2,Di
2)の散布図
43/84
44
図4.5 RT法のマハラノビスの距離のプロット(p=5,正規分布,独立)
(例4.5) 5項目(p=5),x1~N(1,12),x2~N(1,12),x3~N(1.5,12),x4~N(2,12), x5~N(2,12) ,独立
(dEi2,Di
2)の散布図
44/84
45
4.5 RT法で用いるマハラノビスの距離の改良1(永田・土居(2009))
距離についての望ましい性質
・単位空間の中心位置では 0・中心位置から離れるにしたがって増加していくと考えられる距離
])(2)()[2/1( 22
#11211
#12
211
#22
2#iiiii YVYYYVYYVD
n
ii nYYV
1
211
#11 /)(
n
ii nYV
1
22
#22 /
n
iii nYYYV
1211
#12 /)(
])())(1(2)1()[2/1( 2221122112
2122
2 YYVYYYVYVD iiiii
45/84
46
(例4.6) 例4.1と同じ乱数2項目(p=2),x1~U(1,2),x2~U(4,5)独立
図4.7 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=2,正規分布,独立)
(例4.7) 例4.2と同じ乱数2項目(p=2),X1~N(1,12),X2~N(2,12)独立
図4.6 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=2,一様分布,独立)
46/84
47
図4.8 (dEi2,Di
#2) および (MDi2,Di
#2) の散布図(p=2,正規分布,相関係数=0.5)
(例4.8) 例4.3と同じ乱数,2項目(p=2),X1~N(1,12),X2~N(2,12)相関係数=0.5
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
0 2 4 6 8 10 12 14 16
MD2
D#
2
(a) (dEi2,Di
#2) の散布図 (b) (MDi2,Di
#2) の散布図
)(ˆ)( 12 mxmxMD iT
ii
)()(2 mxmxd iT
iEi
47/84
48
(例4.9) 例5.4と同じ乱数5項目(p=5),x1~U(1,2),x2~U(2,3),x3~U(3,4),x4~U(4,5), x5~U(5,6)独立
図4.10 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=5,正規分布,独立)
(例4.10) 例4.5と同じ乱数5項目(p=5),x1~N(1,12),x2~N(1,12),x3~N(1.5,12),x4~N(2,12),x5~N(2,12)独立
図4.9 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=5,一様分布,独立)
48/84
49
1,22 kba ll
図4.10 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=5,正規分布,独立)
図4.9 (dEi2,Di
#2)の散布図(p=5,一様分布,独立)
])1(2)1()[2/1( 22
#1121
#12
21
#22
2#iiiii YVYYVYVD
})1(1)1(2)1{(21 #
1122
#1221
#22
21
2# VpYVpYYVYDC iiiii
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
d E2
DC
#2
図4.11 (dEi2,DCi
#2)の散布図(p=5,一様分布,独立)
図4.12 (dEi2,DCi
#2)の散布図(p=5,正規分布,独立)
さらなる改良
49/84
50
・RT法の距離は,単位空間の中心位置で大きめの値を取ってしまい,中心から少し離れたところでゼロになるという望ましくない性質がある.
=要点=
・RT法を適用する際には,各変数の単位が同じか各変数が無次元数でなければならない.
・距離DC #2はRT法の望ましくない性質を改良する.
50/84
51
RT法:すべての項目の単位が同じ,または,無次元数
4.6 RT法で用いるマハラノビスの距離の改良2(大久保・永田(2012))
No. x1 x2 … xp L ST Ve Y1 Y2 D2
1 x11 x12 … x1p
2 x21 x22 … x2p・
・
・
・
・
・
・
・
・… ・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
n xn1 xn2 … xnk
平均
表4.1 初期データの形式と統計量
p
jjmr
1
2ppj
p
jj xmxmxmxmL 11221111
11 ...
rLY /1111 m1 m2 … mpm1 m2 … mp
x11 x12 … x1p L1 ST1 Ve1 Y11 Y21
L2 ST2 Ve2 Y21 Y22
Ln STn Ven Yn1 Yn2
通常の標準化⇒RT法では機能しない(r=0となるから)
51/84
52
・RT-PC法:Y1:相関係数行列に基づく第1主成分Y2:残差の標準偏差
・RT-SD法:項目ごとにその標準偏差で割って無次元化
・RT-M法:項目ごとにその平均で割って無次元化
・RT-PC+法:Y1:相関係数行列に基づく第1主成分Y2:第2主成分・・・Yq:残差の標準偏差 52/84
53
★34項目(単位が異なる)のベンチマークデータで検討
・単位空間のサンプルサイズが十分大きい:MT>RT-PC+>RT-PC≒RT-SD≫RT-M≫RT
A>B⇔A法のほうがB法より精度がよい
・単位空間のサンプルサイズが十分大きくない:RT-PC+>RT-PC≒RT-SD≫MT≫RT-M≫RT
・RT-SD:ベクトルの方向によって検出力に違い・RT-PC:ベクトルの方向によって検出力に違いはない
★数理的検討+シミュレーション
53/84
5.T法
・サンプル数が項目数よりも少ない場合でも実行可能
・多重共線性の問題がない
・計算が簡便である
MT法 MTA法 その他
T法 RT法
MTシステム
54/84
5.1 T法の概略 (田口(2005b))
表5.1 全メンバーのデータ
表5.2 単位空間のデータ
表5.3 信号メンバーのデータ
中位
残り
a
No. 項目1…項目p 出力値
1
N
No. 項目1…項目p 出力値
1
a
No. 項目1…項目p 出力値
1
l項目=説明変数
出力値=目的変数 55/84
)(121 ajjjj xxx
ax
)(1210 ayyy
aMy
信号データの規準化
jijij xxX
iM
表5.4 規準化された信号データ
表5.2 単位空間のデータ
表5.3 信号メンバーのデータ
No. 項目1…項目p 出力値
1
a
No. 項目1…項目p 出力値
1
l
ijx iyNo. 項目1…項目p 出力値
1
l
ijX
yyM ii
56/84
表5.4 規準化された信号データ
rXMXMXM ll 1212111
1
)(0
)()(1
11
111
11
1
の場合
の場合
e
ee
e
VS
VSV
VSr
222
21 lMMMr
図5.1 イメージ
M
1XMX 11
llpll
p
p
MXXXl
MXXXMXXXMp
21
222221
111211
21
21 項目項目項目メンバー
まず,項目1 vs M
1XM 57/84
表5.4 規準化された信号データ
MX 11 項目1 vs M 11
11
ˆ
ii
XM
MX 22 項目2 vs M 22
22
ˆ
ii
XM
を予測番目の iMi
MX pp 項目p vs M pp
ipip
XM
ˆ
統合
予測値を
の個の iMp
M 2X
pX
1X
llpll
iipii
p
p
MXXXl
MXXXi
MXXXMXXXMp
21
21
222221
111211
21
21 項目項目項目メンバー
58/84
p
ippiii
MMMM
21
2211ˆˆˆ
ˆ
llM MMMMMML ˆˆˆ2211
222
21
ˆˆˆlTM MMMS
rLS M
M
2
MTMeM SSS
1
lSV eM
eM
eM
eMM
M V
VSr
)(1
log10 10
の統合推定値:iM
表5.4 規準化された信号データ
llpll
iipii
p
p
MXXXl
MXXXi
MXXXMXXXMp
21
21
222221
111211
21
21 項目項目項目メンバー
lM
M
M
M
ˆ
ˆ
ˆ
ˆ
2
1
M 2X
pX
1X
総合推定のSN比
59/84
p
jjij
j
jp
j j
ii yxxyMy1
1
)(1ˆˆ
p
ipkiii
MMMM
21
2211ˆˆˆ
ˆj
jij
j
ijij
xxXM
ˆ
線形予測式
eM
eMM
M V
VSr
)(1
log10 10
評価指標:
総合推定のSN比
M 2X
pX
1X
じである.」質量を総合するのと同
はかりでいろいろなそれを総合している.
の推定を次式で行う.を求めて,
は比例式「1つひとつの項目で田口
xM
MMMMx
i
l
ˆ
,,,:
21
60/84
M 2X
pX
1X
2
2222222
2111111
)(,0)(
)(,0)()(,0)(
pppppp VEMX
VEMXVEMX
p
jjij
j
jp
j j
ii yxxyMy1
1
)(1ˆˆ
線形予測式
重回帰モデル背後のモデルが異なる
iippiii xxxy 22110
M 2X
pX
1X
yxx
xxxyp
jjijj
ippiii
1
22110
)(ˆ
ˆˆˆˆˆ
線形予測式
iM̂ 61/84
T法
l
iii
l
iii
l
iii MMyMyMyyRSS
1
2
1
2
1
2 ˆ)ˆ()(ˆ
T法 vs 重回帰分析 よくある解釈に対して
1.評価指標が違う!?
T法は総合SN比,重回帰分析は残差平方和・寄与率など
残差平方和(residual sum of squares)
重回帰分析では残差平方和を最小にする.
T法では,総合SN比を評価尺度:
eM
eMM
M V
VSr
)(1
log10 10
rRSSl
rVV
VSr
eMeM
eMM 1111)(1
総合SN比とRSSは
数学的に同値
62/84
とする.(例)項目数が3 21, cxx
2.T法では重要な項目をすべて予測式に取り入れられる!?
→ 総合推定値:
すべての変数を取り込めているようには見えるものの,相関の強い変数を過大評価
2121ˆˆ, ii MM
31
3311
321
332211
2
ˆˆ2ˆˆˆˆ
iiiii
i
MMMMMM
T法 vs 重回帰分析 よくある解釈に対して
63/84
3.項目間の相関が強いとT法の結果の信憑性は低い!?
T法を想定したモデル
上記モデルでは項目間に強い相関が必然的に生じる.
M 2X
pX
1X
2
2222222
2111111
)(,0)(
)(,0)()(,0)(
pppppp VEMX
VEMXVEMX
後のシミュレーションでわかるように,このモデルの下で,T法の性能はそこそこよい.
T法 vs 重回帰分析 よくある解釈に対して
64/84
単位空間について
・単位空間は,その平均を計算して規準化するためだけ
・全データを単位空間と信号データに分ける合理的方法は?
・多くのデータを単位空間とすると,信号データ数が減る.
・そこで,単位空間のデータ数は1でもよいとされている.
⇒ 出力値yが中位にあるデータを単位空間とする.
⇒ これでよいか?
65/84
No. x1 x2 y
12345
25489
35486
13567
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0 2 4 6 8 10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0 2 4 6 8 101x
2x
yy
No. X1 X2 M
1245
-2145
-1142
-4-212
規準化
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
-4 -2 0 2 4 6
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
-2 -1 0 1 2 3 4 500
0 0
原点を外している ⇒ SN比は上がらない
1X 2X
M M
66/84
T法における規準化の目的:
各項目 vs 出力値 に対して原点比例式を当てはめ
少ない個数の単位空間の平均により規準化すると原点を外す項目が出てくる.
項目数が増えると,上記の項目の個数が増加
適切な規準化をすれば,原点を通り,SN比が大きくなる項目であるのに,不適切な規準化を行うとSN比が小さくなる.
しかし,
67/84
T法の改良手法の提案:Ta法とTb法
T法a:すべてのデータの平均を用いて規準化
品質工学便覧:
「全データの平均値そのものを単位空間とすれば,単回帰分析をSN比で重み付けた結果と同じになり,MTシステムの特徴である単位空間を使った信号付けの特徴付けが活かせない.」
私たちの見解は上記とは異なる.
68/84
No. x1 x2 y
12345
25489
35486
13567
平均 5.6 5.2 4.4
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0 2 4 6 8 10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0 2 4 6 8 101x
2x
yy
Ta法による規準化
0 0
原点を通る ⇒ SN比は上がる
No. X1 X2 M
12345
-3.6-0.6-1.62.43.4
-2.2-0.2-1.22.80.8
-3.4-1.40.61.62.6
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
-4 -2 0 2 4
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
-3 -2 -1 0 1 2 3 400 1X 2X
M M
69/84
No. x1 x2 y
12345
25489
35486
13567
T法b:各項目で,SN比が最大になるメンバーを用いて規準化
項目x1について
①No.1のメンバーで,x1 と y を規準化し,ゼロ点比例式を当てはめ,SN比を計算.
②No.2のメンバーで,x1 と y を規準化し,ゼロ点比例式を当てはめ,SN比を計算.
…⑤No.5のメンバーで,x1 と y を規準化し,ゼロ点比例式を当てはめ,SN比を計算.
Step1.
Step2 Step1で最大のSN比が得られたメンバーで規準化してMを推定
項目x2について
No. x1 x2 y
12345
25489
35486
13567
同様のステップ 70/84
p
jjij
aj
ajp
j ajii yxxyMy
11
)(1ˆˆ
p
jjij
j
jp
j jii yxxyMy
11
)(1ˆˆ
p
jt
jj
jtij
jjp
j jj
iij
j yt
xxt
tMy
1*
*
1*
*
*
)()(
)(1ˆˆ
T法の予測式:
Ta法の予測式:
Tb法の予測式:
比により規準化した時ので,メンバー項目
比例定数により規準化した時ので,メンバー項目
SN:)(
:)(**
**
jjj
jjj
tjt
tjt
71/84
T法,Ta法,Tb法,重回帰分析の性能比較
評価指標:
lRSSEERSS
l
iii yyRSS
1
2ˆ
2)ˆ( yyEPE
(1)残差平方和の平均の期待値
信号データの個数:l
(2)予測平方の期待値
新しいデータの予測誤差・・・こちらが重要な指標
残差平方和
72/84
シミュレーションによる検討
シミュレーションモデル:
(A)線形重回帰モデル
),(
),...,2,1;,...,2,1(),0(~,)1,0(~
21
22
2211
ii
iij
iippiii
xxCor
pjNiNNx
xbxbxby
(B)T法の背後に想定されるモデル
),...,2,1;,...,2,1(),0(~,)1,1(~
),...,2,1;,...,2,1(22 pjNiNNy
pjNiyax
jiji
iijij
),1,1,1,1,1(),,,( 521 ),5.1,5.1,1,5.0,5.0(),5.0,5.0,1,5.1,5.1( ),5.01,1,1,1,5.01(
)5.01,1,1,1,5.01(
M 2X
pX
1X
73/84
)20,5(),( Np )2,2,2,2,2(),,,( 521 bbb
0 )0.5,0.3,0.1()3,2,1(
図5.1 モデル(A)でのERSS(残差平方和の期待値)
,
,
重回帰
T
Ta
Tb
0
20
40
60
80
100
120
140
σ1 σ3 σ5
ERSS
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
良い
重回帰
T
Ta
Tb
:モデル( iippiii xbxbxby 2211A)
74/84
)20,5(),( Np )3,3,2,1,1(),,,( 521 aaa 母分散のパターン:)5(),4(),3(),2(),1(
図5.2 モデル(B)でのERSS (残差平方和の期待値)
,
,0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
σ(1) σ(2) σ(3) σ(4) σ(5)
ERSS
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
良い
重回帰
T
Ta
Tb
:モデル( iijij yax B)
M 2X
pX
1X
75/84
0
20
40
60
80
100
120
140
160
σ1 σ3 σ5
PE
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
)20,5(),( Np )2,2,2,2,2(),,,( 521 bbb 0 )0.5,0.3,0.1()3,2,1(
図5.3 モデル(A)でのPE(予測誤差の期待値)
,
,良い
重回帰
T
Ta
Tb
:モデル( iippiii xbxbxby 2211A)
76/84
)10,5(),( Np )2,2,2,2,2(),,,( 521 bbb 0 )0.5,0.3,0.1()3,2,1(
図5.4 モデル(A)でのPE (予測誤差の期待値)
,
,0
20
40
60
80
100
120
140
160
σ1 σ3 σ5
PE
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
重回帰
T
Ta
Tb
良い
:モデル( iippiii xbxbxby 2211A)
77/84
)7,5(),( Np )2,2,2,2,2(),,,( 521 bbb 0 )0.5,0.3,0.1()3,2,1(
図5.5 モデル(A)でのPE (予測誤差の期待値)
,
,0
100
200
300
400
500
600
700
800
σ1 σ3 σ5
PE
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
重回帰
T TaTb
良い
:モデル( iippiii xbxbxby 2211A)
78/84
)20,5(),( Np )3,3,2,1,1(),,,( 521 aaa
母分散のパターン:)5(),4(),3(),2(),1(
図5.6 モデル(B)でのPE (予測誤差の期待値)
,
,0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.1
σ(1) σ(2) σ(3) σ(4) σ(5)
PE
T法 Ta法 Tb法 重回帰分析
重回帰
T
TaTb
良い
が大きい項目がある
)5,...,2,1(22
2
ja
a
jj
j
:モデル( iijij yax B)
79/84
・サンプルサイズが項目数より十分大きいなら重回帰分析がよい
まとめ
・Ta法やTb法は,T法よりも性能がよい.
・サンプルサイズが項目数の2倍程度より小さい場合にはTa法またはTb法を用いるとよい
・多くの場合にTa法とTb法は同程度の性能を示しており,モデルやパラメータの条件によりその優劣が変化
・Ta法とTb法の優劣の入れ替わりが何に起因しているのかは今度の課題としたい.
・実務的には,計算の手間とわかりやすさを考えるとTa法を適用するのがよいであろう
80/84
☆項目と出力がどのような関係にあるのかに着目すべき M 2X
pX
1X
M 2X
pX
1X
81
・MTシステムは非常に簡便.
簡便性がタグチメソッドの一つの特徴.
簡便だから,多くの技術者が応用し,MTシステムが普及.
6.おわりに
・田口博士は,ロバストパラメータ設計に関して,永年,新しいアイディアを提案され続け,応用事例を参考にして,手法を洗練化.
本質的な部分を残し,応用が楽になるよう計算を簡便化する方針.
・MTシステムについても,本質的な部分を残しながら簡便化する方針(田口(2012)).田口(2012)は2005年10月の田口博士の講演録.
田口博士は,この講演の3か月後に病に倒れられた. 81/84
82
本稿で指摘した各手法の問題点は,田口博士がお元気であれば指摘されただろう.
田口博士なら,これらをどう克服・改良されたかと思いを馳せている.
田口博士がおられないいま,統計科学の側面からMTシステムの本質や発展性を見極めたい.
MTシステムの研究を通じて,タグチメソッドとSQCがもっと融合できればよいと考えている(永田(2007)).
82/84
最後に,
MTシステムを開発された田口玄一博士に敬意を表し,心からご冥福をお祈りします.
参考文献
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• 大久保豪人・永田靖(2012):タグチのRT法における同一次元でない連続量データへの適用方法.品質 42,248-264.
• 田口玄一(2002):20世紀のMTS法と21世紀のMT法.標準化と品質管理 55,61-70.• 田口玄一・兼高達貳(編)(2002):MTシステムにおける技術開発.日本規格協会.
• 田口玄一 (2005a):目的機能と基本機能(5).品質工学13,[2],6-10.• 田口玄一 (2005b):目的機能と基本機能(6).品質工学 13,[3],5-10.• 田口玄一(2006a):目的機能と基本機能(11).品質工学 14, [2], 5-9.• 田口玄一(2006b):目的機能と基本機能(12).品質工学 14, [3], 5-9.• 田口玄一(2012):21世紀のMTシステム,MTA法とTS法とT法,-田口玄一MTシステ
ム講演録-,品質工学 20, [3], 19--26.• 立林和夫・長谷川良子・手島昌一(2008):入門MTシステム.日科技連出版社.
• 永田靖(2007):タグチメソッドとSQCの“友好的”推進, クオリティマネジメント 58, 8月号, 10-17.
• 永田靖・久冨剛(2008):項目数が$n-1$以上の場合のMTシステムの第1種の距離.品質 38,142-146.
• 永田靖(2009):統計的品質管理.朝倉書店.8383/84
• 永田靖・土居大地(2009):タグチのRT法で用いる距離の性質とその改良.品質 39,364-375.
• 品質工学会(編纂)(2007):品質工学便覧.日刊工業新聞社.
• 宮川雅巳(2000):品質を獲得する技術.日科技連出版社.
• 宮川雅巳(2003):SQCから見たタグチメソッド.品質 33,27-35.• 宮川雅巳・永田靖(2003):マハラノビス・タグチ・システムにおける多重共線性対策につ
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