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-4.69525 eV 2.14350 eV 1.71646 eV 化学概論 資料 石田 同核二原子分子の分子軌道の概形とエネルギー準位(B3LYP/6-311+G(d,p) 注) の水準による計算)。2p x , 2p y , 2p z に関わる部分だけを示す。占有軌道を青と緑、非占有軌道は赤と黄で描いた(O 2 1eと書いたとこ ろは半占有)。縮重軌道は横に2つ並べて示してあり、互いに結合軸のまわりに90°回転させた関係にある。 N 2 O 2 F 2 B 2 ,C 2 ,N 2 については σ2p x 軌道よりπ2p y とπ2p y 軌道の方が低い準位をもつ。σ2s とσ2p x との相互作用 の結果と説明されている。軌道を描かせてみると、σ2p x はσ結合に加えて lone-pair の性格がかなり入っ ていることがわかる(外側に突き出した膨らみで判断)。つまり非結合性軌道としての準位を持とうとして 結合性軌道の中でも上の方に位置するようになると考えられる。一般論としては、π結合はσ結合より弱い から、πとπ * はσとσ * の間に挟まれる。O 2 やF 2 の軌道準位の序列の方が正常である。さらにこの「正 常な」序列は、次のアセチレンと比較するときにも好都合である。下に C 2 H 6 ,C 2 H 4 ,C 2 H 2 の関連する分子軌 道を描いた。空軌道は省略した。 ethane ethylene acetylene σ結合のエネルギーは低く(安定)、π結合は比較的表層にくる(不安定)。π結合は臭素付加や重合など の反応を起こしやすく、一方その過程でσ結合系は無傷である。π結合は弱いとは言っても、その結合解離 エネルギーがあるために、エチレンの二重結合は室温では回転できない。アセチレンや N 2 の三重結合回転 の可否については、実験的に確かめることは難しい。なお、アセチレンと N 2 のように原子が違っても電子 数が等しいものを「等電子的」と呼び、しばしば電子構造の類似が議論される。別の例では、「メタン、ア ンモニア、水は互いに等電子である」などという。アセチレンのπ * やσ * は描いていないが N 2 のπ * σ * とよく似たものになると予想できる。分子の性質を決めるものは(原子の性質の決まり方と同様に)最 外殻電子なので、π軌道の形を理解することは、その性質や反応を理解する上で重要である。 注)計算コードの一つ。基礎科学実験 B では「HF/6-31G*」を用いたが、それもコードの一種。分光学的データのシミ ュレーションは、このような分子軌道計算に基づいて行われる(が、学修順番の関係から難しいので伏せていた)。 -16.85232 eV 1e -8.20251 eV -20.72853 eV -20.87960 eV -20.51840 eV -15.13762 eV -15.13762 eV -11.63120 eV -11.63120 eV -8.79049 eV -14.83589 eV -14.35272 eV -11.99856 eV -12.97453 eV -12.97453 eV -8.79049 eV 1e -1.02973 eV -1.02973 eV -7.65897 eV -8.20251 eV -14.35272 eV

MOttf.pc.uec.ac.jp/Microsoft Word - MO.doc Author ishi Created Date 5/21/2010 3:36:57 PM

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-4.69525 eV2.14350 eV1.71646 eV

化学概論 資料   石田

 同核二原子分子の分子軌道の概形とエネルギー準位(B3LYP/6-311+G(d,p)注)の水準による計算)。2px,2py,

2pzに関わる部分だけを示す。占有軌道を青と緑、非占有軌道は赤と黄で描いた(O2で“1e”と書いたところは半占有)。縮重軌道は横に2つ並べて示してあり、互いに結合軸のまわりに 90°回転させた関係にある。

N2 O2 F2

 B2,C2,N2についてはσ2px軌道よりπ2py とπ2py 軌道の方が低い準位をもつ。σ2s とσ2px との相互作用

の結果と説明されている。軌道を描かせてみると、σ2pxはσ結合に加えて lone-pairの性格がかなり入っ

ていることがわかる(外側に突き出した膨らみで判断)。つまり非結合性軌道としての準位を持とうとして

結合性軌道の中でも上の方に位置するようになると考えられる。一般論としては、π結合はσ結合より弱い

から、πとπ*はσとσ*の間に挟まれる。O2やF2の軌道準位の序列の方が正常である。さらにこの「正

常な」序列は、次のアセチレンと比較するときにも好都合である。下に C2H6,C2H4,C2H2の関連する分子軌

道を描いた。空軌道は省略した。

ethane ethylene acetylene

 σ結合のエネルギーは低く(安定)、π結合は比較的表層にくる(不安定)。π結合は臭素付加や重合など

の反応を起こしやすく、一方その過程でσ結合系は無傷である。π結合は弱いとは言っても、その結合解離

エネルギーがあるために、エチレンの二重結合は室温では回転できない。アセチレンや N2 の三重結合回転

の可否については、実験的に確かめることは難しい。なお、アセチレンとN2のように原子が違っても電子

数が等しいものを「等電子的」と呼び、しばしば電子構造の類似が議論される。別の例では、「メタン、ア

ンモニア、水は互いに等電子である」などという。アセチレンのπ*やσ*は描いていないがN2のπ*や

σ*とよく似たものになると予想できる。分子の性質を決めるものは(原子の性質の決まり方と同様に)最

外殻電子なので、π軌道の形を理解することは、その性質や反応を理解する上で重要である。

 注)計算コードの一つ。基礎科学実験 B では「HF/6-31G*」を用いたが、それもコードの一種。分光学的データのシミ

ュレーションは、このような分子軌道計算に基づいて行われる(が、学修順番の関係から難しいので伏せていた)。

-16.85232 eV

1e

-8.20251 eV

-20.72853 eV-20.87960 eV-20.51840 eV

-15.13762 eV -15.13762 eV

-11.63120 eV-11.63120 eV-8.79049 eV

-14.83589 eV

-14.35272 eV-11.99856 eV

-12.97453 eV-12.97453 eV

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-1.02973 eV-1.02973 eV

-7.65897 eV -8.20251 eV

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