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JIS 意見受付

JIS Z 2355-X 超音波厚さ測定試験

原案作成委員会

この JIS は日本非破壊検査協会規則「JIS 原案作成に関する規則」に基づき関係者に JIS の制定前の意

見提出期間を設けるために掲載するものです。

意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。

掲載されている JIS についての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。

意見受付締切日:2015 年 3 月 31 日(火)

意見提出先:Email:[email protected]

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日本工業規格(案) JIS Z 2355-1:0000

超音波厚さ測定試験

第1部:測定方法 Non-destructive testing - Ultrasonic thickness testing -

Part 1: Ultrasonic thickness measurement

序文

この規格は,2012 年に第 1 版として発行された ISO 16809:2012 を基とし,国内における超音波厚さ計の

運用実態を踏まえ,この規格の円滑な運用を可能とするため,技術的内容を変更して作成した日本工業規

格である。

なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。

変更の一覧表にその説明を付けて,附属書 JE に示す。

1 適用範囲

この規格は,超音波パルスによる超音波厚さ測定装置(以下、測定装置という)を用いて,主として金

属材料に対して,保守検査又は製品検査を行う場合の厚さ測定方法について規定する。

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 16809:2012,Non-destructive testing - Ultrasonic thickness measurement(MOD)

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,“修正している”

ことを示す。

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その 新版(追補を含む。)を適用することにする。

JIS B 0601 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラ

メータ

JIS G 0431 鉄鋼製品の雇用主による非破壊試験技術者の資格付与

JIS G 0801 圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法

JIS Z 2300 非破壊試験用語

JIS Z 2305 非破壊試験-技術者の資格及び認証

JIS Z 2344 金属材料のパルス反射法による超音波探傷試験方法通則

JIS Z 2345 超音波探傷試験用標準試験片

JIS Z 2350 超音波探触子の性能測定方法

JIS Z 2353 超音波パルス法による固体の音速の測定方法(対比試験片を用いる方法)

JIS Z 2355-2 超音波厚さ測定試験-第2部:厚さ計の性能測定方法

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3 用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 2300 によるほか,次による。

3.1

残存厚さ

元厚(機械的測定又は超音波にて測定した製造時の初期値)から減厚値(腐食又は磨耗による減少厚さ)

を差し引いた値。

3.2

グリセリンペースト

グリセリンに少量の界面活性剤と粘性剤を添加した接触媒質。

3.3

表示値

厚さ測定器の表示部に表れる数値

3.4

測定値

終測定結果として採用した値

4 測定方式

図 1 に示すように試験体を通過する超音波の伝搬時間を計測し,その値及び既知の音速(JIS Z 2353 参

照)から,式(1)によって厚さを求める。

tCn

d 1

・・・・・・・・・・・・・・(1)

ここに, d: 試験体の厚さ(m) C: 試験体の音速(m/s) t:

n:超音波が試験体中を伝搬する時間(s) 試験体を通過した回数

超音波探触子

試験体

測定面

超音波

伝搬時間 t

試験体の厚さ d

表面

エコー

音速 C

図では試験体を通過した回数は2

振動子

くさび

図 1-超音波厚さ測定の原理

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Z 2355-1:0000

測定方式は表 1 のとおり区分する。

表 1-測定方式の区分

測定方式及び使用探触子例 エコーの種類 A スコープ表示

ゼロ点・第 1 回底面エコー方式

(R-B1)方式

使用する探触子例

二振動子垂直探触子

指定された試験片及び,使用する探

触子を用いて,ゼロ点を設定する。

そのゼロ点と,第 1 回底面エコー

(B1)との間隔から厚さを求める。

t

R(ゼロ点)

B1

表面エコー・第 1 回底面エコー方式

(S-B1)方式

使用する探触子例

二振動子垂直探触子

遅延材付一振動子垂直探触子

水浸探触子

測定箇所の表面エコー(S)と第1

回底面エコー(B1)の間隔から厚さ

を求める。

① 二振動子垂直探触子

試験体表面からのエコー(S)

と第1回底面エコー(B1)との

間隔から厚さを求める。

② 遅延材付一振動子垂直探触子

試験体表面(遅延材底面)から

のエコー(S)と第1回底面エ

コー(B1)との間隔から厚さを

求める。

③ 水浸探触子

試験体表面からのエコー(S)

と第1回底面エコー(B1)との

間隔から厚さを求める。

t

B1

t

B1

ST

多重エコー方式

①(B1-B2)方式

使用する探触子例

一振動子垂直探触子

水浸探触子

②(Bm-Bn)方式

使用する探触子例

一振動子垂直探触子

水浸探触子

底面の多重エコーの間隔から厚さ

を求める。状況に応じて使用する底

面エコーを変える必要がある。

①(B1-B2)方式

B1エコーが明りょうに確認でき,

B2 エコーとの識別が十分可能な場

合に用いる。

②(Bm-Bn)方式

B1 エコーが確認できない場合に用

いる。n は m+1 である。

t

B3

B2

B1T

t

Bn

Bm

透過方式

使用する探触子例

一振動子垂直探触子

試験体を透過したパルスを用いて

厚さを求める。エコーが得られにく

い高減衰材の測定に用いることが

できる。

t

T1

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5 一般的要求事項

5.1 測定装置

測定装置の性能は,使用目的を達成しうる次の厚さ測定器と探触子との組合せとする。

5.1.1 厚さ測定器

厚さ測定器は次による。

a) 超音波厚さ計

1) 数値表示超音波厚さ計 表 1 の測定方式によって厚さを測定し,測定結果をデジタル値で表示する,

小形で一般に用いられる超音波厚さ計。

2) Aスコープ表示器付き超音波厚さ計 数値表示超音波厚さ計に,超音波探傷器同様のAスコープ表

示機能が付加された超音波厚さ計。腐食部の厚さ測定でエコーの状況を確認したり,複合材料やコ

ーティング上からの厚さ測定で適切なエコーを選択するためには,Aスコープ表示器付き超音波厚

さ計を用いることが望ましい。

b) 超音波探傷器

5.1.2 探触子

探触子は,次の型式の探触子を用いる。

a) 二振動子垂直探触子

b) 一振動子垂直探触子

探触子ケーブルは,測定装置の製造業者によって指定されたケーブルを用いる。

探触子の選定は 6.3 を参照できる。

5.2 接触媒質

水浸法以外で特に指定のない場合は,測定面の粗さに応じて,表 2 により選定する。表面粗さμmRz は

JIS B 0601 による。

表 2―接触媒質の選定

測定面の粗さ

25 μmRz 未満 25μmRz 以上

規定しない。ただし,測定技術者,試験体及び測

定装置に有害でないもの。

濃度 75 %以上のグリセリン水溶液,グリセリン

ペースト又はこれらと同等の音響結合が得られる

ことが確認されたもの。測定技術者,試験体及び

測定装置に有害でないもの。

5.3 対比試験片

測定装置は測定対象を代表する1点の厚さ又は複数の厚さの対比試験片で調整する。対比試験片の音速

及び厚さは試験体にほぼ等しいもので,測定面と反射面とが平行な試験片が望ましい。使用する対比試験

片は測定対象の厚さの範囲を網羅していることが望ましい。

5.4 試験体

試験体は次による。

a) 試験体は,超音波が伝搬する材料であり,探触子と音響接触が可能な表面を有していなければならな

い。

b) 測定面には,超音波の伝搬を阻害するような汚れ,グリース,綿くず,スケール,溶接のフラックス

やスパッタ,油その他の異物がある場合は除去する。

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Z 2355-1:0000

c) 測定面にコーティング層がある場合は,そのコーティング層は材料に良く結合していなければならな

い。そうでない場合は除去する。

5.5 測定技術者

測定技術者は,測定装置を調整して測定作業を実施するとともに,測定結果を記録・分類・報告するた

めに必要な資格,経験・知識及び技能をもつものとする。

なお,測定技術者の資格及び認証は,JIS G 0431 又は JIS Z 2305 に規定する超音波探傷試験の資格者又

はこれと同等の有資格者とする。

6 超音波厚さ測定の適用

6.1 表面状態及び測定面の処理

測定面に測定の妨げになるものがある場合には前処理を行う。前処理の方法などは受渡当事者間で協議

し,測定面をきずつけたり,うねらせたりしないように注意をはらって除去し,厚さ測定が可能な状態に

する。

6.2 厚さ測定

6.2.1 一般

a) 測定点又は測定線の選定 測定点又は測定線は,特に指定がない場合,測定目的・試験体・測定する

範囲・使用状況・経年変化・腐食状況などに応じて,次の方法を参考にして,受渡当事者間で選定す

る。

1) 試験体を適宣に区分した各範囲を代表する 1 点

2) 試験体の形状変化部などを適宣に区分した各範囲内の数点

3) 測定する範囲に適切な間隔で設けた格子線の交点

4) 試験体の減厚状況によって選定された必要な点又は線

b) 測定方式の選定 表 1 により測定方式を選定する。

c) 測定方法の選定 表 3 により測定方法を選定する。測定方法は,測定結果を求める手順によって,次

に示す 5 種類に区分する。

表 3-測定方法の種類

測定方法 二振動子垂直探触子の場合の音響隔離面の方向

個別測定点による測定方法 1 回測定法 規定しない

2 回測定法 90 度異なる方向

測定線上の移動による測定方法 連続測定法 隔離面の方向は同じ

測定範囲の拡大による測定方法 多点測定法 規定しない

精密測定法 規定しない

1) 1 回測定法 指定された測定点を 1 回測定する方法。本測定方法では音響隔離面の方向については

規定しない。

2) 2 回測定法 二振動子垂直探触子によって直角 2 方向について各々測定する方法。同一の測定点に

おいて,音響隔離面の向きを 90 度異なる2方向で各々測定し,得られた小さい方の表示値を測定値

とする。

3) 連続測定法 測定線上を 1 回測定法を用いて,二振動子垂直探触子の直接接触法の場合は指定され

た測定間隔で,又は直接接触法でない場合は連続的に,探触子を移動させながら厚さを測定する方

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法。測定線に沿う厚さ変化を断面表示することが可能である。

なお,測定間隔の指定がない場合は 5 mm 以下とするとともに,二振動子垂直探触子で測定する

場合,音響隔離面の向きは測定線と直角に保つものとする。

4) 多点測定法 一測定点を中心に,測定範囲を拡大し,その範囲内の多数の点を測定して,表示値の

も小さい値を測定値とする。測定範囲の拡大は,通常,腐食又は減厚の状況によって判断され,

受渡当事者間で選定する。指定のない場合は,拡大の大きさは直径 30 mm 円内を多点測定の範囲と

してもよい。本測定方法では二振動子垂直探触子の音響隔離面の方向については規定しない。

5) 精密測定法 指定された範囲について測定点を増加させ,厚さの変化状態を推定する。測定の結果

は,等高線などによって平面表示してもよい。測定範囲の指定がない場合,適用する探触子及び測

定間隔を受渡当事者間で適宜選定する。

6.2.2 製品検査における厚さの測定

測定装置は 5.1 から選定する。探触子の選定には測定を行う試験体の厚さ,形状、要求精度などを考慮

し,探触子の種類(二振動子/一振動子),周波数,振動子寸法,接触面の寸法,遅延材の要否,などを決

定する。附属書 A の図 A.1 及び図 A.2 が選定の参考となる。なお,二振動子垂直探触子を用いる場合は測

定する厚さに対して交軸範囲,交軸距離が適切なものを選定する。集束型探触子を用いる場合は同様に集

束範囲が適切なものを選定する。

特に超音波の減衰が大きく、反射波を利用できない場合には透過方式(方式 4)が推奨される。多くの

場合、周波数は 1 MHz 以下を推奨する。

6.2.3 保守検査における残存厚さの測定

6.2.3.1 一般

測定装置は 5.1 から選定する。

なお,探触子の選定には測定を行う試験体の予想される厚さ,形状などを考慮し,探触子の種類(二振

動子/一振動子),周波数,振動子寸法,接触面の寸法,遅延材の要否などを決定する。附属書 A の図 A.3

及び図 A.4 が選定の参考となる。なお,二振動子垂直探触子を用いる場合は測定する厚さに対して交軸範

囲,交軸距離が適切なものを選定する。集束型探触子を用いる場合は同様に集束範囲が適切なものを選定

する。

二振動子垂直探触子を直接接触法で用い,2 回測定法,連続測定法などにおいて,探触子の向きを変え

たり,移動をする場合は,その都度測定面から探触子を離す。

6.2.3.2 一般的な平面試験体の厚さ測定

a) 数値表示超音波厚さ計を用い、異常がない場合,表示値を測定値とする。

なお,異常とは次の場合をいう。

1) 表示値が,推定した厚さの 2 倍程度の場合

2) 表示値が,推定した厚さの 1/2 程度の場合

3) 表示値がばらつく場合(受渡当事者間で決めた許容値以上の誤差又は表示値が安定しないとき)

4) 表示値が得られない場合

b) 異常がある場合,次のいずれかの方法によって,その原因に関する所見及び表示値を記録することが

望ましい。

1) 多点測定法のほか、連続測定法又は精密測定法を追加し,測定点近傍の全般的な状況から原因を判

断する。

2) 超音波探傷器又は表示器付き超音波厚さ計を用い,その A スコープから,きずエコーの有無,底面

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Z 2355-1:0000

エコーの現れ方などを観察して,ビーム路程によって厚さを求める。

6.2.3.3 腐食部の厚さ測定における留意点

容器や配管などにおける腐食は,異なるメカニズムにより発生し得る。各種腐食の原因とメカニズム、

推奨される超音波技術について附属書 B に参考として示す。

測定面や裏面に腐食が予測される試験体の場合は、次の点に留意する。

a) 測定面が腐食している場合 測定面に腐食による凹凸がある場合には,超音波の透過性を低下させる

ため,表示値が得られない場合や,接触媒質の層により表示値が大きく表示される場合がある。

b) 裏面が腐食している場合 比較的なだらかな形状をした腐食は,表示値が比較的安定した測定が可能

である。しかし,針状の孔食は,その孔食の先端からのエコーは得られにくく,周辺のなだらかな腐

食部分の厚さが表示されたり,表示値が得られない場合がある。

c) 処置方法 腐食又は孔食により表示値が安定しない,又は表示値が得られない場合は,Aスコープ表

示器付き超音波厚さ計又は超音波探傷器を用い,Aスコープからエコーを観察し,腐食の状況・程度・

残存厚さを測定する。腐食部からのエコーは図 2 に示されるように多峰性となる場合が多く,残存厚

さを読み取る場合は,ピーク位置ではなくエコーの立ち上がりを用いる。

図 2-腐食部からのエコーの例 1)

1)日本非破壊検査協会編 超音波厚さ測定Ⅰ(2009 年版)pp.56 より引用

6.2.3.4 管材の厚さ測定

附属書 JA に管材の厚さ測定における留意点を参考として示す。

6.3 探触子の選定

探触子の選定は次による。

a) 6.2 に従って適切な測定手順を選び,探触子の種類(一振動子又は二振動子)を選定する。その後,探

触子が測定条件に適合するように,他の条件を考慮して選定する。

b) 薄いシートやコーティング層を測定する場合は,狭帯域探触子に比べてパルスが短く,分解能のよい

広帯域探触子を用いる。

c) 超音波が減衰しやすい材料の試験体を測定する場合は,安定したエコーが得られるよう,より低い周

波数の探触子又は広帯域探触子を用いる。

d) 振動子寸法と周波数は,エコーの発生領域が判別しやすい狭い音響ビームで測定範囲がカバーされる

ように選定する。

e) 試験体が特に薄い場合は遅延材付き一振動子垂直探触子を使用する。測定方式は,表1における方式

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2,又は方式 3 とする。遅延材の材料が試験体と同じ場合は境界面エコーが発生しない可能性があるた

め,遅延材の材料は適切なものを選定する。金属上のプラスチック遅延材のように遅延材の材料の音

響インピーダンスが試験体よりも小さいと,境界面エコーの位相が変化する。そのため,正確な結果

を得るには補正が必要となるが,超音波厚さ計によってはこの補正を自動で行う機能をもつものもあ

る。

f) 高温の測定面では,探触子に適した温度範囲とそれらの温度での使用時間を明示した探触子製造者の

データシートを参考にして遅延材付き探触子を用いる。この場合,温度が遅延材の音響的な性質へ与

える影響(減衰と音速の変化)は既知でなければならない。

6.4 厚さ測定器の選定

厚さ測定器は 5.1.1 から選定する。

6.5 対比試験片とは異なる材料

附属書 C を参照。音速による表示値の補正を行えば,他の試験片を用いてもよい。

6.6 特別な測定条件

6.6.1 一般

特別な測定条件における一般事項は次による。

a) 厚さ測定を行う環境や試験体について,化学的,電気的な安全に関連する法規を遵守する。

b) 高精度の厚さ測定が要求される場合,使用する調整試験片又は対比試験片の温度は試験体の温度と同

じでなければならない。

6.6.2 低温での厚さ測定

測定面が 0 ℃未満の場合は次による。

a) 接触媒質はその音響的な性質が保たれ,その氷点は測定面の温度以下でなければならない。

b) 一般的な探触子の仕様は 0 ℃~50 ℃の温度範囲が多く,0 ℃未満の温度では,測定温度で動作が保

証された専用の探触子を用いる。

c) 接触時間は製造者が推奨する範囲内とする。

6.6.3 高温での厚さ測定

測定面が 50 ℃を超える場合は次による。

a) 探触子は,高温用探触子を用いる。

b) 接触媒質は,測定面の温度で十分性能を発揮するものを使用する。

c) 超音波探傷器を用いる場合は,探傷波形記憶機能付き探傷器が望ましい。

d) 探触子の接触時間は製造者が推奨する測定に必要な 小時間とする。

附属書 JB に高温試験体の厚さ測定における留意点を参考として示す。

6.6.4 有害な雰囲気

有害な雰囲気内で厚さ測定を行う場合は次による。

a) 厚さ測定を行う環境及び試験体について,安全規則又は規準は関連する法規を遵守する。

b) 爆発の危険のある雰囲気内では探触子,ケーブル及び厚さ測定器の組合せが本質的に安全であり,関

連のある安全性の証明を使用前に確認する。

c) 腐食性の雰囲気内では,接触媒質は環境に悪影響を与えることなく音響的な性質を保つ必要がある。

6.6.5 コーティング上からの厚さ測定

コーティング上からの厚さ測定は,B1-B2(Bm-Bn)方式,またはコーティング層と試験体との境界面が得ら

れる場合は境界エコーを表面エコーとみなした S-B1方式(I-B1方式ともいう)を適用できる。

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Z 2355-1:0000

附属書 JC にコーティング上からの厚さ測定における留意点を示す。

7 厚さ測定器の調整

7.1 一般

厚さ測定器の調整は,厚さ測定に使用するものと同じ測定装置で行う。またその手順は,製造者の使用

説明書,有効な規格又は手順書に従って行う。

7.2 方法

7.2.1 一般

厚さ測定器の調整方法は,測定方式及び使用する測定装置に適した方法で実施する。また,調整は試験

体の厚さ測定時と同じ環境条件で行う。

附属書 C に厚さ測定器の調整方法を選ぶ手引きを示す。

7.2.2 超音波厚さ計

超音波厚さ計の調整は次による。

a) R-B1方式を用いる場合は,ゼロ点を調整し,調整用試験片を用いて表示値がその厚さを示すように音

速を調整する。(超音波厚さ計の設定音速が試験体の音速と一致するように調整してもよい)

b) B1-B2(Bm-Bn)方式,S-B1 方式を用いる場合は,調整用試験片を用いて表示値がその厚さを示すよう

に音速を調整する。(超音波厚さ計の設定音速が試験体の音速と一致するように調整してもよい)

7.2.3 超音波探傷器

超音波探傷器を用いて A スコープ表示から厚さを読みとる場合の時間軸の調整は次による。

a) 音速の調整 対比試験片の多重エコーの間隔のビーム路程が,対比試験片の厚さに対応するように時

間軸を調整する。(図 3 a),図 3 b))

b) 時間軸の位置の調整 R-B1方式,S-B1方式の場合は,送信パルスは表示させず,境界面エコーは目盛

のほぼゼロに合わせる。次に 初の底面エコーを対比試験片の既知の厚さに対応するビーム路程の目

盛位置に合わせる。(図 3 c))

Bm-Bn方式の場合は, 初の底面エコーを対比試験片の既知の厚さに対応するビーム路程の位置に合わ

せ,次に第 n 回底面エコーを対比試験片の既知の厚さの n 倍に対応するビーム路程の位置に合わせる。

(図 3 d))

超音波探触子

試験体

B1B2B3

測定方式1,2,3など

a) 超音波伝搬経路

T :送信パルス R :ゼロ点 S1,S2 :表面エコー B1~Bn:底面エコー

B3

B2

B1

B4

既知の厚さd

d d d

b) 音速の調整

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B3

B2

B1

B4

既知の厚さd

T R Aスコープ

d d d d

c) R-B1 方式又は Bm-Bn 方式の時間軸の位置の調整

B3

B2

B1

T S1

S2

Aスコープ

d d d既知の厚さd

d) S-B1 方式の時間軸の調整

図 3-A スコープの時間軸の調整

7.3 調整値の確認

特に指定がない場合,測定開始時,測定終了後及び必要に応じて測定中任意の時間内に調整値の確認を

行い,調整値が前回の調整値に比べ受渡当事者間の取決めによる許容値を超えている場合,前回調整値を

確認してから測定した箇所について再測定を実施する。また,次の場合には必ず調整を行う。

a) 超音波上の問題ではなく,測定装置の動作不良などの異常があると判断した場合

b) 測定装置の全部又は一部を交換した場合

c) 測定技術者が交替した場合

d) 電源を再投入した場合

e) 試験体の材料が異なる場合

f) 試験体又は測定装置の温度が著しく変化した場合

7.4 測定装置の保守及び点検

7.4.1 一般

測定装置の保守は次による。

a) 探触子の接触面にきず,凹凸,片減りなどがある場合,エコー高さの低下及び測定値のばらつきの原

因になるため,接触面を平滑にした後,探触子の性能測定を行い,必要とする性能(交軸距離,交軸

範囲)を満足しない場合は探触子を交換する。

b) 接触媒質が長時間にわたって付着している場合,内部に浸透して機器損傷の原因になるため,探触子,

探触子ケーブルの接栓又は,超音波厚さ計の本体に付着している接触媒質は,測定後,確実にふき取

る。また,探触子の接触面の接触媒質は測定終了後(又は自動カット OFF 機能が作動した場合も),

確実にふき取る。

7.4.2 日常点検

JIS Z 2355-2 の 11. 試験区分 3 による。

なお,附属書 JE には日常点検記録表の例を示す。

7.4.3 定期点検

JIS Z 2355-2 の 10. 試験区分 2 により、1 年以内ごとに行い,その結果を記録する。

7.4.4 特別点検

測定装置を落としたり運搬中に衝撃を与えた場合又は,温度など環境条件が供給者の仕様範囲を越えた

場合などには定期点検と同様の点検を実施する。

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Z 2355-1:0000

8 測定精度への影響

8.1 作業上の条件

測定面の状態は次のように影響する。

8.1.1 測定面の状態

a) 清浄度 測定面の清浄度は測定値に影響し,測定面の前処理が不適切な場合,測定値が不正確になる

ことがある。このため,付着した汚れやスケールは,測定前にブラシ掛けなどにより除去する。

b) 表面粗さ 表面粗さは,探触子との接触面を減少させ超音波の透過性を低下させる他、著しく粗いと

ころでは,超音波のビーム路程が増加するため厚さを過大評価する原因となる。

なお,厚さ測定の不確かさは,厚さが減少するほど増加する。また,入射面の反対側の表面(底面)

が粗い場合,エコーが変化し,測定誤差の原因になり得る。

c) 表面形状 平滑でない測定面上を直接接触型の探触子で測定するときには,部分的に接触媒質層が厚

くなる場合があり(図 4 参照),R-B1 方式では接触媒質層の伝搬時間が表示値に含まれ,誤差が大き

くなる。接触媒質と材料の音速比が 1 対 4 のときには,この誤差は接触媒質の実際の厚さの 4 倍にな

る。

8.1.2 表面温度

温度変化は探触子の遅延材内及び試験体の音速と超音波の減衰量に影響を与えるため,正確性を 大に

する必要がある場合には,温度変化と次の項目に対する影響を考慮する。

a) 参照基準:標準,ゲージ,試験片;

b) 厚さ測定器,探触子など;

c) 手順と方法:接触媒質,試験体

音速は多くの金属とプラスチックでは温度が上がると減少するが,ガラス及びセラミックスでは増加す

る場合がある。温度変化が金属の音速へ与える影響は,通常は無視できるほど少ない。鋼の場合,縦波の

音速はおよそ 0.8 m/s/℃の割合で減少する。

くさびとして一般的に使われるアクリル樹脂の音速は 2.5 m/s/℃の割合で減少する。そのため,温度変化

がくさびの音速に与える影響は大きく,補正が必要な場合もある。

8.1.3 コーティング

コーティングは測定値の誤差要因となるため,附属書 JC を参照して測定することが望ましい。

8.1.4 形状

形状に対する要求は次による。

a) 平行度 試験体(部品)の両面は平行であることが望ましい。傾斜がある場合,底面エコーが歪んだ

り減衰するため,測定が困難又は不正確になる場合がある。

b) 曲面 測定面が曲率をもつ場合,探触子と試験体との接触面積が減少し,超音波の透過性及び測定の

再現性が低下する。そのため、探触子は,超音波が試験体の曲率中心に向かうように配置する。表示

値が不安定な場合,超音波の透過性を向上させるために,探触子の接触面を曲面に合わせて成形する

とよい。

c) 凹面と凸面 探触子の接触面は常に十分な音響結合が得られるようにする。試験体の半径が小さい場

合は,直径の小さい探触子を選定する。

d) 厚さの範囲 正確な測定は,厚さ方向に沿った材料の均一性に依存する。組成の局部的又は全面的な

変化は,対比試験片の材料と比べた音速のずれによる測定誤差が発生する。

8.2 測定装置

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12

8.2.1 分解能

測定装置の真の分解能は,そのシステムにより確認できる測定値の変化の 小値である。例えば,0.001

mm の見掛けの分解能で表示する超音波厚さ計は,0.01 mm の分解能で測定できるだけかも知れない。超

音波探傷器の分解能は,サンプリングレート,画面の分解能(ピクセル数),及び時間軸の調整などの要因

に依存している。

測定装置の分解能は,探触子の種類及び周波数の影響を受ける。探触子の周波数が高くなると,周波数

が低いときよりも厚さの分解能は上がる。これは基本的に周波数の高いパルスでは波形が鋭くなることに

よる。

8.2.2 測定範囲

超音波厚さ計の表示のけた数は単に表示できる数字の範囲だけを意味しており,実際の測定範囲は測定

条件によって影響される。測定可能な厚さの 小値や 大値は,一般に探触子の周波数及び/又は用途(材

料の条件など)により左右される。

探触子は厚さ測定器とは独立に測定範囲に影響し,測定可能な厚さの 小値は主に探触子の周波数と試

験体との音速で定まる。一般的に, 1 波長以下の厚さを測定することは困難である。

f

C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)

ここに, λ: 波長(m) C: 試験体の音速(m/s) f: 探触子の周波数(Hz)

試験体の材料によって音速と減衰は異なるため,探触子の周波数は,試験体の材料及び厚さに応じて選

定する。高い周波数は低い周波数より材料を透過しにくいため,周波数は測定できる 大厚さにも影響す

る。

厚さ測定器は,測定する試験体の厚さがその測定範囲内に含まれているものを選定する。超音波探傷器

で A スコープを用いて厚さ測定する場合には,厚さの測定に必要な分解能を満たすように時間軸を設定す

る。時間軸の範囲は,測定する厚さの範囲の両端が表示されるように調整することを推奨する。

8.3 測定精度に影響するパラメータ

測定精度の評価は,いくつかの測定要素や計算方法によって影響される。

注記 測定精度に影響する重要なパラメータ及びその対応方法を附属書 D に示す。

9 材料の影響

9.1 一般

鍛造又は圧延された金属は,通常,超音波の減衰が少なく,音速はほぼ一定であるため,これらの材料

は箇条 4 の標準的な手順により容易に厚さ測定できる。

9.2 不均一性

合金元素及び不純物を含む材料組成と材料の加工プロセスとは結晶粒組織の構造と方向性に影響し,そ

のことにより金属組織の均一性に影響する。

このことは局部的に試験体内部の音速又は超音波の減衰の変動の要因となり、誤差の発生や測定値が得

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13

Z 2355-1:0000

られない原因になり得る。

9.3 音響異方性

音響異方性のある材料では,組織の向きに対する超音波の入射方向によって音速が異なる場合があるの

で留意する。圧延や押し出し成型により加工された材料,とくにオーステナイト鋼,銅と銅合金,鉛及び

すべての繊維強化樹脂などの例がある。音速の違いによる誤差を 小にするためには,測定面の組織に対

する方向は,対比試験片と試験体でどちらも合わせる必要がある。

9.4 超音波の減衰

超音波の減衰はエコー高さの低下や波形の変化の原因となる。減衰は吸収(例えばゴム)によるエネル

ギーの損失,または散乱(例えば粗い結晶粒)によって起きる。

一般的に鋳物の測定では,散乱による減衰があり,表示値の消失又は誤差の原因となる。プラスチック

の測定では,吸収だけで超音波が大きく減衰する。

9.5 表面状態

9.5.1 一般 表面状態の確認不足がある場合,測定値が得られない又は測定誤差の原因となる場合がある。

9.5.2 接触面 測定面がコーティングされている場合,コーティング材が母材によく接合していればコー

ティングを通して厚さ測定が可能である。(6.6.5 参照) コーティング材と母材との間に隙間が生じてい

る場合は塗膜を剥離する必要がある。

磨耗及び/又は腐食による測定面の表面粗さは,音響結合の状態と測定精度への影響が大きい。測定面の

表面粗さが大きいと,S-B1方式と B1-B2(Bm - Bn)方式は不適当であり,R-B1方式だけが有効となる。表面粗

さの影響で超音波が試験体へ透過しない場合は,測定面を研磨することで厚さ測定ができるようになる可

能性があるが,残厚の少ない部分をさらに削ることになるので実施には注意を要する。

得られた測定値は,表面状態が許容する以上の精度になることは考えられない。図 4 は,この例として

凹部を測定している場合を図示している。この位置において方式1を用いた場合の測定値には,接触媒質

層の厚さ換算値を含んでいる。

超音波探触子

試験体

接触媒質

超音波

B1

B1d

d

接触媒質層が十分薄い場合

接触媒質層が厚い場合

図 4-接触媒質層が厚い場合の伝搬経路

9.5.3 反射面

供用中に発生した腐食又は侵食部分の測定を行う場合,それらは異常な反射面となるため,予想される

腐食の種類についての知識をもち,磨耗,腐食又は侵食の具体的な種類に応じた測定方法を適用する。

9.5.4 腐食

石油,ガス,発電などのエネルギーの配送,製品の貯蔵と輸送などの産業では,圧延鋼板,継目無鋼管

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14

及び溶接接合物などの金属材料で作られた容器やパイプが使用されており,これらは腐食の発生に結びつ

いている。

鋼の容器及び配管類の腐食に適用する超音波技術を選定する場合,次の様式の腐食タイプを考慮する。

a) 均一腐食;

b) 孔食;

c) 析出腐食;

d) 隙間腐食;

e) 電解腐食;

f) 流れ誘起腐食(流れ加速腐食);

g) 溶接部腐食;

h) 上記の腐食の種類の二つ以上の組合せ

附属書 B の表 B.1 は考慮するべき超音波反射体の重要な形と分布を示している。附属書 B は検出と厚さ

測定に適用される技術データを提案している。

10 報告書

10.1 一般

受渡当事者間で取り決めた特定の要求も考慮して,10.2 及び 10.3 に示した項目の内容を記録する。

10.2 一般情報

一般情報は次による。

a) 準拠した図書 手順書,規格,仕様書

b) 測定年月日

c) 測定者(測定技術者)氏名及び保有資格

d) 測定器材 測定器材は次による。

1) 厚さ測定器の型式及び製造番号

2) 探触子の型式及び製造番号

3) 測定時に使用した調整用試験片の名称及び管理番号

4) 接触媒質の種類又は名称

e) 測定条件 測定条件は次による。

1) 試験体の名称

2) 試験体の材料及び厚さ

3) 測定物表面の状態(表面仕上げ、腐食の程度、塗膜の有無及び種類、塗膜の厚さなど)

4) 測定箇所(必要なときは,詳細図の表示)

5) 測定方式及び測定方法の種類

10.3 検査データ

検査データは次による。

a) 測定結果 測定結果は次による。

1) 測定値

一つの測定点ごとの測定値を記録するか,又は定められた値以下の測定値及びその位置を記録す

る。また,必要に応じ,測定線に沿う厚さ変化を断面表示するか,測定範囲内の同一の厚さの点を

線で結んだ等高線などによって平面表示して記録する。また各測定部位での設定音速値と測定部位

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の表面温度は記載する。ただし、測定値へ温度の影響がないことが確認されている範囲では記録は

不要である。

2) 特記事項

b) その他の事項

指定事項,立会者,所見など

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16

附属書 A

(参考)

測定条件の選定

A.1 測定条件の選定

測定条件の選定は,次のフローチャートによる。

開始

製造工程内?

高精度を要求?

厚さd?

平行面?

細粒?

図A.3及び図A.4を参照

図A.2を参照

いいえ(同心円状(管状))

はい

d≦1.5mm

d>1.5mm

測定困難

いいえ(粗粒または樹脂)

はい

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

f>10MHzf≧20MHz(d≦0.5mm)

必要とする精度に対し、これを満足する分解能を有する装置を使用する。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

f≦10MHz

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

または二振動子垂直探触子f≦10MHzf≧4~5MHz(d≦50mm)f=2MHz(d≦200mm)

二振動子垂直探触子を使う時は厚さ測定器はVパス補正が可能な装置が良い。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

または二振動子垂直探触子f≦2MHz

平行面?

細粒?

はい

はい

はい

いいえ

d:試験体の厚さ

f:探触子の公称周波数

D:探触子の振動子径

いいえ(同心円状(管状))

いいえ(粗粒または樹脂)

はい

いいえ

振動子径≪管径?いいえ

はい 測定困難

振動子径≪管径?いいえ

はい

図 A.1-製品検査のフローチャート

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開始

製造工程内?

高精度を要求?

平行面?

厚さd?

いいえ(同心円状(管状))

はい

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:二振動子垂直探触子

D≦6mmf≧10MHz

製造者が推奨する測定可能最小厚さに注意する。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:二振動子垂直探触子

D≦6mmf≦10MHz

粗粒または高減衰材料では低い周波数が必要になることもある。

はい

いいえ

図A.1を参照

厚さd?

製造者による測定限界に注意する。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

または二振動子垂直探触子D≧8mmf≦5MHz

はい

いいえ

d≦1.5mm

d>1.5mm

d≦5mm

d>5mm

d:試験体の厚さ

f:探触子の公称周波数

D:探触子の振動子径

測定困難

振動子径≪管径?いいえ

はい

図A.3及び図A.4を参照

図 A.2-製品検査のフローチャート

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開始

製造工程内?

平行面?

厚さd?

いいえ(同心円状(管状))

はい

超音波厚さ測定では定性的な推定しかできず、代わりの方法を考えるべき。

製造者が推奨する測定可能最小厚さに注意する。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:二振動子垂直探触子

D≦6mmf≦10MHz

粗粒または高減衰材料での厚さ測定は推奨されない。

厚さd?

製造者による測定限界に注意する。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

または二振動子垂直探触子D≧8mmf≦5MHz

はい

図A.1,図A.2を参照

いいえ(保守検査)

均一腐食/エロージョン?

いいえ

温度?50℃超え 6.3,6.6.3,8.1.2

参照

図A.4を参照

はい

はい

d≦1.5mm

d>1.5mm

d≦5mm

d>5mm

d:試験体の厚さ

f:探触子の公称周波数

D:探触子の振動子径

測定困難

振動子径≪管径?いいえ

はい

図 A.3-保守検査のフローチャート

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開始

平行面?

厚さd?

いいえ(同心円状(管状))

はい

超音波厚さ測定では定性的な推定しかできず、代わりの方法を考えるべき。

製造者が推奨する測定可能最小厚さに注意する。孔食のあるブロックで確認すると良い。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:二振動子垂直探触子

D≦6mmf≦10MHz

粗粒または高減衰材料では低い周波数が必要になることもある。孔食のあるブロックで確認すると良い。

厚さd?

製造者による測定限界に注意する。孔食のあるブロックで確認すると良い。

厚さ測定器:5.1.1 a)またはb)探触子:一振動子垂直探触子

または二振動子垂直探触子D≧8mmf≦5MHz

均一腐食/エロージョン?

いいえ(孔食)

温度?50℃超え 6.3,6.6.3,8.1.2

参照

はい

はい

d≦1.5mm

d>1.5mm

d≦5mm

d>5mm

図A.3を参照

d:試験体の厚さ

f:探触子の公称周波数

D:探触子の振動子径

測定困難

振動子径≪管径?いいえ

はい

図 A.4-保守検査のフローチャート

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20

附属書 B

(参考)

鋼の腐食

B.1 鋼の腐食の分類

鋼の腐食の分類は,表 B.1 による。

表 B.1-鋼の腐食分類

No. 種類 典型的な腐食原因とメ

カニズム 解説図

推奨される

超音波技術

1 均一腐食 a)/

エロージョン a)

次のような腐食環境で

起きる:

-酸素で飽和した水

-酸性溶液

-湿潤気体からの凝縮

6.2.3.3

参照

2 孔食 a)

腐食領域には明確な境

界があり,その周囲は典

型的には未腐食。

孔食は材料の結晶構造

と集合組織,表面状態に

より形態が異なる。

6.2.3.3

参照

2a 孔食 a) 分布パターン

注参照

3 析出腐食 a)

隙間腐食 a)

堆積物の下や水で満た

された狭い隙間で起き

注参照

4 電解腐食 a) 異種金属

注参照

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21

Z 2355-1:0000

表 B.1-鋼の腐食分類(続き)

5 流れ誘起

腐食 a)

注参照

6 乱流腐食 a)

注参照

7 メサ型腐食 a)

注参照

8 キャビテーショ

ン腐食 a)

注参照

9 溶接部腐食 a)

注参照

注 a) これらの腐食形式は腐食の検出と定量化を達成するときに出会う可能性と困難性とを図解するために示されてい

る。図解は情報として示すことだけを目的にしている。個々の場合に適用する技術は対象への接近条件,材料

の厚さその他のパラメータによるため,それについて具体的に推奨することはできない。

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附属書 C

(参考)

装置の調整

C.1 装置の調整

装置の調整は,表 C.1 及び C.2 による。

表 C.1-複数段対比試験片による装置の調整

操作

対比試験片により選定する:

同じ材料 異なる材料

同じ表面状態 異なる表面状態 同じ表面状態 異なる表面状態

装置の調整 測定厚さ範囲の上下の厚さで調整

中間のステップで

の直線性の確認 2 段を超えるステップが利用できるとき

設定の修正

不必要 試験体上でゼロ点調

整の確認と修正

可能ならば試験体上

での再調整又は表示

値を既知の音速で補

可能ならば試験体上

での再調整又は試験

体上でゼロ点調整の

確認と修正,及び既知

の音速値の使用

装置の調整に

影響する要因

対比試験片の厚さの精度

2 ステップだけを使うときの直線性

試験体の表面状態 試験体の表面状態又

は既知の音速値の妥

当性

試験体の厚さの精度

または既知の音速値

の妥当性

試験体の厚さの精度

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Z 2355-1:0000

表 C.2-単一厚さ対比試験片又は対比試験片無しによる装置の調整

操作

対比試験片により選定する:

同じ材料 同じ材料の対比試験片を

使えない 同じ表面状態 異なる表面状態

装置の調整 音速とゼロ点を既知の値と厚さに一致するように設定

音速を試験体の既知の値に設

定。

ゼロ点を既知の値又は方式 3

又は探触子を自動認識するこ

とにより設定

中間のステップで

の直線性の確認 不可能

設定の修正 不必要 試験体上で

ゼロ点調整の確認と修正 不可能

装置の調整に

影響する要因

対比試験片の厚さの精度 既知の数値の妥当性

直線性

試験体の表面状態

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附属書 D

(参考)

精度に影響のあるパラメータ

D.1 精度に影響のあるパラメータ

精度に影響のあるパラメータを,表 D.1 に示す。

表 D.1-精度に影響のあるパラメータの表

項目 パラメータ 結果 可能性のある改良

試験体

材料

組成 減衰,吸収,散乱,音速の局

所変動 試験体と同じ材料による装置の調整 構造

異方性

表面状態

清浄さ 表面状態の局所変動による

接触媒質厚さの変動

清浄にする

粗さ 要求に従った測定面の研磨

表面形状 径の小さい探触子を使う

塗膜

コーティング 母材音速と塗膜音速の差に

よる不正確性 コーティングの除去又は方式 3 の利用塗料

表面処理

形状

非平行性 底面エコーの消失又は歪み 平行度は探触子の指向角以内

(±1.22 arcsin λ/d)

曲率 音響結合効率の低下 径のより小さい探触子を使う

範囲 減衰による底面エコーの歪

方式 1 で低周波数探触子を使う

方式 4 を使う

参照

方法 調整法 不正確な表示値

試験部を代表する対比試験片を使う,

厚さの予想値より薄いステップと厚い

ステップ,

調整法の選定,附属書 B 参照

対比試験

片 厚さと音速 測定精度は試験片の精度 試験片厚さと音速の正確な測定

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Z 2355-1:0000

表 D.1-精度に影響のあるパラメータの表(続き)

項目 パラメータ 結果 可能性のある改良

測定

装置

分解能 精度はシステムの分解能を超

えない

高精度の装置,高周波数の探触子

及び広帯域探触子を使う

ケーブル長 余分なケーブル長は信号を歪

める

短いケーブルを使い,同じケーブルで

調整する

装置のドリフト 不正確な表示値

装置をウォーミングアップして表示値

の安定を待つか,又は安定した機器を

使う

伝搬時間 精度は伝搬時間の測定精度を

超えない より高精度の装置を使う

直線性 不正確な表示値 システムの直線性を確実にする

トリガー点 不正確な表示値 良なトリガー点の選定

操作 V-パス

超音波の経路(路程)が厚さ

(表面―裏面 短距離)と異

なることによる不正確な表示

V-パス補正のある厚さ計を使うか,又

は(二振動子の)ルーフ角と間隔を考

慮する。

一振動子探触子を使う

位相のシフト 誤った表示値 位相のシフトを考慮する

再現性 方法

方法 不適切な操作 正しい手順又は取扱説明の提供

再現性試験の実施

音響結合 音響結合の不良による表示値

のばらつき

表面状態に合った接触媒質の選定

可能ならば方式 3 を使う

ユーザー訓練 表示値の誤差 作業者訓練

その他 温度 音速の変動 表示値の誤差 試験体と同じ温度で調整,又は音速の

変化に対して調整値を補正

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附属書 JA

(参考)

管材の厚さ測定方法

JA.1 一般

この附属書は,超音波パルス反射法によって,管材の厚さ測定する時の留意点などについて記載するも

ので,規定の一部ではない。

JA.2 管材の測定方法

管材の厚さ測定は管材の内外面を測定面とする 2 方法があり,その測定面の状況に応じて適切な測定条

件を設定する必要がある。超音波厚さ計は 5.1.1,探触子は 5.1.2 から選定する。なお,探触子の選定には

測定を行う管材の外径,内径,厚さなどを考慮し,探触子の種類,周波数,振動子寸法,接触面の寸法,

遅延材の要否などを決定する。

なお,決定に際しては模擬試験片を作成し,装置と探触子の組み合わせにより確認試験を行うことを推

奨する。

JA.2.1 数値表示超音波厚さ計を用いる場合

数値表示超音波厚さ計と二振動子垂直探触子とを組み合わせて用いる場合、1 回測定では音響隔離面の

向きを管軸に対し直角(図 JA.1 参照)に配置して測定するが,2 回測定法では音響隔離面の向きを管軸に

対し直角と平行に配置して測定する。

なお、接触媒質は線接触の音響結合が可能な限り良好に得られる方法で塗布する必要がある。

管軸

平行 直角

探触子

音響隔離面

図 JA.1-音響隔離面と管材管軸方向の関係(一般管材直管部)

a) 管材の厚さ測定を行う場合,薄い厚さの管材が多いことから始業点検にて測定下限の確認を行い記録

しておくことを推奨する。

b) 管材の外径が小さくなると安定した厚さ測定が困難になる場合がある。このような状況の時は探触子

の種類などを適切に決定する必要がある。

c) 管材の厚さが薄い場合,R-B1 方式の測定方法では厚さ測定が困難になる場合がある。この場合は多重

エコー方式(Bm-Bn 方式)にて厚さ測定を行うことを推奨する。この場合,2.2 の表示器付き超音波厚

さ計又は超音波探傷器の使用を推奨する。

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Z 2355-1:0000

JA.2.2 表示器付き超音波厚さ計又は超音波探傷器を用いる場合

図JA.2に管材内面からの厚さ測定例を示し,図JA.3に管材内面側の外面側腐食部の厚さ測定例を示す。

なお,近年では遅延材付き垂直探触子で遅延材の接触面又は振動子寸法の極小さいもの,又は周波数が

20 MHz 以上の広帯域垂直探触子などが多く使用されている。

図 JA.2-管材内面からの厚さ測定(遅延材付き広帯域垂直探触子の場合)の例 1)

図 JA.3-管材内面からの腐食部の厚さ測定(遅延材付き広帯域垂直探触子の場合)の例 1)

1)日本非破壊検査協会編 超音波厚さ測定Ⅰ(2001 年版)pp.74 より引用

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28

附属書 JB

(参考)

高温試験体の厚さ測定方法

JB.1 一般

この附属書は,超音波パルス反射法によって高温試験体の厚さを測定する時の留意点について記載する

もので,規定の一部ではない。

なお,ここでいう高温試験体とは,測定面の温度が 50 ℃を越えるものをいう。

JB.2 高温試験体の厚さ測定における注意点

高温試験体の厚さ測定を行う場合,高温に耐えられる遅延材などを介して超音波を伝搬するのが一般的

な方法である。この遅延材などの種類によっては試験体の表面温度が 300 ℃~500 ℃まで厚さ測定が可能

なものもある。

a) 接触媒質は,高温専用のものを使用する必要がある。

b) 試験体の温度が高温になっている時は,音速も常温の時と比べて変化している。図 JB.1 に鋼材の温

度による音速変化の一例を示す。音速は温度が高くなると遅くなるため,厚さ測定での表示値に対し

て音速の補正が必要であることから,各測定点での厚さ測定時には測定面の温度の測定を併せて行っ

ておく事を推奨する。また、表面の温度と内部の温度が異なる場合もあるため,温度分布についての

考慮も必要である。

c) 高温の厚さ測定を行う場合,使用する垂直探触子により適用温度範囲,高温試験体への接触時間,探

触子の冷却方法,冷却時間などが製造業者から指定されている場合があることから探触子の取り扱い

には十分に注意が必要である。

図 JB.1-鋼の温度による縦波音速の変化の測定例 1)

1)日本非破壊検査協会編 超音波厚さ測定Ⅰ(2009 年版)pp.76 より引用

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29

Z 2355-1:0000

附属書 JC

(参考)

コーティング上からの厚さ測定方法

JC.1 一般

この附属書は,超音波パルス反射法によって,測定面にコーティングが施された試験体の厚さを測定す

る時の留意点などについて記載するもので,規定の一部ではない。コーティングには,樹脂系・金属系・

ゴム系及びガラス系など様々な材料が用いられている。

JC.2 コーティング上からの厚さ測定

超音波厚さ計は 5.1,探触子は 5.2 から選定する。

なお,探触子の選定には測定を行う試験体の予想される厚さ,腐食の程度,使用されている塗膜材料な

どを考慮し,探触子の種類,周波数,振動子寸法,接触面の寸法,遅延材の要否などを決定する。なお,

決定に際しては模擬試験片を作成し,装置と探触子の組み合わせにより確認試験を行うことを推奨する。

JC.2.1 数値表示超音波厚さ計を用いる場合

コーティング上からの厚さ測定には,多重エコー方式(B1-B2方式又は Bm-Bn方式)が適用できる。ま

た、コーティング材と試験体との境界面エコーを明瞭に分離できる場合は、I-B1方式も適用できる。

R-B1方式およびコーティング面からの表面エコーを用いた S-B1方式の場合は,図 JC.1 に示されるよう

に表示値にコーティングの影響が含まれる。コーティングの音速 Cc と厚さ Tc が分かれば,下式によりコ

ーティング厚さを減じて試験体の厚さを算出することができる。

T=Dm-(Tc×C/Cc) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)

ここで Dm は表示値,Tc はコーティングの厚さ,Cc はコーティングの音速,C は測定材の音速である。

試験体

超音波

超音波探触子

試験体

超音波

超音波探触子

コーティングまたはめっき層

コーティングによる伝搬経路の増加

図 JC.1 コーティングの通過による音響経路の増加

R-B1方式,S-B1方式におけるコーティングの影響は次のとおりである。

a) 金属コーティング クラッドされている材料は,クラッド材(構造,組成,厚さ,クラッド加工法,

層の数など)を考慮しないと,材料厚さのみかけの増加(又は熱処理材の場合にはみかけの減少さえ

も)が起こりうる。

めっきを考慮するかどうかは要求される測定精度による。

例えば,鋼用に調整した装置では:

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30

- 鋼 1 mm, v = 5920 m/s;

- 亜鉛 20 μm,v = 4100 m/s;

- 実際の厚さ 1 mm + 20 μm = = 1.02 mm;

s763

738.14100

1020

5920

101

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

mm029.15920738.1 7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

- 測定厚さ 1.029 mm;

- 偏差 0.009 mm

クラッド厚さは測定することができる。測定精度は母材の測定と同じパラメータに依存する。

b) 非金属コーティング

コーティング上から厚さを測定する場合の測定誤差はコーティング材と試験体の音速の差による。

図 JC.1 参照。

- 鋼 1 mm, v = 5920 m/s;

- 塗料 100 μm, v = 2100 m/s(これは一般的な数値で代表値ではない);

- 実際の厚さ 1 mm + 100 μm = = 1.1 mm;

s763

165.22100

10100

5920

101

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)

mm282.15920165.2 7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)

- 測定厚さ 1.282 mm;

- 偏差 0.182 mm

もしもコーティング材料が次の場合は,期待とおりの測定が難しいこともある:

- 試験体と同じような音響的な性質の材料;

- 厚さが試験体に比べて十分に薄くない場合

JC.2.2 コーティング上からの厚さ測定における留意点

コーティング上からの厚さ測定を行う場合,次の状況が考えられることから JC.2.2 c)の処置を推奨する。

a) 超音波減衰と腐食の有無 コーティング上からの厚さ測定で判断すべき重要な点は,そのコーティン

グ内の超音波減衰と厚さ及び腐食の有無である。これらに起因し,試験体の厚さを表示しない,又は

測定値が安定しない場合がある。

b) 腐食がある場合 裏面側に腐食がある場合,エコーB1,Bn ともエコー高さが低下し,装置のしきい値

をエコー高さが超えない為に,厚さ測定が困難になる。

c) 処置方法 附属書 JC 2.2 a) b)などの状況となった場合は,JC.2.1.2 の表示器付き超音波厚さ計又は超

音波探傷器を用い,Aスコープからのエコーを観察し,適切なエコー高さ,測定条件に装置を調整し,

厚さを測定する。

JC.2.3 表示器付き超音波厚さ計又は超音波探傷器を用いる場合

図 JC.2 にコーティング上からの腐食をもつ鋼板の厚さ測定例を示し,図 JC.3 にゴムコーティングされ

た鋼板の厚さ測定例を示す。

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31

Z 2355-1:0000

図 JC.2-塗装鋼板の塗膜上からの鋼材部の厚さ測定の例 1)

図 JC.3-ゴムライニング在の鋼材部の厚さ測定の例 1)

1)日本非破壊検査協会編 超音波厚さ測定Ⅰ(2001 年版)pp.75 より引用

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32

附属書 JD

(参考)

点検記録例

この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな

い。

JD.1 一般

表 JD.1 は“始業前点検記録表”様式例,表 JD.2 は“始業前点検及び日常管理記録表”様式例である。

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33

Z 2355-1:0000

表 JD.1-日常点検記録表の様式例

超音波厚さ測定装置 始業前点検記録表

承 認

【使用装置及び点検者】

点検者名 資格種別 資格番号 測定対象物の材料,設計板厚など

材料: ,板厚: ㎜

超音波厚さ 測定装置

管理番号 型式 製造番号 製造業者名 定期点検有効期限

垂直探触子

型式 製造番号 種別 周波数 振動子寸法

一振動子 二振動子

MHz mm

【目視点検結果】

区 分 点 検 項 目 点 検 基 準 及 び 試 験 基 準 合否判定

厚さ測定 装置

外観 接触媒質などの付着及び損傷のないこと。 合 ・ 否

ねじ締付部 ねじ類の脱落及び締付部にガタのないこと。 合 ・ 否

コネクター部 接触媒質などの付着及び緩みのないこと。 合 ・ 否

探触子 外観 変形及び損傷がないこと。 合 ・ 否

接触面 接触面が平滑で損傷のないこと。 合 ・ 否

コネクター部 接触媒質などの付着及び緩みのないこと。 合 ・ 否

ケーブル 外観 被覆などに損傷がなく使用時に異常が予想されないこと。 合 ・ 否

コネクター部 接触媒質などの付着及び緩みのないこと。 合 ・ 否

始業点検の結果,異常が認められた場合は修理依頼する。

【性能測定結果】

接触媒質: ,温度: ℃

1.誤差の測定(測定方法:JIS Z 2355) 試験片型式: 管理番号:

試験片厚さ(㎜) 表 示 値 ( ㎜ ) 測定値

(㎜)

誤 差 |T-M| (㎜)

調整値の確認

公称 厚さ

機械的寸法 T

1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 測定前 測定後

音速設定値: m/s 誤差の 大値 ㎜

2.測定下限の測定(測定方法:JIS Z 2355) 試験片型式: 管理番号:

試験片厚さ (㎜) 調整値の確認

測 定 値 ( ㎜ ) 測定前 測定後

測定下限値 (㎜ ) ㎜

測定下限の測定は必要に応じて実施する。

【点検日時】 平成 年 月 日 , 時 分

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34

表 JD.2-日常点検記録表の様式例

超音波厚さ測定装置 始業前点検及び日常管理記録表

承 認

【使用装置及び点検者】

点検者名 資格種別 資格番号 測定対象物の材料,設計板厚など

材料: ,板厚: ㎜

超音波厚さ 測定装置

管理番号 型式 製造番号 製造業者名 定期点検有効期限

垂直探触子 型式 製造番号 種別 周波数 振動子寸法

一振動子 二振動子

MHz mm

【目視点検結果】

区 分 点 検 項 目

厚さ測定装置 外観,ねじ締付部,接栓部

垂直探触子 外観,接触面,接栓部

ケーブル 外観,接栓部

点検結果

※異常が認められた場合,下記に列記する。

【性能測定結果】

接触媒質: ,温度: ℃

1.誤差の測定(測定方法:JIS Z 2355) 試験片型式: 管理番号:

試験片厚さ(㎜) 表 示 値 ( ㎜ ) 測定値 M

(㎜)

誤 差 |T-M| (㎜)

調整値の確認

公称 厚さ

機械的寸法 T

1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 測定前 測定後

音速設定値: m/s 誤差の 大値 ㎜

2.測定下限の測定(測定方法:JIS Z 2355) 試験片型式: 管理番号:

試験片厚さ (㎜) 調整値の確認

測 定 値 ( ㎜ ) 測定前 測定後

測定下限値 (㎜ ) ㎜

測定下限の測定は必要に応じて実施する。

【日常管理:調整値の確認】

時間 測定前 : : : : : : : 測定後

試験片厚さ

(㎜)

【点検日時】 平成 年 月 日 , 時 分

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35

Z 2355-1:0000

附属書 JE

(参考)

JIS と対応国際規格との対比表

JIS Z 2355-1:0000 名称 非破壊試験-超音波厚さ測定試験-第1部:超音波厚さ

測定

ISO/IEC 16809:2012 Non-destructive testing - Ultrasonic thickness measurement

(Ⅰ)JIS の規定 (Ⅱ)

国際規格

番号

(Ⅲ)国際規格の規定 (Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異

の理由及び今後の対策

箇条番号

及び題名

内容 箇条番号 内容 箇条ごと

の評価

技術的差異の内容

1 適用範

主として金属材料

に対して,保守検査

又は製品検査を行

う場合の厚さ測定

方法。

1 金属及び非金属材料を超

音波パルスの伝搬時間だ

けに基づいて,直接接触

法により超音波厚さ測定

する原則。

変更 JIS では、主として金属材料を

対象とし、直接接触法の規定は

外した。

旧 JIS では主として金属構造物の保

守検査を対象としており、それを踏

襲するとともに ISO にある製品検査

を含めた。製品検査では水浸法も用

いられるため、直接接触法への限定

はしなかった。

5 年目の見直し時に、市場の普及によ

って、ISO 規格の規定に合わせるかど

うかを判断する。

2 引用規

3 用語及

び定義

JIS Z 2300 による

他、残存厚さ、グリ

セリンペースト、表

示値、測定値を記

述。

3 ISO 5507 と EN 1330-4 に

記載された用語と定義。

変更 JIS の用語に合わせる他、旧

JIS の用語を見直して残した。

また、旧 JIS から用いられてい

る表示値と測定値について定

義を明確にした。

4 測定方

1)ゼロ点・第 1 回底

面エコー方式

2)表面エコー・第 1

回底面エコー方式

3)多重エコー方式

4)透過エコー方式

4 1)単一エコー方式

2)単一エコー遅延線方式

3)多重エコー方式

4)透過方式

変更 単一エコー遅延線方式に対応

する方式は、旧 JIS の零点・第

1 回底面エコー方式とした。

ISO 規格に合わせると、業界の混乱を

引き起こす可能があるため、旧 JIS

の規定に合わせた。

5 年目の見直し時に、市場の普及によ

って、ISO 規格の規定に合わせるかど

うかを判断する。

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36

(Ⅰ)JIS の規定 (Ⅱ)

国際規格

番号

(Ⅲ)国際規格の規定 (Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異

の理由及び今後の対策

箇条番号

及び題名

内容 箇条番号 内容 箇条ごと

の評価

技術的差異の内容

5.1 測定

装置

測定装置は厚さ測

定器と探触子との

組合せとしている。

5.1 測定装置には探触子は含

んでいない。

変更 JIS では測定装置は厚さ測定

器(厚さ計や超音波探傷器)と

探触子の組み合わせとしてい

る。

厚さ測定の性能は、厚さ計だけでな

く探触子にも依存するため、組合せ

として規定した。

5.1.2 探

触子

探触子ケーブルも

規定。

5.2 探触子ケーブルの規定は

ない。

追加 JIS では測定装置の製造業者

によって指定されたケーブル

を用いるとしている。

厚さ測定においてケーブルも測定下

限などの性能に影響するため規定し

た。

5.2 接 触

媒質

表面粗さにより接

触媒質を規定。

5.3 表面粗さによる規定はな

い。

変更 JISでは表面粗さ25μm以上で

グリセリンペーストを規定。

4 に同じ。

5.5 測定

技術者

JIS に規定する資格

者又はこれと同等

の有資格者と規定。

5.6 ISO 9712 または同等の標

準に従って認証されてい

ることを推奨。

変更 ISO では認証を推奨としてい

るが、JIS では有資格者と規

定。

国内では厚さ測定 UM1 の認証制度が

長くあることや、製造現場では雇用

主認証が適用されているため、有資

格者と規定した。

6.1 表面

状態及び

測定面の

処理

前処理が必要な場

合、測定面をきずつ

けたり,うねらせた

りしないように注

意をはらって除去

と規定。

6.1 腐食した表面で行う場

合、接触面を研磨しなけ

ればならないと規定。

変更 JIS では表面の研磨は規定し

ていない。

腐食が進んでいる試験体の場合、研

磨によってより薄くしてしまう場合

があり、現場の実態を考慮した。

6.2.1 一

測定方法を規定。 6.2.1 測定方法の規定はない。 変更 JIS では2回測定法などの測

定方法を規定。

4 に同じ。

6.2.2 製

品検査に

おける厚

さの測定

二振動子垂直探触

子や集束型探触子

を用いる場合、集束

範囲が適切なもの

を選定することを

規定。

6.2.2 集束範囲に関する規定は

ない。

追加 JIS では適切な交軸範囲・集束

範囲を選定するとしている。

ISO では 6.3 に一部記載あり。

試験体に対して集束範囲が不適切で

あると感度が低下して測定できない

場合があるため、この規定を追加し

た。

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37

Z 2355-1:0000

6.2.3 保

守検査に

おける残

存厚さの

測定

同上 6.2.3 同上 追加 同上 同上

6.2.3 保

守検査に

おける残

存厚さの

測定

探触子の移動方法

と表示値の扱い方

について規定。

6.2.3 これらの規定はない。 変更 JIS では二振動子垂直探触子

を道いる場合、移動の際に持ち

上げる規定、表示値の扱い方の

規定を入れている。

4 に同じ。

6.2.3.3

腐食部の

厚さ測定

における

留意点

腐食部の厚さ測定

における留意点を

記載。

6.2.3 これらの記載はない。 追加 JIS では測定面や裏面の腐食

時の現象を延べ、処置方法を規

定。ISO では附属書 A(参照)に

同様の内容が記載。

腐食部位が多い保守検査においては

表示値が安定しない場合があり、処

置方法は規定とした。

6.2.3.4

管材の厚

さ測定

管材の厚さ測定に

おける留意点を記

載。

6.2.3 これらの記載はない。 追加 JIS では附属書 JA を引用し、

管材の測定における留意点を

記載。ISO では 8.1.5.3 に部分

的に記載。

保守検査においては配管の測定が多

いため、旧 JIS の附属書4(規定)管

材の厚さ測定方法の内容を見直し

て、留意点として附属書 JA を追加し

た。

6.3 探触

子の選定

減衰材料の測定に

おいて、低周波数の

探触子を規定。

6.3 低周波数の探触子につい

ての規定はない。

追加 JIS では減衰材料の測定に置

いてより低い周波数の探触子

が望ましいとした。

減衰材料においては低周波数の探触

子を用いると測定しやすくなるた

め、この規定を追加した。

6.4 厚 さ

装置器の

選定

装置と測定方式と

の対応は明示して

いない。

6.4 装置と測定方式との対応

を記述している。

変更 左記のとおり。 ISO 規格の対応付けは不適切と考え

られるため、その部分は削除した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

6.5 対 比

試験片と

は異なる

材料

音速による表示値

の補正を行えば、他

の試験片を用いて

もよいことを追加。

6.5 表示値の補正については

記述されていない。

変更 左記のとおり。 4 に同じ。

6.6.2 低

温での厚

さ測定

一般的な探触子の

温度範囲を 0℃~

50℃と規定。

6.6.2 一般的な探触子の温度範

囲を-20℃~60℃と規定。

変更 左記のとおり。 国内で流通している探触子の実態に

合わせて変更した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

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38

(Ⅰ)JIS の規定 (Ⅱ)

国際規格

番号

(Ⅲ)国際規格の規定 (Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異

の理由及び今後の対策

箇条番号

及び題名

内容 箇条番号 内容 箇条ごと

の評価

技術的差異の内容

6.6.3 高

温での測

高温の範囲を 50℃

を越える温度と規

定。

附属書 JC に高温物

の厚さ測定におけ

る留意点を示した。

6.6.3 高温の範囲を 60℃を越え

る温度と規定。

高温試験体に関する留意

点の附属書はない。

変更 左記のとおり。 国内で流通している探触子の実態に

合わせて変更した。

また、旧 JIS 附属書 5(規定)高温測定

物の厚さ測定方法の内容を見直し、

留意点として附属書 JB を追加した。

6.6.5 コ

ーティン

グ上から

の測定

B1-B2 で測定できる

こと、附属書 JC に

コーティング上か

らの厚さ測定の留

意点を示した。

この項目はない。 追加 JIS ではこの項でコーティン

グ上からの厚さ測定を示した。

ISO規格では8項精度への影響

に記述されている。

コーティング上からの厚さ測定は特

殊な測定条件であり、分かりやすさ

のため追加した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

7.2.2 超

音波厚さ

厚さ計の調整方法

を規定。

7.2.2 数値で表示するデジタル

厚さ計の調整方法を規

定。

変更 JIS では厚さ計について記述。

ISOではJISの数値表示厚さ計

について記述。

Aスコープ表示器付き厚さ計の調整

方法は数値表示厚さ計と同じである

ためこちらに含めた。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

7.2.3 超

音波探傷

超音波探傷器を用

いてAスコープか

ら厚さを読みとる

場合の調整方法を

規定。

7.2.3 Aスコープ装置の調整方

法を規定。

変更 JIS では超音波探傷器を用い

てAスコープから読みとる場

合とし、各種測定方式での調整

方法の説明図を挿入した。

Aスコープ表示器付き厚さ計は

7.2.2 に含めることとしたので、

7.2.3 は超音波探傷器を用いる場合

と明確化し、分かりやすさのため説

明図を追加した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

7.3 調 整

値の確認

受渡当事者間の取

り決めによる許容

値を超えている場

合の再測定を規定。

7.3 再測定の規定はない。 変更 JIS では再測定を規定。 4 に同じ。

7.4 測 定

装置の保

守及び点

日常点検、定期点

検、特別点検を規

定。

この項目はない。 追加 左記のとおり。 4 に同じ。

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39

Z 2355-1:0000

(Ⅰ)JIS の規定 (Ⅱ)

国際規格

番号

(Ⅲ)国際規格の規定 (Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異

の理由及び今後の対策

箇条番号

及び題名

内容 箇条番号 内容 箇条ごと

の評価

技術的差異の内容

8.1.4 a)

平行度

平行度の具体的な

数値は削除。

8.1.5.1 ±10°以内で平行である

べきと記述。

変更 左記のとおり。 測定条件によって値は変わるため、

値の記述については削除した。

6.4 に同じ。

8.1.3 コ

ーティン

コーティング測定

における留意点を

附属書 JC を呼んで

記載。

8.1.3 コーティングの影響につ

いて数値例を記載。

変更 左記のとおり。 コーティング上からの測定を行う場

合は多いため、旧 JIS 附属書 3(規定)

塗膜をもつ測定物の厚さ測定方法の

内容を見直し、ISO の 8.1.3 の内容も

含めて留意点として附属書JCを追加

した。

8.3 測 定

精度に影

響するパ

ラメータ

不確かさの計算方

法は削除。

8.3.3 不確かさの計算方法が記

載。

削除 左記のとおり。 不確かさは商取引上まだ普及してい

ないため削除した。

5 年目の見直し時に、市場の普及によ

って、ISO 規格の規定に合わせるかど

うかを判断する。

9.5.2 接

触面

コーティング厚さ

の減算の記述は削

除。

9.5.2 コーティング厚さの減算

について記述。

変更 左記のとおり。 コーティング厚さの減算は現場的に

は実施が困難な場合が多いため規定

からは外し、附属書JCにて記述した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

10.2 一

般情報

作業者の署名は規

定されていない。

10.2 作業者の署名を規定 変更 左記のとおり。 国内では署名は普及していないため

削除した。

5 年目の見直し時に、ISO 規格の規定

に合わせるかどうかを判断する。

10.3 検

査データ

各測定部位での設

定音速値と測定部

位の表面温度の記

載を規定。

10.3 この規定はない。 追加 左記のとおり。 設定音速値と測定部位の表面温度は

測定精度への影響が大きいため、こ

の規定を追加した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

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40

附属書 A (参考)測定条件の

選定

附属書 D 変更 探触子の径や周波数について

は、我が国にて一般に適用され

ている範囲に変更。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

(Ⅰ)JIS の規定 (Ⅱ)

国際規格

番号

(Ⅲ)国際規格の規定 (Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異

の理由及び今後の対策

箇条番号

及び題名

内容 箇条番号 内容 箇条ごと

の評価

技術的差異の内容

附属書 D (参考)精度に影響

のあるパラメータ

附属書 C C.2 に不確かさの計算方

法が記載。

変更 JIS では不確かさの計算方法

C.2 は削除。

8.3 に同じ。

附属書 JA (参考)管材の厚さ

測定方法

この附属書はない。 追加 JIS では管材の厚さ測定にお

ける留意点を記述。

旧 JIS における附属書 4(規定)管材

の厚さ測定方法の内容を見直し、留

意点を参考として残した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

附属書 JB (参考)高温試験体

の厚さ測定方法

この附属書はない。 追加 JIS では高温試験体の厚さ測

定における留意点を記述。

旧 JIS における附属書 5(規定)高温

物の厚さ測定方法の内容を見直し、

留意点を参考として残した。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

附属書 JC (参考)コーティン

グ上からの厚さ測

定方法

この附属書はない。 追加 JIS ではコーティング上から

の厚さ測定における留意点を

記述。

旧 JIS における附属書 3(規定)塗膜

をもつ測定物の厚さ測定方法の内容

を見直し、留意点を参考として残し

た。

ISO 規格の見直し時に提案するか判

断する。

附属書 JD (参考)点検記録例 この附属書はない。 追加 JIS では点検記録例を記述。 本文 7.4 装置の保守及び点検に対応

し、始業前点検記録表などの様式例

を示した。

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41

Z 2355-1:0000

JIS と国際規格との対応の程度の全体評価:ISO/IEC 00000:0000,MOD

関連する外国規格

注記 1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。

- 一致……………… 技術的差異がない。

- 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。

- 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。

- 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。

- 選択……………… 国際規格の規定内容とは異なる規定内容を追加し,それらのいずれかを選択するとしている。

- 同等でない……… 技術的差異があり,かつ,それが明確に識別されていないか又は説明されていない。

注記 2 JIS と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。

- IDT……………… 国際規格と一致している。

- MOD…………… 国際規格を修正している。

- NEQ………………IDT 及び MOD に相当していない。

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42

JIS Z 2355-1:0000

超音波厚さ測定試験 第1部:測定方法

解 説

この解説は,規格に規定・記載した事柄を説明するもので,規格の一部ではない。

この解説は,日本規格協会が編集・発行するものであり,これに関する問合せ先は日本規格協会である。

1 今回の制定までの経緯

この規格は,1987 年に JIS Z 2355 として制定された後,1994 年及び 2005 年の改正(以下,旧規格とい

う)を経て,今回,関連する ISO 規格への整合を目的に旧規格を廃止し,新たに JIS Z 2355-1 として制定

することに至った。

2011 年に(一社)日本非破壊検査協会に JIS 原案作成準備 WG を設置し,JIS Z 2355:2005 の見直し及び上

記 ISO 規格との整合化作業を行い,制定原案の素案をまず作成した。

その後,2014 年から,(一社)日本非破壊検査協会内に原案作成委員会を設置し,上記制定原案の素案を

元に今回の制定原案を作成した。原案作成委員会は,生産者・使用者・中立者からなる 22 名の委員によっ

て構成され,2014 年 8 月~2015 年 2 月までの期間に 5 回の本委員会と 7 回の分科会を開催した。

2 今回の制定の趣旨

JIS Z 2355 は 1987 年の制定以降,1994 年の改正を経て,前回改正(2005 年)において全面見直しが行

われたが,以後の現場での適用過程において不具合のある点,及び表現上の受け取り方により理解の難し

い点の指摘などもあり,それらの規格内容の過不足を調整する必要が生じていた。さらに,ISO 16809

(Non-destructive testing - Ultrasonic thickness measurement),ISO 16831(Non-destructive testing - Ultrasonic

testeing - Characterization and varification of ultrasonic thickness measuring equipment)が 2012 年に制定され,

ISO 規格との整合を図る必要が生じた。本規格はこれらの課題に対応して,ISO 規格との整合化も図った

ものである。

3 審議中に特に問題となった事項

3.1 ISO との整合化について

厚さ測定方法の規格である JIS Z 2355:2005 に対し,ISO 規格は ISO 16809(厚さ測定方法)と ISO 16831

(厚さ測定装置)がそれぞれ制定され,ISO 規格への整合化を行うためには JIS Z 2355:2005(以下,旧 JIS

とも呼ぶ)の大幅な改正が必要となった。

ISO 16809 には JIS Z 2355:2005 が対応するが,ISO 16809 は適用範囲が非金属材料及び/又は製造中を

含む幅広い一般的な内容かつ解説的な内容を含むものであるのに対し,JIS Z 2355:2005 は厚さ計に関する

我が国での研究を踏まえて現場での使いやすさと信頼性を念頭に作られた規格であり,両者はその性格を

異にするものであった。また,ISO 16831 に対応する独立した JIS 規格は存在しないが,JIS Z 2355:2005

の附属書 1 が一部対応関係にあった。このように,ISO 16809 と ISO 16831 は JIS Z 2355:2005 と大きく異

なる構成と内容であり,旧 JIS をいかに整合化させるかが大きな問題であった。

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Z 2355:0000

これに対し,次の方針で制定原案を作成することとした。

a) 厚さ測定装置に関する ISO 16831 については,対応する独立した JIS 規格がないことから,ISO 16831

を基礎として,その各内容については我が国の実情を鑑みて見直しを図り,新たな規格 JIS Z 2355-2

として制定することとした。

b) 厚さ測定方法に関する ISO 16809 については,この構成に合わせつつ,旧 JIS における我が国独自の

技術的内容を入れ込むことで整合化を図り,JIS Z 2355-1 として制定することとした。

c) ISO 16809 に含める JISの内容に関しては,JIS Z 2355:2005 における不備な点の見直しを事前に議論,

修正を行った。

4 規定項目の内容

4.1 本体

4.1.1 適用範囲(箇条 1)

JIS Z 2355-1 では,主として金属構造物の保守検査及び製品検査における厚さ測定方法を対象とし,さ

らに ISO 16809 が述べている超音波厚さ測定における原理的な記述を入れ込むことで,種々の超音波厚さ

計測へ適用できるようにした。また,ISO 16809 では直接接触法を対象としているが,JIS Z 2355-1 では特

にその限定はせず,製品の自動厚さ測定で広く用いられている水浸法でも適用できるようにした。

4.1.2 用語と定義(箇条 3)

合成グリセリン(3.2)については,化学的に合成されたもののような印象を与えるので,一般的に使わ

れているグリセリンペーストとした。また,表示値(3.3),測定値(3.4)は,定義を明確にするためここ

に含めることとした。

4.1.3 測定方式(箇条 4)

旧 JIS の測定方式を解説表 1 に示すように ISO 16809 へ対応させた。

解説表 1 測定方式の対応

JIS Z 2355-1 ISO 16809 との対応など

ゼロ点・第 1 回底面エコー方式

(R-B1)方式

ISO 16809 の方式1に対応している。方式1は,送信パルスから

最初のエコーまでの伝搬時間を測定し,探触子の保護板と接触媒

質層の厚さに相当する時間について 0 点補正する「単一エコー方

式」である。

なお,旧 JIS の零点はゼロ点に変更した。

表面エコー・第 1 回底面エコー方式

(S-B1)方式

ISO 16809 の方式2にほぼ対応している。方式2は,遅延線の終

端から最初の底面エコーまでの伝搬時間を測定する「単一エコー

方式」であるが,遅延線の終端位置は表面エコー位置が適当であ

るため,旧 JIS の規定を残した。

旧 JIS の S-B1方式は二振動子垂直探触子で S エコーを用いる場合

を想定した説明図となっていたが,一振動子垂直探触子を用いる

場合の説明図も追加した。

多重エコー方式

(B1-B2)方式

ISO 16809 の方式3に対応している。方式3は,底面エコー間の

伝搬時間を測定する「多重エコー方式」である。

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(Bm-Bn)方式 旧 JIS では B1-Bn 方式とされていたが,使用するエコーを明確化

するために,B1-B2方式と Bm-Bn方式を取り入れた。

透過エコー方式(R-T1)方式 ISO 16809 の方式4である。方式4の「透過方式」は,JIS にはな

い方式だが,コンクリート床板又は複合材の厚さ測定での適用例

が出てきていることから,削除せず含めることとした。

4.1.4 一般的要求事項(箇条 5)

一般的要求事項は,次のとおりである。

a) 一般に普及している厚さ計は専用の探触子と組合わせて用いられることが多いため,本 JIS では測定

装置を厚さ測定器と探触子の両方を含むものとして位置付け,測定装置(5.1)に規定した。

b) 厚さ測定器(5.1.1) 数値表示超音波厚さ計,A スコープ表示器付き超音波厚さ計,超音波探傷器の

3種類として ISO 16809 と同じ内容とした。呼称は,旧 JIS の「はん用厚さ計」は「数値表示超音波

厚さ計」,「表示器付き厚さ計」は「A スコープ表示器付き超音波厚さ計」として,その機能を明確化

した。Aスコープ表示器付き超音波厚さ計についてはどのような場合に用いることが適切なのか説明

を入れるようにした。

なお,旧 JIS であった特定機能厚さ計については,いずれも上記装置に含まれるため削除した。

c) 探触子(5.1.2) ISO 16809 の記述に合わせた。

d) 接触媒質(5.2) ISO 16809 には表面粗さに応じた規定がないため旧 JIS を踏襲して表面粗さに応じ

た種類を規定した。ただし,100μmRz を超える場合の仕上げの記載については削除した。これは残

厚が薄い試験体の場合,残厚をさらに減らすことになる表面研削は現実的に実施困難な場合があるか

らである。

e) 対比試験片(5.3) 旧 JIS の校正用試験片の記述に合わせた。旧 JIS の表記で不明確であった同じ材

質については,音速がほぼ等しいものとした。試験片の形状は測定面と反射面とが平行なことが適当

だが,鋼管の場合は曲率のある試験片が使用される場合も多いため,ここでは「望ましい」との表記

にした。

f) 試験体(5.4) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。測定面の付着物及び/又は

コーティングに関する説明は8.1.1又は9.5.2と重複するが,試験体に必要な規定としてここに残した。

g) 測定技術者(5.5) 3 b) 2)に述べたとおりである。ISO 16809 の記述にも対応する。名称は他の JIS に

合わせて「測定技術者」とした。旧 JIS では準じるとされ不明確だった測定技術者の要件については,

「JIS G 0431 又は JIS Z 2305 に規定する超音波探傷試験の資格者又はこれと同等の有資格者とする」

として明確化した。

4.1.5 超音波厚さ測定の適用(箇条 6)

超音波厚さ測定の適用については,次のとおりである。

a) 表面状態及び測定面の処理(6.1) 旧 JIS の内容を踏襲し,かつ上述したように表面粗さが粗い場合

の仕上げ規定は削除した。ただし,測定面の表面粗さが 100μmRz を超えると超音波の伝達性が悪く

なり測定できない又は接触媒質の厚さの影響で誤差が増えるといった問題がある。残厚が十分に残っ

ており表面仕上げによる減肉が許容される場合は,受渡当事者間で協議を行った上で,表面を仕上げ

て測定することは妨げない。

b) 一般(6.2.1) ISO 16809 が厚さ測定の解説的な記述となっていることに対し,旧 JIS に規定されて

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Z 2355:0000

いた測定方法の選定を取り入れた。旧 JIS の明確でない部分及び受渡当事者間で決めるべき内容に関

しては JIS Z 2355-1 では次のように修正した。

1) 二振動子垂直探触子を用いる場合の音響隔離面の向きについて明確にした。

2) 多点測定法の指示がない場合の直径については,受託当事者間で選定するとし,従来の 30 mm は例

として留めるようにした。

3) 精密測定法の測定範囲とピッチについても受託当事者間で選定するものとした。また,マッピング

化の記載については,データ処理上でいかようにもできるので削除した。

なお,精密測定法の測定範囲とピッチについては,明確な判断基準がない場合は,旧 JIS にある

測定点を中心に 50 mm 角の範囲 10 mm 間隔を用いてもよい。また,連続測定法で「直接接触法で

ない場合」とは局部水浸法及び/又は全没水浸法の場合を指す。

表 3 の各測定法の使い分けについて,これも受託当事者間で選定することが適当であるため,本

体の規定として含めていないが,腐食の状況に応じてそれぞれ次の場合に用いるとよい。

1回測定法:まったく腐食が見られない場合か,腐食の程度が小さい測定物。

2回測定法:腐食の程度が大きい測定物。

多点測定法:局部減肉で厚さの最小点を求めたい場合。

精密測定法:腐食が著しい場合など,減厚の分布を把握したい場合。

c) 製品検査における厚さの測定(6.2.2) 旧 JIS には具体的に書かれていなかった項目であり,ISO 16809

の記載に基づいて規定した。また,二振動子垂直探触子又は集束型探触子を用いる場合は測定する厚

さに対して交軸範囲又は集束範囲が適切なものを選択する必要があるため,規定を追加した。保守検

査における残存厚さの測定(6.2.3)でも同様である。

なお,透過法については項目を分けることはせず,6.2.2 の中で説明するに留めた。

d) 保守検査における残存肉厚の測定については,ISO 16809 の記載に基づいた上で,旧 JIS における二

振動子探触子を用いた保守検査を想定した次の内容を含めた。

1) 二振動子探触子を用いる場合に,探触子の向きを変えたり,移動をする場合に,その都度測定面か

ら探触子を離して行う。これは表面粗さの影響で遅延材が傷付いたりすり減ったりすることによる

精度への影響を防ぐための規定である。

2) 数値表示超音波厚さ計を用いる場合の「異常」の定義と,「異常」がない場合に表示値を測定値とし

て扱う。

なお,この部分については,事前に測定条件を確立してから連続的に実施する製造中の測定には

合わないため 6.2.3 に含めた。

3) 「異常」がある場合に,測定点の拡大による測定方法又は A スコープから異常の原因に関する所見

及び測定値を記録する。

4) 旧 JIS では旧附属書 2(腐食部の厚さ測定方法)は規定とされていたが,今回の改訂に当たっては

本体との差がほとんどないことから削除し,留意点を 6.2.3.3 に示した。また,旧附属書 4(管材の

厚さ測定方法)は規定が細かすぎて現場的ではないため,現場で参考となる留意点を附属書 JA に

記述して参考とした。

e) 探触子の選定(6.3) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。

f) 厚さ測定器の選択(6.4) 個々の要求を満たすように 5.1.1 の中から選定するとした。ISO 16809 では

表 1 に示す各測定方式に応じて 5.1.1 に示す各厚さ測定器を示しているが,それに限られることはない

ため,細かい限定はしていない。

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g) 対比試験片とは異なる材料(6.5) ISO 16809 の記述とともに,旧 JIS に規定されている「音速によ

る表示値の修正を行えば,他の試験片を用いてもよい。」との記述を残した。また,旧 JIS で用いられ

ていた「材質」は材料の性質を表す言葉であり意味が曖昧なため,制定原案では「材料」に統一した。

h) 特別な測定条件(6.6) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。

温度範囲については,国内で一般に流通している厚さ計の仕様を考慮し,低温は 0 ℃未満,高温は

50 ℃越えと ISO を修正して規定した。6.6.3 高温での厚さ測定については,旧 JIS では附属書 5(高

温測定物の厚さ測定方法)に規定されていたが,校正方法について曖昧な点があることから,内容を

見直し,高温試験体の測定における留意点として附属書 JB に示すこととした。

コーティング上からの厚さ測定については,ISO 16809 では 8 項の精度への影響で記述されている

が,特別な測定条件であるので,JIS では分かりやすさを考慮して 6.6.5 に追加した。国内では境界エ

コーを用いた I-B1方式での測定も行われているので,S-B1方式の一種として規定に含めることとした。

旧 JIS では旧附属書 3(塗膜をもつ測定物の厚さ測定方法)にて塗膜をもつ測定物の厚さ測定方法が

規定されていたが,例えば R-B1方式にて塗膜の厚さ及び/又は音速が必要など,現場的には実施困難

な内容もあることから,規定からは外した。内容を見直し,コーティング上からの厚さ測定における

留意点について,附属書 JC にて示すこととした。

4.1.6 厚さ測定器の調整(箇条 7)

厚さ測定器の調整については,次のとおりである。

a) 一般(7.1) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。旧 JIS では超音波厚さ計の表

示値が試験片の厚さを示すように調整する作業が「校正」とされていたが,JIS 計測用語の JIS Z 8103

では,「計器又は測定系の示す値,若しくは実量器又は標準物質の表す値と,標準によって実現される

値との間の関係を確定する一連の作業。備考:校正には,計器を調整して誤差を修正することは含ま

ない。」と定義されていることから,制定原案ではすべて「調整」に統一した。

b) 方法(7.2) ISO 16809 ではデジタル表示厚さ計と A スコープ厚さ計で分け,前者では対比試験片を

用いた調整方法,後者では A スコープ表示範囲の調整方法について記述しているのに対し,JIS Z

2355-1 では,厚さ計である数値表示超音波厚さ計と A スコープ表示器超音波厚さ計と,A スコープか

ら値を読みとる超音波探傷器で分けることとし,それぞれ表 1 に示す測定方式に応じた調整方法を示

した。ここで A スコープから値を読みとる超音波探傷器は主にアナログ方式を想定している。現在,

広く普及してきたデジタル方式の超音波探傷器では,B1エコー及び B2エコーにそれぞれゲートをかけ

ることで両者間の厚さが表示されるようになっており、この場合は時間軸の調整はこの厚さ表示が対

比試験片の厚さに対応するように音速を調整すれば良い。ここで,ゲート設定の際にエコーを読み取

る位置はピークではなく,エコーの立ち上がりを用いるようにすべき点に注意を要する。これは図 2

に示されるように,腐食部からのエコーは多峰性となることが多く,ピーク位置で読み取ると正確な

残厚とならないためである。

c) 調整値の確認(7.3) 旧 JIS の規定を見直して記述した。旧 JIS では少なくとも 1 時間ごとに行うと

されていたが,この時間間隔については測定環境にも依存するため,この規定は削除した。また,測

定開始時の確認を明記した。許容値については,3 b) 4)に述べた考え方から,受渡当事者間の取り決

めとした。

参考までに,一般的な超音波厚さ計の測定誤差は,厚さ 50 mm 未満で±0.05 mm~±0.1 mm 程度,

50 mm 以上で±0.2 %~±1.0 %程度である。しかしながら,実際の使用状態においては接触媒質の厚

さ及び/又は温度変化の影響を受け,±0.3 mm を超える場合もあり得る点に注意が必要である。接触

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Z 2355:0000

媒質の厚さの影響については,8.1.1 及び図 3 に示している。温度変化については,特に二振動子垂直

探触子においてくさび材の音速変化に影響を与え,R-B1方式において誤差原因となる。音速の温度依

存性はくさび材の種類によって異なり,アクリルでは比較的大きく,ポリスチレンが小さい。また,

試験体の音速も温度依存性があり,鋼ではくさび材ほどの影響はないが,樹脂系の試験体を測定する

場合は大きな誤差原因となることに注意する必要がある。

測定技術者が交代した場合に調整値の確認をするように規定しているのは,探触子の操作において

個人差がある点を考慮したものである。

d) 測定装置の保守及び点検(7.4) ISO 16809 にはない項目であるが,旧 JIS において明確に規定して

いた内容であること,特に日常点検については厚さ測定の精度維持管理において重要な項目であるこ

とから JIS Z 2355-1 には項目を入れることとした。日常点検,定期点検については,JIS Z 2355-2 を

引用して規定した。また,附属書 JD に日常点検の記録例を載せた。これは規定ではなく,このよう

な項目を記録しておくとよいという参考である。

4.1.7 測定精度への影響(箇条 8)

測定精度への影響については,次のとおりである。

a) 作業上の条件(8.1) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とし,分かりにくい部分には

次の修正を行った。

1) 表面形状(8.1.1 c))の影響について,平滑でない測定面上で直接接触型の探触子を用いて R-B1方式

で測定する場合に問題となることを明確にした。

2) コーティング(8.1.3)の影響については,ISO 16809 では測定方法も含めた詳細な解説があるが,

制定原案では 6.6.5 に測定方法を規定したので,ここでは附属書 JC を参照とし,附属書 JC の中に

ISO の本体に記載されている数値例を含めた。

3) 平行度(8.1.4a))の影響については,ISO 16809 では±10°以内で平行であることを推奨するとの記

載があったが,この値は測定条件によっても変わってくるため,JIS Z 2355-1 では削除した。平行

ではない試験体を測定する場合は,予め測定に用いる厚さ測定器装置にて事前に測定誤差を確認し

ておくことが望ましい。

b) 測定装置(8.2) 旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。

c) 精度に影響するパラメータ(8.3) 旧 JIS にない項目であり,有用であるため,ISO 16809 の附属書

C.1 の内容を附属書 D とした。一方,ISO 16809 の附属書 C.2 にある厚さ測定における不確かさの計

算については,国内の厚さ計メーカーにおいてはまだ一般的に普及している方法ではないことを鑑み

て削除した。

4.1.8 材料の影響(箇条 9)

旧 JIS にない項目であるため,ISO 16809 の内容とした。接触面(9.5.2)については,コーティングの

母材との接合状態に関する注意点を含めるようにした。

4.1.9 報告書(箇条 10)

旧 JIS の 12 記録の内容を基本として見直して規定した。具体的には,準拠した規格・図書など,接触媒

質,各測定部位にでの測定音速値及び表面温度を追加した。

表面温度に関しては,旧 JIS にはない規定だが,二振動子探触子を R-B1方式で用いる場合,4.1.7c)に述

べたように表面温度が遅延材の音速に大きく影響し,誤差原因となるため,記録しておくことが望ましい。

ただし,測定値へ温度の影響がないことが確認されている範囲では記録は不要であることも追記した。

特記事項については,ISO 16809 には項目がないが,表示値が異常の場合の所見の記録は重要な点であ

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48

ることから旧 JIS を引き継いで項目を含めた。

4.2 附属書 A(参考)測定条件の選定

ISO 16809 の附属書 D の内容は厚さ測定における測定条件の選定に参考になるため,JIS Z 2355-1 にお

いても含めることとした。ただし,探触子の径及び/又は周波数については,我が国にて一般に適用され

ている範囲となるように見直しを行った。本文中の順番を考慮し,附属書 A とした。

4.3 附属書 B(参考)鋼の腐食

ISO 16809 の附属書 A の内容は鋼の腐食の理解に参考になるため,JIS Z 2355-1 においても含めること

とした。本文中の順番を考慮し,附属書 B とした。

ISO 16809 の附属書 A には容器と配管の腐食部に対する厚さ測定方法が記載されているが,制定原案で

は本体 6.2.3保守検査における残存厚さの測定に旧 JISの内容も引き継ぐ形で腐食部の測定方法と留意点に

ついて記載しているので,制定原案の附属書 B からは削除した。また,表にある推奨される超音波技術に

関しては,6.2.3.3 を参照されたい。

4.4 附属書 C(参考)装置の調整

7.2.1 の装置の調整法を選ぶ手引きに対応して,ISO 16809 の附属書 B の表を JIS Z 2355-1 においても含

めることとした。本文中の順番を考慮し,附属書 C とした。

4.5 附属書 D(参考)精度に影響のあるパラメータ

ISO 16809 の附属書 C.1 の内容は厚さ測定の精度に影響するパラメータの理解に参考になるため,JIS Z

2355-1 においても残すこととした。本文中の順番を考慮し,附属書 D とした。

4.6 附属書 JA(参考)管材の厚さ測定方法

旧 JIS の内容を見直し,管材の厚さ測定における留意点について述べ,参考とした。

旧 JIS では,非破壊検査協会第二分科会資料 No.21281,No.21389 における研究成果に基づき,外径に応

じた測定方法が細かく規定されていたが,次の理由により今回削除することにした。

a) 外径に応じた二振動子探触子の音響隔離面の向きに関する規定については,外径に拘わらず,二回測

定法を用いて小さい値を採用するとした方が現場的には混乱なく使いやすい。そのように修正しても,

上記研究のデータには符合している。

b) エルボの測定における二振動子探触子の音響隔離面の向きについても,90 ゚方向での差異は標準偏差

で 0.01 mm 程度とごく僅かであり,一方向に規定するよりも2回測定法を適用する方が適当である。

本附属書では,最近では振動子寸法の小さい遅延材付き垂直探触子が多く使われるようになってきて

いることから,波形例を記載することにした。

4.7 附属書 JB(参考)高温試験体の厚さ測定方法

旧 JIS の内容を見直し,高温試験体の厚さ測定における留意点について述べ,参考とした。

旧 JIS では校正方法について規定されていたが,高温試験体での校正は試験片の温度変化を考慮すると

正確に行うことが困難である場合が多いため規定からは外し,表示値に対して音速の補正が必要であるこ

とを述べるに留めた。

4.8 附属書 JC(参考:コーティング上からの厚さ測定)

旧 JIS の内容を見直し,コーティング上からの厚さ測定における留意点について述べ,参考とした。

旧 JIS では塗膜の厚さを含んで R-B1 方式で測定する場合について規定されていたが,現場では塗膜の

音速及び/又は厚さを知ることが困難な場合が多いため規定からは外し,多重エコー方式(B1-B2方式又

は Bm-Bn方式)と I-B1方式が適用できるとしている。ただし,R-B1 方式もコーティングの厚さと音速が分

かれば算出できることを算出式と合わせて示した。また,コーティング材の厚さが誤差へ与える影響に関

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Z 2355:0000

する ISO 16809 の記載をここに含めた。

4.9 附属書 JD(参考)点検記録例

測定装置の保守及び点検(7.4)に対応し,始業前点検記録表,始業前点検及び日常管理記録表の様式例

を示した。

5 その他の解説事項

5.1 旧 JIS における各種規定について

旧 JIS ではその改正の趣旨にも記載されているように,厚さ測定の計画及び/又は実行の具体的な指針

になるような詳しい記述が追加されたが,現場の適用においては実行が難しかったり,理解が難しい点が

指摘されてきた。例えば測定範囲及び/又は各許容値については,検査対象及び/又は検査目的に応じて

本来個別に定められるものである。また,旧 JIS の適用範囲は保守検査に限定していないものの,二振動

子垂直探触子とはん用厚さ計を用いた保守検査が主たる方法とされていた規格であった。一方,現在では

厚さ測定の適用対象は大きく広がっており,様々な対象と様々な目的で適用されることを考慮すると,一

律の規定は不具合を生じる場合がある。そこで,今回の制定に当たっては,それらの許容値などの規定は,

基本的に受渡当事者間で規定するものとの考え方で広く適用できる規格を目指すこととした。本制定原案

における主な修正点については 5.2 に示す。

5.2 JIS Z 2355:2005 からの主な修正点

JIS Z 2355:2005 からの主な修正点は次のとおりである。

1) 適用範囲について,旧 JIS では保守検査に限定せず製造時に使ってもよいとされていたが,その内容

については「保守検査」と「製品検査」が同等にはなっていなかった。そこで,旧 JIS の見直しに当

たっては製品検査も含めた内容とすることとした。

2) 旧 JIS では測定作業者と管理者が規定されていたが,厚さ測定に関する管理者の資格の整備は不十分

なまま課題として残されており,実態としては管理者の仕事は,厚さ測定レベル 1 保持者及び/又は

超音波探傷試験レベル 2,3 保持者が行っていた。今回の制定に当たっては,この規格の中では資格と

その役割についての規定はせず,測定作業者に必要な技術的要件を規定するだけとした。

3) 旧 JIS では,表面粗さが 100μmRz を超える場合に測定面を 100μmRz 以下に仕上げる規定が入って

いたが,供用中検査において残厚が薄くなっていると予想される部位では,さらなる減肉は適当では

ないため,この規定は外すことにした。

4) 旧 JIS では,多点測定法連続測定法における範囲,校正値の確認における許容値,定期点検における

測定下限の許容値などに関して所定の値が規定されていたが,これらは検査目的に応じて受渡当事者

間の協議で取り決めることが望ましい値であるため,そのように修正することとした。

5) 旧 JIS 附属書 1 の「性能測定方法及び表示方法」,附属書 6 の「対比試験片」に関しては,ISO 16831

(測定装置)を基にした JIS Z 2355-2 に含めることとした。

6) 旧 JIS 附属書 2~5 に関しては,作業性に課題のある点が含まれていたため,規定にはせず,特殊な試

験における留意点を記載した参考とすることにした。

6 原案作成委員会の構成表

原案作成委員会の構成表を,次に示す。

JIS Z 2355(超音波厚さ測定試験-第 1 部 測定方法) 原案作成委員会 構成表

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氏名 所属

(委員長) 〇 三 原 毅 国立大学法人富山大学 (幹事) 〇 飯 塚 幸 理 JFE スチール株式会社 〇 名 取 孝 夫 株式会社ジャスト研究所 (委員) 平 塚 洋 一 経済産業省 製造産業局 桑 原 純 夫 一般財団法人日本規格協会 八 木 隆 義 一般社団法人日本鉄鋼連盟 大 岡 紀 一 学校法人ものつくり大学 太 田 淳 危険物保安技術協会 猿 田 康 博 一般社団法人日本エルピーガスプラント協会 渡 邉 佳 秀 石油連盟(コスモ石油株式会社) 辻 哲 平 株式会社ジャスト 斉 藤 順 次 一般社団法人日本非破壊検査工業会(株式会社

帝通電子研究所) 〇 中 川 真 一 一般社団法人日本検査機器工業会(GE センシ

ング&インスペクション・テクノロジーズ株式

会社) 高 橋 実 独立行政法人 土木研究所 牧 原 善 次 一般財団法人発電設備技術検査協会 熊 谷 昌 之 綜合非破壊検査株式会社 〇 石 橋 淳 一 オリンパス株式会社 〇 佐 藤 泉 東京計器レールテクノ株式会社 〇 原 田 浩 幸 株式会社ニチゾウテック 〇 櫛 田 靖 夫 JFE アドバンテック株式会社 (オブザーバ) 信 夫 隆 幸 経済産業省 産業技術環境局 (事務局) 山 口 光 輝 一般社団法人日本非破壊検査協会 注記 ○印は,分科会委員を示す。 (執筆者 三原 毅)