Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

Description of Module

Subject Name Japanese

Paper Name 日本語学 (Japanese Linguistics)

Module Title 主題 (Topic of the Sentence)

Module ID JPN-P02-M19

Quadrant 1 E-Text

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

主題しゅだい

目的もくてき

：このモジュールの目的もくてき

は，主おも

に助詞じ ょ し

「は」で表あらわ

される日本語に ほ ん ご

の主題しゅだい

について述の

べることである。

1. 主題しゅだい

と主語し ゅ ご

主題しゅだい

とは，その文ぶん

が何なに

について述の

べるかを表あらわ

す成分せいぶん

である。日本語に ほ ん ご

では，主題しゅだい

は主おも

に助詞じ ょ し

「は」によって表あらわ

される。(1) では，「田中た な か

さんは」がこの文ぶん

の主題しゅだい

になってい

る。

(1) 田中た な か

さんはあしたここに来く

る。

この文ぶん

は，「田中た な か

さん」が前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てくるなどして，話はな

し手て

と聞き

き手て

の意識い し き

に

ある場合ば あ い

に，「田中た な か

さん」について，「あしたここに来く

る」ことを述の

べるものである。

主題しゅだい

は，主語し ゅ ご

とは違ちが

うものである。主語し ゅ ご

は，動作ど う さ

や状態じょうたい

の主体しゅたい

を表あらわ

すものである。

(1) の「田中た な か

さんは」は主題しゅだい

であると同時ど う じ

に，主語し ゅ ご

でもある。(2) の「田中た な か

さんが」は

主語し ゅ ご

ではあるが，主題しゅだい

ではない。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

(2) 田中た な か

さんがあしたここに来く

る。

この文ぶん

は，「田中た な か

さん」について，「あしたここに来く

る」ことを述の

べているのでは

ない。「田中た な か

さんがあしたここに来く

る」というできごとを述の

べている。この文ぶん

は，

「田中た な か

さん」が前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てきていなくても使つか

うことができる。

(3) の「田中た な か

さんは」は主題しゅだい

ではあるが，主語し ゅ ご

ではない。

(3) 田中た な か

さんは私わたし

が誘さそ

った。

この文ぶん

は，前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てきた「田中た な か

さん」について，「私わたし

が（田中た な か

さんを）誘さそ

った」ことを述の

べている。

2. 主題しゅだい

になる成分せいぶん

日本語に ほ ん ご

では，さまざまな成分せいぶん

が主題しゅだい

になることができる。もっとも主題しゅだい

になりやす

いのは，主語し ゅ ご

である。(4) では，主語し ゅ ご

である「父ちち

が」が主題しゅだい

になっている。

(4) 父ちち

はこの本ほん

を買か

ってくれた。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

主語し ゅ ご

である「～が」に主題しゅだい

を表あらわ

す「は」が付つ

くときは，(4) のように，「～がは」に

はならず，「～は」になる。

直接ちょくせつ

目的もくてき

語ご

も，主題しゅだい

になることがある。(5) では，直接ちょくせつ

目的もくてき

語ご

である「この本ほん

を」

が主題しゅだい

になっている。

(5) この本ほん

は父ちち

が買か

ってくれた。

直接ちょくせつ

目的もくてき

語ご

である「～を」に主題しゅだい

を表あらわ

す「は」が付つ

くときは，(5) のように，「～

をは」にはならず，「～は」になる。また，主題しゅだい

は基本的きほんてき

に文頭ぶんとう

に置お

かれるので，「こ

の本ほん

は」は「父ちち

が」より前まえ

に来く

る。

間接かんせつ

目的もくてき

語ご

も，主題しゅだい

になることがある。(6) では，間接かんせつ

目的もくてき

語ご

である「私わたし

に」が主題しゅだい

になっている。

(6) 私わたし

には父ちち

がこの本ほん

を買か

ってくれた。

間接かんせつ

目的もくてき

語ご

である「～に」に主題しゅだい

を表あらわ

す「は」が付つ

くときは，(6) のように，「～に

は」にはなるのが普通ふ つ う

である。また，主題しゅだい

は基本的きほんてき

に文頭ぶんとう

に置お

かれるので，「私わたし

には」

は「父ちち

が」より前まえ

に来く

る。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

そのほか，修 飾しゅうしょく

成分せいぶん

である「～の」も主題しゅだい

になることがある。(7) では，名詞め い し

「鼻はな

」

を修 飾しゅうしょく

する成分せいぶん

である「象ぞう

の」が主題しゅだい

になっている。

(7) 象ぞう

は鼻はな

が長なが

い。

修 飾しゅうしょく

成分せいぶん

である「～の」に主題しゅだい

を表あらわ

す「は」が付つ

くときは，(7) のように，「～の

は」にはならず，「～は」になる。

また，述じゅつ

語ご

を含ふく

んだ節せつ

も主題しゅだい

になることがある。(8) では，「この本ほん

を買か

ってくれた」

という節せつ

が主題しゅだい

になっている。

(8) この本ほん

を買か

ってくれたのは父ちち

だ。

節せつ

に主題しゅだい

を表あらわ

す「は」が付つ

くときは，(8) のように，節せつ

を「の」で名詞め い し

化か

し，それに

「～は」が付つ

く。

3. 主題しゅだい

を持も

つ文ぶん

と持も

たない文ぶん

日本語に ほ ん ご

の文ぶん

には，主題しゅだい

を持も

つ文ぶん

と主題しゅだい

を持も

たない文ぶん

がある。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

主題しゅだい

を持も

つ文ぶん

というのは，(9) や (10) のように，「この電車でんしゃ

は」や「会長かいちょう

は」のよ

うな主題しゅだい

を含ふく

んでいる文ぶん

である。このような文ぶん

は，「有題ゆうだい

文ぶん

」と呼よ

ばれる。「判断はんだん

文ぶん

」

と呼よ

ばれることもある。

(9) この電車でんしゃ

は横浜よこはま

に行い

きます。

(10) 会長かいちょう

は私わたし

です。

「～は」という主題しゅだい

を表あらわ

す成分せいぶん

を含ふく

んでいなくても，(11) のような文ぶん

は主題しゅだい

を持も

つ

文ぶん

だと考かんが

えられる。(11) は (10) とほとんど同おな

じ意味い み

を表あらわ

すため，(11) の「会長かいちょう

」は

主題しゅだい

だと考かんが

えてよいからである。

(11) 私わたし

が会長かいちょう

です。

一方いっぽう

，主題しゅだい

を持も

たない文ぶん

というのは，(12) や (13) のように，「～は」という主題しゅだい

を

表あらわ

す成分せいぶん

も含ふく

まず，(11) の「会長かいちょう

」のような主題しゅだい

を表あらわ

す成分せいぶん

も含ふく

んでいない文ぶん

であ

る。このような文ぶん

は，「無題む だ い

文ぶん

」と呼よ

ばれる。「現象げんしょう

文ぶん

」と呼よ

ばれることもある。

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主題 (Topic of the Sentence)

(12) 富士山ふ じ さ ん

が見み

えるよ。

(13) 先月せんげつ

，駅えき

前まえ

にスーパーができた。

主題しゅだい

を持も

たない文ぶん

は，(12) のようにそのときその場ば

で知覚ち か く

したことを表あらわ

したり，

(13) のように過去か こ

に起お

きたできごとを表あらわ

すことが多おお

い。

4. 主題しゅだい

になりやすい名詞め い し

と主題しゅだい

にならない名詞め い し

主題しゅだい

を持も

つ文ぶん

で文ぶん

の主題しゅだい

になるのは，基き

本ほん

的てき

に名詞め い し

である。たとえば，(14) では名詞め い し

「山田や ま だ

さん」が主題しゅだい

になっている。

(14) 山田や ま だ

さんは大阪おおさか

に住す

んでいる。

名詞め い し

ではないものが主題しゅだい

になるときは，それが名詞め い し

化か

された上うえ

で主題しゅだい

になる。たと

えば，(15) では形容詞けいようし

を中心ちゅうしん

とした節せつ

「いちばんよい」が「の」で名詞め い し

化か

された上うえ

で

主題しゅだい

になっている。

(15) いちばんよいのは，何なに

もしないことです。

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主題 (Topic of the Sentence)

名詞め い し

の中なか

で文ぶん

の主題しゅだい

になりやすいのは，(16) や (17) のようなものである。

(16) 話はなし

の現げん

場ば

に存在そんざい

するものを指さ

す名詞め い し

(17) 前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てきたものを指さ

す名詞め い し

「話はなし

の現げん

場ば

に存在そんざい

するものを指さ

す名詞め い し

」というのは，「私わたし

」や「あなた」のよう

に話はなし

の現げん

場ば

にいる人ひと

を指さ

す名詞め い し

や，「これ」や「その服ふく

」のように話はなし

の現げん

場ば

にあるも

のを指さ

す名詞め い し

である。たとえば，(18) では話はなし

の現げん

場ば

にいる人ひと

を指さ

す「私わたし

」が主題しゅだい

にな

っている。(19) では話はなし

の現げん

場ば

にあるものを指さ

す「その服ふく

」が主題しゅだい

になっている。

(18) 私わたし

はもう帰かえ

ります。

(19) その服ふく

はどこで買か

ったんですか。

「前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てきたものを指さ

す名詞め い し

」というのは，(20) の「その犬いぬ

」のような

名詞め い し

である。(20) では，前まえ

の文ぶん

に出で

てきた「犬いぬ

」を指さ

す名詞め い し

「その犬いぬ

」が主題しゅだい

になって

いる。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

(20) 私わたし

の姉あね

は犬いぬ

を飼か

っている。その犬いぬ

はもうすぐ 15 歳さい

になるそうだ。

そのほか，「前まえ

の文ぶん

脈みゃく

に出で

てきたものを指さ

す名詞め い し

」に関連かんれん

のある名詞め い し

も主題しゅだい

になり

やすい。(21) では，前まえ

の文ぶん

に出で

てきた「犬いぬ

」に関連かんれん

のある名詞め い し

「（その犬いぬ

の）名な

前まえ

」が

主題しゅだい

になっている。

(21) 私わたし

の姉あね

は犬いぬ

を飼か

っている。名な

前まえ

はブランだ。

このような主題しゅだい

になりやすい名詞め い し

とは逆ぎゃく

に，文ぶん

の主題しゅだい

にならない名詞め い し

もある。(22)

のような名詞め い し

である。

(22) 「だれ」や「何なに

」のような疑問ぎ も ん

を表あらわ

す名詞め い し

疑問ぎ も ん

を表あらわ

す名詞め い し

は主題しゅだい

にならないので，(23) のように「だれ」を主題しゅだい

にした文ぶん

は成な

り立た

たない。

(23) *だれは来こ

なかったのですか。

（*のマークは非ひ

文法的ぶんぽうてき

または不ふ

自然し ぜ ん

であることを示しめ

す。）

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

5. 従属節じゅうぞくせつ

の中なか

の主題しゅだい

主題しゅだい

はその文ぶん

が何なに

について述の

べるかを 表あらわ

す成分せいぶん

である。文ぶん

の一部い ち ぶ

について，その

部分ぶ ぶ ん

が何なに

について述の

べるのかを表あらわ

すものではない。そのため，文ぶん

の一部い ち ぶ

である従属節じゅうぞくせつ

の中なか

には主題しゅだい

は現あらわ

れない。

たとえば，(24) のように従属節じゅうぞくせつ

「大学だいがく

に入はい

る前まえ

」の中なか

に主題しゅだい

「私わたし

は」がある文ぶん

は成な

り立た

たない。

(24) *私わたし

は大学だいがく

に入はい

る前まえ

，兄あに

はオーストラリアに留学りゅうがく

していた。

(25) は従属節じゅうぞくせつ

の中なか

に主題しゅだい

「私わたし

は」があるように見み

えるかもしれない。しかし，この

「私わたし

は」は文ぶん

全体ぜんたい

の主題しゅだい

である。「私わたし

は」は従属節じゅうぞくせつ

「大学だいがく

に入はい

る前まえ

」だけの主題しゅだい

で

はなく，「大学だいがく

に入はい

る前まえ

，北海道ほっかいどう

に住す

んでいた」という文ぶん

全体ぜんたい

の主題しゅだい

になっている。

(25) 私わたし

は大学だいがく

に入はい

る前まえ

，北海道ほっかいどう

に住す

んでいた。

ただし，従属節じゅうぞくせつ

といっても，いろいろな種類しゅるい

がある。(26) の「～たら」のような

従属節じゅうぞくせつ

らしい従属節じゅうぞくせつ

の中なか

には主題しゅだい

は現あらわ

れない。

Japanese Japanese Linguistics

主題 (Topic of the Sentence)

(26) 山田や ま だ

さんが来き

たら，私わたし

に知し

らせてください。

しかし，(27) のような従属節じゅうぞくせつ

「もう働はたら

いているが」は文ぶん

に近ちか

い性質せいしつ

を持も

っている。

(28) のように従属節じゅうぞくせつ

と主しゅ

文ぶん

を分わ

けて 2 文ぶん

にすることができるからである。

(27) 兄あに

はもう働はたら

いているが，給 料きゅうりょう

が安やす

くて困こま

っている。

(28) 兄あに

はもう働はたら

いている。しかし，給 料きゅうりょう

が安やす

くて困こま

っている。

このような文ぶん

に近ちか

い性質せいしつ

を持も

った従属節じゅうぞくせつ

の中なか

には主題しゅだい

が現あらわ

れることがある。たと

えば，(29) では主題しゅだい

「兄あに

は」は従属節じゅうぞくせつ

「もう 働はたら

いているが」の中なか

のものである。

「私わたし

は」は主しゅ

文ぶん

「まだ学生がくせい

だ」の主題しゅだい

である。

(29) 兄あに

はもう働はたら

いているが，私わたし

はまだ学生がくせい

だ。

キーワード：

主題しゅだい

主語し ゅ ご

「は」 有題ゆうだい

文ぶん

無題む だ い

文ぶん

従属節じゅうぞくせつ

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