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ISBN978-4-905241-19-5 C3347 ¥2000E · 2014-04-10 · 4 訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) に加えて,われわれ訪問セラピストも役割と多職

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定価2,160円(本体2,000円+税8%)

ISBN978-4-905241-19-5

C3347 ¥2000E

小児の訪問リハビリテーション

二〇一四年四・五月

(000~

094)

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) 1

 日本における小児の訪問リハビリテーションの産声は皮肉なことに,高齢者を対象とした介護保険法の施行により広まったと考えられる.介護保険による訪問看護ステーションの認可が同時に医療保険の訪問の適応もあり,訪問看護基本療養費を基盤として地域で暮らしている小児の対象者への訪問が可能となった,このことが社会の福音となったと『信じたい』. 『信じたい』としたのは,これから先,私たち小児の訪問リハビリテーションに関わる人間たちに課せられているのは,その効果判定であると考えている.社会保障費は年々増加の一途をたどり,生産人口は減少している社会で私たちは貴重な社会保障費を効果のあるものにしっかりとつぎ込む必要がある.もちろん,効果判定そしてエビデンスを出すことが非常に難しい領域であることは,重々理解している.しかし,本当に可能性あふれる子供たちが地域でいきいきと暮らすことを私たちが信念として持ち,そして私たちの方法論に誇りを持っているのならば,避けて通ってはならない道だと考えている. 個人的な話になるが,この雑誌を発行している合同会社geneは私が設立した法人であるが,設立の遠因は小児の訪問リハビリテーションにある.当時,株式会社ジェネラスという法人で訪問に関わっていた私はある脳性麻痺の子を担当してい

*合同会社gene (〒462-0059 愛知県名古屋市北区駒止町二丁目52番地 リベルテ黒川1階A号室)

た.自分の未熟さ故に本人・家族・スタッフに沢山の迷惑をかけながら,それでも訪問をさせていただき訪問リハビリテーションというものの大切さと自分の責任の重さを実感させていただいた. 訪問が何年か続いたとき,ある日,突然その子はヘルパーさんの食事介助中の窒息によって亡くなった.子供が亡くなるということを上手く理解できなかった.高齢者の死には沢山触れてきたし,ある意味,それはしょうがないことだと自分なりに納得できていたのだが,子供の場合は違った. 自分がヘルパーさんとしっかりと連携を取っていなかったせいだ. 自分がもっと嚥下のことに気を配っていれば防げたはずであるのに. 後悔ばかりして過ごしていた.そんなときにでも,当時,ジェネラスの小山社長(PT)は,しっかりと従業員のことをみて時間をとって丁寧に話をして,そして聞いてくれた. 時間が経ち,自分自身を振りかえったときに,セミナーという方法でこのようなことが起こることを防げるかも知れないと考え合同会社geneを設立した. 小児の訪問リハビリテーションが今後益々,日本に広まり,そして障害があってもなくてもいきいきと地域で暮らせる社会を実現するために今回の特集を活かしてもらいたいと考えている.小児の訪問リハビリテーションの必要性と有効性を信じてこれからも定期的に小児分野の特集を組みたいと思っている.

特集 小児の訪問リハビリテーション

 巻頭言小児の訪問リハビリテーションの有効性と必要性

合同会社gene 代表 理学療法士 張本 浩平*

Page 3: ISBN978-4-905241-19-5 C3347 ¥2000E · 2014-04-10 · 4 訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) に加えて,われわれ訪問セラピストも役割と多職

contents第4巻・第1号(通巻19号)

次号予告編集後記

………………………………………………………………………………………… 089………………………………………………………………………………………… 090

「訪問理学療法で積極的な発達支援を行った結果,一定の発達を認めた13トリソミー児の1例」此上 剛健,他

…………………………… 051

………………………………………………………………………………… 077

■リハビリテーションスタッフのありがとう評価

巻頭言「小児の訪問リハビリテーションの有効性と必要性」張本 浩平 ……………………………………………………………………………………… 001

小児のリハビリテーションと福祉用具の活用塗田 智子 ……………………………………………………………………………………… 029

訪問リハビリテーションにおける発達へのアプローチ中原 規予 ……………………………………………………………………………………… 035

訪問リハビリテーションスタッフと利用者家族との関係安井 隆光 ……………………………………………………………………………………… 043

小児の訪問リハビリテーション

各機関と訪問リハビリテーションとの関係(連携)高橋 正浩 ……………………………………………………………………………………… 003

児の各時期におけるアプローチの考え方平井 孝明 ……………………………………………………………………………………… 011

小児から成人へ,そして保護者の高齢化に伴う問題金子 満寛 ……………………………………………………………………………………… 023

……………………………………………………………………………………… 055

インタビュー 訪問リハマインド日本の訪問リハビリテーションの今後松井 一人

……………………………………………………………………………………… 061訪問リハビリテーションサービス利用者の生活実態調査(その2)眞鍋 克博

調査・報告⑦

症例報告

長谷川 矩之福岡療育支援センターいちばん星 訪問看護ステーション

…………………………………………………………………………………… 083

施設の紹介

「坐位姿勢と上肢運動における運動学とその評価」栗山  努 ……………………………………………………………………………………… 069

新連載 生活動作の中での運動学①

連載

特集

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) 3

特集 小児の訪問リハビリテーション

各機関と訪問リハビリテーションとの関係(連携)

有限会社 総合医療企画 さやまリハビリ訪問看護ステーション 理学療法士 高橋 正浩*

1.連携拠点事業   2.医療機関との連携   3.教育・福祉との連携key�word

*有限会社 総合医療企画 さやまリハビリ訪問看護ステーション (〒589-0022 大阪府大阪狭山市西山台3丁目5-18 2F)

1.はじめに

 小児の在宅医療において,NICU退院後の体制として医療・福祉・教育の多職種協働による連携支援体制の重要性が示唆され始めた.背景として,厚生労働省は在宅医療の体制構築に係る指針の通知を示し,予算事業として近年小児等在宅医療連携拠点事業として全国でも複数の小児在宅医療に特化した拠点の知見により,高齢者とは異なる小児在宅医療への対応が必要であることが認識された点にある. 近年,徐々にではあるが訪問セラピスト(以下,訪問看護・訪問リハビリテーションを含む)における小児対応も始まってきており,地域に住む対応児からのリハビリニーズも高く,医療依存度の高い児へのハイリスクでの対応力も求められ,まさに機能障害から生活支援へとその対応力も求められるようになっている. 今回は資源確保と質の担保が騒がれる中,多職種が関わるこの分野において,他機関との連携を考えていきたい.

2.小児等在宅医療連携拠点事業

 2013(平成25)年度の在宅医療の中でも,小児在宅医療にスポットが当てられている小児等在宅医療連携拠点事業(予算総額1.65億円)1)において,地域の小児在宅医療の連携体制の構築するための

モデル事業が開始されている.以下紹介として記す[図1]. 目的として「NICUで長期の療養を要した児を始めとする在宅医療を必要とする児が,在宅に置いて必要な医療・福祉サービス等が提供され,地域で安心して療養できるよう,福祉や教育などとも連携し,地域で在宅療養を支える体制を構築する」とされている.注目すべきは医療従事者間での連携に留まらず,教育や福祉分野との関わりを包括的,かつ継続的な在宅医療提供のための体制が構築された事業であるということである. 小児等在宅医療連携拠点事業としては,下記の項目が挙げられる.① 行政,地域の医療・福祉関係者による協議の場

の開催②地域の医療・福祉資源の把握・活用③ 小児等の在宅医療の受入が可能な医療機関・訪

問看護事業所数の拡大,専門機関とのネットワークの構築

④ 地域の福祉・行政関係者の小児等の在宅医療への促進

⑤ 小児等の患者・家族に対しての個々のニーズに応じた支援

⑥ 患者・家族などに対して,小児の在宅医療等に関する理解の促進や負担の軽減

 これらの拠点事業報告を受け,各地域資源で運用し,活用していけば,一つの小児在宅医療の支援型の始まりとなりうる可能性が高い.資源拡大

contents第4巻・第1号(通巻19号)

次号予告編集後記

………………………………………………………………………………………… 089………………………………………………………………………………………… 090

「訪問理学療法で積極的な発達支援を行った結果,一定の発達を認めた13トリソミー児の1例」此上 剛健,他

…………………………… 051

………………………………………………………………………………… 077

■リハビリテーションスタッフのありがとう評価

巻頭言「小児の訪問リハビリテーションの有効性と必要性」張本 浩平 ……………………………………………………………………………………… 001

小児のリハビリテーションと福祉用具の活用塗田 智子 ……………………………………………………………………………………… 029

訪問リハビリテーションにおける発達へのアプローチ中原 規予 ……………………………………………………………………………………… 035

訪問リハビリテーションスタッフと利用者家族との関係安井 隆光 ……………………………………………………………………………………… 043

小児の訪問リハビリテーション

各機関と訪問リハビリテーションとの関係(連携)高橋 正浩 ……………………………………………………………………………………… 003

児の各時期におけるアプローチの考え方平井 孝明 ……………………………………………………………………………………… 011

小児から成人へ,そして保護者の高齢化に伴う問題金子 満寛 ……………………………………………………………………………………… 023

……………………………………………………………………………………… 055

インタビュー 訪問リハマインド日本の訪問リハビリテーションの今後松井 一人

……………………………………………………………………………………… 061訪問リハビリテーションサービス利用者の生活実態調査(その2)眞鍋 克博

調査・報告⑦

症例報告

長谷川 矩之福岡療育支援センターいちばん星 訪問看護ステーション

…………………………………………………………………………………… 083

施設の紹介

「坐位姿勢と上肢運動における運動学とその評価」栗山  努 ……………………………………………………………………………………… 069

新連載 生活動作の中での運動学①

連載

特集

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号)4

に加えて,われわれ訪問セラピストも役割と多職種との連携の必要性を考えていかなければならない.

3.小児訪問リハビリテーション連携の必要性

 連携とは互いに連絡をとり,協力して物事を行うことである.高齢者対応を考慮する際,基幹病院と介護保険制度に係る関連機関において連携を考えることが多い.また,マネジメントとしての役割も明確になっている.小児分野においては[表1]に示す通り,さらに関係機関が多いことが特徴といえる.小児においては1人の患者や家族を中心に,医療・福祉・教育の多様な専門性を有する支援者が各ライフステージにおいて,複数人でチームを形成してケアを提供することとなる.後述するが,小児分野におけるケアマネジャー的な存在の機能も周知が低く,現場としては,訪問看護師や訪問セラピストが他機関とのコーディネート役として連携をとっている場合が多い.

 われわれのフィールドは在宅であり,その役割は対象児(者)の成長に伴う身体的変化への支援,家族指導を含めまさに“生活”を支援する立場である.そのため,他機関と関わる際にも訪問セラピストが関わっている役割を個別に明確化にし,連携をとっていきたい.以下,[図1]を参考に筆者の経験も踏まえ,その連携例を記す.

1)基幹病院(救急病院,地域医療支援病院) 基本的には退院前カンファレンス出席から始まり,主要な参加者は病院内担当医,病棟・外来看護師,医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker:以下,MSW),病院セラピスト,在宅の医師,看護師,訪問セラピスト,保健師などであることが多い.窓口は在宅医療連携室を通じてMSWが調整して会議などの連絡を行っている. 在宅でのフォロー開始時の訪問看護指示書を通じ関係性が始まる.毎月の訪問看護報告書,訪問看護計画書での書面上でのやり取りが中心であ

[図1] 2013年度小児等在宅医療連携拠点事業の目指すイメージ

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) 5

り,状態悪化時の入院加療時やショートステイ時など,訪問看護師との複数介入の有無に関わらず病院へサマリー提出を行う. 別途,内服変更・発作時の対応など,定期訪問上での留意点が指示書以外で詳細情報の確認したい聴取方法は,複数の科を受診している場合が多いため,家族からのみでなく,受診時に合わせて,高齢者でも用いる医療介護連携シートを用いて相談する方法もある.

2)地域病院 基幹病院以外でも外科手術以外の風邪症状などの短期入院加療は分けて対応していることもある.この場合もサマリー提出も行うが,短期間の場合,欠点としてはFAXでないと書面送付では時間差が生じる場合がある.

3)地域診療所 退院後,在宅で往診医を利用するケースも増えてきている.その場合,状態悪化時の入院加療以外は往診医との連絡となり,訪問看護指示書も往診医対応となる.基幹病院との書面上でのやり取りは状態悪化時の入院時にサマリー提出に限局さ

れ,主治医間の診療情報提供書などの情報共有も退院時看護サマリーと合わせて地域診療所に共有を依頼している.定期訪問時の状態変化に合わせて,緊急時対応や往診時に確認して欲しい内容は報告レベルにより,電話・FAX・メールなどで主治医に連絡を行う. 当ステーションでも訪問看護師・訪問セラピストにて介入し,緊急時24時間体制にてサービス提供開始となるケースがある.緊急時の指示医への連絡方法は訪問看護指示書内にも記載され,状態変化時にフィジカルアセスメント後,報告レベルに合わせて対応する.往診医からの緊急連絡については事業所内で担当者同士の連絡方法を決定する. 状態悪化時に入院加療の必要の有無を[表2]に示す通り,指示医判断で特別訪問看護指示書で対応している.この際,訪問看護師・訪問セラピストは同日訪問を行うが,訪問時間帯を分け,指示医へ状態報告を行う.結果,状態改善すれば入院せず在宅加療が可能である場合も見受けられた. この際,状態変化時のファーストコールを訪問看護事業所が担い,機能することで往診医の往診頻度も軽減することができる.

地  域 病  院 療育施設ショートステイ・通園

医師歯科医師薬剤師

往診医・近隣開業医訪問歯科医師地域薬剤師

外来医師・病棟医師歯科医師病院薬剤師

担当医師

看護師 訪問看護師(複数の事業所から訪問) 病棟・外来看護師 看護師

セラピスト(PT,OT,ST)訪問リハ 通院リハ 施設セラピスト

通所リハヘルパー 訪問ヘルパー 介護職 介護職

ケースワーカー 診療所ケースワーカー相談支援専門員 病院ケースワーカー 施設ケースワーカー

相談支援専門員

教育者特別支線学校の教員地域小学校の教員(支援学級教員を含む)

行政 障害福祉課,保健師

:ケアコーディネーターに適切        :ケアコーディネーターが可能

[表1] 小児在宅医療に関わる多職種2)(一部改変)

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号)6

 訪問セラピストの定期訪問時にも往診を依頼することもあるため,小児(特に超重症・準超重症児)におけるフィジカルアセスメントとリスク管理も周知しておかなければならない.

4)訪問看護事業所 超・準超重症児に関しては看護師とともに介入することが多い.事業所内で成長に伴う身体的変化時の介助方法などの日常的な様子や変化,指示内容確認などの情報共有を行う.複数の訪問看護事業所が介入することもあり,必要時に応じて介助方法の統一,情報共有を行う.

5)保健所 退院時に地域資源への新規依頼を行う.書面上では毎月情報提供書にて行う.必要な福祉サービス導入時,家族の様子などを相談する場合もある.

6)歯科診療所 直接的に相互での連絡は少ない.マウスピースや嚥下評価で介入している場合もあり,口腔内の治療内容や課題を書面でいただくこともある.

7)�介護サービス事業所(入浴介助・医療的ケアなど)

 入浴介助など必要に応じて看護師と協働してケアに入る場合があり,看護師向けに行う場合と同様に身体的な介助方法を伝える.入浴方法の個別な物品使用方法は実践側である看護師と介護職の双方でまとめる場合が多い.

8)相談支援事業所(特定・障がい児) 小児については相談支援事業所に配属されている相談支援専門員がいる.相談支援専門員とは3),障害者自立支援法が指定する医療や福祉サービスの提供をするために「障害者等の相談に応じ,助言や連絡調整等の必要な支援を行うほか,サービス等利用計画を作成する」職種であり,介護保険でいうところのケアマネジャーに近い役割を担うことになっている.その存在と活動の周知としてはこれからといった分野であるが,障害者総合支援法施行により2016(平成27)年4月以降はすべての障がい児者(個別給付利用者)にサービス等利用計画が立てられることになっている. 以下,療育施設(児童発達支援・放課後等デイ・短期入所・その他福祉サービス),通園施設(保育所・幼稚園),教育機関(市町村教育委員会・支援学校・地域小学校など)に関しては児のライフステージに沿った支援が行われている.セラピストが所属している場合もあるが,直接訪問セラピストと連携することは稀である. その他,薬局・保健センター・市町村障がい福祉・市町村児童福祉(子育て支援)・子ども家庭センターでは訪問セラピストが直接介入するケースは稀である.それ故に双方の連絡もほぼ家族を介しての情報提供か意図して行わなければそれすらもない. 退院後には具体的な連携の運用システムが十分でない現状では各機関が単発的に実施され,差が生じている.もちろん,協議会や定期カンファレンスが実施されている地域も出てきているが,地域差は大きい.情報提供や共有以外での連携は,日常業務上,常にどの機関とも連絡を取り合って

[表2] 特別訪問看護時の対応例

往診医 看護 リハビリ

初日

往診内服処方,採血,点滴加療訪問看護ステーションへ連絡

緊急対応開始点滴加療管理 指示の元,

急性期対応開始

2日目 状況報告点滴加療状態観察排痰

姿勢保持確認,提案呼吸理学療法

3日目 同上 同上

4日目往診入院or追加加療判断,指示

主治医の判断待ち(追加加療も考慮)

在宅における状態変化(肺炎)への積極的加療を行い早期治療,重症化を防ぐ体制をとる

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) 7

いることはなく,必要時に関わる主要機関が書面や会議などを通じて行われている.それ故に,機関別の対応方法やフォーマットが存在しており,現時点では医療・福祉・教育のつながりを提唱されてはいるものの,有効な方法を現場で模索しながら行われている. そういった中,大阪府では2013(平成25)年3月に「小児在宅生活支援地域連携シート 府基本版」4)とした可視化した共通ツール運用が開始されている.これは前述した全機関が児のライフステージに合わせて課題や役割を明確にシート化されたものである.このシートの詳細に関しては,本稿では省かせていただく. 小児に携わる訪問セラピストにおける連携は,必要な情報を次の機関へバトンパスを送る役割が中心であることが多い.しかし,小児対応をしている訪問セラピストは機関によっては認知度が低いため,相互理解が得られなければ,こちらの情報は一方的な対応・解釈となる場合もある.特に教育・福祉との関係を考えた際,先方にとっては基幹病院・療育施設からの情報共有は密に行うが,訪問セラピストの有する情報を得ようとする手段には到っていない.よって,われわれ訪問セラピストは超・準重症児への単独介入例も想定し,医療機関との関わりや教育・福祉との関わりを考えていく必要がある.

4.セラピストの多機関,複数名介入

 多職種連携を考える際,前述した[表1]の通り,機関別でリハビリスタッフも多人数が関わっている現状がある点にも注目したい.勿論,その機関別の役割を理解する必要性もある.当地域の近隣を例とすると,超・準重症児においては平均して通園施設入園までに平均3機関程度でリハビリテーションを受けている.これに理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が関わったとしても平均6・7名のリハビリテーションスタッフが関わっているといった現状がある.では,リハビリテーションスタッフ同士の関わりや関係性はどうであろうか.ほとんどの場合,意図しなければ機関完

結型で関わっている現状があり,その場合は経時的変化における関わりがない点も問題であるといえる. このような状況の中においては,リハビリテーションの方向性として,各機関における役割分担,目標の共有を行うことでより効果的に支援できると考えられる.児を介した“交流”のきっかけは何点かある.①退院時に退院前カンファレンス出席や退院時サマリー ②病院や施設で受けているリハビリを訪問スタッフが見学に行く ③小児系の研修会などがある.この①から③が行われる場に訪問セラピストも出向くことでいかに“顔がみえる”関係性の構築ができるかの第一歩が始まるといってよい.

5.連携支援例

 以下は,既存していない支援の取り組みとして,[図2]に示す通りの計画を経て実施した内容である.特に学校への支援に関しては,診療報酬はつかないということを踏まえて,双方の勤務時間内により具体的に共有すべき内容を支援した事例を紹介する.

Plan連携方法の確立

Do連携方法の実施

Action課題の

抽出と改善

Check結果の

分析と共有

[図2] 連携方法構築に向けて

 対象児(者)に必要な連携に対して小児の訪問リハビリテーションの認知度は低い. 地域でどのような“連携のかたち”が存在するかを調査した後,計画を立てて模索する.

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号)8

1)特別支援学校①背景 リハビリテーション提供機関としては,もともと,就学支援として入学後に一度特別支援学校へ療育機関から保育士による訪問を実施する流れが定着していることもあり,訪問を含む2機関が存在している.療育機関担当セラピストは実際に支援現場に出向くことは困難でも書面にて写真付きでサマリー提出という流れを行っていた.②連携方法の確立 就学1年前より療育機関セラピストと訪問セラピストで連絡をとり,就学に向けた支援方法の検討をメールやFAXで開始する.就学前半年前には就学支援内容の役割分担を明確にし,重点を置いた訓練内容を再検討し,就学時の支援シートを作成した.

③連携方法の実施 入学後,先に保育士による情報提供開始し,療育機関セラピストの支援シートを提出.その支援週に訪問セラピストが訪問し,支援教員に対する支援シートを用いてみた結果の質問点や再現性の有無を再確認し,アドバイスとその他補足を行う.実際の抱っこを用いた動的な支援方法,バギーなどの使用物品の使用方法確認は教員による写真,動画撮影機器を用いて可視化して記録し,職員内で共有していただく.④結果の分析と共有 訪問日数1日(訪問スタッフの空き枠を調整し訪問実施する)を行い,その後は教育機関より家庭訪問時など必要に応じて連絡を取り合うこととなる.その都度,可視化した記録物を残し教員内で共有物として利用していただく.

[図3] 就学支援確認書類(例)

○訪問事業所からの訪問日調整

などの窓口となる主連絡先を

確認

○校内準備物,個人で準備する

物品の確認

○入学前迄に家族でも準備物に

不備がないかの確認シートとし

て使用. 主介護者が適時学校

訪問時に教員と確認する

※作成には担当している訪問看

護事業所(看護・リハビリス

タッフ), 購入物に関しては

地域診療所 の協力を得て

準備

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号) 9

⑤課題の抽出と改善 年次毎の目標設定に関する介入の必要性と課題の検討が必要となり,可視化した後の,他教員の再現性の有無などの確認作業の不十分さがある.

2)地域小学校①背景 支援児においては,家族が地域小学校入学を希望された学校側としては,初めて重症心身障がい児の入学となり,在宅医療提供者からの情報提供や支援方法を模索する流れの提案として受領していただいた.相談初期より,支援頻度や費用面に関する対策も話し合われた.②連携方法の確立 特別支援学校と同様に,身体的な医療的情報は主治医訪問の流れをとる.実際に使用している気

管カニューレや胃瘻の管理方法は,就学後担当する看護師と支援教員に対し,共通知識として情報提供を行うこととした.③連携方法の実施 就学前に[図3]のように個別に必要物をリストアップし,準備物を整理した.就学後は訪問セラピストと訪問看護師で学校へ訪問して配布資料を元に情報共有を行っている.日頃の体調管理用として訪問看護師を中心にフォーマットを作成して提出するようにした[図4].④結果の分析と共有 就学支援としての訪問は1日実施.その後も必要に応じて学校へ訪問し,義肢装具士とともに坐位保持装置の確認と修正を行う.定期チェックは半年毎で義肢装具士が行う流れを定着していただくようにした.

作成 : 訪問看護師・訪問セラピスト ※適時変更できる書式としてフォーマットを提出

運用 : 主介護者 ⇔ 学校内看護師・支援教員

[図4] 体調管理表例

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訪問リハビリテーション 第4巻・第1号(通巻19号)10

 業務時間内での介助方法の悩みや支援方法の助言に関しては,家庭訪問を用いた方法で支援教員と連絡を取り合い,利用者自宅にて対応している.⑤課題の抽出と改善 双方共通の課題であったが,ボランティアとの関係性は就学支援,その後の支援継続については継続性に乏しい可能性が危惧された.就学支援としては完結後,地域資源で完結できる課題として,教育機関,訪問看護事業所で対応可能範囲な方法での継続を話し合う必要性がある.また,教育者への再現性のある提案・年度毎・支援者変更などでの介助レベルの安定性にも着眼する必要性がある.

6.まとめ

 本稿を考える際,連携は近隣地域の医療・教育・福祉関係の多職種で交流し合い,共感し,互いに理解しあうことが第一歩であると考えている.なぜならば連携を,情報共有や協働という視点で考える上で,発信側と受け手側での意識レベルでの差が阻害因子となってはならない.小児訪問リハ

ビリテーションに携わる訪問セラピストが福祉・教育など関係者との連携を推進するためには,医療側から福祉側に積極的に働きかけることが必要であることを知り,活動を“かたち”にしていきたい.まだまだ資源の成長としては芽が出始めたこの分野ではあるが,参入するにあたり,ただ漠然とリハビリテーションを提供するのではなく,小児在宅拠点事業のような連携関係構築に向けた取り組みが考えられてきている点に注目し,“生活視点”をもった訪問セラピストだからこそ可能な支援を模索して行動しなければならないと考えている.

引用文献1) 厚生労働省:小児等在宅医療連携拠点事業,2013

(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/syouni_zaitaku_teikei.pdf)

2) 前田浩利:地域で支える みんなで支える 実践!!小児在宅医療ナビ:pp20,南山堂,2013

3) 林時仲:―地域連携―相談支援専門員.周産期医学1361-1363.2013

4) 大阪府:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6430/  00126100/07%20sannkousiryou1-1.pdf

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小児の訪問リハビリテーション

二〇一四年四・五月

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