36
(有)ユーアイテクノケア 1

(有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

1

Page 2: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

2

第1章 コンピュータの仕組み

身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コネクタが搭載されているマザーボードです。このマザーボードには CPUや主記憶メモリー、及び本システムに接続される各種の外部媒体(磁気ディスク等)間のデータ通信や制御データ交信を行うことを目的とした各種ユニット(チップ)が搭載されており、このボードから各種の外部機器(ディスクや CD等)へ接続されています。

また、各マザーボード上の各ユニット(CPU ユニット、メモリーユニット等)は、全てバスという信号

線で接続され、その信号線上をデータや制御情報が流れることにより、お互いの情報交換を行っていま

す。この情報交換処理は内部クロック(CPU 内のクロック)と外部クロック(CPU 以外のユニット間の

クロック)という2つのクロックによりタイミングが取られています。この内部クロックが CPUに表記

されるクロックで MHz(GHz)と表記されています。外部クロックは内部クロックに比較して数分の1

程度(例えば1/4)の速度で動作しています。本章では、このマザーボードの仕組みと、ソフトウェ

アのかかわりについて見てみましょう。

1.1 マザーボードってなんだろう

パーソナルコンピュータを理解する場合、マザーボードそのものがパーソナルコンピュータであると

認識しても決して過言ではありません。この項では、このパーソナルコンピュータの中枢であるマザー

ボードをハードウェア的な観点から見ていきます。

図1 マザーボード概念図

Page 3: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

3

補足:

パーソナルコンピュータには、タワー型、デスクトップ型、ブック型、ノート型、携帯型、バームト

ップ型等があり、マザーボードもその形態やメーカーの違いにより、また、時代により大きく異なりま

す。但し、基本的概念(機能分類)は同じであり、実装が異なるだけと理解できます。

なお、主なマザーボードの型としては、AT(FullAT)、 BabyAT、 ATX、 microATX、 N

LX(NewLowProfileEXtension)等のタイプがあります。

1.1.1 マザーボードに搭載されているハードウェアユニットにはどんなものがあるのだろう

1.1.1.1 基本ユニット

1)CPUスロット/ソケット

CPUチップで搭載されるもので、CPUの仕様によって以下の何れかとなります。

Socket1~Socket8、Socket370、Slot1,Slot2、SlotA

CPUのタイプには以下があります。

① PPGA(PlasticPinGridArray) :ソケットタイプ

Pentium,Socket370Celeron

② SECC(SingleEdgeContactCartridge) :スロットタイプ

2次キャッシュを CPUに搭載しています

Pentium2,Athlon,Zeon

③ SEPP(SingleEdgeProcessorPackage) :スロットタイプ

Pentium2廉価版、Celeron

2)チップセット(NorthBridge)

CPUとメモリー、AGP等の制御を行います

3)チップセット(SouthBridge)

PCI/USB等の制御を行います

4)バックパネルコネクタ

PS/2マウス、キーボード、プリンタ、シリアルデバイス接続用コネクタ群です

5)AMR(AudioModemRiser)

オーディオやモデム機能を持つライザーカード接続用スロットです

6)AGP(AcceleratedGraphicsPort)

AGP対応ビデオカード接続用スロットです

7)CMOS(ComplementaryMetal-OxideSemiconductor)

BIOS設定情報の記憶用チップです

8)BIOS ROM(BasicInputOutputSystem)

OSの起動、及びハードウェアの設定等を行います。

9)PCIスロット

PCIの増設カードを接続する為のスロットです

Page 4: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

4

10)ISAスロット(IndustryStandardArchitecture)

ISAに対応する増設カードをセットする為のスロット(i820以降の最近のマザー

ボードは ISAを対応せず、PCI-ISAブリッジにて対応する方向)です

11)メモリースロット

DIMMやRIMMのようなメモリーモジュールをセットするスロットです。

SIMM(SingleInlineMemoryModule)

30ピン又は72ピン(但し最近は使われなくなった)

DIMM(DualInlineMemory)

168ピン(最近はDIMMが主流)

RIMM(RambusInlineMemoryModule)

184ピン(最新のメモリー)

12)電源コネクタ

電源供給用コネクタです

13)FFDコネクタ

FDDをフラットケーブルで接続するコネクタです

14)IDEコネクタ

IDE型ハードディスク、CD-ROM等を接続する為のコネクタ(プライマリとセ

カンダリがあり、各々にデージーチェインにて2台のユニットが接続可能)です

15)フロントパネルピン

ボードの設定用ピンです

16)バックアップバッテリー

CMOSやタイマーに常時電気を供給する電源です

1.1.1.2 各種コネクター

マザーボードに搭載される各種コネクタは以下の通りです。

1) マウスコネクタ

2) キーボードコネクタ

3) USBコネクタ(UniversalSerialBus)

デージーチェインにて6階層で最大127台まで接続可能です。通信速度としては1.

5Mbps~12Mbps程度です。(最近はより高速化が実現されています)

4) シリアルコネクタ

モデム接続等に使用されるコネクタで、ケーブル長は15mまでです。コネクタ仕様

としては D ー Sub9,D ー Sub25があります。

5) パラレルコネクタ

プリンタ接続用です

Page 5: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

5

6) VGAコネクタ

ディスプレー接続用で、2D/3D対応用があります

7) ジョイスティック/MIDIコネクタ

8) オーディオ用端子

1.1.1.5 マザーボードに搭載されている各種バス

基本的にマザーボード上のバスは以下から構成されています。但し、各バスのビット数はバスの仕様

により異なります。

1) データバス

データを送受信するバスで最近のCPU/メモリ間は64ビットで構成されていま

す。

2) アドレスバス

実際のデータを読み書きするアドレスを伝えるバス(通常32ビットバス)

3) コントロールバス

実行内容を規定する情報を流すバス(4ビット以上)

1.1.2 CPU はどのようになっているのだろう

コンピュータの中枢的なもので、人間の頭脳に相当します。このCPUは基本的には以下のような機

能から構成されています。マザーボード上に搭載される各ユニットはマザーボードが提供する通信用バ

スのクロックに連動して動作しますが、CPU自身はこのバスの速度に比較し、極めて高速に動作するこ

とが可能となっています。外部バスは本ボードに接続される各種機器に制約される為に CPUの速度に合

わせることができません。この問題を回避する為に CPUの内部クロックを上げることが考慮されていま

す。これが逓倍回路と言われるもので、通常外部クロックに比較し数倍高速になるように設定されてい

ます。

Page 6: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

6

1)バスインターフェースユニット

CPUと外部バスとのやり取りを制御する為のユニットです

2)命令フェッチユニット

主メモリー上に記憶されている命令を読み込みます。また、CPUは他の処理中でも次に実行す

べき命令を先読みすることができます。

3)データキャッシュ・データタグ

データ保存専用の一次キャッシュです。主メモリー上に登録されているデータが記憶されて

いるアドレスが記録されています。アクセスしたい主メモリー上のアドレスがキャッシュタグ

に登録されている場合は、キャッシュ上からデータを取り込みます。

4)命令キャッシュ・命令タグ

命令保存専用の一次キャッシュです。主メモリー上に登録されているプログラムの命令が記

憶されているアドレスと命令そのものが記録されています。アクセスしたい主メモリー上のア

ドレスがキャッシュタグに登録されている場合は、キャッシュ上から命令を取り込みます。

5)命令デコードユニット

メモリーフェッチフェーズで読み込んだ命令の解析を行い、どのような処理をすべきか判断

するユニットです。

6) 逓倍回路

外部バスのクロックをもとに内部クロック(コアクロック)を生成します。通常は外部クロ

ックに対し数倍高速なクロックを設定します。

7)コントロールユニット

各ユニットを制御し、CPU全体の動作を調整する為のユニットです。

8)実行ユニット

命令デコードユニットにて解析された命令を実際に実行するためのユニット(演算処理ユニ

ットである ALUを含む)に要求し実行します。

9)3DNow!MMX1.2ユニット

Page 7: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

7

MMXや3DNow!テクノロジを備えたCPUの場合これらのユニットが搭載されるも

ので、マルチメディア及び3D処理を高速に行う為のハードウェアです。

MMXは一つの命令の実行で複数の異なるデータを同時に処理するものでこの方式をSI

MD(SingleInstructionMultipleData)と言います。

MMXが固定小数点の高速化を行うのに対し、3DNow!は3次元処理に必須である浮動

小数点演算を同時に複数実行可能とすることにより高速化を実現するものです。

10)不動小数点演算ユニット

不動小数点専用演算ユニットです。浮動小数点はソフトウェア的に処理することも可能です

が、高速に実現する為に専用のハードウェアを提供しています。この様な専用ハードウェアを

コプロセッサとも言います。

補足:

“ハードウェア、ソフトが無ければ只の箱”と言われるように“CPUもソフトがなければ只の石”

です。一般的に CPUは演算や制御を行うと説明されますが、もう尐し具体的にどのような動きをす

るのかを見てみましょう。

まず、CPU にとり OS ソフトもアプリケーションソフトも全く同じ扱いをすることを理解くださ

い。(CPUにとって OSとアプリケーションの区別はありません)

各種のソフトウェア(OS やアプリケーション)はプログラミング/コンパイル過程を経て(プ

ログラミング言語には各種ありますが最終的にはすべて同じ形式になります。インタプリタ-言語

の場合も同じです)CPU が解釈できる命令語に変換されます。この変換されたプログラム(命令語

群)と、そのプログラム実行に必要なデータがメモリーに登録された状態で、CPU はソフトウェア

により(通常は OS により)指定されたアドレスに登録されているメモリーの内容(命令又はデー

タ)を順次読み込み、その命令を解釈し、実行(例えば加算)し、その結果を命令後で指定された

メモリー上に書き込みます。この処理を連続的に行い、OS を介した処理が必要なコマンド(OS が

存在するシステムではですが)に遭遇した時点で、OSとの約束で決められた番地(通常は割り込み

処理ルーチン)に制御を移します。結局 CPUは OSプログラム部分の命令読み込みを行います。

CPUとはこの様に、メモリー上にある命令を順次読み込み、その命令に従ったデータをメモリー

からの読み込みや演算、及び制御処理を行うもので、外部記憶装置からのデータ読み込みや書き込

みは行いません。この外部記憶装置に対する読み書きを行うのが IOH(InputOutputHub)といわれ

るチップです。

尚、現状のパソコンに搭載されている CPU の2大メーカとしては、インテル社と AMD 社があり

ます。インテル社で最も良く知られているのが Pentium シリーズと Celeron シリーズであり、AMD

社製として知られているのが、Athlonと Duronがあります。

これらは用途別に使われています。例えば、インテル社のCeleronでは価格を下げる為にPentium

に比較してキャッシュメモリーの大きさを小さくしている等、CPU のシリーズにより性能等は大き

く異なりますが、機能面に関してはほぼ同じものが提供されています。つまり、搭載されるクラス

(価格)に応じて CPUのラインアップを揃えているということになります。

コンピュータの機能としては以下と定義されています。CPUはこの中の演算と制御部分を指して

Page 8: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

8

います。

入力装置(Input Unit)

制御装置(Control Unit)

演算装置(Arithmetic Unit)

記憶装置(Strage Unit)

出力装置(Output Unit)

1.1.3 チップセットとは何だろう

マザーボード上には基本的に 2つのチップセットが搭載されています。これらのチップセットは速度や手順の

異なるユニット同士の交信を可能とする為の仲介役として存在するものですが技術の進歩に伴い将来は一つ

に統合化される方向にあります。(ユニットが少ないほどお互いの交信が不要となりますので全体の高速化が

可能となります)

マザーボードからも分ります通り、CPUと各チップセット間に接続されるバスの転送レートは大きく異なります。

図の例で見る通り、CPUからMCH間の転送レートは 1GB/Sec(マザーボードの仕様にもよります)であるのに

対し、MCHと ICH間のレートは 133MB/Sec しかありません。また、各周辺機器と外部バスの転送レートにも大

きな隔たりがあります。この隔たりを調整し、お互いのデータ交信を可能としているのがチップセットの役割なの

です。

本項ではこれらチップセットの代表的なものを紹介します。

図 1.2 Pentium4におけるMCH(左)とICHチップセット例

1.1.3.1 ノースブリッジチップセット(i820チップセット以降はMCHと呼ぶ)

基本的にはCPUと各周辺のデータ通信を可能としているチップセットであり、以下より構成されてい

ます。

Page 9: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

9

① AGPコントローラ

AGPビデオカードを接続し、表示モニタへの表示を可能とするものです。

② DRAMコントローラ

メインメモリーをアクセスする場合に動作するコントローラです。

③ ホストーPCIブリッジ

増設ユニットであるPCI基盤とのデータ通信用コントローラです。

④ キャッシュコントローラ

マザーボード上に搭載される2次キャッシュメモリーをコントロールするコントローラで、最近

のCPUは1次キャッシュだけではなく2次キャッシュもCPUに内臓しているものが多くなって

います。

また、このコントローラが無いものもあります。

1.1.3.2 サウスブリッジチップセット(ICH)

マザーボードに接続される各種周辺装置とマザーボード間のデータ交信の仲介の役割を持つチップ

セットであり、以下から構成されています。

① 割り込みコントローラ

コンピュータにおいて、システム的に円滑な動作をさせる上で割り込みは極めて重要な機

能であり、各種ソフトウェア(OS)はこれらの割り込み処理をベースとして動作しています。

割り込みの種類には以下があります。

・ ハードウェア障害割り込み(ハードウェア異常等)

・ 内部割込み発生命令(IO処理に関する割り込み)

・ ユーザプログラムからのOS制御

・ ゼロ除算割り込み

・ 領域外アクセス割り込み

・ 不正実行コード割り込み

② IDEコントローラ

IDEデバイス(ハードディスク、CR-ROMなど)を接続した時のデータ交信に関する仲介を

行います。

③ USBコントローラ

USBにて接続される各種機器とのデータ交信の仲介を行います。

④ DMAコントローラ

Page 10: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

10

周辺機器とのデータ交信を行う場合、CPUが逐次データ交信を行うPIOモードとCPUと

は独立(並行して)にデータ交信を行うDMAモードがあります。このDMAコントローラはDM

A転送を行うもので、CPUから転送要求を受けるとCPUとは独立にデータ転送を行うもの

で、ハードディスク等の読み書きはほとんどがこのモードで行われます。

⑤ PCI-ISAブリッジ

旧型パソコンの標準仕様であったISA規格の周辺機器を接続した場合に、ISA接続機器

間のデータ交信の仲介を行います。但し、最近はISA仕様の周辺機器が少なくなったことも

あり、マザーボードで提供せず、PCI拡張ボードから間接的にISA仕様の機器と接続する形

態が多くなりました。

1.1.3.3 BIOSチップ(FWH)とCMOS

コンピュータのパワーがONされた時にOSの起動を行ったり、各種ソフトウェアからの周辺機器へ

の入出力処理を仲介するものです。またCMOSにはシステム動作条件(システム動作環境)が記録

されます。

① BIOS

OS の起動、及びハードウェアの設定を行うもので、電源起動時に実行されます。また、

各種プログラムから要求される入出力命令に対し、各種デバイスに対し処理要求を行う仲

介役としての機能も持っています。但し、最近のパソコンでは外部機器に対する入出力は

デバイスドライバーが行っており、BIOSを使うことはなくなっています。

② CMOS

BIOS 設定情報の記憶用チップであり、システム起動条件やハードウェア条件を保持して

いる記憶装置です。この部分はシステム起動時のセットアップ処理にて編集を行うことがで

きますが、一般ユーザはあまり変更を必要としない部分です。

Page 11: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

11

1.1.4 メモリーにはどんなものがあるのだろう

メ モ リ ー 素 子 と し て は 、 基 本 的 に DRAM ( DynamicRandomAccessMemory ) と

SRAM(StaticRandomAccessMemory)に大別できます。DRAM は素子としてコンデンサを用いたもの

で放置すると自然に放電しますので記憶された状態を保持するために定期的なリフレッシュ動作(デー

タが消える前に再充電する処理)を必要とする記憶素子ですが、回路そのものが比較的簡単に実現でき

ることから、集積度も簡単に上げることができます。これに対し、SRAM は記憶素子としてトランジス

ター(フリップフロップ回路)を用いるので自然放電はしませんので、記憶保持の為のリフレッシュ動

作は必要としません。この関係で、DRAM は安価で実現できますが速度的な問題(低速)があります。

SRAM は高速で動作しますが、高価となり集積度も高くありません。この関係で、キャッシュメモリは

この SRAM が使われ、主メモリーは DRAM が使われています。また、ROM(ReadOnlyMemory)には、

用途に応じて以下の種類があります。

① マスク ROM

内容は出荷時に書き込まれる ROMで、ユーザが書き換えることはできません。

② PROM

ユーザが一度だけ書き込み可能な ROMです。

③ EPROM

ユーザは何度でも書き換え可能な ROMです。この ROMは紫外線を当てることにより

内容を消去します。

④ EEPROM

ユーザは何度でも書き換え可能な ROMです。この ROMは電圧をかけることにより内

容を消去します。

補足:

以下にメモリーに関する補足を行います。

DRAM:DynamicRAM

アクセス速度は、60ns~70ns 程度です。

1ビットのデータを保持するのに1ケのトランジスターと1ケのコンデンサが必要(低

価格)となります。

DRAMでは、メモリーはライン(128ビット又は256ビット単位)という単位で

管理されますが、そのラインの何れかがアクセスされるとそのラインの全てが破壊される

性質があります。この為に、対応するラインを一次退避し更新後に再び書き戻すというリ

フレッシュ操作が必要なことから高速にはなりません。

SRAM:StaticRAM

1ビットのデータを保持するのに4ケのトランジスターが必要(高価格)となります。

Tag-RAM:

Page 12: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

12

実際にアクセスしたいメインメモリーのアドレスを保存するキャッシュ管理用メモリ

ーのことです。

キャッシュはライン単位で管理しており、LRU(LeastRecentlyUsed)方式で最も利用さ

れていないラインが切り捨てられる方式を取っています。

補足:

ライトスルー:メインメモリとキャッシュへの書き込みを同時に行う方式のことです。

ライトバック:キャッシュとメインメモリへの書き込みを別々に行う方式のことです。

SDRAM:SynchronousDRAM

CPU のクロックに同期してデータの遣り取りを行う DRAM のことです。

PB-SRAM:パイプライン SRAM

パイプライン処理とバースト処理を取り入れた高速キャッシュ用メモリーで、SRAM の

半分以下の速度でアクセスすることができます。

補足:

パイプライン:読み込み、解釈、実行、出力をパイプラインで行います

バースト転送:メモリーを管理するライン単位(128ビット又は256ビット)でメモ

リー転送を行う方式です。

Direct RDRAM(Direct Rambuds DRAM)

Rumbus 社が開発した高速メモリー(250Mhz~400Mhz)です。

RIMM:RumbusInlineMemoryModule

DIMM 互換の実装モジュールです。

S-RIMM:Synchronous Rumbus Inline Memory Module)

RIMM モジュール上で SDRAM を動作させるための規格です。

DDR SDRAM:Double Data Rate SDRAM

SDRAM を拡張し、SDRAM の2倍の速度で転送することを可能としたメモリーアーキ

テクチャーのことです。

Page 13: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

13

1.2 電源を入れるとどうして画面が出てくるのだろう

パソコンに電源が供給された場合、ハードウェアの機能を借りてソフトウェアは起動されます。この

章では、電源から投入された時にどのような仕組みでソフトウェアが起動され、操作者が操作できるよ

うになるのか、またオペレーティングシステムはどのように関係してくるのかを見てみることにします。

基本概念図

1.2.1 コンピュータが動く仕組みについて

本章ではコンピュータに電源が投入されてからオペレーティングシステムが起動され、操作者の要求

により任意のアプリケーションが起動され、各種の処理が行われるまでの体系を図に沿って見てみます。

図に挿入されている番号(1~7)と以下の説明項目番号を照らし合わせて見てみましょう。

1)ステム初期化処理

マザーボードに電源が投入されると、FWH(Firmware HUB)と言われるメモリー上に記

Page 14: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

14

録されている BIOS(Basic I/O System)の IPL(Initial Program Loader)と呼ばれるソ

フトウェアが実行されるようにハードウェア的に設計されています。この IPLは、規定のルー

ルでシステムディスクに登録されている OS 起動用ソフトウェアをメモリに読み込んだり、シ

ステムの動作環境を設定し、OS起動用ソフトウェアを実行状態とするものです。

補足1:

CPUとはソフトウェア(通常は OS)から与えられるメモリー上の実行アドレスから命令部分

(命令コードと参照データアドレス)を順次読み込み、その命令に従った処理(演算)及び制

御(I/O 要求や実行アドレスの変更)を行ものです。つまり、CPU はメモリー上にあるプログ

ラム上の命令コード(命令とメモリーアドレス等を示すオペランドから構成されます)を取り

出し、その命令を解釈し、実行します。そしてその結果を命令部分で指定されているメモリー

に返却(書き込み)します。従来の CPUはこの動作をシリアルに行っていましたが、最近の高

速 CPU はそれらの各々の処理を並列に行えるように(命令を読み込み、解釈が開始されたら、

その動作と並行に次の命令を読み込む等)設計されています。これを CPUのパイプライン処理

と言っています。

補足2:

FWH上の BIOSは OSの起動処理以外に、アプリケーションプログラムから OSを介して要求さ

れる各種の入出力処理を受付、対応するソフトウェアドライバーを介してハードウェアにアク

セスを行います。

FWH は全てのマザーボード上に共通して使用されている言葉ではありませんが、どのような

マザーボードにも同じ概念のチップがあり、システムの起動処理等を行っています。

2)~3)OSの起動

上記 BIOSソフトウェアにて読み込まれた OS起動ソフトウェアはシステムディスク上の所定

のアドレスに登録されている OS(各種ドライバー含み)、及び関連データをメモリーに読み込

み、その OSソフトウェアの先頭から実行を開始します。

補足1:

OS は OS 読み込みソフトウェア(BIOS)により起動され、実行権が与えられると各種アプリ

ケーションソフトウェア(ワード等)等の起動要求待ち状態(アイドル状態)となります。つ

まり、操作者がコマンドプロンプト等を使ってソフトウェア名をキーボードから入力して実行

要求を行うか(この方式をキャラクターユーザインターフェースによる起動と言います)、OS

が提供する各種アイコンやメニューによる選択操作により(これをグラフィカルユーザインタ

ーフェースによる起動と言います)実行要求が行われることを待ちます。

Page 15: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

15

補足2:

各種ドライバーとは当該システムに接続されている各種機器に対し直接実行要求を行うも

ので、各機器に対し各々の機器に応じた要求を行います。但し各アプリケーションと OS との

やり取りに関しては標準化された方式で行います。このことにより各アプリケーションは、新

規のデバイスを追加してもドライバーさえインストールすればアプリケーションを変更する

ことなく使用可能となるのです。

4)~5)アプリケーションの起動

OSは操作者の操作(アイコンによる起動処理等)によりアプリケーションソフト(ワード等)

の実行要求を受けると、対象となるソフトウェアの登録場所をシステムディスク上から検索し、

対応するアプリケーションプログラムとデータをメモリー上に読み込み、そのアプリケーショ

ンの実行を開始させます。(正確に言えば、OSのスケジューラ機能を介して開始されます)

補足1:

各種のプログラムをシステムディスクからメモリーに読み込む時に、メモリー上に空きが無

い場合は、現在メモリー上に読み込まれているデータを一時的にシステムディスクの専用のエ

リア(スワップエリア)に退避し、必要時に再びメモリーに読み込む方式を取っています。こ

の方式をスワッピング(システムディスクに退避することをスワップアウトと言い、読み込む

ことをスワップインという。この処理を総称してスワッピングと言います。)方式と呼んでい

ます。これが仮想メモリーの実態です。このスワップ領域は結局は磁気ディスク上に存在しま

すので、スワッピングが発生した場合はシステムのパフォーマンスは極端に劣化します。最大

のシステムパフォーマンスを求めるのであれば記憶メモリーを大きくし、スワッピングが発生

しないようにする以外に回避方法はありません。(多尐のスワッピングではそれ程影響しませ

んが、スワッピングが頻発すると大幅にパフォーマンスは劣化します)

補足2:

各種アプリケーションプログラムの起動及び起動するためのメモリー確保や資源(外部記憶

装置等)の管理等の処理は OSの重要な機能の一つとなっています。

6)~7)アプリケーションの実行と並列処理

実行されたアプリケーションからの外部デバイス(磁気ディスクやプリンター)に対する処

理要求は全て OSを介して実行されます。(OSは CPUに対しそのアプリケーションの実行アドレ

スを CPUに通知し、CPUがそのアプリケーションの命令を実行することになります。)また、ア

プリケーションが外部媒体に対し何らかの入出力要求を行った場合、そのアプリケーションを

Page 16: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

16

入出力待ち状態とし(CPU の速度と外部媒体の速度は大きく異なるので、入出力動作待ちの間

に別の処理を行う為です)、他のアプリケーションで実行可能なものを検索し、そのアプリケ

ーションを実行させます。このことにより、各々のアプリケーションソフトが並行に動作して

いるように見せかけているのです。

補足1:

OSは、各種アプリケーションから要求される各種要求を解析し、出力対象となる機器に対す

るドライバーを介して外部機器との送受信処理を行います。また、各種アプリケーションが平

等に動作するように制御するのも OS の仕ことです。仮にアプリケーションが一切の入出力を

行わない(演算のみを行う)場合は、永遠に他のアプリケーションに実行権を与えないことに

なりますが、この問題を回避する為に一定時間以上同じアプリケーションが CPUを占有しない

ように制御するのも OS の仕ことの一つです。この機能をディスパッチング機能、あるいはス

ケジューリング機能と呼んでいます。(各アプリケーションに平等の実行時間を与えることを

タイムシュアリング方式といいます)

本章では細かい部分は大胆に省略し、概念的にコンピュータとはどのように動作しているの

かを解説してみました。

Page 17: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

17

1.3 BIOS をみるとコンピュータの仕組みが分かってくる

BIOS とは、BasicInputOutputSystem の略で、IBM の PC/AT 機に搭載されたのが最初となるもの

で、IBM の PC/AT 仕様公開によりいろいろのベンダーにより作られてきました。この BIOS は、当初

シングルタスクを対象(PC-DOS)に作られていましたので、入出力部分もシングルタスク用であり、

マルチタスク OS には不向きなものでした。この理由で、最近では入出力の大部分がデバイスドライバ

ーと言われるソフトウェアで実現され、BIOS 自信は、起動時の各種処理(起動時のビープ音、メモリ

チェック及び OS 起動など)にのみ使われるようになっています。この項では、これらの機能について

みてみることにします。

1.3.1 BIOS の役割

マルチタスク OS における BIOS の役割は以下のようになっています。

1) パソコン電源投入後の起動

ROM のプログラムを DRAM 上に転送し起動できる環境を作成する

2)ハードウェアの設定

接続されているハードウェアの確認と SRAM(CMOS-SRAM)への登録

補足:

CMOS(ComplementaryMetalOxideSemiconductor:相補型金属酸化物半導体)とは

半導体素子の内部構造法の名前であり、低速ですがバッテリー消費電力が極めて尐ないこ

とから、内蔵されたバッテリー(リチウム電池又はニッカド電池)で動作させており、日

付け情報等も持っています。(通常のパソコンで10年程度は入れ替えが不要な程度の消

費電力です)

3) 本入出力処理

最近のマルチタスキング OS ではデバイスドライバーで入出力を行っている関係で使用

されることはありませんが、当初は、キーボード入力、画面出力、プリンターへの文字出

力等を行っていました。

補足:

もともと BIOS はシングルタスク OS(16ビットシングルタスク OS である MS-DOS)

を前提に作成されている為に並行処理が出来ない理由から使われなくなりました。

4)PnP(Plug & Play)機能

パソコンに接続されている機器を BIOS レベルで自動認識し、最適なハードウェア環境

に設定します。認識されたハードウェアを使う為に必要なデバイスドライバーが無い場合

はインストールを勧誘します。

5)APM(AdvancedPowerManagement)機能

Page 18: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

18

APM は省電量モードの為のインターフェース規格であり、OS-BIOS 間でソフトウェア

レベルでの供給電力制御が可能となったことから、PC 電源が供給されていても未使用時

は自動的に省電力モードに切り替えることがかのうとなりました。BIOS は、この機能に

よりスタンドバイ機能等の省電力モード切替を可能としています。

1.3.2 BIOS の種類

BIOS は当初 IBM の PC-DOS 上に搭載されたものでしたが、IBM の PC/AT 仕様公開に伴い、いろ

いろのベンダーで作成され、提供されています。いずれの BIOS も PC/AT 互換機上で動作することが

可能ですが、BIOS の種類により設定できる内容等がかなり異なっています。これは、ベンダーのコン

セプト(ユーザに見せる範囲を尐なくする等)に依存するからです。

以下に主な BIOS の列記しますが、どれが良いというものではありません。

1)PhoenixBIOS(PhoenixTechnologiesLtd)

Dec,Dell が採用したもので、容易性を重視したシンプルな BIOS です。

2)AMI BIOS(AmericanMegatrends Inc)

Gateway2000 やフレッツで採用したもので、自由度の高い BIOS で、各種の設定を GUI

(GraphicalUserInterface)で実現したものもあります。

3)Award BIOS(AwardSoftwareInternational Inc)

GIGA-BYTE 社、ASUSTek 社が採用したもので、極めて自由度の高い BIOS です。

4)MR-BIOS(MicroidResearch Inc)

書き換え可能 BIOS です。

5)Acer BIOS(Acer Incorporated)

Acer社製パソコンや旧富士通パソコンに搭載されたBIOSで、PC/AT互換機の代表的なBIOS

です。

補足1:

最近の BIOSはどのメーカのものもフラッシュ ROM BIOSと言われる書き換え可能なメ

モリーに BIOS が搭載されています。

補足2:

フラッシュ ROM という名前は、従来の ROM が入っていたところにフラッシュメモリーを

入れた理由で付けられた名前で、実際は ROM ではありません。

1.3.3 拡張 BIOS

ディスクオペレーティングシステムでは、その便宜上拡張 BIOS というものがあります。

Page 19: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

19

これは、ビデオカード、SCSI カード、NIC カードに搭載されている BIOS のことです。これに対し、

マザーボード上に搭載されている BIOS はシステム BIOS と呼ばれます。

このシステム BIOS は、システム起動時に IDE 仕様の HDD を前提としますので、SCSI に接続され

た HDD を起動ディスクとする場合に、その HDD を認識する為にこのような拡張 BIOS が必要となり

ます。また、OS が起動される前に画面に表示する環境が設定される必要があることから、システム BIOS

が起動される前に画面が表示できる状態とする為にもこの拡張 BIOS が必要となるのです。

1.3.4 AwardBIOS の場合の設定内容について見てみよう

BIOS の仕様は、BIOS メーカにより大きく異なります。本項では、AwardBIOS が提供している設定

可能項目(BIOS バージョンによっても異なります)について見てみましょう。但し、この BIOS 設定

はメーカが出荷時に最適な設定をしておりますので、特別な理由が無い限り変更しない事をお勧めしま

す。この項では、BIOS の概念について理解して頂く為にのみ乗せています。

1)Standard CMOS Feature

日付けの設定や、IDE に接続されているハードディスクの設定、及びフロッピーディスクの接続

条件(プライマリーとセカンダリに何が接続されているか等)の設定、及びビデオの接続条件の設

定等を行います。

2)Advanced BIOS Feature

Page 20: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

20

システム起動及び動作時に関する各種の設定を行います。例えば、システム起動ディスクの検

索順番(通常はフロッピーを検索し、挿入されていなければハードディスクを検索するように設定

されています)、ウイルス発生時の警告表示の有無、キャッシュメモリーを使用可否、等を設定し

ます。主な設定内容は以下の通りです。

・ CPU 内の内部キャッシュの使用有無

・ 外部キャッシュの使用有無

・ システム起動時に CPU チェックやメモリーチェックを行うか否かの設定

・ システムを SCSI から起動するか、IDE から起動するかを設定する

・ 起動時にハードディスクから起動するか、FDD から起動するかを設定する(起動デバイ

スの順番も規定する)

・ ブート時に最初にフロッピーをチェックするか否かを設定する

・ フロッピーディスクの読み書きモードを設定する

・ HDD のブロック転送において何セクタ単位で行うかを定義する

・ パスワードを確認するタイミングの設定(SupervisorPassword,PasswordSetting におい

てパスワード設定した場合に設定する)

・ PS/2 マウスをチェックし IRQ を割り当てるか否かを定義する

・ VGA パレットの色調整を定義(MPEG ボードやビデオキャプチャー接続時の色調整)

・ 64MB 以上のメモリーをもったシステム上で OS/2 を使用時する場合に設定

・ ビデオカードに搭載されている拡張 BIOS の内容をシャドーRAM としてメモリー上のア

ドレス(C0000h~C7fffh)に複写するか否かを定義

・ 拡張 BIOS を搭載した各種カードの ROM の内容をシャドーRAM として、メモリー上の

RAM に複写するか否かを指定する

・ パソコン起動時に数字入力モードとして起動するか否かを定義する

・ 起動時の CPU 速度を定義する

・ キーボードのリピート機能の使用有無を設定

・ リピートのレート(秒当たりのリピート数)を定義

・ リピート機能における最初のリピートが開始されるまでの時間(ミリ秒単位)

3)Advanced Chipset Feature

チップセットに対するメモリアクセス方法等に関する設定を行います。主な内容としては以下の通

りです。

・ メモリーに対するアクセスタイミングを BIOS による自動設定にするか否かを定義

・ DRAM に対するバースト転送時の2回目以降のデータ転送タイミングの定義

・ RAS-CAS 遅延時間を CPU ウエイト数で設定

・ バースト転送時に1番最初のデータが転送されるまでの CPU ウエイト数の設定

・ “DRAM R/W Leadoff Timing”で設定した値を1クロック尐なくするか否かを設

Page 21: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

21

・ DRAM のデータ読み込み処理を若干高速化させるか否かの設定

・ メモリーアクセスのタイミングを微調するか否かの設定

・ PC 上のバスを他のバスの干渉を受けずに独立して動作させるか否かの設定

・ PCI バス上のデータ転送に関する設定(バースト転送時のオーバーヘッド回避)

・ PCI-ISA ブリッジの動作を制御する。(ISA バスの低速に他の動きが影響されない為にの

設定)

・ チップセットの動作モードの設定

・ 8ビット或いは16ビット入出力要求に対するシステム側との速度調整を行う

・ C0000~C7FFFFの領域にシャドーRAM化されたVideoBIOSをキャッシングするか否か

を定義する。

・ ISA バスのパフォーマンス向上の為の設定

・ メモリーの種類に応じて表示される項目

・ メモリーパリティーが発生した場合にそのエラーを画面に表示するか否かの設定

・ パリティービットを通常のパリティーとして使用するか、ECC として使用するかを設定

・ マザーボードに搭載されているフロッピーディスクコントローラーを使用するか否かを

設定

・ A ドライブと B ドライブの切り替え

・ シリアルポートの対する IRQ 番号の設定(規定値は IR4、Q3)

・ パラレルポートの IRQ 番号を設定(規定値は IRQ7)

・ パラレルポートのモードを設定(Normal,EPP,ECP,ECP+EPP)

・ 使用する DMA チャネルの設定(1又は3) ECP を設定時のみ有効

・ 赤外線通信を行うか否かの設定

・ マザーボード上に搭載された IDE インターフェースを利用するかどうかを指定する

(Both,Primary、Secondary,Disable)

・ 各々に接続された各デバイスに対するデータ転送モードを設定する(DMA、PIO0~4)

・ USB の使用有無の設定

4)Integrated Peripherals

マザーボード上の I/O コントローラ(FDD,IDE,COM)に関する設定

5)Power Management Setup

省電力に関する設定

6)PnP/PCI Configulations

Page 22: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

22

Plug&Play や PCI バスに関する設定

・ 各 PCI バススロットに対する IRQ 割り当ての設定

・ PCI バスにおけるバス占有時間を調整する

・ IRQ を ISA バスで使用するか否かの設定

・ 各 DMA をどのデバイスで使用するかを定義

・ 拡張 BIOS を搭載した非 PnP の ISA カードに対する使用メインメモリー開始アドレスの

設定

・ 上記で設定された開始アドレスから、どれだけのメモリーサイズを割り当てるかを設定

・ NCR SCSI BIOS 機能の使用有無の設定

7)PC Health Status

本 CPU が動作している環境(温度や電圧状態等)を表示します。

8)Frequency/Voltage Control

フェ-ルセーフの設定や、システム使用時のパスワードの設定等を行います。

Page 23: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

23

補足:

BIOS を理解する上で必要となる用語について簡単に説明します。

デファクトスタンダード

実質的な業界標準とことです。

IDE(IntegratedDeviceElectronics)

PC/AT 互換機用ハードディスクインターフェースです。

Compaq 社と WesternDigital 社の共同開発で、ATA という名前で国際規格化されました。

1コネクタ2台までで、1ドライブ当たり504MB まで対応できます。また、接続可能距離は最

大46cmでノイズに弱いという欠点があります。

EIDE(EnhancedIDE)

2コネクタまで装着可能(デバイスは合計4台)で、1ドライブ当たり、7.84GB、32.1

GB などが可能です。また、CD-ROM 等も接続可能

注意:IDE インターフェースを増設すれば4台を超えた認識も可能となります。

注意:IDE の上限は以下の通りです。

シリンダ数:65536 ヘッダ数:16 セクタ数:255

セクタサイズ:512

合計:128GB

ATAPI(AT AttachmentPacketInterface)

IDE インターフェースで、CD-ROM,MO、テープドライブ、フロッピーなどを扱うインターフ

ェースを指しています。

IDE におけるマスターとスレーブ

スレーブとして接続されたドライブに搭載されているディスクコントローラは使用されず、マ

スターとして登録されたドライブ上のディスクコントローラにより管理されます。

SCSI(SmallComputerSystemInterface)

MO,ZIP,PD,イメージスキャナ等の接続も可能なインターフェースで、1コントローラにつき7

台までの接続が可能ですが、SCSI-3 では 1コントローラで15台又は31台まで可能で

す。

接続長は最大6mまで可能ですが、SCSI-3 では3m、Ultra2-SCSI では12mの制限がありま

す。基本的には以下の通りです。

SCSI-1:8ビット幅、5MB/S

SCSI2(FastSCSI):8ビット幅、10MB/S

SCSI2(WideSCSI):16ビット幅、20MB/S

SCSI3(UltraSCSI):8ビット幅、20MB/S

SCSI3(UltraWideSCSI):16ビット幅、40MB/S

Ultra2SCSI(Fast-80SCSI):16ビット幅、80MB/S

注意:電気的な整合性(信号の反射)を取る為にターミネータの接続が必要

最 近 シ リ ア ル SCSI(IEEE1394)規格が注目されています。これまでのパラレルにおけるピン間の干渉を防止できます。

Page 24: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

24

Plug&Play

拡張デバイス(拡張カードなど)が利用するシステムリソースを自動認識又は設定する機能で、

対応するデバイスドライバーの自動インストール又はインストールの勧誘を行います。但し、OS、

BIOS、及びハードウェアデバイス全てが Plug&Play 対応をしている必要があります。

Plug&Play 用ハードウェアを接続する場合は IRQ や DMA 等は自動的に設定できるので問題は

ありませんが、非 Plug&Play を接続する場合は IRQ を手動で設定しなければなりません。

デバイスドライバー

パソコンで接続した周辺機器を、OS 上で管理・認識することができるようにするためのプログ

ラムです。

NMI:NonMaskableInterrupt

絶対止められない割り込みです。

バースト転送:

一括して効率良くデータ転送を行う仕組みであり、CPU-メモリー間、及び各種デバイス-メモリ

ー間転送で採用されるアーキテクチャです。CPU-メモリー間の表現としては、7-1-1-1 等と表現さ

れます。これは最初の 7 クロックでデータ転送準備を行い、1回目の転送ではメモリーアドレスで

ある行列情報により転送を行いますが、2回目以降は列情報だけで連続した転送を行うことができ

ます。

LBA(LogicBlockAddress)

ハードディスクの全セクタに割り振られる論理番号で、E-IDE タイプの HDD はこの論理番号で

管理しています。

ATAPI(AT Attachment Packet Interface)

IDE インターフェースに HDD 以外の機器を接続する為の仕様です

注意:

BIOS 設定に関する詳細仕様を理解する場合は、別に BIOS 設定に関する参考書を参照ください。

Page 25: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

25

1.3.5 ハードウェアウイザードとは何だろう

システム起動時にマザーボードに接続されている全ての外部デバイスをチェックし、接続されたデバ

イスに対応するドライバーソフトがインストールされていない場合はそのドライバーソフトのインス

トール処理(通常は CD-ROM から)を自動的に開始する機能を持ったソフトをハードウェアウェザード

と言い、Windows では標準的に搭載されています。この機能により誰でも簡単に外部デバイスの追加が

可能となっています。勿論、このシステムがサポートしていないデバイスの場合はこの機能は働きませ

ん。(外部デバイスとは、CDや DVD等の機器の総称です)

また、外部デバイスを自動的に検出するという意味で同様な概念として、システムが既に立ち上がって

いる状態で外部デバイスの接続を行った場合、自動的にそのデバイスをシステムが認識し、即時使える

ようにするデバイスもあります。この機能のことをホットスワップ機能といい、マウスやキーボードが

この対象となります。但し、機器の接続を適切に行わない場合はシステムの故障になる可能性がありま

すので、デバイスの接続や取り外しはホットスワップが可能かどうかを確認し取り外しや接続を行う必

要があります。(ホットスワップ可能なデバイスでない限りソフト的に取り外し可能状態としてから取

り外しを行う必要があります)

Page 26: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

26

1.4 OS の仕組みはどうなっているのだろう

本項では、OS が作られた背景や、OS の必要性について見てみましょう。

1.4.1 コンピュータの歴史と OSの変遷について

日本に国産製商用コンピュータが登場したのは昭和40年前半です。それまでは IBM社製コンピュー

タや HP 社製コンピュータ等の海外メーカ製が主流でしたが、主要電機メーカはこぞって国産コンピュ

ータの開発に乗り出しました。また、そのコンピュータに搭載されるオペレーティングシステム(OS)

の開発も各々の企業が独自の方法で開発を行れました。コンピュータ製品も日立であれば Hitac、富士

通であれば Facom,東芝であれば Tosbac という名称で市販されました。ですが、当時のオペレーティン

グを含めたソフトウェアはハードウェアのオマケ的な位置付けでしたので有償化はされず、特別な名前

も付いていませんでした。勿論、ディスクオペレーティングシステムでした。

それと並行して市場に登場したのが AT&T社とベル研究所が開発を行った Unixシステムでした。この

システムはその後 SystemV 版と BSD 版(バークレー大学が機能拡張を行った)に分かれ、前者は IRIX

という名前で SGI社のワークステーション等に搭載され、後者は Solarisとして Sunマイクロ社のワー

クステーション等に搭載されました。また、Unix の機能性、拡張性及び性能性を PC 上で実現すること

を目的として PC-Unix が登場してきました。この PC-Unix の代表的なものがフィンランドの1学生に

よって作られた Linuxです。

また、Unixが登場したかなり後(80年後半)になりますが、個人向けの OSとして登場してきたのが

Windows です。最初は MS-DOS として登場し、現状のユーザインターフェースではなく、Unix 同様にキ

ーボードからコマンドを打ち込み、一太郎などのワープロソフトを起動するものでした。また、ファイ

ル名に対する制限や CPUメモリーの制限等様々な問題があり、非常に貧弱な OSでしたが、Windowsの登

場によりその操作性及び拡張性は一変しました。これに並行してパーソナル向けでは無く企業向け OS

としての WindowsNTも登場しました。この両者はユーザインターフェースは殆ど変わりませんでしたが、

NTは Unixを意識し、性能や安定性、及び拡張性が追求されました。

その後に Windows98系と WindowsNT 系の長所を備えた Windows2000が登場し、WindowsXp へと

Widows系列の一本化路線が実現されました。

上記以外にも、リアルタイムシステムを制御するモトローラの RMS や、OS9,MacOS、等など様々な OS

が用途別に存在しますが、現状最も知名度があり汎用で一般的なのが Unixと Windowsと思われます。

ところで、この Unix 系と Windows 系のオペレーティングシステムはどのような異なるのかを見てみ

ます。Unixにおいて何らかのアプリケーションを実行する場合、文字列によりコマンドをキーボードか

ら入力し実行しますが、Windows の場合はビジュアルなアイコン等をクリックすることにより起動しま

す。(勿論、Windowsでもコマンドをキーボードから入力することによりアプリケーションを実行するこ

ともできます。)これに対し、Windowsの場合は対応するアイコン等がクリックされた場合、そのアイコ

ンに対応するアプリケーションが実行される(内部的には、コマンドに変換されて実行されます)よう

になっています。つまり、Unixの場合はコマンドの入力により各種アプリケーション処理を実行します

Page 27: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

27

が、Windowsの場合はコマンドを実行する為の分かり易いユーザインターフェースを OSが提供している

ところが大きく異なっているということなのです。極論すれば、CPU 動作や外部デバイス制御の観点か

ら見た場合 Unixも Windowsも同じで、ユーザへの見せ方が違うだけなのです。Windowsはこのユーザイ

ンターフェースを持つ関係で、Unixに比較しサイズも大きくなっていますが、初心者でも使えるように

なっています。ですがパソコン上に Windowsとは全く異なる専用のユーザインターフェースを持つシス

テムを作ろうとした場合、Windows の持つユーザインターフェース部分は全く必要なくなります。勿論

メンテナンス用としてそのユーザインターフェースは使えますが、独自のユーザインターフェースを実

現する場合は、ユーザインターフェースに凝った OS ではなく、内部的な機能に優れ、パフォーマンス

の良い OSの方が有効となります。このニーズに答える為に登場したのが PC-UNIX(LINUX等)となりま

す。

つまり、OSはあくまで使用用途に応じて選択される必要があります。つまり、リアルタイム動作を必

要する(要求に対し即時反応できる仕組み)システムを作ろうとした場合、Unixや Windowsでは適しま

せんので、リアルタイム系 OS が最適となります。OS は用途や目的に応じて選択されなければならない

ということです。(勿論、ライセンスの問題等、様々な要因による選択される必要があります)

コンピュータ技術の歴史的変遷は以下の通りです。

1642年 パスカルによる歯車式計算機

1940年 ベル研究所に開発された Model1

1944年 ハーバード大学で開発された MARKⅠ

1945年 ペンシルベニア大学で ENIAC(エニアック)が開発された

真空管回路によるコンピュータ

1950年 登場した EDSAC(ケンブリッジ大学のエドザック)、EDVAC

(ペンシルバニア大学のエドバック)が現在の PC の前衛

ノイマンによるプログラム内蔵方式が採用された

1950年代 商用コンピュータが登場し始めた

1960年代 は低価格なミニコンが登場した

1970年代 超大型コンピュータ、スーパーミニコン、マイコンにの登

現在のスーパーコンピュータ、汎用機メインフレーム、ワ

ークスステーション、オフィスコンピュータ、現状の PC

が登場

1980年代 大きな流れとしてワークステーションとパーソナルコン

ピュータに2分化し、前者

はより高性能なワークステーションへ、後者は PC サーバ

ーやネットワークに展開

2000年代 PC の高性能化に伴いワークステーションとの差別が難し

くなったために、ワークス

Page 28: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

28

テーションの存在意義が脅かされるようになってきてい

1.4.2 OS の機能

タスク管理、入出力サービス、スケジューリング、割り込み管理

1)ジョブスケジューリング

ジョブスケジューリングとは、OS上で動作する各種アプリケーションソフトに対し各々が円滑に動作

するように管理・制御する機能であり、その方式として、ラウンドロビン方式、最短ジョブ優先方式、

優先ジョブ方式、到着順序方式、及び多重待ち行列方式などがあります。

ラウンドロビン方式とは、要求された順番に CPU時間を割り当て、割り当てられた時間を使いきった

後は、待ち行列の末尾に回すという単純な方式です。この方式はFCFS(FirstComeFirstServe)と

呼ばれることもあります。

最短ジョブ優先方式とは、CPU の使用状況の低いタスクの優先順位を順次高くし、逆に CPU を多く利

用したタスクの優先順位を低くすることによりシステム全体の処理効率を高める方式であるのに対し、

優先順位方式とは、予め指定されている優先順位が高いタスクから処理を行う方式です。

また、到着順序方式とは、タスクが実行可能となった順に CPUを割り当てる方式であり、多重待ち行

列方式とは、タスクに対してあらかじめ指定された優先順位と一定の CPU 時間を割り当てる方式です。

このジョブスケジューリングは、基本的には CPUに対する割り込みをトリガーとして行われます。例

えば、任意のタスクが何らかの入出力処理を OS に対し行った場合(これも割り込みにて行われます)、

その入出力処理が完了するまで、別のタスクを実行させ、その入出力の終了割り込みにより、再度どの

タスクを実行するかを決めています。また、特定のタスクのみが動作しないようにタイマーの割り込み

を使い、その割り込みをトリガーにして最適なタスクを実行しています。スケジューリング方式の違い

は、このタスクの実行をどのような順番でどのように行うかにあります。

<補足>

対話型と基本的には対話を必要としないバッチ型が混在するシステム形態においては、対話型ジョブ

の優先度を上げた方が応答性能の向上が期待できます。その理由は、対話型の方が入出力処理が多い為

に、優先度を高くしても直に入出力処理の終了待ち状態となり、必然的に他の処理に制御が切り替えら

れるからです。

タイマーを使い、一つのタスクに処理が偏らないように均等に実行することによりスループットを向

上させる方式をタイムスライシングあるいはタイムシェアリングと言います。

Page 29: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

29

2)割り込み管理の役割

コンピュータの内部処理において、割り込み処理は極めて重要な概念です。例えば、メモリー上にあ

るデータを使って10回の演算を行い、その結果をハードディスクに書き込む処理を繰り返すプログラ

ムを CPU が実行すると仮定します。この場合、CPU はまずそのプログラムの先頭の命令を読み込み、そ

の命令に従ってメモリー上のデータを読み込み、演算処理を行い、結果をメモリーに書き込みます。次

に、CPU はプログラム上の次のアドレスのコマンドを読み込み、同様の演算処理を行います。この処理

を10回繰り返した後で CPUはハードディスクへの書き込み命令を読み込みます。この書き込み命令は

対応するデバイスに対する各種設定を必要とする関係で OS の介入が必要となります。この時に使われ

るのが割り込み処理です。CPUはこの入出力命令を解釈すると予め割り込みテーブル上に登録された(シ

ステム起動時に登録されます)対応するアドレス(OSの一部で割り込み処理ルーチンと呼ばれています)

の命令を読み込み、実行を開始します。この割り込み処理ルーチンは入出力処理を要求したプログラム

の状態を保管し、そのプログラムが要求した入出力要求に応じた処理を行うユニット(IOH)に通知し

ます。この処理の後で、入出力要求を行ったプログラムを入出力完了待ち状態とし、他の実行待ちのア

プリケーションに実行を移す様にプログラミングされた OS のプログラム(スケジューラ)を CPU は実

行することになります。

また、CPU が他のアプリケーションを実行している最中に先ほどの入出力処理(割り込みにて認識し

ます)が完了すると、ハード的に CPU が行っている現状の処理を強制的に中断し、CPU は割り込みテー

ブルに登録されているアドレスに登録されている命令を読み込み、実行を開始します。このアドレスに

登録されているのが入出力割込みルーチンです。このルーチンでは、中断されたアプリケーションの状

態を保管し、入出力完了待ちとなっていたアプリケーションの入出力完了待ち状態を解除し、次の命令

から実行を開始します。

また、アプリケーションが OS の機能を使って何らかの処理を行う場合、或いは入出力完了を認知す

る仕組みは割り込み処理という概念で実現されています。この割り込み処理には上記以外に、アプリケ

ーションが CPUの解釈できない命令を検出した場合、アプリケーションが実在しないメモリーを指定し

た場合等があります。仮想メモリーのスワッピングに関してもこの割り込み機能が有効に使われていま

す。つまり、実行しようとした命令が示すデータがメモリーに存在せず、スワップされている場合は割

り込みを発生させ、その割り込みルーチン上でスワップされたデータをメモリーに読み込み、その命令

を実行する等の処理を行います。

割り込み処理ソフトは基本的には以下の機能から構成されます。

1) 割り込み発生

内外での割り込み発生

2) 割り込み受けつけ

割り込みハンドラープロセスの生成

3) プロセススイッチ(割り込みハンドラーへの切り替え)

割り込みハンドラーへの切り替え

Page 30: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

30

4) 割り込み要因識別

割り込みの解析

5) 他の割り込み禁止

他の割り込み禁止(待ち状態とさせる)

6) PCB-PSWの退避

既存プロセスの状態保存

7) 割り込み処理

要因に応じた割り込み処理

8) PCB-PSWの復元

既存プロセスの状態保存動作可能状態の生成

9) 他の割り込み処理の許可

割り込み解除

10)上記2)への復帰

割り込みを受け付けた状態

11)既存プロセス

既存プロセスを続行

補足 :

割り込みの仕組み及び処理方法に関してはコンピュータそのものの仕組みと OSにより異なります。Windows

が搭載するコンピュータ上では、IRQと言われる仕組みにて処理されます。

この IRQ(InterruptRequest)は、各種の割り込みはデバイス毎に設定されるユニークな割り込み番

号であり、この IRQに応じて割り込み処理を行っています。以下は IRQ割り当ての一例です。

IRQ0 システムタイマ

IRQ1 キーボード

IRQ2 カスケード(スレーブの IRQ09 とリンクしています)

IRQ3 COM2

―――――

IRQ7 LPT1

IRQ8 リアルタイムクロック

IRQ9 カスケード

―――――

IRQ15 セカンダリーIDE

IRQ0~7はマスター、IRQ8~15までをスレーブと定義しています。

3) スタックオペレーションの妙技

Page 31: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

31

メモリー資源の有効活用性とソフトウェア作成における柔軟性を高める機能として、スタックオペレ

ーションと言われる作業領域の確保/開放を行う仕組みが採用されています。

通常各アプリケーションは膨大な数のモジュールから構成されており、この各々のモジュールは個別

に作業領域を宣言しています。これらの領域を全て個別に確保した場合、膨大なメモリーが必要となっ

てしまいます。この問題を回避する為にスタックオペレーションと言われる仕組みが使われています。

スタック領域とは各モジュールが使用する各種の作業領域を共通領域として確保し、各モジュールが

実行される時点でそのスタック領域から必要な分の領域を確保し、作業を完了した時点で再びスタック

領域に返却するものです。この一連の領域確保/開放操作をスタックオペレーションと言い、この仕組み

によりプログラムが作業領域として使用するメモリ資源の使用を最小限に抑えることを可能としてい

ます。

具体的には、一つのモジュールが他のモジュールを呼び出す場合、呼ばれたモジュールが使用しても

良いスタックの先頭領域(スタックレジスターを使います)のアドレスが与えられます。(呼び出した

方の作業領域の内容が破壊されないように、そのモジュールが確保しているスタック領域の次の領域が

設定されます)

呼ばれたモジュールが宣言している作業領域のアドレスは、このスタックレジスターとのインデック

ス修飾処理を介してスタック領域を使用することになります。

また、このモジュールが全ての作業を完了し、呼び出したモジュールに復帰させる場合、この作業領

域をスタックに返却します。(スタックレジスターのアドレスを返却されたモジュールに割り当てられ

ていたスタック領域のアドレスに切り替えられます)

上記操作により、作業領域の為の主メモリーが非効率に使われることを防いでいます。

Page 32: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

32

1.5 通信技術はどのように進化してきたのだろう

1.6.1 データ通信の生い立ちを見てみよう

1837年サミエルモールスにより発明されたモールス電信機を発端として通信システムの開発が

進められ、1844年にワシントン/ボルチモワ間に世界最初の通信回線が敷設されました。この時の

通信はモールス信号でしたが、このモールス信号は、トン(ON)、ツー(OFF)の2値の組み合わせで通

信を行うことから概念的にはディジタル通信の分野に入るものでした。この後、1876年には AT&T

ベル研究所のアレクサンダーグラハムベルにより電話機が発明され、電話網の開設が始まりました。日

本はその14年後の 1890年に電話回線の敷設が開始されました。

<補足>

この電話通信はテレコミュニケーションと言われますが、この言葉はギリシャ語の遠い(テル)と伝

える(コミュニカット)の造語で構成された言葉です。

1.6.2 データ通信の仕組みをみてみよう

通信回線を使ってディジタル通信を行う場合、ディジタルデータを扱うコンピュータ上のデータを、

通信回線を使って送出する為に必要となるアナログ信号へ変換を行う変調処理(モジュレーションと言

います)と、通信回線を通して送信されたアナログ信号をディジタル信号に変換する復調処理(ディモ

ジュレーション)が必要となります。この変復調処理を行うのがモデム(モジュレーションとディモジ

ュレーションの造語です)です。

この変復調処理の方式には、振幅変調方式、周波数変調方式、及び位相変調方式の3種があり、通常

のモデムは、これらの方式を最適に組み合わせて変換処理を実現しています。

最初の振幅変調方式では、ディジタル信号を、発振回路にて作り出される一定周期の搬送波に変換し

て送信する方式です。ディジタルデータが ONである場合、搬送波を送出し、OFFの場合は送出しない方

式です。但し、この方式はモデムから送出される搬送波の減衰現象により、ONと OFFの振幅の差が小さ

くなることから、信頼性に問題があります。

2番目の周波数変調方式は、ディジタルデータの ON/OFF に応じて周波数を切り替え(振幅は固定)

て送信し、受信側がその周波数をディジタル信号に切り替える方式です。この方式はレベル変動や雑音

に強い変換方式と言えます。

3番目の位相変調方式は、ディジタルデータの ON/OFF に応じて、位相の異なる波形を回線上に送出

する方式です。この方式では採用する位相数に応じて一回の変調処理にて送出できるビット数が異なり

ます。

2相位相変調方式であれば、一回の変調で1ビットしか送出できませんが、4相位相変調方式であれ

ば 2ビットのデータを変調でき、8相位相変調方式であれば3ビットのデータを同時に変調できますの

で、2相位相変調方式に比較し2~3倍の変調処理が可能となります。但し、8相を超えた変調は位相

誤認の可能性が高くなるために採用されていません。

Page 33: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

33

また、アナログ通信にて使用されるモデムは、上記の振幅変調方式と位相補正を組み合わせることに

より高速化を実現しています。

<補足>

位相変調方式は、複数位相変調方式が可能であることから、多層位相変調方式とも言われます。

同軸ケーブルは、信号が減衰することから200MHz程度が限界です。

GI(マルチモードファイバー)は500MHz程度まで延長が可能であることから、構内 LAN等に使用

され、SM(シングルモードファイバー)は極めて品質が良い(減衰しない)ことから基幹 LANに採用さ

れています。

<補足>

ディジタル信号は ON か OFF かの信号ですので、信号減衰が発生しても元の状態に復元することは容

易ですが、アナログ信号の場合は、減衰した信号を復元することはできません。(アナログ通信では、

中継器を通しても回線上に混在したノイズ等はそのままとなります。)

補足:

ネットワーク通信における通信速度は通常bps(bit per sec)にて表現され、変調速度はボー(baud)

という単位で表現されます。通常はこの値は同じですが、変復調方式が位相方式である場合、位相数に

より実際の通信速度とボー値は異なってきます。例えば4相であればボー値の2倍、8相であればボー

値の3倍の通信速度が実現できます。

1秒間に転送ビット数を表すデータ通信速度は以下の数式にて計算できます。

1秒間に変調できる回数を示す変調速度は以下の式により求めることができます。

Page 34: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

34

1.6.3 アナログ通信とディジタル通信の関係についてみてみよう

アナログ伝送方式でデータを伝送した場合、信号の減衰とノイズ成分が伝送品質に大きな影響を与え

ます。信号の減衰に関しては中継器によって、ある程度は回復できますが、伝送路に乗ったノイズ信号

は中継器では回復できませんので、そのままノイズ付きで伝送されてしまいます。これに対して、ディ

ジタル伝送では高信号と低信号しかありませんので、中継器と中継器の間でノイズが乗ったとしても中

継器で再度鮮明な高信号と低信号に変換し直して伝送路に排出できますので、ノイズ成分が除去された

綺麗な信号が送出されます。

また、アナログで受けたデータを伝送する場合に、中継器にてディジタル信号に切り替えてディジタ

ル伝送回路上に送出し、最終中継器で再びアナログ信号に戻す方式により伝送品質を上げることもでき

ます。この方式では、両極に設置される DCS(DigitalClockSupply:クロックを合わせる為のクロック供

給装置)内部に設置される PCM(PulseCodeMudulation)装置により、アナログ信号のディジタル信号変

換、或いはディジタル信号のアナログ信号への変換が行われます。なお、通常のコンピュータが扱うデ

ィジタル信号とディジタル回線が扱うディジタル信号では互換性がありませんので、ディジタル回線を

通して送られた信号は、DSU(DigitalServiceUnit)を介してコンピュータが扱える信号に切り替えら

れます。逆にコンピュータが扱う信号をディジタル回線上に送出するためには、上記同様に DSUを介し

て変換し、送出します。

PCM では、8000分の1秒の間隔(8KHz)でアナログ信号サンプリングしディジタル信号(標本

化ー>量子化―>符号化)に変換します。この根拠は人間の聴覚に限界があることに依存します。シャ

ノンの“ある周波数の音声信号を忠実に送り届ける為には、その周波数に含まれる最大周波数の2倍の

周波数でサンプリングすればよい”という定理と、人間の最大認識可能な周波数が 3.4KHzであること

から、その余裕を見て4KHzの倍である8000分の1秒間隔(8KHz)でサンプリングしています。

この方式にて変換されたディジタル信号の転送レートは、1秒間に8ビットの2進数が8000回送り

出されることから、64kbps(8000回数x8ビット)となります。これが、ナローバンド ISDN

回線における転送速度となります。

補足1:

標本化 :一定間隔でアナログ信号の大きさを検出し、数値化します。(この間隔により発生

する信号ロスを量子化

誤差といいます)

量子化 :標本化によって得られたデータを整数に変換します。

符号化 :ディジタル信号である、“1”と“0”の数値に変換します。

補足2:

入力信号の最大周波数の2倍以上の周波数でサンプリングすると元に信号に復元することが

できます。

補足3:アナログ通信とディジタル通信は何が違うのだろう

Page 35: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

35

回線にて接続された2つの機器間でデータを送信する方式としてアナログ通信方式とディジタル通

信方式があります。アナログ方式は回線上で電圧を切り替えながら信号を流す方式で、その電圧の大き

さでデータの大きさを判断しています。例えば音程の強弱を電圧の大きさに変換し、その電圧を回線を

通して相手に通知する方式であり、音響関係やビデオ関係で使用されています。これに対してディジタ

ル方式では、回線上に2値化された電圧(通常は5Vか0V)を決められたタイミングで連続的に送信し、

受信側はその連続的に送信された2値化データを送信側と同じタイミングで読み込み、そのデータを解

釈することにより、お互いの送信データを認識する方式です。例えば、決められたタイミングで連続的

に、5,0,0,0,0,0,0,5,5と電圧を切り替えて送信された場合、受信側は最初の5V(ス

タートビット)を検出するとそれ以降のデータを“0,0,0,0,0,0,1,1”と解釈します。

これは2進数(00000011)で3を意味することになります。このように5V と0V の切り替え

であたかもモールス信号の様にデータを送る方式がディジタル通信方式です。

また、プロトコルとはお互いの通信上の約束ことを表す言葉で、決められた文字列にてお互いに情報

交換を行います。例えば、“ENQ”という文字列が送られた場合、次のデータが受信可能であれば”ACK

“という文字列を返し、受信できない状態であれば”NACK”を返します。“ENQ”送信側は“ACK”が返

されたら実際に送りたいデータを送信し、”NAK“が返されたら”ACK”が返されるまで“ENQ”を繰りか

えします。この文字列は前述の2値化データの送受信方式によって行われます。通信プロトコルとは、

お互いの通信上の約束ことを決めたものです。

補足:

A点とB点で1本の信号ラインを使ってディジタル情報を流す場合は同期方式により異なりますが、

最も一般的な調歩同期式の場合は以下のようになります。(調歩同期方式以外に、連続したデータの前

に同期用のコードを送信することにより通信を行う、独立同期式や同期コードの変わりにフレームと呼

ばれる特殊なパターンを送信することにより同期を行う、フレーム同期方式があります。

最初の“S”は“0”ですが、B側はデータ通信開始と判断し、それに続く8ビットのデータを所定

のタイミングで読み込みますので、“00100101”というデータが読み込まれることになります。

このデータが2進数ですので、(20+22+25)となり、37と認識します。

シリアル回線における調歩同期式の場合は上記ですが、これを8本の信号線と1本の制御線で結ぶこ

とにより、同時に8ビットのデータを受信できることになります。勿論速度の8倍となります。これが

8ビットバスに相当します。それ以外に16ビットバスや32ビットバス、及び64ビットバスを提供

することにより、機器間の通信速度の向上を実現しています。

補足2:

Page 36: (有)ユーアイテクノケア · 2015. 3. 18. · (有)ユーアイテクノケア 2 第1章 コンピュータの仕組み 身近にあるコンピュータ(パソコン)のハードウェアの中心は、CPUや、各周辺機器との接続用コ

(有)ユーアイテクノケア

36

ディジタル信号は、電圧の高低で ON(1)か OFF(0)かを判断します。例えば、0(v)から 0.5(v)

までを OFF(0)と判断し、2.5(v)から 5(v)までを ON(1)と判断します。つまり、ON(1)の方がマ

ージンが多く取られています。このマージンが大きい方が精度は良くなりますので、通信ラインの状態

が長い方が ON(1)になるように決めています。つまり、信号線にとり無通信状態の方が多い理由から、

無通信状態の精度を良くする為に(ノイズ等によりご認識しないように)無通信を ON(1)としているの

です。

補足3:

アナログ通信とディジタル通信の根本的な相違は、アナログ通信の場合には通信途中で発生したノイ

ズ成分もそのまま相手側に伝わってしまいますが、ディジタル通信の場合は、通信回線上で発生するノ

イズ成分を除去することができます。(ディジタルは、“0”か“1”の判断しかありませんので、ノイ

ズで反転しても判断が可能となります。また、多尐のノイズであれば“0”と“1”の判断過程にて除

去されます)