Upload
others
View
3
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
MOOCのための技術
How we get here and where are we going?
武田俊之
関西学院大学
MOOCとは?
• 「eラーニングの焼き直しにすぎない」「高等教育の破壊的イノベーション」「反転授業 flipped classroomが授業を変える」
などの意見はさておき、技術的背景を見なおしてみる。
約10年前の高等教育におけるICTの評価
• 制度先行の「遠隔授業」
• 新しいメディアが授業の質を変えていくような利用に向かっていない
• Eラーニングが日本の大学全体に大きな変革をもたらしているようには思えない
• 教育実践のニーズの中から問題意識が生まれてきたと解釈できる研究は多くない。高等「教育」はインフラ開発のための「臨床実験の場」
吉田、田口(2005)
技術的背景(だいたい年代順)
• CAI• ICAI• CSCL• eLearning ← Internet• Eポートフォリオ
1980年以前
• PLATO• TICCIT (Time-Shared Interactive Computer
Controlled Information Television)– Instructional Designに大きな影響
教育機関全体を通して教授を個別化するには?
• スケジューリング scheduling• 生徒記録 student records• 測定 measurement• 学習資源の管理 management of learning
resources• ガイダンス・サービス guidance service
Holtzman, W. H. eds. (1970) Computer-assisted instruction, Testing and GuidanceCAIシステム ⁄ W.H.Holtzman編 ; 木村捨雄, 細井正訳. -- 共立出版, 1976.
PLATO
1960 PLATOプロジェクトの開始 RAMが$2/bitの時代
1961 PLATO I1963 PLATO II1964 プラズマパネルディスプレイの発明
1972 PLATO IV, プラズマディスプレイ採用
1260baud, 60lines/sec 512x512 Altoは808x606
PLATOが発明したもの
• プラズマパネルディスプレイ(1971)• スクリーン共有(1974)• 32プレイヤの対戦型ゲーム(1974)• シンセサイザーの周辺装置化(1972)• スピーチシンセサイザー(1972)• PLATO Notes• Talkomatic• Term Talk• Monitor mode• Emoticons
PLATOが発明したもの
Intelligent CAI (ICAI or ITS)
• 伝統的CAIは、domain knowledgeとpedagogical knowledgeを静的に構成したもので、instructionは教授時点において決まっている。
– 構造や手順の変更は許容しない
– 予期しない質問は想定外
– cf. 本• ICAIでは、pedagogical instructionはダイナミックに構成される。
知的CAIシステム : 知識の相互伝達への認知科学的アプロ-チ ⁄ Etienne Wenger著 ; 岡本敏雄,溝口理一郎監訳. -- オ-ム社, 1990
ICAI
• この分野は、単なるCAIの拡張とみなすべきではなく、多様な背景からの研究者が共通の興味を見出す重要な岐路と考えるべきである。
• 知的な知識のそうと伝達におけるシンポは多くの他の研究分野の発展に密接に結びついているからである。
知的CAIシステム : 知識の相互伝達への認知科学的アプロ-チ ⁄ Etienne Wenger著 ; 岡本敏雄,溝口理一郎監訳. -- オ-ム社, 1990、p.10)
〜1990年の教育支援IT
• 授業ごとの大型ホストアカウントの発行(教務データ、学生データとの連携)
• 大型計算機のよる統計教育
ネットワーク 1990年〜1998年
1990 基幹イーサネット+SS-Net JUNET接続
1992 Welfleetルーター導入
1994? PHS導入
1995 インターネット接続(ORIONS)1998 基幹高速化(非ATM)
商用プロバイダ(WCN接続)
多様なPC教室
1995〜 一括して選定導入するが学部教室は それぞれ独自で(連邦型)
学部によってメーカーや機種が違う
日立/東芝/Appleデスクトップ/ラップトップ
Emal/NetNews
• 希望者全員にアカウントを発行
• 1995年に700 usersぐらい
マルチメディアCAIの開発
• LILACS(-1992)– LL機器、VHD、LDなどを駆動するオブジェクト指向CAI
• 音声データを扱うマルチメディアCAI(1992-1995)– FM-TOWNS– Windows 3.0 MultiMediaExtensions– VisualBasic 1.0– NetWare
DTN(社内BBS) 1990年〜1998年
• 全学生、教職員を登録
• サービス
– メール
– 掲示板
– 授業実施要項詳細(シラバス)
– 授業連絡ボード(掲示板)
– レポートシステム
• 活発な交流
• 同時最大100人程度の利用
• 「授業のためのICT」の認識を広げるまではいたらず
Eラーニングの時代
• Online education• Computer Based Instruction (CBI)• Computer Managed Instruction (CMI)• Computer-based training (CBT)• Web Based Training (WBT)• Technology-Enhanced Learning (TEL)• Virtual Learning Environments (VLE)
日本大学の公開eラーニング
• 大阪市立大学インターネット講座 (1996-)• WIDE School of Internet(1997-)
– 2000年には登録者9000人• そのだインターネット大学 • 信州大学インターネット大学院 • 国際ネットワーク大学コンソーシアム(岐阜県)
RealPlayer(1995-)の普及
rtsp://
https://web.archive.org/web/20010531123757/http://www.soi.wide.ad.jp/class/97001/
• L
共有ドライブ(Yドライブ、Mドライブ) 1998年〜
• 教員に書き込み権限(ActiveDirectory)• 個人研究室から利用可能
• 当初はボチボチ、2000年代に爆発的に普及
– 2008年時点で150,000ファイル。
– 学生に「Yドライブ」で通じる
• 他の教員の資料が見られる
問題点
• フォルダの構成は教員ごとのセンスで統一性なし
• 学生が書き込めないのでレポートの提出はできない→ Xドライブは書き込み化
大学院の国際会計学授業
• 4ケ国6大学を接続して実施した
• 利用ソフト(一部)
– NetNews– ICQ– HoneyCom– RealPlayer
eポートフォリオ構想(2007-2008)
• ホームディレクトリを5GBに(2007)– 4年間のコンテンツをDVD-Rに入れて持ち帰れるように
LMSの導入(2010)
• Blackboard 9.1
LUNA(Blackboard)導入は成功したか?
• 全授業科目の約40%で利用
• 専任教員の7割以上が利用
• 一年目から利用率が高かった– Bassモデルが当てはまらない
• 共有ドライブで授業資料を配布する習慣– ある閾値を越すと口コミで広がる
– 教員⇔教員 学生⇒教員
• 教務連携は80年台から→全授業の登録は当然
MOOCとは
本来のMOOC―cMOOC
• Connective Knowledge course (CCK08)– Siemens (2005) の理論connectivismのの有効性を示すために2008年に開講された
– Manitoba大学大学院の正規授業
– 正規の受講者以外に、学外から2200人の受講者(単位はあたえられない)を集めた。
cMOOC
Connectivismとは?
• 学習と知識は意見の多様性に基づいている。
• 学習は特定のノードや情報源を連結する過程である。
• 学習は人間以外の装置に起きる可能性がある。
• 現在知っていることよりも、より多く知ることができる容量の方が重要である。
• 連結を維持し育てることが、学習継続の支援にとって必要である。
• 領域、アイデア、概念の連結を見る能力が、中核となるスキルである。
• 流通(正確に言うと、知識の更新)は、Connectivistの学習活動の目標である。
• 意志決定はそれ自体学習過程である。学ぶべきことや、入ってくる情報を選択する行為は、変化するリアリティのレンズによって認識されている。今正しいことは、意志決定に影響する情報が変わることによって、明日には間違っているかもしれない。
http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2009/10/connectivism.html
Udacity / Coursera founders
Peter Norvig & Sebastian Thrun“Introduction to AI”
Andrew Ng“Machine Learning”
2つのAIのコースからはじまったのは偶然ではない。
MOOCと教授法
• 反転授業 • セルフ・グレーディングとピア・グレーディング
• AIグレーディング • 学習共同体 • ファカルティ・デベロプメントの側面
• ビッグデータの利用とラーニング・アナリティクス • 適応学習への期待と学習履歴データ活用
MOOCの技術: edXを例にして
• http://code.edx.org/
edXのアーキテクチャ
• edXシステムは以下のパーツから構成される。– LMSとCMSはDjangoサイトである。
– ForumsはRuby on Railsのサービスで、LMSにラッパー・ライブラリがある。
• Forums• LMS• Xblocks• capa -- Core assessment problem engine• xqueue -- Asynchronous problem grading system-
xserver -- Python code grader subsystem• Data• Courses
edX architecture
edX architecture
edX
• Python• Django• Ruby on Rails• MongoDB• MySQL• NodeJS• RabbitMQ(メッセージ志向ミドルウェア)
• Celery(Python用タスクキュー)
• Ansible(構成管理)
• Mako (template engine)
edX platformはむずかしい
• 構成が複雑
• インストールがむずかしい
• 運用にがかなりのリソースが必要
• LMSとして機能がそろっていない
• 開発が活発すぎてついていけない
• ドキュメントがない
• メーリングリストが活発すぎ
• 設計の抽象度が高い
gaccoの本郷先生コースは当初の予定と違う課題を出している…
edXのインストール
• edXは複雑な構成でインストールがむずかしい。
VagrantのBoxが数種類用意されている(差がわからない!)のでそれを利用するのが比較的簡単である。
MITxVM distribution:https://people.csail.mit.edu/ichuang/edx/
• References– MOOCLab http://mooclab.berkeley.edu/publications
MOOCシステムのキャパシティ・プランニング
• ユーザー数が50,000人のMOOCで4割が実際に受講するとして1レッスン/weekあたり20の小テストをすると
50000 x .4 x 20 = 400,000 activities / week
• MOOCは意外に負荷が少ない?
– ビデオは外部(YouTubeなど)に置けばよい
– 学習者の操作はLMSではない高速なwrite onlyのサーバーに直接書きこめばよい
MOOCの先へ
• 誰でもOOC: Our Own Open Online Course• OOCのインタラクティブ化
• ユーザーの経験(UX)をリッチにするOOC• Invisible/Embedded OOC• Learning Analytics• オープン・ソース開発的コース開発
– Github, アジャイル, DevOps
ラーニング・アナリティクス: Process
学習の活動
データ
• 「測定する」だけではない
• デジタルサービスが生成する
– 事前の理論・デザインを前提としない
– 例• LMS• SNS• ポートフォリオ
• センサーデータ
• 行動データ:記録、観察
• ビデオ撮影→コーディング&トランスクリプション
データはどこで生まれるか?
• 研究や調査で測定する ← 仮説・理論
• 活動の中で生成される ← サービス・デザイン
• システムとのインタラクションにおいて生成される ← システム・デザイン
• センサーが生成する
Learning Analyticsは誰のため?
LA
IR
研究Analytics
analysis & reporting
LearningLearners &Teachers
Admin &Other stakeholders
LAがアクティブ・ラーニングのMOOC化を実現する
Pardo, 2013: http://www.slideshare.net/abelardo_pardo/pushing-the-mooc-envelope-with-learning-analytics
MOOC+LAプラットフォーム
Our Own Open Online Course 誰でもOOC
xMOOC / cMOOC / O4C
クリエイティブな学びをみんなで学ぶ2013 May-July http://www.daigomi.org/lclj/
システム&サービス
LMSにはCanvasを使用
• CanvasはInstructure社フルセットのLMS– オープンソースで公開されている
• MOOC– http://www.canvas.net/
• デモサイト
– http://canvas.instructure.com/
• Instructureの確認を経て、2014年5月にデモサイトでMOOCを開講
受講者統計
• 登録者 99名• オンラインビデオ視聴
– 各回約100名ずつ
• レポート提出者– ユニット1 13名– ユニット2 3名– ユニット3 3名
• オンラインワークショップ参加者(ユニット3)– 13名
• リーチ– FacebookとGoogle Analyticsのデータから見て約2000名
高等教育への影響(1)
• オンライン・リソースとそのコースでの利用の多様化
• 知識とその源である(真正な)活動・実践との相互作用の強化
• 講義、演習、評価サイクル(順転、反転)を組みあわせたインストラクション・デザインの深化
• コース・カリキュラムの小規模化とパーソナル化
• ピア・グレーディング、セルフ・グレーディング技術の進歩
高等教育への影響(2)
• テスト、レポート、評価のオープン化と共有、ティンカリングの普及と剽窃の無効化
• 学習評価における形成的評価の重視
• 新しい方法、内容にもとづくコース開発において、プロトタイピングとしてMOOCを利用
• LMSの運用の外部MOOCプラットフォームへの委託
• 教授学習研究・開発のためのデータ基盤としてのオンライン・コース
誰でも無料でオンラインコースを開講可能か?
• YES• 商用LMSのデモサービス(たとえば、Canvas、
CourseSites)を利用すればよい
• 映像配信はYouTubeなど、ライブ映像はUstream、Google Hangoutを利用する
無料とはいっても負担が大きいのでは?
• YES and NO• 新しい授業をデザインするのは大変
• 授業に新しいテクノロジーをいれるのは大変
• 受講者募集は(ある程度)大変
• サーバー運営の負担はない
MOOC上でインタラクションは可能か?
• Yes• but 今後のMOOC時代にあったインタラクション・デザインの開発が必要
• メタメタメモ
• ラーニング・パターン対話ワークショップ
単位は出るのか?
• 所属先とは関係なく開講したので出ない
• オープンバッジによって承認することは検討したが
OOCは学習研究のプラットフォームになるか?
• YES• オープンなデザイン/講義/コンテンツ/ (学習者の)行動/成果物、評価
→ ティンカリング(いじくりまわす)
他の人の成果物を元に修正をくわえながら学ぶ)
LCLJを運用して学んだことはなにか?
• 教える人にこそ学びが多い
学ぶ動機がない人には役立たないのでは?
• O4Cは、あるトピックに知識のある人と、関心がある人をむすびつけるものである。
• 関心を喚起することは(いまのところ)範疇の外である
• が、 関心のあるトピックから学びはじめて、関心をひろげていくことは可能であろう