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Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算 Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算 Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算 Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算 Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算 ふじ じゅん いち (大阪教育大学 情報科学講座) 2015 4 9 日受付 ) 概要:最近注目されている量子コンピュータ実現のための新しい方式に、非可換エニオン を利用した TQC(トポロジカル量子計算)というものがある。これは実用性もさる ことながら、理論的に様々な分野と関連があり、グラフィカルな計算が有効なモデル である。しかし新しい理論なので、全体を見通して平易に書かれているテキストがあ まりなく、非常に興味深い対象でありながら、特に数学や理論物理に抵抗がない人で ない限り取っつきにくいと思われる。これは非常に勿体ない話であり、ぜひこの機会 に難しい物理的なセッティングを理解しなくとも全体を見渡せ、具体的な計算例もあ るような教育的・入門的な解説を試みたい。 検索語:トポロジカル量子計算, フィボナッチエニオン, 量子情報, 量子組みひも, 結び目 はじめに 量子コンピュータはその理論的性能について注目されているが、安定性という点において実用的 な段階にまだ至っていない。粒子の取り扱いにおいて不安定さがあるため、エラーを出さないよう にする工夫が必要で、様々な方式が提案されている。その一つで注目されている方式が、TQC (ト ポロジカル量子計算)で、実用面では超低温において安定性があるとされており、理論的にも非常 に注目すべき側面を多く持っている。2006 年の Scientific American 4 月号に掲載された次ページ の「量子組みひも」のイメージ図は世界に衝撃を与え、日本でも即座に日経サイエンスが同年 7 号にその訳を掲載したことから見てもその注目度はうかがえる。そこでは、非可換なものはその存 在がまだ状況証拠レベルであるものの、2 次元において特殊な性質を示す「エニオン」と呼ばれる 新しい粒子が量子組みひもに使われていることも注目されている。また理論的には、量子群を背景 としたリー環・Hopf 代数や共形場理論、モノイダルカテゴリー(とくにモジュラーテンソルカテゴ リー)より組みひも理論や結び目理論との関連等、数学的にもさまざまな分野とかかわりを持って おり、物理学的にも注目すべき点が多くある。グラフィカルな計算が可能なので、研究対象として も興味をそそるものである。しかしながら、この新しい理論については日本ではまだ本格的なテキ ストはなく、海外のわずかなテキスト [10, 14] や(こちらは豊富にあるが断片的な)論文 [7, 8, 9] ・講義録や学位論文 [1, 2, 4, 5, 12, 13]・発表原稿 [3, 5] などに頼らざるを得ない状況である。現段 階では文献によって記号や解釈のずれも多少あることはやむを得ないだろう。そこでいち早く整合 的な解説を試みたい。 ここではそのもっとも単純なモデルである「フィボナッチエニオン」を具体例の中心にして、 TQC について概観したい。その際、リー環の生成元に対応する重要概念であるモジュラーデータとして

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Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算

ふじ

藤い

井じゅん

淳いち

(大阪教育大学 情報科学講座)

( 2015 年 4 月 9 日受付 )

概要:最近注目されている量子コンピュータ実現のための新しい方式に、非可換エニオン

を利用した TQC(トポロジカル量子計算)というものがある。これは実用性もさる

ことながら、理論的に様々な分野と関連があり、グラフィカルな計算が有効なモデル

である。しかし新しい理論なので、全体を見通して平易に書かれているテキストがあ

まりなく、非常に興味深い対象でありながら、特に数学や理論物理に抵抗がない人で

ない限り取っつきにくいと思われる。これは非常に勿体ない話であり、ぜひこの機会

に難しい物理的なセッティングを理解しなくとも全体を見渡せ、具体的な計算例もあ

るような教育的・入門的な解説を試みたい。

検索語:トポロジカル量子計算, フィボナッチエニオン, 量子情報, 量子組みひも, 結び目

はじめに

 量子コンピュータはその理論的性能について注目されているが、安定性という点において実用的

な段階にまだ至っていない。粒子の取り扱いにおいて不安定さがあるため、エラーを出さないよう

にする工夫が必要で、様々な方式が提案されている。その一つで注目されている方式が、TQC(ト

ポロジカル量子計算)で、実用面では超低温において安定性があるとされており、理論的にも非常

に注目すべき側面を多く持っている。2006年の Scientific American 4月号に掲載された次ページ

の「量子組みひも」のイメージ図は世界に衝撃を与え、日本でも即座に日経サイエンスが同年 7月

号にその訳を掲載したことから見てもその注目度はうかがえる。そこでは、非可換なものはその存

在がまだ状況証拠レベルであるものの、2次元において特殊な性質を示す「エニオン」と呼ばれる

新しい粒子が量子組みひもに使われていることも注目されている。また理論的には、量子群を背景

としたリー環・Hopf代数や共形場理論、モノイダルカテゴリー(とくにモジュラーテンソルカテゴ

リー)より組みひも理論や結び目理論との関連等、数学的にもさまざまな分野とかかわりを持って

おり、物理学的にも注目すべき点が多くある。グラフィカルな計算が可能なので、研究対象として

も興味をそそるものである。しかしながら、この新しい理論については日本ではまだ本格的なテキ

ストはなく、海外のわずかなテキスト [10, 14] や(こちらは豊富にあるが断片的な)論文 [7, 8, 9]

・講義録や学位論文 [1, 2, 4, 5, 12, 13]・発表原稿 [3, 5]などに頼らざるを得ない状況である。現段

階では文献によって記号や解釈のずれも多少あることはやむを得ないだろう。そこでいち早く整合

的な解説を試みたい。

 ここではそのもっとも単純なモデルである「フィボナッチエニオン」を具体例の中心にして、TQC

について概観したい。その際、リー環の生成元に対応する重要概念であるモジュラーデータとして

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の S, T 行列から攻める理論的には興味深い方法もあるが、多くの資料で採用されているようによ

り単純でフュージョンの原理に密着した F, R 行列から量子組みひものB行列を求める方法をここ

では採用することにし、前者の解説は別の機会にしたい。物理的なことにほとんど触れないで、数

学的な解説で通すことが目標である。

I. エニオンのフュージョン

 あたかもリーマン曲面で自明でないホロノミーが生じるがごとく、粒子の周りを回ることで状態

が変化するエニオンが注目された。言ってみれば、y ⊗ x = x⊗ y という対称テンソルで語られる

粒子がBosonで、y ⊗ x = −x⊗ yという反対称テンソルがFermionで、従来の量子論はこの係

数±1の 2種類で語られていたが、y ⊗ x = eitx⊗ yという(スカラー)フェーズのずれが生じる

のが abelian anyon , さらにスカラー部分が(スカラーでない)ユニタリ行列 U = eiA と考えら

れるのが、nonabelian anyon とみることができる(anyon という用語自体は、科学者の駄洒落

にすぎないが)。TQCで利用されるものは、nonabelian anyon である。

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 その特徴的な性質として、fusion (対称的に splitting)がある。表現論でのClebsch-Gordan

の既約直和分解定理(やそれに対応する物理的な角運動量の分解)に対応して、エニオンのフュー

ジョン規則

a⊗ b→⊕c∈F

N cabc =

∑c

N cabc ← b⊗ a

(N は空間の次元に対応する 0以上の整数、a, b, c はある一定の粒子の有限集合F の範囲内に収ま

る粒子、→は同等のものの変化で等号を使うことが多いが、厳密には記号上齟齬を生じる場合も

あるので、しばらく矢印で記す)が与えられる。空間的には直和で表現するが、単純にシグマ記号

で F も略して表すことが多く、この「和」はいずれかの粒子に変化するという意味である。粒子

集合 F には特殊な仮想粒子として真空粒子 0 が一つだけ含まれており、

c⊗ 0→ c← 0⊗ c (Nxc0 = Nx

0c = δc,x : クロネッカーの δ記号 )

という単位元的な性質を持っているものと仮定する。このように相手に依らずフュージョン先が 1

粒子に確定するもの(総次元 1)は、可換エニオンである。さらに、aの反粒子 a(¯a = a)につい

て、真空粒子からはこの 2つが生成され、また真空粒子に戻る(消滅する)変化が(唯一ではない

が)存在する: 0→ a⊗ a→ 0。ただし、N0aa = 1なので、0 への変化は 1通りである。また、N

の性質として、N cab = N c

ba = N abc = N c

abなどが仮定される(下記参照)。

 非可換エニオンの典型例として、今後詳説する Fibonacci anyon τ のフュージョン規則は

τ ⊗ τ → 0⊕ τ(N0

ττ = 1, Nτττ = 1

)で、係数N は両方 1、総次元は 2である。これは単純な nonabelian anyon である。フュージョン

規則はテンソルの結合法則、直和との分配法則を満たすことが仮定され、

(τ ⊗ τ )⊗ τ → (0⊕ τ )⊗ τ → (0⊗ τ )⊕ (τ ⊗ τ ) = τ ⊕ (0⊕ τ ) = 0⊕ 2τ

となって、N0(τ⊗τ )τ = 1, Nτ

(τ⊗τ )τ = 2が得られて総次元 3となり、帰納的に総次元

an = N0(⊗n

k=1τ )τ +Nτ(⊗n

k=1τ )τ

が、Fibonacci 数列となることがわかるので、この名前がついている。特に、τ ⊗ τ → 0となりう

るので τ = τ であることに注意しよう。

 これらの変化において、粒子は矢線もしくは(方向が問題にならないときは)線分の「ラベル」

であらわされる。基本単位として、円で図示される量子次元 da(値としては実数で表すが、後述

のように正数とする)で、粒子 aの生成から消滅までを表す。向きを考慮するときは時計回りを正

方向の aとし、逆向きを反粒子 a と表現するが、da = da, 0 = 0, d0 = 1 と仮定する。N の上記

の等式は、以下の等しい 3つの a⊗ b→ cの図で妥当性がわかるだろう:a b

c

a b

c

a b

c

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 ここで、変換修正用の係数(これを省略して 1にしている文献もある)

dcab =

√dc

dadb

を定めておく。フュージョン・スプリッティングは上記のように「(有向)2分木」で表され、基

本部分がフュージョンベクトルの基底になる。ただし、各空間の次元N が 2以上のものを表現す

るために、cの空間 Vcの標準的な基底を µなどで表しておく。つまり、µはケットベクトルとし

て、|a, b; c, µ⟩ と表現してHilbert空間の状態ベクトル空間(あるいはその部分空間 Vc)の基底と

みなせる。このとき、最初のフュージョン規則はフュージョンツリー∑

c,µ

a b

cµ のように表され

るが、一般的なフュージョンの変形規則は以下のように表わされる:

バブル解消(1または 0本に)

c′

c

a b

µ′

µ

→ δc,c′δµ,µ′

dcab

c

,

   一部を 1本に

µ

µ

→∑c,µ

dcab

a ba b

a b

c

 さて、daの話に戻ろう。x ∈ F の範囲内で各座標 dxをとる有限次元ベクトル w = (dx)を考え、

非負(整数)行列Na = (Na)x,y = (Nyax)を考えると、フュージョン規則から、dadx =

∑y N

yaxdy =∑

y(Na)x,ydy1)(Nawの x成分)であることがわかるので、daw = Nawより daはNaの固有値で、

固有ベクトルが wであることがわかる。実際にはPerron-Frobeniusの定理から、w = (dx)は正ベ

クトルにとれ、daは最大固有値とみなされ、前述のようにすべて正数と仮定してよいことになる。

フィボナッチの場合には、フュージョン規則から、d2τ = d0 + dτ = 1 + dτ となることから、この

2次方程式の正の解 dτ は黄金比 g = 1+√

52 であることがわかる。

 特に、方向性を持たせる場合、真空粒子 0 については点線で表すこともあり、出現可能な場所に

はいくら書き足したり削除したりしてもよいことがあまり明確には書かれていない([1, 5]などで

は指摘されている。以降は混同する恐れがないので変形を等号で表す)。例えば次のように 0に対

応する点線の矢線を付けたり取ったりして変形可能である。3つ目の図が生成消滅に対応する:

= = =1

d0aa

=1√

1dada

= da

a 0

0

a a a0

1)fusion公式 dバージョン dadb =∑

x Nxabdc は以下のように図的にも計算できる:

dadb =a b

=a

b=∑c,µ

dcab

ab

c µµ =

∑c,µ

dcab

c

a b

µ

µ

=∑c,µ c

=∑c,µ

dc =∑

c

N cabdc.

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II. F行列と 5角形規則

  3つのエニオンが 1つにフュージョンするとき、F行列 F は、recoupling とも呼ばれ、3つのう

ちの真ん中の枝を左から右へ移すユニタリ変換である。フュージョンして出てくる値は一般的には

不確定なので、変数 xの和の形で表す。記号的には揺れがあるので、下の添え字が上にフュージョ

ンするという意味で、標準的なテキスト [10]に従う。(F 4123)

ba という表記は、フュージョン前の 3

粒子 1, 2, 3が最終フュージョンでは 4となる粒子において、途中のフュージョンが aから bに変化

することを表す。フュージョン規則によって、ありえない組み合わせもあるので、その時は F は考

えない。存在するときは次の関係がある2):

=∑x∈F

(F 4123)

ax

1 2 3 1 2 3

a x

4 4

和は、いずれかの木になるという意味である。この関係式と真空粒子の特異性から、入出力の

枝に 0が絡むと選択の余地はなくなるので、F 行列はスカラー 1となることがわかる:F 4123 =

1 (1, 2, 3, 4のいずれかが 0で、F 行列が存在するとき).

 実際、2が 0 であれば、a = 3, x = 1の一通り同士の組み合わせしかなく、4が 0 であっても、

a = 1, x = 3しかあり得ない。また、1が 0 であっても、a = 4, x = 2のみで、3が 0 でも、a = 2,

x = 4の組み合わせしかないため、1次元同士で確定し、F を考える必要がない。

  4粒子 fusionにおいて、もし 2つの部分的な F 行列変換による粒子の変化が確定している場合

(下図上段)、下の行では別の変化で同じ結果になるよう考えると、結合法則より次の可換図式が成

り立つ(xのみ不確定で、下の bから dの変化の部分は、最終結果を等しくするために確定してし

まう。)ちなみに 1行目の (F 5a34)

cbは、木の太い部分に注目して変化を見ていて、3の粒子が振り替

わっている:

1 2 3 4

5

a

b

(F 5a34)

cb

1 2 3 4

5

a c(F 5

12c)da

1 2 3 4

5

c

d

(F b123)

xa ↘ ↗ (F d

234)cx

1 2 3 4

5

x

b

−→(F 5

1x4)db

1 2 3 4

5

x

d

この図式は、形から pentagon rule と呼ばれ、式的には次のようになる:

(F 512c)

da(F

5a34)

cb =

∑x

(F d234)

cx(F 5

1x4)db(F

b123)

xa.

2)多くの資料が後に述べる五角形規則における変形と逆になっているので、ここではあえて整合的に定義した。また

F行列は、インデックスの数から量子 6j 記号(cf. [13])と同等であるが、非対角成分など若干の修正が必要。

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Fibonacci anyon について、F行列をこの関係から導いてみよう。上記の注意から、nontrivialなの

は、2次のユニタリ行列となる F ττττ のみであるから、それを求めよう。次の 5角形を考える。た

だし、1となる F行列は略している:

τ τ τ τ

τ

τ

0

(F ττττ )00−→

τ τ τ τ

τ

τ 0−→

τ τ τ τ

τ

0

τ

↘ ↗ (F ττττ )0τ

τ τ τ τ

τ

τ

0

−→(F τ

τττ )τ0

τ τ τ τ

τ

τ

τ

したがって、pentagon ruleにより成分計算をすると、

(1) (F ττττ )00 = (F τ

τττ )0τ (F ττττ )τ0

となる。次に図の出発点の枝の部分の 0, τを入れ替え、終着点の枝を双方τにすると、pentagon

rule により、今度は下側 2つになって

(F ττττ )τ0(F τ

0ττ )ττ = (F ττττ )τ0(F τ

τ0τ )ττ (F ττττ )00 + (F τ

τττ )ττ (F ττττ )ττ (F τ

τττ )τ0 ,

となり、共通の (F ττττ )τ0 で割って、1になる部分を省くと、

(2) 1 = (F ττττ )00 + (F τ

τττ )ττ (F ττττ )ττ .

この連立方程式 (1), (2) の解は一意的ではないが、黄金比 g = 1+√

52 について (F τ

τττ )00 =

−(F ττττ )ττ = 1

g =, (F ττττ )τ0 = (F τ

τττ )0τ = 1√g となる実数解が存在する

3)。また、(1)式と、実

成分のエルミットユニタリ性から解を出すこともできる:

F ττττ =

1g

1√g

1√g−1g

.

3)実は一般的に、da|(F aaaa)00| = 1 が次の図でわかることに注意しておこう:

da

(F a

aaa

)00

a

=(F a

aaa

)00

=(F a

aaa

)00

a a= = χa

a a a

最後の等号の手前の太字矢印 aに注目すると、a → a⊗ a⊗ a → aという splitting・fusion が起こっていて、これは大体 aそのものとみなせるが、厳密にはフェーズ χa = (F τ

aaa)00da が 1とは限らない(χa = χa, |χa| = 1 )。しかし、これはかなり解消される。実際、a = aの場合にはゲージ変換によって 1に統一でき [1, 5] 、a = aの場合も ±1までは解消できる(この場合、Frobenius-Schur indicator と呼ばれる)。

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III. R行列と 6角形規則からB行列へ

  F行列は枝の振り替えをするものであったが、2つの枝を中心で半回転させて入れ替えるユニタ

リ変換がR行列である。一般的には、

a b

c

ν∑

ν

(Rcab)

µν

a b

µ

c

というひねりを示す。Rabは、Rxab を並べた対角行列とする。この場合も a, bのいずれかが真空 0

の場合には、1とみなすことができ、変数 νが(µさえも)入る余地がない。一般的には、今度は

6角形の関係になる。F行列と同様に上の行の部分が確定していたとすると、同じ結果になる別の

道がある:

�����*Ra12

2 1 3

4

a-

(F 4213)

ba

2 1 3

4

b HHHHHj

Rb13

1 2 3

4

a

2 3 1

4

b

HHHHHj(F 4

123)xa

1 2 3

4

x-

R41x

2 3 1

4

x

�����*

(F 4231)

bx

これも hexagon rule と呼ばれ、式表示では以下の関係式となる。これらの多角形規則は圏論の

Mac Lane coherence 定理からきている:

Rb13(F

4213)

baR

a12 =

∑x

(F 4231)

bxR

41x(F 4

123)xa

  Fibonacci anyon では、Rxτ0 = Rx

0τ = 1なので、Rxττ のみが自明でない。そこで、上記の番号

部分をすべて τ にすると、

Rbττ (F τ

τττ )baR

aττ =

∑x

(F ττττ )b

xRττx(F τ

τττ )xa

となり、黄金比 g =1 +√

52

,1g

=√

5− 12

について、x = Rτττ , y = R0

ττ とすると、

(1)x2 +1gx+ 1 = 0 (a = b = τ ), (2) y2 − x− 1

g= 0 (a = b = 0), (3) gxy = 1− x (a = b)

が得られる。ここで、(1)より、x4 + 2x2 + 1 = (x2 + 1)2 = 1g2x

2 = (1− 1g )x2 = x2 + (x2 + 1)xと

なって、

x5 + 1 = (x+ 1)(x4 − x3 + x2 − x+ 1) = (x+ 1)(x4 + 2x2 + 1− x2 − (x2 + 1)x) = 0

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となり、xは −1の 5乗根 exp (2n−1)iπ5 であるが、2次方程式 (1)より xは実部負の非実数である

から

x =1−√

5±√

10 + 2√

5i4

= exp±3iπ

5

である。したがって、(2)より

y2 = x+1g

=1−√

5±√

10 + 2√

5i4

+√

5− 12

=√

5− 1±√

10 + 2√

5i4

= exp(±2 + 10n)iπ

5,

となって、yは 1の 5乗根 exp (2n+1)iπ5 であるが、(3)より、やはり yの実部は負なので、

y =−1−

√5∓

√10− 2

√5i

4= exp

∓4iπ5

である。したがって、Rの自明でない部分は、次の様にしてよい:

Rττ =

(y 00 x

)=

(e

−4iπ5 00 e

3iπ5

)=

−1−√

5−√

10−2√

5i4 0

0 1−√

5+√

10+2√

5i4

.

これらに基づいて複合的な「状態ベクトル」を考え、その量子組みひもの交差を実現するものがB

行列である。ベクトルの設定によって、差異が出るので、B行列については具体例で見てみよう。

  3つの Fibonacci anyon τ の fusion state を次の可能性のある 3種類(下記のように円で囲んだ

表現も使われる)

|0⟩

=

τ τ τ

τ

0 , |1⟩

=

τ τ τ

τ

τ , |N⟩

=

τ τ τ

0

τ

� ��� �� � ��� �� � ��� ��τ τ 0 τ τ τ τ τ τ τ τ τ τ τ 0

と定める(|N⟩はほとんど不要であるが)。組みひも操作を σ1 = σ2 =,

とすると、

B行列は、特に 2の場合には ρ(σ2) = B2 = F−1RF より導かれる。

 このようにB1は最初に fusionするペアの入れ替え、B2は違うペアの入れ替えに対応していて、

各 3状態の変化を表している。|N⟩については、F 0τττ = Iなので、Rτ

ττ の値がそのまま exp 3iπ5 と

出て、他とは干渉しない。また、σ1の場合も F 行列で動かす必要もなく、Rの値がそのまま出て

くるので、B1は簡単な対角行列である。しかし、B2は |N⟩以外入れ替えが必要なので、左上 2次

行列の部分が、(F ττττ )Rττ (F τ

τττ )−1になって、ρ(σ1), ρ(σ2)は、e3iπ5 + 1

g = e2iπ5 より、角 3π

5 の 3

等分が整理できるので、以下のようになる:

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B1 = ρ(σ1) =

e− 4iπ

5 0 00 e

3iπ5 0

0 0 e3iπ5

,

B2 = ρ(σ2) =

e−

4iπ5

g2 + e3iπ5

ge−

4iπ5 −e

3iπ5

g√

g 0e−

4iπ5 −e

3iπ5

g√

ge−

4iπ5

g + e3iπ5

g2 0

0 0 e3iπ5

=

e

4iπ5

ge−

3iπ5√g 0

e−3iπ5√g −1

g 0

0 0 e3iπ5

.

 たとえば、(F ττττ )−1Rττ (F τ

τττ )の |0⟩に対応する左上部分は、図式的には次の変換をしているこ

とになる(いまは 0 のみであるが、エニオンの値をふってない枝はすべて τ):

|0⟩|0⟩

|0⟩

0

((F τ

τττ )−1)0τ

((F τ

τττ )−1)00 0

0

0

τ

0

τ

Rτττ

R0ττ

(F ττττ )τ0

(F ττττ )00

IV. フィボナッチモデルでのTQC

 量子情報における基本的な回路は、すべて固有値±1のユニタリ・エルミット行列であるパウリ

スピン行列

X =

(0 11 0

), Y =

(0 −ii 0

), Z =

(1 00 −1

),

や Hadamard行列 H = 1√2

(1 11 −1

)で作られるゲートを組み合わせて作られるものである。1qubit

として、2次元ベクトル ψ = α|0⟩ + β|1⟩ を考えるから 2次行列になっている([6])。その中で特

徴的なものが、CNOT gate で、2qubit(4次元ベクトル)において、(上位)制御 qubitは、それ

自身は変化しないが被制御側にのみ変化を与える。制御側が |0⟩のとき何もせず、|1⟩のときには下

位の qubitの |0⟩, |1⟩ を入れ替える、いわば if 文を内包するもので、行列では

(I O

O X

)=

1 0 0 00 1 0 00 0 0 10 0 1 0

とあらわされる回路である。これはしばしば次のような回路図で表される:

制御 qubit

被制御 qubit

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 このようなあらゆる量子回路が、量子組みひもの B行列を組み合わせて近似できるとき、その

「量子計算システムは universal」であるといわれる4)。ここで、CNOTがフィボナッチの場合にど

のように近似されるか見ていこう。

 その前に確認として、量子通信において fusion state 間の関係を見ておく:

τ

τ

τ

a

b

a′

b′

フュージョン変形規則「バブル解消」によって、a′ = a, b′ = b となるので、そのまま接続した場合

には fusion state の種類は変わらないことに注意しよう。さらに通信途中に fusion が起こった時:

τ

τ

τ

a

ba′ a′′

b′

は、1本になった途中で state全体を取り囲むような量子組みひもがあったとしても、以下のように

τ

τ

τ

a

ba′ a′′

b′

もつれがない部分まで変形可能なので影響を与えず、やはり同じ原理から a′′ = a′ = a, b′ = b と

なって、stateの種類は不変である。したがって、B行列同様、3粒子個別の量子組みひものみが

stateの変化を与える。

 それでは、接続を変化させて、CNOTの近似を見ていこう。量子組みひもによる fusion state 間

の変化は B行列で表されているので、3番目の |N⟩を抜いた 2次行列で B行列を見るとき、被制

御側がB ≈ X, 制御側がB ≈ I と近似されれば回路が確率的に実現されていることになる。以降

は便宜上、2次行列にし、行列表現Bk = ρ(σk)自体を、σk自身で表すことにする。

 まず、[9] などに挙がっている例を吟味してみよう(これを挙げている資料が少なからずあるか

らである)。上段Aの図では、a = b = τ で、制御 stateは、下 2つの粒子が先に fusionして xに

なるとし、被制御側の a, bが先に fusionすると解釈されて、xと粒子 aの入れ替えは σ2、(粒子 a

をまたいで)粒子 bとの入れ替えは σ1と解釈されている。それが、対応する下段 Bの図では、b,

c が先に fusionする typeなので、上記の σ1と解釈される部分が、被制御側の中のみで見ると σ2

と解釈されるというトリックが使われている:

4)例えば、CNOT と H に対応する Hadamard gate、

(1 00 exp ±iπ

4

)に対応するゲートの計 4 つが構成できれば

universalになる [14]。

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制御側において 1回目の fusion粒子 xは、stateとして |0⟩なら 0、|1⟩ならτである。図 Bのよう

に、この xと被制御側の 1回目に fusionされない 2つのペア a, bで内部の組みひも操作を行う。前

述のように、制御側の stateは図の操作で変化がない。このとき、とりあえず新しく組み替えた 3

つの τ について、組みひも変換が σm1 となったとしよう。すると、もともとの制御 qubitでは、最

初に fusionしないペアの内部組みひも変換であるから、σm2 に対応する。σ

m2 の 2次行列部分が、入

れ替Xを近似しているならば、上記のようにCNOTができたと解釈される。しかし、この操作は

妥当であろうか。

 実際に近似計算をしてみると(大きくなるので、|N⟩対応部分を省いて以下 2次行列で示すが)、

近似式の左辺と右辺は

(0.309016994374947 + 0.951056516295154i 0

0 −0.809016994374948 − 0.587785252292473i

)(

0.307636819800141 + 0.951502285605403i 0.000503982999168595 + 0.00165335782297692i

0.00141669741969003 + 0.000990231980544265i −0.809867443581044 − 0.586610378561916i

)

と、まずまず正しいことがわかるが、σ22 は(

−0.381966011250105 − 5.55111512312578i × 10−17 0.543217241879101 + 0.74767439061061i

0.543217241879101 + 0.74767439061061i −0.118033988749895 + 0.363271264002681i

)

と、あまりX に近い値にならず、stateの反転としては実際には実現できていない。この変換は、

Ribbon としての twistに対応しており、機能的にはCNOTとは同等とみなされるが、実際的な近

似ではなく、KNOT(駄洒落!)と称されているようである [2]。

 しかしこれを利用することで、σ52 が以下の値になることを使うと、(

−0.23606797749979 + 1.11022302462516i × 10−16 0.971736543513292 − 2.77555756156289i × 10−17

0.971736543513292 − 2.77555756156289i × 10−17 0.23606797749979 + 2.77555756156289i × 10−16

)となり、このぐらいの近似でよければ最初の近似式の両辺に σ3

1をかけた量子組みひも操作を補え

ば得られる。

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 それに対し一般的に認められているCNOTの近似は [2]で提案され Scientific American でも紹

介されているが、少し複雑である(実際には、iX の近似として実現されているが状態としては同

じとみなせる)。基本部分の量子組みひもは

σ−21 σ−4

2 σ41σ

−22 σ2

1σ22σ

−21 σ4

2σ−21 σ4

2σ21σ

−42 σ2

1σ−22 σ2

1σ−22 σ−2

1 ≈ iX

で、この値を計算すれば、少し誤差が出ているが、さすがに精度が高い:(0.000635819001175706 − 0.00015542678782623i 0.000550371965912289 + 0.999999634333636i

−0.000550371965911123 + 0.999999634333636i 0.000635819001175443 + 0.000155426787826053i

)

しかしこれだけではなく、実際には制御粒子の出し入れが前後に必要になり、同じ事前事後の設

定で、

σ32σ

−21 σ−4

2 σ21σ

42σ

21σ

−22 σ−2

1 σ−42 σ−4

1 σ−22 σ4

1σ22σ

−21 σ2

2σ21σ

−22 σ3

1 ≈ I

によって、制御粒子 aを入れ(次図上段)、逆操作で元に戻すことになる。この操作は Injectionと

呼ばれているもので(仮に INJと記す)、下の方の図から、全く状態を変えずに粒子の挿入を行っ

ている。ここで、上図の状態に注目すれば、上の 2粒子目 aの値がそのままはいっていることに注

意しよう。さらに、仮に図のようにインデックスを付けておくと、a = 0 が末端では「状態ベクト

ル」のセットにならないので B行列の適用は受けないが、R行列は 1なので、入れ替えに何の影

響も与えない(0⊗ (τ 0 ⊗ τ 1) = τ 0 ⊗ (τ 1 ⊗ 0))で、元の τ = τ 0は一旦ここで押し出されて組み

替えられる。a = τ に入れ替わると、「状態ベクトル」になり、B行列が I2近似されているので、

全く同じ性質の状態のままで、τ ⊗ (τ 0 ⊗ τ 1) = τ 0 ⊗ (τ 1 ⊗ τ ) となって、結果的に挿入と同じ効

果を生んでいる:

そのあとで、下記の iXに対応する「ベクトルの入れ替え操作」が入る。ただし、a = 0のときは、

上記のように、この braidingでは何も変わらず、状態ベクトルですらない。意味があるのは a = τ

のときだけである。この時は、被制御側は、|0⟩か |1⟩のベクトルとなって、これらが入れ替わる操

作になる。

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さらに INJ−1 の操作を行うと、INJの操作で押し出されていた τ が元の部分に戻り、制御ベクト

ルがいずれの場合にも被制御側はちゃんとしたベクトルに戻る。

 以上の操作を続けて行うと、制御側が |1⟩のときは被制御側は |0⟩と |1⟩の入れ替えが生じ、|0⟩

のときは何も起こらない、すなわち CNOT gate が得られたことになる。最終的に組み合わせてで

きる近似の量子組みひもは、以下のようになる [7]:

さらにもはや目で追えるレベルではなくなるが、10−4レベルに精度を高めた Solovey-Kitaev CNOT

近似は以下の量子組みひもである [3]:

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おわりに

 ここではフィボナッチエニオンを唯一の例として、トポロジカル量子計算についての入門的解

説を試みた。多くの資料を見た経験から、現時点では最もわかりやすい解説であってほしいとい

う願いをこめたつもりである。ただ、新しい分野だけに、論文でさえも結構細かな間違いも多く

見受けられ、それらの資料以上に想像で補った部分もたくさんあるので、ミスが残っているかもし

れないと恐れている。実際今回の参考文献には入れていないが資料の中には、わざわざ “Work on

progress; may contain errors. Use at your own risk”(改善中で誤りあるかも。自己責任で使用の

こと)と断ってあるものもある。(http://www.math.sunysb.edu/~kirillov/tensor/tensor.html)

決していい加減に書いたつもりはないが、同じように気を付けて参考にしていただけたらと願う次

第である。なお、精力的に研究に取り組み、資料として公開していただいた先達の皆さんに、この

場で感謝の意を表したい。

参考文献

[1] P.H.Bonderson, “Non-Abelian Anyons and Interferometry”, Doctor Thesis in California Insutituteof Technology 2007. http://thesis.library.caltech.edu/2447/2/thesis.pdf

[2] N.Bonesteel, L.Hormozi, G.Zikos and S.H.Simon, Braid topologies for quantum computation, Phys.Rev. Lett., 95(2005), 140503.

[3] N.Bonesteel, “Quantum Computing with Braids”,http://www.kitpc.ac.cn/files/activities/PQ20070601/report/PQ20070601-026.pdf

[4] C.Charalambous, Fibonacci anyons and topological quantum computers, 2013.http://www.itp.phys.ethz.ch/research/qftstrings/archive/

13FSProseminar/FTQC2_Charalambous

[5] S.Eliens, “Anyon Condensation”, Master Thesis in Univ. Amsterdam 2010.http://dare.uva.nl/document/206602

[6] 藤井淳一, 量子鍵交換 E91 をめぐって, 数学教育研究, 40(2011), 97–108.

[7] L.Hormozi, G.Zikos, E.Bonesteel and S.H.Simon, Topological quantum compiling, Phys. Rev.B75(2007), 165310.

[8] A.Kitaev, Anyons in an exactly solved model and beyond, Ann. of Phys., 321(2006), 2–111.

[9] C.Nayak, S.H.Simon, A.Stern, M.Freedman and S.D.Sarma, Non-Abelian anyons and topologicalquantum computation, Rev. Modern Phys., 80(2008), 1084–1159.

[10] J.K.Pachos, “Introduction to Topological Quantum Computation”, Cambridge, 2012.

[11] P.Panangaden and E.O.Paquette, A categorical presentation of quantum computation with anyons,in “New Structures for Physics”, Lecture Notes in Physics 813(2011), 983–1025.

http://www.cs.mcgill.ca/~prakash/Pubs/MTCanyons.pdf

[12] J.Preskill, “Lecture Note for Phisics 219: Quantum Computation”, 2004.http://www.theory.caltech.edu/~preskill/ph219/topological.pdf

[13] 和久井道久, Temperly-Lieb代数とその応用(筑波大講義録), 2010.http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~wakui/TL_algebra.pdf

[14] Z.Wang, “Topological Quantum Computation”, American Mathematical Society, 2008.