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コーチングが気になりだしたらはじめて読む本
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目 次
はじめに P.2
第 1 章 コーチングとは P.4
1. コーチングの概要
2. コーチングの基礎
3. コーチングの仕組み
4. コーチングの効果
第 2 章 コーチングのメリット・デメリット P.19
第 3 章 コーチングのスキル ラポール P.32
第 4 章 コーチングの領域 P.43
おわりに P.48
2
はじめに
コーチングが気になりだした理由は?
あなた自身の問題解決、あるいは夢を実現するために
コーチを探している
職場の人間関係の悩みを解決するのに、コーチングが
役立ちそう
コーチとして独立起業したい
コーチングのスキルを今の仕事に取り入れたい
クライアントの相談にもっと効果的に応えたい
コーチングという言葉をよく聞くけれど、そもそもコーチン
グってなに?
ここ最近、コーチングという言葉を目にする機会が増えまし
た。またコーチと呼ばれる方も増えましたし、コーチングを
教えるところも検索すると沢山あります。
3
なぜここまでコーチングという言葉を目にするかというと、コ
ーチングがコミュニケーションのスキルとしてとても役に立
つからです。
この冊子は、コーチングが気になりだした方のために、基本
的なコーチングテクニックをお伝えすると共に、学びの入口
にしていただくために書きました。
コーチングに気になったあなたの夢の実現のために少しで
もお役に立てれば幸いです。
一般社団法人人間力研究所
第1章
コーチングとは
4
コーチングとは
1.コーチングの概要
コーチという言葉の語源は 1500 年代頃 「馬車」という
意味で使われていました。
そして馬車という言葉から「大切な人をその人が望むところ
まで送り届ける」という意味が派生します。
さらに、1840 年代には英国オックスフォード大学で学生の
指導をする個人教授のことをコーチと呼ぶようになります。
その後スポーツの分野で使われるようになったのは 1880
年代のことで、ボート競技の指導者がコーチと呼ばれるよう
になります。
こうした背景を持つコーチという概念を元にして 1950 年
代頃よりアメリカのマネジメ ントの分野において「相手(クラ
5
イアント)の能力を最大限に引き出し、自発的な行動を促
進する為のコミュニケーション技術」としてコーチングが生
まれました。
コーチングの基本となるのは 「ゴールを達成したり、障害
を打開する為の答えや能力はクライアント自身が持つ」とい
う考えにあります。それらを引き出しその人自身の自発的
な行動を促す事がコーチングです。
コーチンングですること しないこと
コーチはコーチングのスキルを使って、効果的に質問を繰
り返し、その人自身に気づきや異なる視点を与え、実現し
たいゴールや目標を明確にした上で、短期間でそれを達
成できるようにサポートします。
コーチングの最大のメリットは、クライアントが次第に自分で
問題解決ができるように力をつけていくことにあります。
6
コーチの適切な質問によって、自分の内面から答えを導き
せるようになります。
コーチングのただ一つのルールは、アドバイスをしないこと
です。すべての答えは相手自身が持っているという考えに
立ちます。
信頼関係をつくりだす
また、コーチとクライアントの双方の理解が深まり、信頼しあ
える関係になります。
オリンピックなどのスポーツの場面で、選手が優勝してコー
チに抱きつくシーンを目にしたことがあると思います。
そんな信頼関係を築きあえれば、最高のコーチとクライア
ントということになるでしょう。
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2.コーチングの基礎
相手のパフォーマンス(成果・業績)をあげる為に、コーチ
は質問することにより相手から気づきを促し、自ら行動をお
こすことができるようにサポートします。
行動を促していく技術
どうやって行動を促すかがコーチングの技術です。
コーチングとは成果を得るために対話を通して行動を促し
ていく技術のことです。
あなたはずっと前からやりたいと思っているけれど、まだはじ
められていないことはありませんか。
あるいは、こういう自分になりたいと思い描いていても、その
自分になるためにどうしたらいいのかが分からない…
なかなか行動を起こせないことで、ますますなりたい自分
8
が遠くなっていくような体験はありませんか?
コーチングは対話を通して「やりたいこと」をやり、「なりたい
自分」になるための行動をしやすくします。「なりたい自分」
になるためには成果を上げる必要があり、成果は行動をす
ることで得ることが出来るのです。
ストレスの軽減になる
コーチングはストレスの軽減に役立ちます。
仕事のストレスでいっぱいになっているときに、誰かに話を
聞いてもらえたことで心が軽くなった経験はありませんか?
私たちは皆、多かれ少なかれストレスを感じて生活してい
ます。コーチは相手の話を聞き、相手を認めます。相手が
おもっていることをすべて受け止めます。
クライアントは話したことを受け止めてもらえたことで、
9
心が軽くなりストレスも減ります。
そして目標へ向けての意欲が高まり、より積極的な行動が
とれるようになります。
行動の後押し
コーチングには行動の後押しをする働きがあります。
やるといは決めてはいるけれども、不安だから、誰かに「応
援しているよ」って言って欲しい、ちょっと背中を押してほし
い、思ったことはありませんか?
やってみたいけれどもどうしていいかわからない、やってみ
たいことはあるが不安を感じる、といったことは誰にでもあり
ます。
10
コーチは相手の話を聞くことからはじめ、どうすれば相手が
行動をとれるのか、質問や様々なスキルを使ってアプ
ローチしていきます。
コーチングにより、何をすればいいのか具体的な行動が明
らかになります。さらにコーチからの励ましを受けることで、
より高い目標にチャレンジすることが自然と出来るようにな
ります。
新たな視点を提供
コーチングの特徴的な働きのひとつは相手に新たな視点
を提供することです。
自分ひとりで考えていると、どうしても出てくる答えは、なれ
たやり方が偏りがちです。
11
コーチは、目標を達成する為にもっと別の方法はないか、
選択肢を広げる質問により、新たな気づきを得られるよう
に促します。
また、あるものを上から見たら下からも見る、また、右を見
たらこうだけど左から見たらどうだろうか、といったバランス
の取れた視点を持つことについてもコーチは助けになりま
す。
ウキウキした気持とワクワク感
これらの一連の働きを持つコーチングにおいて大切なのは、
そのプロセスにおいて、相手にウキウキした気持ちやワクワ
ク感を抱かせる事、そして生き生きとした行動を促していく
ことです。
12
より高い成果を生む為には、それらが強力なパワーを発揮
します。義務感でいやいややる事と、ワクワクしてやることで
はどちらのほうが楽しく、より大きな成果が上がるかは、誰
の目から見ても明らかでしょう。
大抵の人は自分の成長を望み、「なりたい自分」になるた
めに行動をしたいと思っています。
そのサポートをするのがコーチングです。
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3.コーチングの仕組み
原則としてコーチングは、マンツーマンの対話(対面、
Skype、電話等)により行います。
コーチングを受け、自ら行動を起こし、成果を上げたいと考
えている人を「クライアント」と呼びます。コーチとクライアント
との一連の対話を「セッション」と呼びます。
プロのコーチとのセッションは、一定期間定期的(毎週ある
いは月に 2 回)1 回 30 分~60 分間程度行うのが最も一
般的です。
コーチングによるコミュニケーションでは質問することにより
相手(クライアント)に話をさせ、相手自身が持っている答
えを引き出します。答えを教えることはしません。相手の持
っている可能性を信じ、すべての答えは相手自身が持って
いるという考えに立ちます。
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4.コーチングの効果
① ゴール(目標)とその達成イメージが明確になる
ゴールの設定はコーチングの重要な部分です。ゴールは
何なのか、なぜそのゴールを達成したいのか、具体的にど
うなれば達成した事になるのか、達成したあとに何をしたい
のか、 達成したときに自分はどんな気持ちでいるのか・・・
等さまざまな質問により、ゴール とその達成イメージを明
確にしていきます。
漠然としたゴールのイメージを明確にし、 映像にできるくら
い具体的ではっきりとしたものにすることで、より達成しやす
い状況を作り出していきます。
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② ゴール達成へ意識を集中できる
毎週自分の得た成果をコーチと話すことにより、ゴール達
成へ向けての 意識の集中を継続する事ができます。
具体的な行動を起こし、上手く行った場合には、その成功
体験をコーチと話すことにより、 自己信頼を築いていく事
ができます。
コーチは相手の成功を心から認めます。行動ができなかっ
たり上手くいかなかった場合でも、その理由やそこから学ん
だ事をコーチと話すことにより、ゴール達成への意識の集
中を継続していく事ができます。
③ 気づきが引き出される
コーチからの質問により、自分の中に眠っていたアイデアや
発想が目覚め、可能性が高まる実感を得ることができま
す。
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コーチはクライアントの気づきを引き出します。
コーチが巧みな質問をすることにより、新たな視点が生ま
れ、クライアント自身の中にある様々なアイデアや発想があ
ふれ出るように湧いてきます。
④ 何をすべきかが具体的になる
「やりたいこと」を実現するために何をすべきかが毎回具体
的になるため、行動が促されます。
コーチはクライアントがゴールを達成するための行動を、週
単位にまで落とし込んでいくように質問をしていきます。
具体的な行動内容が週単位で明確になる為、ゴール達
成へ向けての賢実な一歩を踏み出していく事ができます。
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⑤ ストレスの軽減
気になっている事や心のわだかまりをコーチと話すことで、
心身のストレスが減ります。
コーチはクライアントの話を心から聞きます。
思っていることを、素直に安心して話せる相手を持つことは、
ストレスの軽減になります。ストレスが減少することにより、
悩んだり余計な事を考えなくて済むようになる為、ゴール
達成へ向けての行動に集中することができます。
⑥ 怠け心の克服
コーチと約束することにより、怠け心を克服する事ができま
す。
クライアントはゴール達成へ向けて自分が具体的にどのよ
うな行動をとるかについてコーチに約束をします。
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約束を守ろうという気持ちが、ゴール達成への意識の集中
を助け、怠け心の克服に役立ちます。
⑦ 本音で語れる安心感
感情が最大限に尊重されるので、心から受け入れられて
いる安心感を得 られます。
コーチングでは本音で語ることが非常に重要です。心の底
から本音でやりたいと思わなければ、成果の上がる行動に
つながりません。
コーチングではクライアントの感情を最大限に尊重し、それ
が本当にやりたいことなのかどうか、常に確認しながらセッ
ションを進めるため、自分が受け入れられているという安心
感を得ることができます。
第2章 コーチングのメリット・デメリット
19
コーチングのメリット・デメリット
コーチングの一番のメリットは、クライアントが自分で問題解
決能力を身につけていけるようになる、ということです。
コーチからの適切な質問によって、クライアント本人が自分
の内側から答えを導き出すことができるようになる、というこ
とです。
一方、コーチングのデメリットは、まだコーチング経験の浅い
人にとっては、いきなり自分の内側から答えを導き出すこと
を求められても、正しい答えをうまく導き出せずに、かえっ
て混乱をきたしてしまうことです。
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私たちはこれまで、「人生を自分で考える訓練」をしてこな
かったために、なかなか自問自答ができません。小さな頃
からみんなで同じことを教わる「ティーチング教育」が主体
でした。
それは、自分の意見を持たなくても学校で優秀な成績を
取ることのできる教育、とも言えます。日本でコーチングが
なかなか効果を発揮しないのは、このような背景があるか
らです。
ここでは、コーチングのメリットとデメリットを確認していきまし
ょう。
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1. コーチングのメリットとは?
コーチングは、他の学習や練習と比べて、個人の能力をよ
り大きくのばせるというメリットがあります。
クライアントが「成長したい」というモチベーションを強くもつ
ことにより、コーチの期待を上回る成長を見せることがよく
あります。
コーチングは個人を大きく伸ばす
個人を大きく、かつ効率的に伸ばしたいときには、コーチン
グが最適です。
仕事上でのコーチングは、あらゆる場面で応用できます。
22
営業成績を上げるため
業務改善を行うため
今後の計画を練るため
など、場面はいろいろありますが、適切な質問を繰り返すこ
とで、表面化していない問題を解決させ、前進できるように
なります。
コーチングは学ぶことがベース
そもそもコーチングというのは、「学ぶこと」がベースになっ
ています。
そのため、幼稚園児から学生、社員、管理職、社長に至る
まで、幅広く活用できます。
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ぐんぐん伸びる人の特長
コーチングを導入することによって、成績をぐんぐん伸ばし
ていく人がいます。
伸びていく人の特長としては、とても積極的にコーチングを
受けている、という点に尽きます。積極的にコーチングを受
けようとする意識や行動は、必ずより良い結果につながりま
す。
その逆で、コーチングを導入しても結果に結びつかない人
の特長は、セッションを受動的に受けている人です。
受け身でいると、どうしても創意工夫や挑戦意欲が生まれ
ず、結果として伸びにくくなり、コーチング自体を脱落してし
まいます。
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2. コーチングのデメリットとは?
コーチングを行っている会社を調べてみると、コーチングの
手法は様々でありますが、自主性を高めることができるとい
う点においては、そのコーチング企業も一致しています。
多くの企業でコーチングを導入している背景には、社の自
主性を重要視されているからと言えます。
ところが、コーチングを導入しても、なかなか業績に反映さ
れないケースがあります。
社員(クライアント)自体に積極性がなければ、うまくいかな
いのは当然なのですが、そうではなく、一生懸命コーチング
に挑んでも良い結果が出ないケースがあります。それはな
ぜでしょうか?
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コーチングスキルがないコーチがいる
昨今のコーチングブームで、たくさんのコーチが生まれてい
ます。
経験豊富でクアラアント思いの一生懸命なコーチもいれば、
勉強不足で粗い質問をし続けるコーチもいるのが現状で
す。
コーチは、きちんとしたコーチングスキルを持つことが要求
されます。 コーチングスキルがないコーチに、形だけのコ
ーチングを受けても、当然、良い結果は出ません。
したがい、初めてコーチングを受けるときには、コーチの力
量を十分に判断できないため、能力のないコーチを選んで
しまうことがあります。これが最大の問題です。
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コーチと相性が合わない
コーチとの相性もあります。いくら能力のあるコーチとして評
価されていても、コーチとの相性が合わずに、十分な成果
を残せないことがあります。
したがい、心を委ねることができずに、頼ることができずに、
すなわち、コーチとして信頼できないために、うまくいかない
ケースです。
27
3. コーチのメリットとは?
今度は、コーチを受ける側(クライアント)のメリットでなく、コ
ーチングをする側(コーチ)のメリットを確認しましょう。
専門分野以外でも対応できる
コーチングは、専門分野の枠にとらわれない質問を行うこ
とで、クライアントの発想の転換ができます。クライアントの
行動変容を起こさせることができます。
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どのような人にも対応できる
クライアントの専門分野に固執せずに、視野を広げて質問
ができるようになると、目が行き届くようになります。
話すときに相手の目を見る、相手の動きや言動を真似る
など、コーチングで使う色々な手法がありますが、結局はコ
ミュニケーションを円滑にするための行動がまとめられたも
のなのです。
自らの観察力が高まることで、どのような人にでも対応でき
るようになります。
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4. コーチのデメリットとは?
今度は、コーチを受ける側(クライアント)のデメリットでなく、
コーチングをする側(コーチ)のデメリットを確認しましょう。
専門分野のアドバイスができない
クライアントの専門分野に関するアドバイスができないという
欠点があります。
コーチは幅広いジャンルのクライアントと接しているので、あ
る程度のところでの理解や共感はできます。
ところが、高い専門性を帯びた内容での困りごとに対しては、
アドバイスをできるだけの知識やスキル、経験がないために、
答えてあげられません。
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全部を解決できない
コーチングは、コンサルティングでも、ティーチングでも、カ
ウンセリングでもありません。コーチングという範疇の中で、
良い結果が出るように導くことが求められます。
したがい、教育したり、指導したりできず、クライアントの内
側から引き出すことをベースに質問を重ねていくことが主
なセッションになります。
違和感がある
コミュニケーション力が乏しいコーチ、あるいはコーチング
経験の少ないコーチは、友人たちとの会話の中に、突然質
問を投げかけるようなコミュニケーションを取ろうとしがちで
す。すると、周りの人に何らかの違和感を憶えます。
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そもそもコミュニケーション力のある人は、その辺のバラン
スを無意識に調整できるのですが、自らがコミュニケーショ
ンの悩みを抱えていた人がコーチングに辿り着いた、という
ようなケースの人では、しばしばこのような不自然はコミュ
ニケーションをとってしまい、かえって難しくしてしまうことが
あります。
第3章 コーチングのスキル ラポール
32
コーチングのスキル ラポール
コーチングで習うラポールの構築4つのテクニック
営業パーソンが、新規の顧客を獲得したいと気が焦り、訪
問するなりいきなりパンフレットを広げ、説明を始めてしまい
ました。
他社との違い、自社のメリットなどを一方的に伝え、本人は
一安心だったのですが、肝心のお客様の反応は悪く、契約
ができませんでした。
人ごとだと容易にわかるのですが、この営業パーソンはお
客様とラポールを築く前に、売り込みをはじめてしまい、失
敗しました。
お客様はまだこの営業パーソンから話を聴く準備ができて
いませんでした。
33
さらに、モノは信頼関係のある人からしか買いません。まだ
信頼関係ができる前に、いくら売り込んでも売れませんね。
同じ売り込みをするのでも、お客様と「ラポール」を築いて、
そしてお客様の抱えている悩みを十分に理解してから、サ
ービスの紹介をしたならば、結果は大いに違っていたことで
しょう。
ラポールとは、コーチングの大切な要素で、「信頼関係を
築く」ことを指します。ここでは、ラポールの構築に必要なテ
クニックについてお伝えします。
34
1. ラポールとは
コーチングを行う上で一番大切なことは、言葉の定義を明
確にすることです。
コーチとクライアントが同じ言葉を違う解釈をしていると、ミ
ス・コミュニケーションを生んでしまいます。
ここでは、ラポールとは何かを確認していきましょう。
ラポールの意味
ラポールは「親密な関係」と訳されます。フランス語の「橋
を架ける」から来ています。
例えば、あなたがある人と一緒にいて楽しいと思う時、二人
の間には「ラポール」が形成されています。親密な関係で
す。
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それは当然、あなたの思いと同じように、相手もそう感じ
ている、という状態です。ラポールが築けているということは、
双方にとって良好な関係です。
ラポールは内面的な要素が大事
ラポールは、「親密な関係を築く」と訳すよりも、「信頼関係
を築く」ほうがふさわしいです。表面的な要素よりも、内面
的な要素が大切です。
一般的な解釈では、例えば、営業パーソンが取引先の担
当者とラポールを築こうとするとき、そのためには、
「遅刻をしない」
「約束を守る」
「レスポンスが早い」など、
業務の過程において、粗相がないようにすることを考えてし
まいます。
36
しかし、ラポールというのは、事務的なことや作業面、理屈
によるものではなく、内面的なものに近い考えになります。
相手の感じ方です。
これは何となく気が合う間柄、と思う感覚に近いかもしれま
せん。ラポール心が通じ合い、そして自然に形成されるも
のです。
37
2. ラポールを築くための4つのテクニック
自然に形成されるものであっても、ラポールを築くためのち
ょっとしたテクニックはもちろん存在します。
今回 4 つ紹介します。これらは良く知られたテクニックです
が、知っておくことは有用です。
ただし、今から紹介する 4 つのテクニックは素人には難しい
部分もあり、使いすぎるのも逆効果になってしまうものなの
で、いきなり実践で使うのではなく、親しい人と話す場合で
練習をして慣れてから使うことをおすすめします。
① ミラーリング
ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢を鏡に映しているよう
にマネるテクニックになります。
38
例えば、あなたがラポールを築きたい人とカフェにいるとし
ます。
その際に、相手がコーヒーを飲み始めたら、あなたも同じタ
イミングでコーヒーを飲みます。
これは意識的にタイミングを合わせて、同じ行動をとるわけ
ですが、仲の良さそうなカップルのしぐさをよく観察すると、
自然と「ミラーリング」が行われていることに気づくと思いま
す。気の合う者同士では、しぐさが似てくるものだからです。
長年連れ添った夫婦が似てくるというのは、振る舞い方が
似てくるからと言えます。
② ペーシング
ペーシングとは、相手の話し方やリズムを合わせるテクニッ
クです。ミラーリングと似ていますが、少し違います。
ミラーリングは、相手のしぐさを真似ます。
39
ペーシングは、相手の話し方を合わせます。
相手がゆっくり話す人ならば、こちらもゆっくりと話します。相
手が早口な人ならば、こちらも早口で話します。
相手の呼吸に合わせていくには、相手の肩や胸の動きに
注目してください。すると、相手のリズムに合わせやすくなり
ます。
③ キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の心の状態を仕草から認識
するテクニックになります。言葉以外の重要なサインとして、
姿勢や振る舞い、手の動き、呼吸、表情、声のトーンなど
があります。
例えば、相手が病気の時には、顔色の悪さから具合が悪
いことを察知できると思います。
40
同様に、相手が疲れているようならば、口では「元気です」
と言ったとしても、声のトーンや顔色などから疲れていること
を感じられると思います。
緊張していれば、どことなく顔が強張っていて、伺い知るこ
とができるはずです。
言葉からではなく、わずかな状態の変化から相手の気持ち
を読み取ることで、相手は信頼感を持ってくれやすくなるの
です。
④ バックトラッキング
バックトラッキングとは、いわゆる「オウム返し」のことです。
相手の言ったことを繰り返して自分も言うことです。
相手の言葉を使って繰り返すことで、「あなたの話を聞いて
いる」と受け止めていることを伝えることができます。
41
3.ラポールは信頼関係のために
ラポールは、「信頼関係を築く」という意味のコミュニケーシ
ョンです。人は信頼できる人からしか、話を聞くことができま
せん。
昨今の情報社会においては、情報は溢れています。まして
や、それらは両極に振られたあらゆる情報になります。
自分にとって良い情報は、信頼できる人からの話に影響さ
れ、優先させます。
したがって、コーチングにおいては、ラポールの構築は非
常に重要なポジションを占めています。まずは、信頼づくり
です。
ここではラポールの構築のための4つの代表的なスキルを
ご紹介しましたが、あくまでも信頼関係を築くことを優先す
ることです。
42
コミュニケーションの上手な人は、上記のようなスキルを用
いなくてもラポールを築けますし、また無意識にそういった
ことができています。
一方、コミュニケーションが苦手な人は、このようなスキル
を意識することから始めることで、やがて自分のものとして
身についていくでしょう。
第4章
コーチングの領域
43
コーチング領域とその他の領域
1.コーチングの領域
コーチングとカウンセリング、ティーチング、コンサルティン
グとの違いについて下の絵にしました。
44
心が元気でない人を、普通の状態に戻すのが一般的なカ
ウンセリング領域です。カウンセリングでは主に過去の出来
事について扱います。
それに対して、コーチング領域、ティーチング領域、コンサ
ルティング領域は、心が元気な人をより元気にするための
もので、主に扱うのは今から未来のことです。
45
2.さまざまな領域
コーチングは、アドバイスはしないのが唯一のルールである
ことは第 2 章でお伝えしました。答えを教えません。
それに対し、ティーチングは教えます。
コンサルティングはアドバイスをしますし、いくつかの答えを
用意してクライアントに提案もします。
優れたコーチ、カウンセラー、コンサルタント、ティーチャー
はそれぞれの領域を超えて、目の前のクライアントのため
に自分が持っているすべてのスキルを使ってサポートしよう
とするのではないでしょうか。
カウンセラーもコーチングをします。ティーチャーもカウンセ
リングをします。
優秀なコンサルタントは、カウンセリングもコーチングもする
ことでクライアントに評価されていることでしょう。
46
一見、心が元気な人でも、「こうなりたい」を扱うと不安が大
きくなり行動に移せないことがあります。
その不安の原因は、大抵の場合は過去の体験から影響を
受けています。
行動できないのには、本人も気づいていいない理由がある
のです。不安が出てきたときに、そのもとになる体験を扱え
るチャンスです。
不安の理由がわかることで、安心してゴールに向かうことが
出来るようになります。
こういった不安の元になる無意識に埋もれている体験のこ
とはカウンセリングの領域になってきます。
47
4.コーチングの可能性
コーチングのスキルは、コミュニケーションのスキルとして、
とても役に立つスキルです。
多くの企業がコーチング研修を取り入れ、それによって社
内の円滑なコミュニケーションが円滑になるという効果を上
げています。
コーチングには沢山のスキルがありますが、まずは言葉よ
るやり取りの前に、姿勢・態度を意識して、ラポールを築くこ
とからはじめてみてください。
ラポールは
あなたの夢の実現と幸せな人生のために
そしてあなたの未来のクライアントのために
48
おわりに
私たち人間力研究所では、
信頼とは「力づけです」とお伝えしています。
誰かに信頼されて勇気が出た、自身がわいた、という経験
をしたことがあると思います。この能力があなたの人間関係
を左右しているともいえるでしょう。
あなたが誰かにしてもらった信頼という力づけを、今度は次
の誰かに手渡していく人になる。
私たち人間力研究所では、あなたのリーダーシップを応援
しています。
人間力研究所
49
人生の相談にのれる人を育てる
MFBメンタープログラム
http://mfbmentor.com/
コーチングが気になりだしたらはじめて読む本
初版 平成 29年 1月 17日 初版第 1刷発行©
著者: 一般社団法人 人間力研究所
発行者: 一般社団法人 人間力研究所
東京都港区三田3-1-5第一奈半利川ビル3F